金に困ってAV出演してみた28

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 やがて、涙が止まってこちらの呼吸が整うのを待ってくれていた相手が、そろそろ大丈夫かなと言って口を開く。
「あんなに怖い怖い言いながら泣くのに、なんで今日に限って、嫌だも止めても許しても、言わなかったの」
「それは……」
 言葉を濁したのは、意図的に避けた面がないわけじゃないからだ。口調は優しいし、怒られているようには感じないけれど、それでも、時々嫌だとか止めてとか言ってねって言われていたのを無視してしまったのを咎められているのかも知れない。
「言えなかった? 言っても無駄って思った? 嫌がったら、尿道プラグ使われちゃうかも、とか思ってた?」
 困惑と後悔とが滲む、顔と声だと思った。多分、言えなかったなら申し訳ないと思っているのだ。
 ああこれはもしかしなくても、嫌だとか止めてとか許してってお願いしたら、ちゃんと加減してくれる気があったっぽい。きっと、使われたことのないオモチャに本気で怯えて戸惑う姿が撮りたかっただけで、怖い怖いと泣く姿が欲しかったわけじゃないんだろう。
「ちが、くて。そうじゃ、なくて」
「うん。理由あるなら、教えて?」
 謝ったほうがいいのかと焦りながらも取り敢えずで否定の声を上げれば、柔らかな声が先を促す。
「あの、奥で感じるようになって、その、他の人とじゃ満足できない体になったら、嬉しいんだろうなって、思った、から……」
「なっ、えっ?!」
 酷く驚かせた上に、言葉に詰まった様子で半開きの口のまま止まってしまったので、ますます焦る。だって今まで彼が言葉に詰まるなんてことはなかった。いつだってペラペラと、架空の物語をその口で綴っていたのに。
「あの、ゴメン。怖いのは初めてだからで、我慢して任せてたら、本当に奥も感じて気持ちよくなるのかもって思ったし、だから、その、」
「うん。待って。お願いだから、ちょっと、待って」
 あわあわと慌てるこちらを、強くて静かな声が制す。ハッとして言われた通りに口を閉じれば、相手は深呼吸を一つした後で、少し意地の悪い笑顔を浮かべてみせる。
「先生ってさ、やっぱ俺のこと、相当好きなんじゃないの?」
「えっ……あ……」
 先生と呼ばれたことで撮影中だということを思い出した。休憩を入れなくていいと言ったのは自分で、この彼は取り敢えずカメラは回しておけ派で、そういやカットの声だって掛かっていない。スタッフに抱えられて体勢を変えられたのと、安定した姿勢にかなりホッとしたのとで、撮影は中断したような気になっていたらしい。
「もしかして、今、自覚した?」
「えーあー……その、うん」
 撮影中と思わなくて、なんて言えるはずもないので、こちらのおかしな反応はそういう事にして貰ったほうがいい。頷けば、フッと小さな息を吐いた相手の顔が、嬉しそうに緩んでいく。
「ねぇじゃあ言ってよ、先生」
「えっと、好きだ、よ」
「それ、本気にするよ?」
「ん、いいよ」
 じゃあキスしていいよね、の言葉の後で、相手の顔が近づいてくる。じゃあってなんだろうと思いながらも、そういやこの撮影が始まってから初めてのキスだなと気づいた。
「なんで、今までは、キスしなかったの?」
 軽く唇を触れ合わせたり、唇を啄まれたり程度の軽いキスが繰り返されていたから、その合間に問いかけてみる。
「さぁ、なんとなく」
 そんな言葉で濁されてしまったけれど、なんとなく、なんて理由があるだろうか。彼ならもっとはっきり、なんらかの意図があって、キスを避けてたんだと思ったのに。
 撮影が終わったら、もう一度聞いてみようか。先生には言いたくなくても、役を降りたら教えてくれるかも知れない。なんてことを思っていたら。
「嘘」
「うそ、って?」
「キスは、しちゃダメって思ってただけ」
「なんで?」
「キスしたら、きっと、俺だけが好きで好きでしょうがない現実と、向き合うって思ってたから」
「へぇ……?」
 わかるようなわからないようなと思いながらの曖昧な返答に、相手はあっさり、わからなくていいよと言って薄く笑う。その笑みが近づいて再度触れ合った唇は、今度こそ深く探り合うキスになったから、彼の告げた言葉の意味を考えられる余裕なんてないまま、久々に与えられたキスの快感に酔いしれてしまった。

