罰ゲーム後・先輩受4

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 夕方、部活を終えて教室まで迎えに来た相手が、慣れた様子で顔を寄せて来る。手の平を軽く突き出しさえぎれば、相手はすぐに素直に身を引いていく。
「土曜はしなくていいよ」
 このキスがこちらのスキンシップ欲求を満たすために与えられているものなら、土曜の今日は必要がない。家に帰ってから好きなだけ相手に触れられるのだから。
「土曜は?」
 なのに相手は少し不思議そうに自分が発した言葉の一部を繰り返す。
「そう。土曜は。学校でしなくても家帰ってから出来るだろ?」
 だから早く帰ろうと言うように、カバンを手に立ち上がった。けれど相手はそんなこちらをじっと見つめてくる。
「どうした?」
「先輩たちに、止めさせるように言われたからじゃないんすか?」
 その口ぶりから、ランチタイムにキスの噂云々の話題が上がったことを、彼も知っているようだと思う。
 そういうお前は何言われたの、とは聞かずに、言われてないよと返した。
「本気の恋人ならキスもその先も俺とお前の自己責任。ってことで良いみたいよ」
「俺は、噂になるなってのは無理でも、あんま派手にやらかしてると後々面倒くさいぞって言われたんすけど」
 眉を寄せて何かを考える様子を見せる。多分それ以外にも色々言われたんだろう。というか何がどう面倒なことになるか、彼らなりの危惧を聞かせたに違いない。
 こっちが何言われようと知ったこっちゃないという態度を貫いているから、そうそう大きな揉め事にならないだけで、元々女子たちとの相手をコロコロ変える緩い付き合いだって快く思っていない層は居た。
 彼も決して噂に振り回されるようなタイプではないけれど、自分同様に何言われても知ったこっちゃないという態度を貫けるかはわからない。たとえ適当にあしらえたとしても、それが気持ちの負担にならないとも限らない。自分だって、人の噂の的になってあれこれ言われる煩わしさに、一々心が乱されずに済むようになるまでには、それなりに時間がかかっている。
 お前が恋人にしたのはそういう相手なのだと、知らせておきたい先輩心もわからなくはなかった。明確に自分との交際を反対されたり非難されたりしているわけではないのだから、むしろありがたい助言の範疇と思ったほうが良さそうだ。
「それ、お前だって校内でキスすんのヤメロとは言われてないんじゃないの」
「家行ってやれって言われたっす」
「なら土曜以外も家寄ってく?」
「いいんすか?」
 喜色の滲んだ声音に、もちろん良いよと返す。相手の気持ちが上向いたのを感じて、ついでに帰ろうと促せば、今度は素直に頷き、歩き出した自分の横を付いて来る。
「けど、お前が夕飯作るのは無しな」
「え、ダメなんすか」
 さっきの嬉しそうな声と真逆の、ショボショボと情けない声になって笑いそうになった。こんな反応で楽しげに食事を作ってくれるから、つい、こちらも甘えすぎてしまうんだ。
「いやだってお前、普段部活終わるの何時よ。そっから買い物して夕飯作ってとかやらせるの、申し訳ないにも程があるだろ」
「あー……じゃあ、ちょっと考えてみます」
「考えるって何を?」
「作りおきとか、後はまぁ、先輩に甘えてみるとか?」
「え、俺に甘えるってどんな?」
 思わずワクワクで聞き返してしまえば、後輩がぷふっと小さく吹き出した。
「そっすね。一緒に帰るんじゃなくて、先輩が先に帰って買い物してくれるとか。米研いで炊飯器セットしてくれるとか。俺が可愛くお願いできたら、やってくれたりしないっすかね」
 米は前日に俺がセットしても良いんすけどねと、やはりどこか楽しげに提案される。
 それくらい全然やれそうだけど、即座にわかったやるよと返すのはあまりに悔しい。だって甘やかされるばかりじゃなく、甘やかしてやりたいこちらの気持ちを、利用させて下さいと言われたも同然じゃないか。
「じゃあ後で可愛くお願いしてみて」
 少しだけ顔を寄せて、ベッドの上でねと耳元に囁いてやれば、平然と了解を返されてまったく可愛げがない。でもその後口数を減らした相手の横顔をふと窺えば、どう可愛くお願いするかを考えているのか、耳と目元をうっすら赤く染めながら思い悩んでいる風だったので、やっぱりたまらなく可愛い。
 家にたどり着くにはまだまだ掛かるのに、気を抜くとにやけかける口元を引き締めて歩くのは大変だった。

