雷が怖いので プレイ5

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 膝が震えて足に力が入らない。手だってまだ辛うじて相手の服を掴めているけれど、指の力を少しでも抜けば、腕はだらりと落ちてしまうだろう。すっかり相手の腿に乗りかかっている腰は、ゆらゆらもぞもぞと動き続けているけれど、でも達するための快感を得るほどの動きなんて出来ていない。
「ますますトロットロの可愛い顔になったね。俺とのキスは気持ちいい?」
「ん、ぁ、きも、ちぃい」
「いい子。これからも、気持ちいい時は、ちゃんと気持ちいいって、言おうな」
 なんども頷いて見せれば、耳元にキスが落とされる。ちゅっちゅと小さなリップ音が耳に響いて、かすかなゾワゾワがそこに集まってくるようだった。
「ぁ、……ぁっ……」
「これも、気持ちいい、だろ?」
「ぁああっっ」
 言いながら耳朶を柔く食まれて、ゾクリとした快感が背筋を這い登っていった。
「きもちぃ、これも、きも、ちい」
 気持ちが良いと繰り返せば、いい子と言われながら、さらにしつこく耳を嬲られていく。片耳が開放されれば、次は反対の耳へ。乾いた耳元に唇が触れれば、また最初のゾワゾワが集まってくる。
「ぁ、……ぁっ……」
 耳朶を食まれることを予想して、それだけで快感が背筋を這い登る中、けれどすぐには予想していた刺激は与えられなかった。
「そろそろイこうか?」
 囁きが吹き込まれる。しかし体どころか頭の中までキモチイイでいっぱいになってとろけきっていたせいか、一瞬何を言われているのかわからなかった。というか、どこへ行くのかと思ってしまった。けれどすぐに、腿を揺すられ声を上げて、イクの意味を理解する。
「あんんっっ」
「ご褒美気持ちいいのわかるけど、どうしてご褒美貰えてるのか思い出そうな」
 つまり、気持ちよさに身を委ねていないで、さっきみたいにちゃんと自分で腰を振れと言われているようだ。震える足と腰に力を入れながら、少しばかり持ち上げてくれたままの腿へ、グッと股間を押し当てていく。
「ん゛ぁ゛あっ」
 ビリビリとした刺激が体を巡って、一瞬目の前がチカチカ明滅した。そのままの刺激が続けば確実に達していたと思う。けれど強すぎる刺激に腰が引けてしまったというか、体の力が入らないというかで、結局、荒い息を吐きながら相手の腿に身を委ねてしまっている。
「もうちょっとだな。ご褒美の続きあげるから、頑張ってイッてごらん」
 言われた瞬間、頭のなかに大きく無理だと響いた。ムリムリムリ。出来っこない。もうちょっとだなんて、絶対相手の勘違い。
 だって耳を嬲られたら体を支える根幹がまたグズグズに感じてしまうのは明白だ。自分自身の力で、グリグリと相手の腿に股間を擦り付け続けるなんて、とても出来そうになかった。
 前回はキモチイイの波に飲まれながら相手の手で揺すられてイッたわけだけれど、思えば結構な力が掛けられていたような気がする。かなりガッシリ腰を掴まれていたし、グッと腿に押し込む力も強かった。
 あれくらいの力を掛けなければ、ズボンを履いたままの股間を擦り付ける、なんて方法で達するのはきっと難しい。しかもそうやって達することに、こちらは全く慣れていない。
