竜人はご飯だったはずなのに1

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 開閉できないはめ殺し窓から見える景色からは、時間の流れというものを感じない。朝もなく、夜もない。ついでに言うなら時計もない。
 それでも夜になれば世話係の小さな竜人がカーテンを閉めに来るし、朝になれば開けに来るので、朝と夜の区別はあるようだ。
 朝、カーテンを開けにやってきた彼は、同時に、コップ一杯分の水のような何かを持ってくる。それは夜も同様だ。
 竜人の唾液や精液なら体が受け付けるとわかってから先、試行錯誤の末生み出されたらしいそれは、とりあえず吐き出すこと無く飲むことが出来る、簡易的な食事だ。これを食事だなんて認めたくないけれど。
 成分が何かは聞いていないが、精液を薄めたものに何かを足しているのかなとは思っている。相変わらず排尿も排便もないし、汗だって多分殆どかいてないが、だからってこんなコップ一杯の液体で、半日も体の飢えがしのげるはずがないからだ。
 でも使っている精液は、食事担当の竜人のものではない気がする。足している何かのせいという可能性もあるが、わずかに感じる味も香りも、彼のものとは全く違う。しかも毎回同じでもない。改良中なのかもしれないが、だったら美味しく飲める方へ頑張って欲しい。だって毎回なんとなくマズい。吐くほどじゃないけど結局のところマズい。
 いったい何を飲まされているんだと思うと気持ちが悪くて仕方がないのに、成分を確かめてしまうのも怖い。聞いたら今度こそ完全に飲めなくなる可能性もある。
 マズいし出来ることなら飲みたくないと思いつつも拒めないのは、拒んだ結果の体の乾きと飢えを知っているからだ。
 食事担当の竜人が定期的に抱きに来てくれる、みたいな話だったけれど、それは思っていたより、というかこちらが望むほど頻繁ではなかったから、こちらの体力が消耗しきって寝込めば、世話係の彼にも食事係の彼にも、心配と迷惑を掛けてしまう。マズいから飲みたくないなんて、子供みたいな我侭で彼らを困らせたいわけじゃなかった。
 ベッドに腰掛けたまま、受け取ったそれを渋い顔で一息に飲み干す。今日のは比較的マシでよかった。ホッと息を吐けば、これを運んできた彼も一緒に安堵の息を吐く。
「良かった。今日の、マズくない」
「まぁ、相変わらず欠片も美味くはないけどな」
「データ取る、する。マズいは減る、思う」
「ああ、確かに」
 やはり毎回味が少しずつ違うのはわざとなのか。そしてこちらの反応を彼に報告させているのか。
 でもそのおかげか、ゲロマズなものを飲まされる率は確かに減っているような気もする。
「口直し、いるか」
「それはいる。てか美味くはなかったって言ったろ」
 ん、と顔を突き出せば、相手の顔も寄ってくる。少し上向き大きく口を開けて待てば、相手も小さく口を開けて、溜めた唾液をトロリと落としてくれる。
 口の中へ広がる甘み。惜しむように口の中で転がすが、それはあっさり喉奥へ消えていく。
「足りない。もっと」
 空っぽの口を開けて、ねだるように舌先を少し差し出せば、少し迷う素振りを見せるものの、再度顔が寄せられる。同じように舌先を突き出し、その上に乗った唾液をこちらの舌の上に落としてくれようとするのを、首を伸ばしてパクリと舌先ごと喰んでしまう。
 口の中に入れた彼の甘い舌を、うっとり目を細めながら、ちゅくちゅくと舐めしゃぶる。
「んぅっ、ううっ」
 抗議するように呻かれはしたが、突き飛ばされることはなかった。最初にその口に触れた時のことを思えば、すごい進歩だ。
 マズいから飲みたくないと拒むのが子供の我侭なら、マズいから口直しがほしいと彼の唾液をねだるのだって、十分子供の我侭の部類な気がするけれど。でも、最初ははっきり断ってきていた彼が、毎回マズいマズいと言いながら嫌そうに液体を飲み干すこちらに絆されたのか、やがて応じてくれるようになって、困った顔で照れながらも少しずつ、この口直しのキスに慣れていくのがはっきりとわかるから、どうにも楽しすぎてやめられない。
 いっそ、食事担当の彼が来られない間は、この世話係の彼が食事も提供してくれればいいのにと思う。唾液だけで飢えを満たそうとするなら、かなり頻繁にキスしてないとダメそうだけど。
 いややっぱダメだ。ちゅくちゅくとしゃぶり続ける内に、体の奥が疼いてくる。勃ちあがった性器で塞がれ、擦られ、腸内へたっぷり精液を注がれたいと、ハクハクと尻穴が開閉している。
 自分から口を離して、ゆっくりとベッドの奥側へ退いた。
「抱かれたい」
 熱のこもったため息を大きく吐き出しながら呟けば、伝えておくという言葉を残して部屋を出て行ってしまう。
「抱いてくれるの、お前でもいいんだけど」
 そっと零した声は、もちろん彼には届かない。

