二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった14

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「あの、もしそうなる可能性があるなら、抱かれるのは無しにしたいです」
 考え込んでいるうちに、相手はさっさとここで終わる気になっているようだ。決断が早い。というよりは、それだけ優先順位がはっきりしているという事だろうか。
「気が早いな。優先順位を聞かせてくれって言ったろ。それだけだよ。というか話を聞く限り、時々俺と会える時間を持つことが一番優先されてるように聞こえたけど、それであってる? 飲み行く気分じゃないから俺の部屋でだらだらゲーム。もちろんセックスはなし。とかでも満足する?」
「します。ていうか、むしろそっちのが嬉しいと言うか、部屋、入ってみたいです」
「あ、そっち。いやまぁ、そりゃそうなるか」
 彼にとっての自分が、初恋のような相手で、理想の具現化で、ただし、想定外におっさんだったので恋愛対象外、という複雑な対象である意味を、ようやく、なんとなくだが理解し始めていた。
 ただまぁ、それなら好奇心で抱かれてみたい、だけで良いような気がしてしまうけれど。そこで初っ端から、可能ならセフレになりたい、となるのがやはり謎だった。しかも、やり終わった後に良かったから今後も続けたいではなく、都合良く使われる穴になりたい的発言やら、気持ちよくなりたくない様子を見せたくせに、セックス相手が気持ちよくなってるほうがこっちも楽しいと言っただけであっさり納得してみせたりで、どう考えても献身が過ぎる。
「じゃあ話戻すけど、気持ちよくなると何が問題?」
「それは、その、期待、といか誤解、しちゃいそう、な気がした、から」
「誤解? 何を?」
「えと、その、俺を気持ちよくさせるのは、そうした方が楽しいから、ですよね?」
「ああ、うん。確かにそう言ったけど」
「つまり、誰が相手でも、気持ちよくさせるんですよね?」
「ん? ああ、まぁ、可能な限り?」
「だから、その、俺のこと、ちょっとくらいは好きで優しくしてくれるのかな、みたいな勘違いをしそうになるっていうか、自分でクズとか言ってたから、俺を気持ちよくしてくれようとすると思ってなかったのもあったし、でも、俺が気持ちよくなったほうが抱いてて楽しいから気持ちよくなれってなら、それはもうわかったので、勘違いは多分しなくて済むので、大丈夫、です」
「えー……っと、それは、つまり」
「あの、好きになってとか優しくしてって言ってるわけじゃないんで、その、だから、さっきも言いましたけど、本気にしなくていいです、から」
 好きになってとか優しくしてという意味で言ったわけじゃないとわざわざ言ってしまうくらい、彼自身、そう受け取られるような発言をした自覚があるらしい。
「いやいやいや。だってお前、期待するってのは、そうなら嬉しいて意味だろうよ」
「そ、ですけど、でも俺が嬉しいかどうかなんて気にしなくて良いんですって。それとも、俺を喜ばせたら、そっちにも何か利点があるんですか? 俺が気持ちよくなったほうがセックス楽しい、みたいな感じで、俺が喜んだらセックスもっと楽しくなります? でも俺、さすがに、セックス楽しむためのリッピサービスで好きだよとか言われたら、逆に泣きたくなりそうですよ?」
 こちらに言葉を挟ませない勢いであれこれと言い募る様が必死で、泣きたくなりそうだと言っているその声が、既に泣きそうだと思った。
「なぁ、俺と恋愛したいわけじゃないんだよな?」
「はい。そんなのは望んでないです」
 確かめればやはりはっきりと肯定が返る。
「なのに俺に好きになって欲しいみたいなのが意味分かんないんだけど。というか、恋愛したくないってのは、俺に好かれるのは困るって意味とは違うわけ?」
「違わないです。好きになって欲しいわけじゃないし、もし本気で好きだとか言われたら、嬉しいよりも困ると思います。けど、初恋で、ずっと理想の男なんだと思ってた相手に、好きって言われたり優しくされたりが、嬉しくないわけないじゃないですか。でもそれは俺個人の気持ちの話なので、期待したり誤解したりで後で凄く辛くなるのを避けたいだけで、あなたが楽しむために俺を感じさせるのは構わないんです。本当に」
