Wバツゲーム7

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 そういえば、こんな話を人にするのは初めてだなと思った。
 彼女に前カノとの話をするほど無神経ではないし、男友達とだって女の子との具体的な行為の話はしないようにしている。もし罰ゲームで期間限定とは言え一応恋人となった相手が、女の子だったり元からの友人なら、やっぱり話はしなかったと思う。
 目の前に居るのが、罰ゲームで告白してくるまでこちらを認知していなかった、自分に欠片も惚れてない、友人でもない後輩の男の子だった上に、これからまだ半月以上を恋人として過ごさなければならない相手だったから、つい話してしまった。話してもそれを人に広めるような事はしないだろうという、全く根拠のない信頼を、なぜかこのたった数日で相手に感じているらしいのも大きい。
 不思議だなと思いながら相手を見つめていたのが悪かったのか、相手の顔が更に赤みを増していく。さすがに悪いなと思ってそっと視線を落としたら、それを待っていたかのように相手の声が聞こえてきた。
「あの、いいんすか?」
 しかし躊躇いがちに聞かれたその言葉の意味がわからない。落としていた視線を戻してしまえば、そこには赤い顔のままの相手が言うかどうかを迷う様子でこちらを見つめていた。
「えっと、良いのかって、何が?」
「恋人として、俺がやることの話、っす。さっき、なるべく一緒にご飯食べて欲しいだけって、言ってたっすよね」
 促すように聞き返せば、やはり躊躇いがちに言葉がゆっくりと吐き出されてくる。赤くなっているのはもしかして、女の子との話を聞かせたからだけじゃなく、それを今の自分の身に置き換えて考えてしまったのもあるのだろうか。
「なら、もし俺が、罰ゲームでも恋人は恋人なんだからイチャイチャさせてって言ったら、どうすんの?」
「エロいことすんのはちょっと……」
 小さく笑って意地悪く聞いてみたら、思った通り引かれてしまって苦笑が深くなる。
「じゃあ良いのかなんて聞くなって」
「や、でも、抱っことかおんぶくらいなら、してあげれるっすけど」
「え、抱っこにおんぶ?」
「肩車もやればできそうな気はするんすけど、ここでやったら確実に天井に頭打つっすよね」
「あ、ああ……さっきのあれか。てかなかった事にしてくんないのかよ」
 ようやく相手が何を言っているのか理解した。
「もしかしたら嬉しいかもって、言ってたんで」
「お前さ、もしかして俺を喜ばせたいの?」
 だから平日の夕飯にも付き合ってくれるし、こうやってご飯作りに来てくれるし、抱っこやらおんぶまでしてくれようとするんだろうか。そんな疑問は、すぐさまあっさりと肯定された。
「え、はい」
「なんで? これ、お互い罰ゲームだよ? お互いっていうか、どっちかって言ったらお前は俺の罰ゲームに巻き込まれてるんだよ?」
「それは……」
 サッと視線を逸らしたから、これは何か隠してるなと思う。
「それは、何? 俺に何かさせようとでもしてる? 喜ばせたお礼よこせみたいな」
「お礼よこせ、とまでは言いません、けど」
「でもなんか下心はありそうだな。怒らないから取り敢えず言ってみ?」
 エロいことがしたいわけじゃない下心ってなんだろうという純粋な興味と、相手ばかり恋人としてあれこれさせている心苦しさで問いかける。ただの罰ゲームでありながら、相手が相手のできる範囲でこちらを喜ばせようと頑張ってくれているのがわかるから、自分だって自分に出来そうな事なら返してやりたいと思う程度の想いはあった。
「あの、出来ればでいいんすけど、バスケ、教えて欲しくて……」
「は? バスケ?」
 思いもかけない単語が飛び出てきたせいで、呆気にとられてその単語だけを繰り返す。
「そ、っす。先輩、中学ん時はバスケ部レギュラーだったんすよね?」
 県大会常連校のと続いたので、どうやら自分の噂は恋愛絡み以外のものもあれこれ彼に流れているらしいと知った。というかバスケ部なんだから、バスケ関連の話が流れているのは当然と言えば当然かも知れない。それどころか、現バスケ部の同学年メンバーを考えたら、彼が聞かされた自分の噂はそっちの話のがメインかもしれない。
「確かにそうだけど、辞めてからどんだけ経ったと思ってんの。高校入ってから一切やってない俺に、今更、現役バスケ部員のお前に教えられることなんてないだろ」
「そんなことないっす。というか、先輩らに教わってこいって、言われてて」
「あー……それでお前、俺の機嫌取ってんのか」
「そういうわけじゃ」
 少しだけガッカリしている自分には気付いたけれど、さすがに目の前の後輩に八つ当たる気にはなれず、大きく息を吐いて気持ちを落ち着ける。
「いいよ別に。けどホント、何か教えられるとは到底思えないんだけど、いったい何教えてほしいわけ?」
「なんでも。と言うか俺、めちゃくちゃ初心者なんで。きっと教われることたくさんあると思うっす」
「は? 初心者?」
 やはり思いがけない言葉に驚いて、その単語を繰り返してしまった。