続きました→

 
 
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竜人がご飯4(終)

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 目覚めはスッキリとしていて体がめちゃくちゃ軽かった。隣では竜人の姿に戻った男が、まだ軽いイビキと共に眠っている。
 行為を終えたのは彼の変化の術が解ける直前で、要するに人型が保てている間いっぱいが食事の時間ということらしかった。
 竜人の姿に戻ってもわかる、色濃く漂う疲れの気配。ここでそのまま休めばいいと誘えば、相手は随分と驚いていた。躊躇う相手にこの後の予定はと聞けば、後は自室に戻って休むだけだと言うので、もう少しそばに居て欲しいと頼み込んで引き止めたのは自分だ。
 めちゃくちゃ広いベッドは、二人で横になってもまだ充分に余裕がある。だから、まぁいいかといった様子でベッドに沈んだ男の隣に寄り添えば、やはり相手は驚いたようだった。
 この姿が怖くはないのかと聞かれたが、今更過ぎて笑ってしまった。姿形は多少違っても、つい先程まで体を繋いで睦言を繰り返していた相手だ。
 倒すべき敵として対峙すれば間違いなく恐怖するだろうが、モンスター相手に戦闘を繰り広げていた記憶は既に遠い過去のものになっている。むしろ、殺してやれないと言って謝るような相手を、どう恐怖すればいいのかわからない。
 そう告げれば、そうかと言ったきり、彼はあっさり眠りに落ちてしまった。やはり相当疲れていたらしい。
 無防備に眠る姿は、こちらへの警戒心がまるでない証のようだ。事実、眠る彼に傷をつける術など一切ないし、そんな気持ちも微塵もない。
 どちらかと言えば、相手に対して感じるのは深い興味と好奇心だった。相手は本来の自分の実力では到底お目にかかれないレベルの竜人だ。しかも敵意も悪意もなく、自分を生かすために精を分け与えるという、信じがたい行動を見せている。
 疲れた様子の彼を起こしてしまうのが忍びなくて我慢していたが、一眠りした後の今なら、少しくらいは触れても大丈夫だろうか。
 体に掛かる布をそろりとどければ、仰向けに転がる相手の腹が見えた。確かに彼の性器をこの体に受け入れていたはずが、下腹部もツルリとして何もない。
 不思議に思って体を起こし、その周辺に顔を寄せて確かめる。それは見た目より先に香りで気付いた。
 覚えのある甘い芳香が、下腹部の一部から漏れ出ている。食事前だったら、迷わずそこへ舌を伸ばして舐め啜っていただろう。
 なるほど、性交時以外は体内に収まる仕組みらしい。
 人のように、その近辺を刺激したら、勃起して飛び出してくるのだろうか。などという下世話な興味で、その香りが濃い部分周辺を撫で擦ってみた。
 勃起したペニスが飛び出てくることはなかったが、香りが強くなるのを感じ、腹の隙間にじわりと汁が滲み出る。その汁に誘われて、とうとうその場所へ舌を伸ばしてしまった。ちろりと舐めとった汁は、キスによって与えられる彼の唾液とはまた違った、少し酸味のある旨さだ。
 性器を収めているのだろう袋の中は、濃厚な先走りの液体で満たされていて、差し込んだ舌ですくうようにベロベロと舐め回す。
「こら。なにをしてる」
 つい夢中になって舐め啜っていたら、どうやら起きたらしい男の声が静かに響いた。
「食べ足りない、ということはないだろう?」
 そっと肩を捕まれ引き剥がされる。
「もっと食べれそう。って言ったらまだ俺を抱く?」
 勃起させてよと言ったらダメだとそっけなく返され少し残念だった。
「この姿で抱いたらお前の体を傷つける。次に人型が取れるまで少し待ってくれ。それに今日は他に予定が詰まっている」
「それは残念。というか、次回もあるのか?」
「無事に食事が摂れたのだから、暫くは私がお前の食事として定期的に供される事になる」
 それを聞いてホッとする。
「なるべく、早く、来て」
 縋るように頼んでしまうのは、この部屋に一人閉じ込められる時間を思い出して、どうにも寂しく感じてしまったからだ。目の前の男にさんざん優しく抱かれたせいで、気持ちが弱っているのかもしれない。
「私が来れない間、できればお前を世話する者を戻したいのだが……」
「え、あいつにまた会えるのか?」
「無断でスリットに舌を差し込んで舐め回す、などということをされてしまうと、彼の身が危険な気がして考え中だ」
 初心な彼を襲わずにいられるならと言われて、うーんと唸ってしまった。美味しそうな香りを撒き散らすのは彼もまた同じだからだ。しかも、目の前の男からたくさんの栄養を貰って、体はメキメキと回復している。小さくても竜人だから力比べで勝てるとは思わないが、前ほど簡単に振り払われる事もないかもしれない。
「まぁ、だいぶ元気になったようだし、私が来れない間の暇が潰せるよう、何かしら考慮はしておこう」
 そう言い残して彼が部屋を去ってから程なくして、パタパタと走ってくる軽い足音が近づき、もどかしげに鍵を開けて飛び込んできたのは世話係の小さな竜人だった。
 体力が回復したおかげで、この部屋に運び込まれて初めてベッドを降り、部屋の中をウロウロ見まわっていた自分に、飛びつく勢いで抱きついてくる。
「凄い、お前、歩ける」
「あー、うん。腹いっぱい食べたら、元気でた」
「おまえ、食事、出来た。良かった」
 半泣きの声に、随分と心配をかけていたようだと気付いて、腹にまとわりつく小さな竜人の頭をそっと撫でた。撫でながら、さてどうしようかと思う。
 腹は満たされているからか、尻穴や腸内が蠢くことはないけれど、やはり甘い香りが鼻腔をくすぐってくるのだ。
 再度彼に逃げられたくはないからもちろん我慢するけれど、竜人の味をはっきりと知ってしまった上に体が動くようになった今となっては、これは結構きつい状況かもしれない。
 次の食事がいつなのかはっきりしないから不安でしょうがない。腹が減ってこの小さな竜人に襲いかかってしまう前に、はやくもう一度食事担当の彼に戻ってもらいたいと切に願った。

