親父のものだと思ってた35

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「いや、ちょっ、そんなことな……くはない、部分もあるけど」
「あるの!?」
 まさかの肯定に、驚きすぎて涙が引っ込んだ。
「お前に自分だけイカされるのが屈辱だとか言ってるわけじゃないし、この先、お前にお尻でイカされる日も多分くるだろうなってわかってるし、それが屈辱だからちゃんと抱かせないって思ってるわけじゃないけど、お前がかなり年下で、小さい頃から知ってる、って部分で、俺が張り切っちゃう面があるのは事実」
「張り切っちゃう……?」
「今、お前がちゃんと抱かせてくれない〜って泣いちゃうような事になってるのは、俺がお前に乗っかって、俺が動いて、そのせいで気持ちよくなってイッちゃうお前が見たくて張り切っちゃってる結果だよ、ってことなんだけど」
 通じたか聞かれて、なんとなくと曖昧に返す。
 屈辱の否定が2回入ったから、つまりは年下なせいでって部分は、相手にも肯定されたってことだろう。屈辱とは思わないけれど、年の差があるから主導権を渡せないって話かもしれない。渡せないってよりは、主導権を握ってこちらを翻弄したくて仕方がない、みたいな話だった気もするけど。
 そんな主張をされても、そうなんだと納得して、じゃあ続きをどうぞとはなれないし、年齢差というどうしようもないものが明確に立ちはだかってしまって、手詰まり感で胸が苦しい。
「えと、つまり、俺が年下なせいで張り切っちゃうから、俺はちゃんと抱かせてもらえないし、一方的に気持ちよくなるのは有りでも、一方的に気持ち良くするのはダメ、って言ってる?」
 言いながら、これをはっきり肯定されたら結局また泣いてしまうかもと思う。
「そうじゃなくて」
 けれどすぐさま否定の声が返って、見上げる先で相手が困ったように眉尻を下げる。
 目が合うと、ますます困ったように口元をへにょっと曲げて、なぜか相手が体をゆるりと倒して抱きついてくるから、腰を押さえていた手を思わずその背に回して抱き返してしまった。
 ただ、腕の中で大きなため息が吐き出され、肩のあたりに相手の額がグリグリと押し付けられて、何をされているかわからない。いやでもこれは、甘えられている、んだろうか?
 何も言わない相手に、こちらも掛ける言葉は見つからず、結局、なだめるように背を撫でるしか出来なかった。
 やがて、また一つ大きな息が吐き出されて、相手の動きが止まる。
「俺はさぁ……」
「うん」
 やっと口を開いた相手に、続きを促すように相槌を入れた。
「お前のことが可愛くて仕方なくて、抱かれる側になっても、お前に気持ちよくされるより、お前を気持ちよくするほうが満足度高いのは確実なんだけど、でも、そのせいでお前を泣かすとか思って無くて……」
「うん」
「だから、……」
「うん」
「ごめん、やっぱもうちょっとだけ、このままこうしてて」
「えっ……」
「あ、重い?」
「それは、平気だけど」
「じゃあ、お願い」
「黙って抱っこしてて、ってこと?」
「そう」
「わか、った」
 わかったと返しはしたが、さっぱり意味がわからない。意味がわからないというか、相手が今、何を考えているのか全く想像がつかない。
 なんなんだこれ。とは思いながらも、今はただ、言われたとおりに黙って待つしかないんだろう。
 ただ、じっと相手を抱きしめていると、未だ繋がったままのその部分がどうしても気になってしまう。意識してしまう。
 不安を零して泣きかけて、連動するように若干萎え掛けていたそれが、意識すればするほどに、またじわりと質量を増していくのがわかる。

続きました→

 
 