続きました→

 
 
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罰ゲーム後・先輩受3

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「あー、くそ。甘やかされてんなぁ」
 にやけかける口元を隠すように覆いながら、思わずこぼした言葉を拾ったのは、隣りに座る友人だった。
「思い出し笑い? やっらしー」
「うるせっ」
「まぁなんつーかさ、あいつお前に思った以上に本気らしいんだよね。つかマジに惚れてるっぽいんだよね」
「知ってる」
「お前に本気で惚れちゃう当たり、ちょっと何かズレてるとこもあるけど、根が真面目なすっげー良い子なの」
「知ってる」
「だよな。ならいいわ」
 友人はそれで済ませてくれる気になったらしいが、さすがに他のメンバーにとってはそれで済む問題じゃないようだ。
「良くねーよ!」
「けしかけた俺らの責任って話、したろ」
「キスしてるのマジとか、それ以上も時間の問題じゃねぇの」
 とっくにキス以上に進んじゃってるけどと、聞こえてくる言葉に苦笑していたら、やっぱり隣の友人が、こいつも思ったよりはあいつに誑かされてるっぽいから大丈夫などと言い出してギョッとする。
「え、どういう意味だ、それ」
「だってお前、あいつに甘やかして貰ってんの、嬉しいみたいだったから。あっさり振られたくなくて慎重になってるってのも、事実っぽいし」
 さらりと告げられる言葉に、顔が熱くなる気がする。しかも他のメンバーが揃って、マジで!? みたいな顔で見つめてくるから尚更だ。
「真面目従順系のいい子だけど、バスケはすごい勢いでガンガン上達してるような奴だもんな。あいつがお前に本気だってなら、落とされたのはお前の方じゃん? お前があいつを都合よく利用するために、誑かして惚れさせて恋人にしたってわけじゃないんだろ?」
「俺と恋人になるデメリットは教えまくったし、止めとけって話ならしたけど、それでも俺を選んだあいつを利用してるのも、事実っちゃー事実だよ」
 きっぱり拒絶出来ただろうところをそうせずに、寂しさを彼の想いで埋めている。
 はっきり自覚があってやったことではないけれど、誑かされて好きになったとは言われた気がするし、罰ゲームが終わることが寂しくてたまらなかったのも事実だし、無意識に彼が自分と恋人となることを選ぶように誘導してなかったとは言い切れない気もしていた。
「いやそれ、どう聞いても、お前が折れて受け入れたって話だし」
「まぁ、それはそう、なんだけど……」
 言われれば、そういう見方も出来ないことはない、気もする。でもやっぱり、自分が誑かされているというよりは、自分が相手を誑かした結果が今なんだろうという負い目のようなものは強い。
 けれど曖昧に同意してしまえば、友人はにっこり笑ってパンと一つ手を打った。
「はい、じゃあ、俺らが思ってた以上にあいつは雄で、こいつに好き勝手されて泣くような玉じゃないのは再確認できたから、キスもそれ以上も本気の恋人だってなら本人たちの責任ってことで」
 友人の鳴らした音が合図だったかのように、みんな揃って昼飯終了とばかりにガタガタと椅子を揺らして立ち上がる。