「なるほど」
 確かにこれは面倒くさいな。と思ってしまったのを、かろうじて口には出さずに飲み込んだ。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった13

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「気持ちよくないセックスなんか、欠片も楽しくないだろ? それにこっちだって、気持ちよさそうにしている相手を抱くほうが断然楽しいし」
「ああ、なるほど。そ、いうもの、なんですね」
 なんで、と問う言葉に返答がなかったので、とりあえずでこちらの気持ちを伝えてみれば、一応は相手の勃起ペニスを弄ろうとしたこちらの気持ちには納得したようだ。けれど困った様子で何かを考えているから、気持ちよくなりたくない、というのはそれなりに根深い理由がありそうだとも思う。
「もう一度聞くけど、気持ちよくなると、何かマズい問題があるの?」
「いや、ない、です」
「いやいやいや。さすがにそれは嘘だろ」
「いえ、本当に。もし問題があるとしても、それは俺個人の問題なので、自分でどうにかします。俺もちゃんと一緒に気持ちよくなった方がいいのはわかったんで、その、続きを……」
 続きを促されたところで、そう簡単に気持ちがセックスに向かわないのは、どう考えたって加齢のせいなんだろう。やりたい欲求よりも優先されるものが増えている。
 もちろん加齢だけの問題ではなく、目の前の男を、気楽に突っ込んで楽しめる相手ではないと認識済みなのも、相手の求めに応じて抱いてやるのだいう意識があるのも、そのくせ相手の意図を掴みそこねているのも、歯止めをかけるには充分すぎる要因になっているのはわかっているけれど。でも若かったら、そういうのを脇に置いて、とりあえず突っ込む方を優先した可能性は高い。
「あの……?」
 再開せずに相手をジッと見下ろし続けるこちらに、戸惑いと不安が混ざりあったような声が上がる。顔は相変わらず困り顔のままだ。
「なぁ、やっぱどうにも気になるから、自分でどうにかするにしても、俺にもその問題教えてくれ」
「え?」
「なんでそこまでと思わなくもないけど、俺に抱かれたくて仕方ないのは伝わってるし、何聞いても抱くのやめるとか言わないから、正直に全部話しちゃえよ」
 言いながら体を起こして、ベッドの上にあぐらをかいて座った。相手は最初、寝転がったまま呆然とこちらを見ていたが、こちらが完全に待ちの姿勢だと気づくと、仕方なさそうに体を起こす。膝を抱えるような体育座りで体を丸めるさまは、自らの身を守ろうとしているように見えて、攻撃する意思などないはずが相手を痛めつけているような気分になる。
「で、気持ちよくなると、どんな問題が起こる可能性があって、どうやってどうにかするつもりなの?」
「あの、先に言っておきたいんですけど」
「うん、なに」
「俺が何言っても、気にしなくていいというか、本気にしなくていいというか、その、迷惑になりたくない、ので」
「ん? 迷惑?」
「だって、俺が正直に話したら、面倒くさい奴って思われそうだし、それでもう一緒に飲みに行ってくれなくなる、のが、一番イヤというか、避けたい、です」
「あーちょっと待って。そっちの優先順位先に聞きたいわ。俺に抱かれるのと、今後も俺と一緒に飲みに行くの、どっちのが優先度高い?」
「え?」
「もし俺が、抱いてはあげるけど今後一緒に飲みに行ったりするのはなし、って言っても、抱かれたい?」
「飲みには行かないけど、やりたくなった時に呼んでくれる、なら、どっちでもいいです。けど、」
「抱くのは今日だけって言ったら?」
「それは、一回だけ抱いて貰う代わりに、今後、俺と個人で会うのはなし、ですか?」
「そう。法事とかで顔は合わせるだろうけど、今まで通りの親戚づきあい」
「それは、イヤ、です。だったらこんなの試さなくていいから、時々一緒に飲みに行ける方を選びます」
