可愛いが好きで何が悪い49

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 他者の手で絶頂に導かれるにしても、外からの刺激で吐き出すのと、内側からの刺激で押し出されるのとでは全然違う。体の中に溜まっていたキモチイイをやっと吐き出せたのに、体の中はまだじんわりとキモチイイが残っている気がする。いやでもこれは、一緒にイクことはしなかったらしい相手の硬いままのペニスが、未だそこに存在しているせいかも知れない。
 動きは止まっているし、お尻の中のイイトコロにはあまり当たらないようにしてくれているっぽいけど。でも、敏感になった腸内は、イイトコロにピンポイントで当たって無くても、動いて無くても、そこに有るだけでキモチイイを拾ってしまうようだ。
 それに、ペニスに触れられないまま出した、というのも原因の一つかもしれない。どうやら、射精欲が満たされてスッキリ、という賢者タイムは来ないらしい。
「少しは落ち着いた?」
 ぼんやりと見上げていた相手が、こちらの呼吸がある程度整うのを待ってそう声をかけてくる。ちなみに、可愛かったとか、怖かったのにありがとうとか、最高とか、大好きとか、手放しの称賛っぽい言葉は果てた直後に大量にもらっていたが、それらにまともに反応できないくらいには衝撃で呆けていたから、相手はすぐに口を閉じて落ち着くのをずっと待ってくれていた。
 こちらが果てて脱力した後、視界に映る相手はずっとニコニコと嬉しそうで、満足げだ。口を閉じる前も、閉じた後も。嬉しくてたまらない気持ちが、溢れまくってダダ漏れだった。
 ただ、お腹の中に抱える相手のペニスが萎えていないのははっきりと感じているし、相手がまとう気配も若干ギラついた雄臭さが残っているしで、実のところ、全く安心感はない。
 無事に相手が望む形で果てれてよかった、とか。嬉しそうで良かった、とか。そういう満足感の中で目を閉じて終えたい欲求は、間違いなく、叶えられることはないとわかっている。
 すでに相当待って貰っていることもわかってるし、こちらを刺激しないよう動かずにいるのは辛いだろうことも想像はできる。けど。
「ごめん、も、ちょっと、待って」
 前立腺を刺激されてペニスに触れないまま射精する、いわゆるトコロテンを経験したわけだけれど、病みつきになる気持ちよさだったかと言われるとやっぱり微妙だった。目の前がチカチカと爆ぜるような衝撃も、頭が真っ白になるような浮遊感も、間違いなく快感ではあったのだけど。無理やり押し出されていくような、何かが迫り上がってくるあの恐怖を忘れられない。
 あれをもう一度受け入れるには、覚悟を決めるための時間がもう少し欲しい。今度は怖いなんて口走ってなだめられるような、情けない事態をなるべく避けたい気持ちがある。
「もしかして、キモチイイより、怖いほうが勝っちゃった?」
 初めてのアナルセックスでそのままトコロテンしたことに、ただただ疲れているだけだと思っていただろう相手も、どうやらそうではないと気づいてしまったらしい。ニコニコと嬉しげだった顔が曇って、不安そうな顔になってしまった。
 そんな顔をさせたいわけじゃないし、気持ちよく果てたのだって事実なんだけど。