<終>

遅刻すみません。最後がどうにも迷って時間食いました。
適当ファンタジーにお付き合いどうもありがとうございました。いつか竜人受も書いてみたい……

竜人受け有りの続編が出来ました。読む→

 
 
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竜人がご飯3

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 外見に変化があるのかは知らないが、少なくとも中身はもう、確実に人と呼べない域に達しているのだという自覚はある。食事が摂れない代わりとばかりに、尻穴と腹の中とを切なく動かし、相手の精液を搾り取れと訴える体の欲求はあからさまだ。
 事実、相手の唾液を飲み込むだけで体の活力は目に見えて回復したし、腸内に精と思しき液体を吐き出されても同様かそれ以上の効果があった。だからこの行為は間違いなく自分にとっての食事なのだろう。
 迷うことなく自らをお前の食事だと言い切った男は、腰を振って喘ぎ乱れながらもっともっとと吐精をねだる自分に、淡々と雄を穿ちほぼ一定の間隔で精を分け与える行為を繰り返している。
 飢え切った体に染み渡るエネルギー源に夢中になっていた最初はともかく、ある程度満たされた後は色々と雑多なことに思考が向かう。だんだんと自分の痴態が恥ずかしくてたまらなくなるし、これから先もこうして生かされていくのかと思うと惨めだとも思う。
 人ではなくなったのに、人としての心が残っているのは厄介で面倒だった。
「ふっ……はっ、はぁっ…んんっ、んっ、ぅっ」
 尻穴を拡げて湿った水音を立てながら出入りする熱に、どうしたって感じずには居られず、けれど体を走る快感に任せてアンアンと響かせる嬌声が恥ずかしくなってなるべく声を噛む。腸壁がその熱に絡み締め付けてしまうのは自身でどうにも出来なかったが、尻を振り腰を揺すってより深い快楽を追ってしまうことも恥ずかしくなって、なるべく動かしてしまわないようグッと下腹部に力を込めた。
「泣かないでくれ」
 そう声を掛けられ、泣き出していたことに気づく。
 スライムたちに陵辱され続ける深い絶望の中、とっくに枯れたと思っていた。久しく流れることのなかった涙に驚きながら、ぱしぱしと目を瞬かせる。
「余計なことは考えるな。と言っても多分無駄なのだろうな」
 穿つ行為を中断し、優しい指先が涙を払っていくから、涙は更にあふれてしまった。
 淡々とした行為ではあるが、彼の気遣いや優しさはずっと感じていたから、申し訳ない気持ちもあるし、だからこそ恥ずかしいのだと身を捩りたくなるような焦燥もある。
「思考がめぐり感情が働くのは悪くない傾向だが、まだもう少し、本能に任せて食事を続けて貰えないか」
「こんな形で生き続けるのは、惨めだ」
「そうだな。しかし殺すことはしてやれない」
 わかっていると思いながら頷いてみせた。彼は申し訳無さそうに眉尻を下げる。
「すまない。けれどもう暫く、私を拒まないで欲しい」
「拒んで、ない」
「声を殺して、体を緊張させているのに?」
「それは……恥ずかしい、だけ」
「どんなに乱れても気にはしないし、食事だと割り切ることは出来ないだろうか」
「自分一人盛り上がってるセックスが恥ずかしいのは、これが食事だってわかってるからだ。拒んでるわけじゃないから、気にせずお前の精をこの体に吐き出してくれよ」
「なるほどセックスか。人の性交文化にはあまり詳しくなくて、勉強不足ですまないが、教えて貰えないか」
「な、何を?」
「もちろん、人間がどのようにセックスするかをだが」
 ぎょっとして聞き返したら、さも当然のようにそう返された。
 まさか竜人はセックスをせずに子孫を増やしているのだろうか。モンスター類の繁殖になど興味はないが、今現在こうして相手のペニスが体内に突き刺さっていることを思えば、人と同じような生殖行為が行われていると考えるのが妥当じゃないのか。
「竜人だって、するだろう?」
「しかし私のやり方では不満なのだろう?」
「え、あんた、だれに対してもこんなセックスするのか。これが俺の食事だからじゃなくて?」
「相手の体内に精を送り出すのが性交だろう」
「気持よくないの?」
「ある程度の快楽を受容しなければ、さすがに吐精も難しい」
「ならもっと、一緒に気持ちよくなってくれ。あんたも気持ち良いんだって、俺にもわかるように見せて。そしたら少しは、マシな気がする」
「わかった。努力はしてみよう」
 至極真面目な顔で頷かれて、なんだか面白い男だと思ってしまった。クスリと笑ってしまったら、相手もどこかホッとした様子で笑い返してくるから、いっそ可愛いような気さえする。
「動くぞ」
「うん。あ、ちょっと待って」
「どうした」
「キス、しないか」
「口からも同時に食事がしたい、という話……ではなさそうだな」
 否定より先に気づいてくれて何よりだ。
「人のセックスは腰振りながらキスもするし、相手の体を愛撫して、互いの気持ちを盛り上げるもんだよ」
「気持ち、か」
「その場限りってわかってたって、好きって気持ちはないよりあったほうがいい。少なくとも俺は、そういうセックスが好きだった」
「なるほど。どちらかというと、食事のためだけの性交では味気ない、という話な気がするな」
 確かにそうかもと返したら、わかったとの言葉とともに柔らかに唇が触れ合った。

続きました→

 
 
