積極的にどうこうなりたいわけじゃなかった結果

 告白されたのは卒論提出を終えた1月の終わりだった。相手は同じゼミのひとつ下の後輩で、教授に卒論を手渡したその直後に、先輩ちょっとと呼ばれて、人気のない廊下の片隅に連れ出された。
「俺、先輩のことが恋愛的な意味でずっと好きでした」
「ああ、うん」
「驚かないんですね」
「いや驚いてるけど」
 だって、なんで今? という気持ちはかなり強い。
 ただまぁ相手からの好意には気づいていたし、わざわざこんな人気がない場所に連れ出されての話ってことで、途中でもしやと思っていたのも事実だ。
「全然驚いてるように見えないですけど。てかやっぱ、知ってました? よね?」
「あー……まぁ」
 ですよね、と言いながらその場にしゃがみ込んでしまった相手は、どうやら落ち込んでいる。
 仕方がないので自分も腰を落として、うつむく相手の様子をしばらく眺めていた。
「あの……?」
 やがておずおずと顔を上げた相手が、なぜいつまでもここに居るんだと言いたげに見つめてくるから、まさか話は終わったのか? という疑問が浮かんでくる。
「で、話ってそれだけ?」
「あ、そうですね。知ってたのに知らない振りしてくれててありがとうございました」
「え、他には?」
「ないですけど」
 即答されて、マジかよと思う。
 え、好きって言って終わり? それだけ?
「あ、告白なんかしてすみませんでした……?」
「それ疑問符ついてないか?」
「いやなんか怒ってはなさそうだったから」
 怒ってます? と聞かれて、怒ってないと返したが、正直釈然としない。
「先輩……?」
 無言で相手を見つめてしまえば、居心地悪そうにしながらも心配そうな声が掛かった。
 というか普通、告白したら相手の返事を求めるものじゃないのか? もしくは告白と同時にお付き合いの打診とかするもんじゃないのか?
「いやオカシイだろ」
「え、何がですか?」
「何がって全部だ全部」
「あ、はい、すみません」
「いや待て。なんの謝罪だそれ」
「えと、好きになってすみません。ずっと知ってたのに、普通に接してくれてたんですよね? ずっと気持ち悪い思いさせてましたよね?」
「待て待て待て待て。え?」
「え?」
 こちらが戸惑えば、相手も同じように戸惑っていて、しばし沈黙がこの場を支配する。
「あー……まぁ俺も秘密にはしてないが積極的に開示してはいないというかで、つまりは知らなかったってことだよな」
「え、何をですか?」
「俺が男もイケるって事実」
「は? え?」
 本気で驚いているようだから、本当に知らなかったらしい。
「あーまじか。知らなかったからか。マジか」
 確かに、あんなあからさまな好意を寄せてくるわりに何も無いのはオカシイなと思うこともなくはなかった。どうやら、こっちから積極的にどうこうなりたいわけでもないしまぁいいか、と放置してしまったのがこの結果らしい。
「てかなんで今?」
「え、なんで?」
「なんで、告白する気になったんだろって思って」
「それは先輩が卒業するから」
「俺が卒業後地元戻るって知ってるよな?」
「はい」
「卒論出したし、ゼミに顔出すこともなくなるんだけど」
「ですね」
 こちらの言葉に即答で肯定が返るのを見ながら、なるほど、と思う。
「つまりマジで言い逃げ? ただ好きって言いたかっただけ?」
「あと確認、ですかね」
「確認?」
「ずっと知ってて知らない振りしてくれてるのかなって思ってたから。知ってて普通に接してくれてたならお礼言わないとって思って」
 言えて良かったですとようやく相手に笑顔が見えて、ちょっとイラッとしてしまう。
「なあ、俺、男もイケるって教えたとこなんだけど」
「あ、はい、ビックリしました。だから俺の気持ち知ってても平気だったんですね」
「マジで? なぁマジで?」
「えっ? えっ?」
「男もイケる相手に告白したってわかっても、それ以上先、何も求めないわけ?」
 そこまで言えば、ようやく相手も何かを察したらしい。
「いやでも先輩、もう卒業ですよね?」
「そうだな」
「ゼミにも顔出さないですよね?」
「そうだな」
「遠距離恋愛とかするタイプじゃないですよね?」
 その指摘にはグッと喉が詰まってしまったが、それでもなんとか「そうだな」と肯定を返す。
「えと、何を求めていいんですか?」
「っ……それ、は……」
 積極的にどうこうなりたい相手じゃなかったはずなのにと思いながら。
「とりあえず付き合うか」
「え?」
「卒業までの期間限定で」
「えっ!?」
 相当驚かれたが、嫌なのかと聞けば即答で嫌じゃないですと返ってきた。
 卒業後のことは卒業してから考えればいい。