「いや……」
「本当に? むり、してない?」
 あんなに怖いって言ってたのに、止めずに続けて無理させたならごめん。
 そう言ってしょぼくれて肩を落としてしまうから、少しだけ腹が立ってしまった。
 受け入れたのはこちらで、止めろなんて言わなかったのに。謝られてしまったら、そんな姿を見せたことを余計に情けなく感じてしまう。相手は怖いと漏らすこちらを、さんざん宥めて大丈夫だの可愛いだのと繰り返して、最終的にはちゃんと絶頂にまで連れて行ったのだから、むしろその手腕を誇っていて欲しい。
「怖いなんて言うつもり、なかったんだよ。だからそれ、あんま蒸し返すなよ」
 情けないし恥ずかしいだろと言ったら、少し驚かれた後で苦笑されてしまう。
「そういや、途中で泣きごという想定がないとか、めちゃくちゃ男前なこと、言ってたね」
「そう。だからあれはできれば忘れてくれ」
「え、無理」
 即答された後、めちゃくちゃ可愛かったから絶対に忘れないとまで言われてしまった。
「お前の目、やっぱなんかオカシクないか?」
「えー、それ、ここで蒸し返す?」
「いやまぁ、抱いてる途中で怖い怖い言われても、それ見て可愛いって思えるのとか、萎えて中断しないのは、ある意味尊敬するけど」
「あー……もし立場逆だったら、そうなっちゃうのか。てことは、」
「お前が抱く側でやっぱ正解だよな」
 相手が何を言いたいか察してしまったので、割り込んで言われる前に言ってやる。
「だねぇ」
 同意されて、俺はかけらも萎えなかったよというから、それはわかってると返した。だって、今まさにそれをこの身で感じ続けている。
「てか結構平然と喋ってるけど、お前、イッてないのに辛くないの?」
「全く動いてないし、お前が変に煽ってこなきゃ、まぁ、余裕」
「そうなのか」
「むしろお前の方こそ、大丈夫なの? 抜けとか言わないし、俺がイッてないのわかってて、もうちょっと待ってって言うってことは、待ってたら続きさせてくれるって思っていいんだよね?」
「抜けって言ってよかったのか……」
「1回ずつイッて、ここで終わりにしたい?」
 手ぇ貸してくれる? と続いたから、終わりにしたいと言えば、彼の硬いままのペニスが本当にお腹の中から抜け出ていくんだろう。
 緩く首を振って否定して、覚悟決めるからもうちょっとだけ待ってとお願いする。
「覚悟、って?」
「次は、トコロテン怖い、とか、言わない覚悟」
 割と大真面目にそう考えているんだけど、相手は小さく吹き出している。まぁ、想定内の反応ではある。
「俺はまた、気持ちよくなるの怖いってなっても、全然構わないんだけど」
「俺が構う」
「だよね。じゃあ、次は怖くないエッチしようよ」
「なんだそれ」
「お尻気持ちよくなってたから、前立腺突いてイカせちゃったけど、初めてでトコロテンとかやっぱ難易度高かったよねって思って。お尻弄られながらでも、おちんちん扱いたら気持ちよくイケそうって、言ってたでしょ。イッちゃったら挿入つらくなるからって、ずっと我慢させちゃってたけどさ」
 そういや尻穴を解されている初期に、イッてしまうとその後が辛いからと言われて、勃起ペニスを放置されたんだったと思い出す。

