理解できない9

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 卒業旅行と言ったって、一番の目的が夜に宿泊施設でセックスすることである以上、そう遠くへ行く気はない。週末を挟んで金曜か月曜に有給をとってもいいと言われたけれど、一泊で充分だと断った。
 結局の所、遊びはオマケだ。
 なんて思っていたのだけれど、どこの人気テーマパークランキングを見てもだいたい一位なその施設は、そこに位置するだけの理由が当然あって、つまりめちゃくちゃ楽しかった。夜のことを考えたら疲れ切るわけには行かないし、早めに切り上げるつもりだったのに、せっかく来たのだからと促されて許されるまま、ズルズルと閉園まで居座ってしまった挙げ句にホテルでは早々に寝落ちて、なんの卒業もないまま愕然と朝を迎えた。
 朝からどんよりと落ち込むこちらに、セックスするのは今度の土曜でいいだろと告げた相手が、せっかく来たんだから目一杯楽しんで帰ろうと促してくる。前日にも散々聞いた、せっかく来たんだからという言葉に、なんとなく最初っからこの展開を狙っていたんじゃという気がしたけれど、過ぎてしまった時間を巻き戻すことは出来ない。
 先延ばしされた土曜にもまた何かしらの理由をつけて約束を反故にされたら、今度こそ本気で怒ってやろうと思いながら、なんだかんだと二日目も遊び倒してしまった。
 そうして迎えた土曜の朝、支度が出来たら出かけようと言われて連れてこられたのは、なんのことはないただのラブホだ。あからさまな子供を連れて入れるような場所ではないので、過去に連れ込まれたことはない。そんなわけで利用するのは初めてだけれど、なんのための施設かは当然わかっている。
 卒業旅行という言い訳を既に使ってしまった以上、宿泊は無理だから夜には帰ると言われて頷いたあと、準備をしてくるとバスルームへ向かった。手伝うと言いながら追いかけてきた相手を追い返さなかったのは、既に準備の大半を終えていたからで、けれどそんなことを思っても見なかったらしい相手には、随分と怪訝な顔をされてしまった。
「中、洗ってきたって、お前……」
「言葉通りだけど。昨日の夕飯も朝ごはんも控えめにしてるし、さっき洗ったばっかだから、まぁ、やってる途中で汚いことにはならないと思う。多分」
 多分と付け足してしまったのは、あまりにも久々の行為に自信が持てなかったせいだ。正直言えば、控えるどころか食事は抜いて置きたかったくらいだから、汚れるような事が起きなければいいという希望混じりな自覚もある。
「体調悪くて食欲がないとかじゃなかったならいい。てかおやつ食べ過ぎたとか言ってたのも嘘かよ」
「こっちは体調心配されて、ちゃんと食べるよう勧められたおかげで、また抱いて貰えない可能性も考えてたんだけど」
「つまり、抱かれる前に食事控えるのはお前にとっての常識?」
「まぁ、そうだね。控えるっていうか、本当なら水分補給だけでも良かったんだけど、さすがにおばさんに心配されると思ったし、食べない言い訳考えられなくて」
「そうか。んじゃここ出たらお前が食いたいもん、腹いっぱい食って帰ろうな」
 どうやら夕飯は用意しなくていいと言って出てきたらしい。楽しみだと笑えば、相手もどこかホッとしたように笑う。抱かれる前に食事を抜いたり控えたりという発想自体が全く無かったようだから、きっと当たり前にそれを行ったこちらへ、罪悪感を抱えてしまったのだろうと思う。
「家でそこまで準備してきたってのは驚きだけど、とりあえずは理解した。で、今ここでする準備って何?」
「家でシャワー浴びれたわけじゃないから、普通に体洗っておこうって思っただけ。せっかく一緒に入ってるんだから洗いっこする?」
 背中こすってあげるよと言えば、じゃあお願いしようかなとあっさり了承が返された。