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金に困ってAV出演してみた27

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 こちらが生徒を好きになる、なんて展開は彼の中では想定外だったようだけれど、でも好きになっていいとはっきり言ってくれたのだから、きっとこの後、好きを伝えられるような場面を作ってくれるはずだ。その時にちゃんと好きだと言えるように、とは思っているものの、未知の深さまで侵入してくるオモチャに、意識の大半が持っていかれている。
 太さはないので途中まではスルスルと入ってきたし、時々軽く前後されれば凹凸が中のイイ所を擦って、むしろその細さが物足りないくらいだったのに、途中からは奥に入られているという感覚ばかりが強くなって、別の意味で息が乱れた。快感を拾う余裕なんて当然なくて、ハァハァと吐き出す息が荒いのは、どう考えたって恐怖と不安からだ。
「うぅッ」
 お腹の奥がグッと押し上げられるような鈍い痛みに呻いたところで、背後から、ここまでかなという声が掛かる。
「もういいよ。手、離して」
 そう言われても、指先に力が入りすぎているのか、上手く手が開けなかった。内心焦っていると、尻タブを掴む手をそっと撫でられた後、こわばる指先を一本づつ引き剥がしてくれる。
 途中である程度緊張が解けたのか、片手が離れる頃には逆の手も動いて、どうにかシーツに両手をついたものの、今度は腕に力が入らない。伏せてしまった上体を起こせない。
 宥めるように手の外れたお尻を何度も撫でていた彼の手が、するっと腰から背を上って頭を撫で始める。優しい手付きにホッとするのに、息は整わないままだし、腕に力も入らない。
「ねぇ」
 頭では支えきれなくなって、途中から横向きに頬をシーツに押し当て肩で体を支えるようになっていたけれど、その顔を覗き込むように急に彼が顔を寄せてくる。ぼやけた視界をどうにかしたくて何度もパシパシと目を瞬かせれば、少しばかりクリアになった視界の先で、相手は随分と困った顔をしている。
 オモチャは無事に、S状結腸のギリギリ手前まで届いたのかと思っていたのだけれど、もしかしてこちらがあんまり怖がって泣くから、途中で止めてくれたってことなんだろうか。
「あの……?」
「うん」
 なんでそんな顔をするのかとか、この後どうすればいいのかとか、聞きたいことは山ほどあって、でもなんとか絞り出した声には、先を促すような柔らかな相槌だけが返る。
「つづけ、て、いーよ?」
 ますます困った顔をさせてしまったから、どうやら欲しい言葉はこれじゃなかったらしい。
「泣くほど怖いのに?」
「だ、って」
 あんまり優しく頭を撫で続けてくれるから、だって仕方ないじゃないかと思いながら口を開いたら、またぶわっと涙が込み上げてしまう。ううっと呻きながらもどうにか涙を拭おうとしたけれど、それより先に、頭を撫でてくれていた手が頬に落ちて溢れかけた涙を拭っていく。
 その手付きもやっぱり優しくて、涙は暫く止まりそうにない。カメラの前で泣いてしまうのは初めてではないけれど、あの時は慰められることもなく、むしろ泣き顔をもっと晒せって勢いだったのに、今回はどう考えてもこちらが落ち着くのを待たれている。
「この体勢のままじゃ辛いよね。もっと楽な姿勢になろうか。お尻のオモチャも一回抜く? 一回休憩入れようか?」
 これはどうやら、生徒の彼ではなく監督としての彼の言葉なんだろう。でもどうせならこのまま撮影を続けて欲しかった。というよりも、一度抜いてもう一度挿れるところから、なんてのを繰り返したくない。
「へ、きだから、も、ちょっと、待って」
「うん。焦って泣き止まなくていいから。でも、体勢は変えようね」
 ベッドに寝転がっていいよと言われた後、彼に呼ばれてワラワラと寄ってきた数人のスタッフに抱えられるようにして、そろりと体の向きを変えられる。背中を支えてくれるベッドマットの感触に、今度こそ安堵で体の力が随分と抜けた気がする。
 一度大きく息を吐いてから、意識的に深めの呼吸を繰り返せば、気持ちもだんだんと落ち着いてくるようだった。