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竜人がご飯2

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 食欲だか性欲だかをそそる強い香りが部屋の空気を揺らしたのは、瞼も上がらないほどに死が近づいた時だった。
 きっと死んだことの確認にでも来たのだろうが、残念ながら少し早かったようだ。
 確実に死んでから戻ればいいのにバカだなと思う気持ちとは裏腹に、なんだかんだ嬉しい気持ちが湧くのは、彼に逃げられた後、孤独に死んでいく寂しさを少なからず感じていたからだろうか。
 こうして戻ってくれたのに、戻ってくれた嬉しさも、今までの感謝も、伝える事が出来ないのが悔やまれる。
 なんとかありがとうを絞り出せないかと、動かすことを試みる唇に柔らかなものが触れた。そしてすぐさま、こじ開けられた口の中に少しザラリとした舌触りの弾力ある塊と、トロリと甘い何かが流れ込んだ。
 先日一瞬だけ触れた彼の腔内の味に近いが、それよりももっとずっと濃厚な旨味がある。嚥下するのも一苦労ではあったが、ゴクリと飲み込んだ瞬間、飢え切った体にその液体が染み渡る気がした。
 次々と流し込まれるそれを無心で啜る。空腹は最大の調味料とは言うが、こんなに美味いものを食べるのは初めてだった。そしてそれは飲み込んだ瞬間からエネルギーに変わって行くようで、じわじわと力が湧いてくる。
 気付けばその旨味の出処である弾力のある塊に舌を絡めて、もっともっとと催促するように舐めまわしていた。
 ザラリとした感触を舌で撫でるとゾクリとした快感が走る。んっんっと鼻を鳴らせば、クスリと笑う気配がして、ようやく自分の身に今何が起きているのかを考えた。
 目の前の気配の主が、世話係の小さな竜人でない事はさすがにもうわかっている。彼が戻ってくれたわけではないのだ。そして甘い液体が相手の唾液だという事も、深いキスによってそれを飲まされていたのだという事にも、すぐに思い至った。
 恐る恐る目を開ければ、それに気付いた相手がゆっくりと顔を離していく。
 信じがたい事だが、そこに居たのは人だった。
 褐色の肌をした、がっちりとした体躯の大柄な若い男で、美青年と呼んで差し支えない整った顔をしている。もちろん初対面の相手だ。
「お前…、なに…?」
 上手く喋れずつっかえながらも問いかける。
「お前の食事だ」
 何者だと聞きたかったのを失敗したからか、シンプルで簡潔な答えが返された。
 彼の唾液を貪り食った挙句に体力を回復しているので、それは間違いではないんだろう。だから引っかかったのは、その答えの中身ではなく彼の発する声だった。初めて会う相手のはずなのに、どこか懐かしさと安堵を感じる。
「どっか…で、…会った?」
 それには肯定も否定も返らなかった。代わりに、再度顔が近づいて唇を塞がれる。
 差し込まれる舌はやはり甘くて、すぐに自ら舌を絡めに行った。今度は相手もただ唾液を与えてくれるだけでなく、絡めた舌を擦るように動かし、更には腔内のアチコチを舐めあげる。
