雷が怖いので プレイ29

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 この部屋を人に貸すことはそれなりにあるらしい。しかも、極稀にAV撮影に使われることもあるそうで、基本は男女で女性が責められる側のプレイが多いというのは納得だが、興味あるなら今度呼んでやろうかと続いた言葉には驚いた。
 思わず顔を上げてマジマジと相手の顔を見つめてしまえば、すぐにおかしそうに笑いをこらえる顔になったから、からかわれたのだとわかって少しだけ唇を尖らせた。
「びっくりして涙止まったろ?」
 ふふっとこぼれた笑いは思ったより柔らかく、その笑顔が近づいて目尻にそっと唇が押し当てられる。確かに、あまりの驚きに涙は引っ込んでしまった。
「からかって、る」
「別に嘘は言ってねぇよ。ただ声は掛けてやるけど、見学だけで出演はなしな」
「当たり前だっ! ていうか、呼ばなくていい、です」
「お前、動画も結構見てるって言ってたけど、現場には興味なし?」
 男としての単純な興味ならもちろんあるけれど、目の前でどんなプレイを見せられるかわからないのは怖すぎる。それに。
「この部屋で撮影ってことは、いつか自分もされる可能性があるって考えられるのに、冷静に見てられるわけ、ない」
「残念だな。俺はそれ見たお前の反応が見たかった」
 目的はそこか。好奇心に負けて迂闊に飛びつかなくて本当に良かった。
「タイトル教えてくれたら、こっそり見るくらいは、する、かも」
「あー……一般流通してるようなのは、多分、ない。特に、お前が見てこの部屋だってわかるようなものは絶対ないはずだから、探そうとすんなよ」
「絶対なんだ」
「部屋主の俺が許可してねーもんが流通してたらオカシイだろっての。逆に万が一何かで見つけた時、知らせてくれたら報奨金出してもいいレベル」
「それは、あなたも出演してる、から?」
 彼の仕事についての興味は尽きないのだけれど、もしかして、仕事でセックスだったりSMのプレイだったりをする人なんだろうか? そこで性欲を発散するから、自分相手に気持ち良くなる必要がないんだろうか?
 さすがに今までその可能性を考えたことはなかったのだけれど、AV撮影なんて話が出てきたら、ありえる気がしてきてしまう。
「いや。さすがにそれはもう断ってる。そもそもよっぽどのことがなけりゃ、部屋貸すだけで撮影に同行なんてしないし興味もない」
「でも昔は、出てた?」
 もうってことは、断ってなかった頃があったって事だ。確かめるように聞けば、相手はあっさりそれを認めてしまった。
「どうしても断れない事情があった頃はな。それも流通はしてないはずだから、探すなよ」
「それって、仕事?」
「厳密には違うが、近いものではあるかもな。ついでに言うと、映像残さないプレイの誘いになら、金積まれて応じることは今もある。部屋を貸すことも含めて、副業と言えないこともない」
「えっ……」
「お前以外に愛人も奴隷もペットも持ってないし、個人的にプレイを楽しむような相手も作ってないが、全く誰ともしてないわけじゃないのは事実だって話だ」
 AV撮影なんて全く現実感のない話から、唐突に今現在の話に戻って、とうとうはっきりとお前以外の相手を抱いていると告げられたわけだが、唐突過ぎて感情がついていかない。
「今回は部屋貸しただけで俺は参加しなかったけど、頼み込まれて参加する場合はある。ただ頼まれて応じるのはせいぜい複数プレイがしたいって場合くらいで、別の誰かに調教させたいとかされたいって話も断ってる。今現在、一対一で関係を持ってるのはお前だけだよ」
 安心したかと問われても、やっぱり思考がついていかない。というよりも、今言われたことを、素直に喜んでしまっていいのか判断がつかなかった。
「意図的に隠してたつもりはないし、お前がお前以外の存在をここまで気にすると思ったこともなかったから、今日は可哀想なことをしたな」