 
 
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弟狙いの従兄弟を抱かせて貰うことになった

 祖父母は伯父家族と一緒に住んでいるので、正月の挨拶に行けば必然的に従兄弟たちとも顔を合わせることになる。
 次男とは同じ年齢だったから、小学生の頃は子供だけ互いの家に泊まり合ったり2家族+祖父母と旅行したりの交流もあったのだけど、やはり中学に上がって部活などが始まると従兄弟と遊ぶなんて機会は減っていき、今はもう正月くらいにしか顔を合わせない。
 その正月の集まりで、今年は妙に向こうの長男が気になって仕方がなかった。だって弟に対する態度が、なんていうか微妙にオカシイ。
「ずいぶん背ぇ伸びたんだな」
 弟は確かにこの1年で驚くほど身長を伸ばしたので、その感想は妥当だと思う。でも、モテそうだのカッコいいだの、挙げ句はちょっと筋肉触らせてだの言い出して、それが同じ男として憧れるって雰囲気よりも、性的魅力を感じてるって言ってるように聞こえて仕方がなかった。弟に話しかける声が妙に弾んでいるせいだろうか。
 愛想が足らない弟は、モテるとかどうでもいいというか興味ない、みたいなことを言って全然相手の話に乗ってないし、触らせてってお願いもあっさり拒否っているんだけど。それでも相手は全くこりた様子がないまま、何かと弟に構い続けている。
 弟も微妙に鬱陶しそうと言うか迷惑そうにしてるのに、相手がかなり年上ってこともあってか、返答はそっけないものの無視までは出来ないらしく、話しかけられれば応じていた。間違いなく、相手はわかっていて調子に乗っている。
 いい加減、止めたほうがよさそうだ。
 というかこれってやっぱ、長兄は弟狙いって考えていいんだろうか?
 そう思ってしまうのは、最近、自身がゲイと呼ばれる性指向なんだと自覚したせいかもしれない。自覚したと言うか、ようやく認めたと言うか。
 だからもし長兄もそうだって言うなら、ちょっと話がしてみたい。
「こいつばっか構ってないで、そろそろ俺にも構ってくれても良くない?」
「えーっ」
「なんでそんな嫌そうなの。失礼だな」
「いやだってお前、俺に構われたいとか絶対嘘じゃん」
 確かに、弟みたいに構われたいとは一切思ってないけど。絶対鬱陶しいだけだし。でも話がしたい気持ちは嘘じゃない。というか相手もゲイなのか本気で知りたい。確かめたい。
「可愛い可愛い大事な弟が、変な男に絡まれてたら助けたい兄心ってやつだよ。わかれよ。つかこいつまだ中学生ってわかってる?」
「あー……ね」
 青田買いって呟いたの聞こえたぞコラ。
「ね、じゃなくて。だから構うなら俺にしよ? つかちょっとマジに話、聞いて欲しいんだけど」
 最後はけっこう真面目な口調で告げてみたら、相手も何かを察したらしい。
「人生相談? なら俺の部屋行く?」
「行く!」
 相手が立ち上がるのに合わせて自分も立ち上がれば、隣の弟がそっとズボンの裾を引いてくる。
「どうした?」
「いや、えっと」
「大丈夫。聞いて欲しい話があるのはホント」
 ポンッと弟の頭を撫でるように叩けば、ズボンの裾から弟の手が離れたので、じゃあ行ってくると残して従兄弟のあとを追った。