 スライムによって口の中の性感帯も開発済みだが、甘い唾液のせいか気持ち悪さは欠片もなく、ひたすら美味しくて気持ちが良かった。
 身体中の肌が粟立ち、腰が甘く痺れてたまらない。尻穴と腸内はきゅんきゅんと疼いて、早く弄られ、そこにも彼の唾液や精液を注がれたがっていた。
 お前の食事だと豪語するからには、このまま抱いて貰えるのだろうか?
 そんな期待と共にたまらず腰を揺すって誘えば、口を触れ合わせたまま、彼もベッドに乗り上げてくる。そうすると、彼の体躯の大きさが良く分かる。
 自分も決して小柄ではないどころか、どちらかと言えば体は大きい方だ。その自分にでかいと言わしめる彼は、本当に人なのか怪しむレベルの体格だった。
 そう思ったら、気付いてしまった。彼の声は保護されたあの日、最初に声をかけて来た大柄な竜人のものと良く似ている。体の大きさも、多分これくらいだった気がする。
「なぜ?」
 唇が僅かに離れる隙を狙って問いかけた。
「なぜ、とは?」
 こちらの疑問に応える気があるのか、無視はされずに問い返される。
「なんで、人の姿、を?」
「この方が食べて貰いやすいだろうという判断からだ」
 確信があったわけではなかったが、どうやら相手は本当に人ではないのだ。普通の人間とはサイズが違いすぎるので、成功しているとは言い切れないかもしれないが、竜人が人に擬態できるとは知らなかった。
「やっぱり、竜人、なんだな。あの日、俺と会ってる? 俺を、助けに来たヒト?」
「良く気付いたな」
「声が。あと、目も似てるかも。それと体格」
 こんなでっかい人間を見たことがないと言ったら、少し困った様子で、体格まで変えるのはなかなか難しいと返された。魔法はあまり得意じゃないと続いたから、どうやら彼自身の魔法による変化らしい。
「魔法、使える竜人も居るのか」
「お前が知らないだけで、当たり前に大勢いる」
「そうなのか」
「まぁ、高位の魔族ほど、滅多なことでは人に関わらないからな」
「ならなぜ俺を助ける」
「知らなくていい」
「それは、助けたわけではないからか?」
「どういう意味だ」
「助けるというなら一思いに殺して欲しい。死なせて欲しい。それが俺の希望だと言っても、叶えてはくれないんだろう?」
「そうだな。わかっているなら、食事の続きに戻ろうか」
「待って」
 近づく顔を避けつつ告げれば、気分を害したようで眉間にシワが寄り口角が下がる。人の姿だから表情は格段に読みやすい。
「話せる元気が戻って何よりだが、少しお喋りが過ぎるぞ」
「いやだって、食事、どこまでしていいのかなって思って」
「好きなだけ食べていい」
「後ろ、からも?」
「なんだ。我慢ができないから早くしろ、という話か」
 おかしそうに笑われて、流石に恥ずかしくなってきた。羞恥の感情が残っていたことに驚きだ。
「お前を世話していた者に、抱かれたいと言ったのだろう。だからもちろん、そのつもりで来ている」
 体を引き寄せられ、ここへ連れられてきてから与えられた、簡易な作りの寝間着を捲られる。シンプルな貫頭衣で下着はないので、裾を捲られればすぐに尻がむき出しだった。