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親父のものだと思ってた34

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 ついでに言えば、次こそは相手のこともちゃんと気持ちよくしてやりたい。
 そんな決意とともに、まずはゴムを変えなければと考える。だって相手が腰の上に乗ったままなのだ。こちらは気持ちがいいばかりだったけれど、相手の動きはかなり慎重だったから、下手に動くと痛みを与えたりするかもしれない。
 なのに。
「ちょ、まって」
 上からどいて欲しい気持ちを込めて相手を見つめたら、小さく頷いた相手が、腰を持ち上げるのではなく、なぜかゆるっと腰を揺すり始めて慌てて止めた。
「何、してんの?」
「なに、って……」
 その顔は明らかに、だって二回目するんだろという疑問顔だ。
 そりゃするけども。でもこのまま続けるとは言ってない。
「二発目頑張りたいけど、とりあえず、ゴムは変えないとまずいよね?」
「万が一があっても妊娠はしないけど」
「お腹壊すって聞くけど」
「それは、まぁ、体験してみて初めて、二度と嫌だと思うかこれくらいなら平気と思うかわからないから」
 ああ言えばこう言う。つまりはせっかく体を繋げたんだから、相手としてはこのまま続けたくて仕方がないんだろう。
 次の言葉が出ずに黙ってしまえば、相手は了承と受け取って、またゆっくりと腰を揺する。そんな風に刺激されたら、あっという間に元通りに固くなってしまう。
 そして充分な固さをその身で持って確認したのか、それとも相手の体が慣れてきたのか、相手の腰がゆっくりと浮いていく。
 少し浮かして、戻す。というのを繰り返すうちに、少しずつ腰を高くまで浮かすようになっているし、スピードだって多少はあがっていると思う。
 一度吐き出しているのと、相手の動きがやたら緩やかなせいで、すぐに射精感が募ってくる感じではないが、このまま続けたらどうなるかわからない。というよりも、相手がこの動きに慣れてしまったら、きっとまたイカされてしまうだろう。
「ちょっと」
 不満そうな声が相手から漏れたのは、相手が腰を落とした時に相手の腰をグッと掴んで、腰を浮かすのを阻止したせいだ。
「二回目するって言ったけど、このまま俺だけまたイカされるのはなしでしょ」
「気持ちぃ?」
「気持ちぃし、見える景色がエロすぎだって」
「じゃあ、もっかいイッてよ」
「それはヤダ」
「お前が気持ちよくイッたら俺はめちゃくちゃ嬉しいし、俺が気持ちよくなるのはまた今度でいいっていうか、今日は俺の練習に付き合って欲しいっていうか……」
「俺に主導権渡したら、さっきみたいにお尻気持ちよくなるかも知れなくて怖いんじゃないの?」
「それは、そう。てかわかってるなら、」
「俺に気持ちよくされるの、なにがそんなに怖いの? 痴態晒したって、俺が萎えるどころか興奮しまくるの、わかってるでしょ?」
「そういう心配は、もう、してないけど」
「けど、なに? うんと年下の俺にお尻でイカされるのが屈辱、とかそういう話?」
「ん? なんだそれ?」
 勢い任せに、余計なことを言ってしまった。ずっと気持ちのどこかに燻っていて、でもそんなこと思うはずがないと否定していた気持ちだ。
 そして相手はある意味予想通り、何を言われてるかわからないと、呆気にとられた顔をする。
 そりゃそうだ。だって絶対に抱く側と主張したのはこちらだが、もし、抱かれてやるけど主導権は渡さない、なんて強い意志が相手側にあったなら、絶対にそれをこちらに了承させる。そういう人だと、わかっている。
 だから自己開発では感じなかったお尻が、他者の手で弄られて感じたことにまだ全然慣れていなくて、だから怖い。というのが事実であって、年齢差だの屈辱だのは、こちらの不安から生まれた言いがかりでしか無い。
 わかっているのに、口に出してしまったことで、抱えた不安が溢れてしまった。
「だって俺に一方的に気持ちよくされるの、嫌いだよね。てか今までずっとそうだったよね。恋人なのもエロいことするのも俺が全部初めて貰うんだからって思って、そっちが慣れるの待ってきたけど。絶対抱く側って主張したのも飲んでもらってるけど。でももし、俺が年下なせいで、ちゃんと抱かせて貰えないとかだったら、俺、どうすればいいの?」
 言いながら、なんだか泣きそうになる。馬鹿なことを口走っている自覚はあって、それが余計に涙を誘う。