 さっき、プレイの痕跡で気が散っていることを、すぐ彼に知らせなかったことを全く理解できないと言っていたけれど、それでも、こちらがそのことで酷く動揺したりショックを受けたのだという事は、事実として受け止めてくれているようだ。
 そして、ようやっと、彼の言葉が頭のなかに届いて、理解とともに胸の中に落ちてくる。
 そこに嫉妬の感情はなかった。だって自分とのぬるいプレイを考えたら、他の誰とも関係を持たずに居ることのほうが不自然だし、今現在、彼と一対一で関係を持っているのは自分だけだということに、やはりホッとしたし嬉しいとも思う。
 なのに、嬉しいことが、切ない。これを素直に喜べそうにはなかった。
 自分の持つ感情が、一方的なものだという自覚はある。彼が継続して関係しているのが自分だけだとしても、特別なただ一人として、彼に想われているわけじゃないことは嫌というほどわかっていた。なのにお前だけだよなんて言葉を聞いてしまうと、無駄だとわかっていてさえ、期待を持ってしまいそうになる。

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雷が怖いので プレイ28

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 金が足りないかという問いかけにはもちろん首を横に振ったけれど、なら早く抱かれたいからかという問いには首を横に振ることも頷くことも出来ない。
 想いを自覚してから、抱いてとねだることはしなくなったけれど、もちろん彼に抱かれたい気持ちが消えたわけじゃない。でも早く抱かれたいから嫌だと言ったわけではなかった。
 少しでもたくさんバイトに通いたい理由を、彼への想いを隠して告げるのは難しい。そして何も言えずただ黙って固まる自分は、彼からすれば肯定しているも同然だったんだろう。
「お前、自宅で自分で拡げる練習とかする気、ある?」
「ど、ゆ、……いみ」
「気が乗らなくてキツイおしおき食らうより、その分家で頑張りますって方がいいかと思って。家で頑張った分も給料は出してやるし、期間が開いてせっかく慣らしてるアナルが閉じる心配も減るだろ」
 ああ、全然わかってない。でも早く抱かれたいせいで嫌がっていると思っているなら、こんな提案も仕方がないのかもしれない。ただ、お前に構う時間を減らしたいっていう意味合いの提案とも取れるから、不安で気持ちがグラグラと揺れた。
「俺が、バイト来るの、迷惑ですか? 自分でアナル開発して、ここに来る時は即あなたのペニスが入るようにしとけって、思うように、なった?」
 以前、そんなことまで要求する気はないと言っていたけれど、別の特別な相手が出来てその子に構う分、こちらの相手が面倒になってきたという可能性は大いにあると思う。そしてそんなことを考えてしまったせいで、じわじわどころじゃなく涙が溢れて、こらえきれずにしゃくりあげた。
「は? なんでそうなる。てかそんなこと全く思ってないから、そんなに泣くな」
 いきなり激しく泣き始めてしまったことに焦った様子で、宥めるように何度も背を撫でられる。
「だってぇ……」
「だって、なんだよ」
「俺に時間割くより、他の子とするほうが、良くなったかも、……って」
「他の子? なんだそれ」
「俺以外に雇ってる、愛人」
「んなの居ないけど?」
 思いっきり不審気な声がする。でも愛人じゃなくて奴隷とかペットかもしれないし、間違いなくこの部屋を別の誰かと使ったのだから、居ないなんて言葉を信じられるわけがなかった。
「じゃあ、奴隷? ペット?」
「いや居ないって。てか今までそういうの、気にしたことなかったろ。どうしたんだよ」
「だって……今までは、隠してくれた、から」
「隠すって何を?」
「俺以外の、存在」
「いやだから、隠すも何も、んなの居ないって言ってんだろ」
 イラつきの混ざる困惑が伝わってくる。なぜ気付かれたか思いつかないのか、言い繕うような様子が一切ないから、それが却って彼の言葉に真実味を持たせている。嘘をついているようには感じなかった。
