二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった8

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※ 洗腸描写あり

 充分に反応を示したペニスを握る手の圧が上がってきたところで、それ以上されたらイキたくなるからと止めさせ、相手の準備を開始する。
「とりあえずそこに手突いて、尻こっち突き出して。あ、足は少し開いてね」
「はい」
「穴、触るよ」
「は、んっ」
 恥ずかしそうな様子はあるが、指示した姿勢にも文句なく素直に従い、位置を確かめるようにアナルに触れた指も、わずかに身を竦めた程度で受け入れている。
 なんだか健気だなと思う頭の中では、過去に準備を手伝ってやった時の、当時彼女だった相手の反応を思い返していた。既に何度か抱いた相手で、年だって近かったから互いに遠慮なんてものはなく、どちらかが手慣れているというわけでもなかったせいで、ぎゃあぎゃあ騒ぎながら準備をした。
 あれはあれで楽しかった気もする、なんて思いを馳せている場合ではないのだけれど。なんせ経験がないわけではないが、今だってさして手慣れているわけでもないのだから。しかも今回の場合、相手に洗腸知識がまるでない上にこの従順さとなると、相当注意していないと絶対に無理をさせるなと思った。
「なぁ、最後にうんこしたのっていつ?」
「今朝、です」
「快便だった? 最近便秘気味とか、逆に下痢気味とか、ある?」
「いえ。とくには」
「了解。ならぬるめのお湯入れてくけど、もし熱いと思ったらすぐ言って。我慢すんなよ」
「はい」
 ずっとチョロチョロと湯を流しっぱなしになっているホースの先を、アナルにぐっと押し付けてやる。
「んっ……」
「お湯、入ってるのわかる?」
「ぁ、は……い……」
「熱くない?」
「だい、じょぶ、……です」
「じゃあ苦しくなったら教えて。無理はしなくていいからな」
「は……い」
 顔は見えないが声は震えてしまっているし、体だってあちこちガチガチで、時折やはり力が入りすぎているのかプルプルと震えている。
 年の差がありすぎるせいか、やはり健気だと思ってしまうし、どうにかして少しでも宥めてやりたくなる。しかしそれをグッとこらえて、黙って様子を見守った。余計なことをして、意識が腹の中に注がれる湯から逸れる困るからだ。
「……ぁ、」
 苦しいの言葉を待たずにさっさとホースの先を退けて、代わりに指の腹でグッとアナルを押さえつける。
「トイレ移動してほしいんだけど、今指離したら漏れそうな感じ?」
「いえ、多分、大丈夫、です」
「わかった。じゃ、トイレ移動して、お腹の中のお湯出していいよ」
 指を離して促せば、多少ヨロヨロとした足取りではあるものの、すぐにトイレにたどり着く。
「朝うんこ出てんなら、お腹の中にうんこ溜まってるってこともないだろうし、なるべくさっさとお湯出しちゃって。音が気になるなら、そこのスイッチ押すといいよ」
 たまたま目についた擬音装置を指して言えば、軽く頷いてスイッチが押される。まぁ排泄音が聞こえなくなるわけではないけれど、気休めにはなるだろう。
「出たらもっかい洗うから戻ってきて」
 多少顔色は悪くなっているが、こちらの指示通り動けているし、酷くショックを受けているという様子もないので、さっさと終わらせてしまおうと思った。
 同じように二度目を終えたあと、戻ってこいと言う前に、排泄物を確認させる。
「どう? 水、汚れてる?」
「そんなには……でも、全く汚れてないわけでは」
「じゃ流さないでこっち戻って」
 曖昧な返答に、仕方がないので自分の目で確認に向かった。覗き込んだ便器の中は、まぁいいかと思う程度には綺麗だったので、そのまま水を流してバスタブの中の相手を振り向いた。
「頑張ったご褒美に体洗ってやろうか?」
「え?」
「それとも気持ち落ち着けるのに一人になりたい?」
「お尻の中、洗うのは?」
「うん、もういい。体洗って、あとはベッドの上でしよう」
 再度、体を洗うのを手伝ってもいいし、一人で出来るなら先に出ていると告げれば、一人でできますと返ってきた。
 やはりと思いながらも少し残念な気持ちになったのは、明らかに疲れた顔をした相手を慰め宥め、よく頑張ったと褒めて甘やかしてやりたい気持ちが湧いているからなんだろう。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった7

