2章 隆史に彼女
【昼休み】
祐希と悟史の教室に、お弁当を持った隆史が浮かれた様子でやってくる。
隆史:聞いて聞いて〜
祐希:なんかいいことでも有った?
隆史:そう!
:大ニュースだから聞いて驚け!
悟史:いやちょっと落ち着けよ
:てかまずは座れって
隆史:あ、はい
悟史に促されて、隆史も用意されていた椅子へと座る。
祐希:(どっちが兄なんだかって感じ)
:(悟史が一緒だと、隆史の新たな一面が見れたりするんだよな)
:(悟史と友達になれて良かったなぁ)
悟史:で、何が大ニュースだって?
隆史:俺、彼女できちゃった!
祐希:は?
悟史:マジで!?
隆史:マジも大マジ
:同じクラスの子でさ、俺のこと好きになっちゃったって
悟史:告白されたってこと?
隆史:うんそう
悟史:付き合うってなら、隆史も相手の子が好きなわけ?
隆史:あー……
:好きになる予定、的な?
祐希:(告白されたら付き合って、それから好きになるんだ……)
:(いいなぁ、女の子って)
悟史:相手どんな子だよ
:好きになれんの?可愛い?
隆史:なれるなれる
:可愛いよ!
隆史の言葉に、可愛い子ならきっと自信を持って告白が出来ただろうと思ってしまって、口から羨望の言葉がこぼれ落ちる。
祐希:いいなぁ……
悟史:えっ?
祐希:あっ、やばっ、声に出てた
隆史:羨ましいか?
祐希:あ、うん、そうそう、羨ましい!
:というか、おめでとう
:(笑え、俺)
:(ちゃんと笑えてるかな?)
隆史:あざーすっ
:あー祐希、それでさぁ……
隆史が申し訳無さそうに祐希の顔をうかがってくる。
祐希:うん、なに?
隆史:今日、一緒に帰る約束してたじゃん?
祐希:あ、あー、うん、いいよ
隆史:いいよ、って?
祐希:えと、彼女と帰るからって話じゃなくて?
隆史:そう!それ!
:え、いいの?
祐希:うん、大丈夫だから気にしないでいい
隆史:そか、ありがと
:祐希のそういうとこ、ほんっと好き!
祐希:そりゃどーも
:(親友、としか思ってないから言えるんだよなぁ)
:(こんな好き、言われたって喜べないよ)
隆史:てかこの埋め合わせはちゃんとすっから!
祐希:ん、期待しないで待っとく
弁当を食べ終えた隆史が早々に自分の教室に帰っていく後姿を、いつもならギリギリまで居座って喋っていくのにと思いながら目で追ってしまう。
悟史:大丈夫か?
祐希:え?
悟史:ショックだったんだろ?
:ちょっと顔色も悪くなってるぞ
祐希:え、嘘、顔に出てる?
:てか俺ちゃんと笑えてなかった?
:どーしよ、隆史も気づいてたかな
悟史:いや、あいつは多分気づいてないな
:浮かれきってそれどころじゃなさそうだった
祐希:そ、っか
:ならまぁいっか
悟史:俺はあんまり良くないけどな
祐希:何が良くないって?
悟史:っつーか、もしかしなくても、隆史が好きだったりする?
:もちろん、友情じゃない方の好きな
祐希:え、いや、なに、言って……
悟史:さっきのいいなぁって、本当に彼女出来て羨ましいって意味?
祐希:えっ?
悟史:隆史と付き合える女の子が羨ましい、ってやつじゃないの?
祐希:そんな、わけ……
隠していた気持ちを言い当てられて肯定できるわけもなく、何故こんなことを聞いてくるのかと焦って視線を落とす。
悟史:ごめん、困らせたいわけじゃないんだけど
:でも知っておきたくて
祐希:知りたいって、なにを……
悟史:隆史のことどう思ってるのか
祐希:それは、自他ともに認める親友で!
悟史:いや、さすがにさっきのでわかったよ
:祐希の片想い、なんだろ?
祐希:あ、ちがっ、あのっ、待って
:(どうしよ完全にバレてる)
悟史:大丈夫
:隆史に言ったりはしないから
祐希:絶対?
悟史:絶対に
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