続きました→

 
 
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可愛いが好きで何が悪い48

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 さっきまで突っ込まれていたのはバイブで、彼に指で直接その場所をいじられ確認されたわけではないのに、中のイイトコロというか前立腺はすぐに把握できたらしい。更には、強い刺激で気持ちよくイケる気がしなかったとか、最弱の方が良かったと言ったせいか、しっかりイイトコロにペニスの先端を擦り付けながらも、刺激そのものは激しくなく緩やかだ。
 つまりは、かなり的確に快感を引き出されていてたまらない。捏ねられ続ける前立腺を中心に、じゅわじゅわと快感が溢れ続けているような感覚が、怖いのにひたすら気持ちがいい。
「あ、あ、あっ」
 宣言通りにアンアン言わされている自覚はあるが、想像していたより数段甘く、ねっとりとした気配の中で喘がされている。もっとガツガツと突かれて、強い刺激にどうしようもなく泣き喘ぐような、そんな状況になるのだと思っていた。
「よかった、お尻気持ちぃの、すごい可愛い」
 うっそりと笑う顔は、相手もまた、強い快感の中にいるのだと教えてくれる。うっとりと嬉しげに笑う余裕は多分もう無くて、きっと、もっと激しく突き上げて自身の快楽を優先したい欲と戦っているのだと思う。さっきみた雄の顔が、チラチラと見え隠れしている。
 相手のそんな姿を見てしまっても、さすがにもう、自分の欲を優先させろよとは思わなかった。相手が何をしたくて、見たくて、必死に頑張っているかを知っているせいだ。
 ただ、知っているからといって、それを与える術を持っているかは別だ。というか持っていない。少なくとも今はまだ。
 このまま気持ちよさに体を委ねていれば、勝手に彼が連れて行ってくれるのかも知れないけれど。初めてなのに無理だろと、強く疑う気持ちももう、そこまでないのだけど。
「あ、あっ、ううっっ」
 何かが迫り上がってくる未知の感覚は、快感への期待よりもやはり恐怖が勝ってしまう。
「もしかして、気持ちぃの、怖い?」
 ギュッと掌に触れる布を握りしめてしまったら、ちらりとそちらに視線を流した後で、そんな言葉が降ってくる。と同時に、握った拳をゆるっと撫でられたあと、その手を開くようにと促された。
「ここまできたら止めたげないけど、怖いなら俺にぎゅってしてよ」
 そっちのが嬉しいからと、捕まりやすいようにと前傾してくれる。けれどその肩なりに縋るのはさすがに躊躇われてしまう。
「おとこの、あくりょく、だぞ」
「ああ、なるほど」
 あんまり痛いのは俺も嫌だなぁと続いたから、諦めたかと思ったのに。でも前傾された体はそのままだ。
「できれば抱きつく感じで、腕回して。まぁ、どっか握ってても、ダメじゃないけど」
 もし痛いって情けない声上げても許してくれるなら、という注文付きだったけれど、そこまで言うのならと相手の体に腕を伸ばす。ギュッと抱きついたら、抱き返すみたいに相手の腕も背に回って、軽く背が浮いた状態になる。
