今更嫌いになれないこと知ってるくせに14

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 あの朝の行為は衝動的にという可能性が高そうだし、ムリヤリに聞き出すような事でもない。なので追求するような真似はせず、軽く握ったままの手を外して、下側奥へとソロリ指先を這わせていく。
「舐めなくていいなら、じゃあこっち、解しはじめていい?」
 追求がなかったことにホッとした様子で頷く甥っ子を促し、まずはベッドの上に上がってもらった。その時、腰に巻かれたままだったバスタオルを解いてベッド下へと放ってしまったから、丸裸にされた甥っ子は心許なさそうな表情で、少しばかり身を縮こまらせている。
「自分でする時どうやって弄ってる? ってか、まずはちょっと自分でやってもらおうか」
 甥っ子が持参した未開封のローションボトルを開封しながら、ふと思いついて口にしてみたら、相手は大層慌てたようだ。
「はぁあ?」
「どうすると気持ちいいのか、やって見せて?」
「ええっ!?」
 驚きと躊躇いと困惑。恥ずかしいかと聞いたら、当たり前だろと焦り混じりの怒声が返ってきた。
「俺が興奮するよ。って言っても無理?」
 無理強いする気はないから横になってと言ったら、サッと伸びてきた手がローションボトルを奪っていく。
「俺いま、優しくされてんのか意地悪されてんのか、わかんないんだけど」
 ほんのり目に涙を溜めながら睨んでくる顔が、彼が幼いころを思い出させて可愛らしいと思う。
「めちゃくちゃ優しくしてるつもりだけど?」
「ホントに?」
「恥ずかしいこと言ったりしたり、させたり言わせたりするの、意地悪でだと思ってんの?」
 セックスって基本そういうのの連続だぞと言ったら、そんなのマンガや動画の世界の話と思ってたと返ってきて苦笑する。
「じゃあやり方変える? 明かりも落として、余計なこと言い合わないで、粛々と解して繋がって腰振ってイッたら終わり」
 そうして欲しいならそうしようと提案したら、むっとした顔で違うと返された。
「これがヤダって言ったわけじゃないだろ」
「でも、どうされたいとかって希望、言ってもいいんだぞ? 嫌なことはしなくていいし、して欲しい事があればしてって言えよ。あるだろ色々。日々のオカズ的なモノがさ」
 突拍子もない物じゃなければ出来るだけ叶えてやるからと言ったら、困った様子で眉尻を下げる。
「意地悪じゃないならいい。にーちゃんの抱き方でいいから」
 にーちゃんのやり方を俺に教えて、なんてセリフを照れくさそうに告げてくるから、こちらもなんだか困ってしまう。
 可愛くてたまらない。
 確かに好かれている。自分への好意が伝わってくる。
 だから同時に、相手の気持ちを思うと申し訳ないとも思ってしまう。こんなに求められているのに、同じ想いを返してはやれないのだ。
 目の前に横臥し、ローションを垂らした指を股間に導いて自ら解す行為を始めた男のことは、純粋に可愛いし愛しいとも思う。
 まったく知らない他人なら、単純に好みの男として可愛がるか可愛がって貰うかして、ただただ楽しんでいただろう。好きだと言われればきっと躊躇いなく好きだと返したし、お互いフリーなら恋人として付き合ったっていい。
 けれど目の前に居る男は義兄の息子で甥っ子で、そもそもは、どれほど節操がなくても踏み越えなかったラインの向こう側に居る相手だ。しかも、義兄はオカズにしていたが、甥っ子はそれすらしたことがない。
 それが突然触れられるほどの距離に現れたって、どうしても気持ちにブレーキが掛かる。まっすぐに好意が伝わってきたって、受け取ることを躊躇ってしまう。
 拗ねたり怒ったり驚いたりする一瞬に、自分が昔大切に愛した甥っ子の面影は確かにある。けれど同時に存在する、昔さんざん頭のなかで妄想を繰り返した義兄とも、やはり被ってしまう一瞬がある。
 男女とも付き合い、相手次第でタチネコどちらもこなしてしまう、そんな自分の節操の無さは自覚していたが、せめて義兄相手の妄想を、抱く側か抱かれる側で統一していれば、なんて今更思っても仕方がない。甥っ子自身がそう望んでいそうだから、という理由だけでなく、抱かれる側で余裕を無くしたら、本当に義兄の名を呼んでしまいそうだという不安もなくはなかった。
 自分の中の気持ちがぐちゃぐちゃだ。求められるままに目の前で、頬を上気させながら自らの身体を慣らす行為を見せてくれるこの可愛らしい男のことを、甥だとか初恋とも言える相手の息子だとかいった心の中のブレーキを外した状態でなら、どう思うのか想像がつかない。そんなことを真剣に考えるのは怖いとすら思う。
「んっ……」
 ごちゃごちゃと考えながら見つめていた先、気持ちよさを耐えるように甘い息を吐き出していた甥っ子から、苦しげな吐息がこぼれ落ちた。

