理解できない13

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 美味しいなんて思えるはずもない。むしろ久々すぎて不味さが際立つ。それでも口の中に吐き出されたものをどうにか飲み下し、俯いていた頭をゆっくりと上げていく。その間に笑顔を作り、目が合うと同時に、何も残っていないことを示すように口を開けて舌を見せた。
「さすがだな」
 照れた様子の困り顔が、少しばかり呆れたような顔になってしまって、多分きっと褒められたのに、ちっとも嬉しくない。気持ちが良かったって満足そうな顔が見たかったし、気持ちが良かったって言って欲しかったし、上手に飲めたねと褒めて欲しかった。
「いたずらされて嫌だったなら、途中で止めさせても良かったのに。俺だって途中で止めてもらったんだし」
 期待した反応と違うのは、きっとこれがいたずらだったせいだ。けれどすぐに嫌じゃなかったよと返されたから、じゃあなんでと思ってしまう。
「あんまり上手いから、ちょっと悔しかっただけだよ。気持ちよかったし、いたずらするの楽しそうだったから、それ見てる俺だってちゃんと楽しんでた」
 こちらの不満が伝わったらしく、そんな説明とともに手が伸びてきて、ごめんなと言われながら頭をわしゃっと撫でられた。
「俺が上手いと、悔しいの? でも気持ちよかったんだよね?」
 下手くそで気持ち良くなれないより、上手くて気持ち良くなれるほうが断然良さそうなのに。
「そうだね。お前が持ってるテクニックを、あれこれ披露して俺を気持ちよくさせようと思ってくれてるのはわかるけど、正直に言えばすごく悔しい」
「えっと、なんで?」
 聞いてもすぐには答えが返ってこなかった。
「俺に知られたくないような理由?」
 気にはなるけど、言いたくないなら言わなくても別にいい。そう伝えたのに、相手はゆるく首を振って否定する。
「俺が情けないってだけの話だから、あまり言いたくないのは事実だけど」
「情けないの?」
「そう。もしくは不甲斐ない」
 そう言って苦笑した後、気持ちよくして欲しいよりも気持ちよくしてやりたいんだと告げられた。
「なんだ、そんなこと。っていうか、童貞じゃないんだよね? 誰かに下手って言われたことでもあるの?」
「そんなはっきり下手って言われたことはないけど、経験が多いわけでも自信があるわけでもないから」
「なら、俺で練習すればちょうどいいじゃん」
 名案だと思ったのに、今度こそはっきり呆れられてしまった。
「俺また何かすごく変なこと言ってる?」
「いや。お前の言い分がわからなくないだけにキツイ」
 相手はこちらの言い分を理解しているようなのに、相手の言葉がまったく理解できない。首を傾げてしまえば、おいでと呼ばれて相手の腿の上を跨ぐように座らされる。
 何をするのかと思ったら、ふわりと抱きしめられた後、相手の額が肩に押し当てられて戸惑うしか無かった。
「ど、どうしたの?」
 尋ねる声は上ずっていて、焦っているのがだだ漏れだ。
「お前と俺と、このセックスに対する認識の差を痛感してるだけ」
「認識の差……」
「説明はするから、ちょっとだけ待って」
 そう言われたら、こちらは黙って大人しく待つしかない。
 なんで、こんなに辛そうなんだろう。やっと高校を卒業して、ようやくセックスが出来るのに。自分だけがこの日を待ち望んでいたわけではないはずなのに。
 黙り込んでジッと動かずにいる相手は、そうしている間にも、気持ちを整理して、こちらに説明するための言葉を選んでいるのだろう。待つしか無いのはわかっているが、どうにもジッとしていられなくて、そっと相手の背中に腕を回した。