 結果から言えば、従兄弟はゲイよりのバイで男相手なら抱かれる側がしたくて、背の高い細マッチョ最高、らしい。
 弟は中学生だぞと再度釘を差しつつ、高身長細マッチョなら誰でもいいのかと呆れてしまえば、ニヤリと笑って、好きな男がいるんだろうと指摘されて、ついでにセックス一切未経験なのもどうやらバレた。
 相手の男に脈ないのと聞かれて、欠片もないし好きだなんて知られるのは絶対避けたい相手だと答えながら、思わず泣いてしまったのは想定外だったけど、でもなんだか少しスッキリした。
「じゃあとりあえず誰かとセックスしてみたら?」
「は?」
「抱かれたい側? それとも抱きたい側?」
「や、え、なんで?」
「だって脈ないどころか好きも知られたくない相手想い続けるとかしんどいだろ」
「それはそう。だけどそこからなんでセックス?」
「気持ちぃセックス経験したら他に好きになれるやつ出来るかもだから」
「そういうもん?」
「そういうもんだろ。つか俺はそう」
 好きだなって思う男はセックスが上手い男ばっかりとか言い出してドン引きした。
「女の子は? 女の子もセックス上手いかで好きになるわけ?」
「あー、いや、女は抱けなくないけどくらいであんま恋愛対象ではないな。てかだからゲイよりなんだって」
「そっか」
 じゃあもしかしたら、自分もバイの可能性があるのかも知れない。女の子相手にセックスしたいって思ったことはないけど、それを言ったら、男相手にセックスしたいって思ったことだってないんだから。
「男紹介する?」
「え?」
「セックス上手い男」
「え、嫌だ」
「なんでだよ」
「だってそれあんたのお古……あ、まさか今彼紹介したりしないよな?」
「なるほど。いたら3Pも有りだったな」
「最低。てか今彼氏いないの?」
「居たらさすがにお前の弟にちょっかいかけたりしてないって」
「じゃあ俺とセックスして、って言ったら、する?」
「は? あれ? 抱きたい側だった?」
 てっきり片恋相手に抱かれたいんだと思ってた、というその憶測は当たってる。
 想い人相手には抱かれる想像しかしたことがない。というか抱かれたいって思ってしまったから、友情じゃないんだと気づいてしまったし、ゲイなんだと自覚してしまった。
「違うけど、いきなり知らない男相手に抱かれる側のセックスとか絶対無理だし。あんたが俺に抱かれるとこ見たら、抱かれるセックス試してみてもいいかもって思うかもだし。絶対上手いわけないから、あんたが俺に惚れる心配もないし」
 ほらいい事ずくめ。と言ってみたら、大笑いされたあと、いい性格してんなって言われて了承が告げられる。
 お前の童貞貰うの楽しみってニヤニヤして言ってくる相手だって、相当、いい性格だよなと思った。

別れた男の弟が気になって仕方がない」に出てくる兄(別れた男)の初めての相手は従兄弟で抱く側。
ただしこれを書く前に読み返したりはしてないので、兄関係はたいして情報書いてないから多分大丈夫と思ってるけど、設定食い違うところがあるかもしれないです。

 
 
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異世界召喚されたオメガの話を書きたい気がした(続かない)