 試す、という言葉選びが引っかかって、そういや、悪くなかったって思って貰えたらやりたくなった時に呼んで貰えるようになるかも、と言っていたのを再度思い出す。抱かれたいという気持ちばかりが伝わってきていたが、その目的は端的に言ってセフレになることで、ここまでの話を合わせると、こちらとの継続的な関係を求めているだけのようにも思えてくる。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった12

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 そんな拙いキスでも、繰り返せば相手の興奮が増していく。なんせ双方全裸で、相手を抱えているのだ。距離が近いので、相手のペニスが反応を示せばこちらの腹にも当たる。
 誘うように、唇が触れた瞬間に舌を伸ばして相手の唇を舐めてやれば、驚いた様子でバッと身を起こしてしまう。
「そろそろ次に進もう」
 そんなに驚かせるつもりはなかったが、仕方がないので、言葉で先を誘った。
「つぎ……」
「ディープキス。する気があるなら、顔寄せて」
 思い当たる節がない、なんて顔ではなかったけれど、はっきりと言葉にして、ついでに相手の意思を問う。
 ほんの少し躊躇ったようだけれど、そこに嫌悪の色はない。そこにあるのは期待で、自ら触れに行かねばならない覚悟を決めるための時間だろう。
「口、少し開けといて」
 触れる間際に囁いて、先程と同じように舌を伸ばせば、素直に口を開いた相手の口内にやすやすと進入出来てしまう。
 ほんのりと感じる口内の爽快感に、歯を磨いてきたのか、と思った。こちらは一度目のシャワー時に二度寝する気満々で磨いているが、あれから結構時間が経っているので気づけたのだろう。
「ん、ぅっ……」
 ゆるゆると口内を舌先で探れば、少々苦しげに息を詰まらせているけれど、顔を離すことはない。頭を押さえているわけでもなければ、顔を固定しているわけでもなく、こちらの両手は変わらず相手の背にあるのだから、嫌だと思えばすぐに顔を上げて逃げられる状態にも関わらず、口を開いてこちらの舌を受け入れ続ける様が、やはりなんともいじらしい。
 感じるだろう場所へ舌先が触れれば、ビクリビクリと手のひらの下の皮膚が戦慄くのでわかりやすかった。当然、腹に当たるペニスの硬度も増していく。
「ぅあっっ、や、ちょっ」
 片手を双方の腹の隙間に差し込んで、形を変えた相手のペニスを握ってやれば、慌てた様子で顔が離れていき、逃げるように身動いだ。何かしらの反応はあるだろうと思っていたが、想定以上に動かれてしまって、こちらも慌てて握ったばかりのペニスを放り出し、相手を抱え直すのに必死になってしまった。膝に乗れと促しておいて、支えきれずに落とすわけにはいかない。
 結果、いい加減この体勢には無理があると、相手の体をベッドの上に転がすことにした。
 仰向けに転がる相手の体を挟むように両腕を突いて見下ろせば、見下ろす側から見下ろされる側になった相手の顔には、さすがに不安が滲んでいる。
「俺に勃起ちんこ触られるの、いやだった?」
「いやっていうか……」
「びっくりしただけなら触らせて」
 嫌だとかダメだとか言われることはないだろう、とは思ったけれど、勝手に触れる真似はしない。迷うように口を閉ざす相手の視線がウロウロと彷徨って、最終的に、こちらの股間に視線が止まった。相手ほどではないが、こちらもゆるく反応はしている。
 互いに互いのペニスを握って扱くのもありだろうか。先ほど風呂場で躊躇いなくこちらのペニスを握って勃たせたのだから、触っていいから触らせて、という方が相手も了承しやすいかもしれない。
「お前も触る? 一緒にするか?」
「あの……」
 すぐに頷かれると思ったのに、相手は何かを言いたげにしながらも躊躇っている。
「どうした?」
 言いたいことがあるなら言っていいよと促してやれば、躊躇いは残しながらも口を開いた。
「抱くって、俺のお尻に、挿れる、んですよね?」
「そうだけど」
「だったら、その、おちんちんじゃなくて、お尻を……」
「つまり、やっぱ俺にちんこ触られるのは嫌って話?」
「いえ、嫌なわけじゃ、ないです、けど」