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親父のものだと思ってた33

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「泣かないでよ」
 降ってくる声は優しい響きをしているけれど、笑いを含んでもいる。ますます情けなくて、きゅっと唇を噛み締めた。
「ねぇ、俺、今、めちゃくちゃ嬉しいよ?」
 嬉しくて笑ってるんだよ、と続いた声は言い訳だろうか。相手も自身の声に笑いが含んでいることを自覚しているのだ。
「笑ってごめんね。でも、ほんと、嬉しいだけだから。嬉しくてこぼれちゃう笑いだから」
 そう告げる声もクフクフと小さな笑いを含んでいるから、本当に、笑うのを止められないらしい。
「何がっ、そんな゛、嬉じぃ、のっ」
 無理やり吐き出した声は喉の詰まって、しかも涙声で濁っている。
「んー、それはやっぱ、俺の体でちゃんとイッてくれたから、かな。しかもお前が泣いちゃうほどの早さで、っていうのはさ、嬉しい上にめちゃくちゃ安心した。あ、安心したから笑うの止まらないのかも?」
 言いながら、またしてもフヘヘとおかしな笑いをこぼしている。言葉からも気配からも、まったくしまりがない様子が伝わってきて、顔の前に翳した腕をどけて相手の顔をみた。
 その顔も、へらへらと緩んで本当にしまりがない。でも、嬉しいの言葉に嘘がないこともわかる、幸せそうな笑顔だった。
「も、わかった、から、いい」
 目があって、相手が口を開く前に、素早くそれだけ告げる。告げてから一度大きく息を吐きだし、目元に残っと涙を払う。
「怒った?」
「え、何を?」
 嬉しくて笑うのが止まらないという状態なのはわかった、と言ったつもりだったのに、なぜか一転して不安そうな声を吐き出すから驚く。
「あ、いや、怒るっていうか、俺が、ずっとヘラヘラ笑ってるから、呆れたのかと思って」
「嬉しそうで何より、って思ってるよ。でもそれと俺が落ち込むのは別問題」
「それだけど、落ち込んで萎えたからもう終わり、ってつもりだったりする?」
「えっ?」
「不本意かもだけど射精したのは事実だし、今日はもういい、ってのも、まぁ、わからなくないんだけど……」
 そこで言葉を切ってしばらく迷うように躊躇った後。
「若いんだし、さ……その、二発目頑張るぞ、みたいなの、って、ない?」
 言いながら顔を赤く染めていくから、思わずマジマジと眺めてしまう。
 言葉からも相手の様子からも、落ち込むこちらを慰めるためのもう一度、というよりも、こんなのじゃ物足りないからもっと頑張れと言われているような気になるんだけれど、そう思っていいんだろうか。
「なんか言え、ぁっ……」
 なんと返すか迷う時間を待てなかった相手が返答を促してきたが、答える前に体が反応していたし、その反応を相手も自身の体で感じたようだ。
「二回目、する?」
「する」
 即答すればホッとした様子で、一瞬だけだったが、またしてもふにゃっと嬉しそうに笑う。嬉しそうで何よりと思うよりも先に、可愛さで胸がキュンとした。
 双方素っ裸で既に体が繋がった状態で、なのに相手のそんな些細な表情に、ドキドキとトキメイているのがなんとも不思議だ。相手から求められている、というのがあからさまに伝わってくるから、そのせいだろうか。
 童貞で、初めての恋人とのアレコレに興味津々で積極的。そう感じることは確かに多々あって、これもその延長と言えなくはないかも知れない。せっかく自己開発した上に色々と準備も重ねたんだから、あっさり終わったら惜しいと思ってるだけかも知れない。
 でも嬉しい嬉しいと繰り返しながらヘラヘラふにゃふにゃ笑って、もっとしようよと誘われたら、相手が本当はどんな気持ちで二回目を誘ったかなんて、そんなのはどうでもいいかという気になる。