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理解できない12

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 ベッドの上に投げ出された下肢に頭をうずめて、相手のペニスを握って咥えて好き勝手に舐め弄る。どんないたずらを仕掛けたいのか聞かれてフェラさせてと言った最初、それはいたずらじゃなくて奉仕じゃないのかと返されたけれど、これが間違いなくいたずらなのだということは、いい加減相手もわかっているだろう。
 時折チラリと目線を上げて確かめる相手の顔は、随分と困った様子だった。ただ、薄っすらと上気させた頬や乱れる息遣い、何より手と口で触れている欲の象徴が大きく形を変えていることから、相手が充分に快感を得ていることは明白だ。
 何度か見る機会があったものの、触れさせて貰えた事はなかったし、じっくり見つめることすら嫌がられていたし、チラと見たそれが反応している様子もなかった。正直、結局のところ口先だけで、いざというとき勃たないのでは、なんて思ってしまう気持ちは間違いなくあったし、刺激に反応しているだけだとしても今現在はっきりと硬く勃起している事が嬉しくて仕方がない。
 まぁ半ば予想通りの大きさに、この後のことを思って多少憂鬱にもなるのだけれど。
 卒業するまで手は出さない、という相手の意思の固さがわかってから先、体を慣らし続けるのは止めていた。代わりに、数ヶ月前から少しずつまた慣らし始めていた。
 とはいえ、充分と言えるほどの準備が出来ているわけじゃない。自室は与えられているけれど鍵がかかるわけじゃないし、パートで働きに出ているおばさんは学校から帰るくらいの時間には帰宅していて、基本家の中に一人という状態になれなかった。夜になれば、それなりの頻度で土産だおやつだと何某かを抱えて踏み込んでくる男もいる。
 ゆっくりじっくり慣らすような時間は取りにくかったし、それに特化した玩具類が入手できるはずもないし、そもそも、自分で自分の体を慣らして拡げるような行為に長けているわけでもないのだ。
 子供だった自分の体がどのように慣らされたかの記憶はあるが、当然懐かしむようなものではないし、実のところ、年々思い返すのが困難になってもいる。
 子供相手の行為は犯罪で、手を出す大人は悪で、子供がその行為をどう思っているかに関わらず子供は被害者でしかない。という一貫した態度を取られ続けたせいで、過去の自分をどう扱えばいいのかわからなくなってしまった。多少不快なことはあっても、自分なりの納得があって体を差し出していたはずだし、気持ちがいい思いが出来ることだってあったのに。いつか逃げ出すことを考え、それを支えに色々なものを飲み込み過ごしてはいたが、自分をただの被害者だなんて思ったことはなかったのに。むしろ男のくせに、子供のくせに、大人を惑わす加害者なのかと思ってすらいたのに。
 こぼれそうになるため息を唾液に絡めて飲み込むついでに、口の中のものを喉の奥まで迎え入れる。小さく呻く音を拾いながら、喉奥を使ってペニスの先端を絞るように撫でてやる。
「ぁあっ」
 唇を窄めてズルルと引き抜けば、こらえきれずと言った様子で少し高めの声が漏れて来たから、それで少しばかり気持ちが上向いた。
 このまま口でイッてしまえばいい。何年も使われていない、充分準備されたとは言えない尻の中がどの程度使い物になるのかわからないのだから、気持ちの良さそうな声を上げているこの状態を逃す手はない。
 そんなにされたらイッてしまうという訴えを無視して必死に頭を上下させ、口と舌と手とを存分に使って追い詰めていけば、そう長くは持たずに口の中に相手の精が吐き出されてきた。