 重くないのかと思うまもなく、その手がさわさわと背中をなぞる感触に、キュッとお尻に力を込めてしまった。
「んぁっ」
「締め付けすごっ」
 ふふっと笑いながら、衝撃で抱きつく力を強めたせいで、さらに浮いてなぞりやすくなった背中をあちこち撫でさすっていく。あちこちというか、さっき一度探られた性感帯を、的確に拾われている。
 齧られる代わりにカリカリと爪を立てられたり、吸われる代わりにつままれると、ゾワゾワとした快感が走って腰が震えた。その度にキュッキュと相手のペニスを締め付けているのがわかるし、イイトコロを外して最弱で動いていたバイブと違って、今はしっかり狙って中のイイトコロを彼のペニスが刺激しているのだ。
「あ、あ、も、むりぃ」
 さすがに限界だった。
「無理って?」
「も、いきたぃ、だした、い。も、さわ、って」
 募る射精感に、果てることを願う。相手の目的からは外れてしまうとわかっていながら、ペニスを触ってイカせてほしいと訴える。
「わかった」
 あっさり了承されて、背中に回った腕が解かれて、それに合わせてこちらも抱きついていた腕を緩めた。密着しすぎていたら、こちらの勃起ペニスを弄れないのはわかっている。
 なのに、ホッとしたのもつかの間。
「ひっ、あ、あっ、なん、ち、ちがっ」
 一度軽く足を抱え直した相手が、再度前傾してきて、その唇が触れたのは胸の先だった。ちゅっと吸い付かれて、ビクッと体が跳ねてしまったが、相手はお構いなしに胸の先に吸い付いたままだ。
 さっき散々こねくり回されて、そこもしっかり性感帯として機能している。全く未知の性感帯というわけではないというか、そこは性感帯という認識がもともとあったからか、最初から結構簡単に快感を拾えた場所だった。
 そんな場所に吸い付かれて、的確に中のイイトコロを擦られたら……
「あ、あっ、や、やだ」
 引き剥がそうと相手の肩を掴んだ手に力がこもってしまって、相手が小さく呻いた気配があった。けれど頭は胸から離れていかないし、それどころか、もう片側の胸には手が伸びてきて指先で弄りだす。
「こわ、こわいっ、ってぇ」
 両胸を同時にイジられて、目の前に火花が散った。ビクビクと体が震えて、相手のペニスを締め付けているのに、それを振り切るようにグッグッと前立腺を押し込んでくるから、迫り上がってくる何かにとうとう怖いと口に出した。
「怖くないから、イッちゃいな」
 声とろとろで可愛いよと、胸の先で囁かれる。濡れた先端がその息遣いと、その後溢れた笑うみたいな吐息を拾って、ジンと痺れるようなもどかしさで震える気がした。
「ほら、お尻も気持ちぃね」
 そこを意識させるようにわざわざ声に出してから、ねっとりと緩やかだった腰使いが、少し早くなる。バイブのスイッチを強くされたときよりはまだ緩やかではあったが、それでも強くなった刺激に腰がガクガクと痙攣する。
 怖い怖いと漏れてしまう声に、大丈夫、可愛い、気持ちぃねと繰り返しながらも、相手は動きを止めてくれはしなかった。
「ひぃ、ぁああっっ」
 結果、とうとう迫り上がってくる何かが溢れでるのを感じて、相手の目的が達成されたのをその身で実感する羽目になった。

