雄っぱいでもイケる気になる自称ノンケ2(終)

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 訪れた部屋の中は筋トレグッズと思しきものがアチコチに置かれていた。なんとなくイメージ通りの部屋と言えないこともない。あのムキムキした筋肉は彼の努力の賜物だ。
 しかし、喜々としてそれらのグッズ説明が始まってしまったのは、正直苦痛でしかなかった。だって筋トレになんてまるで興味が無い。
 なのにあまりに楽しそうに語る顔がなんだか可愛くて、結局遮れずにうんうん頷きながら聞いてしまう。
「先輩が興味あるのは胸筋ですよね」
「あー、まぁ、そうだね」
 おっぱい星人ですもんねと笑われて苦笑を返すしかない。
「一般家庭にあるもので鍛えるとすると、やっぱり椅子とか使うのがいいと思うんですよね。背もたれ付きでしっかりしたのが2個あると便利ですよ」
 どうやら壁際に不自然に並んだ頑丈そうな2つの椅子も、筋トレグッズの一つだったらしい。それらを部屋の中央へと移動させて、椅子に手を乗せるのと椅子に足を乗せる二通りのやり方で、何度か腕立て伏せをしてみせた。
「もっと高負荷なやり方もありますけど、最初はこれでいいと思います。ちょっとやってみます?」
「は? や、ちょっと待って。俺は別に自分に筋肉つけたいわけじゃないから」
「ええっ!?」
 あまりに驚かれて、むしろこっちが驚きだ。お互いに驚愕顔で見つめ合うこと数秒、先に口を開いたのは相手の方だった。
「え、あの、筋トレのやり方が聞きたいって話じゃ……?」
「はぁあ? 俺は一言もんなこと言った覚えねぇけど?」
「おっぱい星人、なんですよね?」
「それは否定しないけど、それと俺が筋トレすることの繋がりがまったくわからん」
「自分に筋肉付ければ、いつでもおっぱい触りたい放題ですよ?」
「待て待て待て。自分の胸筋鍛えて、おっぱい触った気分漫喫とかねぇよ。てか鍛えた筋肉とおっぱいじゃ全然違うだろ!?」
「あ、そういや触って貰ってなかったですね。やっぱり直に揉んでみる方がいいですか?」
「は?」
 こちらの返答を待たず、相手はさっさと着ている物を脱ぎ捨てて、上半身裸になってしまう。
「どうぞ。触ってみてください」
 自信満々の笑顔が眩しい。そんな堂々とした態度に気圧されつつも、待たれて仕方なく手を伸ばす。
「え……っ」
 手の平に触れる相手の胸の柔らかさに、思わず戸惑いの声が漏れた。日々想像していた女の子のおっぱいと遜色ないどころか、あまりに気持ちの良い手触りと弾力に、すぐさま夢中になる。
「どうですか?」
「なにこれ、……マジでこれ、筋肉?」
「そうですよ」
「ええええ嘘だろ。なんだこれ。柔けぇ~」
 そこにあるのは自分の知る筋肉とはまるで別物だったが、なんだかそんなことはどうでもいい気になってくる。たまらずもう片手も相手の胸に伸ばして、両手の平でむにゅむにゅと揉みしだいた。
「ちょ、先輩……揉みすぎですって!」