「ちょ、おい、待て」
「悪い悪い。だろうなってのはわかってたんだけど、せっかく一緒に昼飯食ってんだから、一応確認しておくかって思ってさ」
「だってお前の噂聞く限りじゃ、あんまあいつに不利って感じでもないしなぁ」
「でも一応、いたいけな一年生ではあるわけだから」
「万が一、百戦錬磨のお前の手に掛かって泣かされたら可愛そうだなぁという、先輩心もないわけじゃないっつーだけでな」
 慌てて声を掛けたが、銘々随分と好き勝手に言葉を吐くと、満足した様子で部活があるからと学食を出ていってしまった。残っているのは自分と、隣の席の友人だけだ。
「お前は、部活は?」
「行くよー」
「じゃなんで残ってんの」
「お前が不満そうだから?」
「いやだって何が何だかわかんねーっつーか、お前ら、俺に釘刺したかったんじゃないわけ?」
 校内でキスしてるって噂を認めたから、もっと何やら色々言われるんだろうと思ってたのに。
「したいって言われて断らなかったんだろ。クギ刺すとしたらお前じゃなくて後輩の方。性的に緩い相手選んじゃったんだからお前がしっかりしなさいねーくらいは言うかもだけど、言ってもどうせ止めないだろ」
「俺に、止めさせろとは言わないの?」
「平日も家連れ込んで夕飯食えば? とは思うけど、それが無理なら外でチュッチュするより学校内でチュッチュしてから帰るほうがマシな気はする」
「だよねー」
 平日の夕飯をファミレスやらファーストフードではなく自宅でと言うのも有りな気はしていた。ただコンビニ弁当買って帰って一緒に食おうという提案を相手が飲むかは問題だ。相手が作るとか言い出しそうで、部活上がりにそこまで面倒かけるのが嫌だなとは思うし、その確率が高そうで家で食べないかとはなかなか言い出せずにいる。
「噂もさ、今更お前が校内で男とキスしてたって聞いたって、ああやっぱ本当にあの一年男子が恋人になったんだ、って思われるだけだと思うんだよな」
「いや別に、噂はどうでもいいけど」
 言えば知ってると苦笑された。
「むしろ、お前があっさり俺らに噂認めたのがビックリだったわ」
「俺が誤魔化したって、あいつにその噂持ってったら、あいつが認めるに決まってる」
「ですねー。じゃあ何で俺らは、あいつじゃなくてお前に確認したんでしょう?」
「え、なんでだろ?」
 唐突の質問に、素でさっぱりわからず首を傾げる。
「お前の反応を見ただけに決まってんじゃん。お前もそれなりに本気であいつのこと考えてくれてるっぽいのがわかったから、俺らは安心してお前にあいつを預ける気になったわけですよ。いや安心しては言いすぎだけど」
 そこでニヤリと人の悪い笑みを浮かべてから、友人は更に続ける。
「あと、俺からすると、お前が思ったより後輩にメロメロっぽいのわかって楽しかったわ」
「ちょ、メロメロって」
 こちらがあわあわするのを更に面白げに見つめたあと、友人はカラの皿が乗った目の前のトレーに手をかけながら席を立つ。
「さて、俺もそろそろ部活行くけど、なんか言っておきたいこととかある?」
 別にないよと出来る限り素っ気なく返しながら、自分も学食のトレーを手に立ち上がった。