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「本気で言ってんだよな?」
「もちろん本気です」
 思わず確かめてしまっても、やはり即座に肯定が返る。
「聞いてもやっぱよくわかんないけど、本気で言ってて、俺なんか相手に初めて差し出して後悔しないってなら、とりあえず準備くらいはしてみるか」
「後悔しません」
「なら服全部脱いでバスルームおいで」
「バスルーム、ですか?」
 なぜ、と聞きたげなのがありありとわかる様子に、そこで準備をするからだと教えてやる。ついでに、準備とは何をするのかも。
「準備ってのは尻穴の中、綺麗に洗うことを言うんだよ。特殊なプレイ以外はトイレか風呂場でやるもんなの」
 そう思うと、風呂とトイレが同じ空間のビジネスホテルというのは良かったかも知れない。初めてでもこの近さなら、漏らすような事なくトイレで排泄出来るはずだ。
「えと、バスルームにおいで、ってのは、つまり……」
「やり方わかんない上に一度もやったことないってなら、俺がやるしかないだろ」
「いいんですか?」
「いいって何が?」
「だって準備してきて、って言ってたから。お尻の中洗うって、つまり、水入れて排泄を繰り返すんですよね? それ、手伝いたいようなものじゃないですよね? やり方教えてもらえば、一人で出来るかもしれませんよ?」
「気にするのそっちなのかよ」
「え?」
「俺に浣腸されたり、腹の中の水吐き出す音を聞かれたり、ちゃんと綺麗になったか排泄後のトイレ覗かれたりすんの、恥ずかしくて耐えられない、みたいなのはないのかと」
「恥ずかしいと思わないわけじゃないですけど、それより、そんなのやらせて萎えられる方が困るというか、その、準備手伝ってもらった結果、抱いて貰えなくなったら嫌だなって」
 どんだけ抱かれたいんだという呆れもあったが、そこまで思ってるなら抱いてやらないとという、使命感染みたものが胸のうちに湧いてくる。
「準備だけで音を上げて、もうやだ、とかそっちが言い出さない限りは抱く気満々だから心配すんな。根がケチだから、むしろ突っ込むまでに手間掛かるほうが燃えるたち」
「ケチだから?」
「金出してやれないのも、準備に手間かけてやれないのも、極力避けたいてこと」
 まぁ金額や手間に見合うだけのものが得られなかったとか、得られそうにないなと思えば、面倒さが勝ってしまうという面もあるのだが。でもこんなに抱かれたがって、しかも初めてを捧げようとしてくれている相手への準備が、途中で面倒になることは多分ない。抱いてやらないとと思った時点で、男の体に勃つかどうか、なんて次元でもなくなっている。
「なるほど」
 わかったら服全部脱いでバスルームなと声をかけて、抱えていた衣類を自分が使ったベッドに放り、ついでにその場で下着も脱いで放ったあと、さきほど出てきたばかりのバスルームに戻った。シャワーヘッドを外して、湯量と温度の調節が終わる頃、失礼しますと言いながら相手がおずおずとバスルームに入ってくる。
 言ったとおり全裸だが、さすがに恥ずかしそうではある。部屋の照明よりもバスルームのほうが断然明るいせいで、表情がよく見えるというのも大きいかも知れないが。
「こっち」
 呼べば素直にバスタブの中に入ってくるが、その視線はどうやらこちらの股間に向いている。
「気になるか?」
「本当に俺で、勃ちます?」
「ははっ、やっぱそれかよ」
 想像通りの答えが返ってきたので、思わず笑いが溢れてしまう。
「ちゃんと勃つか、先にちょっと触ってみるか?」
「いいんですか?」
「いいよ。だってもし勃たなかったら、準備が無駄になるもんな」
 じゃあお言葉に甘えてと、相手の手が真っ直ぐに股間に伸びてくる。最初こわごわと触れたそれが、確かめるようにやわやわと何度も握ってくるだけで、ペニスは少しずつ形を変えていく。他人の手に触れられるのなんてかなり久々で、触れているのが男の手であろうと、間違いなく気持ちが良かった。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった6