 周りのざわつく気配に意識が浮上する。
「あ、起きたぞ」
「マジかよどーすんだ」
 目を開けたらそのざわつきが大きくなって、ついでに、ヒョコッと2つの見知らぬ顔が上から見下ろしてくる。
「ぎゃっ!」
 思わず叫んでしまったのは仕方がないと思う。てか誰だ。つうかどこだここ。
「おいこらヤメロ。ビビらせんな。あとみんな少し落ち着け。起きたなら説明しないとまずい」
「あ、ごめ」
「すまん」
 その声に2つの顔はさっと引っ込んでいき、さきほどまでのざわつきも収まり逆に静まり返っている。
「あー、とりあえず、目が冷めたのなら起き上がっていただけると嬉しいのですが」
 促されてゆっくりと身を起こし、ついでに周りをくるっと眺めて、最後に自身が寝ていたのだろう床を確かめた。
 見知らぬ部屋に見知らぬ男たちに極めつけは床に描かれた魔法陣らしき模様。
「あー……異世界召喚てきな?」
 もしくは夢。今まさに、夢を見ている真っ最中の可能性。
「違うなら夢」
「いえ夢ではないです」
 速攻否定された。
「というか召喚された自覚がおありなんですか?」
「流行ってたんで」
「だから冷静なんですね」
 主に創作の世界でだけど。という割と肝心な部分を抜かしたせいか、また周りが一瞬ざわついたけれど、その葉に納得したのかすぐに収まっていく。
「そうだと思います」
「ただ何かの手違いと言うか、その、申し上げにくいのですが、お呼びしたのは貴方ではないと言いますか」
「じゃあ帰れる?」
「多分、無理かと」
「じゃあ手違いで呼ばれた俺が、こいつ要らねって殺される心配は?」
「それはない!」
 速攻否定したのは眼の前で丁寧な口調で話してくれている男ではなく外野で、多分、最初に顔を覗き込んできた男の一人だと思う。まぁ声が似てた気がするってだけで、確証はないんだけど。
「じゃあいいや」
 いやホントは全然良くないんだけど。でも速攻殺されて終わりってわけじゃないなら、さっさと気持ちを切り替えて早めに対処しておかないと、あとから結局殺される羽目になりかねない。
 ここが異世界なら、アルファだとかオメガだとか、第3の性が存在しない可能性だって高い気がする。抑制剤なんて期待できないし、こんな目に合うのがヒート直後だったのは多分運が良い。
「え、いいんですか?」
「あっちの世界にあんま未練ないんで。てか正直死にたいとか思ってたくらいなんで」
 大嫌いで大嫌いで避けまくっていたアルファ相手に、家の都合で強制的に嫁がされるかも。なんて話が出てたところだったから、むしろ絶対追ってこれないだろう異世界なんてところに逃げれたのはマジで運が良いと思う。
「そうなんですか?」
「そうなんですよ。というわけで、言葉は通じるみたいだけどこっちの生活のこととか教えて欲しいのと、俺にもできそうな仕事とか紹介して貰えれば。あ、ちょっと特殊な体質で、3ヶ月に2週間ほど家を出れないと言うか、引きこもって安静に過ごしたい期間があるんですけど、仕事はそれを考慮して紹介して欲しいです」
「わかりました。というかこちらの事情とかは……?」
「手違いで呼ばれたなら俺が聞いても意味ないかなと」
 それはそう、という雰囲気が周りからも伝わってくる。
「わかりました。では、当面生活していただく予定の部屋へご案内いたします」
 くるりと回りの男たちに順番に視線を移していくその男に習って、同じように視線を周りに向けてみれば、一人の男が挙手するのが見えた。最初に覗き込んできた男の一人で、多分さっき殺さないと言い切ってくれた彼だ。
 その男の名前らしきものが呼ばれて、どうやらここからの移動は眼の前の丁寧語の男と、その男と二人だけらしい。
 まぁ手違いだとか言ってたから、残った男たちには他にやることが色々有るんだろう。部屋を出る直前、何やら色々指示しているのが聞こえてきたし。


 当面生活して良い部屋、というのはなんともファンシーと言うか、女の子が好みそうな可愛らしい部屋だった。というかレースの天蓋付きベッドなんて初めてみた。
「なんか、その」
「不要であれば後ほどはずさせます」
 こちらの視線の先に気づいて苦笑とともにそう告げられたので、お願いしますと返しておく。あんなベッドで落ち着いて眠れると思えない。
 その後、簡単な自己紹介をしあって、この国の情勢という名の事情説明がされた。さっき聞いても意味ないかなと断ったはずだが、ここで仕事を得て生活していく気がお有りなのでこの国がどんな状況であるかを知ってほしいと言われてしまえば断れない。
 どうやらこの世界では、ここ数年どの国も急速な出生率の低下を辿っているらしい。そして前回同じような状況に陥った時には、他の世界から聖女を呼んでその聖女に子を産んでもらったそうだ。
 国の規模やら数やら考えたら相当数呼ばれた可能性があるようで、今回は早めに対処しようということになり、数百年ぶりの聖女召喚だったらしい。が、結果来たのは男だったと。
 そこまで聞いて、呼ばれた理由には納得してしまったわけだが、もちろん、じゃあ手違いじゃなかったですねとも、子ども産めますよなんてのも教える気はなく、基本はそうなんですねと聞き流すだけだ。
 だってここが、子どもは女が産むもの、という世界らしいのは間違いない。というか抑制剤が存在しないのも確定したなと思う。
 ああ、だから理由なんて聞きたくなかったのに。