続きました→

 
 
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罰ゲーム後・先輩受2

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 お前どこまであいつに本気なのと、割合真剣な口調で聞かれたのは、二週間学食奢りの最終日である土曜のランチタイムだった。
 バスケ部の彼らはこの後部活で、自分はいつも通り教室に戻ってそれが終わるのを待つ予定だ。もちろんここに居る誰かを待つのではなく、正式に恋人となった男を待つためだけれども。
 つまりここに居る彼らは、自分よりも恋人であるバスケ部後輩のほうが付き合いが深い。ほとんどが中学時代にバスケを通じて知り合った顔見知りという感じで、はっきり友人なのは今もクラスが同じ一人だけだからだ。
 全く面識のなかった一年生男子と、知り合ってから一ヶ月足らずでごっこのつかない恋人になってしまったのは、彼らが仕組んで始めた罰ゲームがキッカケなわけだし、彼らからすれば、大事な期待の新入部員が自分たちのせいでヤバイ男に引っかかってしまった的な捉え方をしていてもおかしくない。というか多分その認識は間違ってない。
 だからもし、自分たちの交際に真っ向から反対してくる誰かが居るとしたら、彼らだろうと思ってはいた。いまのところ交際をぶち壊す気満々の敵意は感じていないけれど。
 今このタイミングなのは、来週からは揃って昼飯を食べることもなくなるから、その前に色々はっきりさせて置こうという感じなのかもしれない。
「どこまで、って、普通に本気でお付き合いしてるけど。というかこれ言うの二回目じゃない?」
 恋人宣言のあった日のランチタイムも、同様の質問をされていた。もちろんあの時も、本気で恋人になるよと返したはずだ。ただ、彼らの真剣さは格段に違うこともわかってはいる。あの時はほとんどが冷やかしで、大半が遊びの延長と思って言っているようだった。
 この様子だと、女の子の恋人と過ごすよりも気の合う後輩とつるんでる方が楽しいから女の子からの告白避けに恋人になっちゃいました、という誤解は解けてしまったか、もしくは疑う程度には真実が見えてきたんだろう。
 交際宣言から一週間と半分ほどが経過しているが、それが早いのか遅いのかはわからない。こちらからすれば、恋人となったのだから恋人として接しているというだけなのだけれど、罰ゲーム中には見せなかったような姿も一部晒しているようで、それが各所に波紋を呼んでいるらしいのは知っていた。
 ただ、罰ゲームじゃなくなったからと言って、元々学年も違う相手と校内でそうそうイチャつけるわけもなく、何を指して言われているかは若干不明でもある。そもそも、憶測で膨らんだ噂もあるに決まってる。
 しかも情報源は恋人なので、かなり厚めのフィルター越しに情報が伝わっている可能性も高かった。だって正直、自分自身の噂なんてどうでもいいのだ。ただそれが恋人になった相手へ向かうのはやはり申し訳ないと思うから、自分と恋人となったことで嫌な思いをしていないか尋ねていると言うだけで。
「それってさ、今までの彼女と扱い一緒って意味であってる?」
「一緒……ではない、かなぁ。さすがに男の恋人は俺も初めてだし、あっさり振られないように慎重にはなってる」
 周りに何か言われてないかと気にかけるのだって、その一つだと思う。今までの彼女相手なら、自分と付き合うことで何か言われるの込みで告白してきたんでしょってスタンスだった。
「でも校内でキスとかしてるって、噂になってんぞ」
「あー……まぁ、したいって言われて断る理由もないかなって、思って」
 認めれば、事実かよと何人かが項垂れたので苦笑する。
 あいつなら男相手でも校内でキスくらい平気でするだろって思われての、証拠なんてない、完全に単なる噂だったんだろう。そんな気はしていたから否定しても良かったんだけど、でも、事実か嘘かで言えば事実ではある。
 だって平日に家に寄って貰うことはないから、別れ際の駅前に高身長の制服男子二人がイチャツイてる姿を晒すより、自分たちが恋人として付き合っているという事実がそこそこ広まっている校内でイチャツクほうがまだましだろと思うのだ。
 なお彼女相手にはちょっと触れる程度のキスに、場所なんてものを考慮したことはほとんどない。学校から駅までの道のりだって、手を繋いだり肩を抱いたりとそれなりにスキンシップが取れていた。
 だから正直、校内でちょっとキスする程度じゃ、全然足りないくらいなんだけど。あまり派手にイチャツイて余計な噂が立つのも嫌で、これでも我慢してる方なんだけど。らしくなく慎重なのは、相手にそれだけ本気ってことだと自分では思ってるんだけど。
 いやでもそう思うと、ごっこではなく正式に恋人となったことで、相手に対するスキンシップ欲求は格段に上がっているようだ。罰ゲーム中も週末家の中で何度もハグして貰っていたけれど、校内で、家にいる時のように抱きしめて欲しいなんて思ったことは一度もなかった。
 罰ゲーム開始からずっと変わらず、部活終わりに教室まで迎えに来た相手が、自分たち以外誰もいない静かな教室で、キスしていいですかと初めて言ったのはいつだった?
 初めて恋人として週末を過ごした後の、今週月曜日だったはずだ。キスしていいかと聞かれたのは初日だけで、それから毎日、教室を出る前に軽いキスを一つ落としてくる。
 甘えたいの内容が、キスしてではなくキスしたいだった過去があったから、甘えられているのかと思っていたけれど、どうやらそれは勘違いだったらしい。