 擦り付け系オナニーの存在も知らなくはないけれど、男でやってる作品はほとんど見たことがないし、だから自分もやってみようなんて思うこともなかった。
 無理だ出来ないと思う理由は次々と思い浮かぶのに、じゃあどうしたらこれを回避できるか考えるのは難しい。絶対相手の勘違いだとは思っているけれど、それでも、もうちょっとで出来ると言われた内容に、無理だとか出来ないなんて言ってもきっと聞き入れてはくれないだろう。
 そうこうしているうちに、ご褒美の続きが始まってしまった。耳朶を食まれて吸われてゾクゾクが体を這い登る。
「んぁあっ、おねがいっ……して。あなたが、して。俺を、イか、せて」
 とっさに口をついて出たのはそれだった。だって自分で腰を振っていくのが無理なら、もう、相手に頼るしかない。終了条件のもう一つを忘れてはいなかった。
 さすがに驚かせたのか、相手の頭が耳横から離れて、真正面から見下される。
「俺の聞き違いじゃないなら、今の、もう一回、言って?」
「一人じゃ、出来ない。イケない、から。お願い、手伝って」
 どうにか頷いてもらおうと必死に口を開く。それを相手は、楽しそうに、嬉しそうに、見ていた。
「どんな風に手伝ってほしいの? 俺に何をして欲しいか、ちゃんと言わないと。ただ手伝ってだけじゃ、お前が思ってもみないようなお手伝いしちゃうかもよ?」
 ニヤリと笑われ思わずホッとする。自分でイケなくてもいい。彼の手でして貰える。
 チラリと、そんなことに安堵するなんてと思ったりもしたけれど、その違和感を気にする余裕なんて当然なかった。彼の望む言葉を探しながら、やっぱり必死に口を開く。
「え、っと……一人じゃ、気持ちよすぎて、強くグリグリ、続けられない、から。だから、あなたの手で、あなたの腿に、強く押し付けて揺すって欲しい、です。俺が、イケる、まで」
「お前が自分で、俺の腿に勃起ペニス擦り付けて精液漏らすところが見たかったんだけど、まぁ、二回目って考えたらかなり上出来な部類かな。じゃあ最後に、先走りでグチュグチュの下着の中にたっぷり精液吐き出せるくらい、うんと気持ちよくして、って言って?」
 つっかえながらも言われた通りに繰り返せば、相手は良いよと言って笑った。
「うんと気持ち良く、してあげる。気持ち良くなれたら、どうすればいいか、わかってるよな?」
「ちゃんと、気持ちぃ、って、言う」
「いい子だ。じゃあ、気持ちいいって喘ぎながら、グリグリ俺の腿に勃起ペニス擦られて、いっぱい射精しような」
 その言葉通り、何度も気持ちいいと繰り返しながら、ズボンの中の勃起ペニスを相手の腿に強く擦り付けるように揺すられる。ご褒美の残りなのか同時に耳も嬲られていたし、目の前はチカチカしっぱなしで、真っ白に爆ぜるのはあっという間だった。
 今回は吐き出したものを確認させたらとか、着替えを見せたらとかの給料上乗せ提案があったけれど、断れば残念だと言いながらもあっさり防音室を出て行く。給料を用意しておくから身支度が整ったらリビングへと言うのは前回と同じだ。
 帰宅後取り出した封筒の中身は、一万円札が二枚と千円札が三枚だった。

