ダブルの部屋を予約しました3(終)

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 多分消極的というよりは、もの凄く優しくて、かなり相手へ気を遣うタイプなんだと思う。気を遣いすぎてタイミングを逃したり、相手を気遣って強引にことを運んだりは決してしないけれど、でもわかりやすく踏み込んで欲しい気持ちを見せれば、躊躇わずにちゃんと踏み込んできてくれる。じゃなければ自分たちは、恋人なんて関係になれたはずがない。
 ただ、はっきりと示したこちらの好意に、優しい気遣いで応じてくれているのではと、疑う気持ちはないわけじゃなかった。他に恋人が居たわけじゃないから、こちらの精一杯の誘いに、乗ってくれたんだろうと思う。
 だからこそ、相手の苦手とするだろうことを押し付けてはいけないし、彼がこの気持ちに応じてくれたことを、酒の席で盛り上がるだけのネタだった旅行をこうして実現してくれたことがどんなに嬉しいかを、自分からもしっかり伝えたいと思っているのに。恋人になってくれてありがとうって気持ちを、こんなに好きだって気持ちを、この旅行でもっと伝えたいと思っているのに。そして彼にも、恋人になって良かったって、少しでも思って欲しいのに。
 初っ端からチェックインを代わってもらって、落ちた気持ちを慰められて、そういう所が本当に好きだし、それが嬉しくてたまらないのに、こんなこと続けたらすぐに愛想を尽かされるって不安がつきまとう。
「まだ不安そうだなぁ。あー、じゃあ、俺の話をしようか。ダブルの部屋予約したって聞いた時、ツインの部屋にチェンジしたほうが良いんじゃないかって、言わなかったろ? だからもし変な目で見られるような事があっても、それはお前だけのせいじゃないから。旅行に浮かれて思わずダブルの部屋取ったってなら、俺は、それが嬉しい」
 大丈夫だよと言いたげに、そっと伸ばされた手がふわりと頬に当てられて、それからゆっくりと、何かを伺うように顔が近づいてくる。了承を告げるように瞼を下ろして、軽く触れるだけのキスを受け取ってから、自分も勇気を出して相手に手を伸ばした。
 ぎゅっと抱きつけば、すぐさま相手もしっかり抱き返してくれる。
「好き。大好き。すぐ不安になってごめん。なのにいっぱい慰めてくれてありがとう。そういうとこ、ホント、好き。旅行も本当に楽しみで、浮かれすぎてこんな部屋取っちゃったけど、ホントに嫌じゃない? 俺に気を遣ってダブル嫌だって言わなかっただけじゃないよね?」
「嫌じゃないよ。旅行中毎晩一緒に寝れるなんて、最高だろ?」
「うん。最高。だから、もし誰かにちょっとくらい変な目で見られたって、全然平気」
 こんな風にギュッと抱きしめられながら寝たり出来るのかなって考えると、気持ちがフワフワしてしまう。でも、抱きしめて寝てくれる? なんて聞くのはさすがに出来なくて、代わりに手を繋いで寝て欲しいなと、少し控えめに言ってみた。
「えっ、手?」
 しかし、あまりに驚かれて焦る。
「え、えっと、ダメだった?」
「いやいやいや。ダメじゃないけど、手繋ぐだけでいいの、っつーか」
「あ、ああ、あと、抱っこ? 抱っこして寝てくれたりも、したり、するの?」
 慌てすぎて何やら口から零す単語がオカシイ。オカシイのは単語だけじゃないけど。
 それは相手も思ったようで、抱っことか可愛すぎかよなんて呟きを拾ってしまったものだから、顔が熱くなっていく。
「あ、のさ。あちこち行きたいとこあるのわかってるし、無理させるつもりないけど、一応、もうちょいエロいこともする想定で準備してきてるから。その、どの程度までならしていいか、少し、考えてみて欲しい、かも」
「あ、ああああ、うん、あー、うん。そう、だね。だよね」
 男同士でダブルの部屋を予約する意味に、チェックイン直前まで思い至らないようなポンコツな頭は、恋人との初めての旅行で、自分からダブルベッドの部屋を予約するって意味も、どうやら全くわかっていなかったようだ。
 とはいえ、相手がそういうことを期待して準備してきたなんて聞いてしまったら、しないなんて選択肢はないに等しいけれど。

 
 