続きました→

 
 
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Wバツゲーム6

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 相手の言葉を打ち消すつもりで、咄嗟にこちらも言葉を吐けば、相手は不満そうな顔で何が無しなのかと聞いてくるから困る。いや困るというよりは、気まずいような照れくさいような気持ちかもしれない。
「恋人を親代わりにしてたつもりは一切ないよって事だよ」
 口からはそんな言葉を零しながらも、内心はそこまで自信がなかった。指摘されるまでまったく自覚がなかっただけで、親から与えられなかった愛情と関心とを彼女たちに満たしてもらっていた可能性は高そうだ。
「それに親相手にセックスしたい気持ちなんて欠片もないし」
 言い募れば言い募るほど、さきほどの相手の言葉に動揺した自分を晒すようなものなのに、わかっていても言葉は口から吐き出されてしまう。唐突な指摘と自覚に、かなり焦っているのかも知れない。
「えっ?」
「えっ、ってなに。俺って親までセックス対象に出来るような男に見られてる? それともまさか親とセックス容認派なの? 多分それ、かなり少数派だと思うんだけど本気で言ってる?」
「ちょ、焦りすぎじゃないすか」
 焦り過ぎという指摘には、はっきり自覚があったぶん、強い羞恥が湧き上がった。多分顔は赤くなっている。
「あー、その、親の話じゃなくて、彼女の方の話で……」
 気まずそうに相手の視線が泳ぐほど、動揺と羞恥は顔に出ているんだろうと思った。耐えきれなくて顔を隠すように項垂れながら、彼女が何と続きを促す。
「噂の中に、表面的には優しいけどエッチはしてくれない、しつこく誘うと振られる、みたいなのがあったんすよ。だから欲しいのはお母さんって方が凄くしっくりくるんすけど、そうじゃなくて恋人とセックスしたい気持ちがあったんだと思ったら、ちょっとビックリしたっつうか……」
 もごもごと説明された相手の言葉に、思わず目の前のテーブルに額をぶつけた。
 噂の出処は過去に付き合ってた彼女たちなのだから、女の子たちの自分の評価ってそんななのかと思うと、笑ってしまいそうだった。もちろん、どんな噂をされようが悪評をばら撒かれようが構わないと思ってなければ、一つところで何人もとっかえひっかえするべきじゃない事は承知している。
 だとしても、エッチしてくれないってどういうことだ。そう言われるほど、してなかったつもりはなかった。ただ最初の数人以降は、確かに繋がるような行為もそれに近い行為もはっきりと避けていたから、互いの体に触れ合って気持ちよくなるだけではセックスではないと言うなら、自分は恋人とセックスしてはいなかったんだろう。
「お前さ、コンドームの避妊率って知ってる?」
 大きくため息を吐いてから、机に打ち付けていた頭を上げて相手を真っ直ぐに見据えて聞いた。