続きました→

 
 
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雷が怖いので プレイ4

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 いったい何を言わされるんだろう。ドキドキと胸が高鳴っているのは、興奮なのか不安なのか緊張なのかわからない。
 見上げる顔がまた近づいてくる。けれど彼の唇は、親指の押し当てられた唇にではなく、頬をかすめて耳たぶに落ちた。
「んぁっ」
 小さく声を漏らして肩を跳ねれば、クスリと笑われる気配がする。
「ここも弱かったよな。ここも弄り倒して、お前にキモチイイって言わせてやりたい」
 前回途中で終わっちゃったしと言われて、やっぱり必死で頷いてみせた。耳を舐め弄られるのが追加されたところで、どのみち感じさせられてドロドロになるのは一緒だ。
「そう、なら、もう一度。もっと気持ちよくしてって、おねだりしようか」
 唇に当てられていた親指が外されたのを合図に口を開いた。
「もっと、気持ち良く、して」
「感じる弱い所をいっぱいグチュグチュして、立ってられなくなるまでドロドロに苛めて欲しい?」
「気持ちぃ所、いっぱいグチュグチュして、立てなくなるまで、ドロドロに、感じさせて、欲しい……です」
 意地悪なのはやっぱり嫌で、苛めてという単語は口に出さなかった。咎められるかと思ったけれど、ふふっと笑われただけで、求められた通りに繰り返さなかったことを指摘されることすらなかった。
「だって自分から腰を下ろして、俺の腿の上でイヤラシク腰を振って、一人で気持ち良くはなれないんだもんな?」
「えっ?」
「立てなくなるまで感じさせられたいってのは、つまり、そういうことだろ?」
 何を言わんとしてるのかすぐにはわからなかったけれど、続いた言葉でそういう事かと思う。
「一人じゃ出来ないから、俺に、手伝って欲しいんだよな?」
 依然として耳の横で囁かれているので顔は見れないが、きっとニヤニヤと笑っているんだろう。そんな声音をしている。
「なら、俺の腿に勃起ペニス擦り付けて気持ち良くイけるまで、手伝ってくださいってお願いしないとな」
 もしくは一人でイヤラシク腰が振れる体に躾けて下さい、でもいいけどと続いた言葉は、残念ながら頭のなかに残らず逆の耳に抜けていった。
 ああ、やっぱり、自分で腰を振ってイカないとダメなのだ。ムリだとか、出来ないだとか、そんな訴えを聞き入れてくれる気はないらしい。
 終了条件は二つあって、もう一つは彼に腰を揺すられイク事だったハズなのに。
「大丈夫。ちゃんと手伝ってやるから、勃起ペニスここに擦り付けて、気持ち良くなりな」
「んぁあっっ」
 持ち上げられた腿が、股間に押しつけられた上に揺すられる。しかし堪らず声を上げれば、それはあっさり下ろされてしまった。
「ぁ、っ……」
「ほら、今のじゃ全然足りない、だろ?」
 一瞬だけだったけれど、今日初めての刺激に、脳みそごと痺れるような感じが残ってもどかしい。全然、足りない。もっともっと、気持ち良く、なりたい。
「ああ、腰が揺れ始めたね。どうする? 手伝い要らない?」
 それなら早く腰を下ろしなさいの言葉に、体が勝手に従ってしまう。膝を曲げて腰を落とし、足の間に差し込まれている相手の腿に、ゆっくりと股間を擦り付ける。
「ぁあああっっ」
 声をあげて仰け反れば、おっと、などと言う声と共に後頭部を支えられ、次にはそのまま相手の胸へと顔を押しつけられた。思わずこちらも腕を上げ、とうとう相手の背を抱いた。というよりも背中側の服を握って縋った。
 服越しだけれど、頬に相手の熱を感じる。自分と違って穏やかに脈打つ心音が聞こえる。繰り返す荒い呼吸の中に、ふわりと相手の香りが混ざる。それを吸い込み飲み込んでしまう。
 それら全てに思考が霞み体が震えた。
「ぁ、ぁあ、ぁっ、」
 とうとう自ら勃起ペニスを相手の腿に擦り付けてしまったという、精神的な興奮と物理的な快感とで喘ぐ。恥ずかしくてたまらないはずなのに、刺激を求めて腰を揺らし続けてしまう。出来ないと思っていたのに、一度自ら擦り付けただけでもう止まれなかった。
「んゃっ、ゃ、だめっ」
「なにが嫌でなにがダメ? ちゃんと上手に気持ち良くなれてるのに」
 いやらしく腰を振り続けて可愛いよと笑われて、下着の中もきっと先走りでグジュグジュだねと指摘されて、もっと強くこすりつけてご覧と促される。人の体に性器こすりつけて精液漏らすはしたない姿を見せてと、甘やかな声にねだられる。その声に、逆らえない。
「んぁあああ」
「うん、上手。そのまま続けて、もっと、気持ちよくなって」
 言いながら、頭を抱えこんでいた手が外され、そっと胸元から頭を引き剥がすための力が掛けられる。まだ離れたくないと、とっさに背に回した腕に力を込めた。
「頑張るいい子に、ご褒美あげたいから顔上げて?」
 そんなことを言われたら、顔を上げないわけにいかない。自分から腰を振って感じている顔なんて、出来れば見せたくなかったのに。
「いいね。凄く可愛い。気持ちよすぎって顔してる」
 今にも泣いちゃいそうだねと目元に浮かぶ雫を指先で払ってくれる相手は、蕩けるみたいに優しい顔で笑っていた。しかし呆けたように見惚れていられたのは一瞬で、すぐに口を塞がれ、するりと入り込んできた舌に口内を荒々しくねぶられる。弱い場所を狙って、執拗に弄られ擦られ舐められる。
 このキスを知っている。次々と襲い来る快楽の波に、体の力が抜けていく。
「んっ、ぁっ、……ふぁ……ぁ……」
 鼻にかかった甘えるみたいな吐息が、次々とこぼれ落ちていく。

続きました→

 
 
