知ってたけど知りたくなかった1

お題箱より「スレンダーな兄が、自分より体格が良い弟に襲われ、快楽に逆えず兄としての尊厳をへし折られる、的な短編。年齢差は3歳位」な話

 終電で帰宅した夜遅く、音に気をつけながら静かに上り終えたアパートの階段上で、ギクリとして足を止めた。
 自宅のドア前に座り込んでこちらを睨んでいた塊が、ゆっくりと立ち上がる。三歳下の弟だ、という事にはさすがにすぐに気付いたが、なぜここに居るのかはわからない。
「今日は、帰ってこないのかと思ってた。おかえり」
 掛けられた声は穏やかだけど、顔は不満げで怒っているようにも見えた。ポケットから取り出して思わず確認してしまった携帯には、やはり弟からの来訪を告げるような連絡はない。
「あんま脅かすなよ。めっちゃビビった。で、なんで、居るの?」
「ちょっと、今日中に確かめたいことがあって……」
 様子がおかしいのはあからさまだから、余程の何かを抱えているらしい。親のことか、就活か、大学関係か、バイト先関係か。別に相談に乗るくらいは構わないけれど、もう実家を出ているのだから、いきなり部屋に押しかけてくるのはどうなんだ。
「だとしたって、連絡くらいしろよ。週末だし、帰ってこないことだって、あるんだぞ」
 実家と同じノリで、帰ってきたなら話聞いてよと押しかけてくるには、今は互いの部屋の距離が有りすぎる。もう数歩で行き来できる隣の部屋ではないのに。
「ほら、入って」
 鍵を開けてドアを引き促せば、大人しく家の中に入っていく。勝手知ったるとばかりに暗い中をどんどん部屋の奥へと進んでいく相手を、廊下や部屋の明かりをつけつつ追いかける。
「今日はもう、帰ってこないのかと思ってた」
 テーブルセットもソファもない部屋なので、座る場所がそこしかなかった、というのはわからなくもないのだけれど、何の断りもなく部屋の奥に置かれたベッドに腰を下ろした弟が、疲れた様子で大きく息を吐く。会った最初も同じことを言われたが、どうやら、なかなか戻らない自分によほど焦らされていたらしい。
 連絡もなく来るからで、自業自得だ。でも、ギリギリ終電に間に合って良かったなと思う程度には、この勝手な弟の来訪を受け入れてしまっている。
「まぁ今日は、泊まりになるほど盛り上がんなかったからな」
「へぇ。てことは、今日一緒に居たのって、恋人とかではないんだ?」
「週末に恋人と過ごしてたら、間違いなく帰ってきてないだろ。良かったな、俺に恋人居なくって」
「そうだね」
 うっかりアパートの廊下で一夜を過ごさなくて済んで、という意味の自虐だったのに、相手はムスッとしていてそっけない。
「なぁ、お前、ホント、どうしたの?」
 自分もベッドに近づいて、真正面から相手を見下ろしてやる。弟といいつつ、とっくの昔に背を抜かれ、ずっと運動部だったせいか横幅だって下手したらひょろい自分の倍くらいありそうなので、いつもは見上げなければいけない相手を見下ろせるのはちょっとだけ気分がいい。
「兄ちゃんが聞いてやるから、話してみ」
 久々に兄貴風を吹かしている気分の良さと、相手の不機嫌さに釣られて、相手の頭に手を乗せてヨシヨシと撫でてやれば、じっとこちらを見上げていた目がゆるっと細められて、口の端が上がっていく。しかし、頭を撫でられて多少なりとも機嫌を良くするなんて、図体はデカくなってもなんだかんだ可愛いとこはある、なんて思ったのもつかの間、頭に乗せていた手を掴まれ引かれて慌てる。
「おわっ、ごめっ、え、ちょっ」
 前のめりに弟にぶつかった体はあっさり抱きとめられて、気づけばベッドに背中が付いていた。
「えっ……?」
 こちらをベッドに押さえつけるようにして上から見下ろしてくる弟の顔は、もちろん欠片も笑っていない。ジッと見つめてくる顔に焦るのは、そこに紛れもなく男の欲を感じ取ってしまったからで、早く逃げなければと思うのに、こんな体勢を取られて逃げられるわけがないとも思う。
 力で無理なら冷静に言葉で、とも思うけれど、焦る頭の中はヤバいだとかマズいだとかどうしようばかり浮かんでいて、相手を引かせる言葉なんて全く思い浮かびそうになかった。