「待って。もうちょっと揉ませて」
「さすがおっぱい星人、見境ないっすね」
「わかってんならちょっと黙って」
 ふわふわ柔らかな肉の塊を堪能する中、男の声で邪魔されたくなかった。諦めたような溜息の後静かになったので、思う存分モミモミし続けていたら、やがて胸の先が小さく尖って手の平にかするようになる。
「んっ……」
 その小さな突起を手の平で揉み込むと、鼻にかかった甘い吐息が聞こえてきた。
 胸を揉み込む自分の手ばかり見ていた視線をあげれば、頬を上気させた男が、戸惑いを色濃く乗せながら見つめ返してくる。
「ひゃあっ、んんっ」
 その顔を見ながら、今度は突起を指先で摘んで転がしてみたら、随分と高い声が上がってビックリした。驚いたのと同時に、興奮が増すのを自覚する。
 自分の上げた声にやはり驚いたらしい相手が、慌てて自らの口を手で抑える様が可愛らしいとすら思う。
「なぁ、舐めてみていい?」
 首を横に振られたけれど、構わず突起にむしゃぶりついた。
「ちょ、ダメダメやめてっ」
 大きく体を跳ねた後、そんな言葉とともに、相手の手が肩にかかって思い切り引き剥がされる。もちろん筋力に差がありすぎて、相手の力を無視して続けるような真似はできっこない。
 さすがにもっととは言えず、気持ちを落ち着けるように一度深く息を吐き出した。しかし興奮はなかなか冷めていかない。
「なんか……色々凄かった……」
 感触を思い出しながら、恍惚の境地で言葉を漏らせば、何故か相手が俺もですよと返してくる。
「雄っぱい揉ませてってのは結構あるけど、ここまでしてきた人って、先輩くらいですよ。おっぱい星人なめてました」
「いやだって、お前の雄っぱい凄すぎ」
「じゃあ、先輩も筋トレ始める気になりました?」
「なんでそうなる」
「女性のおっぱい並に柔らかい筋肉が作れるなら、筋トレしてみたいって話でしたよね?」
「だから、そんなの一言足りとも言ってないって。俺は、俺相手にもおっぱい揉ませてくれる新入生が居る、って聞いて来ただけだ。男だなんてことも、お前が来るまで知らなかったよ」
 なんとも微妙な顔をされて、さすがに可哀想になってきた。勝手にビッチと思い込んでいたのも申し訳ない。彼は人の良い筋トレマニアなだけだった。
「まぁ、お互い良いように騙されたってことで。でも悪かったな。俺のダチが妙なこと頼んで。アイツのことは俺がきっちりシメとくからさ」
 厚意を踏みにじってしまう形になって、なんとも後味が悪い。それでも彼との関係は、その日限りで終わるはずだった。
 けれどあの柔らかな雄っぱいの感触が忘れられなくて、うっかりそれをネタに抜いてしまってからは、どうにも気になってたまらない。その結果、お近づきになるには自分が筋トレを始めるのが手っ取り早く、人の良い彼の厚意に甘えまくって、一緒に筋トレをする仲になるのは早かった。
 たまに揉ませてもらう雄っぱいはやはり最高で、なんだかもう男でも全然良い気がしているのだけれど、相手の純粋な厚意を思うと告白は未だ出来ずに居る。