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理解できない11

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 ホッと安堵の息を吐く。様子をうかがうように、背後から肩越しに顔を出してこちらの横顔を見つめる視線には気づいていたから、軽く振り向きゴメンと告げる。
「ここまでにするか?」
「ううん。続けて。というか、俺の反応なんて気にせず、好きにしていいよ?」
 ちょっと体をこわばらせた程度でこんな反応をされる方が、正直どうしていいかわからない。なのにあっさりばっさり、嫌だと返され驚いた。
「嫌、って、でも、抱いてくれるつもりで、ここにいるんだよね?」
「俺がお前を好き勝手するようなセックスがしたいわけじゃない、って言ってるだけだ。お前にも、ちゃんと一緒に楽しんで欲しいと思ってるよ」
「あー、うん、まぁ、かなり久々だし体もそれなりに成長したから不安な部分もなくはないけど、俺に酷いことして楽しみたいって欲求がないのは明白だし、好き勝手していいよなんて言う相手は一応俺だって選んでる。つまり、好き勝手されても気持ちよくはなれると思うし、どんな要求されたってちゃんと一緒に楽しめるはずだから大丈夫」
 そう作られたこの体が、たかが数年でそう変わっているとは思えない。だから安心して、好き勝手して欲しい。
 そう思っただけなのに、どうやらそれは相手が欲しい言葉ではなかったらしい。
「そういう話でもないんだけど、あー……難しいな」
 こちらの説得を完全に諦めきったような独り言を残して、体に回っていた腕が全て解かれしまう。スッと背中から遠ざかる相手の気配にこそ不安を煽られる。
 どうしていいかもわからないまま、慌てて立ち上がり追いかけた。といっても相手だってまだ体中泡だらけで、裸で、自分を置いてどこかへ行ってしまうわけがないのだけれど。
「どうした?」
 縋るように相手の腕に絡みつけば、驚かれるのも当然だった。驚かれて少しだけ冷静さが戻ってくる。どこへも行かないはずの相手を必死に引き止めた行動がにわかに恥ずかしくなって、今度は慌てて相手の腕を放した。
「な、なんでもない。それより、もう、あがるの?」
「そのつもりだけど」
 ここでしておく準備はもうないだろと言われて頷けば、シャワーの湯が向けられる。互いの体の泡を綺麗に流し落としてしまえば、ここには暫く用がない。用はないのだけれど、このどこか気まずい雰囲気のまま部屋に戻るのも、出来れば避けたいような気がしていた。
「あ、のさ」
 意を決して、バスルームを出ようとする相手の腕を再度捕まえ声をかける。どうしたと振り向いてくれた相手の顔を見返すことが出来なくて、そっと俯き相手の視線を避けながら口を開く。
「俺に好き勝手したくないのはそっちの都合で、途中で終わっちゃったけど、俺だけいたずらされたのは不公平だと思う」
 早口で言い募れば、戸惑うような「えっ?」という声が聞こえてきたけれど、それを無視して更に言葉を続けていく。
「俺だっていたずらしたい。好き勝手触って、弄って、煽りたい」
「えー……っと、ここで?」
「えっ、いいの?」
 何言ってんだという反応が返ると思っていたから、驚きに顔をあげながら確かめてしまう。食い気味に確認したのがおかしかったのか、相手がふふっと微かに笑ったのも嬉しかった。というかホッとした。
「不公平なのは事実だから、ダメだなんて言わないよ。でも好き勝手に俺を触って、弄って、煽りたいだけなら、ここじゃなくてベッドの上でも可能じゃないの?」
 ここでしか出来ないような何かをしたいのかと聞かれて首を横に振れば、じゃあ部屋に戻ろうと促される。さっきまでの気まずい雰囲気もいくらか解消されていたので、今度は引き止めることなく、相手の後を追いかけた。

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理解できない10

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 そう何度も機会があったわけではないけれど、風呂場への突撃は数回繰り返していたので、家の風呂場ではないものの、躊躇いも戸惑いもない。いつもどおり背中と腕とを力強くゴシゴシと擦ったあとは相手の手に泡立つボディスポンジを差し出した。
 手持ち無沙汰に相手が体を洗っていくのをじっと見守っていれば、すぐにおいでと声がかかる。慣れた調子で相手が立ち上がったあとのバスチェアに腰を下ろせば、相手も慣れた様子で背中と腕とを擦ってくれた。
 ただ、いつもどおりだったのはそこまでで、ボディスポンジを受け取ろうとした手はそっと降ろされ、後ろから回ってきた手が胸元や腹を擦っていく。慣れない感触のくすぐったさに軽く身を竦めながら、さすがに戸惑いどうしたのかと問いかける。
「どうしたって、そりゃ、卒業旅行終わったからだよ」
「どういうこと?」
「保護者と家族卒業したんだから、もう、お前にどう触っても、どこ触っても、いいかなと思って」
 これも前戯みたいなもんだろと続いた言葉を否定する気はないけれど、だったら、自分だって彼の背中と腕以外を洗っても良かったのではないかと思う。
「なにそれズルい。俺だって洗ってあげたかったよ?」
「言うと思った。けど、先にお前に好き勝手いたずらされたら、こっちが持たない」
「いたずらって?」
「んー、こういうこととか?」
 言われながらスポンジを持たない方の手まで前に回ってきて、えっと思った次の瞬間には、その大きな手のひらの中にキュッとペニスを握り込まれた。
「ひゃっ!?」
 突然の衝撃に驚き、肩を跳ね上げながら奇声をあげてしまう。
「いー反応」
 可愛いなと言いつつもおかしそうに笑って、その手はくにゅくにゅとまだ柔らかなペニスをいじり続ける。その刺激に反応して、ペニスが形を変えるのはあっという間だった。
「ちょ、えっ、やっ、やだっ」
「でもここもしっかり洗わないと」
「ぜ、絶対、それだけじゃ、ないっ」
 洗われていると言えないこともない手付きは、絶対に勃起したペニスの形を確かめている。相手はやっぱりおかしそうに笑って、だって前戯だしと悪びれる様子もなく告げてくる。更には、スポンジを手放した手が股の間にヌルっと差し込まれてくるから、またしても盛大に驚いた。
 変な形の椅子だとは思っていたけれど、見るのは初めてだったし用途もよくわかっていなかった。でも凹みに腕を突っ込まれたことでその形の意味は理解できたし、よく出来ていると感心してしまう気持ちもなくはない。ただ、すごい椅子だなどと、のんきに思っている余裕はないのだ。
 たまらず浮きかける腰を、ペニスを握る方の腕でぐっと抑え込むようにして阻止されて、下から股の間を探られる。泡立つボディスポンジを握っていた手はボディソープをまとってよく滑り、ぬるぬる擦られるだけでぞわぞわとあちこちの肌が粟立った。
「やっ、やっ、やぁあ」
 気持ちがいいというよりはくすぐったさの方が強くて、足をばたつかせてしまう。こちらが暴れたせいだろう。ペニスを握っていた手が外されて、背後からギュッと抱えられてしまった。
 拘束された、という意識に体がこわばる。それに気づいたらしい相手が、あっさり腕の力を抜いたのがわかった。