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金に困ってAV出演してみた26

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「早く抱いてって言ったら、抱いてくれんの?」
「さぁどうしようか。だってこれ使われたくなくて、抱かれる方がまだまし、とか思って言ってるなら、大人しくこれ使われてた方が良かった、って思うような抱き方を考えないとだよね」
 使わないでって言いたいわけじゃないって言ったのに。抱かれる方がマシな気がするから、という理由で早く抱いてと言いたいわけでもない。でもそんなこちらの言葉を聞いてくれる気はないようで、ちょっと待っててと言い置いて出ていってしまった彼は、すぐに何かを手に戻ってくる。
 その手の中のものを、なにそれ、と聞く必要はなかった。だって既に一度、写真でだけど、打ち合わせの時に目にしている。どう使うものなのか、知ってしまっている。
「これ、わかる?」
「尿道、プラグ」
「うん、当たり。ね、今すぐ抱いて欲しい?」
 つまりは、それを装着された状態でなら、あの長いアナルビーズの使用は諦めてもいいってことらしい。何が何でも、使ったことのないオモチャを使いたい意思を感じる。
 この分だと、電気刺激を送る機器も持ち込まれていそうだ。隙を見せたら使う気満々で、とはあまり思いたくないんだけども。
 無理だと拒否したものを持ち出して、そんな聞き方をするのはズルいと思いながら首を横に振った。
「そっか残念。先生すぐイキたくなっちゃうし、最近じゃ我慢できなくてトコロテンしちゃうから、これでおしっこ穴に栓して射精我慢すれば、きっともっともっと気持ちよくしてあげれると思うのに」
 トコロテンするところを撮影された記憶はないが、既にそう出来る体になっているらしい。また時間軸が前後した撮影をされていて、イキたくて仕方なくなったら、今日はオモチャでそのままトコロテンして見せてって言われるのかも知れない。
「せっかくだし、これも着けてする? すぐにベッド行かなかったお仕置き、とか」
 どこまで本気で言っているのかわからない。それの使用は許可していないのに、このまま押し切られたらどうしよう。聞いてないと拒否してもいいんだろうか。
「わかったらこれ以上手間かけさせないで。これ使われたくないなら、今すぐベッド行って、ズボン下ろしていつもの姿勢。10数える間に出来なかったら、本当にこれ、使うよ」
 いーち、にーい、と数を数えだされて、慌ててベッドに乗り上げる。言われた通りに、ズボンを下ろして丸出しになったお尻を突き出すように四つ這いになれば、カウントを止めた相手が近寄ってきて、良く出来ましたとでも言いたげにお尻を撫でた。
「ねぇ先生、いい機会だから、このまま自分でお尻広げて、おねだりして見ようか。奥の方でも感じられる体に躾けてください、って。その体が誰のものか、ちゃんと自分の口で宣言してさ。俺にされるんじゃなきゃ感じられない体になりたい、ってお願いするの」
 いい機会だから、というのは、拒否したら尿道プラグを装着するぞという脅し、なんだろうか。やっぱりどこまで本気かはわからない。
 ただ、さっき引き出したかった言葉は引き出せた。宣言しろだのお願いしろだの、こちらの口から言わせようとしてはいるものの、彼との行為でなければ満足できない体にしたい欲を、この生徒も確かに持っているのだ。
 チラリと振り返って確かめてしまった相手の顔は、不快と不安と期待とが混ざって見えた。言葉の内容と聞こえてきた声音からは、嗜虐の滲む楽しげな様子を想像してしまうのに。
 彼の中で、どんな感情が渦巻いているんだろう。監督としての彼はもう、こちらの好意を知っているけれど、物語の中の彼はまだ、好きになってあげたいと思われているなんて、欠片も気付いていない設定だろうか。それとも、少しはその可能性にも気づき始めての、期待なんだろうか。
 だったらいいな、と思いながら、頭を下げて額をベッドに押し付ける。頭と両膝の三点で体を支えながら、自由になった両手をお尻に回して、両尻タブを掴み左右に開いていく。