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親父のものだと思ってた32

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「はぁ……」
 詰めた息を吐きだして、体の力を抜こうとしているのがわかる。
 チラりとこちらを窺った視線と一瞬だけ目があったけれど、その目はすぐに伏せられて、ついでに顔も俯けてしまう。じわりと赤くなっていく耳先に相当恥ずかしいのだとわかって、俯かないで欲しいとは言えなかった。
 まぁ、顔が見れると喜べたのはわずかな時間でしかなかったけれど、向かい合っているのだからチャンスはまだある。それに相手の状況は、表情以外からだって色々伝わってくるのだから。
 ひっそりと繰り返される深呼吸に相手の緊張が伝わってきて、こちらも息を潜めてその先を待った。
「んっっ!」
「うっ……」
 クッと腰が沈んで、小さな呻き声とともに相手の体が硬直するのを見ながら、こちらもたまらず小さく呻く。
 相手は動きを止めているのに、ペニスの先端の膨らみが入り込んだ穴は、キュウキュウと何度も収縮している。先端部だけなのに、肉の筒に包まれ揉まれている快感と興奮とで、あっという間に射精欲が湧き上がった。
 それを鎮めるために、硬直したままの相手の体をじっと見つめる。相手の体の状況へ意識を向ける。
「どっか、痛い?」
 吐き出す自分の声こそが、痛みを堪えているかのように苦しげだ。痛いわけではないが、快感をこらえる苦しさは確かにあった。
「へ、いき。でも、ちょっと、待って」
 ゆると頭を左右に振った相手が、再度チラッとこちらに視線を走らせたあとで、深めの深呼吸を始める。ひっそりと行う余裕はないようで、その息遣いははっきりと耳に届いた。
「ぁ……」
 声を漏らしたのは相手ではなく自分の方だ。
 深呼吸を繰り返しながらタイミングを図っているのか、止まっていた腰がゆっくりと落ちていく。
 締め付けが一番強いのは入口付近で、上から順にキュッ、キュッ、キュッ、っと竿の根本までをゆっくり締め付けられていくのが、たまらなく気持ちがいい。
 深呼吸は繰り返されていて、相手はきっと快感なんて拾っていないと思うのに、一生懸命にその体内に迎え入れてくれる姿に胸の奥が熱くなった。
 より強い刺激と快感とを求めて腰をゆすりたいのを、こらえるのが難しい。どうにか耐えていられるのは、相手の必死さが伝わってくるせいだ。
 やっと好きな相手と体を繋いでいる、という感動や興奮ももちろんあった。しかも、相手がこんなにも頑張ってくれている、という喜びやら愛しさやらが混ざって、更に、体が直接受け取っている快感までが混ざって、頭の中がグチャグチャだ。グチャグチャだけど、幸せで、嬉しくて、気持ちがいいのは間違いなくて、こみ上げてくる何かで視界がぼやける。
「はい、った」
 むにっと相手の尻タブが肌に触れたとほぼ同時に、相手がホッとしたようにそう呟き、顔を上げた。
 ずっと相手を見つめていたこちらと目があって、滲む涙に気づいて驚いた後。おかしそうに、幸せそうに、嬉しそうに、笑う。それが最後のひと押しだった。
「あっ! あ、……あぁ……」
 体の中でグチャグチャに絡み合った幸せと喜びと快感が弾けて、次に押し寄せてくるのは絶望だ。
 肉の筒に包まれたペニスがピクピクと震えるのを感じながら、持ち上げた両腕をクロスさせて顔の上に置き、一転して情けなさで溢れる涙を隠した。