続きました→

 
 
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前世の記憶なんて無いけど3(終)

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 眼下にしっとりとして膨らみの半減した尻尾が、戸惑うように震えている。付け根から毛並みに沿うように撫でてやれば、気持ち良さげな吐息をこぼしながら、後孔をきゅうきゅうと締め付けてくる。
「ぁ、ぁ、ぁあ」
「気持ちよさそ。そろそろ尻尾でイケんじゃない?」
 勝手にお尻振っちゃダメだよと言いながら、腰は動かしてやらずに、尻尾だけを何度も撫でた。
「や、ぁ、むり、むり、ですっ」
「そう言わずに、もーちょい頑張ろうよ。ねっ」
 しつこく尻尾を撫でながら、尾の先を持ち上げそこにペロリと舌を這わせた。
「ひっ、ぁっ、だめだめだめ」
 怯えた声音のダメを無視して、尻尾の先を咥えてちゅうちゅう吸ってやれば、びくびくと体を震わせてとうとう絶頂してしまう。
「ほら、できた。お前は本当に可愛いね」
「ぁ、……ぁぁ……」
 いいこいいこと褒めるように更に尻尾を数度撫でてやってから、ようやく尻尾を開放して相手の腰を両手で掴んだ。
「じゃ、尻尾でもイケるようになったご褒美タイムといこうか」
 好きなだけイッていいからねと告げて、ぐっと引いた腰を勢いよく叩きつける。
「ぁあああっ」
 相手の体が仰け反って痙攣し、敏感になっている体は、その一撃だけで軽く達してしまったらしかった。しかしもちろん、手を緩めてやるようなことはしない。
 そのまま激しく腰を振って追い詰めていく。
 相手の体のことは知り尽くしている。彼の性感帯を一から全て開発し、慣らし、躾けてきたのは、前世の自分と今の自分だからだ。一途な彼は、生まれ変わりを待つ間も、その体を誰にも触れさせずに来たらしい。本当に、どこまでも可愛い男だった。
 さて今日はあとどれくらい、人型を保てていられるだろうか。性も根も尽き果てて、人のカタチすら保てず晒すケモノの姿が、酷く愛しくてたまらなかった。
 なんせ、初めてその姿を晒させた時、それが引き金になって前世の記憶を取り戻したくらいだ。
 前世の記憶が戻ったせいで、その後しばらくあれこれと揉めたけれど、結果だけ言えば、恋人にはなれた。というか恋人どころか、指輪を与えて便宜上嫁にした。前世からの主従関係が生きている以上、相手はこちらに逆らえないのだから当然の結果だ。
 むりやり得た関係が虚しくはないのかと思うかもしれないが、そんなことは欠片も思っていない。
 記憶は戻ったが、自分たちの関係まで丸っと全て過去に戻ったわけじゃない。記憶が戻ったので、全くなんの力もないただの人の子、よりは多少マシではあるけれど、それでも、知識があるだけの大した力も持たないただの人の子だ。
 そこには以前あった柵はなく、あるのは、彼が延々と待ち続けてむりやり繋いだ二人だけの縁なのに。
 自分たちがツガイとなったところで、誰も咎めはしないだろう。事実、記憶が戻って、彼とツガイとなってからも、なんの干渉も起きていない。まぁ、様子見、という可能性も高そうだけれど。
「あぁ……ァぁ…………ハァ、ハァ……」
 布団の上に伏した体がとうとう狐の姿となり、目は閉じられ、開いた口から荒い息だけを漏らしている。覆いかぶさるように、しっとりと濡れた毛皮をギュッと抱きしめ、最後の一発を注いでやってからそっと繋がりを解いた。
 ホッとしたように息を吐いて、そのまま寝落ちてしまった体を、なんども優しく撫でてやる。
 いつの間にやら外はすっかり明るくなっていて、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。毛皮を撫でるのにあわせ、差し込んだ朝日の下でキラと相手の毛皮が光ったように見えたが、正確には光ったのは毛皮ではなく、毛皮に埋もれているチェーンのネックレスだ。
 こうして、人型が保てない程に抱いてしまう時があるから、指に通すことが出来ないだけで、そのチェーンには与えた指輪が通されている。毛皮の中からツツッとその指輪を引き出してやれば、まるで輝かしい未来を指し示してでも居るように、銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった。