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金に困ってAV出演してみた25

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 しかし結局自分たちの今後についてを語る時間的余裕はなかった。編集された映像を見ながら体を慣らす予習時間だって、今日の撮影のスケジュールに最初からきっちり組み込まれていたもので、要するに予定していた撮影開始時刻が来てしまったからだ。
 撮影は、今日はこれを使うねという、彼の宣言からスタートした。彼の掲げる、これから使われる予定のオモチャを前に、実物はかなりエグいなぁと思う。
 過激になっていく開発案の中から、これくらいならと許可したのは、結腸開発用の長いアナルビーズを使われる事で、もちろん過去にそれに類似するものを使われた経験はない。というよりも、過去に経験のないオモチャを使わせて欲しい、というのが一番大きな目的らしくて、どうやら本気で戸惑ったり不安がったりする所を撮影したいようだった。
 他に上がっていたのが尿道用のブジーだのプラグだのだったり、電気刺激を送るようの機器だったりで、同じ未経験の品にしても、それらはあまりに想像がつかなすぎてとても許可できなかったという経緯がある。
 結腸用のオモチャも複数候補があったなかで、一番無難そうなものをチョイスしたとはいえ、やはり写真ではそのサイズ感がわかりにくい。
「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫」
 優しく言い募る相手は満足気な顔をしているから、実物を前に若干怯んでしまっている事そのものが、やはり期待通りの反応なんだろう。
「今まで使ってきたのだって、ヤダヤダ言いながらもちゃんと気持ちよくなれてたでしょ。今まで通り、これでも感じられるように、じっくり慣らしてあげるからさ。奥の方、感じられるようになったら、凄いらしいよ」
 楽しみだねと笑ってみせる顔は可愛らしいけれど、でもあの映像を見ているからか、どこか無理のある作り笑いにも見えてしまう。
「さ、わかったらいつも通りベッド行って、お尻だして。これ見て不安になっちゃったのかもだけど、怖がって体強張らせてもいいことないって、もう知ってるはずでしょ。どうせ拒否権なんかないんだから、俺に全部任せて、リラックスして体預けときなって。ちゃんと気持ちよくしてあげるから、余計なことは考えなくっていんだよ」
 顔は笑っているのに、辛そうだなと思う。予習時間に弄られてはいたものの、撮影は始まったばかりで、焦らされきっても居ないからだろう。はっきりと、目の前の男の子が、この関係に苦しんでいるのがわかってしまう。
 こんなことをして、好きになって貰えるはずがないと思っているのだ。そのくせ、体だけを手に入れる事に、きっと虚しさを感じても居る。
「どうしたの? そんなにこれ、使われたくない?」
 黙ったまま相手を見つめすぎていた。突っ立ったまま動かないこちらに、相手が少し苛立ちを見せる。
 こちらが反応しないからと言って、撮影が中断される様子はない。まぁもともと、どうせ編集するのだからカメラは回しておけ、というタイプなのは知っているけれど。
 だから編集されてしまう前提で、こちらの気持ちを吐露してみる。だってさっき、好きになってもいいって、言われたわけだし。
「そんなの入れられるの、怖い、とは思ってるけど、でも、使わないでって、言いたいわけじゃなくて」
「まぁヤダとか言われたところで、使うしね」
「うん。知ってる」
「なら素直にベッドに行けない理由は?」
「それは、そんなとこまで、感じるようにならなきゃいけない理由、言って欲しくて。だって、この前言われたけど、俺のお尻、多分もう、ちんこ入るよ」
「それは、早く俺に抱かれたい、ってこと?」
 後半部分に反応されてしまったが、そうじゃない。さっき言っていた、彼との行為でのみ満たされる、そこらの男に抱いて貰っても満足できない体にしたい的な、独占欲丸出しな言葉を引き出したかったのに。