続きました→

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに13

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 ベッドの上に隣り合って座ったまま、かなり長いことキスを続けた。
 そうしながら、既に素肌の肩や腕、背中や胸をゆっくりと撫でさする。手のひらの下で時折小さくピクンと跳ねる肌と、その瞬間にフッと漏れ出る呼気とで、相手の性感帯を探しだす。
 だんだんと手のひらを下げていき、バスタオルで巻かれた縁を指先でなぞれば、脇腹がヒクヒクと波打つのがわかった。そのままバスタオルは解かずに、バスタオル越しにゆるりと腰を撫で、太ももを辿ってむき出しになった膝頭を柔らかに包んだ。
 マッサージをするように両膝を交互に揉んでから、今度は内腿に沿ってバスタオルの中へと手を滑らせれば、大きく腰が揺れて徐々に膝が開いていく。しかし熱を持つ中心へは触れず、ぎりぎり足の付け根辺りを指先でくすぐりながら時折強く揉みさする。
「ぁ、ふぁっ、ぁっ」
 合わせる唇の隙間から、ひっきりなしに熱い吐息がこぼれ落ち、焦れったそうに何度も腰が揺れた。
「触って欲しい?」
 一旦キスを終えて、耳元へ口を寄せて問えば、必死で頷く振動と「触って」とかすかな声が聞こえてくる。そのまま耳朶を柔らかに食みながら、少しばかり指を更に奥へと進ませて、既に張り詰め硬くなった熱へと触れた。
「あっ、あぁっ…、んグぅッ」
 口を塞がれていないせいで、先程よりも大きくこぼれた声に驚いたのか、ヒュッと息を呑むような音の後、潰れてくぐもった声になる。
「声、出して。抑えなくていいから」
 熱にゆるりと絡めた指をゆっくり上下させながら、耳元から口を離さず囁いた。
「だ…、って……」
「大丈夫。可愛い声だよ」
「なっ、……に言っ、ああ、あっ、やぁっ」
 少し強めに握ってだんだんと刺激を強くしていけば、会話のために開かれていた口から、つぎつぎと甘い声が溢れ出してくる。
「ほら。可愛い」
「うそ、あ、」
「嘘じゃないし、お前にはまだまだもっと可愛くなってもらう。俺に抱かれる、ってのはそういう事だぞ?」
 熱を握るのとは逆の手は、相手を支えるように背後から腕を回して肩を掴んでいたけれど、その手をするりと滑らせ反対側の耳を摘んだ。んっ、と漏れる吐息を聞きながら、耳朶を優しく掻いてやり、それから小指をそっと穴の中に忍ばせる。同時に、目の前の耳穴には舌を突っ込んでやった。
「んああっ」
 肩を竦めて逃げようとするが、反対側の耳を弄る手の小指以外に力を込めて、頭を動かすことを許さない。そのまま両耳をねぶりつつ、熱への刺激を更に強めていく。トロリこぼれる先走りを掬い取って、クリクリと先端に塗り広げながら、竿を包む手のひらは上下に動かした。
「んんっ、だめ、だめって」
「イッていいよ?」
 少しだけ頭を引いて、けれど舌先は耳殻に触れさせたまま、声を耳に吹き込んだ。
「やぁ、あん、にーちゃっああ」
 蜜を吐き出す小さな口を、少し強めに指の腹でこすってやれば、体を強張らせながらあっけなく熱を放った。
「ハァ…ぁっ、ハァんぁっ、やっ」
 弛緩した体を支えてやりながら、吐き出してなお硬度を保つ雄をゆるゆると扱いて刺激すれば、荒い息をつきつつも小さく抵抗を示す。
「ココ、舐められたい?」
 必要ないと言いたげに首を振る。刺激を止めて欲しいのか、バスタオルの上から押さえつけるように手を握られたが、脱力しきっているのかその力は弱かった。それでもその手に従い動きを止めた。
「この前、イッた直後に俺の舐めたのお前だよ?」
「違っ、あれはっ!」
 自分がそうされたいからじゃないかと問えば、慌てたように否定の声を上げる。しかし待ってもその続きが語られることはなかった。