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「初恋? って俺らがまともに顔合わせたの、ばーちゃんの葬式だろ。そっから何回会ってる? しかも法事でちょっと世間話したくらいの付き合いしかないのに?」
 かといって、一目惚れで、などと言われるような容姿じゃないのも明白だ。ブサイクの部類には入ってないと思うが、だからといってカッコイイに分類されもしない、ごくごく平凡な容姿だと思う。過去に彼女に困らなかったのだって、口の上手さでと言ったとおり、主にコミュ力で付き合いに発展させていただけで、容姿は特にプラスにもマイナスにも働いていなかったはずだ。
「いや、もっと昔の話です。幼稚園の頃の俺と、遊んでくれましたよね?」
 多分おじいさんのお葬式だと思うんですけど、と続いた言葉に、言われてみれば確かにそんな記憶もあるなと思った。あの時は未就学児なんてこの子くらいで、周りの大人たちはさすがに忙しそうであまり構ってもらえず、異様な雰囲気にのまれて困惑しているようだったから、当時まだ学生だった自分が子守を買って出たのだ。自分自身、かなり暇を持て余していた、というのも大きい。
 まさか覚えていると思わなかったけれど。
「あと、お正月とかで会った時も、俺と遊んでくれてたでしょう?」
 そりゃあ、親たちが酒を飲みつつ盛り上がってる横で、一緒に飲めるわけでもない上にどうでもいい昔話や世間話に相槌を打つよりは、小さな従兄弟に構っている方がまだ楽しかった。
 もちろんこれも、覚えているなんて思っていなかったけれど。
「そんな昔のこと、覚えてるのか?」
「実を言うと、おばあさんのお葬式で再会するまでは、想像で作り上げたお友達的な存在なんだろうって、思ってました。小さな子はそういうことするって、聞いたことあって。遊んでる場所も記憶になかったというか、普段の生活範囲にない場所だったから、夢の中で遊んでくれた人を、いつまもでしつこく覚えてるだけなのかな、とか」
 どうやら祖母の葬式で再会した後、親に確かめて確信したらしい。
「小さな頃にも何度か会ってて、よく遊んで貰ってたって、聞きました」
「それを否定はしないけど、だからって初恋? 想像上の人物って思ってたような相手に?」
「だからこそ、ですよ。ずっと、実際に居もしない人をこんなにも忘れられないのはなんでだろって思ってて、でも恋愛とか意識しだした頃に、きっと自分は男が好きで、理想の相手を想像で作り上げたんだろうな、って」
「実際、男が好きなの?」
「好きだと思うような相手が出来る前に再会しちゃったんで、そこはよくわかんない、です。でももし再会してなかったら、昔のあなたに似た相手に、惚れてた可能性はあると思います」
「てことは、ばーちゃんの葬式から先、結構長いこと俺を好きだったってこと?」
「好きというか、かなり意識はしてました。もっと近づきたい、あなたを知りたい、みたいな気持ちは間違いなくあります。でも恋愛したいわけじゃないって言うか、」
「待って。初恋って話だったのに、恋愛感情ではない好きなの? 再会してなかったら、昔の俺に似た男に惚れた可能性があるのに?」
 抱かれたいとまで思っているのに、恋愛したいわけじゃないってどういうことだと、思わず相手の言葉を遮って聞いてしまった。
「だって、実在の人物と思ってなかったから。ただの理想イメージだったと言うか、えと、つまり、相手も同じだけ年取ってる想定じゃなかったんです、よね」
 そりゃそうだ。相手が好きだと言っているのは、要するに高校生くらいの頃の自分、ということだろう。
「なのに俺に抱かれたいって思うの?」
「抱いて貰えるなら、抱かれたい、です」
「それは俺を知りたい好奇心ってこと?」
「それもなくはないですけど、もし悪くなかったって思って貰えたら、やりたくなった時に呼んで貰えるようになるかも、って……」
「待て待て待て。なんだそりゃ。俺がやりたい時に穴を差し出す、俺にとってやたら都合のいい相手になりたい、って意味に聞こえたんだけど」
「そういう意味で言いましたけど」
 あっさりと肯定されて、わけのわからなさに頭を抱えたくなった。
 言葉は通じているはずなのに、意味が汲み取れなさすぎて違和感が凄い。これでもコミュ力にはそこそこ自信があったのに。職場の若い子たちとだって、ここまで意味がわからない会話になったことはないのに。