 
 
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前世の記憶なんてないけど2

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 こんなはずじゃなかった、と思いながら、先程から飛び出している獣の耳に舌を這わす。
「ぁ、あっ、あっ」
 泣いているような声を上げていやいやと首を振るものの、おとなしく脚を開いて後孔を指で解されている相手は、こちらに脅迫されて仕方なく体を差し出している。
「ねぇ、耳、気持ちいいんじゃないの?」
 後ろキュッと締まったよと告げながら、もう一度耳へと顔を寄せた。逃げんな、と囁いてやってから、再度舌を這わせて、ちゅっとしゃぶりついて、はむと甘噛んでやる。
「ひ、ぁ、ぁ、ぁぁ」
 ふるふると体を震わせて、腸内に入り込んでいる二本の指をぎゅうぎゅうと締め付けて、細い悲鳴を上げながらも、こちらの命じた通り、相手は頭を振ることなく耳を嬲られ続けている。
 脅迫して相手の抵抗を奪ったのはこちらだけれど、肉体的な拘束など一切与えていない。なのに言葉一つでここまで従順な相手に、理不尽な怒りを感じてもいた。
 理不尽だと思える程度には理性があって、怒りの原因が嫉妬だということも理解できている。
 彼がこちらの言葉に従うのは、彼が前世の自分を崇拝レベルで愛しているせいだ。前世なんて未だ欠片も思い出せないし、彼の勘違いとか思い込みという可能性すらあるのに、間違えるはずがないと言ってそこは彼も譲らない。
 それならせめて、今の自分のことも、過去の自分と同じように愛してくれればいいのに。求めてくれればいいのに。
 はっきり明言されてはいないが、彼の話しぶりから、間違いなく、前世の自分とは体を繋ぐような仲だったはずだ。
 もう一度出会えた喜びと、尽くすのが嬉しくて仕方がない様子と、なにより自分に向かって真っ直ぐに突きつけられる好意に、勘違いしていた。今の自分のことも、好いていてくれるのだと、思っていた。自分とも体を繋いで想いを交わせるような仲になりたいのだろうと、思っていた。
 でもどうやら、違ったらしい。
 確かに、彼に直接そう望まれたことはなかった。記憶を思い出して欲しそうな様子はあったけれど、それすらさっさと思い出せなどと言われたことはないのだ。
 記憶がなくても傍に置いて貰えるだけで、少しでもお役に立てればそれだけで嬉しくて仕方がないと言われ続けていたし、恋仲になりたいとも、抱かれたいとも、一度だって言われていない。要するに、勝手に勘違いしていただけだった。
 せめてその勘違いに、もっと早く気付けていればよかった。いくら尽くしてくれると言っても、前世ではそういう仲だったとしても、男だし、人じゃないし、と迷っている内に気づいていれば、むしろ安堵しつつ、なんだそうかとあっさり引き返していただろう。
 つまりは、彼の好意と執着とに報いてやりたくて、彼を好きになる努力をしてしまったし、いろいろな覚悟まで決めてしまった。なのにいざその覚悟を示して関係を進展させようとしたら、そんなつもりはなかったと拒否されて、更には申し訳ないことをしたと頭を下げられ恐縮されて、今まで通りただ傍にいて世話を焼いていたいだけだなんて言われても、わかったなんて言ってやれるはずがない。
 結果、傍にいて役に立ちたいと言うなら、性欲処理にだって付き合うべきだと言ってしまった。

続きました→

 
 