「嫌じゃないけど? なに?」
「その、気持ちよくなっちゃう、から」
「そりゃ気持ちよくさせたいからな」
「ううっ……」
 何がそんなに気になっているのかさっぱりわからない。
「まさか、気持ちよくなりたくないとか?」
「えと、はい」
「は? なんで!?」
 そんなバカなと思いながらも口に出してみたら、あっさり肯定が返ってきてしまい、あまりに想定外過ぎてめちゃくちゃ驚いた。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった11

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 どのみち感じている振りなんて出来ないとは思うが、せめて、嫌悪や恐怖を感じるようなら、なるべくすぐに気付けるようにしておきたいと思った。
 一方的に快楽を貪るセックスになんて興味がない。やりたい盛りには結果的にそうなるケースも間々あったけれど、その分テクも観察眼も磨いてきたつもりだ。男相手のセックス経験は積んでないのでテクはともかくとして、相手の様子から良し悪しを見抜く目に関しては、男女でそう違わないと思いたい。
「顔が見たいしキスもしたい」
 そう言葉を重ねれば、明らかに「キス」の部分に反応して相手がおずおずと抱きつく腕を緩めて体を離した。相手の方が若干低い程度でそこまで身長差はないので、足に乗せて抱える相手が身を起こせば、当然こちらが見上げる形になる。
 恥ずかしそうに頬を赤くして、視線を合わせることなく戸惑うように視線をあちこち彷徨わせながら、それでも、相手の視線が主にどこへ向かっているのかはわかってしまう。唇だ。
 尻から離した手を持ち上げて、相手の頬を挟むように包み込めば、さすがに視線が合わさった。間違いなく、期待の滲んだ目をしている。
「キスしていいなら、もーちょい顔寄せて」
 既に頬を手で包んでいるし、そのまま少し力を込めて引き寄せればいいだけだ。こちらの意思が伝われば、抵抗することなく顔を寄せてくるだろう。
 そうわかっていながら、言葉にして相手の意思を問う。好き勝手にさせては貰うが、一方的に好きにされるセックスを、相手に許す気はなかった。
 ゆっくりと顔が近づいてくる。そのまま向こうから触れてくるかと思ったが、そこそこの距離を残して動きが止まってしまう。唇が触れ合う間近でなら、最後の一歩はこちらから踏み込め的な駆け引きと受け取るけれど、この場合はもちろん違う。この様子だと、多分キスも未経験と思って良さそうだ。
 二十歳を超えて真っ更とは、という驚きは当然あるけれど、祖母の葬式で再会したのは彼が中学生の頃だから、そこから先ずっとこちらを意識していたと言うなら、キスすら未経験なのもそう不思議ではない。まぁ、もっと手近なところでとりあえず試してみようとは思わなかったのか、という気持ちはあるけれど。もしくは、近所ではなくとも同じ市内在住なのだから、意識してたというなら、もっと早くに近付いてきたって良かったのに。
 そう思ったところで思い出す。そういや当初の目的は、酒を飲みに行ける年齢になったから一緒に飲みに行きたいであって、気になる相手とあわよくばセックス、なんて気持ちは欠片もなかった可能性のが高いんだった。幼かった彼に過去の自分が与えていた影響を全く知らなかったせいで、誕生祝いで奢っている最中に、やれそうなら奢る、なんて事を言って相手を惑わせたのはこちらだ。
「まだ遠いって」
 言いながら、さすがに引き寄せるように頬を包んだままの手に力を込め、同時に少し首を伸ばし、そのままゆっくりと唇を触れ合わせる。これが相手にとってのファーストキスである可能性が高いなら、初回は触れ合うだけでいい。
 軽く触れただけで、伸ばしていた首を戻して頬を包む手も外してやれば、相手も近づけていた顔を離して行ったけれど、絡んだ視線には戸惑いと疑問とが浮かんでいる。これだけ? と言いたげで、けれど少し待っても、そんな言葉が彼の口から発されることはなかった。
「もっとする? キス」
 問えば無言のまま小さく頷かれる。
「じゃあ、今度はそっちからしてよ」
「順番?」