「でも今日、この部屋入った時、微かに塩素の匂い、残ってました、よ」
 騙されてなんかやらないという気持ちで伝えれば、緩やかに背を擦り続けていた手がピタリと止まる。思案するような沈黙が落ちて、ほらみろと思いながら、零れそうになるため息を飲み込んだ。
「お前、まさかと思うけど、今日、気が散ってたのって、それが原因?」
 やがて恐る恐るといった様子で尋ねられる。珍しい彼の様子に、やはりそれくらい動揺させる事案だったんだと思いながら、小さく息を吐いて頷いた。
「お前……」
 続く言葉はなくて、代わりに随分と大きなため息が聞こえてくる。こちらが怒られる謂れはないはずだけれど、それでもそのため息に反応して身が竦む。それに気付いた相手が、別に怒ってるわけじゃないがと前置いてから口を開く。
「俺が他の愛人なり奴隷なりペットなりとプレイした痕跡に気付いたってのを俺に知らせることが、お前にとっては、キツイおしおき受けるより躊躇うことだってのが、まったく理解できない」
「やっぱり、居るんだ……」
「居ないっつってんだろ。じゃあ先そっちの誤解から解いとくか」
 部屋貸しただけだよと続いた言葉に、今度はこちらが呆けた声を出してしまった。

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雷が怖いので プレイ27

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 おしおきを受け入れて、お尻で気持ち良くなることだけを考えて、玩具だけの刺激で吐精する。
 たぶん、した。出来たはず。
 途中から意識が随分ともうろうとしてしまったけれど、ちゃんと「良く出来ました」と褒めてくれる声も優しく頭を撫でてくれる手も覚えている。ただ、その直後に、目を閉じて少し休憩しなさいと言われて、そこで一度意識を手放してしまった。
 意識が戻ったときにはお尻の中のものはすっかり取り出されていたし、体も拭かれてすっきりしていた。おしおきは終わって、いろいろな後始末も済まされていて、どうやら彼の膝枕で寝ていたらしく、頭の下があたたかい。いつからそうしてくれていたのか、大きな手の平が何度も頭を撫でていく。
 瞼を持ち上げれば、愛しげに見下ろす彼と視線があった。
「ああ、起きたな」
 優しく笑いかけてくる彼に軽く頷いて、でもすぐに持ち上げた腕で隠れるように目元を覆う。目の奥が痛んでジワジワと涙が浮かんでくる。胸もキュウキュウと締め付けられて痛い。
 先程よりも少し強く感じる、塩素の香りのせいだった。これは最初に感じた残り香とは違う。
 一度目よりもかなり曖昧に、先走りに混ざるように白いものを零した後、玩具の振動を止められて安堵で体が弛緩した。そのときに少し漏らしてしまったのを、綺麗に片した結果の香りだ。
 おしおきの一部として、漏らすように言われたのかどうかは、イマイチはっきりと覚えていない。ただ、大丈夫だからと促す声に、甘い幸せを感じた気がする。
 でも今はその事実が、酷く辛い。
 だって名前も顔も知らない別の誰かに、対抗してしまった。同じようにこの部屋の中を汚すことで、まるで上塗りするみたいに自分の存在を残して、それを喜んでしまった。
「どこか体が辛いか?」
 泣いていることは隠せない。確認するように問う声に首を振れば、それなら起き上がれと言われた。
「泣いてていい。お前を抱きしめたいだけだ」
 頑張ったぶん甘やかしてやるからと、既にひどく甘やかな声に促されて起き上がる。
「ほら、おいで」
 ベッドのふちに座る彼の腰を跨ぐように座って、正面から抱きつくようして抱えられた。宥めるように背中をそっと擦られて、少しずつ体の力を抜いていく。大きな胸に体を預けて、ジワジワと涙が浮かび続ける目元を、肩のあたりに押し付けてやる。