タイトル通り続きません。異世界召喚も転生もオメガバースも読むのとか妄想するのは好きだけど、形にするのは難しいね。

 
 
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化けの皮が剥がれた結果

 人当たりがよくて親切で、オールマイティに何でもこなす友人を、親友だなんだと言ってつるみつつも、内心嫌いで嫌いで仕方がなかった。だってなんだか色々と胡散臭い。
 気になる女子はだいたいこいつに惚れていたのもひたすら不快だったし、そのくせどんなに勧めても今はそんな気にならないだとか、男友達と遊んでる方が絶対楽しいだとか言って恋人を作ろうとしないのも不満だった。そのせいで男友達からの妙な信頼を得ていたのもイライラしたし、特定の恋人を作ってくれれば諦めて他の男に目が行く女子だっていたかも知れないのにって気持ちだってあった。
 こっちが必死で挑もうとギリギリのところでどうしても敵わないテストの順位だとか、そのくせ一切驕ることなく飄々としているところとか、学校のテストの点だとか成績なんてどうでも良さそうな態度とか、学生時代は本当に腹立たしいことが多かった。
 つまりは劣等感が刺激されるとか、嫉妬とか、そういう感情で嫌っていた部分があることも認める。でもそれだけじゃなくて。胡散臭いとしか言いようがない、妙な感覚を相手から感じていたのも嘘じゃない。
 そんな聖人君子居るわけ無いだろって疑う気持ちをずっと持っているし、ぜったいどっかで無理をしてるんだと思っているし、いつかその化けの皮が剥がれる日が来ればいいと思っていた。
 さすがに就職先は別になってストレス源から開放された日々を満喫しているのに、それでも未だに親友なんてのを続けて、たまに近況報告やらで会っているのだって、その化けの皮が剥がれる瞬間に立ち会いたいから、というのが一番大きい。