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに12

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 予想通り甥っ子はさっくりシャワーを終えて、腰にタオルを巻いただけの状態で急ぎ戻ってくる。その時自分は、ちょうどベッドの上にバスタオルを広げていた所だった。
 雰囲気やら勢いやらも大事だと思うので、その流れで始めてしまうなら仕方がないが、余裕があるなら出来る準備はしたい派だ。シーツをまるっと取り替えるより、バスタオルを洗濯するほうが楽なのは当然だった。
 それを見た甥っ子は随分とホッとした様子を見せる。
「気持ち変わったりしないって言ったろ」
 苦笑して見せたら、だってと気まずそうに口を開く。
「戻った時にはにーちゃん居なくなってるかもって思って……」
 正直言えば、未だに逃げれるなら逃げたい気持ちはあった。しかしここで逃げてしまったら、どれだけ彼を傷つけるのかわからない。諦め帰るよう説得できず、受け入れる態度を見せた以上、こちらだって覚悟を決めるしかなかった。
「逃げないよ。こっちおいで」
 おとなしく従った甥っ子はぎこちない様子で、ベッドに腰掛ける自分の隣へ同じように腰を下ろす。
「髪もまだ濡れてるし」
「どうせすぐ乾くよ」
「まぁそうだろうけどさ」
 言いながら、取り敢えずで枕横に用意しておいたフェイスタオルを取り上げ、甥っ子の頭にふわりと被せた。そのままゴシゴシと頭を拭いてやっても、甥っ子は黙ってされるがままだ。
「おとなしいな。緊張してる?」
「そりゃ……」
 ぼそぼそと溢れてくる声はやはり元気がなかった。
 ほぼ裸に近い格好で勢い良く戻ってきた割に、そう積極的でもないようだ。さあ抱け! とぐいぐい来られるよりは有り難い気もするが、どう扱っていいか迷うのも確かだった。
 こんなに気を使いながら始めるセックスっていつぶりだろう?
 そう思いながらそっと頭に被せていたタオルを外して、手櫛で何度か髪を梳いて簡単に整えた後、伺うように軽いキスを一つ鼻の頭に落としてみた。
 対する甥っ子も、やはり黙ったまま目を何度か瞬かせて探る気配を見せるので、もう一度、今度はその唇に触れてみる。
「あ、あのさ」
 躊躇いがちなセリフの先を、そっと促す。
「うん、何?」
「名前、呼んだほうが嬉しい?」
「名前を呼び合いたいとかって要望じゃなくて、俺が嬉しいかどうかを聞くわけ?」
 発想が時々面白いなと思いつつ聞き返したら、義兄の代わりになるのなら義兄の呼び方で呼んだほうが嬉しいか、という意味だったようで驚いた。
「俺の言い方が悪かったのは認める。というか、ああ言えばお前が諦めると思ったのは確かだけど、義兄さんの代わりになれってつもりで言ったわけじゃないぞ?」
「違うの?」
 言葉の端々から、そう誤解してるような予感はしていたが、どうやら当たっていたようだ。
「違うよ。ただ俺の中でお前と義兄さんの境が曖昧なんだって話。俺の中でのお前は、どっちかっていったら小学生の頃のイメージが強いし。逆に義兄さんは今のお前より少し年行ったくらいの頃のイメージが強いんだよ。俺がよく遊んでもらってた頃の話な」
「じゃあ、にーちゃんって呼んだままでいいの? でももしかしてそれも嫌だったりする?」
 不安げな様子はやはり、そう呼ぶことで、甥であり弟のような存在であることを意識させると思っているからだろうか。
「好きに呼んでいいよ」
「にーちゃんは? 俺をなんて呼ぶの?」
 苦笑しながら甥っ子の名を呼んでやれば、安堵を混ぜながらも泣きそうに笑った。
 こんな顔をされてしまったら、間違っても義兄を呼べないなと思う。まぁきっと、自分が抱く側でそこまで強く錯覚することもないだろう。そうであればいいなと願うように思った。
「他にも何かあるか?」
 少し考える素振りの後、ないよと言うように首を振る。キュッと唇を噛み締めているから、もしかしたら何かあるのかもしれないが、どうやら飲み込むことにしたらしい。
「後、一応言っておくけど、こっちが経験者だからって、嫌なことされて我慢する必要はないからな?」
 わかったと頷くのを待ってから、ゆっくりと唇を塞いだ。今度はもちろん触れるだけではない。
 時々角度を変えながら、軽く吸い付いて、唇を食んで引っ張った。舌を出して緩く開かれた唇の隙間を突けば、応じるように舌が差し出されてくる。それを舐めて、やはり軽く歯を立てながら自分の口内へと誘いこむ。
 甥っ子からこぼれるぎこちない吐息が、甘く耳の奥をくすぐった。