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雄っぱいでもイケる気になる自称ノンケ1

 自他ともに認めるおっぱい星人な自分は、常日頃男同士の猥談でおっぱいの魅力について語りまくっていたが、それと同時に、彼女居ない歴を着々と更新しつつある童貞だということも周りに知られまくっている。
 自分のモテ期は第二次性徴が来る以前の小学校半ばくらいまでで、当時どころか幼児期からおっぱい星人を自覚していた自分は、胸の膨らみのない女子になどまるで興味がなかった。子供の自分に、将来胸が大きくなるだろう女子と取り敢えず懇意にしておくなどという社交性はなく、それどころか女の価値はおっぱいにあるだとか、胸がでかくなってから出なおせだとかの直球をぶつけてお断りしたせいで、女子から総スカンを食らう結果になった。
 マズイことをしたと認識したのは、まわりの女子の胸が立派に育ちだした中学入学以降で、遠方の私立校に逃げられるような経済的余裕など我が家にあるはずもなく、そのまま近くの公立高校へ大半の同級生と共に進学するしかなかった結果、最低男の烙印は剥がれることなく今も付いてまわっている。
 後悔はしてもしきれないが、開き直る気持ちもあって、おっぱい星人としての道を邁進中だ。
 そんな中、友人の一人が、お前におっぱい揉まれてもいいってヤツが居るけどと言い出した。今年の新入生らしい。
 なんせ小学校時代からの悪評で、同級生どころか上級生や下級生にも要注意おっぱい星人として知られているから、そんな奇特な子が居るなんて驚きだ。というか、取り敢えずお試しでお付き合いしてくれるとかではなく、いきなりおっぱい揉み放題だなんて、どんなビッチだ。
 しかしビッチだろうがなんだろうが、そんなチャンスを逃せるわけがない。
 ぜひ会いたいと食らいついた自分に、友人は満面の笑みを見せたが、その笑みの意味を知るのは早かった。
 相手の新入生は自分を知っているようで、友人が指定したファミレスで待つこと15分。現れたのはやや小柄の、ただし筋肉をムキムキつけた男だった。
 迷うことなく、初めましてと挨拶してから、向かいの席に相手が座る。
 コミュニケーション能力が異様に高いのか、単に空気が読めないバカなのか、意気消沈しまくりの自分に怯むことなく、相手はニコニコと自己紹介を始めた。
 野球部と聞いて、なるほど友人の部活の後輩かとは思ったが、きっと野球部でもこの後輩を持て余しているのだと納得する。男におっぱいを揉ませたがる変態が、男だらけの部活に入ってきたら、そりゃ自分たちの身に害が及ぶ前に誰かに押し付けたくもなるだろう。
 男になんて興味ねーよ、せめて女になってから出なおせ。などと直球をぶつける愚弄を繰り返す気はさらさらないが、さてどうしたものか。にこにこと悪意のかけらもなさそうに笑う新入生の男を前に、なるべく傷つけずにお帰り願う方法を考える。
 しかしどれだけ考えた所で、良い案が浮かぶわけもなかった。
「あー……じゃあまぁ、取り敢えず、胸揉ませてくれ」
 考えるのも面倒になって、おっぱい星人ならおっぱい星人らしく、相手が男だろうと揉まれたい奴の胸は揉んでやろうと口にする。
「すごいっすね。本当におっぱい星人だ」
 何がツボだったのか、新入生は楽しげに笑った後、いいですよと言って更に続ける。
「場所はどうせならウチの部室か、後はやっぱ俺の部屋ですかね」
「お前の部屋だな」
 どうせならで部室という選択肢が出るところが怖すぎる。そう思いながら即答すれば、新入生はわかりましたと答えて立ち上がる。気が早いと思いながらも、抵抗する気もなく後を追った。