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雷が怖いので プレイ3

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 時給分の上乗せ狙いなら何時間でもキスしてやるけど、本気であれの続きが良いのと問う声は、やはり随分と楽しげだ。
「だっ、て……」
 じゃあどう言えば、何を言えば、良かったんだろう。前回されたことを繰り返してと、された内容を自ら詳細に告げてねだる真似は出来なかったのだから、むしろ詳細に思い出そうとした結果、繰り返されるのが怖くなってしまったのだから、自分が選べるのは緩やかに蕩けていくキスを受け入れることじゃないのか。
「俺が誘導したせいで、少し余計なこと考えさせたな。お前が最初に言った、前回みたいにして、って思った『キス』をねだれって言ってんだよ。あのままジリジリとしか気持ち良くなれない優しいキスを、ずっと続けられるのは嫌だって、そう思ったんじゃないの?」
 あの調子のキスをずっと続けられることに恐怖したのは確かだけど、それは少し違うかもしれない。でも、手っ取り早く相手の手で腰を揺すられ達してしまえば終われると思った、なんてことを言っていいかどうか迷ってしまう。
 しかも、詳細を思い出してと言われるまで、泣くほど恐怖した事実を忘れていたのだ。忘れていたというか、考えないようにしていたというか、それ以上に気持ちよかった記憶とか、思いがけず優しくされた記憶の方が、鮮烈に残ってしまっていたというか。
「どうした?」
 告げるかどうかを迷って迷って、でも結局、自覚のある事実を隠すことは出来なかった。だって相手の顔を見つめていたら、下手なごまかしなんてあっさり見破るだろうなって気がしてしまった。
「あの、キスをねだりたかったわけじゃ、なかったから……」
「ん?」
「この前みたいに、キスされながら腰揺すられてイカせて貰ったとしても、今日のバイトは終わりだよねって思って。でも、なるべく詳細にって言われて、この前はこれ以上気持ちよくしないでって泣きながら、むりやりイカされたんだって思い出して、あれをもう一回してって思えなくて」
 ふはっと漏れた息の後、こらえきれないとでも言うようにゲラゲラと笑いだしてしまう。
「あー、お前、ほんっと面白ぇわ」
 どうしていいかわからず戸惑う中、おかしくてたまらないままの顔が近づいた。
「ほんと、可愛いな」
 囁きは優しくて、触れるキスも優しかった。結局さっきのキスの続きになるのかと思いながらゆるく口を開いて待てば、やはり滑り込んできた舌がそっと舌上を舐めていく。
「さっきみたいに、もっと気持ちよくなりたい、って言って?」
 優しいキスの合間、唇に息がかかるくらいの近さで囁かれて、でも、えっ、と漏らす間もなくまた唇が塞がれる。
「優しいキスで焦らさないで、もっと、グチュグチュにかき回して感じさせてって、お願いして」
 合間にまた囁かれた言葉を、唇を塞がれながら後追いでゆっくりと理解していく。
 ああこれ、やっぱり焦らされているんだ、と思った。焦らさないでもっと感じさせてって、言えばよかったのか。
 あんまり意地悪な感じがなかったのと心地よい優しさから、自分で気持ち良くなれるように動けと言う意思を受け取ってしまっていた。自分で腰を落として、相手の腿に勃ちあがったペニスを押し付けて、腰を振って擦り付けて、それで達する姿を晒せと、そう言われているのだと思ってしまった。
 だって、自分で腰を振ってイクのが終了条件の一つだったから。
 もしかしたら、今回課せられたものの難易度を、勝手に自分で上げていたのかもしれない。ただ、こんな風にキスを続けられたら、せっかく求めるべき言葉を教えてもらっても、それを口にだすことが出来ない。
 どうしようと思いながら、持ち上げた両手の平を相手の胸に置いた。でもその腕を突っ張って、相手の身を離そうと試みることはしなかった。というよりも必要がなかった。
 触れていた唇からそっと離れて、相手はそのまま頭を上げていく。見上げた相手の顔から、はっきりとわかる。彼はこちらが言う気になったのをわかっている。それをジッと待っている。
 コクリと喉が上下した。言うべき言葉は既に与えられているのに、それをただ口に出すだけなのに、思いの外緊張しているのかもしれない。
「もっと、気持ち良く、なりたい。焦らさないで、この前みたいに、もっとグチュグチュに、口の中かき回して、感じさせて、欲しい」
 言いながら、そんなキスを与えられることを想像せずにいられなくて、体の熱が上がる気がした。
「いい子だ」
 甘い声と柔らかな笑顔に酷く安堵する中、頬に添えられていた彼の右手の親指が、濡れた唇を拭っていく。微かに濡れた親指が、唇を割って入り込んでくる。
「ぁっ……」
 親指の腹に上顎を擦られて、ヒクリと体が震えた。それは紛れもない期待だ。優しいキスは、あまりそこを舐めてはくれなかったから。
「ここ、気持ちぃな」
 疑問符なんてつかない断定に、黙って頷いてみせる。
「お前が弱いここ、舌でも掻いて擦って、立ってられなくなるくらい苛めて欲しい?」
 しつこくグチュグチュ弄ってドロドロに感じさせてやりたい、なんて言葉を甘やかに吐き出しながら、それを想像させるように指の腹が上顎を掻いてくる。ゾクゾクと快感が走って、肌がブワッと粟立った。
「んぁぁっっ」
「言える?」
 必死で頷いてみせた。
 自分から弱い所をしつこく苛めてと口に出してねだるなんて、と思う気持ちがないわけではなかったけれど、でも言えなければきっと終われない。少なくとも、そんなキスを与えて貰えるまでに、もっともっと時間を掛けられてしまうだろう。素直に言ってしまえば良かったと、こちらが後悔するくらいに。
 それが自分の所有する知識からの誤解か、想像通り本当にそうされてしまうのかはわからない。たとえ言えなくても、仕方がないねと許されて、ドロドロに感じるようなキスをくれるかも知れない。自分にそのイメージが持てないと言うだけで、彼のことなんて、まだまだ知らない事ばかりなのだから。
 口の中から親指が引き抜かれたので、覚悟を決めて口を開いた。開こうと、した。
 開きかけた唇に、自分の唾液ですっかり濡れた親指が、まだだとでも言うように押し当てられる。つまり、キスをねだるための言葉は決められているらしい。