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに11

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 テーブルの上に転がり落ちたローションボトルとコンドームとイチジク浣腸に、こんなものいつの間に用意したんだと聞いたら、最初から持ってきてたと返ってきて目眩がした。
「最初っから俺とやる気まんまんか」
「そこまでは思ってない。どう頑張っても無理そうなら諦めるつもりと覚悟で来たよ」
 それは要するに、無理ではないと判断されたということだ。今のこの状況を考えたら、むしろ相当脈アリと思われた可能性だって高そうだ。
 そう思うのも無理はないと、甥っ子が来てからのあれこれを思い出しながら思う。
 だって最初っから、これはマズイとはっきり感じたくらい、相手のことを意識した。どう考えても大人二人が暮らせる造りの部屋ではないから、いろいろ文句を言ってみたり、さっさと帰るよう諭してみたりもしたけれど、基本的には彼の自由意志に任せてしまった。彼のいる生活を楽しんでしまった。それはきっと、随分思わせぶりな態度に思えたことだろう。
「お前のやる気と覚悟は、もう嫌ってほどわかったよ。で、実際のとこはどうなの?」
「どうって何が?」
「だってどれも使った形跡ないから。抱かれる側になること想定してたなら、少しくらいは自分で弄ったりしてないのか?」
 まさか抱かれる側になることを想定してはいなかった、とは返って来ないだろう。どちらでもいいような口ぶりではあったが、抱きたいというよりは抱かれたいのだという事は、甥っ子の様子からわかっていた。
 最低限必要な物を用意している事からも、先程の体の中を洗うという発言からも、それなりの知識はあるのだろう。だったら抱かれることを想定して、自分自身の体を慣らす事もしているんじゃないかと思った。
 というか、自分で慣らしててくれと願う気持ちもある。まったくまっさらの体を、一から慣らして抱くなんて、あまりに難易度が高過ぎだ。出来れば多少なりとも気持ちよくなって欲しいと考えたら尚更だった。
「俺、いま、結構大事なこと聞いてるから正直に答えて。自分で弄った経験は?」
 少しばかり頬を赤らめた甥っ子に、畳み掛けるように問いかける。
「あー……自分でする時はこっち、かな」
 ごそごそっと鞄の中を漁った甥っ子が取り出したのはワセリンのケースだった。確かにそちらは開封済みだ。
「でもこっちはセックス向きじゃないって言うから」
「うん。それで、そっち使ってどれくらい広がる?」
「え、ええっ……??」
 さすがに直接的な話になって恥ずかしいのか、戸惑いためらう様子を見せる。しかしそれに構わず質問を続けていく。
「指3本、自分でイける?」
「む、むり」
「2本は?」
「入るけど……」
「痛い?」
「っていうか苦しい。あんまキモチくなれない」
「これ、自分で試したことは?」
 言いながら、テーブルに転がったままのイチジク浣腸を取り上げた。
「ない」
「水とかお湯とかだけのも?」
「シャワー使ってっての1回試したことあるけど、イマイチ上手くいかなかった。家だと風呂場とトイレの往復なんて、何度もしてたら怪しまれるし。あんま試す機会なかったんだよ」
「てことはこれ使っても、その後が一人じゃ無理か……」