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可愛いが好きで何が悪い47

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「でも、イケそうだったでしょ?」
「いや、わからん。なんか凄かった、のはわかる」
 何かがせり上がってくるあの恐怖を、イキそうだったと思うにはいささかハードルが高い気がする。ついでに言うなら、激しすぎる快感は痛みに近い気もした。
「正直、あれを続けられても、気持ちよくイッた状態になれる気がしない」
「そ、そうなの?」
 意外そうな顔をされて、彼の想定とこちらの実感が合っていないようだと思う。
 彼からすると、気持ちよさにすぐにでもイきそうだった、とでも見えていたんだろうか。もしかしたら、辛そうな様子に止めてくれたのではなく、こちらが先に果ててしまうのを阻止するためにスイッチを切って抜いた、という可能性の方が高いのかも知れない。
「最弱で突っ込まれて、お前にあちこち触られてる時のがはっきり気持ちよかった」
「んんんっ、そっか」
 バイブよりお前がくれる刺激のが気持ちよかったと告げたようなものなので、嬉しかったんだろう。コンドームを装着するために相手はこちらから視線を外しているが、緩んだ頬も口元もこちらからは見えている。あと、声も少し弾んでた。
 なのに、装着を終えて顔を上げた相手は、キリッとすました顔を見せている。
「ふはっ」
「え、なんで笑われてんの?」
「んー、カッコイイな、って思って?」
「それ絶対嘘でしょ」
「いや本気」
 今から突っ込むよというこの状況で、さっき見せていた雄臭い興奮も、嬉しそうに脂下がったニヤケ顔もすっかり隠し切って、余裕そうな顔を見せられるのはやはり経験の賜物なんだろうか。
「お前にイイトコロ突かれてアンアンするのも有りかな、って思えるカッコよさ」
 これも本気には聞こえなかったようで、少し嫌そうに眉が寄る。その顔にやっぱり少し笑ってしまったけど、これも別にからかってるとかではなく本気だった。ついでに言うなら、これは自分自身へ覚悟を促す言葉でもある。
 そういう状態になることを、そんな姿を彼に晒すことを、もう、本気で疑ってはいなかった。
「そんな風に笑ってられるの、今のうちだけかもよ?」
 嫌そうに眉を寄せたのは一瞬で、すぐにまた余裕の顔を見せながら、ペニスの先端をアナルに押し当て挿入の体勢を取ってくる。本気でアンアン言わせる気なんだけど、という幻聴が聞こえる気がして、また笑いそうになるのをどうにか堪えた。
 堪えたが、堪えていることは伝わってしまったらしい。
「俺、本気だからね?」
「知ってる」
 腕を軽く広げながら相手に向かって伸ばせば、察した相手が前傾して身を寄せてくれる。その肩を掴んで引き寄せながら、自らも顔を寄せていく。
「期待も、してる」
 気持ち良くしてくれるんだろ、と、唇が触れる寸前に囁いて、相手の返事を待たずに塞いだ。
 相手の目が見開かれるのを間近に見て満足した後、そっと瞼を落としてキスに意識を集中させる。快感を拾って体の力を抜いていけば、布団に背が着くのとほぼ同時に口の中から舌が抜け出て、代わりとばかりにアナルにペニスが侵入してくる。
 さっきみたいに深呼吸したり、挿入のタイミングを図られることはなかった。
「あああっっ」
 閉じ忘れていた口からは少し大きめの嬌声が漏れていく。しかも今回は、そのままぬぷぷと一気に奥の方まで入り込んできた。
「うううっっ」
 口は途中で閉じたけれど、衝撃で声は飲みきれない。痛みではなく、既に充分に慣らされた穴が、あっさり快感を拾っていたせいだ。
「痛く、ないよね?」
 ほぼほぼ埋めきってやっと腰を止めた相手が、一応の確認という感じで顔を覗き込んでくる。その目を見つめて、気持ち口の端を持ち上げながら。
「きも、ちぃ」
 多分きっと狙った通り、ある程度ちゃんと甘やかに響いたと思う。
 相手がウッと言葉をつまらせてうろたえるから、してやったりと笑ってしまう。
「またそうやってすぐ煽る〜」
 へにょっと情けない顔を見せるから、しっかりしてくれと思いながら、ぺちっとその額を叩いてやった。
「期待してんだから、ちょっと煽られた程度で負けんなよ、俺に」
「無茶言わないで!」
「そんな顔ばっか見せてると、また可愛いって言いまくるぞ」
「それはヤダ」
 次は俺が可愛いとこいっぱい見せてもらう番でしょ、と言いながらゆっくりと腰を揺すられる。順番に可愛いを見たり見せたりする、という意識も認識もまったくなかったが、結果的にそうなりそうなのだからまぁいいか。