続きました→

 
 
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雷が怖いので プレイ2

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 口を開くと同時に、どうやら期待から舌を突き出していたらしい。甘やかに優しい顔を引っ込めて、楽しげにニヤついた相手の顔が眼前に迫り、わざとらしく舌を出して見せつけた後、ゆっくりとこちらの舌の上を舐めあげていくから、ようやく何を笑われたか気付いて羞恥が込み上げる。
 しかし慌てて舌を引っ込めようとすれば、簡単に絡め取られて逆に引き出され、パクリと食まれてしまう。柔らかに歯を立てられ、舌や唇で挟まれて擦るように舌の裏表をゆるりと撫でられ、痺れるみたいな快感が腰を中心に溜まっていく。
 閉じられない口の端から、んっ、んっ、と甘えるような息を漏らしながら、与えられるままうっとりとその刺激を享受した。
 気持ちが良い。胸の内からとろりと溶かされるみたいに心地いい。それは、こんなキスもあるのだと頭の隅で軽く衝撃を受けるくらいに、前回とは全く様相の違うキスだった。
 口の中を舐められたら、また膝が抜けるくらいグズグズに感じてしまうのだろうと思っていたのに。確かにただ触れるだけ、軽く吸われるだけ、ペロと悪戯に唇の表面を舐められるだけのキスに比べれば、断然気持ちが良い。意地悪く焦らされている、という気配でもない。ただただ優しく慰撫されるような快感で、じわじわと体の熱を上げられている。
 前回のように快楽の渦に翻弄されることはなく、腰は重くとっくに勃ち上がってしまった性器は刺激を欲しがって疼いていたけれど、でも自力で立っていられないほど腰砕けではなかった。
 既に両足の間には、前回同様相手の腿が差し込まれているけれど、それに支えられることなく立っていられる。前回は助けを求めるように必死に相手へ縋り付いていた手だって、今日はだらりと両脇に垂らしたままだ。
 でもだからこそ、気付いてしまう。前回の復習なんて言っていたけれど全然違う。前回は泣かされてしまったけれど、そのお詫びで優しくされているわけでもない。
 思考まで奪い取られて、何もかもがぼんやりと霞むほどの快楽に流されて、なすがままを受け入れることを許さず、自分の意志で、自分自身を射精に導けと促されている。
 どうしようどうしようどうしよう。
 選択肢なんかなかったけれど、でも、それでいいと安易に答えたことを後悔していた。お前は本当に迂闊だと、きっとまた言われてしまうんだろう。
「そろそろ気付いたか?」
 こちらの動揺が伝わってしまったようで、顔を離した相手がおかしそうに聞いてくる。
「む、り……でき、ない」
「そりゃちょっと気が早い。お前がなりふり構わずイキたくてたまらなくなるまで、今日はじっくりキスしてやるから」
 フルリと体が震えてしまったのは、半分くらいは恐怖なんじゃないかと思う。この人はきっと本気で、何時間だってこちらをジリジリトロトロとろかせていくようなキスを、キスだけを、続けていられるのだ。
「ぜ、前回みたいに、して、って言ったら……?」
 提示された終了条件は、自分で腰を振ってイクか、相手に腰を揺すられてイクかの二択だった。さっきも自分から口の中を舐めてとねだって褒められたし、焦らすことなく深い口付けに変えてくれたのだから、自分からはっきり口に出してねだれば、叶えてくれる気はあるんだろう。
 ただ、前回の復習と言いつつまったく別の要素を課してきている今回、前回と同じがいいなんて言っても無駄かもしれないと思う気持ちも強かった。
「もっと赤裸々に、上手におねだりできたら考えてもいいけど?」
「せきらら、に、上手に、おねだり……」
 言われた言葉を確かめるように自分自身でも繰り返してしまったが、なんとなく相手の言いたいことがわかってしまう程度に、自分自身のエロ方面知識が豊富で嫌になる。たとえわかっても、それを口に出して言えるかは別問題だ。
「まったく想像できません、って顔でもねぇな」
 そんなガキみたいな顔してんのに普段どうやってオカズ入手してんのと聞かれて、素直にネットでと答えたら便利な世の中に生まれてよかったなと笑われてしまった。
「じゃ、前回俺にどんな風にされたか思い出しながら、なるべく詳細に、俺が満足するくらいいやらしく、して欲しいことねだってみ?」
「そういうおねだりって、最初は普通、そっちが提示したエッチな言葉、繰り返させるとこからじゃないんですか?」
「何を求められてるか欠片もわからないならそうするかもな。でもお前は思い当たった顔したからダメ。もちろん、俺好みに修正は入れてくけど、取り敢えずはお前の言葉を聞いてみたいって思っちまったしな」
 キスは再開されることなく、ニヤニヤ顔で見下されたまま、こちらが口を開くのを待たれている。前回何をされたかを思い出して羞恥に身を焦がしつつ、更にどんなイヤラシイおねだりをすれば相手が納得するのか悩むこちらを見て、楽しんでいる。
 けれど結局、詳細なおねだりなんて出来っこなかった。考えれば考えるほどに、何も口に出せなくなる。自分から、泣くほど恐怖した強烈な快楽をもう一度叩き込んでなんて、言えっこない。
 言えないと首を振って、ごめんなさいと謝った。相手は残念だと笑ったけれど、そこまで本気で残念がっている様子はなく、じゃあどうして欲しいのと問うてくる。
「さっきの、キスの、続きをして、下さい」
 震えかけた声を絞り出せば、相手は少し驚いた様子で目を瞠った後、わかってるようでわかってないなとおかしそうに笑った。