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罰ゲーム後・先輩受1

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 罰ゲームを開始して一ヶ月経過した日の一限終了後、最初のあの日を真似たのか、わざわざこちらの教室まで尋ねてきた相手は、これで罰ゲームは終了でいいですよねと聞いてきた。
 こちらがいいよと返す前に、罰ゲーム期間は最低一ヶ月であって、上手く行ってるなら別に続けてたって良いんだぞと横槍を入れてきたのは、同じクラスのバスケ部員でこの罰ゲームを仕組んだうちの一人でもある。
「はい。だから、終わるのは罰ゲームだけっす」
「ん? どういうこと?」
 不思議そうな顔をするバスケ部員からこちらに向き直り、真っ直ぐに見据えてくる真剣な顔から、彼の思惑ははっきりと伝わっていた。罰ゲームを終えたら本気の告白をしに行く、とは言われていたのだから当然だ。ただ、教室でどうどうと、あえて周囲に聞かせるような告白をする、などとはもちろん聞いていない。
「一応聞くけど、時と場所とを選んで、この状況?」
「そぉっす」
 考えなしに突っ走るようなタイプではないのは、一ヶ月の恋人ごっこ期間で重々承知していたけれど、はっきりきっぱり肯定されて苦笑した。
 きちんと考えた結果ならいい。彼とごっこの付かない恋人となる覚悟はとうに出来ている。
 今更どんな噂がたとうと気にはしないし、周りにはっきりと知らせてしまったほうが減る面倒事もあるだろう。逆に増える面倒事もありそうだけれど。
「じゃあどうぞ」
「好きです。今度は罰ゲームとしてじゃなく、俺と、付き合って下さい」
 促せば、あの日と同じようによく通る大きな声が教室内に響いた。ざわつきがピタリとおさまり、シンと静まり返ってしまった教室内では、多分ほとんどの生徒が自分の返答を待っている。
「いいよ。じゃあ今度はちゃんと恋人として、宜しく」
 瞬間、教室内に喧騒が戻った。ぎゃーとかマジかとかの声は、明らかにこちらの返答に対する反応だろう。
「おいおいおい。マジかよ。罰ゲームで本気になったとかあんの? え、男同士で?」
 はっきりと声を掛けてきたのは、もちろんすぐ傍らでこの告白劇を見ていたバスケ部員の友人だ。
「まぁ実際、罰ゲームうまく行ってたからね。なんとなくダラダラ罰ゲーム続けるより、恋人になるならなっちゃってもいいかなって」
「いやいやだってお前、罰ゲームの恋人と本気の恋人って違っ……わない、のか?」
「そりゃ違うでしょ。恋人は恋人だからね。罰ゲームで仕方なく一緒にいるわけじゃないからね。こいつと破局するまでは他の告白は受けないよって、周りに知っててもらうのは悪くないかなって思って」
「いやそーゆーの聞いてるわけじゃなくて。あ、でも、これがお前らのパフォーマンスなのはわかった」
「じゃ、そゆわけなんで、今後も宜しくお願いしまっす」
 その宜しくはどちらかというと自分よりもバスケ部の先輩宛という気がしたが、晴れて恋人となった相手を放置で話す自分たちへ一度深々と頭を下げてから、彼は次の授業があるのでと言って教室を出ていった。
「あっけねー。つかあれ、本気の告白して、本気で好きな人と恋人になりました、って態度じゃなくね?」
「そうかな?」
 教室での告白を許可して、皆の前で恋人宣言したことを、結構嬉しそうにしていたと思うんだけれど。いやでも平然を装っている感じはあったかもしれない。
 結果的に、このバスケ部友人は完全に暫く女の恋人は要らないというパフォーマンスと受け取ったようだし、それが彼の狙いだったなら大成功じゃないか。でもそう思うと、ちょっとだけ何かが悔しい。
 だってお互いちゃんと、恋愛をするつもりで恋人になったのだから。決して、男同士つるむのが気楽でいい、なんて気持ちで恋人になったわけじゃない。
「まぁでも罰ゲームは確かに終了で、恋人は恋人だから」
 少しばかりムキになって告げれば、それはわかったからと軽くいなされますます冷静さが失われていく気がする。キスもするし抜き合うし、それ以上のことだってちょっと狙ってるくらい、本気で恋人なんだけど。と口に出しかけた所で、さすがにマズイとどうにか言葉を飲み込んだ。
 本気で男同士で恋人になりました、というよりは、気が合う後輩と親しくしてるのが楽だから暫く女の子とお付き合いする気はないです、って思われていたほうが絶対いいに決まってる。