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竜人がご飯1

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 保護された身の新しい居住場所は、大きな屋敷の中の一室で、そこは無駄に広くて豪勢だった。めちゃくちゃ広くてフワフワで、肌触りの良いシーツが掛かったベッドは人生初とも言える快適さで、久々に心置きなく長い眠りにつけたのは本当に嬉しかった。
 とは言っても外出は許可されていないようで、常に外側から部屋の鍵が掛けられている。結局囚われの身であることは変わらない。しかしこの身の扱いは大きく変わり、そのまま世話係のような形で部屋に出入りする小柄な竜人からは、いたわりも気遣いも強く感じていた。
 特に食事が摂れず日々消耗していく自分を心配し、あれこれと食べられそうなものを探し回ってくれている事は、有り難くもあり申し訳なくもあった。
 ここへ来て最初に出された食事は、見るからに魔界産と呼ぶべき得体の知れない物が色々と浮かんだスープだ。それが馴染みのある見た目に変わっても、人間界の食材そのものを出されても、結局胃はそれらの食べ物を一切受け付けなかった。
 生の果実類は大好物だったはずなのに、いかにも熟れて食べごろな果実類を目の前にしても、美味そうどころか気持ちが悪くてたまらない。胃の中には吐くものなど何もないのに、芳醇なフルーツの香りに何度もえづいてしまったほどだ。
 そもそもスライムたちに嫐られ続けた日々の中、一度だって食事も排泄もしたことがない。擬似的な排泄は何度もさせられたが、あれは彼らによるパフォーマンスでショーでしかなかった。初期はムリヤリに導かれて吐き出した精を彼らが嬉々として吸収していたが、思えば吐精すら久しくしていない気がする。
 この体がどうやって生命活動を維持していたのかわからないし、それは救い出された今もわからない。ただ食事が摂れないことで確実に弱ってきていることは感じるので、魔法による物ではなく、スライムたちからなんらかの栄養を分け与えられていた事は確かなのだろう。
 世話係の竜人から試すかどうか問われた解決策もなくはなかった。それは尻穴から食事を流し込んでみる方法と、スライムを摂取してみる方法だ。
 食事を流し込む方法や、スライムの経口摂取で栄養が摂れるかはわからない。確実に効果が出るのはスライムを後口から摂取する事と言われたが、摂取とは彼なりにかなり言葉を選んだ結果で、要するにスライムに再度嬲られろという話に他ならない。
 もちろん断固お断りだった。
 このまま栄養摂取が出来ず、弱って死ぬならそれでいい。そう言った時の悲しそうな顔が忘れられない。
 人ほどに表情が豊かではない爬虫類顔でも、毎日顔を突き合わせていればそれなりに表情も読めるようになっていた。
 申し訳ないとは思う。気遣ってくれるのもわかる。それでも、生きるためにあんな生活に戻るのはゴメンだ。それでもさすがに、日々あれこれと世話を焼きに来る彼にまで、殺してくれとは言えなかった。