続きました→

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草むらでキス/戸惑った表情/抱きしめる/自分からしようと思ったら奪われた

 中学生になる前は、毎年夏休みに半月ほど、母方の田舎に遊びに行っていた。毎年通っていたから、祖父母の家の近所の子供たちとも顔見知りで、滞在中は色々と遊びに誘って貰っていた。
 その子は確か自分が小学3年頃から見かけるようになったと思う。自分と同じように、夏の間だけその地へ遊びに来ていたようだった。
 すぐに自分とも周りの子供達とも打ち解けて、一緒に遊ぶようなったその子は1つか2つ年下だったせいもあってかとても小柄で、柔らかくどこか照れくさそうに笑う顔がなんとも可愛く、守ってあげたくなるような雰囲気を持っていた。
 間違いなく男の子ではあったけれど、彼に惹かれていた男子は自分の他にもたくさん居たはずだ。誰にでも優しく聡明だった彼は、もちろん女子からの受けも良かった。
 たった2週間でお別れになってしまうのが本当に悲しくて、彼が滞在する期間中ずっと遊べる地元の子たちがとても羨ましかったのを覚えている。
 あれは彼と出会って3回目の夏で、そこで夏休みを過ごした最後の年だった。
 どういう状況で彼と二人きりになったのかはもう思い出せない。
 天気の良い日で、ギラギラと輝く太陽が照りつける中、彼と二人で草原を歩いていた。暑さに加えて二人きりという状況に、テンションが上がりすぎて少しおかしくなっていたのかも知れない。
 唐突に、告白しなければという気持ちが沸き上がった。言うなら今しかないという焦燥にかられて立ち止まったものの、好きだという単語はなかなか口に出せなかった。
 突然立ち止まって黙りこくったまま動かない自分に、相手は戸惑いの表情でどうしたのと問いかける。言葉は出ないのに、焦るあまり体が動いて、気づけば相手を抱きしめていた。
 抱き返してくれたのは、具合が悪いと思ったからだろう。こちらを心配する言葉をいくつも掛けられたが、違うと首を振るので精一杯で、やはり好きだとは言えない。
 結局しばらくそうして抱き合った後、どうにも出来なくて体を離した。色濃い戸惑いに興奮と羞恥とを混ぜた様子で、頬を上気させる彼の顔はいつもと違う色気のようなものがあって、頭の中がクラクラと揺れる気がする。
 引き寄せられるように顔を近づけたら、彼の腕がスルリと首に掛かって、伸び上がってきた彼の顔がグッと近づき唇が触れた。彼から触れてこなくても、あのままなら自分から触れていただろう。
 それが自分のファーストキスであり、彼が自分にとっての初恋相手だ。
「ってこんな話、面白いか?」
「ええ。とても興味深いです。結局自分から告白できず、キスも出来ず、奪われたってあたり、先輩、あまり成長がないですよね」
「うるせぇっ。お前がバリタチってのが詐欺なんだよ」
 バイト先の後輩に、貴方が好きなんですと言われてOKしたのは、その後輩と初恋の男の子がどことなく似ていたからでもあった。男にしてはやや小柄で、笑うと可愛くて、なんとなく世話を焼きたくなる感じが似ている。
 初恋が男だったせいか、恋愛に男女のこだわりがあまりなく、男とも女とも付き合って来た。けれど基本的には可愛くて守ってやりたいタイプが好きだったので、男が相手でも抱いた経験しかなかった。だから当然、後輩のことも自分が抱く気まんまんで部屋に誘ったのに、気づいたら自分が押し倒された挙句、にっこり笑って「ごめんなさい。バリタチなんです」と来たもんだ。
 まぁ流されて抱かれてみれば、それなりに良くされてしまったというか、バリタチを公言するだけあって多分自分よりも上手いと思う。やり終えた後に、ファーストキスがいつだったかなんて事をしつこく聞いてくる、情緒のなさはどうかとも思うけれど。
「昔も今も、まごうことなく狙われてるのに、自分が食われる方だって意識がないって方がどうかと思いますけど」
「あの子が俺を食おうとしてたみたいな言い方すんな」
「当時から隙あらば食おうとしてましたよ。というか分かってないみたいですけど、その子、俺ですからね?」
「はあああっっ!?」
「うわっ、声でかいですって」
「でかくもなるわ。てかマジなのか?」
「本当ですよ。先輩、その子の名前すら覚えてないでしょ。こっちは名前ですぐわかったのに」
「あー……すまん。なんとなく似てるような気はしてた」
 言えば、調子いいこと言っちゃってと呆れた声が返された。