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可愛いが好きで何が悪い46

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 気持ちいいところを探すの言葉通り、こちらの反応を窺いながら施されるそれらに、体の熱はあっさりと昂ぶっていく。
 自慰行為をしないわけではないけれど、それでも多分、性欲は人より薄めという自覚があったのに。性欲の強弱と感じやすさはあまり関係がないらしい。
 つまりは想定よりも遥かに広範囲で、体は彼に与えられる快感を拾っていた。
 キスで口の中を探られたときも、彼の手で握られたときも、口でされたときも。恋人という関係になる前で、それなりに抵抗感や迷いがある中ですら簡単に興奮させられていたのだから、彼に本気で性感帯を探られたらこうなるって、ある程度は予想しておくべきだったのかも知れないけど。多分、キスや性器を直接弄られて感じるのは当然と思っていたのが敗因だ。
「ここも、気持ちぃの?」
 ひっくり返されて背中に唇を落とされながら、うっとりと甘やかな声が、熱い息と共に肌に触れる。それだけでもまた、ゾワッと肌が粟立つような、小さな快感が走ってしまうのに。
「ぁあっっ」
 右の肩甲骨の下辺りに硬い感触が当たって、軽く齧られる衝撃にこらえきれずに声を上げた。自分の声に思えないような、濡れて高い声音だった。
「ん、ふふっ、すごい、イイ声」
 嬉しそうな声は興奮を含んで、その周辺だったり左右を変えたりで何度か歯を立てられ、吸われ、その度に小さく「あっアッ」と声を上げる。少し慣れて声が出なくなると、また別の場所を探される。その繰り返しだ。
 感じて声を上げるたびに、腹の中に抱えたバイブを締め付けてしまうようで、最弱でも、イイトコロにピッタリと当たっていなくても、瞬間的に強い快感が走ることもある。彼に触れられている場所から発生する快感に、お腹の中から発生する快感が混じって、混乱するような追い詰められるような感覚もあった。
 物足りないとか、もっと強い刺激が欲しいとかではないけれど、もどかしさは感じる気がする。お腹の中がもやもやして、もっとはっきりとした快感が欲しい。
 もっと言うなら、射精がしたいというか、ペニスで快感を拾いたいのだと思う。
 ひっくり返された最初はべたりと腹側すべてを布団に付けていたが、快感に身を捩った際にペニスがシーツに擦れて気持ちよくなっている事に気づいた相手によって、早々に腰を持ち上げられている。一緒に弄ったらあっさり果ててしまうのがわかっているから、なるべくそこには触れたくないという意志は感じるし、こちらも耐えられるうちは耐える気でいた。
 けれどもう、いい加減、限界が近いのかも知れない。直接触られていないのに、こんなにも射精欲が募っている。
「お尻揺れてて可愛い。そろそろ物足りなくなってきた?」
「うひゃっ! あ、……あっ、ま、まって、それっ」
 そんなことを言われながら、掲げた腰に吸い付かれて変な声を上げてしまった。しかもバイブを握った相手が、確実に狙ってイイトコロに押し付けてくるから、腰どころか足が震えて崩れそうになる。
 しかし崩れる前にさっと相手の腕に支えられて、辛そうだから仰向けにと促されながら、再度ひっくり返された。
 体勢的には楽になったが、いつの間にやらすっかり雄臭い顔で興奮していた相手と顔を合わせることになり、さすがのギャップに思わず驚く。
「どうかした?」
「そういう顔、するんだ。と思って」
「そういう顔?」
「ギラついてる感じ」
「そりゃあ、好きな子が目の前で、俺の手で感じまくってるの見てたら、こうもなるでしょ」
 自分だけ焦らされてると思ってるのと言われて、相手も相当焦れているらしいのを知った。
「突っ込みたいなら、さっさと突っ込めばいいのに」
 後半は背中を向けていたから、嬉しげで楽しげでうっとりとした声ばかり聞いていて気づけなかった。楽しくて仕方がないからやっているのだと思っていたが、そんなに焦れていたなら、しつこくこちらの性感帯探しを続けずとも良かったのでは。
「情緒! ってかいい感じに感じてくれてるから、ここは頑張りどころだと思って」
「いい感じに? 頑張りどころ?」
 イマイチ意味が分からずに相手の言葉を繰り返しながらも、頭の中は疑問符が巡っている。
「自覚あるかわからないけど、間違いなく、お尻の開発進んでるから。どうせなら、俺にいいところ突かれてアンアンするのが見たいじゃん」
 ゲスな下心で焦らしまくってごめんねと、全く悪いと思って無さそうな顔で謝られてしまった。
 そういやさっきも、前立腺がちゃんと気持ちよくなれたら、後でいっぱい突いてあげるとかなんとか言っていた気がするが。
「初めてで、本当にそこまでなるのか?」
「多分。ちょっと、試してみようか?」
 何をと口に出す前に、相手の動きで何をするか察してしまう。バイブを握った手がイイトコロに押し当てつつ、最弱だった動きを強くする。
「ひっ、あ、ああああっっ」
 強い振動と激しめの伸縮に、悲鳴に似た嬌声が口から溢れていく。突然の激しい快感に、目の前がチカチカと明滅して、腰がガクガクと震えてしまう。
 しかし、何かがせり上がってくる恐怖にシーツをギュッと握りしめたところで、それらの動きは唐突に止まった。
「はぁ……はぁ……」
「ごめん、いきなり激しすぎたね」
 荒く息を吐きながら呼吸を整えていたら、謝罪の言葉とともに、腹の中からバイブが抜かれていく。