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雨が降ってる間だけ

 ふと隣に気配を感じて集中が途切れる。気配に向かって振り向けば、長めの髪をひと結びに後ろに垂らした浴衣姿の青年が、そわそわもじもじ落ち着きのない様子でこちらを窺っていた。
「ああ、雨、降り出したんだね」
 コクンと頷く彼に、じゃあ寝室に行こうかと言って立ち上がる。予報では、降り出したらしばらく強めの雨が続くようだから、前回みたいに途中でお預けなんてことにはならないだろう。
 おとなしく数歩後ろをついてくる彼を寝室に招き入れ、ベッドの上に押し倒せば、先程よりも更に落ち着きをなくした男が、期待に顔を赤く染めている。
「雨が降るの、待ち遠しかった?」
 可愛いなぁと思いながら赤くなった頬をゆるりと撫でてやれば、やっぱりコクリと頭が縦に揺れた。
「前回、イキそびれたまま雨上がったもんな。今回は雨長引きそうだし、いっぱい気持ちよくなろうな」
 告げれば嬉しそうに笑って、早くと言わんばかりに両腕が首に回される。引かれるまま顔を寄せて、初っ端から相手の口内を貪るみたいな深いキスを仕掛けていく。
 慣れた様子で絡められる相手の舌を吸い上げながら、浴衣の合わせを広げて露出させた肌に手を這わした。弄り回した胸の突起が硬さを増したら、指先で摘んで押しつぶすように転がしてやる。
「んんぅっ……」
 ビクビクと体を震わせ、苦しげに、けれど甘ったるく、鼻に掛かった息が口端から漏れた。彼の体はすっかり自分に慣らされきっている。
 血走った目でこちらを睨み、部屋の中の物をあれこれ投げつけてきていた男が、まさかこんな変貌を遂げるとは思わなかったが、彼は長年抱えている何かが癒やされているようだし、こちらも充分に楽しんでいるし、ヤバイと噂の格安物件を問題なく利用できているしで、いい事づくしだと思う。
 つまり彼は、人の形をしているが、いわゆるこの家に憑いた、人ではない何かだった。言葉は通じるし会話も出来なくはないが、彼は彼自身のことを語らないので、幽霊のたぐいなのか妖怪と呼ばれるようなものなのか今ひとつわからない。
 ポルターガイスト現象の頻繁に起こる格安の一軒家を借りたのは、仕事柄金があまりなかったのと広めの作業スペースが欲しかったからだ。
 舐めて掛かっていたと後悔するのは早かった。なんせ、皿でも飛ぶのかと思っていたら、狙ったように仕事中に仕事道具ばかりが舞った。
 相手はこちらが心底苦痛に思う嫌がらせを心得ていると思ったが、いかんせん、引っ越しにも金が掛かるし、同じ規模の別の家を借り続けられる財力だって無い。
 そんなわけで、とある雨の日、仕事場で仕事道具をアチコチに移動させている不機嫌で不健康そうな和装の男を見つけた瞬間に、何だお前ふざけんなと喧嘩を売っていた。その姿を見た瞬間から、相手が人でないことも、ポルターガイストを起こしているのがコイツだともわかっていたが、得体の知れないものへの恐怖はなかった。和装だったり髪が長かったりはあるものの、見た目はごくごく普通の人の姿をしていたからかもしれない。