「確か、九割くらいじゃなかったすか」
 何だ突然と腑に落ちない顔をしながらも、相手は素直に数字を出してくるから、小さく笑って訂正してやる。
「俺が調べた時は、ゴム使った避妊失敗率18%って出てたわ」
「でも一般的な避妊方法って言ったら、それっすよね?」
「うんそう。18%を少ないと思うか多いと思うかは人それぞれだと思うけど、俺にはその数字は結構リスクが高いんだよ。かといって、同い年とか年下の女の子相手に、産婦人科行ってピル処方して貰ってきてくれたらセックスしてもいいよ、なんて言えるわけ無いから、突っ込むセックスはしないってだけ」
 わかって貰えるかと聞いてみたら、俺も男なんで一応はと返されたから、ホッとしつつ更に少しだけ事情を話してみることにした。
「うちさ、こうして俺が一人暮らしした上に家政婦さんまで派遣されてるくらい、確かにそこそこ親の金回りはいいんだけど、でも俺に対して甘いわけじゃないんだよね。そこ誤解されがちだけど」
 なんせ、もし避妊に失敗して子供が出来ても学生結婚すればいいし、シッターさん雇って子育て手伝ってもらえば大学にだって通えるでしょって言われた事がある。付き合った子皆がそんな考えではなかったけれど、少なくとも、そんな脳天気な未来を夢見ながらセックスを誘ってきた相手は一人だけじゃない。
 もちろんその都度、そんな事になったら高校中退して働きに出なきゃならないし、親は助けてくれないから貧乏暮しまっしぐらだよって訂正はしたけれど、きっと本気にはしてなかった。親は子供が可愛くて、孫なんてもっと可愛い。素直にそう思い込めるくらい、親に愛されて来たのだろう。
「万が一彼女に子供出来たら、今以上に親から放り出されて俺の人生詰んじまうのよ。って言ったら、お前、信じる?」
 実際、親からの明確な脅しが来る前でさえ、生理遅れてるって不安げに相談された時のやっちまった感は凄かったし、子供が出来ていたわけではなかったとわかった時の安堵も凄まじかった。あの経験がなければ、親からの脅しもそこまで深刻には受け止めなかったかもしれない。
 あんな経験は一度だけで十分だ。なので、大学を出てきちんと就職をしてからでなければ、体を繋げるようなセックスはもうしないつもりだった。
「俺に嘘吐く意味、あるんすか?」
「ないね」
「じゃあ信じます。けど、したいのに我慢するの、難しくないすか? 女の子連れ込み放題やりたい放題のこの環境で、しないでいられるのは尊敬します」
「ちょっと待って。そこまで我慢してたわけじゃないから」
 さっきも言ったけど、スキンシップ飢えてるし、イチャイチャすんの大好きだし、キモチイ事も好きだし、普通に性欲もあるし、突っ込んでないだけでエロいことしてないわけでもなかったよと続ければ、今度は相手の顔が少しばかり赤くなった。自分と同じくらいガタイは良くても、数か月前までは中学生だった事を思えば、少々刺激が強すぎたのかもしれない。