 好物だと言った生果実にすらえずいてしまった後は、彼が食物を部屋に運びこむことはなくなり、ベッドの中で眠る事が多くなっていた。ひたすら眠っていられるのは、エネルギー消費を抑えるためなのだろう。そしていよいよこの生命も終わるかと思った頃、その衝動は突然やって来た。
 様子見で部屋に訪れた彼の体から、なんとも美味そうな香りがする。それを意識したら、腹の中と尻穴がキュウキュウと蠢いて、彼に抱かれたくてたまらなくなった。
 尻穴を拡げられて中を擦られたい。腹の中を彼の精液で満たされたい。
 なんともおぞましい欲求は、そうやって他者からエネルギーを奪えという体の訴えだ。
「お前、苦しい。だいじょぶか」
 脂汗がにじみ額に張り付いた髪を、鋭い爪先で傷をつけないよう、そっと撫でるように払われただけでゾクゾクと快感が走る。
 スライムは拒否しても、相手が彼なら良いというわけではもちろんない。雄の竜人に抱かれるだなんて当然嫌でたまらないが、それでもやはり、スライムよりはましという気持ちはあった。ここへ来てからの日々はまだ短いが、散々気遣われ世話を焼かれて、多少は表情が読めるくらいには情が湧いている。
 そんな気持ちの緩みがこちらの反応にも如実に現れてしまった。
「ぁぁっんっ」
 甘く吐き出す声に、驚いた様子の彼が慌てて手を離す。
「もっと……撫でて、くれ」
 頼めば再度おずおずと手が伸びてきて、迷うようにそれでも数度髪を梳いた。
 やはり凄くキモチガイイ。しかし喘いだらまたすぐ止められてしまいそうで、グッと唇を噛みしめ呻く。
「どうした!?」
 呻き声を痛みと思ったのか、探るように顔が寄せられた。
 近づくほどに彼の放つ香りも強くなり、たまらずその頭へ手を伸ばす。引き寄せその口元に唇を押し当て、舌を伸ばして尖った歯だか牙だかの隙間へねじ込んだ。
 僅かに触れた彼の腔内は、驚くほどに甘くて美味い。
 しかし舐めすすり堪能する事は許されなかった。
「何するっ、お前、おかしい」
 加減を忘れた力で突き飛ばされて、ベッドの上を転がった。
「あっ……」
 戸惑いと困惑がにじみ、こちらへ伸ばしかけた手は途中で止まっている。
「お前が、食いたい。というか、抱かれたい」
 率直に告げれば、彼の顔にパッと朱が散った。頬を赤らめるなんてことが、竜人にも起こるのだと思うと面白い。というか俄然親しみがわいて思わず笑った。
「む、……むりむりむり。それ、俺、しない」
 クルリと背を向けて、走って部屋を飛び出していく。鍵をかけ忘れたことにも気付いたが、起きだし逃げ出す気力も体力も残っていない。
 暫く彼の反応を思い出して笑い続けたが、やがて疲れて目を閉じた。
 このまま暫く戻ってこなければいいと思う。飢えて死ぬのはきっともうすぐだから、そうなるまで彼にはもう会いたくない。会えばまた誘ってねだって、必死に彼を食べようとしてしまうだろう。これ以上彼を困らせたくはなかった。

続きました→

 
 
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BAD END回避(スライム姦)