 まさか見えていると思わなかったらしい相手は心底驚いて、それから手の中のものをこちらへ投げつけてきた。額の端をかすめていったそれに、こちらの怒りのボルテージは上がっていったし、触発されるように相手もどんどんと険しい顔付きになった。
 手当たり次第、手に触れたものをこちらに向かって投げてくる相手に、飛んでくるものを避けたり払ったりしながら近づいていったのだが、だんだん怯えたような表情になっていくのが印象的ではあった。
 相手に触れられるほど近づいた後は取っ組み合いへと発展したが、なんというか、相手は思いの外非力だった。仕事場の床に押さえ込んで、仕事道具に二度と触るなと脅せば、なんだか透けるみたいに青い顔をして必死にイヤイヤと首を振っていた。なぜかそれに劣情を催し、気づけば男を犯していたのだが、さんざん仕事の邪魔をされたという思いがあったからか、相手が泣いて嫌がるほどに、胸がスッとするようだった。
 数度相手の中に射精したところで、色々と冷静になり、さすがにやり過ぎたと身を離す。息も絶え絶えに横たわる体は、人ならざるものとわかっていても、罪悪感が芽生える程度に人とそう変わらなかった。つまり、見知らぬ男をいきなり犯しぬいたような気持ちになって、内心慌てながら洗面所へ向かって走ったのだが、タオルやらを持って戻った時には彼の姿は消えていた。
 それからパタリと仕事道具が舞うような現象がなくなり、なんだかやらかした感はあるが一安心と思っていたのだが、代わりとばかりに何かの気配を感じるようになった。見えないが、彼がそばにいる。見張られている。そんな日々になんとも居心地の悪い気分を味わいながらも、やっぱり引っ越しはできずに居たら、ある日またふと彼の姿が目に入った。手を伸ばしたら普通に触れたのだが、触れられた彼はこちらに見えていることに気づいていなかったのか、やはり相当驚いた顔をした。その後、こちらの手を振り払って彼は逃げた。
 雨が降ると彼が見える、と気づくまでにも彼との攻防は色々とあったが、初回に犯したことをほぼ土下座で謝り、お詫びに優しくさせて欲しいと頼み込んでどうにか再度彼に触れるチャンスを手に入れた。その頃にはもうすっかり情がわいていたから、言葉通り思いっきりその体を甘やかしてやったのだが、結果的にはそれで彼に懐かれた。のだと思う。
 それ以来、雨が降ったら彼を抱いている。たまに最中に雨が上がってしまうアクシデントも起こるが、彼との関係は概ね良好だと思う。
「ぁ、っぁ、ぁん」
 控えめながらも連続的に気持ち良さげな声が漏れている。
「ここ、気持ちぃ?」
 聞けば素直に首が縦に揺れた。聞き漏らしそうなほど小さな声ではあるが、きもちぃと教えてもくれる。抱くほどに彼は可愛くなる。
 だんだんと仕事が軌道に乗り始め、多少金銭的な余裕も出てきたのだけれど、この格安物件生活を手放す気にはなれそうにない。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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スライムに種付けされたかもしれない