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可愛いが好きで何が悪い45

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「よしこい」
「気合い入りすぎでしょ」
 覚悟が決まったと知らせれば、そんな指摘とともにやはり可笑しそうに笑われてしまう。でも過剰だとは思わないし、それくらいの覚悟は必要だ。
 ただ、うるせぇと文句を言うつもりで開きかけた口は、けれどすぐに閉じてしまった。同時に、ギュッと目も閉じてしまう。
 そうして、腹の中で動き出した無機物に意識を集中する。
 バイブの動きは当然何段階もあって、さきほど彼に突きつけたときは振動も伸縮も最強モードにしていたけれど、今は間違いなく一番弱い振動だけのモードだろう。いいところに押し当てられたそれが小刻みに震えて、じわっとした痺れが腹の奥から広がっていくようだった。
「んっ……ぁ……」
 喘いでしまうような強い刺激ではなく、けれど間違いなく、じんわりと気持ちがいい。
「最弱なら平気そうだね。しかもちゃんといいとこ当たって気持ちぃんだ。良かった」
 嬉しそうな声が弾んでいるから、その顔が見たくて閉じていた瞼を押し上げる。目が合うと、うふふっと楽しげに笑われた。
「前立腺、ちゃんと気持ちよくなれたら、後で俺も、そこいっぱい突いてあげるね」
 期待いっぱいの嬉しそうな顔は、化粧を落とした素の顔でも悪くない。嬉しいなら良かったと素直に思うし、眼の前の相手が男の姿でも、だからなんだくらいにしか感じていないようだ。
 ただ、楽しみだねと言われても、それにはさすがに頷き難い。
「ばぁか、気がはえぇよ」
「そんなことないよ。だって中に気持ちぃとこあるの、はっきりわかってるんだから」
 場所も大体わかったし、あとは任せて。などと何やら自信有りげに告げられてしまったが、これもやはり素直に喜べはしない。
「いや、任せろったって……」
「俺に気持ちよくされるの、嫌がらないでくれればいいだけだよ」
「それが嫌だったら抱かれる側のセックスなんてしてないだろ」
「それはそう。ね、慣れてきたみたいだから、次、いくね」
 わかったと返せば、弱い振動はそのままに、中で伸縮が始まった。といってもこれも、一番弱い動きだろう。動いているのはわかるが、そこまで強い刺激ではなく、やっぱりじんわりとした痺れが腹の奥から湧き出ている。
 さっき目で見て知っている動きを、今、腹の中でされているのだと思うと、不思議な感動があった。
「はぁ……まじ、動いてる」
「それが感想なの?」
 またしても可笑しそうに笑われてしまう。
「気持ちぃのは? どう?」
 嫌な感じはしてないよねと聞かれて、じんわり気持ちぃと正直に答えた。
「もどかしいとかは? まだない?」
「んー……言われてみれば、もどかしい、のか?」
 いまいちはっきりもどかしいとは言えずにいれば、じゃあもう暫くはこのままにしておこうかと言って、相手が握っていたバイブから手を離す。
「あ……」
「良くなくなっちゃった?」
「あー……お前が持ってる方が、ちゃんと気持ちぃとこ、当たってたっぽい」
「やった。褒められた!」
 褒めたつもりはなかった。でもまぁ、これも相手のテクと言われれば否定は出来ない。
「でも暫くはこのままね。もっとはっきり物足りなくなったら、またしてあげる」
「で、その間お前は何すんの?」
 まさかの、玩具を突っ込んでの放置プレイか。と思ったのもつかの間。
「キスしたり、気持ちぃとこ探したり、撫でたり、舐めたり、まぁ色々」
 ちゃんと前戯っぽいことをもっといっぱいしたいと言われて、そういやさっきは穴を広げるのがメインで、とにかく体を繋げるのを優先するようなセックスだったのを思い出す。
 そうして、腹の中に最弱で動くバイブを抱えたまま、あちこち撫でられ舐められ、時々喰まれたり吸われたりした。