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Wバツゲーム5

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 小さく息を吐きだして思考を中断する。今は親のことをあれこれ考える時間じゃない。
「じゃあさ、お前がまだ信じてない俺の噂で、確認したいこととかはある? というかお前、俺の恋人として、どこまでしてくれる気でいるの? 逆に、恋人としての俺に、どこまでさせる予定?」
「ああ、それは俺も聞きたかったす。この罰ゲーム、恋人としてどこまでしなきゃならないんすか?」
 なんだ。ちゃんと疑問には思っていたのか。
 内心ではそう思っているくせに、毎日部活後に真っ直ぐ帰りたいだろう所をこちらの夕飯に付き合って、更にはこうして料理までしに家まで来てくれているのかと思うと、なんとも律儀というか真面目というか、正直ちょっと変なやつだとすら思ってしまう。
「俺の希望としては、なるべく一緒にご飯食べて欲しいくらいしかないよ」
「なら、寂しいから泊まってって、てのはやっぱだたの噂すか?」
「そうでもないかな。寂しいから泊まってってとは確かによく言う。でもそれ、サービストーク的なやつだよ?」
「なんすかそれ」
 わけがわからないという顔をするから軽く笑ってやって、だって皆知ってるんだもんと返した。
「皆、というか、俺に告白してくるような女の子たちは、俺のカワイソウな状況知ってて近づいてくるわけ。だから俺も孤独で寂しがりな男になって甘えるの。彼女らはそれが嬉しいの。ついでに言っておくと、実際に泊まってく女の子ってほぼ居ないからね?」
 実際に泊まってもらっていた事もないわけじゃないのだけれど、最近はそういった言葉遊びを楽しむくらいで、本当には泊めなくなってしまった。中には本気で泊まりたがる子も居るけれど、相手が本気であればあるほど逆に距離を置く。要注意人物として警戒してしまう。
 付き合って下さいには簡単に頷けても、恋をして下さい、愛して下さい、という要望には応えられない自覚が今はもうある。どんなにいい子でも、本気になられる前に手を放すのが得策だ。だってこちらは、寂しい時間を優しく埋めてくれれば誰でも良いのだから。
「え、そうなんすか?」
「そりゃそうでしょ。過去の相手、ほぼ同じ学校の女の子だよ? 女子高生だよ? 俺の環境がちょっと特殊なことはわかってるし、皆家で親が待ってるんだよ? そんな遅くなる前にちゃんと帰してるって」
「ということは、実際はそこまで寂しくも、ない……とか?」
「ううん。寂しい」
 すぐさま否定してやれば、ますます意味がわからないといった様子で、相手の混乱がうかがえる。
「だって寂しくなかったら、告白されても断ってるよね。食事だけなら友達誘って一緒に食って貰うんでもいいんだけどさ、友人と恋人って、親密度がやっぱ違うなと思うんだよ」
「親密度、っすか」
「うんそう。自分で言うのも何だけど、スキンシップ飢えてんだよね。イチャイチャするの大好き。でも男友達にベタベタしたら普通にキモいでしょ」
「キモくなければするんすか?」
「え、どうだろ。そもそも友達にしようと思ったことがないかな。というか友達じゃ居られなくなりそうで、いくら飢えてても友達相手にイチャイチャやるのは嫌だよ」
 性的なものを除いたって、友人としての触れ合いと、恋人としての触れ合いは明らかに違うと思う。友人相手に恋人にするような触れ合い方をしてしまったら、それを相手が受け入れたとしたら、自分はその相手を友人とは呼べなくなってしまいそうだ。
 もしいつか、自分の悪評が広がって誰も告白してくれなくなっても、さすがに友人と思っている男友達相手に、一緒に食事をしてもらう以上の何かを求めようとは思えない。
「男だからキモい、ってわけじゃないんすね」
「あー……うん、言われればそうね。というか相手が男なら男で、意外と嬉しかったりするのかも」
「えっ?」
「あ、いや、そのさ、俺、父親に肩車とかおんぶとか抱っことか、そういうのと無縁の子供時代送ってるから、逞しい腕に抱きかかえられたらそれはそれで嬉しかったりするのかなーとも思っただけで」
「じゃあ、女の子たちはお母さんなんすね」
「あ、ごめん。今の無しで」
 話の流れでうっかり変なことを口走ってしまった。