 一体どれくらいの時間、そうやってただただ抱きしめられていただろう。ずっとこのまま、彼に抱っこされてあやされていたい。でもこの優しさもぬくもりも、自分だけのものじゃない。
 考えちゃいけないと思うのに、自分が金銭契約した彼の愛人であることも、それすら彼の気まぐれな提案で始まった遊びみたいなものだってことも、自覚するほどに辛くなる。彼の仕事や生活を未だにあまり知らされてないことも、自分のために用意されているのは基本土曜の午後の数時間だけだってことも、意識すれば辛くなってしまうのに。今回さらに、きっと自分以外の特別な誰かが居るはずだって、わかってしまったのが本当にしんどい。
「おしおき、そんなに辛かったか?」
 いつまでも思い出したようにグスグスと鼻を啜っては泣き続ける自分に、とうとう少し困惑した様子の声が掛かった。でも辛いのは、泣いている理由は、さっきのおしおきのせいじゃない。
 フルフルと首を横に振って否定を示したけれど、でも信じては居ない様子で、更に苦笑が深い様子の声になる。
「いつになく責めちまったし、辛くなかったわけ無いだろ。さすがに少しやりすぎたって自覚はある。悪かったな」
 謝らなくていい。彼がそうするだけのことを、多分自分はしてしまったのだから。いつだって余裕でこちらを気遣う彼に、やりすぎたと感じるくらいの衝動が湧いたというのなら、それはそれで嬉しい気もする。
 もう一度首を横に振ったけれど、でもそれもやはり、彼の困惑を深めただけかもしれない。
「なぁ、一つ提案しておきたいんだがいいか」
 疑問符もつかない問いかけに、なんとなく嫌な予感がした。でもさすがにこれに首を横に振ることは出来そうにない。コクリと頷けば、彼が小さく息をついてから口を開く。
「お前が迂闊なのは今更だが、さすがにあそこまでぼんやりされると気分が悪い。このバイトを無理強いしたつもりはないし、お前が月に必要だって言ってた額は毎月余裕で超える支払いをしてるだろ。今日は気が乗らないってだけで休んだって構わないんだから、そういう時はちゃんと断ってくれ。お前が、おしおきされるのが好き、ってタイプじゃないのはわかってる」
 とても、わかりました、なんて返せるような提案じゃない。だって彼と会えるのは週に一度のこの時間だけなのに。どんなにキツイおしおきだって、例えばさっき、お願いだから別のにしてと頼んだような、痛くて辛くてちっとも彼が楽しそうじゃないおしおきだって、それじゃなきゃダメって彼が言うなら、ちゃんとそれも受け入れるから。だから、このバイトを出来る限りたくさん、続けさせて欲しい。
「いや、です」
 ぎゅうっと相手の体にしがみついて、絞り出すように吐き出した。

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雷が怖いので プレイ26

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 とても足を抱えた体勢を維持出来ない。外してしまった手を、救いを求めるみたいに彼へ向かって伸ばした。
 払われてしまうかと思った手は、けれどあっさり彼を捕まえる。身を寄せてくれた彼に必死でしがみつけば、少しばかり浮いた背中を支えるように腕を回され、ぎゅうと強く抱きしめてくれた。辛さや苦しさではなく、嬉しさで新たな涙があふれ出る。
「ったく、別のおしおき要求とは、随分えらくなったもんだ」
 呆れの交じる声は、それでももう、冷たく響いて心を突き刺してくることはない。そしてごめんなさいと告げようとした声は、またグリっと押し付けられたローターによって汚く善がる声へと変わってしまう。
「う゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛っっ」
「苦しいか?」
 かろうじて首を横に振れば、喉の奥で笑われる気配がする。体は追い詰められて苦しくてたまらないけれど、でもさっきまでに比べれば全然マシだった。彼の腕の暖かさに包まれて、彼の声を聞いて、笑う気配を感じて、心の苦しさが少しずつほどけていく。