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スライムに種付けされたかもしれない

 たかがスライムなどと侮っていたのは認める。次から次へとどこからともなく集まってきた彼らの圧倒的な数と量とに屈するのは早かった。
 体中を彼らに包まれ身動きが取れない。辛うじてまだ、口と鼻は覆われていないため呼吸が出来ているが、それもきっとすぐに塞がれてしまうだろう。こんな所でスライム相手に窒息死だなんて情けないにも程がある。
 きつく閉じた瞼の隙間から悔しさに滲み出る涙は、目元を覆ってうごめく彼らのせいで流れ落ちることはなかった。
 そんな中、突如頭の中に声が響く。流暢とは言い難くノイズ混じりではあったが、その声は確かに、死にたくないか、まだ生きたいかを問う声だった。
「死にたくない。死にたく、ないっっ」
 近くに誰かがいるのかも知れない。もしかしたら助けてくれるのかもしれない。そう思って、必死に声を張り上げた。
『では……お前の、ナカ、を頂くが……それで、いいか』
 意味がわからなかった。ナカってなんだ。
 けれど迷う時間はない。それでいいから助けてくれと再度声を張り上げれば、体を覆っていたスライムたちの動きが変わった。けれどそれは、誰かが自分からスライムを引き剥がしてくれるといったような、期待していたものとは全く違う動きだった。
 服や防具の隙間を縫って、直接肌の上を這い出したスライムの感触に怖気がたつ。
「う、あっ、ぁあ……、な、なに、」
 戸惑い漏れる声に、ナカを頂くと言っただろうという声が頭に響いて、声の主が誰だったのかようやく気づいた。
 しかし気付いても、その現実をすぐには受け入れられない。スライムが人語を操るなんて聞いたことが無い。こいつらは最下等のモンスターで、いくら数が集まったってスライムは所詮スライムだろう。
 そんな風に混乱している内にも、スライムは次々服の下に入り込んでいて、体中を舐めるように這い回りながら広がっていく。ひたすらに気持ちが悪い。
「待てっ! まて、そこはっ」
 下着の中に侵入された段階で予想はできていたものの、とうとう尻穴にまでスライムが到着し、しかもグッグッと揉み込むように圧を掛けてくるから慌てた。とは言っても、拘束されきった体が動くはずもなく、必死で静止を望む声を上げる。
 もちろん、相手はこちらをすぐにでも殺せる状態にあるモンスターだ。こちらの意思などおかまいなしに、好き勝手出来る状況だ。
『心配、する、な』
 だからそんな言葉が掛けられるとは思っても見なかった。
『ナカに入れるのは、先だけ、だ、……お前を、壊すことは、しな、い』
 続いた言葉に諦めて体の力を抜いた。その言葉が本当でも、嘘でも、今更こちらに出来ることなんて何もないのだと、思い出してしまった。
 そうだ。ギリギリ生かされているだけのこの身に出来ることなんて何もない。受け入れるしかない。
 それでもやはり、黙って耐えることなんて出来なかった。
「あーっ、あーっっ、嘘、つきぃっっ、壊れ、っ、こわれ、るっ」
 このゲル状の生き物に「先」なんてあるわけがなかった。頭の中に響いた声によれば、先だけというのは一部だけという意味合いだったようだ。体全体を覆うほどに集まっている彼らにすれば、確かに「ほんの先っぽ一部分」なのかもしれないが、受け入れるこちらは既に限界を超えている。
 腹の奥深くまでパンパンに入り込まれて、それらがグニグニと腸内で蠢いているのが苦しくて気持ち悪い。
「むりっ、それ以上はむりぃっっ」
 奥の奥まで拡げるようにナカを揺すられ突かれ、鈍い痛みが広がっていく。
 痛い痛いと喚いて、もう無理だと泣いても、彼らの動きが緩むことはなかった。けれど、痛みを散らすように、ペニスへと纏わりついている彼らの一部が、快楽を送り込むべくそこを擦りあげてくる。腸内の一部も、同時に中から前立腺を捏ねていた。
「あーっ……あああっっ、イクっ、でるっっ」
 あっけなく頭の中が白く爆ぜる。けれどもちろん、それで終わりだなんてことはなかった。
 結局、何度イカされたかわからない。最終的には、尻の中を捏ねられる鈍い痛みすら快楽に取って代わられ、頭では依然として苦しくて気持ちが悪いと思っているのに、快楽にとろけた体はペニスを弄られることなく絶頂を繰り返していたように思う。
 曖昧なのは、最後の方には意識を飛ばしている時間も多かったせいだ。完全に意識を失くした後、いつまで続けられていたかはさっぱりわからない。
 意識を取り戻したときには周りにスライムの気配は皆無で、服の布地は幾分湿ったままではあったが、肌のベタつきなどは皆無だった。服も防具も多少の乱れは残るもののしっかりと纏ったままで、スライムに尻穴を犯されたなんて、随分とたちの悪い夢を見たと思えたなら良かったのに。
 あれが夢ではなかったことは、体が覚えている。腹の奥に、甘く鈍く疼くような感覚が残っていた。
 それでも、やがて記憶は薄れていくだろうと思っていた。
 もちろん、二度とあそこには近寄らないし、スライムだからと油断することだってしない。けれど何をされたかまで記憶にとどめる必要はない。
 なのに、自分の体の変化に、否が応でもあの日のことを繰り返し思い出す。ナカを頂くの意味も、どうやら尻穴を犯すなどという単純な話ではなかったらしい。
 あれ以来、一切便意がない。そして少しづつ腹の奥で何かの質量が増している。しかもそれは時折かすかに蠢き、あの甘く鈍く疼く感覚を引きおこした。
 自分腹の中で、たぶんきっと、あの日のスライムの欠片が育っている。