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金に困ってAV出演してみた24

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 ただ、ご主人さまが欲しいなんて欠片も考えたことがないけれど、だからといって、恋人が欲しくなっているわけでもなかった。恋人どころか体だけの相手すら探す気になれずに相当ご無沙汰だったのは事実だ。
 じゃあ恋人作ってもいいかなって気持ちになってきたのかと問われて、正直にそれを伝えれば、またしても相手は強い衝撃を受けたらしい。
「え、じゃあ、春に俺とヤッたのが最後?」
「そうだね」
「ええええなにそれぇ」
 驚くと言うよりはなんだか嘆かれている。なんでこんな反応をされるんだろう。まるで会わずにいたこの数ヶ月、他の人とヤッていなかったことを責められてでも居るようだ。
「え、ごめん。何か問題あった?」
「違う。もし問題があったとしても、謝るのは俺の方。てかそんな状況なのに、今回応じてくれたのは約束してたから? 約束破れないとか考えちゃって断れなかった?」
 ああ、なるほど。見た目は撮影用で、中身は真面目と思われているせいか。あの反応は、この撮影を誘って良かったのかという、彼の葛藤的なものの表れらしい。
「いや。そんなことないよ。協力依頼の連絡貰って嬉しかったと言うか、楽しみだなって思ったし。どうしようとか、断れないかな、なんてちっとも考えなかった」
「ねぇそれ、俺との絡みを楽しみにしてくれてた、って意味に取っていいの?」
「そうだけど。てかそれ以外に何かある?」
「いや、うん、そうなんだけど。そうなんだろうけど。なんていうか……」
「なんていうか?」
 困ったような照れたような様子で口元を覆い隠してしまった相手に首を傾げつつ、先を促すように相手の言葉を繰り返した。
「期待しそうになるんだけど、でも恋人は要らないんだよね?」
「期待? って、あー……」
 何の期待だと思いながら口にしたものの、すぐに予測がついてしまって思わず次の言葉を探してしまう。そんな中、相手がこちらの手を取って、じっと真っ直ぐに見つめてくるからドキリとする。
「好きです。俺と付き合ってください」
 あ、本当に言った。
 想定内の言葉ではあるものの、まさか今この場所で、本当にそれを口に出すなんて思わなかった。
「えっと、本気、で?」
「本気。って言ったら、検討してくれるの?」
 恋人要らないんでしょと続いた言葉に、確かにそうなんだよねと思ってしまって、返す言葉が見つからない。
「じゃあ、なにか弱み握って脅して俺のものにしちゃったら、俺を好きになってくれる?」
 黙ってしまえば次にはそんなことを言われて、またしても、本当に言った、と思った。さっき、本気で実行する気がありそうだと思ってしまったのは、どうやら正しかった。
「こんなのフィクションで、物語で、実際には出来っこないって思ってる?」
「逆かな。本当にやりそう、って思ってる」
「そりゃだって、羨ましいだの、好きになっていいのかだの言われたら、実行してみる価値高すぎだもん。脅せそうなネタだって、いくらでも思いつくし」
 知られたくなくてこの髪なんでしょと言われてしまえば否定は出来ない。
「ちゃんと時間かけて、俺じゃないと相手できないような、そこらの男誘って抱いて貰っても満足なんか出来ないような体に、躾けちゃおうか」
「ああ、そういう……」
「あのさ、自分がそうされるかもって思って聞いてる?」
「あ、ごめん。あの生徒って、そういうつもりで俺を、というか先生を開発調教してたんだ、みたいなこと考えてた」
「だよね。だと思った。で? そんな男を、好きになってくれるの?」
「好きになっていいなら」
「そんなの、好きになって欲しいに決まってんじゃん」
「うん。わかった。で、俺たちはどうしようか?」
「あ、俺たちの話にも戻ってくれるんだ」
 わざとスルーしたのかと思ったと言うので、先延ばしにしたら本気で実行する気なんだろと指摘してやる。話がズレてもあっさり応じたのは、むしろ曖昧なままの方が都合が良かったからだろう。