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理解できない8

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 童貞にいきなりフェラはハードルが高いと言われたはずだ。けれど一緒に暮らすようになってからの断り文句は全部、子供のうちはダメだというもので統一されていたから、すっかり意識の外だった。
「あー、そんなこと言ったかも。ただそれ、お前のフェラ断るための嘘」
 童貞だからという理由でフェラを断られた話を持ち出せば、相手もすぐに思い出したらしい。そしてあれは嘘だったと続いた言葉には納得しか無い。それなりの誘いを何度も仕掛けたけれど、童貞っぽいと思ったことなんてなかった。
「だと思った。けど、だったらそっちはなんの卒業旅行なの?」
「え、それ理由いるか?」
「え、一緒に卒業旅行しようって誘いじゃなかった?」
 顔を見ればどうやら違うのはわかったけれど、相手は違うとは言わず、何かを考えるような素振りをする。
「そうだな、じゃあ、お前の保護者卒業旅行、とかどうだ。もしくは家族卒業」
「え、家族?」
 さんざん子供扱いされてきたし、家の中にしろ学校生活にしろあれこれ気遣って調整してくれたり、目に余るような常識の違いは訂正してくれたり叱ってくれることもあったから、保護者卒業は納得だけれど、家族卒業には違和感しかなかった。
「俺たち家族だろ?」
「なにそれ初耳」
「まぁ確かにはっきり言ったことはないかもな。ただ、戸籍は弄ってないけど、お前がこの家の中でどういう存在かって言ったら、上二人とはちょっと年の離れた末っ子みたいな扱いなんだよ。少なくとも今は。てかそういう扱いに全然自覚ない?」
 あるわけないだろと言いかけて、いやでもどうだったろうとこの数年を振り返る。父さんとも母さんとも兄さんとも呼んだことがないし、自分の中で彼らを家族と思ったこともないけれど、この家の末っ子として扱っていたと言われれば、なんとなく思い当たるふしがないこともない。
 特におじさんやおばさんに対しては、この家の末っ子として扱われたと思える事柄があれこれ浮かぶ。同時に、本当の両親との間に何があったか知っている彼らが、何も言わずにただただこの家の一員として受け入れ、家族として接してくれていたことにも気づいた。
 それを素直に嬉しいと思うにはまだ少し時間がかかりそうだけれど、欠片だって不快ではないし、胸の奥がむずむずとするこの感じには覚えがある。いつか素直に嬉しいと言える日がくるだろう予感がある。
 ただ、目の前のこの男に対してはどうだろう。保護者は納得でも、兄のように振る舞われた記憶はない。高校卒業したらという言葉を引き出すためとは言え、何度も性的な誘いをかけていた相手なわけだから、さすがに弟としては扱えなかった、と言われればそりゃそうだろうとしか言えないけれど。
「おじさんとおばさんに関してはわかった気がする。けど、年の離れた弟って扱われてた気はしない」
「これでも一応努力はしてた。けど、わかりやすく兄貴面なんかしたら、お前が嫌がるだろうと思ったし、傷つけそうだとも思ったし、高校卒業したらって話がどう転ぶのかわからなすぎて無理だった」
「でも気持ちの中では、弟、って思ってた?」
「そういう部分は間違いなくある。だから、保護者だったり家族だったりを卒業してからお前を抱きたい、って意味で一緒に卒業旅行するのはいい気がする」
 嫌かと聞かれて嫌じゃないと返せば、嬉しそうにどこへ行くかを考え出す。一緒に携帯を覗き込んであれこれ言いながらも、頭の隅では、保護者や家族を卒業されてしまったら、彼との関係はどうなるんだろうと考えていた。