お題箱から<先っぽだけと言われて少しだけ中にはいるのを許したら最後まで突っ込まれて食べられちゃう話>
お題箱に頂いていたお題はこれで最後です。全6個、どれも楽しく書かせていただきました。どうもありがとうございました〜

 
 
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タチ予定だったのにネコにされた2(終)

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 相手は中のクリームを少しばかりすくい取ると、クリームの乗った指先を強制的に開かれている足の合間へと伸ばしてくる。
「ううっっ」
 指先がアナルに触れた瞬間、ぞわわと鳥肌が立って呻いてしまった。しかしそんなこちらの反応に構うことなく、アナルの中へとクリームを運んでいく指の動きに躊躇いはない。
「おっ、前……どーゆー、つもり、だ」
「どーゆーつもりもなにも、ここまでしといて、お前を抱く以外の何かがあると思ってんの?」
「なんでっ、俺がっ、抱かれる側なんだよっっ」
 もし今後そういう事までするような深い仲になったとして、抱くのと抱かれるのどっち側が希望かという話を振られた時に、絶対に抱く側と主張しておいたのに、あの確認の問いかけはいったい何だったのか。しかもあの時、わかったって返してきただろう。
 そもそも告白したかった相手とでさえ、自分が抱かれる側での妄想なんてしたことがないのに。自分でケツ穴を弄ったこともなく、正真正銘まっさらな処女穴だっつーのに。なんの覚悟もなく、他人の指を突っ込まれて媚薬クリームなんてものを塗りたくられている現実を、そう簡単に受け入れられるはずがない。このままこいつに抱かれるとか冗談じゃない。
「だって抱く側がいいって言いながらも、ずっと手ぇだしてくれなかったから。俺には抱かれたくないってだけで、本当は抱かれる側が良いのかなっていうか、まぁ、考えてみたらそっちのが自然って気もしたし」
「まてっ。待て待て待て」
 必死で待てと繰り返したら、話を聞いてくれる気になったのか、中に埋まった指の動きも止めてくれた。正直ホッとして、小さく安堵の息を吐く。
「反論ある?」
「あるに決まってんだろ。何がそっちのが自然な気がする、だ」
「じゃあもしお前と付き合ってるのがさ、」
 続いた名前に息を呑む。まさか本命の友人の名前が、その口からこぼれ出るとは思わなかった。
「お前が本当に好きなの、あいつでしょ」
「な、んで……」
「本当は誰を好きかなんて、ずっと好きで見てた相手なんだから、わかるに決まってるだろ。というかお前、あんま隠せてなかったから、あいつ含めて皆知ってたよ」
「は? マジか」
「マジで。でもあいつはお前の気持ちには応えられないってはっきり言ってたし、だったら俺が落としてやれって思って、皆に協力頼んだの。お前はまんまと俺たちに乗せられて、あいつに告白したはずが、なぜか俺に告白したことになってた上に俺の恋人にさせられたわけ」