 二日酔いに似た酩酊感と軽い吐き気で意識が浮上する。相手の前で醜態をさらす真似なんか絶対したくないから、一緒に飲むときの酒量にはかなり気をつけていたはずなのに。どうやら昨夜は酔い潰れたらしい。
「うぅ……っ……」
「あっ、やっと起きた?」
 小さく呻けば、すぐ近くからよく知った声が聞こえてくる。随分と機嫌が良さそうだ。
「あ゛ー……悪い、迷惑かけた」
 多分間違いなく酔いつぶれたのだろうし、横になって寝ていた状況を考えたら何かしら迷惑をかけたのは明白で、とりあえずで謝っておく。
 飲み過ぎたからか、声は少し枯れている。
「全然。てか迷惑かけたのも、これから更に掛けるのも、俺の方なんだよね。まぁ迷惑とはちょっと違うかもだけど」
「は?」
「酔い潰した、っていうかお前に眠剤盛ったの、俺」
「な、んで……」
 眠剤、なんていう不穏な単語が聞こえてきて混乱する。発した声は少し震えて、喉に詰まった。
「んー……そろそろいいかな、って思って」
「なに、が?」
「親友ごっこ、いい加減やめてもいいかな、って」
「……は?」
「お前だって、俺のこと親友なんて思ってなかっただろ。というか俺のこと、実は嫌いだよね?」
 しかもちょっとじゃなくて相当、なんて言われてしまう。
 事実だけれど、さすがに肯定はしなかった。けれど相手はこちらの返答なんか必要としていないようで、ヒョイッとこちらの顔を覗き込んできた相手の表情は、声からもわかっていた通りににこやかだ。
 胡散臭さを通り越して気味が悪すぎる。というのが正直な感想だった。
 相手はにこやかに笑っているのに、背筋にゾッとするような怖気が走る。
「これなーんだ」
 そう言ってこちらの目線の先に掲げられたのはスマホの画面で、何やら動画が再生中だった。
 最初は何が移されているのかさっぱりわからず、けれどそこに映ったものが何かを理解すると同時に、血の気が失せていく。
 そこに映っていたのは自分だった。昨夜、眠剤とやらを盛られたあと、ここで何が起きたか。というよりは相手に何をされたのかを、如実に映している。
「大っ嫌いな俺に、アンアン言わされた気分はどう?」
「最っっ悪」
「だよね」
 嬉しそうに跳ねた声が憎らしい。
「嫌がらせか」
「お前にとってはそうかもね。でも俺にとってはそうじゃないんだな、これが」
 まぎれもない愛情表現だよと笑われて、もちろん、意味がわからない。
「意味がわからない」
「だよね」
 わかるよと頷かれても困るというか、こちらは一向に理解が進まないし、不気味さだけが増していく。
「俺はね、俺のことが大っ嫌いなのに、俺のことが気になって仕方なくて、俺のことが切れなくて、未だに俺と親友続けてるお前のこと、多分、好きなんだよね」
 どんな美女やイケメンに誘われるより、お前が無理やり笑いながら適当に相槌打って、つまんなそうに俺と飲んでる時が一番興奮したよ。なんて、意味がわからないと言うよりは頭がオカシイ。
「イカレテル」
「いいね。そういうの、もっと言ってよ」
「お前とはこれっきりだ。二度と誘わないし誘いに乗らない」
「それは困るな。というかそんなの無理でしょ」
 これの存在忘れてる? と言いながらスマホを振られて、どうやら脅迫されているらしい。
「俺を、どうしたいんだ」
「え、この流れなら恋人になる以外なくない?」
「なんでそうなる!?」
「好きって言ったじゃん。多分、ってつけちゃったけど、あれ、ちゃんと本心だからね?」
「俺はお前が嫌いなのに?」
「それがいい、って言ってんだからそこ関係ないよね。でもってお前は俺に逆らえないんだから、今この瞬間から、お前は俺の恋人だよ」
 良かったねと笑われて、即答でどこがだとキツく返した。
「だってお前、俺の化けの皮剥がれるとこ、見たかったんだろ? これがお前の見たがってた、俺の素の姿ってやつだよ」
「なんで……」
 本人に言ったことがないのはもちろん、共通の友人相手にだって、そんな話はしたことがないはずだ。
「世間は狭いよねぇ。というか長いこと俺の親友やってんだから、自分に近づいてくるやつにもうちょっと警戒したほうがいいんじゃない?」
 就職先別れたから油断したんでしょと言われて、そういや、仕事関係で新たに出会った人達相手には、胡散臭い友人の化けの皮がいつか剥がれるのを待ってるって話をしたことがあったなと思い出す。というか結構な頻度でその胡散臭い友人の話をしていた気がする。
「じゃあまぁ自業自得と納得がいったところで、とりあえずもっかいセックスしとく?」
「嫌だ!」
「だから拒否権とかないんだって」
 記憶にないだろうけど動画でわかる通り、ちゃんと気持ちよくしてあげるから大丈夫。だなんて、全然大丈夫じゃないことを言いながら、楽しげな顔が近づいてくる。

 
 
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七草粥

 雑談で、今日の夕飯は七草粥のつもりで七草セットを購入済みだと話した際、妙に食いついてきたのは同期の同僚だった。
 食いついてきたと言うか、自分にも食べさせろとしつこかったと言うか。
 断固お断りしたいような苦手な相手ではなかったし、スーパーで見かけて勢いで買ってみたものの、米とのバランスを考えたら結構な量が出来てしまうのはわかっていたし、まぁいいかと了承した。出来上がる量を考えたら一緒に消費を手伝ってくれる相手が湧いて出たのは、こちらとしてもラッキーだったかも知れない。