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金に困ってAV出演してみた23

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「俺が、というかこの家庭教師って、この生徒のこと好きになっていいの?」
「えっ!?」
「あ、やっぱダメなのか」
 あまりに驚かれてしまったから、そんな展開は予定されてないらしいと悟る。なのに。
「いや待って。え、待って」
「なんでそんな焦ってんの?」
「いやだって、好きになってくれる可能性なんか、あるわけ?」
 だってさ、と続いた言葉は、この生徒がどれだけ自己中で、自分勝手に想いを押し付けるだけですらなく、その想いを理由にしてどれほど酷いことをしているかという説明だった。この物語を作った本人がそれを言うのか、というツッコミをしていいのかはわからない。
「なのに、こんな男、好きになったりする?」
「そう言われるとちょっと迷う」
「迷うんだ。てかどんなとこが好きになれそうなの? そこ、めちゃくちゃ興味あるんだけど」
「好きっていうか、脅して好き勝手してるように見えて、なんか、ちっとも楽しそうじゃないとこ、とかは、気になってる」
「えっ?」
「いや、撮影中には気づかなかったし、声だけ聞いてると楽しそうなんだけど。でも映像で見ちゃうとそうでもなかったというか、なんか、辛そうで。あと、何がそんなに好きなのかわかんないけど、めちゃくちゃ執着してるのはわかるし、あの、ちょっとだけ、羨ましいなって思ったりもしたから」
 さっき映像を見ながら胸の奥が痛んだのは、いいなぁと思ってしまったからだ。こんなに執着されて、想われてて、このまま彼のものとして生きていく未来が待っている、画面の中の自分を羨んでしまった。
 時系列がメチャクチャな撮影をされたから、脅されて酷い目にあっている、という感覚がかなり薄いのは認める。それと、相手が彼だから、という部分だって間違いなく大きい。
 もし初めましてな男優さんとの絡みだったら、もしくは、本当に顔見知り程度の相手に脅されて好き勝手弄られて開発されているのだったら、こんなに想われて羨ましい、なんてことは思わなかった可能性は高い。
 もちろん、辛そうな顔を見て、好きになってあげられないのかな、なんて考えることもなかったと思う。
「羨ましい?! って俺が?」
「いや生徒じゃなくて」
「てことはやっぱ自分の役がってこと? え、嘘でしょ」
「そんな、驚かなくても……」
「じゃあ例えば。例えば、だけど」
 もし彼がこちらの弱みを何か握って脅して関係を強要し続けても、それを好意的に受け入れて、更には彼を好きになるのか。という問いを、随分と食い気味に投げかけられて驚いてしまう。
 これに頷いたら、本気で実行する気がありそう。なんて疑いたくなる程度には、真剣な顔と勢いだった。
「えっと、この生徒くらい、本気なら」
「本気って、何が何でも、どんな手を使ってでも、手に入れてやる的な本気があればいいってこと?」
「まぁ、そうかな?」
「マジ、で……」
「あ、いや、」
「え、どっち? 有りなの? 無しなの?」
 大事なことが抜けていると気づいて否定しかければ、それだけじゃなくてと続ける前に、やっぱり食い気味に回答を急かされる。
「あの、ちゃんと俺を好きなら、ってのと、あとその、簡単に捨てないでくれる、なら、有り」
「ねぇあのちょっと待って。え、ちょっと凄い想定外の返答きたんだけど」
 えええと動揺激しい相手の反応に、ちょっと何が起きてるのかわからなかった。
「あのさぁ、春に家誘った時、暫く恋人要らないって言ってたよね? 恋人は欲しくないけど、支配してくれるご主人さま的な存在は欲しい、みたいな気持ちはある、ってことでいい?」
「は?」
「え、違うの!?」
 本気で驚かれたらしいことに、こちらも驚く。なんでそんな話になっているのか、やっぱりちっともわからない。

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