続きました→

 
 
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雷が怖いので プレイ1

本編11話へ→   目次へ→

 初日と同じ時間にバイト先を訪れれば、やはり玄関先でいくら稼いで帰りたいかと尋ねられて、少し考えてから前回と同じく一万くらいと返した。
 前回三万もの給料を渡されているが、慣れてきたら報酬は下げていくと言っていたし、前回終わりには少しずつ今日以上のことを要求するとも言われている。ということは、自分から三万なんて言ったら、少しずつ様子見で要求を上げていくのではなく、前回以上のことを当たり前に要求してくるだろうことは想像がつく。
 あの程度で三万も貰えるならぜひ今回も、とはとても思えなかったし、既に三万貰っているのだからそこまでガッツイていく必要だってない。
「じゃあ、前回の復習でもしてもらうか」
「復習?」
「そ、俺にキスされて気持ち良く勃起して、自分で腰振ってイクか、俺に腰揺すられてイクかしたら一万円」
 それに単純な時給と、あとはお前の反応や受容次第で上乗せすると言われて、最後にどうするかと問われた。どうするなんて聞かれたって、この提案には自分で何かを選べるような要素がない。
「それで、いいです。というか、どうするって言われても、俺が選べるのイエスしかなくないですか」
「まぁそうだな」
「否定しないんだ」
「だってお前がNG出すようなこと言ってないだろ。ただ、お前が口に出して、それでいいって言うことは重要だからな」
 おいでと促されて防音室へ向かった。そしてまた同じ場所へと立たされる。
「服を脱ぐ気は?」
 いくら出すとは続かなかったけれど、いくらですかとも聞かなかった。だって脱ぐ気はないからだ。
「それは、ちょっと……」
「さっき言ったように今日はお前がイクまで終わらないけど、また下着の中に吐き出すの?」
「さすがに換えの下着は持ってきてます。というか、あなたの服に向かって撒き散らすほうが被害甚大って感じなんですけど」
「そこはほら、俺の服をこんなに汚して悪い子だねって方向のプレイもしたいだろ?」
「いやいやいや」
 ニヤッと笑った顔が近づいてきて、そんなプレイしたくないですの言葉は言わせてもらえなかった。
 軽い触れ合いを繰り返すのではなく、最初から、しっとりと覆われて唇をゆるく吸われる。それだけでゾワゾワとした何かが背中を這い上がっていく。
 だってもう知っている。体中の力が抜けていくような、気持ちのいいキスを。口の中を器用にクルクル舐めまわる舌が、上顎を擽るように触れた時の快感を。誘い出された舌を、強く吸われた時の痺れを。
「な、んで……」
 繰り返されるキスの合間、こぼれ落ちたのは不満。相手は当然わかっていて、クスリと小さく笑ったようだった。
「なんで、って、前回はちょっと急ぎ足だったから、今日はじっくり目に行こうと思って?」
 そういって触れた唇は、やっぱりまた深くなる前に離れてしまう。しかも、期待に薄く開いてしまっているこちらの唇を、舌先で意地悪くペロリと舐めてから。
「気持ちいいだろ。ただ触れるだけのキスでもさ。だってお前、すっごいうっとりした顔してる」
 可愛いねと言いながら、左右の目元にキスが落ちる。それだけでも小さなゾワゾワが肌を這う気配がした。
「唇が触れるだけで、軽く吸われるだけで、チロと舐められるだけで。うっとりするほど気持ち良くなっちゃって、でももっと気持ちよくなりたくて期待して、唇離すたびにちょっとガッカリしてるのが丸わかりなの、たまらないよ」
「いじわる、だ」
「そんなのもう知ってるだろ」
 クスクスと笑われて、相手の機嫌はすこぶるいいらしいというのがよく分かる。
「ど、すれば、いい、の」
「どうすればって、何が?」
「もっと、気持ちよくなりたい。焦らさないで、この前みたいに、口の中も舐めて、欲しい」
「ちゃんと自分から言えたな」
 いい子だと続いた声は、ひどく甘やかに響いた。クスクスと楽しげだった笑いは、柔らかな笑みに変わっている。
 胸の奥がざわざわする。なのに頭はぼんやりとして、ただただその顔に見惚れてしまう。
「自分から言えたご褒美に、お望みどおり、いっぱい口の中を舐めてあげような」
 甘やかな響きを持ったままの声に口を開けてと促されて、何も考えられないまま、その言葉に従い口を開いた。

続きました→

 
 
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雷が怖いので END直後4(終)