有坂さんにオススメのキス題。シチュ:草むら、表情:「戸惑った表情」、ポイント:「抱き締める」、「自分からしようと思ったら奪われた」です。
https://shindanmaker.com/19329

 
 
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好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう

 自分がどちらかと言えば女性よりも、同性である男性を好きになる性癖持ちだということは自覚していたが、同性の恋人を持ったこともなければ、男と体だけの関係を結んだこともない。興味はあったが好奇心よりも不安が大きかったせいだ。
 女性とはできないというわけではないが、それも若さで持て余し気味の性欲のなせるわざだったのか、就職して数年、仕事に慣れ面白く感じるようになるにつれ、とんとそんな気にはなれなくなった。
 自慰で充分と思う気持ちと、年齢的にそれはちょっと寂しいのではと思う気持ちとの間で揺れる。そんな状態だったので、相手が男ならまた違った気持ちが湧くのだろうかと、きっと不安よりも好奇心が若干勝っていたのだろう。
 都内への出張が決まった時、その好奇心が爆発した。それで何をしたかといえば、ゲイ専門の性感マッサージへ、意を決して予約を入れた。
 お金を払いこちらが客としてサービスされる側というのも、口でのサービスも、当然本番行為もないというのが、安心に繋がったというのもあるかもしれない。
 サイトのプロフィールからたまたま目についた同じ年のスタッフを指定し、当日、予約時間より少し早めに店に着けば、そのスタッフが自分を迎えてくれた。
 サイトでは顔にモザイクのかかっていたが、実際に会った瞬間、思わず息を呑んだ。今現在、ほんのりと好意を抱いている自覚がある直属上司に、顔や雰囲気がよく似ていると思った。
 知り合いに凄く似ててと言いながら動揺を滲ませてしまったせいか、急にスタッフの変更は出来ないと、随分と申し訳無さそうに言わせてしまった。キャンセルするかと問われて慌てて首を振る。指名したスタッフが思った以上に好みだったから、なんて理由で帰るはずがない。
 こういった店どころか男との経験皆無というのは予約時に伝えてあったが、再度、通された個室でそれを伝えれば、今日は是非楽しんでリラックスしていって下さいと柔らかに笑われホッとした。
 促されるままシャワーを浴びてから施術用のベッドに横になる。
 似ていると思ったのは顔や雰囲気だけではなく、特に指がすっと綺麗に伸びた手の形がそっくりなのだと気づいていた。この手に今からマッサージを、それも性感を煽る気持ちよさを与えられるのだと考えただけで、恥ずかしいような嬉しいような興奮に襲われる。
 まずは普通のマッサージからで、緊張を解すようにアチコチを揉まれながらの軽い世間話に、緊張やら警戒心やらはあっという間に霧散していた。こんな仕事を選ぶくらいだから、相手の話術は相当だったし、自分も別段人見知りするタイプでもない。
 気づけば気になる上司の事までペラペラと話していて、似ている知り合いがその上司だということも言っていた。
「じゃあ俺、好みドンピシャってことじゃないですか」
 嬉しそうな声が降ってきて、そうだよと返す。
「嬉しいなぁ。あ、でも、そこまで似てるなら、その上司の方の手と思ってくださってもいいですよ?」
「ええっ、さすがにそれは君に失礼でしょ」
 なんてことを言っていたのに、初めて男のツボを知り尽くした同性の手で性感を煽られまくった結果、何度も繰り返す絶頂の中でその上司の名を呼んでしまった。
「ご、ごめん」
「良いって言ったの俺だよ。ほら、気にしないで、もっと気持ちよくなってご覧」
 ハッとして謝ったが丁寧語を捨ててそう返され、オマケとばかりに、上司が自分を呼ぶ時と同じように苗字に君付けで呼ばれて、錯覚が加速する。
 どちらかと言えば自分は性に淡白な方だと思っていたのに、短時間に驚くほど何度も絶頂に導かれてしまった。
 帰り際、また指名しても良いかなと躊躇いがちに問えば、笑顔でぜひと返される。
 これは癖になりそうでヤバイかもしれないと思う気持ちと、週明けに上司の顔がまともに見れるだろうかという不安に揺れながら帰ったけれど、出張も何もないのに次の予約を入れてしまったのはそれから一ヶ月ほどの事だった。

有坂レイへの今夜のお題は『好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう』です。
shindanmaker.com/464476

 
 