続きまました→

 
 
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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった5

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 尿意によって意識が浮上したのは、横になってからおよそ2時間ほど経過した頃だろうか。トイレを済ませたついでに、そのままシャワーを使ってさっぱりする。
 ホテル備え付けの部屋着を事前にバスルームに持ち込むような機転があったはずもなく、かといって着ていた服をそのまま着込むのも、再度眠る気があるので避けたい。どうせ従兄弟は寝ているのだしと、悩むことなく下着だけ着用してバスルームを出れば、寝ているはずの従兄弟も目を覚ましたようで身を起こしていた。
「起こしたか?」
 そう煩くしたつもりもないが、寝ている相手に気遣って静かに行動していたわけでもない。
「あの、これは……」
 相手はどこかぼんやりとしつつも明らかに困惑を滲ませている。
「え、まさか覚えてないの? 休憩したいって言ったの、お前なんだけど」
「いやそれは、覚えて、ます、けど」
「俺がローションとゴム買って帰ってきたら既に寝落ちてたんだけど、起きたんなら、今からする?」
 気持ちは白けきったままで、起きたならヤレルな、などという期待はさして大きくないのだけれど、せっかくホテル代を出したのだからやる気があるならやっておくかくらいの気持ちだった。
「あ、はい」
 あっさり肯定が返ったので、酔いを覚ましたい的な休憩ではなく、セックス目的の休憩だということもちゃんと覚えているらしい。
「じゃ準備してきて」
「それなんですけど、あの、準備、って、何をすればいいんですか?」
 出ていくときにも言ってたけどわからなくて、だとか、戻ってきてから聞こうと思ったら寝ちゃったみたいで、だとか、続く言葉を聞きながら、頭の中は当たり前だが、どういうことだと大混乱だった。
 わからないの意味がわからない。というよりは、多分、わかりたくない。
「男に抱かれた経験は?」
「ない、です」
「自分で尻穴弄った経験は?」
「それも、ない、です」
 だろうな、というのが正直な感想だ。準備の意味がわからないなんて、経験どころか興味すらさしてないんじゃないかと思う。
「ならなんで誘った?」
 そう聞きたくなるのは当然だろう。ただ、納得できる理由は返ってこなかったけれど。
「奢ってくれた、から。俺とやれるって思ってるのかなって、思って」
「誘われてその気になるくらいには、やれるならやりたいって気持ちがあったが、それはお前が、気軽に俺なんかを誘うくらい男に抱かれるのが好きな、当然抱かれた経験のあるゲイかバイなんだろう、っつー前提があったからだよ」
「それは、初めてじゃダメってことですか?」
「ダメっつーか……」
 ここまでくれば、相手の好意に気づけないほど鈍くはないつもりだ。準備の意味すらわからなかったことを思えば、元々ゲイセックスに興味があって、誘えば抱いてくれそうだから初めての相手に選んだ、とは考えにくい。しかし、好意から抱かれたがっているのだとして、好かれる理由なんて欠片も思い浮かばなかった。
「俺が、やれんならやっとくか、程度の気持ちで部屋とったのわかってる? よな?」
「はい」
 やはり躊躇うことなく肯定が返る。
「初めて抱かれる相手がこんなクズでいい、ってなる理由がわからないんだけど。というか、そんな好かれるような何かをしてやった記憶がないんだけど」
 言えば、多分初恋みたいなものなのでと返されて、ますます意味がわからなくなった。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった4