 米からお粥を炊くつもりで準備をしていたため、出来上がるまでに結構待たせてしまったが、粥の提供代として帰りがけのコンビニでいくつか惣菜を買わせていたのもあって、いざテーブルの上に並んだ夕飯はそこそこ豪華だった。
「おお〜すげぇ〜」
 生の七草入れた七草粥なんて何年ぶりだろうと言う相手に、それは自分も同じだと返す。
 実家にいたころは母が用意していたのを食べるだけだったし、就職して家を出てからは7日に七草粥なんて、存在自体を忘れている年だってそこそこあった。
 今回は、先日たまたま買い出しに出かけた先で、七草粥用に売られたセットを見て、思いつきと勢いで買ってしまって、買ったからには作るかとなっただけでしかない。
「まず勢いでだろうと買っちゃうってのが凄いって。絶対買わねぇもん、俺なら」
 せいぜいフリーズドライとかお茶漬けの素とか、と言った相手は、自分よりも7日に七草粥を食べるということに関して、多少こだわっているようだ。今年も一応、お茶漬けの素は用意してあるらしい。
「でも独身男が一人で生の七草から七草粥作って夕飯に食う話とかしてんの聞いたら、絶対ご相伴に預かってやろって思うよな」
「そう聞くと、ただただ図々しいな」
「本音は、下心で家に上がってみたかった」
「本気なら、」
 ただただキモいなと続けようとして、けれど咄嗟に口を閉じた。口調は冗談っぽかったくせに、ふと見た相手の顔が、特にその目が、真剣そのものだったせいだ。
「本気なら?」
 静かに繰り返されて、一気に緊張感が増す。
「本気なら……」
 こちらも繰り返しながら、眼の前のこの男と交際したりの未来について、少しばかり考えてみた。
 何が何でもお断り、ってほどの嫌悪感はないような気もするけれど、そもそも同性との交際経験がない。異性との交際経験ですら、ほぼほぼないに等しいと言うか、学生時代に彼女と呼べる存在が居た時期が多少ある程度で、つまりは恋愛だのセックスだのは今の自分にとってあまり現実感がない。
「現実感なさすぎてイマイチ」
 大きくため息を吐いてそう正直に告げてやれば、相手はつまらなそうに口を尖らせた。
「何だよ現実感て。いまの、ちゃんと結構本気っぽい雰囲気出てたろ?」
「冗談丸出しだったら、ただただキモいって即切りだったわ。現実感がないってのは、今更誰かと付き合ったりっていう自分自身が想像しずらいって話」
「誰かと? 俺だから、っつうか男だからダメ、とかってわけじゃなく?」
「あー……同性とか、相手がお前とか、その辺はそんなでも」
「絶対無理ってことはない感じ?」
「まぁ、そう」
 マジか、と呟いて考え込んでしまうから、もしかしなくても本気の本気で、下心込みで来てたのかなと疑いの目を向けてしまう。全然、気づいてなかった。
「あー……まぁ、下心ゼロじゃなかったのは事実だけど、生の七草と生米から炊いた七草粥食いたかったのが一番で、お前とギクシャクしたり変に拗れたりで仕事に支障きたすのはめちゃくちゃ困る。と思ってる」
「それは同感」
 というわけで、とりあえずなかったことに、となったわけだけれど。その後、彼を多少なりとも意識するようになってしまったのは仕方がないと思う。

 
 