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理解できない7

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 高校生も子供と言い張って、頑なにハグ以上の行為を拒む相手に慣れていく。相手が何度も繰り返すから、日々の生活であれこれとこちらを気遣ってくれることや、差し入れられるおやつへの礼として求められているのがハグで、それ以上を本気で求めていないらしいことも理解は出来ている。
 同時に相手も、ハグ程度ではちっとも返した気になれないこちらの気持ちや、なによりあの家から自分を連れ出してくれた事への礼を、いつか体で返したいと考えている事を、今はある程度理解してくれていると思う。だから、高校卒業するまではダメだと、変わらない返事を聞くための誘いをかけることは許容されているし、こちらを安心させるみたいに、高校を卒業したら抱く気があることをちゃんと示してもくれる。
 あの夏から大きく変わった生活は、あの夏以前に考えていた高校生活からは欠片も想像できないような穏やかさで過ぎていた。
 遅れてきた成長期にどう変わるかと不安だった体も、結局そこまで大きくは変わらなかった。相変わらず同年代男子平均には身長も体重も足りていない。それでも一応、子供みたいな見た目はだいぶ改善されたようだ。
 高校卒業まで待たされるなんてと思っていたはずが、気づけば高校生活の終わりが目の前に迫っている。
「ねぇ、卒業式のあと、どうする?」
「どうする、って、家でお祝いだろ?」
「えーと、家でするってこと?」
 絶対違うと思いながらも聞いてみれば、会話が噛み合っていないことに気づいたらしい。
「あー、さすがに家でする気はないな。というか卒業式当日は無理だって」
「こんなに待ったのに?」
「当日は母さんが張り切ってご馳走用意する気でいるし、そこは諦めて」
 だから卒業式後の最初の土曜日でと言われて、まぁ、そうだろうなと思う。自分たちの関係を彼の両親がどう見ているのかわからないし、彼が自分の親に対してどういうスタンスでいるのかも知らない。確かめたくなかったし、聞こうとしたことがない。
 家でして彼の親に気づかれるのは自分だって避けたいし、同様に、夜に二人して出かけるのだって躊躇われる。
「というかさ、どこでしたいとかって希望ある?」
「え、行ってみたいラブホを探しとけってこと?」
「じゃなくて。卒業旅行、連れてってもいいんだけど」
 びっくりして目を見開き見つめてしまえば、ラブホのが色々都合いいのはわかってるんだけどと言葉を続けていく。
「お前、友達と卒業旅行の予定ないみたいだし、前に、修学旅行以外の旅行したこと無いって言ってたろ」
「旅行、誘われなかったわけじゃないからな」
「お前に友達がいないなんて言ってないだろ。誘いに乗らなかった理由も知ってる。だから、俺が全部旅費出してやるから、どっか行かないかって言ってんの」
 高校卒業までは実親から最低限の生活費が払われていることは知っているけれど、なるべく早く自立したいと思っているし、友人たちと卒業旅行に出かける金銭的な余裕なんてない。なぜ引き取られたのかという理由は知らなくても、金銭的な余裕がない理由は友人たちだってわかっていたから、しつこく誘われることはなかった。それをありがたいと思ったし、同時に一緒に行けないことを残念にも思った。残念だと思うような高校生活を送れただけで、充分すぎるほど幸せなんだと、思ってもいた。
 でもだからって、彼とどこかへ旅行することがそれの代わりになるんだろうか。高校卒業記念として彼に旅行に連れ出されることを、卒業旅行と呼んでいいんだろうか。彼にとってはなんの卒業記念でもないのに。
「あ、童貞卒業旅行?」
「は?」
 ふと初めてハグを求められたときのやりとりを思い出して口に出せば、相手はわけがわからないという顔をした。

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理解できない6

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「これから俺が、どう育つかもわからないのに……」
 今はまだ、一応はちゃんと抱きたい気持ちがあったって、高校を卒業するまでそれが継続するかはわからない。魅力や価値があがるという言葉が信じられないし、本気で言ってるっぽいとは思うけれど、なぜそんな確信めいて口にできるのかは欠片も理解できそうにない。
 もし魅力や価値が今より上がらなかったら、どうするんだろう。でも本当に上がるかどうかわからない魅力や価値を信じられないと言って、今の価値でいいから抱いてくれって言ったって、受け入れてくれないこともわかっている。中学生どころか高校生相手にも、随分と頑なに手は出さないと決めてしまっているらしい。
 途方に暮れて項垂れ、はぁあと大きくため息を吐けば、大丈夫だよと、これまた全く根拠のない言葉が告げられた。いや全然大丈夫って気にはなれないんだけど。むしろ卒業までの時間を思って憂鬱でしか無いんだけど。
 視線を下げたことで相手の性器が目に入って、再度零れそうになったため息をどうにか飲み込む。膨張率にもよるんだろうけど、少なくとも、小さくはなさそうだ。一応時々指で慣らしてはいるけれど、今の状態でも辛いだろうと思っているのだから、高校卒業まで待ってたらこちらの体の負担はもっと増すのが確実なのに。体の負担的にも今抱かれたいのだと言ったはずだけれど、どうやらその件は流されてしまったようだ。
「こーら。またジロジロ見て」
 正面に立っていた相手が、そんな事を言いながらスルッと背後に回ってくる。湯船に浸かるんじゃないのかと、振り向いて相手の顔と湯の張られたバスタブを何度か交互に見てしまえば、短く交代と告げられる。
「交代?」
「そ。背中洗ってやるよ。あと、頭も」
「いや、もう洗い終わってるし。てか一回風呂入った後だし」
「知ってる。けど一緒に風呂なんてなかなか機会無いし、さっき洗ってもらって気持ちよかったから、俺もお前にしてやりたい」
 ほら座ってと促されて、なんだかもう抗う気もなく大人しくバスチェアに腰を下ろせば、躊躇いのない手付きでさっき彼が使っていたのとは別のボディタオルを手にとった。もちろん、普段自分が使っているものだ。
 さっき彼にしたのと同じように、泡立てたタオルが背中と腕をゴシゴシとこすっていく。強すぎると抗議すればすぐに気持ちがいいなと思うくらいの力加減になったけれど、もし普段あのくらいの強さで体を洗っているなら、さっきのは物足りなかったんじゃないだろうか?
 わざわざ聞いたりはしないけれど、もしまた背中を洗うような機会があれば、もっと強くこすってやろうとは思った。
 背中と腕だけなのに結構丁寧に時間を掛けてゴシゴシされたあと、一度泡を洗い流して、今度は頭だ。こちらもけっこうな力強さでガシガシ頭皮を指の腹ですられたけれど、こちらはほどよい強さで痛いと声を上げることはなかった。というか気持ち良かった。
 そして何より、相手の機嫌が良くて、なんだか随分と楽しそうなのがいい。無理やり押しかけて無理難題を押し付けていた自覚はあるし、そこまでしてもなお、こちらの要望をどれもこれもきっぱりお断りされた気まずさもあったから、ホッとせずにはいられなかった。