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 自分が魔界の見世物小屋と思しき場所へ連れてこられ、スライムたちに陵辱される日々を送るようになってからどれほどの時間が流れたのかは定かではないが、その生活はある日唐突に終わりを告げた。
 それは体を宙に持ち上げられ、大きく開かされた足の間から腹に詰まったスライムたちが、自重によって落ちていくショーの真っ最中で、ずるりぬるりと腸壁を滑っていくスライムたちのおぞましい感触に呻き喘いでいた時だった。
 気持ちが悪いと思うのに、ゾクゾクと背筋を走る快感は、ここでの日々の中で覚えこまされたものだ。
 何を言っても叫んでも懇願しても無駄だった。何もかもとうに諦めきっていて、口から漏れる言葉は失くし、ただ苦しさに呻き快楽に喘ぐ。何も考えず体の示すままに声を漏らすのが楽だった。
 初めは何が起きたのかさっぱりわからなかった。
「あっ…んんっ、ぁ…ひゃっ?……んぁぁぃゃあああっっ」
 体の中からゆるりと落ちていたスライムたちが、急速に動いて次々と体外に排出して行くから驚いて、その感触に久々に大きな悲鳴を上げてしまった。
 宙に吊るされていた体も無造作に床へ下ろされて、体に纏わり付いていたスライムたちがそそくさとどこかへ消えていく。一切の拘束が解かれるのは、この場所へ連れてこられてから初めての事だった。
 ふと気づけば、先程まで目の前に並び、下卑た様子でこちらを見ていたモンスターたちの姿もない。ぼんやりと見回す室内では、客と思しきモンスターたちが慌てた様子で逃げ惑っている。
 自分も逃げるなどという思考も体力もなく、そのまま呆然と逃げ惑うモンスターたちを眺めていたら、肌をウロコで覆われた大柄な二足歩行のモンスターが近づいてきた。見た目の特徴的に雄の竜人とわかってはいるが、ここまで大柄な竜人と対峙するのは初めてだ。
 かつて戦ったことがある竜人は、せいぜい自分の背丈と同じくらいだったし、もちろんこちらは何人もの仲間が居た。それでもさすが竜人と思わされる強さだったし、戦闘態勢を整えた状態で出会うならまだしも、こんな状態で出会った所で何が出来るわけでもない。
 むしろこれはチャンスかもしれないと、わかりやすく怒気を孕んだその姿に、一筋の希望を見た気がした。
 近づいてくるのを黙って見上げていたら、その竜人は目の前にしゃがんで顔を寄せてくる。まるで瞳の奥の何かを探ってでも居るようだ。
 見るからに屈強そうな体躯をしていたし、こちらを射抜くように見つめる眼光も鋭いのに、何故か欠片も怖いとは思わなかった。卑猥な目的で近づいてきたのではないことがはっきりとわかる、彼の澄んだ瞳のせいかもしれない。
「意識ははっきりしているか?」
 久々に聞く人の言葉だった。体の大きさからも、周りを圧倒する力強い気配からも、相当高度な種族だろうことは感じていたが、目の前の竜人はどうやら人語を操るらしい。
 随分と流暢に人語を話すのだなと、場面に似合わずのんきにそんな事を思った。
「ダメか……」
 がっかりした様子のため息と共に立ち上がりかける竜人に慌てて手を伸ばす。とは言っても、久しく拘束される事に慣れきった体の動きは緩慢だ。
「待って」
 諦めきって喘ぐ以外に言葉を発しなくなっていたせいか、それだけの短い単語ですら、舌がうまく回らない。
「話せるのか!?」
「殺して、くれ」
 驚きの声からも僅かに動いた表情からも明らかだった喜色は、こちらの発した言葉ですぐさま霧散してしまった。
 すっと顔を逸らした彼は立ち上がり、遠くへ向かって何事か吠える。それは人の言葉ではなかったから、彼が何を言ったのかはわからない。
 やがて駆け足で近づいてきたのは、打って変わって随分と小柄な竜人だった。まだ子供というよりは、きっとそういう種族なのだろう。その小柄な竜人へ何事か託すと、それきり彼は居なくなってしまった。
 一旦姿を消した小さな竜人は、やがて清潔そうな布を抱えて戻ってきた。その布で裸の体を包まれた後は、軽々と言った様子で抱き上げられる。
 並んで立ったら自分の背丈の半分程度しかない体躯のくせに、やはり竜人だからなのか凄い力だ。
「お前、あばれる、しない。わかった」
 先ほどの彼ほど流暢ではないが、こちらの彼も多少人の言葉を話せるらしい。片言でも暴れるなという警告は理解して、わかったと返して頷いてみせた。
「お前、運いい。たすかる」
 こちらを気遣ってかゆっくりと歩き出しながらそんな言葉をかけられて、やはりこれはここに囚われている人間たちを救い出すための動きらしいと認識した。
 人を助けるのかと思うと不思議だったが、人間界にも囚われ無体な仕打ちを受けているモンスターたちを保護する活動がないわけではないから、きっと似たようなものなのだろう。
 助かりたかったわけではないのだが、どうやらこのまま殺して貰えそうにはない。それでもスライムたちに嫐られるためだけに、ただただ生かされているような日々から抜け出せることは、確かに幸運なのかもしれないと思った。

続きました→

 
 
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