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 狭い部屋の中にベッドが2つ並んだだけのシンプルなツインルームで、片方のベッドの上に転がり寝息を立てる男を見下ろしながら、どうしてこうなった、と思う。
 飲み慣れてない相手が飲みすぎないよう、かなり注意していたはずなのに。
 予定していた店を回り終えて、帰ろうと駅へ向かう途中、本当にこのまま帰るんですかと袖を引いて引き止めてきたのは相手の方だ。店を出たときよりも赤い顔をしていたから、歩いて酔いが回ったのだろうと思って、電車に乗ったら吐きそうとか言い出すならどこかで休憩を入れないとまずいかとは考えた。
 といっても、公園でも見つけて休むのが第一候補で、次点が酒以外のメニューが豊富な店に入る、ぐらいのことしか考えていなかったし、当然自分はアルコールを追加する気でいたし、ホテルに入って休憩なんて欠片だって想定していなかった。
「休憩するか?」
「俺は、いいですよ」
「ん? それは休憩したいの? したくないの?」
 そんな少し噛み合わない会話も、酔っぱらい相手だと思ってあまり気にしなかったのがいけない。ますます顔を赤くした相手が、休憩したいと告げた意味を理解したのは、歩き出そうとしたのを再度袖を引いて引き止められた後だ。
「ラブホより、こういう普通のとこのが、いい、です」
 こういう、と言われて初めて、自分たちがビジネスホテルの前で立ち止まっていることに気づいた。というかラブホってなんだと、そこで初めて、何か大きな勘違いをしていることにも気づいた。
 休憩したいというのは酔いを覚ましたいという話ではなく、セックスしたいという誘い、でいいのだろうか?
「え、つまり、やらせてくれんの?」
 ド直球に聞いてみれば、困ったように視線をさまよわせた後に俯いて、幾分小さくなった声が、いいですよと告げてくる。だってやれると思ったから奢ってくれたんですよね、と続いた言葉に、最初に誕生日プレゼント代わりだと言ったはずだけど、と返しはしなかった。その返事を聞いて考えていたのは、この据え膳を食うかどうかだ。
 男を抱いたことなんてないが、ヤリたい盛りに好奇心でアナルセックスを試したことならある。面倒さのが勝ってハマりはしなかったが、気持ちよさは普通に得られたので、突っ込んでいいなら突っ込みたい気はする。
 問題は、男の体相手に興奮できるかどうかと言う点と、相手が従兄弟だという点だ。勃たずにやれなかったら、ホテル代なんて無駄金もいいところだし、なにかの拍子に自身の親や相手の親にバレたら、何を言われるかわからない面倒さがある。まぁ親バレの可能性は限りなく低いだろうとは思っているが。
 それでも結局すぐ横のホテルに部屋を取ったのは、ホテル前に長いこと立ち尽くすのがいたたまれなくなったらしい相手が、諦めたように掴んでいた袖を放し、帰りましょうかと言ったからだ。その瞬間、この据え膳をこのまま見逃すのはさすがにもったいないなと、思ってしまった。枯れちゃいないんだから、多分きっと勃つだろう。
 歩き出そうとする相手を今度は自分が捕まえる。手首を掴んで、ホテルの入口へ向かって歩けば、抵抗されることなく付いてくる。
 なんの変哲もないただの平日なので、飛び込みだろうと部屋は余裕で空いていて、あっという間にこのシンプルなツインルームまで移動したのはいいが、相手が男である以上、そのまま押し倒してことを進められないことはさすがにわかっていた。勢いで入ってしまったが、考えたらローションもゴムもない。
 仕方がないので、ローションとゴムを買ってくるからその間に準備しといてと言いおいて、一息つくまもなく出掛けたのが何分前だろうか。
 戻ってきたら相手はベッドの上ですっかり寝息を立てていて、しかもシャワーを浴びた様子もない。つまり何の準備もされていない。
 いくらアナルセックス経験があろうと、むしろ経験があるからこそかもしれないが、さすがに洗ってもいないアナルを相手の了承もなく弄り回すのは抵抗がある。というかヤリたい盛りだったらどうかわからないが、意識のない相手に突っ込むなら、オナホとそう変わらないよなと思ってしまった。
 すごい勢いで気持ちが白けて、大きなため息を一つ吐いた後。無駄金を使ってしまった後悔とともに、空いたもう片方のベッドに横になって目を閉じた。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった3