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理解できない5

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 ないわけないだろと、やっぱり困ったような苦笑を浮かべながら言って、ゆっくりと立ち上がる。釣られるように見上げながら、胸の奥がざわつくのを感じていた。
 抱きたい気持ちが今もまだあるとはっきり言われたのだから、安堵するべき場面だろう。なのにこのあと何を言われるのか、何をする気で立ち上がったのか、不安のほうが強く胸の中に広がっている。
 気持ちがあると認めたからといって、抱いてくれるわけではないんだろう。そうわかっていつつも、不安を振り払うように口を開いた。
「……っなら、」
「抱かないよ」
 さっさと抱いて欲しいと続けるはずだった言葉を遮るようにきっぱりと宣言されて、どうしていいかわからなくなる。気持ちを強く持ってこちらの意思を少しでも通さなければと思うのに、困ったような苦笑ばかりを見せているくせに、この件に関して相手に譲る気は一切ないらしい。
「多分うまく伝わらないというか、理解して貰えそうにないけど、お前の言うお前の価値は、お前が成長して見た目の子供っぽさをなくしても変わらないよ。少なくとも、俺にとっては。それに、何度も言ってるけど、子供相手にえっちなことするチャンスなんて、全く欲しいと思ってない」
「なんで? エフェボフィリアじゃないの?」
「えふぇ、え? なんだって?」
 聞いたことがない単語だったんだろう。単語を繰り返すことすら出来ないらしい。
「エフェボフィリア。思春期の男女に向かう性的指向、らしいよ」
「なんだそれ。聞いたことない」
「ちなみにもっと小さな子ども相手にエロいことしたいのはペドフィリア」
 眉を寄せて嫌そうにしながらも、それは聞いたことがある気がすると言ってから、どっちも違うと否定してくる。
「自覚がないだけじゃなくて?」
「少なくともお前以外の子供相手にそんな気になったことないって」
「あー……なら、誘惑してごめんね? そんな気はなかったというか、あまり近づいて欲しくなかっただけなんだけど、対応間違ってたのは認める。冷たくあしらわれたいタイプって、もっと早くに気づけてれば、もっと愛想よくしてたんだけど。でもさすがに今更だよね」
「いや待て。冷たくあしらわれたいタイプってなんだそれ。そんな性癖もないから、俺のためにって塩対応始めたりすんなよ」
「え、じゃあ、何が原因で俺にそんな気になったっていうの?」
「そんなの、お前の全部が気になって仕方がなかった、ってだけだよ。子供が好きだとか、塩対応にトキメイたりはしないけど、お前の見た目が年相応よりも子供っぽいと言うか発育が悪そうなとこは心配だったし、うちの親には愛想良かったけど無理してるように見えたし媚びてるようにも見えた。俺を避けようと冷たい対応だったのはわかってるけど、でも放っておけないと思ったから、気づかないふりして構い倒してただけだし、正直、俺が持ち込む菓子類を断れずに食べてるのみて少しホッとしてた」
 そこまで言って、何かに気づいた様子で、ああそうかと納得げに頷いてみせる。
「そうだな。強いて言うなら、俺が貢ぐ菓子類を、なんだかんだ受け取ってくれたのが、お前相手にそんな気になった一番の原因? って気がしないこともない」
「なにそれ」
 疑問符がついている上に、気がしないこともない、なんて随分とあやふやだ。でも口に出したことで相手の納得は深まったらしい。
「お前が成長期に入って、これからもっと大きくなるってなら、俺はむしろ嬉しいよ。お前が年相応に育って、大人の男になってくれたほうが、俺にとってのお前の魅力も価値も上がってくよ」
 何を言い出しているんだろう。本気だと思えるような優しい笑顔に戸惑っていると、頭の上に手のひらが乗ってグリグリと撫でてくれたが、そんなことをされたって戸惑いが深まっていくだけだった。