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Wバツゲーム4

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 食器を洗い終えた相手が先程と同じように対面の椅子に腰掛けるのを待って、淹れて貰ったお茶を一口啜って一呼吸おき、それからまず聞かせて欲しいんだけどと話を振っていく。
「多分色々俺の話聞いてると思うけど、俺の何を聞かされてる?」
「ただの噂っぽいのも、全部、っすか? それとも俺が信じたことだけ?」
「取り敢えずはお前が信じた話だけでいいや」
「それなら、家庭の事情で一人暮らしだけど、それが寂しいらしいこと。家の大半のことは通いの家政婦さんがやってくれるけど料理はしてくれないこと。の二点っすかね」
「それだけ?」
「実際数日一緒に帰って、確実ぽいと思ったのはそれだけす」
 合ってますかと聞かれたので、だいたいはと返した。
「自分で家事、しないんすか?」
「家政婦さんが来てくれるのは、お勉強頑張って欲しい親の意向だからね」
 とはいえ、それが表向きの理由だということはわかっているし、はっきり言えば親の見栄と責任とで派遣されているだけだ。
「なら料理も作ってくれる人を雇って貰うよう、親に言ったらどうです?」
「いや、最初は作ってもらってたよ。でも俺が断った」
 なぜかと聞かれたので、一人ご飯は寂しいからと返せば、あっさり納得したらしい。
 一人で食事をするのが嫌いだというのも本当だけれど、毎日食事を作ってもらうと、家政婦さんに毎日通われてしまうというのも大きな理由の一つだ。一人暮らしを余儀なくされた最初の頃、監視役として家政婦さんが派遣されているのではと疑っていた時期もあって、毎日通われるのが鬱陶しくて仕方がなかった。
 結局、友人たちと食べて帰ることが多いからの一言で食事の用意はなくなったし、一人暮らしの掃除洗濯など毎日の必要が無いと言ったら、通われるのは平日一日置きの週三回へとそちらもあっさり回数が減って、監視されていると思っていたのはただの思い込みだったらしい。
 それはそれで、些かショックを受けている自分に気付いて凹んだこともあったけれど、腹いせのように家政婦さんへ渡す報酬が減った分を自分に回してと言ったのすら簡単に了承されてしまい、諦めの境地に立たされた。それがだいたい高校一年の終わり頃だ。
 双方の仕事の都合で仕方なくと言いつつも、義務教育が終了したから放り出されただけに過ぎず、物心ついた頃から薄々感じてはいたものの、親は実の子である自分に対してさして興味がない。悲しいことに、両親ともに子供を作ったのが間違いだと言わざるを得ないような、似た者夫婦なのだ。さすがに面と向かって言われたことはないが、きっと子供を作ったことを後悔しているだろう。
 それでも、作ったからにはという責任からか、金銭で解決することには惜しみなく金を注いでくれる事はありがたい。家庭向きではない、親になれない似たもの夫婦の二人は、仕事という面においては優秀らしく、どちらも収入の多い仕事に就いているので、金銭的な苦労はしたことがない。
 ただそんな親だけれど、なんでもかんでも許すかと言えば、そういうわけでもなかった。やりたいと言ったことはやらせてくれたし、必要だと言えば大概のものは買っても貰えたが、自己責任というのも同時に叩き込まれてきた。
 ゲームがしたければすればいい。勉強したくないならしなくたっていい。けれどその結果、将来どんな仕事につきどんな生活を送ることになっても、親に助けてもらえると思うなと言うやつだ。学生であるうちは親としての責任で養うが、それ以降は親の金は当てにするなと言われている。
 家政婦さんによる監視はないとはいえ、たびたび女の子を部屋に連れ込んでいるのも一応伝わっているようで、一度だけ、万が一子供が出来たら独り立ちさせると脅されたことがある。それ以降は相変わらず放置だけれど、確かにその脅しは秀逸で、さすがに高校を中退して親の助けもなく妻子を養う生活なんて考えられるはずもない。なので、ころころと彼女が変わってもそう乱れた性活をしているわけではないというか出来ないのだけれど、親がそれをわかっていて釘を刺したようには思えないのがなんとも虚しい。

