雷が怖いので33

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 誕生日の時に連れて行ってもらったホテルの部屋とはまた別の、けれど明らかに高そうなちょっと特別っぽい広々とした部屋の中、二つ並んだ大きなベッドの片方で、トロトロに甘やかされながら抱かれている。
 彼の体を喜ばせるための術も少しずつ仕込まれているけれど、それを披露するような隙はなく、もちろん相手から奉仕するよう求められることもない。ただただ一方的に緩やかに甘やかに、後半は少しばかり激しく、心も体もキモチイイで満たされて溢れ出るまでじっくりと抱かれる。途中で意識を飛ばすまでされることは少ないけれど、でも終わったと認識した直後に寝落ちしてしまうくらいには、毎回疲れ果てる。抱き潰されてしまう。
 泊まりで出かける時はよほど遠出をしない限りいつもそう。しかも月に一度と、頻度が高い。
 多分これはあの日、誕生日に着てくれた服をもう一度着て欲しいと言ったせいだった。
 バイトとしてお金を貰って彼と過ごすのは月に二回。第一と第二土曜日の、お昼過ぎくらいから数時間。
 仕事として抱かれるのが嫌と言ってしまったからか、結局、バイトの日に彼のペニスで貫かれることはないままで、プレイ内容は彼への奉仕的なものが結構増えた。主に口の使い方。最初は右手の人差し指だけ一時間も舐めたりしゃぶったりから始まって、指の数が増えて、だんだん舐めてもいい範囲が広がって、それからやっと、彼の大きなペニスを口に含んでフェラチオすることも許されるようになった。
 びっくりするのは、奉仕してるはずが、自分も結構気持ちがいいことだ。好きな人の性器を口で愛撫している、という興奮。彼の大きなペニスでお尻をずぽずぽ擦られる気持ちよさを叩き込まれた後だから、これがお尻に入ることを想像して興奮するというのもきっとある。でも、物理的に、口の中を擦られるのがキモチイイというのが一番大きかった。
 キスで口の中をぐちゅぐちゅに舐められて感じるのだから、当然といえば当然なのかもしれないけれど、舌や指と違って器用に性感帯を刺激してくることがないペニスでと思うと、最初はかなり戸惑った。でも、口の中も十分気持ち良くなれるようになったねの言葉に、口の中の感じる場所を彼によって広げられたらしいと納得した。
 彼の傷痕は、ペニスにもあった。ピアスを通していた時の穴の痕だ。ピアスが前立腺を刺激する快感を教えてやれないのは残念かななんて笑って言っていた。笑っていたから、これ以上気持ち良くされたら困ると苦笑を返しておいたけれど、内心泣きたいくらいに苦しかった。
 イレズミといいピアスといい、消したり外したりされているということは、彼にとってそれらは要らないものなのだ。
 性器にピアスだなんて、その痛みを想像するまでもなくゾッとする。好き好んで自ら開けていたのなら、今もそこにはピアスが残っているはずだし、そうでないことを考えたら、嫌々不本意に、彼はその痛みを受け入れたのだと思ってしまう。考えてしまう。
 傷痕に痛みはないよという言葉がどこまで本当かはわからない。それでも彼のペニスへ触れる時は、それらの傷を労るように必死で愛おしんでしまう。
 ついでに言えば、彼のペニスがかなり大きいのも、そうなるように肉体改造を施されたから、らしい。更に言うなら、彼は射精のコントロールも出来るようだ。なぜならそういう訓練を受けたから。
 ぽろりぽろりと零される彼の過去に、しかめたくなる顔を取り繕うのは大変だ。わかりやすいと言われるし、実際、お前が辛く思う必要はないと言われることもある。それでも時折ふと思い出したように教えてくれるのは、多分間違いなく、自分が聞きたがるからだった。
 彼の事をもっと知りたい。だから今の彼を形作る過去も知りたい。
 第三土曜日は、彼の家の寝室で、バイトとそう変わりない時間を過ごす。お金は貰わないけれど、バイトの延長のようなプレイっぽいこともする。バイト時間中に彼のペニスを受け入れることがないというのも大きいかもしれない。彼の上にまたがって自分で彼のものを受け入れたり、自分でお尻を動かして気持ち良くなったり、彼が気持ちよくなるように頑張ったり、そういう抱かれることを含んだプレイは、この日にされる。
 そして第四土曜日が、だいたいお泊り付きのお出かけをする。一緒に映画に行きたいとか、水族館に行きたいとか、店を指定して食べに行きたいと言えば、当然それも含めて叶えてくれるし、まるでデートを楽しむ恋人みたいだと思う。
 問題は、こちらに一切お金を出させないことと、お泊りする場所が毎回やたらと高そうなことだ。行きたい場所ややりたい事を提案しないと、うっかり新幹線やら飛行機やらに乗せられて、簡易な一泊旅行に連れ出されてしまう事も多い。次回は朝からおいでと言われる週末はだいたい旅行だった。
 二人で十万どころか一人十万でも収まらないだろう事も多いから、結局、毎週きちんとバイトをするよりもお金をかけて貰っている気配が濃厚だし、あんまり贅沢な時間に慣れたくもない。でもそう言っても聞いては貰えず、学生のうちから色んな経験をしておけばいいと、やっぱり月末は連れ出されてしまう。
 強く拒否できないのは、お泊り先でしてくれるエッチが、ひたすらに幸せなせいも大きかった。
 毎回ちゃんと全て脱いでくれるし、腕を伸ばせばギュッと抱きしめ返してくれるし、朝だって先に起きてベッドから抜け出ていることもない。何回かに一回は、相手の方が起きるのが遅いときもある。すぐに気づいて起きてしまうから、無防備な寝姿を晒してくれているとは言えないが、それでも、彼が自分の隣で眠ってくれている事実が嬉しいと思う。他者の気配がある中で眠るのは苦手だと知ってからは尚更だった。
 なお、五回目の週末がある月の最後の土曜日は、完全フリーで会うことはしない。
 あの日をさかいに、そういった生活がもう結構長いこと続いていた。
 初めてこの家に上がったのは大学二年生の夏の終わりで、そろそろ大学四年の夏の終わりが見えている。大学院へ進む予定などはなく、就職先も無事にいくつか内定が出ているが、大学を卒業したらどうするか、この関係はどうなるのか、などという話を彼としたことは未だなかった。

続きました→

 
 
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