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ダブルの部屋を予約しました2

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※ 視点が予約を入れた側に変わっています

 意気込んでダブルの部屋を申込んだことを後悔したのは、チェックインのときだった。フロントで名前を告げて鍵を受け取らなければならないのに、この二人がダブルの部屋にと思われることを、思いっきり躊躇してしまった。男二人でダブルの部屋を予約したことを、咎められたりしないかって、不安になってしまった。
 そんなこちらの躊躇いに気づいたのか、お前はロビーの椅子で待ってなよと言い残して、恋人が一人でフロントへ向かっていく。酷く安堵しながらも、言われるまま彼任せにしてただただ待っている自分が、かなり情けなくて泣きそうだった。
 せっかく誘ってもらったのだから、この旅行ではもう少し、自分からもちゃんと動こうって、そう決めてきたはずなのに。彼の方が自分に比べたら少しだけ積極的というだけで、彼だって相手をグイグイ引っ張っていくのが得意なタイプじゃないと知っているのだから、その彼におんぶにだっこでアレコレして貰っていたら、早々に相手が疲れて愛想を尽かされるのなんて目に見えている。
 あっさりと鍵を受け取って戻ってきた彼は、どうやらすぐさまこちらの沈んでしまった気持ちに気づいたようだけれど、どうしたのと聞いてきたのは部屋に入ってある程度落ち着いてからだった。
「さっきはゴメン。この部屋予約入れたの俺なのに、チェックインしてくれて、ありがとう。あの、何も、言われなかった?」
「何も、ってどんな事を? 食事についてとか簡単な案内はされたけど、そんなの定形の説明だろ?」
 どうやら相手は、こちらが何を不安に思ってあの時足を止めてしまったのかまでは、気づいていないらしい。
「えっ……と、その、男二人でダブルの部屋取ってて、変に思われてなさそうだった?」
「あー……いや別に。変な目で見られた感じはなかったけど、俺、そういうとこは鈍いから。気にしてたのそれなら、俺がチェックインで正解だろ」
 大丈夫だよと言ってくれるけれど、そう言ってくれるからこそ、申し訳ない気持ちが膨らんでしまう。
「ほんと、ゴメン。なんでダブルの部屋なんて予約入れちゃったんだろ。男二人でダブルなんて、普通に考えたら、絶対おかしいってわかるのに。浮かれてダブルの部屋なんて取ったの、ちょっと、後悔してる」
「ちょっと待て。サイト経由で予約してんだから、男二人で利用するってのは事前にここだって知ってたはずだろ? 男二人でダブル利用がダメだってなら、事前になんだかんだ理由つけて断ってくるか、ツインの部屋を使ってくれって提案があってもいいはずだ。何も言われてないし、俺が鈍いだけとしたって変な目で見られてる感じもなかったから、意外と男二人でダブルの部屋使う客も居るのかもしれないだろ。だからおかしいって決めつけるのはやめないか?」
 一生懸命こちらの沈んだ気持ちを晴らそうと言い募ってくれるのが嬉しい。そう言われれば、確かにそうだなって思えるし、あまり気にすることではないのかもしれない。
 自分たちは好みや興味の対象が割と近くて、互いに相手の懐にガンガン入り込むような図々しさがない安心感があって、似た者同士だから惹かれ合った部分は確かに多い。それは彼自身も認めている。
 でも自分が彼に惹かれるのは、似た者同士という安心感などではなかった。惹かれているのは、同じように消極的でありながら、自分とは違って物事を前向きに捕らえる、彼の明るく朗らかな性格だ。つまり、似た者同士でありながらも間逆な部分にこそ、惹かれている。

続きました→

 
 