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理解できない9

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 卒業旅行と言ったって、一番の目的が夜に宿泊施設でセックスすることである以上、そう遠くへ行く気はない。週末を挟んで金曜か月曜に有給をとってもいいと言われたけれど、一泊で充分だと断った。
 結局の所、遊びはオマケだ。
 なんて思っていたのだけれど、どこの人気テーマパークランキングを見てもだいたい一位なその施設は、そこに位置するだけの理由が当然あって、つまりめちゃくちゃ楽しかった。夜のことを考えたら疲れ切るわけには行かないし、早めに切り上げるつもりだったのに、せっかく来たのだからと促されて許されるまま、ズルズルと閉園まで居座ってしまった挙げ句にホテルでは早々に寝落ちて、なんの卒業もないまま愕然と朝を迎えた。
 朝からどんよりと落ち込むこちらに、セックスするのは今度の土曜でいいだろと告げた相手が、せっかく来たんだから目一杯楽しんで帰ろうと促してくる。前日にも散々聞いた、せっかく来たんだからという言葉に、なんとなく最初っからこの展開を狙っていたんじゃという気がしたけれど、過ぎてしまった時間を巻き戻すことは出来ない。
 先延ばしされた土曜にもまた何かしらの理由をつけて約束を反故にされたら、今度こそ本気で怒ってやろうと思いながら、なんだかんだと二日目も遊び倒してしまった。
 そうして迎えた土曜の朝、支度が出来たら出かけようと言われて連れてこられたのは、なんのことはないただのラブホだ。あからさまな子供を連れて入れるような場所ではないので、過去に連れ込まれたことはない。そんなわけで利用するのは初めてだけれど、なんのための施設かは当然わかっている。
 卒業旅行という言い訳を既に使ってしまった以上、宿泊は無理だから夜には帰ると言われて頷いたあと、準備をしてくるとバスルームへ向かった。手伝うと言いながら追いかけてきた相手を追い返さなかったのは、既に準備の大半を終えていたからで、けれどそんなことを思っても見なかったらしい相手には、随分と怪訝な顔をされてしまった。
「中、洗ってきたって、お前……」
「言葉通りだけど。昨日の夕飯も朝ごはんも控えめにしてるし、さっき洗ったばっかだから、まぁ、やってる途中で汚いことにはならないと思う。多分」
 多分と付け足してしまったのは、あまりにも久々の行為に自信が持てなかったせいだ。正直言えば、控えるどころか食事は抜いて置きたかったくらいだから、汚れるような事が起きなければいいという希望混じりな自覚もある。
「体調悪くて食欲がないとかじゃなかったならいい。てかおやつ食べ過ぎたとか言ってたのも嘘かよ」
「こっちは体調心配されて、ちゃんと食べるよう勧められたおかげで、また抱いて貰えない可能性も考えてたんだけど」
「つまり、抱かれる前に食事控えるのはお前にとっての常識?」
「まぁ、そうだね。控えるっていうか、本当なら水分補給だけでも良かったんだけど、さすがにおばさんに心配されると思ったし、食べない言い訳考えられなくて」
「そうか。んじゃここ出たらお前が食いたいもん、腹いっぱい食って帰ろうな」
 どうやら夕飯は用意しなくていいと言って出てきたらしい。楽しみだと笑えば、相手もどこかホッとしたように笑う。抱かれる前に食事を抜いたり控えたりという発想自体が全く無かったようだから、きっと当たり前にそれを行ったこちらへ、罪悪感を抱えてしまったのだろうと思う。
「家でそこまで準備してきたってのは驚きだけど、とりあえずは理解した。で、今ここでする準備って何?」
「家でシャワー浴びれたわけじゃないから、普通に体洗っておこうって思っただけ。せっかく一緒に入ってるんだから洗いっこする?」
 背中こすってあげるよと言えば、じゃあお願いしようかなとあっさり了承が返された。