 甥っ子の話を聞く限りでは、興味と知識はあるものの、まだそれを自分の体でいろいろ試せてはいないようだ。姉は専業主婦だから、家ではそうそう試せないのも仕方がない。
 自分自身、実家にいた頃は普通にナニを握って扱くだけのオナニーしかしたことがなかったから、後ろを弄っているというだけで、昔の自分より進んでいるといえるかもしれない。しかし現状彼に、知識以外の経験がないのもまた事実だった。
 男女どちらとも経験があるし、男相手に限定したって抱いたことも抱かれたこともあるのだけれど、未経験という相手との経験はほぼないに等しい。気楽に体の関係を結べるような相手は、すなわち、既にそれなりに経験がある、性に緩いか性的興味の強いタイプだからだ。
「あのさ、取り敢えず俺に突っ込んでもらったら満足。とか思ってる?」
「思ってない。てか父さんの代わりになる覚悟までしてるんだから、ちゃんと優しくしてよ、とは思ってるよ」
「そりゃ優しくはするし、最初っから全部義兄さんの代わりにとまでは思ってねーよ。でも錯覚する瞬間は絶対あるから、お前辛いと思うし……って話じゃなくて。これ、使って貰うかどうかを考えてるだけだって」
 まったくの未経験だというのなら、やはりリスクのほうが高いだろうか。
「体の中、洗わなくても出来る?」
「そりゃ出来るよ。けど指2本キツイってなら洗ってみた方が楽かもしんないし、でも逆にダメになるかもしんないし」
「ダメになるって?」
「だって中洗ったことないんだろ。違和感残ってセックスどころじゃなくなる可能性もある」
「そっか……」
 甥っ子は目に見えてガッカリした様子で肩を落とした。
「俺の手で中洗われたい~みたいな願望とかある?」
「にーちゃんは? そういうので興奮する人?」
「しない人」
「じゃあどっちかって言ったらヤダ」
 ガッカリしていたから、もしかして洗って欲しいとか、もっと言うなら排泄を見られたいとか、そんな性癖持ちだったらどうしようとチラッとでも考えたことはもちろん言わない。代わりに、少しばかり揶揄う口調で問いかけた。
「もし興奮するっつってたらさせるの?」
「させるよ。それでにーちゃんが興奮するって言うなら、それくらい、なんでもない」
「ったく、可愛いこと言いやがって」
 よしやるか、と言いつつ立ち上がったら、座ったままの甥っ子が酷く驚いた顔で見上げてくる。
「なに驚いてんだよ」
「え、今すぐ始めるの?」
「え、そのつもりで誘ったわけじゃないのか?」
「や、そのつもり、だったけど……」
「怖気づいたならやめる?」
「違っ! え、だって、あの、シャワーとか……」
「中洗わなくていいよ。それで出来なくなったら嫌だろ?」
「じゃなくて外側」
 外側?
 一瞬意味がわからず呆然と見つめてしまったが、わたわたと言い募る甥っ子の言い分は、どうやら普通に体を洗ってから始めたいというだけのようだった。夕飯を作りながらけっこう汗をかいたらしい。
 こちらは彼が夕飯を作ってくれている間に汗を流していたから、自分基準で考えてしまっていた。
「あー、そっか、悪い。いいよ。シャワーしておいで」
「シャワー行ってる間に、気持ち変わったりしない?」
 しないから安心してゆっくり入って来いと言って送り出したが、あの様子だとすぐに出てきてしまいそうだ。取り敢えず甥がシャワーを済ませる間に、自分も歯磨きくらいはして置こうと思った。