 たかがスライムなどと侮っていたのは認める。次から次へとどこからともなく集まってきた彼らの圧倒的な数と量とに屈するのは早かった。
 体中を彼らに包まれ身動きが取れない。辛うじてまだ、口と鼻は覆われていないため呼吸が出来ているが、それもきっとすぐに塞がれてしまうだろう。こんな所でスライム相手に窒息死だなんて情けないにも程がある。
 きつく閉じた瞼の隙間から悔しさに滲み出る涙は、目元を覆ってうごめく彼らのせいで流れ落ちることはなかった。
 そんな中、突如頭の中に声が響く。流暢とは言い難くノイズ混じりではあったが、その声は確かに、死にたくないか、まだ生きたいかを問う声だった。
「死にたくない。死にたく、ないっっ」
 近くに誰かがいるのかも知れない。もしかしたら助けてくれるのかもしれない。そう思って、必死に声を張り上げた。
『では……お前の、ナカ、を頂くが……それで、いいか』
 意味がわからなかった。ナカってなんだ。
 けれど迷う時間はない。それでいいから助けてくれと再度声を張り上げれば、体を覆っていたスライムたちの動きが変わった。けれどそれは、誰かが自分からスライムを引き剥がしてくれるといったような、期待していたものとは全く違う動きだった。
 服や防具の隙間を縫って、直接肌の上を這い出したスライムの感触に怖気がたつ。
「う、あっ、ぁあ……、な、なに、」
 戸惑い漏れる声に、ナカを頂くと言っただろうという声が頭に響いて、声の主が誰だったのかようやく気づいた。
 しかし気付いても、その現実をすぐには受け入れられない。スライムが人語を操るなんて聞いたことが無い。こいつらは最下等のモンスターで、いくら数が集まったってスライムは所詮スライムだろう。
 そんな風に混乱している内にも、スライムは次々服の下に入り込んでいて、体中を舐めるように這い回りながら広がっていく。ひたすらに気持ちが悪い。
「待てっ! まて、そこはっ」
 下着の中に侵入された段階で予想はできていたものの、とうとう尻穴にまでスライムが到着し、しかもグッグッと揉み込むように圧を掛けてくるから慌てた。とは言っても、拘束されきった体が動くはずもなく、必死で静止を望む声を上げる。
 もちろん、相手はこちらをすぐにでも殺せる状態にあるモンスターだ。こちらの意思などおかまいなしに、好き勝手出来る状況だ。
『心配、する、な』
 だからそんな言葉が掛けられるとは思っても見なかった。
『ナカに入れるのは、先だけ、だ、……お前を、壊すことは、しな、い』
 続いた言葉に諦めて体の力を抜いた。その言葉が本当でも、嘘でも、今更こちらに出来ることなんて何もないのだと、思い出してしまった。
 そうだ。ギリギリ生かされているだけのこの身に出来ることなんて何もない。受け入れるしかない。
 それでもやはり、黙って耐えることなんて出来なかった。
「あーっ、あーっっ、嘘、つきぃっっ、壊れ、っ、こわれ、るっ」
 このゲル状の生き物に「先」なんてあるわけがなかった。頭の中に響いた声によれば、先だけというのは一部だけという意味合いだったようだ。体全体を覆うほどに集まっている彼らにすれば、確かに「ほんの先っぽ一部分」なのかもしれないが、受け入れるこちらは既に限界を超えている。
 腹の奥深くまでパンパンに入り込まれて、それらがグニグニと腸内で蠢いているのが苦しくて気持ち悪い。
「むりっ、それ以上はむりぃっっ」
 奥の奥まで拡げるようにナカを揺すられ突かれ、鈍い痛みが広がっていく。
 痛い痛いと喚いて、もう無理だと泣いても、彼らの動きが緩むことはなかった。けれど、痛みを散らすように、ペニスへと纏わりついている彼らの一部が、快楽を送り込むべくそこを擦りあげてくる。腸内の一部も、同時に中から前立腺を捏ねていた。
「あーっ……あああっっ、イクっ、でるっっ」
 あっけなく頭の中が白く爆ぜる。けれどもちろん、それで終わりだなんてことはなかった。
 結局、何度イカされたかわからない。最終的には、尻の中を捏ねられる鈍い痛みすら快楽に取って代わられ、頭では依然として苦しくて気持ちが悪いと思っているのに、快楽にとろけた体はペニスを弄られることなく絶頂を繰り返していたように思う。
 曖昧なのは、最後の方には意識を飛ばしている時間も多かったせいだ。完全に意識を失くした後、いつまで続けられていたかはさっぱりわからない。
 意識を取り戻したときには周りにスライムの気配は皆無で、服の布地は幾分湿ったままではあったが、肌のベタつきなどは皆無だった。服も防具も多少の乱れは残るもののしっかりと纏ったままで、スライムに尻穴を犯されたなんて、随分とたちの悪い夢を見たと思えたなら良かったのに。
 あれが夢ではなかったことは、体が覚えている。腹の奥に、甘く鈍く疼くような感覚が残っていた。
 それでも、やがて記憶は薄れていくだろうと思っていた。
 もちろん、二度とあそこには近寄らないし、スライムだからと油断することだってしない。けれど何をされたかまで記憶にとどめる必要はない。
 なのに、自分の体の変化に、否が応でもあの日のことを繰り返し思い出す。ナカを頂くの意味も、どうやら尻穴を犯すなどという単純な話ではなかったらしい。
 あれ以来、一切便意がない。そして少しづつ腹の奥で何かの質量が増している。しかもそれは時折かすかに蠢き、あの甘く鈍く疼く感覚を引きおこした。
 自分腹の中で、たぶんきっと、あの日のスライムの欠片が育っている。