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親父のものだと思ってた31

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「わかった。抱く」
 観念してそう宣言し、相手の体から一度離れた。
 ローションと先走りとでドロドロになった手を拭いて、相手が用意していたゴムを装着している間に、相手も起き上がってじっとその様子を見守っている。というよりは、多分、こちらの準備を待っている。
「そう見られてると、なんか気まずいんだけど」
「それはごめん。でも俺もさすがに緊張してて」
「ところで、なんで起き上がってるか聞いても、いい?」
「察してそうな顔してるけど、言わないとダメ?」
「そりゃダメでしょ。てか俺が抱いていいんじゃないの?」
「そうだけど、でもやっぱ自分で挿れたいから寝転がって」
 察してると言われた通り、その言葉を聞いても、そうだと思った、としか思わなかった。思わなかったけれど、それを受け入れるかは別問題だ。
「だよねぇ。で、俺がそれを受け入れて寝転がるって思ってんの?」
「だめ?」
「俺だって主導権欲しいんだけど?」
「そこはほら、最初は自分のペースで受け入れたい、とか、アンアン言わされっぱなしの年上の矜持を考えて欲しい、とか、まぁ、色々あるだろ?」
「あるだろ、とか言われたってさぁ」
「お前がお尻弄ってアンアン出来るまで挿れないって言うから、そこは譲ったよね? だから、今度は俺の番」
 そもそもそこを譲ってくれたと言うか、観念して弄らせてくれたのは、相談もなく勝手に自己開発を進めた後ろめたさとか言ってなかっただろうか。
「覚悟って、お尻弄られる部分だけで、そのまま俺に抱かれる覚悟は出来てなかった?」
「その覚悟もあったつもりなんだけど、てか多分、俺が感じる前にお前が我慢できなくなって突っ込む、って流れだったら受け入れてたかなって思うんだけど、その、あー……本当にアンアンしたら、なんかやっぱ、ちょっと、怖くなって……」
 尻すぼみに細くなった声と、どうしても嫌かと窺うような視線に負けて、大きくため息を吐いたあとで体を倒した。
「もー! ほんと、ズルいな」
「お前のそういうとこ、ほんと、好き」
 そういうとこって、つまりは押しが弱いとこ、ってことだろうか。
 いやでもだって、怖いとか言われたら引くしか無いだろう。少しでも不安を排除して、もうこれ以上は無理だと中断するリスクを避けたいのだから。
 逆に相手の強気は、本気で嫌がったらセックス真っ最中だろうとちゃんと中止してくれる、を本気で信じているからだ。相手のこの強気を最大限好意的に考えれば、途中でもう無理止めてを言わずに済むように、怖い気持ちを晒して回避しようとしてくれているのかも知れないし。
 そんな思考で自分を慰めて、今は相手からの信頼に満足しておくしかない。
「褒めてないよね。で、どうすればいい? こんな感じでいい?」
 こんな会話の間にも萎えることなくしっかり屹立を維持しつづけているペニスは、支えてやらなければ寝転がった状態で天を向くことはないので、なるべく真っ直ぐ上を向くように自らの手で調節した。
「ん。それでいい。じゃ、乗るね」
 言いながら、相手が腰をまたいで乗ってくる。
 前屈みになった体を支えるためにか、両手が腹の上に置かれてしまったので、入っていく所が見える的な興奮はどうやらお預けだ。というか多分、意図的に股間部分を隠しているんだろう。
 けれど、浮かせた腰がもぞりと動いて位置を調整している様子や、何より、緊張を孕んだずいぶんと真剣な顔が見えている。ついでに、自身のペニスで感じ取れる状況もある。
 主導権は渡してしまったが、顔が見れるのは嬉しかった。なんせお尻を弄っている間、ずっと背中を向けられていて、全然顔が見れていなかったので。
「んっ……」
 とうとう先端が窄まりに触れて、相手が小さく息を呑んだ。