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに10

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 テーブルに沈んだ相手を見つめながら言葉を探すが、掛ける言葉なんて見つからない。
 義兄への想いに気づいた当時、その息子である甥っ子に対しても心揺れてしまったのは事実だった。義兄相手になんらかの間違いを起こす確率よりも、まだ幼い甥に対して起こす確率のほうが高いだろう自覚はあった。あの時自分は、義兄からも甥からも逃げたのだ。だから甥の言葉の半分は当たりと言ってもいい。
 幼いながらもそれを感じ取っていたというのなら、やはり責任はこちらにあると思った。あの当時には気づかなくても、彼自身が成長した今、幼いころに兄と慕う相手から性的な視線を受けていたと認識したのだろう。
 だとしたら彼の性愛対象に男を意識させたのはきっと自分だ。もしもそのせいで彼をこちら側に引き入れてしまったのだとしたら、どう責任をとっていいかなんてわからない。
「ねぇ、責任とってよ」
 気持ちが落ち着いたのか、甥っ子がゆっくりと頭を上げた。吐き出されてきた言葉は、どこか拗ねた子供っぽい響きを持っていたけれど、それでも胸の奥をえぐるには十分過ぎる威力があった。
「俺がそんなバカな誤解したのも、それで好きになっちゃったのも、にーちゃんのせいだよ?」
 反論は出来ない。その通りだと思った。
「だから、責任とって」
「ど、……やって?」
「にーちゃんが、俺の初めての男になってよ」
「なにがなんでもお前と寝ろって?」
 無茶を言っている自覚があるのか、そうだねと肯定しつつも、甥っ子は自嘲気味に口元だけ笑う。
 その顔を見ていたら、嫌だムリだダメだ、とは言えなかった。言えないが、だからといってわかったとも言えない。言えるわけがない。
「にーちゃんってさ、どっちの人なの?」
 黙ってしまったらそれをどう受け止めたのか、甥っ子はそんなことを口にする。
「どっちって?」
「ネコとかタチとかいうやつ。男に抱かれたい人なの? それとも抱きたい人?」
「聞いてどうすんだよ」
「抱かれたい人でそういう経験が多いってなら、いっそ力づくで襲ってもいいかな。って思って?」
 俺のが力あるしタオルとか紐とかガムテープとかで縛っちゃえば可能そうだし。などという物騒な話を吐き出すその顔は、やはり自嘲気味だけれど泣きそうにも見えた。
「むりやり関係結んだって、そんなの辛いばっかだぞ」
「それでもいいよ」
 半ば投げやりな口調に、ああ、きっと何もわかってない、と思う。
「なぁお前、わかってんの?」
「何を?」
「お前が義兄さんに似てるから嫌だ、って言った意味」
「父さんが初恋でその父さんに似てるなら、むしろ俺が相手だって構わないだろ」
「バカだな」
 言いながら大きく息を吐きだした。
 バカなのは目の前の甥っ子なのか自分なのか、多分きっと二人共が大馬鹿だ。
「そこまで言うなら抱いてやるよ。お前が本気で、義兄さんの代わりにされてもいいってならな」
 ここまで酷い言い方をすればさすがに諦めると思った。実際、目に見えて甥っ子の顔の血の気が失せていく。
「それが嫌で、俺を力づくで襲うってなら、俺は今すぐここを出て行くし、お前が出て行くまで戻らない」
 ダメ押しのように告げた。蒼白な顔でキュッと唇を噛みしめる甥っ子に、胸はきしんで悲鳴を上げていたけれど、これで諦めてもらえるならと思って耐える。
 告げた言葉の半分は本音だ。大事な甥っ子を義兄の代わりになんてしたいわけがない。しかしそう思わなくても、どうしたって義兄に重なる瞬間はあるだろう。それは身を持って断言できる事実だった。
 割りきって体だけ気持ちよければ、なんて相手でさえ、誰かの代わりにしてするセックスは心が痛むものだ。不可抗力に近くても、そうなってしまう瞬間を排除できない以上、自分たちは触れ合わないほうがいい。甥の気持ちが自分に向いているならなおさらだった。
「わかった」
 ようやく諦めたかと思ってホッとした次の瞬間。
「父さんの代わりでいいから、抱いて」
 驚いて目を見張ったら、悔しげな甥っ子に睨まれる。
「にーちゃんは俺をまだ子供だと思って舐めすぎ。それで、どうすればいいの? 抱かれる側って体の中洗ったりするんでしょ?」
 必要そうなものは買ってあると言いながら、部屋の隅に置かれていた鞄を引き寄せた甥っ子は、そこから紙袋を取り出して中身をテーブルにぶちまけた。