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 撮影は特に気にすることなく従兄弟も一緒に映した。いいのかと言うので、映らないよう気を使うのも、チラチラと映り込まれるのを編集するのも面倒くさいと返した。
 一緒に飲みに行きたいというのを、こちらはすっかり酒を奢れと認識していたわけだが、どうやら自分の飲食代は払う気があったらしい。しかしそこは、年齢差を考えればさすがにこちらが出さないとあまりに格好が付かないと、まとめてこちらが支払っている。二十歳のお祝いと言えば、納得した様子で、ありがとうございますと嬉しそうに笑った。
 何軒も巡るので、いくら1軒当たりの支払いが安いと言ってもそこそこの金額にはなるが、今回限りと思えば仕方がないと諦められる程度の額ではあるし、たまには人と飲むのもそう悪くはなかった。
 なんせ動画は声出しもないので、会話内容に気をつける必要もない。年も離れているし、相手の趣味趣向なんて知らないけれど、特に会話に困るようなこともなかった。どうでもいい雑談は苦手ではないし、親戚なので共通の話題となる人物だっている。しかも彼は動画の視聴者で、その切っ掛けが父親だというのだから、いくらだって話は広げられた。
 少し様子がおかしくなったのは3軒目あたりだろうか。二十歳になったばかりで、自身のアルコール許容量がわからないのは仕方がない。ふわふわした様子に、だいぶ酔ってるなと思いながら、酒を取り上げて代わりに烏龍茶を渡した。
 もっと飲めると言うのを、ここで終わりじゃないんだからとたしなめながら、取り上げた酒に口をつける。最初は恨めしそうな視線が絡んできたが、グラスを置く頃には諦めたのか、またふわふわとろりと緩んだ表情でこちらを見ていた。なんだか随分と幸せそうだ。
「んっふふ」
「どうした」
「優しいなぁ、と、思って」
「は? どこが?」
「俺のこと、ちゃんと気にしてくれてる」
「あちこち連れ回して酔い潰したなんて事になったら、俺の責任問題になるからだ。おじさんやおばさんに頭下げに行くなんて、そんな面倒なことしたくないっての」
 わかったら絶対に無理して飲むなよと釘を刺しても、んふふっと笑うだけで、これは酒を取り上げるのが少し遅かったかも知れない。しかも。
「こんな優しいのに、なんで、結婚しないんですか?」
 突然そんな話題になって驚いてしまう。こっちからは相手の恋愛関係に触れたりしていないのに。
「唐突だな。恋人なんてここ何年も居ないんだけど」
「でも昔はモテてたんでしょ?」
「どこ情報だそれ」
「母ですけど。母の情報源はおばさんかも?」
「だろうな。まぁ、下世話な話、ヤリたい盛り超えたらなんか面倒になっちゃって、ってだけ。口が達者な方だから付き合うまでは出来んだけど、あんま長く続かないんだよな」
「優しいのに?」
 どうやら本気で優しいと思ってるらしいが、酔っぱらいから酒を取り上げて烏龍茶を渡した程度で? と笑いがこみ上げる。ちょろすぎて心配になりそうだ。従兄弟が男で良かった。
「いや、俺はクズだよ?」
「クズ?」
「そう」
「なんで?」
「だから、ヤリたいから付き合ってただけなんだって。ヤりたい時だけ会おうとする男なんて女の子はいらないよね。だからすぐ捨てられんの」
「てことは、もう枯れちゃった、的な?」
 哀れみなのか悲観的な顔をされて、とうとうこらえきれずに吹き出してしまった。
「いやさすがに枯れてはいないけど」
「なら風俗、とか?」
「あー……なるほど」
「なるほど?」
「俺が風俗はいいぞって言ったら、そっちも連れてってって言い出すのかな、と」
「言ったら連れてってくれんですか?」
「いや、俺、風俗利用しないし」
 最近のオナホは高性能でいいぞと言ってやれば、どこかホッとした様子を見せる。
「なんだ、がっかりしないの?」
「俺だって風俗行きたいとか思ってないですって。風俗いいぞ、連れてってやるぞ、って言われたら、まぁ、考えはしますけど」
「もし俺が風俗使ってたって、さすがにそんなもん奢れないわ。居酒屋はしごが精一杯。ちなみに、ケチなのも振られる原因のひとつな」
「ケチなんですか?」
 前2軒奢ってくれたのに? という顔をするので、そこはまず年齢差を考えろよと思ってしまう。あと値段だってそうたいしたことはない。
「デートくらいは奢るけど、でも、なるべく金かけずにヤリたい。てのが透けて見えるんだろな。旅行だの遠出したくないし、お高いレストラン入りたくないし。ああ、あと、やれそうにない時は割り勘にしたり?」
「やれそうにないなら割り勘……」
「そ、俺がクズなの理解した?」
 曖昧に頷かれたのを機に、次行くかと席を立つ。途中からは結構はっきり会話ができていたから、多少は酔いも冷めているだろう。

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