「ひでぇ」
「でも結構前からお前を好きって思ってたのは本当だから。お前が俺を抱けないなら、俺がお前を抱くわ」
「いやいやいや。今ちゃんと勃ってんじゃん。お前が抱かれる側でいいなら抱くから抱かせろ。つか抱かれるとか無理だから」
「そんなに俺に抱かれるのは嫌なの?」
「相手が誰でも抱かれるのは嫌なの」
 そこでもう一度本命友人の名前を出されたが、今度ははっきりと、抱きたい方向で好きだったと言い切ってやった。
「本気で言ってんの?」
「本気ですけど。つかもう今さらだから言うけど、俺が抱きたいのはああいうタイプ」
「マジか」
 本気で相当驚かれたみたいだけれど、気持ちはわからない事もない。だってあいつは俺よりガタイも良くて男臭くて、どう考えても押し倒して喘がせたいってより、お願い抱いてーって方がしっくりくる。反面、目の前の相手は決して男臭いタイプではなく、雰囲気だって男にしては随分と柔らかで優しい。体の線だって随分と細く、女のようだとまでは言わないが、こうやってこちらにのしかかっているような現状には思いっきり違和感があるし、むしろ組み敷かれてアンアン喘いでいる姿のほうがイメージしやすいだろう。
 ただ、一般的にそうだろうという判断はできるけれど、自分の好みが一般的じゃないので、組み敷き喘がせたいのはこいつではなくあいつってだけだ。
「マジで」
 はぁああと大きくため息を吐かれたので、ようやく諦める気にでもなったかと思ったら、埋められていた指がグニグニと中を擦りだすから焦る。
「ちょ、おま、やめろって」
「いやもうどうでもいいわ」
「どうでもよくねーって。ヤダヤダやめろ。俺を抱こうとすんなよ」
 ちゃんと抱いてやるからと言ったら、フンッと鼻で笑われてしまった。
「お前が今勃ってんの、結局はクリームと前立腺刺激のおかげだろ。全く好みじゃない俺を、お情けで抱いてくれる必要なんてないね。それよりこのまま、抱かれたくないって言いながらもきゅんきゅんケツ穴締めまくって喜んでるここ可愛がって、俺に抱かれる気持ちよさを叩き込んでやる方が建設的っぽい」
 優しく愛してあげるから任せてなどという、全く嬉しくない言葉とともにその後も散々嬲られて体はあっさり陥落した。媚薬クリームとか卑怯すぎだろ。くっそ気持ちよかった。
「あいつを抱きたい方向で好きだったってなら、俺がお前を抱きたいと思っても、なんの不思議もないと思うんだよね」
「ソウデスネ」
「怒ってる?」
「イイエ」
「またしていい……よね?」
 する気満々なくせに、こっちの反応を窺うような聞き方はヤメロ。
 ぎろりと睨みながらも黙って頷いてやれば、相手は幸せそうに笑ってみせた。

お題箱から<友人に恋してたタチ側のはずの男が違う男によってネコにされるギャグ話>
ギャグとかどう書いていいかさっぱりわかりません。てわけでこれが限界です。

 
 
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