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 お尻の中をグチュグチュにかき回され、頭の中が何度も白く爆ぜる。疲れ切っているはずなのに、ヒンヒン喘ぎ泣き散らす自分の、限りなく悲鳴に近い声が部屋に響いていた。
 こちらが何度上り詰めても容赦なく突かれ続けて、既に気持ちよいのか苦しいのかも曖昧になって涙が溢れているのに、心だけは変わらず喜びと幸せで満たされている。肌を撫でていく指先から、なんとか瞼を持ち上げた時に映る顔から、好きだ可愛い愛しいと繰り返してくれる甘い声から、彼の想いを感じることが出来るからだ。間違いなく彼に、強く求められているのだと思い知る。
 何度か飛ばした意識は、すぐにより強い刺激で半ばむりやり呼び戻された。そんな真似をされるのは初めてだったけれど、この時間を記憶に残さないのは許さないと言われているみたいで、それすら嬉しさで心が満たされる。
 さすがに彼の五度目の射精を受け止めながら飛ばした意識は、むりやりに引き戻されることはなく、次に意識が戻ったのは朝というよりは昼に近い時間だった。正確には、部屋に一人放置して出かけるわけに行かないからと、彼によって起こされた。
「取り敢えず上体だけでも起こせるか?」
 まだぼんやりとしながらも頷いて、ひたすらダルい体になんとか力を込めて起き上がろうとしたら、アチコチ軋んで思い切り眉を寄せて呻く。
「痛っっ……」
「やり過ぎた自覚はある。悪かったな。でも半分はお前の自業自得だぞ?」
 苦笑とともに身を屈めた相手に助けられて、痛みを堪えながらもなんとかベッドの上に座る形で身を起こした。
「わかってます、よ。後悔はない、です」
 吐き出す声は、あれだけ泣き散らせば当然かも知れないけれど、掠れてガラガラだ。喉に引っかかって少し咳き込んだら、宥めるように背を擦ってくれた。
「後悔がないならいい。それより大丈夫か?」
「はい」
「じゃあ取り敢えず幾つか薬飲んで」
 水の入ったペットボトルと共に渡されたのは、痛み止めと整腸剤らしい。受け取ったそれを躊躇いなく飲み下して、ついでに乾ききった喉を潤す。ほぼ一息に半分以上を飲み干して、一旦蓋を締めて脇においた。
 一息つくのを待っていたようで、それを見ていた彼がまた口を開く。
「後始末はそれなりにしておいたが、中出しだったのに最後意識飛ばしたまま眠らせたのと、かなり奥深くに注いじまったから、多分この後腹壊すと思う。酷いようならすぐ医者に連れてくから、黙ってないで言えよ。それ以外も、何か少しでも体調おかしいと思ったらまず俺に言え」
 何度も中出しして長時間繋がったままのセックスは、さすがにリスクが高いようだ。わかったかと念を押す顔が真剣だったので、こちらも神妙に頷いてみせた。
「後、お前の携帯さっきから何度も鳴ってる。多分学校関係だろ。早めに折り返してやりな」
 そう言って差し出されたのは、ズボンのポケットに突っ込んでいた携帯で、服はやはり畳まれて近くのスツールの上に乗っている。
「ありがとうございます」
 受け取ってちらりと確認すれば、確かにゼミ仲間から幾つかメッセージが届いていて、電話も何度か掛かっているようだった。