「いい子だ。じゃあ、このままもーちょい頑張れ。おしおき、続けるからな?」
 優しい声音でほんのりと語尾を上げた問いかけに、嫌だの無理だの言えるはずもない。相手だって、拒否が返るなんて思っているはずがない。だから頷く間も強い振動は前立腺に押し当てられたままで、体はあっさりと、半ばむりやりに絶頂へ向かって駆け昇っていく。
 体にグッと力が入って、反ってしまう背中を強い腕に支えられる。玩具の振動とは別に腸内が収縮してガクガクと腰が揺れた。
「ぁああ、あ゛あ゛っ、あああ、で、るっっ」
 頭の中が白く爆ぜて、ペニスが震えて先走りよりも濃いものがドロリと吐き出されていく感覚。とうとう玩具にイカされてしまった。
 ほんの少しガッカリしたような寂しさはあるものの、彼の指に直接弄られてではなく射精できたことと、おしおきの後はいっぱい甘やかして貰えるはずだという期待混じりの安堵に包まれて、ホッと息を吐きだそうとした。
「ぁ、ぁあ、あ、なん、で」
 お尻から抜け出ていったのは彼の指だけで、ローターは依然としてそこで震え続けている。
「キツイおしおきするって言ったろ。せっかくだからこのまま、玩具だけでイケる体になろうか。他のことなんか考えてる余裕ないほど責めてあげるから、お尻で気持ち良くなることだけ考えてな」
 ブーンと鈍いモーター音を響かせながら、起動済みのローターがアナルに押し当てられた。
「っぁあ、ん」
 ゾワゾワっと一瞬にして肌を粟立てている間にも、それは振動したままゆっくりとアナルに押し込まれていく。それはすぐに腸内で震え続けるローターに接触し、お尻の中で二つのローターがカチカチとぶつかりあって暴れている。
「あっ、あっ、ぁあ、ああっ」
「次の玩具は何がいい? バイブでローターごとナカかき回してやろうか? それとも、もう二個くらいローター突っ込んでやろうか?」
 楽しそうな問いかけがどこまで本気かわからないが、想像しただけでも血の気が失せた。
「っても、自分で選べるような余裕ないよなぁ」
 結局ローターをさらに一個追加された後、プラグでお尻に栓をされてしまう。後はもう暴力的な快楽に晒されながら、彼の腕の中で身悶え続けるだけだった。
 そう。彼はずっと、キツイ快楽に暴れる体を抱きしめて、宥めるようにあちこち擦ってくれながら、頑張れとかキモチイイなとか甘やかな声を掛け続けてくれていた。いっぱい泣いたし、すぐに彼の言葉を聞き取るような余裕なんてなくなったけれど、でも宥め続けてくれているのは感じていたから、ムリだとかイヤダとかヤメテとかを口に出さずに耐えられた。ごめんなさいと繰り返すことも、許しを請うことも、しなかった。

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雷が怖いので プレイ25

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 姿勢はそのままで、彼の指が抜け出た代わりに振動の強力な小型のローターが、お尻の中に埋められる。もちろんそれは、ちょうど前立腺を刺激するような位置に置かれていて、その刺激だけで吐精しなさいと言い渡された。上手にイケたらおしおきは終わりにするから頑張れとも、口調だけは優しい意地悪で少し冷たい響きの声が告げた。
 確かにお尻だけでイケるようにというか、トコロテンはするようになった。でも未だに無機物の玩具でその状態になったことはない。ローターでもスティックでもバイブでもディルドでも、そこそこの太さがあるもので擦られてさえ、お尻がキモチイイって感じるようにはなったけれど、どうにも玩具にイかされるということに抵抗感があるらしい。
 キモチイイのにイケなくて、ドロドロに蕩けてもうイキたいと啜り泣く体を抱きしめて貰って、彼に縋りながら、もしくは彼の胸や腕や肩に顔を押し付けながら、彼の指で前立腺を弄ってもらう。大丈夫だからこのまま出せと、甘やかに射精を促されて、ようやくナカの刺激だけで吐精する。