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可愛いが好きで何が悪い44

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 再度布団に寝転がって立膝で足を開き、その間に彼を迎え入れた。ただし今回はその手に、ゴムを被せて多めにローションを垂らされた、すっかり準備済みのバイブが握られている。
「そこまで時間経ってないからこのままいけるかな。もし少しでも痛かったら言ってね」
 ちゃんと解し直すからと言われながら、ピトリと尻穴に濡れた感触が押し当てられた。
「んっ」
「キスした方がいい?」
「や、いらない」
 そう返して、深めの呼吸を意識する。彼のペニスより確実に細いのがわかっているのだから、身構える必要なんてないと自分に言い聞かせながら、体のこわばりを解いていく。
「挿れてくね」
「ん……っ」
 小さく頷けばぬるっと入り込む無機物に、尻穴が広げられるのがわかった。痛みはやはり感じず、抵抗少なくぬるると入り込んでくる質量に、腰の奥からぞわっと広がる何かで腕のあたりの肌が粟立つ気がする。つまりは、多分、気持ちがいい。
「痛くない?」
「ちょっと変な感じは、する。けど、痛い、とまでは感じない、な」
「今、一応ほぼほぼ根本まで入ってるけど」
「うん」
 そこまで長さがあるわけじゃない商品なので、根本まで入っていると言われてもそんなに圧迫感は感じない。ただ、ベニスを模したディルドと違って、アナル開発用と思われる形状をしているから、中のイイトコロってやつに当たっているのかも知れない。
 指で散々弄られていたときも痺れるように感じる箇所は確かにあって、でもあれは広げるのが目的だったから、そこを執拗に弄られたりはしなかった。あのとき、そこをもっと強く弄られていたら、果たして痛いと感じたのか、気持ちいいと感じたのか。未知すぎて判断がつけられない。
 先程は奥の方を突かれてじんわりとした痛みを感じたけれど、今はそんなに深い場所には到達していないのに、もっと手前側でじんわりとした小さな刺激を感じている。痛いとまでは思わないが、そこを強く刺激されたら痛みを感じそうな不安がある。
「スイッチ入れる?」
「うーん……」
 腹の中で動くのを試したいと言ったのは自分で、そのために突っ込んだというのに、即答は出来なかった。
「もうちょっと馴染むの待つ? それとも、俺が動かしてみてもいい?」
「ゆっくり、動かしてみて欲しい、かも?」
「わかった」
 じゃあ動かすねの言葉とともに、バイブを小さく前後される。
「ぁ……」
 小さな違和感が途端に大きくなる気がして、けれどやはり痛いとまでは言えない。
「痛い?」
「いや。けど、なんか、へんなとこ、当たる」
「それって……」
「ぁ、……んっ……んぁあっ」
 角度を変えて揺するように前後させつつこちらの反応を確かめていた相手が、少し強めに押し付けてきたそこが、間違いなくイイトコロだった。
 ピリっと電気が走るような刺激に、少し高めの声を上げてしまえば、すぐに押し付けていた力はなくなって安堵の息を吐く。
「前立腺、かな」
「多分。てかお前、自分の前立腺って、弄った?」
「弄ってない。知識だけ」
 どうやらそこまで自己開発は進んでなかったようだ。というか、自身の前立腺がどこか、まだ見つけられていないらしい。
「で、どんな感じ? 噂通りすごく気持ちよくなれそうな感じ?」
「気持ちいいより、まだ違和感のがすごい。刺激が強すぎるっていうか」
「じゃあ、スイッチ入れるのはやめとく?」
「うーん……」
 せっかく試したくて突っ込んだのに、という気持ちでやはり迷ってしまう。
「とりあえずスイッチ入れてみて、無理そうならすぐ切ればいいんじゃない?」
「じゃあそれで」
「このままいいとこ、当たるようにしてスイッチ入れるけど、いい?」
「いい。けどちょっと待って」
 覚悟を決めるからと言えば、面白そうに笑われてしまった。想定してた玩具プレイと全然違うとかなんとか。
 さっきは、想定してたのと全然違うセックスをしたと言って呆然としていたのだから、彼の想定通りに行くほうがきっと稀だ。まぁこちらとしても、想定してたよりも不穏な気配になっているのだけど。
 たいして何も感じず、こんなもんかと終わるか、あっさり気持ちよくなって、さすが性玩具と思わされるか、そのどちらかかと思っていた。

続きました→

 
 
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