 その発想はなかった。思わず交互にキスし合うのを想像して、小さく笑う。
「それもいいけど、そうじゃなくて。引き寄せて伸び上がってキスするより、そっちからキスして貰う方が楽だから」
 それで納得が行ったのか、相手の顔が近づいてきてそっと唇が塞がれた。
「もっと」
 素早く相手の背中に腕を回して引き止めながら、すぐさま離れていこうとする唇へ向かって次をねだる。躊躇ったのは一瞬で、そのまま離れかけた距離が戻って唇が触れた。
 二度ほど繰り返せば、もっと、などとねだらなくとも、繰り返し唇を触れさせる。とはいえ、ただただ触れて離れるだけの拙いキスのままだけれど。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった10

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 なんせ、悪くなかったと思って貰えたら、やりたくなった時に呼んで貰えるようになるかも。なんて事を口にしていたくらいだ。多分、こちらが好き勝手やって満足するだけで、相手からすれば目的達成なんだろう。
 やりたい盛りの若い頃なら、セフレとして重宝した可能性はあると思う。相手の愛想が尽きるまでと割り切って、相手の体を利用することを躊躇わなかったかもしれない。
 とはいえ、セックスは体を使ったコミュニケーションという認識だし、やれないならデートに時間や金を使いたくないという気持ちはあっても、恋人を穴扱いした記憶はないし、明確にセフレと呼ぶような相手が居たこともないので、本当に割り切ったお付き合いが出来たかはわからないけれど。
 そもそも、こんな一方的な献身を受けるのが初めてだし、恋人になりたいわけじゃない、なんて相手を抱いた経験もない。恋人ではない相手としたこともなくはないが、一応、やったあとに恋人になれる前提で抱いていた。
 かといって、恋人になりたいと思っているわけじゃないのがはっきりわかっている、一回り以上年下の、しかも男の子相手に、恋人になる前提で触れられるほどの図太さも無神経さも持ち合わせていない。
 こんなに抱かれたがっているのだから、抱いてやりたいと思うし、無理だとも思わないけれど、一方的な献身を放漫に受け取り、便利な穴として利用するのはどうしたって躊躇ってしまう。たとえ相手がそれを望んでいるのだとしてもだ。
 やりたいだけで突っ走れる若さはもうないし、一緒に酒が飲める年齢になったとはいえ、これだけ年齢差があったら、どんな結果になろうとお互い様だとは言い難い。もし相手を傷つけるようなことになったら、責任を感じずにいられるとは思えない。
「……ぁっ、ふ……」
 耳のすぐ近くで吐かれた甘やかな吐息を拾って、思わず体に緊張が走った。じっと抱きしめる相手の体は随分と熱を持ち始めていて、かすかに震えてもいるようだ。
 一瞬何が起きているのかわからず混乱しかけたけれど、すぐに、どうしようかと考えながら相手の背を無意識に撫で回していた事に気づいた。冷えた体を少しでも温めてやりたかっただけで、下心を持って愛撫していたわけではないのだけれど、相手からすればこちらの意図など関係がないのはわかっている。
 随分と感じやすいんだなと思ってから、耐性がないのかと思い直す。抱かれた経験がないことは聞いているが、さきほどの話からすれば、誰かを抱いた経験だってないだろう。誰かを好きだと思う前に、想像で作り上げたはずの理想の男と再会してしまったせいで、自分がゲイなのかすらわからないと言っていたくらいなのだから。
 動きを止めていた手を、今度はしっかりと意図を持って動かした。何をしたかというと、今までは背中しか撫でていなかった手を相手の尻へ持っていって、撫でるだけでなく柔く揉んでやった。
「ふぁっ」
 ビクリと小さく体を跳ねたけれど、逃げる様子はない。しかし、考え事をしているうちに少しばかり緩んでいた抱きつく腕の力が、また先程と同じくらいには強くなってしまったし、相変わらず体を震わせてもいるから、嫌がっていないという確信は持てなかった。
 顔を見たいなと思う。顔を見て確かめたい。
「なぁ、顔上げて」