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに9

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 甥っ子が何を考えているのかさっぱりわからない。わからないというよりはわかりたくない。これ以上彼の話を聞くのはヤバイ気配しかないのに、あんな顔を見てしまったら、彼の言う大事な話を聞きたくないとも言えそうにない。
 何が一番怖いかといえば、もう一度あんな顔で迫られたら、どこまで拒絶しきれるのか自信がない点だろう。絶対後悔するとわかっていても、何かしら納得の行く理由を提示されでもしたら、拒みきれない予感がする。
 だって後悔ならとっくにしてるし、今この瞬間だってしてる。そこに一つ後悔が上乗せされた所で、そう大差ないんじゃないかと自棄っぱちに思う気持ちもなくはないのだ。
 考えるほどに行き詰まるようで、笑う代わりに深い溜息を吐き出した。
「ゴメン、怒った?」
 新しいマグカップを片手に戻ってきた甥っ子は、こちらの険しい顔に気づいてそう訪ねてくる。どうやら知らず知らずに、真っ黒になったテレビ画面を睨みつけていたようだ。
「怒るっていうか、わかんねーんだって」
「俺が本気かどうか?」
「そこじゃない。だってふざけてないんだろ?」
「うん」
 言いながらマグカップをこちら側に置くと、ようやく甥っ子もテーブルを挟んだ対面に腰を下ろす。それを待って口を開いた。
「わかんねーのはお前がここに来た理由。親からただ逃げてきたわけじゃないんだろ。むしろ最初っから俺に会いに来てる。お前が俺に確かめたかったことって何?」
「確かめたかったのは、にーちゃんが帰ってこない理由、かな」
「ならもうわかっただろ」
 先日、はっきり義兄が好きだったと教えた。その時、義兄に会いたくないから帰らないのだとも言った。
「それは、そうだけど」
「他にも何かあるんじゃないのか?」
「それはさ……」
 正面に座る甥っ子をまっすぐに見つめて問いかければ、少しためらった後で、確かめたかったのはにーちゃんの性癖と自分の気持ち、と返ってきた。
「俺の性癖……って」
 思わず絶句したら、相手も申し訳無さそうに苦笑する。
「にーちゃん男好きなのかな、ってのはなんとなく気づいてて、それはっきりさせたかったんだよ」
「お前自身がそうだから?」
 身近に同じ性嗜好の大人が居たら心強い、という気持ちはわからなくはない。自分自身、親や姉に義兄を好きだなんて言えないのは当然にしたって、主に男が性愛対象ということさえ言っていない。
「うん、どうやらそうみたい」
 へにょっと笑った顔は泣きそうだった。ここでの生活で、確信したと言わんばかりだ。
 人を実験台にするなよと思う気持ちもないわけではなかったが、可哀想にと同情的な気持ちも同じかそれ以上にあった。自分が義兄を恋愛感情で好きだと気づいてしまった時の、あの絶望的な胸の痛みを今も覚えているからだ。
「お前が今、同性の誰かを好きで居て、それをお前がしんどいって言うなら、話しくらいは聞いてやれる。と思う」
「聞くだけ?」
「これから必要になるかも知れない情報も、俺の経験則で良ければ。でもお前だっていろいろ自分で調べてるんじゃないのか?」
 これだけ情報が溢れる世の中だ。探せば必要な情報は出てくるし、自分だって最初の頃は手探りだった。
「にーちゃんが俺の初めての相手になってよ。ってのはやっぱダメ?」
 やっぱりそうくるか、と思いつつ、ダメだと返す。
「俺が甥で父さんに似てるから?」
「そう言ったろ」
「でも俺は父さんと違って、結婚してるわけじゃないどころか恋人すらいない。それに男同士なら子供出来るわけでもないし、血が近いとかあんまり関係なくない?」
「俺の心情的に、かわいい弟分をどうこうしたくない」
「そのかわいい弟相手でも欲情するくせに」
 あの朝を思い出して体の熱が上がるのを自覚すると共に、痛いところを突かれたとも思った。
「たまってる所弄られて反応するの、しょうがないだろ!」
 居たたまれなさと恥ずかしさとで、ついキツイ口調になってしまうが、こちらの焦りとは対照的に甥っ子はむしろ平然としている。
「それだけじゃなくて。っていうかさ、もう正直に言うけど、俺にーちゃんが男好きなのわかってたけど、それがショタコンってやつなのかを知りたかったんだよね」
「……は?」
 唐突にショタコンなどという単語が飛び出してきて、意味がわからず呆然と聞き返す。
「だって父さんが好きだったとか、思っても見なかったんだよ。ずっと、にーちゃんが遠くの大学行っちゃったのも、滅多に帰ってこないのも、俺を好きだからなのかと思ってたの。子供に手を出せないから逃げたんだと思ってたの。で、ここに来たのは、にーちゃんが男の子にしか欲情できないのか、それともおっきくなった俺でもいいのか、確かめたかっただけなの」
 なのに本命父さんだったとか自意識過剰過ぎて恥ずかしいよと言った後、甥っ子は耐えられないとでも言うように「うあー」と吠えると、両手で頭を抱えながらテーブルに撃沈した。

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