 彼の腕の中だから、そして彼の指だから、そこまで感じることが出来るし、お尻だけでイッちゃう姿も晒せる。
 それは間違いなく、彼への恋情を自覚してしまったせいだけれど、そんな事情はもちろん彼の知るところではないし、早く玩具相手でもトコロテンする体に躾けたいんだろうこともわかっている。トコロテンの先があることも、いずれは吐精の伴わないドライオーガズムも教え込まれるんだろうってことも、知ってる。
 それにこれはおしおきだから、無理だとか出来ないとかの泣き言は言わないつもりだった。もしかしたら彼が言うように、ちゃんと集中すればローターの刺激だけでトコロテンが出来るかもしれない。玩具じゃ嫌だってのは自分の精神面の問題で、体はもう間違いなく、そこへの刺激で吐精出来るようになっている。
 でもいつもとは明らかに違う雰囲気と、時折与えられる痛みに、あっさり心が悲鳴をあげた。だって彼が全く楽しそうじゃない。途中からは黙ってしまって、冷たい瞳だけが自分に向かって注がれている。
 別のことを考えて、行為中に彼を蔑ろにしたことを怒っているのかは、正直もうよくわからなかった。
 パァンと乾いた大きな音が鳴って体が跳ねる。またお尻がじんわり熱くなる。その熱が引いて、叩かれたショックをどうにか飲み込んだ辺りで、思い出したようにまた叩かれるのを繰り返していた。
 痛みだけなら最初の数発のが痛かったと思う。今のは音の割に痛みは少なくて、ローターのもたらす強い快楽と混ざってしまうからか、その軽い痛みを辛いと思うことはなかった。でもその大きな音に驚くのと、やっぱり彼に叩かれるという行為そのものが苦しい。それを楽しんでいる様子が欠片もないから尚更、そんな真似を彼にさせている自分に、腹が立つしガッカリだし悲しくなる。
 ごめんなさいと零しても、もう、何の謝罪かと聞いてもくれない。逆効果で怒りを煽ったのかもわからないくらい、彼の様子に変化はなかったから、そのままごめんなさいを繰り返した。
 一度苦しさを吐き出してしまうと、もう止まらない。
 怒らせてごめんなさい。叩かせてごめんなさい。玩具で上手にイケなくてごめんなさい。許して。怒らないで。優しくして。こんなに苦しいのは、全部おしおきだからなの? このおしおきじゃなきゃダメなの? 他のおしおきがいい。お願い。他のにして。これもうヤダ。いつもと違う。本当にごめんなさい。もう許して。あなたの指じゃなきゃイケない。イキたくない。ごめんなさい。痛いおしおきでもいいから、せめてもっと優しい顔を見せて。お願いだからいつもみたいに笑ってて。
 グスグスと泣きながら思いつくまま口走り懇願すれば、彼は嫌そうに眉を寄せてみせた後、ずぷっとアナルに二本の指を突き立ててくる。
「ぁあああ゛あ゛あ゛」
 激しく震えるローターを捉えた指が、前立腺にそれをグイと押しつけてくるから、目の裏がチカチカと明滅した。

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雷が怖いので プレイ24

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 何か気がかりなことがあるなら先に話を聞こうかと言われたけれど、この部屋で誰に何をしたのかなんて聞けるわけがない。聞いたって同じことが自分にできるわけじゃない。ただただ余計な嫉妬を煽って、更に自分を追い詰めるだけだとわかりきっている。
 それにきっと始まってしまえば、余計なことなんて考えられなくなるはずだ。そう思っていたのに、彼の手に触れられ体がはっきりと興奮し始めても、ふとした瞬間にチラリチラリと顔も知らない別の誰かの事が頭の隅を掠めていく。
 しかもそうなることを見越していたかのように、今日は仰向けに寝かされていて、こちらの顔色を伺い続けている彼の顔はいつもより渋くて冷たい感じがしている。気持ちが彼と彼のくれる行為に集中出来ていないのだから、面白くないのは当然だろう。