「それと最後に、俺はもう少ししたら出掛けなきゃならないから、これをお前に渡しておく」
 そう言って差し出されたのは、何も付いていないシンプルな剥き出しの鍵が一つ。
「これ……って」
「うちの合鍵」
 そうだろうとは思ったけれど、実際にそれを肯定されると途端に動揺する。ありがとうございますと、簡単に受け取ってしまって良いものなのかわからない。
「えっ、……でも……」
「お前は俺のものになったし、俺も、もうお前のものだろう?」
「そ、れは……そう、なんです、けど……」
「まぁ今はまだ、そんな重く考えなくていい。体調も悪そうだし、今日はこれを使わず俺が帰ってくるのを待っててもいいが、俺の帰りをお前の意思で待つのと、俺が帰るまでこの家から出ることが出来ないってのは違うだろ?」
 だから持っててと言われれば、受け取るしかない。ついでに言えば、今日は彼の帰りをこの家で待つのもほぼ決定だ。どうせこの体調では大学に行けそうにないし、だったら自分の意志で、彼の帰りをこの家で待っていたい。
 その後、ベッドを降りれそうにないなら簡単に食べれるものを運んでおくという提案を断り、アチコチ痛む体を誤魔化しながらベッドを降りた。手伝ってもらってなんとか服を着て、一緒にリビングのドア前までたどり着いた辺りで、いよいよ彼が家を出る時間が迫っているようだ。
 そのまま玄関へ直行し靴を履いた後も、くれぐれも無理はするなだとか、家の中のものは好きにしていいだとか、まだ何か言い忘れはないかと探す彼の袖を引いて、せっかくだからいってらっしゃいのキスがしたいと言ってみた。そんなこちらの仕草と言葉に一瞬固まり、目を少しばかり瞠られたけれど、驚かれるのはまぁ想定内。
「だめ?」
「なわけないだろ」
 それでも声が少し上ずっている。彼にとっては知識としてのみ存在する行為だろうことは想像がついた。それなのに咄嗟に応じてくれる優しさが、やはり嬉しくてたまらない。
「じゃ、少し屈んで?」
 頼んだ通りに身を屈めてくれた相手の唇にチョンと唇を触れさせて、まだどこか少し浮ついた幸せの中、いってらっしゃいと笑ってやった。胸に湧き続けているこの幸せは、彼にも伝わっているだろうか。彼にはニヤリと笑い返されたけれど、戸惑いや照れくささをそうやって誤魔化したようにも見えた。
「随分可愛いキスだな」
「だってこれから出掛けちゃうのに、エッチな気分になったら困るし」
「そりゃそうだ。じゃあ、仕方ないな」
 その言葉とともに、彼からも軽く触れるだけの優しいキスを貰う。そうしてから、行ってきますと柔らかな声音を残して出ていく背中を見送った。

<終>

今回で終わりにしたくて大遅刻。最後の最後ですみません。
END直後の、相手の気持ちに任せて抱かれた視点の主が見たいというリクエスト、どうもありがとうございました〜

本編は長くなったしもういいやでエンド付けてしまったので、今回、あの後のエッチと、更には合鍵渡す所まで書けて良かったです(^^♪

 
 
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