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親父のものだと思ってた30

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「さっきまで、は、なかった」
「興奮してちんこ勃ったから、中も敏感になった感じじゃない?」
「なに、それぇ」
「てか、前立腺って気持ちよくなれる場所じゃないの?」
 本当に気持ちよくない? と聞きながら、再度、指先に触れたままのしこりを撫でてやる。
「ふぁあっっ」
 またビクビクっと体が震えて、ペニスの先から先走りが溢れてくるから、現象だけ見れば気持ちが良さそうなんだけど。というか、今のは声も結構気持ちが良さそうに聞こえたけど。
「もうちょっとだけ弄らせてよ」
「ぁ、でも」
「待ってって言われたらちゃんと止まるから、ね」
 了承は返らなかったが、拒否もなかった。黙ってしまったということは、結局の所、許可が降りたってことだろう。
 手の中のペニスにも意識を向けながら、強い刺激になりすぎないよう注意しつつ、ゆるゆるとその場所を撫で擦る。
「ぁ、……ぁあ……」
 時折か細く漏れ出る声は気持ちが良さそうだし、中を擦る指と同じ速度でゆるゆると扱いている手の中のペニスは、大きく張り詰めて先走りを零し続けている。もう少し強く握って、扱く速度を上げたら、多分間違いなく射精すると思う。
 コクリと自身の喉が鳴る。
 だって、こちらからの一方的な奉仕で、相手だけを気持ちよくイカせた経験があまりに少ないのだ。こちらはさんざん相手に体を任せて、自分だけ気持ちよくしてもらったのに。
 自分だけが気持ちよくイカされてしまう罪悪感とか羞恥心とかは身を持って知っているし、相手の興奮に煽られやすく、自分も早く気持ちよくなりたい欲を隠せないというか、それを見抜く相手に一緒に気持ちよくなろうと誘われたら断れるわけがないので、相手だけを先に気持ちよくイカせる経験が乏しい理由はわかっているし納得もしているんだけど。
「ね、イカせて、いい? てかイッて?」
 発した声は緊張と期待とで少しかすれてしまった。
「ちんこ扱いたらイケるよね?」
「ぁ、ちょ、まっ」
 言いながらペニスを握る手の圧を増やしたら、慌てた様子で待ったが掛かる。
「だめ?」
 待ってとはっきり言われてはいないが、一度ちゃんと両手とも動きを止めて問いかけた。なし崩しに押し流せそうとも思わなくはないが、許可を取らずに追い詰めて「無理」を言われたくはないのだ。
「き、きもちくなれてる、んだけど」
「うん。だから、お尻イジられながらでも、今ならイケそうって思って」
「お前、挿れないの?」
 ずっと枕に押し付けられていた頭が少し浮いて振り向いた。といっても視線は合わず、相手が見つめる先はどうやらこちらの股間だった。ちゃんと見えているかはわからないが、もちろん一切萎えずにバキバキだ。
「俺がお尻でアンアン出来たら挿れる、って、言ったろ」
「そ、だけど」
「じゃ、きてよ」
「ううっ……」
 挿れたい気持ちとこのまま手でイカせたい気持ちとがぶつかって、唸るしか出来ない。
「抱けない、なら、ここまでに、する?」
「はぁ!?」
「だって、挿れたくない、んだろ?」
「何言ってんの。挿れたいに決まってんじゃん。でもこんな気持ちよさそうな穴に突っ込んだら、どこまでそっち気遣えるかわかんないっていうか、俺が気持ちよくなるばっかりで気持ちよくしてあげられないかもだから、先に一度気持ちよくしてあげたいっていうか、俺の手で気持ちよくイクとこ見たいっていうか、そういうのだよ?」
 必死で言い募れば、何故か相手が笑い出す。ただ、動きを止めたとは言えお尻に指が入ったままだし、力は抜いているがペニスだって握ったままだ。
「はは、ぁあ、んっ」
 自身の体の揺れで刺激されるのか、笑いながら喘いでいる。なんだこれ。
「ちょっとぉ」
「ん、ごめ」
「随分余裕あるみたいだし、やっぱ一回イッとこ? 俺の手で、気持ちよくアンアンしながら射精しよ?」
「お、前、だから、おっさんの体力舐め過ぎなんだ、って」
 イカされた後に更に抱かれるとか無理、という訴えに、またしても唸ってしまう。
 本当に体力やら持久力やらに問題があるかは微妙なとこだと思うけれど、それが事実かどうかはあまり関係がない。だって、無理って単語を使ったってことは、その流れは本気で嫌だという訴えだ。

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