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淫魔に取り憑かれてずっと発情期

 壁に手をつき尻を突き出しながら、熱を持った固い楔に尻穴を穿たれると、心に反して自身の熱も昂ぶっていく。発情しきった体は慣れてしまった行為に明確な反応を示すのに、こんなことは望んでいないと反発する気持ちが抑えきれない。
「ぁっ、んぁっ、やぁあっ」
「こんなぐちゃぐちゃのトロトロにして腰振って誘って、何がやぁあだ」
 背後でフンッと鼻で笑った相手は、容赦なくガツガツと尻穴の中をえぐってくる。多少乱暴に突かれても、たまらない快感が体の中を走り抜けていく。なんてイヤラシイ体だと、惨めな気持ちで泣きそうになった。
「何泣いてんだよ。気持ち良すぎってか」
 耐えられず何度かしゃくり上げれば、下卑た笑いが響いて今日の相手はハズレだなと思う。
「すっげ良さそうだもんなぁ」
 淫乱ケツマンコだなどと揶揄い混じりに告げながら、随分と自分勝手に好き放題に腰を振ってくる相手に、こんな体じゃなければ絶対に感じないのにと悔しさがこみ上げた。
「あっ、あッ、もイくっイッちゃう」
 こんな場合はさっさと終わってしまうに限る。
「ほら、イけよ」
「んっ…んっ……あぁっイッてっ……お願い、一緒にイッてぇ」
「はっ、えっろ。だったらもっとケツ締めな」
 パアンと乾いた音が響いてお尻にジンと痺れる痛みが走った。
「はぁんんっっ」
 なのに口からは甘い響きが迸る。実際、痛みと快感は背中合わせに存在している。
「叩かれても感じんのかよ。まじドMだな。おらもっと感じろよ」
 パァンパァンと続けざまに尻を叩かれて、そのたびにあっアッと甘い息を零しながら、相手の望みに応えるように肛門を締めるよう力を込めた。
「はぁっ、良いぞ。イくっ」
 一段と激しい律動の後、体の奥にドロリと熱が広がっていく。結局こちらの熱は置いてきぼりだが目的は達成だ。
 次回を誘う相手の言葉に適当な相槌を愛想よく振りまきながら、この近辺で相手を漁るのはこれで最後かなと思う。自分本位で下手くそなセックスも嫌だが、何より執着されるのが困る。下手な奴ほど執着傾向にあるから、その点から言ってもコイツは要注意人物だ。
 また別の場所を探すのもそれはそれで面倒だが仕方がない。今日のうちにもう一人くらい探したいところだけれど、次はどこへ行ってみようか。
 じゃあねと名残惜しげな相手に別れを告げてその場を後にする。
「おい、居るんだろ」
 歩きながら携帯でハッテン場と呼ばれる場所を検索しつつ、何もない空間に語りかけた。
『居るよぉ』
 声は頭のなかに響いてくる。
「あんま変なの引っ掛けてくんなよ。もうあそこ使えないぞ」
『なんでぇーそんな気にする事なくない?』
「いやアレは面倒なタイプだろどう見ても。だからもっと紳士的でセックス上手いヤツ連れて来いって」
『叩かれて喜んでたくせにぃ』
「何されたって感じる体にしたのお前だろ。あんなのまったくタイプじゃないから」
『ああいうタイプのがさっくり誘われてくれて楽なんだよねぇ。ナマ中出しにも抵抗薄いし』
「だからそこ手ぇぬくなって言ってんの」
『優しくされたらそれはそれで泣いちゃうくせにぃ』
「煩いな。誰のせいでこんな目にあってると思ってんだ」
『ボクのためってわかってるし感謝もしてるよぉ』
 声の主は、100人分の精子を集めるための任務に、女でも男に抱かれたいゲイでもない人間に取り憑いてしまうような、アホでドジで迷惑極まりない自称淫魔だ。100人の相手に中出しされるまで、この体はずっと発情し続けると言われ、実際抜いても抜いても治らない体の熱に、泣きながら初めて男に抱かれたのは二か月近く前だった。
 中出しされるとしばらくの間は体の熱が治まるけれど、それもせいぜい二、三日程度でしかない。おかげで一切そんな性癖がなかった自分が、嫌々ながらも日々男に抱かれて相手の精子を搾り集めている。
 精子を注がれるために発情している体は、男に何をされても基本気持ちが良いと言うのが楽でもあるし、切なく苦しくもあった。
 そんなこんなで、半月くらいはこの現状を呪って泣き暮らしたけれど、そのあとは開き直って積極的に男を漁っている。さっさと100人斬りを達成して、こんな生活とおさらばしたい。
 相手は自称淫魔がその場で適当に見繕ってくれるが、基本アホでドジなので、オカシナ男を連れてくることも多々あった。こんな自分に取り憑いたくらいなので、特に相手の性癖を見抜く力が低いらしい。
 どうやら自分に取り憑くのと似た方法で相手をその気にさせるようだが、その効力は相手が精を吐き出すまでしか持続しないから、ノンケを引っ掛けてきた時は色々と面倒だった。そういう意味では、事後に次の誘いを掛けてきた今日の男は、自称淫魔的には当たりなんだろう。
 わざわざハッテン場まで出向いているのだから、それくらいは当たり前にこなして欲しいし、出来ればこちらへの気遣いもある、セックスの上手い奴を探して連れて来て欲しい。けれどそんな大当たりは、今のところ片手で足りる程度しか記憶に無い。
『ごめんねぇ』
 大きくため息を吐いたら、申し訳無さそうな声音が頭に響いた。
「謝罪はいいから次行くぞ次。次はもっとマシなの引っ掛けてこいよ」
 本当に、早い所100人に抱かれて、こんな日々をさっさと終わりにしようと思った。