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確定、両想いな二人の大晦日とお正月

多分、両想いな二人の大晦日 の続きですが再度視点が変わっています。

 テーブルの上のお守りと鍵とスマホを見つめながら、どうしよう、と思う。
 どうしよう。めちゃくちゃ嬉しい。

 絶対一緒に年越しするぞって思っていたのに、預かった鍵を返したくない、なんて理由で訪問するのを躊躇っていたら、夕方向こうから来ないのかと連絡が来てしまった。冬至にもクリスマスにも押しかけたから、相手にも当然、大晦日だって押しかけてくるだろうと思われていたようだ。
 相手からのメッセージを見ただけで、なんで躊躇ってたんだろってバカバカしくなるくらい会いたい気持ちが膨らんでしまったから、用意していたお酒だけ持って急いで駆けつけてしまったわけだけど。
 相手はここ数日は大掃除と仕事しかしてなかったとか言うから、一緒に買い出しに行って、帰ったら何故か風呂を勧められて、部屋着を借りて、一緒に年越しはあっさりお泊り確定になった。
 クリスマスのときはダラダラ飲んで飲みすぎて、酔っぱらいを寒空に放り出すのは可哀想って理由で泊めてくれたんだと思ってたのに。大晦日は最初から、相手はこちらが泊まる前提で誘ってくれていたらしい。
 歩いて行き来できない距離じゃないんだから、今日は飲みすぎるなよって言えば済む話なのに。酔っ払う前に酒を取り上げてしまえばいいのに。
 そんな状況からスタートした大晦日の酒盛りは案の定飲みすぎて、結果、あっさり酔っ払った。
 酔って、絶対秘密と思っていた ”好き” をポロポロとこぼして、来るのを躊躇っていたのは鍵を返したくなかったからだってことも言ってしまった。
 相手は最初すごく驚いて、気持ちは嬉しいけどと言ったから、ああやっぱ振られるんだって思った。これで、最後の友人まで無くしてしまう。
 それだけは絶対避けたくて、必死に謝って、もう好きとか言わないし鍵もちゃんと返すから友達止めるって言わないでと泣きついたら、今度はひどく焦った様子で、そうじゃなくてといい出した。
 色々あった後で近しい友人が彼一人だから、そんな錯覚を起こしているだけだろう。そう言って、男を恋愛対象にしたことなんかなかったはずだし、傷が癒えたらまた彼女を作って次こそ幸せな家庭を築けよって、そう続いた言葉に、そんなの絶対無理だって言い返した。
 そんな未来、欠片だって望んでない。もう一度、一から人を信じて友人やら恋人やらを作る、なんて想定が、今後の自分の人生にはない。
 今現在、友人と呼ぶのも、好きだって気持ちが湧くのも、もっと一緒にいたいって思うのも、彼ただ一人なのに。彼まで無くしたら、今度こそ、一生引きこもり生活か、いっそこの世からサヨナラしたっていいくらいだと思っているのに。
 そんなことを言われて唖然とする相手に、再度ごめんと謝った。
 だってあまりに重い。重すぎる。そこそこ長い付き合いだけど、ただの友人でしかないのに。お前に捨てられたら死んでやるとも取れる、脅迫まがいのことまで言った。
 多分間違いなく飲みすぎた酒のせいなんだろうけど、必死過ぎて逆に空回りしてたと思う。でも酒のせいだろうと咄嗟の勢いだろうと、言ってしまった言葉は取り消せない。
 だから全部忘れてと言った。全部忘れて、今まで通りの友達でいて下さいって土下座して、あまりのいたたまれなさに帰ろうとした。
 それを引き止められて、実はゲイでと突然のカミングアウトが始まって、好きだなんて言われたら性対象として見てしまうという話をされた。恋愛感情やら性欲やらの下心満載で移住を勧めたつもりはないし、友人として支えられればと思った気持ちに嘘はないけど、下心皆無だったかと言われれば自信がないし、そんな気持ちがお前に錯覚を起こさせた可能性もあるんだぞと言われた。
 つまり実は両想いだったってこと? って聞いたら脱力されて、そうだな、って返す声はなんか呆れと諦めが滲んでたけど。そのくせどこか笑いを含んでもいた。
 そしてちょっと悪い笑みを浮かべながら、じゃあお前を性対象にしていいってことなんだなって言われて抱きしめられたときは、さすがにちょっと焦ったけれど。展開早すぎって思ったけれど。
 でも嫌悪感はなかったし、ゲイだって言うならこのまま身を任せておけばいいのかなって思ったし、実際そうした。
 まぁなんだか色々安心して、そこで寝落ちたオチがつくわけだけど。
 いやだって、飲みすぎてやらかした自覚はあって、酔って鈍った思考ではあったけれど、それでも彼との友情を繋ぎ止めようとめちゃくちゃ必死になっていたのだ。なのに実は両想いでした、なんて結果になって、触れてみたいなって思っていた相手の腕に優しく包まれてしまったんだから、安心しきって気も緩む。
 そして気づけば朝で、さすがに実家に顔を出してくるという相手と連れ立って家を出て、誘われるまま一緒に初詣に行って、お守りは人から貰ったものの方が効力が有るらしいぞなんて言われながら彼が買ったお守りを渡されて、その後別れて帰宅して今に至る。

”鍵返し忘れたんだけど”
”そのまま持ってていい。っていうかお前にやるよ。”
”それってお前の恋人になったから? そう思ってていい?”
”いい。”

 そんなやりとりが並んだスマホの画面を見つめながら、頬が緩んで仕方がない。
 ほんと、嬉しすぎてどうしよう。

やった! 元旦更新間に合いました!
この二人のお話はここで一旦終了です。

というわけで、改めて、明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
今年は正月更新が出来たので、新年の挨拶は雑記を書かずにここでの挨拶のみとさせていただきます。
お正月休みを挟んで、更新再開は 6日(月)の予定です。

 
 
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