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Wバツゲーム3

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 土曜日は午前中授業なので、そこまで熱心ではないバスケ部の練習も、当然いつもより断然早く終了する。さすがに夕飯には早いので、今までの彼女だったらデートと称してどこかをうろつくか、家に呼んでダラダラ一緒に過ごしていた。
 自分が恋人とどんな風に過ごすのかは、別れた彼女たちの口から徐々に広まったようで、最近では週末は家に来たがる子ばかりに告白されるから、必然的に家で過ごすことが多いけれど。
 彼女らが家に来たがる理由は大きく分けて二つあって、一つは得意料理を振る舞ってくれることで、もう一つはエッチなことをするためだ。でもさすがに罰ゲームで新しく恋人となった彼には、そういった思惑はないだろう。
 しかしいざ、一緒に帰る道すがらこの後どうするか聞いてみたら、当たり前のように先輩の家に行きますよと返ってきたから驚いた。
「ご飯、作ればいいんすよね?」
 先に調味料と調理器具の確認させて貰ってから買い物に行きたいですと、淀みなく告げられる言葉に驚きはさらに大きくなる。
「本気で言ってんの?」
「え、でも、恋人にご飯作って欲しいんじゃ?」
「俺の話が色々耳に入ってるのはわかるけど、別にそれ強制じゃないから。うち来るのはもちろんいいけど、一緒にゲームしたり何かDVD見たりとかすれば良くない? 無理して変なもん食わされんのやだし、食事は宅配でも食べに出るんでも構わないからさ」
「ああ、そこっすか。あの俺、料理できますよ?」
 そんな変なもん食べさせるつもりはないと言い切られてしまえば、じゃあお願いしますと言うしかなかった。そして料理出来ると言い切っただけあって、歴代彼女たちの作ってくれた食事と比べても遜色ないどころか、相当上位に食い込むレベルでかなり美味しかった。素直に感動したし驚いた。
 彼には今日、驚かされてばかりだ。
 しかし本日最大の驚きは食後に訪れた。使った食器は流しに置いておけば週明けに通いの家政婦さんが洗ってくれるからと言ったのに、このままにしておくと朝食を作る時に邪魔になるのでと返されて、相手が今夜泊まるつもりで訪れていることを知らされたせいだ。
「あのさ、泊まるのは構わないし、朝ご飯も作ってくれるなら普通に楽しみなんだけどさ」
「はぁ、……だけど、なんすか?」
「ちょっと一回、腹割って話をしようか」
 彼が何を聞かされていて、恋人として何をしようとしているのか、聞いておかないのはマズすぎると思った。というかただそれっぽく一緒に過ごす恋人ごっこをするだけのつもりでいたけれど、まさかエッチなことまで彼の中では想定されているのだろうか。律儀で真面目な性格なのはこの数日でもう十分わかっていたが、罰ゲームだからでどこまで受け入れる気で居るんだろう?
 しかも罰ゲームだからと言ったって、彼の罰ゲームはこちらに交際を申し込んだ時点で終了しているわけで、これは成り行きでこちらの罰ゲームに付き合ってくれているだけなのに。
 というか、罰ゲームどうこうを置いておいて、もしエッチなことをして欲しいと思われていたらどうしよう。さすがに男相手の経験なんて一切持っていないのに、求められたらこちらも応えるべきなのか。
「それ、食器洗った後でいいすか」
 グルグル巡る思考に内心かなり動揺しているこちらには気付いていないのか、律儀で真面目だけれど若干マイペースな相手の言葉に些か気が抜けながら、もちろんそれでいいと返した。
「話するなら、お茶、淹れましょうか?」
「あー、うん。じゃあお願いしようかな」
「わかりました。じゃ食器洗ってくるんで」
 そう言って重ねた食器を手に彼はキッチンスペースへ消えていく。
 律儀で、真面目で、若干マイペースだけど、そういえば気遣いも上手い。こちらの動揺は間違いなく伝わっているし、だからこそ食器洗いを優先させたのだと、気が抜けたおかげで気付いてしまった。

続きました→

検索の結果、土曜授業ある高校も多いらしいので、授業有りの設定にしてみました。

 
 