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理解できない4

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 この家の二人の子どもたちが中高生時代に見せていた食欲を基準に用意される食事と、彼が度々差し入れてくれるおやつのおかげで、摂取カロリーが大幅に増えたというのがきっと大きいと思う。このまま伸びることなんて無いだろうと思っていた身長が、この一年で目に見えて伸びていた。体重だって随分と増えて、鏡に映る自分の体が変化していくのがわかる。
「これからどんな風に成長するかわかんないし、俺が高校を卒業する頃には、見た目が好みから外れてる可能性は大きいと思うんだよね」
 出会った初期の自分にそういった欲望を隠しきれなかった相手は、どう考えたってショタコンと呼ばれるタイプの人種のはずだ。
「既に好みドンピシャからは外れてるかもだけど、俺の年齢を理由に手を出さないのが本当なら、まだ対象内ではあるよね? 子供にエロいことしたい気持ちを俺が叶えてあげられるのには期限がある。見た目このままで年だけ重ねていけるなら高校卒業待ってからでもいいかもだけど、犯罪がどうとか言って高校卒業するの待ってたら、子供相手にえっちなことするチャンス無くすよ」
 言葉を重ねるほどに、相手の目が驚きに見開かれていくから、相当想定外の話をしている自覚はある。でもどうせいつか支払う礼なら、自分の価値が高いうちに払っておきたい。
「それとも、本当はもう、俺を抱きたいなんて気持ちがなくなってる? 子供相手には出来ないって引き伸ばして、高校卒業したら子供じゃなくなった俺にそんな気は起きないって言うつもりだった? それならそれで、はっきりそう言って欲しいんだけど」
 その気がないとはっきり言われたらもう誘わないけれど、代わりにこちらが差し出せる礼を指定してくれるとありがたいと言えば、驚きに見開かれていた目が眇められて眉間にシワが寄っていく。不快そうな顔に、どんな答えが返されてもいいようにグッと拳を握りしめた。
 握った拳に相手の手が伸ばされて、大きな手のひらにそっと包まれる。そうしながら一度俯いて大きく息を吐きだした相手が、困ったような苦笑を浮かべながら顔を上げる。
「お前をそういう対象として見てた事を隠せなかったのは、本当に悪かったと思ってる」
「隠すの上手い人のが困る、って言ったと思うけど」
「うん。でも、どう考えてもそれは気づかれちゃいけない気持ちだったよ」
「なんで?」
「なんで、って、お前に、子供のうちに抱きなよ、なんて誘わせる結果になってる」
「想定外なこと言ったっぽいのはわかってるけど、俺の提案、そこまで変なことだった? 高校卒業したら抱こうと思ってるなら、俺としては、今払ったほうがずっと楽なんだよね。俺の価値的にも、体の負担的にも」
「価値とか体の負担って?」
 わかりやすいかとこちらの事情を付け加えてみたら、逆にそれが引っかかった様子で、価値やら負担やらの意味を聞かれてしまった。
「価値はそのまま俺自身の価値だよ。子供とえっちなことしたい相手に、子供の俺を差し出すほうが価値が高いのは当然だろ? 体の負担ってのは、体をある程度慣らし続けとくのが大変だから、どうせなら価値が高い今、先払いで欲しいだけ持ってって貰うと、そういうことしなくて良くなって楽だなって思って」
 また想定外のことを言ってしまったのか、相手が驚きに目を瞠った後、大きく息を吐いて困ったように笑う。一連の流れがさっきとほぼ同じだ。
「ある程度覚悟はしてたけど、これは想像以上だな」
「覚悟って?」
 今度はこちらが、覚悟の意味を問いかける。
「お前の育ってきた環境を考えたら、常識だとか価値観だとかが、俺とは大きくずれてるだろうとは思ってけど、それが想像を超えてたって話」
「子供に手を出すのが犯罪で、それをしたくないって思ってる、ってのは理解してるけど」
「そうじゃなくて。いやでもこれを今すぐどうこうは出来ないのわかってるから、取り敢えずはそこじゃなくて、お前の誘いをどうするかだけど」
「あ、抱く気になった?」
「違う。俺が菓子やら貢ぐのに対して、お前が体を差し出す必要なんてないんだ。それは高校を卒業しても同じだ」
「つまり、俺を抱きたいなんて気持ちはもうないってこと?」
 肯定されて、オナホ代わりにもならないほどお前の体は汚いのだと突きつけられる予感に、少しだけ声が震えてしまった。

続きました→

 
 
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