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理解できない8

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 童貞にいきなりフェラはハードルが高いと言われたはずだ。けれど一緒に暮らすようになってからの断り文句は全部、子供のうちはダメだというもので統一されていたから、すっかり意識の外だった。
「あー、そんなこと言ったかも。ただそれ、お前のフェラ断るための嘘」
 童貞だからという理由でフェラを断られた話を持ち出せば、相手もすぐに思い出したらしい。そしてあれは嘘だったと続いた言葉には納得しか無い。それなりの誘いを何度も仕掛けたけれど、童貞っぽいと思ったことなんてなかった。
「だと思った。けど、だったらそっちはなんの卒業旅行なの?」
「え、それ理由いるか?」
「え、一緒に卒業旅行しようって誘いじゃなかった?」
 顔を見ればどうやら違うのはわかったけれど、相手は違うとは言わず、何かを考えるような素振りをする。
「そうだな、じゃあ、お前の保護者卒業旅行、とかどうだ。もしくは家族卒業」
「え、家族?」
 さんざん子供扱いされてきたし、家の中にしろ学校生活にしろあれこれ気遣って調整してくれたり、目に余るような常識の違いは訂正してくれたり叱ってくれることもあったから、保護者卒業は納得だけれど、家族卒業には違和感しかなかった。
「俺たち家族だろ?」
「なにそれ初耳」
「まぁ確かにはっきり言ったことはないかもな。ただ、戸籍は弄ってないけど、お前がこの家の中でどういう存在かって言ったら、上二人とはちょっと年の離れた末っ子みたいな扱いなんだよ。少なくとも今は。てかそういう扱いに全然自覚ない?」
 あるわけないだろと言いかけて、いやでもどうだったろうとこの数年を振り返る。父さんとも母さんとも兄さんとも呼んだことがないし、自分の中で彼らを家族と思ったこともないけれど、この家の末っ子として扱っていたと言われれば、なんとなく思い当たるふしがないこともない。
 特におじさんやおばさんに対しては、この家の末っ子として扱われたと思える事柄があれこれ浮かぶ。同時に、本当の両親との間に何があったか知っている彼らが、何も言わずにただただこの家の一員として受け入れ、家族として接してくれていたことにも気づいた。
 それを素直に嬉しいと思うにはまだ少し時間がかかりそうだけれど、欠片だって不快ではないし、胸の奥がむずむずとするこの感じには覚えがある。いつか素直に嬉しいと言える日がくるだろう予感がある。
 ただ、目の前のこの男に対してはどうだろう。保護者は納得でも、兄のように振る舞われた記憶はない。高校卒業したらという言葉を引き出すためとは言え、何度も性的な誘いをかけていた相手なわけだから、さすがに弟としては扱えなかった、と言われればそりゃそうだろうとしか言えないけれど。
「おじさんとおばさんに関してはわかった気がする。けど、年の離れた弟って扱われてた気はしない」
「これでも一応努力はしてた。けど、わかりやすく兄貴面なんかしたら、お前が嫌がるだろうと思ったし、傷つけそうだとも思ったし、高校卒業したらって話がどう転ぶのかわからなすぎて無理だった」
「でも気持ちの中では、弟、って思ってた?」
「そういう部分は間違いなくある。だから、保護者だったり家族だったりを卒業してからお前を抱きたい、って意味で一緒に卒業旅行するのはいい気がする」
 嫌かと聞かれて嫌じゃないと返せば、嬉しそうにどこへ行くかを考え出す。一緒に携帯を覗き込んであれこれ言いながらも、頭の隅では、保護者や家族を卒業されてしまったら、彼との関係はどうなるんだろうと考えていた。

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