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Wバツゲーム2

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 昼ご飯を一緒に食べながらお互いに簡単な自己紹介を済ませ、連絡先を交換し、放課後は相手の部活が終わるのを教室で待つ。自己紹介で気楽な帰宅部だよと笑っておいたから、待ってると伝えた最初、相手は長時間待たせる事になるのでと渋ったけれどそこは譲らなかった。
 だって罰ゲームのせいとはいえ、自分たちはいま恋人なのだから。
 どこの部活にも所属せず帰宅部なのはこっちの都合だし、恋人の部活が終わるのを待つのだって慣れている。だから気にする必要なんてない。
 そう言ったらモテるんですねと返ってきたから、でも二股とかはしたことないよと、慌てて誠実な男である事をアピールして置いたが、今回恋人になったのは、自分の性別すら今朝まで知らなかったような相手だということを失念していた。
 まぁ自分たちの罰ゲームによる交際は面白おかしく広がっているだろうから、どうせすぐ、自分のことはアレコレ相手の耳に入るだろう。二股はしない程度の誠実さはあっても、それなりの頻度で彼女が変わる、恋人にするには不向きな男だってことも。
 決して全国なんて目指さない、はっきり言えば県大会に進むことすらない我が校のバスケ部の練習は、十八時半が終了時間だ。夏が近いこの時期はまだ日が沈みきっておらず、軽やかな足音が勢い良く近づいて来るのに合わせて顔を上げれば、教室の窓からは綺麗な夕焼けが見えていた。
 教室のドアの前で足音が止まり、一拍以上置いてからゆっくりとドアがスライドしていく。
「遅くなりましたっ!!」
 中を窺う様子の相手と目があった瞬間、ドアを開ける動作と似合わない勢いで相手が声を放ち、それから深々と頭を下げる。ここへ来るまでに随分と急いだのか、息が上がって肩が揺れている。
「お疲れ様。そんな急がなくて良かったのに」
「いえ。かなり待たせてしまったので」
 慣れてるって言ったのにと思いつつ、苦笑しながら机の上を素早く片付け、カバンを手に席を立つ。
「じゃあ帰ろうか。駅前のコンビニかファミレスかファーストフード、どっかしら寄りたいんだけどいい?」
 一品おごるよと言ったらビックリした顔で、待たせた上に奢られる理由がないと返された。
「お前を待ちたくて待ってたのはこっちの都合。どっかしら寄りたいのも俺の都合。お前の時間大丈夫なら、一緒に飯食ってから帰りたいんだよね」
「デートってことすか?」
「ん? あー……うん、まぁ、そんな感じ」
 デートではないなと思ったけれど、恋人という関係だから相手を誘っているのは事実なので、まぁいいかと肯定すれば、相手はわかりましたと神妙に頷いてみせる。
 そのまま連れ立って、黙々と並んで駅までの道を歩いた。バスケの話題にあまり触れたくないなと思ったら、あっと言う間に話題が尽きたせいだ。
 相手からも特に話題提供はなく、この相手と最低一ヶ月と思うと前途多難な気がした。チラと窺う相手は会話がなくとも平然としていて、特に不満そうではないのが幾分救いだったが、平然としすぎていて内心どう思っているかはさっぱりわからない。
 それでも駅が近づけば、この後どこへ寄るかを決めなければならない。しかし、やっと会話が戻るとホッとしつつどこがいいかと聞いたら、あっさりどこでもいいですと返されて、会話というほどの会話にはならなかった。
 結局、軽めからガッツリまで好きに選べるファミレスに入って、自分は普通にハンバーグのセットを頼み、相手は奢ると言ったのを気にしたのか一番価格の安いパスタを頼んだ。
「ずいぶんガッツリ食べるんすね。夕飯、食べれなくなりませんか?」
「俺はこれが夕飯だから。お前こそ、パスタ一人前頼んでたけど平気? もしこれで夕飯食える量減りそうなら、一ヶ月は夕飯少なめにって親に頼んどいて」
「え、まさか毎日、帰りに一緒に食事するんすか?」
「うん。そのつもり」
 今までの彼女ともそうしてきたしと言ったら、ますます驚かれてしまったが、驚かれる理由はもちろんわかっている。恋人だからで済まないおかしなことをしている自覚はある。
「あ、親に言いにくいなら、あまり腹に響きにくいサラダとか小さめのデザートとか、後はドリンクだけとかでもいいからさ。時間ないなら諦めるけど、時間大丈夫ならなるべく俺の夕飯に付き合って?」
「はぁ……」
 納得はされてないなと思ったけれど、自分から細かい事情を話す気にはなれなかったし、相手も聞いては来なかった。そして料理が届けばまたお互い無言でそれらを平らげていく。
 こんなでも一人よりは全然マシだけれど、やっぱり付き合ってと告白してくれる女子たちとは全然違う。思っていた以上に罰ゲームは罰ゲームなのだなと、零れそうになるため息を飲み込んだ。

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