お題箱から<先っぽだけと言われて少しだけ中にはいるのを許したら最後まで突っ込まれて食べられちゃう話>
お題箱に頂いていたお題はこれで最後です。全6個、どれも楽しく書かせていただきました。どうもありがとうございました〜

 
 
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タチ予定だったのにネコにされた2(終)

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 相手は中のクリームを少しばかりすくい取ると、クリームの乗った指先を強制的に開かれている足の合間へと伸ばしてくる。
「ううっっ」
 指先がアナルに触れた瞬間、ぞわわと鳥肌が立って呻いてしまった。しかしそんなこちらの反応に構うことなく、アナルの中へとクリームを運んでいく指の動きに躊躇いはない。
「おっ、前……どーゆー、つもり、だ」
「どーゆーつもりもなにも、ここまでしといて、お前を抱く以外の何かがあると思ってんの?」
「なんでっ、俺がっ、抱かれる側なんだよっっ」
 もし今後そういう事までするような深い仲になったとして、抱くのと抱かれるのどっち側が希望かという話を振られた時に、絶対に抱く側と主張しておいたのに、あの確認の問いかけはいったい何だったのか。しかもあの時、わかったって返してきただろう。
 そもそも告白したかった相手とでさえ、自分が抱かれる側での妄想なんてしたことがないのに。自分でケツ穴を弄ったこともなく、正真正銘まっさらな処女穴だっつーのに。なんの覚悟もなく、他人の指を突っ込まれて媚薬クリームなんてものを塗りたくられている現実を、そう簡単に受け入れられるはずがない。このままこいつに抱かれるとか冗談じゃない。
「だって抱く側がいいって言いながらも、ずっと手ぇだしてくれなかったから。俺には抱かれたくないってだけで、本当は抱かれる側が良いのかなっていうか、まぁ、考えてみたらそっちのが自然って気もしたし」
「まてっ。待て待て待て」
 必死で待てと繰り返したら、話を聞いてくれる気になったのか、中に埋まった指の動きも止めてくれた。正直ホッとして、小さく安堵の息を吐く。
「反論ある?」
「あるに決まってんだろ。何がそっちのが自然な気がする、だ」
「じゃあもしお前と付き合ってるのがさ、」
 続いた名前に息を呑む。まさか本命の友人の名前が、その口からこぼれ出るとは思わなかった。
「お前が本当に好きなの、あいつでしょ」
「な、んで……」
「本当は誰を好きかなんて、ずっと好きで見てた相手なんだから、わかるに決まってるだろ。というかお前、あんま隠せてなかったから、あいつ含めて皆知ってたよ」
「は? マジか」
「マジで。でもあいつはお前の気持ちには応えられないってはっきり言ってたし、だったら俺が落としてやれって思って、皆に協力頼んだの。お前はまんまと俺たちに乗せられて、あいつに告白したはずが、なぜか俺に告白したことになってた上に俺の恋人にさせられたわけ」
「ひでぇ」
「でも結構前からお前を好きって思ってたのは本当だから。お前が俺を抱けないなら、俺がお前を抱くわ」
「いやいやいや。今ちゃんと勃ってんじゃん。お前が抱かれる側でいいなら抱くから抱かせろ。つか抱かれるとか無理だから」
「そんなに俺に抱かれるのは嫌なの?」
「相手が誰でも抱かれるのは嫌なの」
 そこでもう一度本命友人の名前を出されたが、今度ははっきりと、抱きたい方向で好きだったと言い切ってやった。
「本気で言ってんの?」
「本気ですけど。つかもう今さらだから言うけど、俺が抱きたいのはああいうタイプ」
「マジか」
 本気で相当驚かれたみたいだけれど、気持ちはわからない事もない。だってあいつは俺よりガタイも良くて男臭くて、どう考えても押し倒して喘がせたいってより、お願い抱いてーって方がしっくりくる。反面、目の前の相手は決して男臭いタイプではなく、雰囲気だって男にしては随分と柔らかで優しい。体の線だって随分と細く、女のようだとまでは言わないが、こうやってこちらにのしかかっているような現状には思いっきり違和感があるし、むしろ組み敷かれてアンアン喘いでいる姿のほうがイメージしやすいだろう。
 ただ、一般的にそうだろうという判断はできるけれど、自分の好みが一般的じゃないので、組み敷き喘がせたいのはこいつではなくあいつってだけだ。
「マジで」
 はぁああと大きくため息を吐かれたので、ようやく諦める気にでもなったかと思ったら、埋められていた指がグニグニと中を擦りだすから焦る。
「ちょ、おま、やめろって」
「いやもうどうでもいいわ」
「どうでもよくねーって。ヤダヤダやめろ。俺を抱こうとすんなよ」
 ちゃんと抱いてやるからと言ったら、フンッと鼻で笑われてしまった。
「お前が今勃ってんの、結局はクリームと前立腺刺激のおかげだろ。全く好みじゃない俺を、お情けで抱いてくれる必要なんてないね。それよりこのまま、抱かれたくないって言いながらもきゅんきゅんケツ穴締めまくって喜んでるここ可愛がって、俺に抱かれる気持ちよさを叩き込んでやる方が建設的っぽい」
 優しく愛してあげるから任せてなどという、全く嬉しくない言葉とともにその後も散々嬲られて体はあっさり陥落した。媚薬クリームとか卑怯すぎだろ。くっそ気持ちよかった。
「あいつを抱きたい方向で好きだったってなら、俺がお前を抱きたいと思っても、なんの不思議もないと思うんだよね」
「ソウデスネ」
「怒ってる?」
「イイエ」
「またしていい……よね?」
 する気満々なくせに、こっちの反応を窺うような聞き方はヤメロ。
 ぎろりと睨みながらも黙って頷いてやれば、相手は幸せそうに笑ってみせた。

お題箱から<友人に恋してたタチ側のはずの男が違う男によってネコにされるギャグ話>
ギャグとかどう書いていいかさっぱりわかりません。てわけでこれが限界です。

 
 
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