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女装して出歩いたら知り合いにホテルに連れ込まれた

 そいつは友人の友人の友人で、顔くらいは知っているが、たいして話をしたこともない相手だった。そんな相手に街中で声をかけられた時は女装がバレたのだと思って焦ったが、どうやらそうでもないらしい。
 めちゃくちゃ好みのタイプだと言って、躊躇いなく可愛いねと笑ってくるから、なんとなくの好奇心でお茶くらいならしてもいいと返した。
 友人の友人の友人ではあるから、バレた時のリスクは高い。けれど最悪罰ゲームとでも言えば良いと思ったし、女装男にそうと気付かずナンパを仕掛けた相手だって相当の恥辱だろう。
 相手は自分と違って割といつも人の輪の中心に居るようなタイプだけれど、納得の会話術でどんどんと相手の話に引き込まれていく。人を気分よく動かす術にも長けているようで、どう考えたってマズイのに、気づいたらラブホの一室に連れ込まれていた。
 なぜオッケーしてしまったのかイマイチわからない驚きの展開だったが、逆に、こうして女性をホテルに連れ込むのかと感心する気持ちも強い。といっても自分に同じ真似が出来るかといえば、彼女いない歴=年齢の非モテ童貞男の自分には絶対にムリなのだけれど。
 初めて訪れたラブホテルという空間に呆然と魅入っていたら、緊張してるなら先に一緒にお風呂に入ろうかなんて声が掛かって、慌てて首を横にふる。
「じゃあ取り敢えず座る?」
「あの、やっぱり……」
「怖くなっちゃった?」
 帰りたいかと問いつつも、逃さないとでも言いたげに手を取られて握られた。自然と視線はその手へ落ちる。その視界の中、ギュッと相手の手に力がこもった。思いの外強く握られ焦っていると、大丈夫と彼の言葉が続く。
「わかってるよ、大丈夫。俺、男の娘とも経験あるから、心配しないで?」
「……えっ?」
 慌てて顔を上げれば、相手は優しい顔で頷いてみせる。
「えっ……知って……?」
「ん? 君が女装子だってこと? それとも俺達が元々知り合いだってこと?」
 名前を言い当てられて血の気が引いた。
「男の君も良いなとは思ってたんだけど、女装姿も凄くいいよ。可愛いって言ったの嘘じゃないからね? 君がそっちって知れたのめちゃくちゃチャンスだと思って頑張っちゃった。警戒するのもわかるけど、もうちょっと頑張らせてくれない?」
 下手ではないと思うよと言いながら、取られた手を引かれて抱き寄せられる。近づく顔から逃げるように顔を背けて、なんとか口を開いた。
「ま、待って。待って」
「知られてると思わなかった?」
「だって、そんな……そ、そうだ、これ罰ゲームでっ」
 バレたら罰ゲームだった事にしようとしていたのを思い出して咄嗟に口走るものの、あまりにあからさま過ぎて、口に出しながら恥ずかしくなる。相手がおかしそうに吹き出すから、恥ずかしさは更に増した。
「ほんと可愛いな。女装知られたくないなら、他の奴らには言わないよ。2人だけの秘密ね」
 顔を背けたままだったからか、ちゅっと耳元に口付けられて盛大に肩が跳ねてオカシナ声が飛び出てしまった。
「ひゃぅっ」
「良い反応。でもちゃんと唇にもキスしたいなぁ。ね、こっち向いて?」
「や、やだっ」
「俺の事、嫌いじゃないでしょ? だって嫌いだったらこんなとこ付いてこないよね?」
「な、なんでこんなとこ来ちゃったのか、わかんない。ゴメン、ホント、ただの好奇心。てか女装してるけど男好きってわけじゃないし、き、キスも、初めてが男とかマジ勘弁」
「えっ……?」
「ど、どーてー拗らせまくって女装してるけど、俺は、女の子が、好きですっ」
 必死で言い募ったら無言のまま掴まれていた手も腰に回っていた腕もスルリと離れていった。
 相手はよろよろとベッドへ近づくと、そのままボスンとベッドに倒れ込む。
「騙されたー」
「えっ、えっ?」
「ねぇ、本当の本当に、好きなの女の子だけで男はなしなの?」
「今のところは」
「キスもまだの童貞拗らせて女装かぁ……」
「うっ……」
 しみじみ言われて言葉に詰まる。自分で言ってしまったことだし、それを言うなと相手に強いる立場にはなさそうだ。
「俺、結構本気で落としにかかってたんだけど、やっぱ脈なし? 諦めたほうが良い?」
 即答できずに居たら、少しばかり復活した様子で相手が嬉しげに笑う。
「取り敢えずさ、連絡先くらいは交換しない?」
 まずはお友達から始めようという提案に、否を返すことはなかった。

続きました→

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