 好き勝手抱いていいと思っているのは事実だろうから、好き勝手にさせて貰う覚悟を決めて声をかける。ただし、相手が考える好き勝手とはかなり違うだろうけれど。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった9

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 ラブホではないという点を一応は考慮して、ベッドの上にゴムやローションを転がしたついでに、部屋着を広げて敷いておく。シーツやらを汚すよりはいくらかマシかも知れない。
 やるためのスペースを作り終えたあとはベッドの端に腰を下ろす。後は相手が出てくるのを待つだけだった。
 しかし、思った以上に時間が掛かっているようで、なかなかバスルームのドアが開かない。いい加減様子を見に行ったほうがいいかと腰を浮かせたそのタイミングで、ようやくカチャリと音がした。
「大丈夫か?」
 思わずそう声をかけたのは、出てきた相手の動きがやけに緩慢だったからだ。こちらが裸で出てきてしまったのもあってか、やはり相手も裸だったから、本当は、使ったバスタオルを持ってきてくれと言うつもりだったのに。
 それよりも、相手の様子が気になってしまった。慣れないことをして疲れてしまった、という程度ならいいのだけど。
「あ、はい……」
「お腹、痛くなってない?」
「だいじょぶ、です」
「なら、いいけど。てか続きする気は残ってる?」
 一人になってあれこれ考えたら抱かれるのが嫌になった、という可能性も捨てきれない。抱かれたいという気持ちがやたら強いのは感じていても、その理由がイマイチ不明なままだし、ちょっとしたキッカケで思い込みが反転するなんてのもありがちだ。人の手で洗腸される、なんて経験は、きっと充分なキッカケになるだろう。
「抱かれたいとは、思ってます、けど……」
「何か気がかりが出来たってなら、言っていいよ。即解消できるかはわかんないけど」
「いえ、いいです。このまま、抱いて、ください」
 そう言われても気にはなる。とは思いながらも、口では、じゃあおいでと相手のことを呼んでいた。
「とりあえず、ちょっとここ座って」
「ここ?」
「そう、ここ。向い合せな」
 近づいてきた相手に向かって、自身の腿をポンポンと叩いて見せれば、相手はあからさまに戸惑っている。まぁベッドの上に転がされるつもりでいたのだろうし、当然な反応なのはわかる。
「抱かれたいんだろ?」
 そう言ってやれば、疑問やら戸惑いやらは、やはりあっさりと飲み込んだらしい。抱かれたいなら、という言葉でどこまで言うことを聞くつもりなのか、試してやろうなんてことは思っていないけれど、どうにも不安を掻き立てられる。
「わかり、ました。けど、その、向かい合わせに座ったら、」
「ああ、うん、俺に抱きつく感じで」
 大丈夫だからおいでと示すように両腕を広げて見せれば、また少し戸惑いと逡巡をみせたけれど、今度は何も言わずに待っていれば、すぐに覚悟を決めた様子で乗り上げてくる。赤くなった顔を見られたくないのか、ぎゅっと抱きついてくる腕は結構強い。
 広げていた腕を回して抱きとめた背中は、風呂上がりにしては冷えていた。冷えているのは合わさる胸もだ。
「体冷えてんなぁ。まさか水浴びてきたってことないよな?」
「いえ、さすがに。というか、あの、これ、本当に何の意味が……」
「んー……特に意味があるわけじゃないけど」
「は?」
「セックスすんなら、もうちょっと楽しい感じでやりたいなと思って。というか、今のお前をこのまま抱くのは、ちょっとこっちの罪悪感? 背徳感? が強すぎて」
「なんですか、それ」
「本気で抱かれたいらしいのはわかったし、突っ込む気も満々だけど。ちょっと気負い過ぎと言うか、抱かれるためならなんでもする、みたいになってんの、自覚ある?」
「自覚というか、抱いて貰えるなら、なんでもするつもり、ですけど」
 ああやっぱり、と思う反面、どうしたもんかと溢れそうになる溜め息を飲み込んだ。

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