 左右の膝裏をそれぞれ抱えて、なるべく大きく足を開き、膝を胸に引き寄せるようにして腰を高く持ち上げる。そうやって晒したアナルを、彼の指が拡げるように出入りしているが、バイブやスティックの無機物ではなく彼の指で直接弄られているのに、快感はしっかり拾えても蕩けるみたいな幸せな感じがなくて切ない。
「そんなに集中できてないんじゃ、たいして気持ち良くもなれてないだろ」
 大きなため息を零されて身が震えた。頷くことも出来ないし、否定に首をふることも出来ない。それなりに気持ち良くはなれているけれど、余計なことに気を取られてなければ、もっともっと気持ち良くなれるのもわかっている。
「やっぱり今日はおしおきが必要そうだな」
「ごめん、なさい……」
「それは何の謝罪?」
「大丈夫じゃ、なかった、から」
 話を聞くといった彼に、大丈夫だからいつも通り始めてと返したのは自分だ。
「うん。それで、どうしたら集中できるかはわかってんの? 気がかり、俺に話してみる気になったか? 聞いて俺に何が出来るかは別にして、お前の気持ちをそこまで引きつけてるのが何か、興味がある」
 言えたらおしおきは軽いものにするけど、言わないなら少し痛いことも入れるから覚悟してと言われた後、こちらの回答を待つように口を閉ざす。痛いことも入れると明言されたおしおきなんて想像がつかなくて怖いのに、だからって話せるかと言えばやっぱり話せそうになかった。言いたくないし、聞きたくない。
「あと五、数える間に話すって言わなかったら、キツイおしおき決定な」
 スタートしたカウントダウンは随分とゆったりしたペースだったけれど、それがゼロを数えても、結局何も言えなかった。
「お前、今、自分がどれだけマズい選択したか、自覚ある?」
 呆れ顔が寄せられて、低い声が冷たい囁きを落とす。僅かだがはっきりと怒りを孕んだ視線に恐怖して、逃げるようにそっと顔を逸らし、ごめんなさいと謝った。
「で、今度は何の謝罪? とりあえず謝っとけってだけの謝罪なんて、無意味どころか下手したら逆効果だからな?」
 指摘されてそれ以上言えることなんてなにもない。怒らせたことへの恐怖で、ただただ口に出してしまった謝罪だった。
「なんで何も言わねぇの?」
「だ……って、何、言えばいいか、わかん、ない」
「いつもはあんないい子なのに、わかんないのは別のことに気を取られすぎだからだろ」
「ひぃんっっ」
 そんな言葉とともにバチンと大きな音が響き、右の尻タブに走った痛みに思わず情けない声を上げた。強い痛みは一瞬だったけれど、ジンジンとした熱い痺れは続いている。痛みでと言うよりは叩かれたショックで、じわりと目尻に涙が浮かんだ。
 すっかり動きの止まっていた指が、またユルユルと腸壁を擦りだす。辛うじて膝裏を抱えたままでいたものの、すっかり落ちていた腰を慌ててグッと持ち上げれば、幾分柔らかな声がいい子だと褒めてくれた。でも、それにホッと安堵するような余裕はくれない。
「ぁうっ!」
 また音が鳴って、今度は左の尻タブに痛みが走った。腰を上げた分、きっと叩きやすくなっている。でもこれで逃げるように腰を落としたり、身を捩ったりすれば、よりキツイおしおきをされることになるんだろう。痛いこともすると言われて始まったおしおきなのだから、このまま受け止めるのが正解だ。
「ほら、ちょっと痛くしただけで、これ以上酷くされないようにって、ちゃんといい子な判断が出来るのに。気を逸らしているから、あんな黙ってカウントダウン待つようなバカな真似をして。話せないなら話せないって言って、自分からおしおきして下さいって言うべきだったんだよ。いつものお前なら、多分出来てた」
 そのまま続けて左右の尻タブを交互に二回ずつ叩かれ、叩かれるたびにその衝撃で声を漏らした。

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