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ダブルの部屋を予約しました1

 恋人という関係になる前から、いつか一緒に行きたいね、という話はしていた。どうせ行くならせめて3泊はしたいし、出来ることなら一週間くらい滞在して、その地をあちこち巡りたい。
 なんて話に花を咲かせていたものの、互いに仕事があってそれぞれ繁忙期も違うので、なかなか実現することはなかった。半分くらいは酒の席での社交辞令というか、お互いそこまで本気で言ってるわけじゃないと思っていたのもあると思う。
 どっちも我が強いわけではないというか、互いに、もし相手が本気で誘ってきたら考えてもいい、程度に思っていた節はあると思う。相手か自分のどちらかがもっと強引に、スケジュールを調整するよう促し具体的に予定を立ててしまえば、もっと早くに、友人同士の旅行としてその地を訪れていた可能性は高そうだ。
 ただ、酒を飲みながらいつか行きたいという夢をだらだらと語るだけでも、それはそれで楽しかったし、同じものが好きだったり興味を持っていたりする相手への好意が育つのは簡単だった。恋人になってから聞いて知ったが、それは相手も同じだったらしい。
 自分たちは、多分、かなり似ている。
 何度となく、いつか一緒に行きたいと口にしていた旅行を本気で誘えなかった、かなり積極性に欠ける自分たちが、好意を晒して恋人になりませんかと誘えるはずはもちろんなかった。
 たとえばどちらかが女性だったら、もう少し話は別だったかもしれない。いつか一緒に行きたい、なんて話をノリノリでされるだけで、はなから恋愛対象として見てしまっていた可能性が高いし、男としてもう少し積極性を出すことを考えていただろうとも思う。まぁ、なに勘違いしてるのと笑われるのは怖いから、相当慎重に見極めるための時間を必要としただろうし、男女だったらもっと簡単に恋人になれたはずだ、なんてことは全く思っていないけれど。
 むしろ、男同士だったからこそ、積極性のない二人でもなんとか恋人になれたんじゃないか、という気がしないこともない。結局のところ、自分たちが恋人になれたのは、酒による失態という面が大きい。もしどちらかが女性なら、お互い、深酒をしての失態なんて晒さなかったはずだ。
 あの日彼は、育った好意が漏れ出ないように必死で気持ちを押さえ込みつつお酒を飲んでいたようで、珍しく悪酔いして吐いてしまった。これは相手の方がこちらより酒に弱かったと言うだけで、体質的にもっと飲めるタイプだったなら、吐いたのは自分の方だっただろう。つまり自分も相当、その時点で酔っていた。気持ちを押さえ込んで飲んでいたのは、こちらも同じだった。
 そんな酒で鈍りきった判断力により、その後自分たちは目についたラブホでご休憩し、それが結局ご宿泊になって、結果、翌朝には彼と恋人となっていた。
 ただし、一欠片だってあの日のことに後悔はない。育った好意を持て余すほど、いつの間にかこんなにも好きになっていた相手と、恋人になれて嬉しくないはずがない。
 ただまぁ、自分の消極性を情けなく思う気持ちはあるし、せっかく恋人になったのだから、もう少し積極性を出したほうがいいんじゃないかって、考えても居た。
 だから、今度こそ一緒に旅行をという話を本気で実現しようと思って、どうにか休みを調整できないかと、相手に話を持ちかけた。相手さえ休みが取れたら、こちらは何が何でも休みをもぎ取る気でいた。
 話はトントン拍子に纏まって、めちゃくちゃ喜んでくれた相手に、随分とホッとしたのは一週間ほど前になる。
 日程が決まったので、後は宿泊先のホテルをどこにするかとか、何を使ってその場所へ行くかなどを相談していたのだが、ホテルの予約は自分がと言ってくれた相手に、ありがたいと思う反面、ほんの少し違和感というか、珍しいなと思ったのは確かだ。宿の予約程度で、なんだか随分と意気込んでいるように思えたからだ。
 普段利用しているサイトのポイントだとか、そういう関連かとも思って、そこまで気にしてはいなかったのだけれど、彼が意気込んでいた理由は、もしかしてこれだろうか。
 手元の携帯には、予定していた宿の予約が済んだという連絡と共に、部屋はダブルで申し込みましたという一文が添えられている。
 決定事項だ。
 ダブルしか部屋が空いてなかった結果だとしたら、その前段階で、ダブルでもいいですかと聞いてくるはずだから、これは間違いなく彼自身の選択だと思う。
 たしかに自分たちは恋人で、恋人になってまだまだ日は浅いものの、既に数回、体の関係を持っても居る。だから特別ツインに拘る必要はないし、ダブルベッドで一緒に寝るのは構わない。構わないんだけど。
 この部屋の選択に、旅先でセックスしようという誘いが本当に含まれているのかどうか、皆目見当がつかない。
「いや、これ、お前、あちこち巡ろうって話、どうすんだよ……」
 もし体を繋げるような行為をしてしまったら、経験上、翌日あちこち巡れる元気はきっとない。
 思わず零した独り言が、静かな部屋に落ちて消えた。

続きました→

 
 
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出張に行くとゴムが減る

 恋人と一緒に住むようになって2年と少しが経過した現在、仕事の部署が変わって出張する機会が増えた。
 最近、買い置きのコンドームの数の減りが早い気がする。なんてことを思ったのは確か半年くらい前で、出張から帰ってくると減っているのだと確信したのは今日だった。
 出張から帰ると、寂しかったとか言って抱かれたがる事が多いけれど、この事実を確信してしまった今、素直に彼の求めに応じてやれるのか自信がない。
 付き合いもそこそこ長いし、お互い年を取って落ち着いたとも思っているし、職場での責任やら何やらも年々増えていくしで、確かに体を繋ぐ回数は減っていると思う。出張後に寂しかったなんて言って、相手から積極的に誘ってくれるのは、正直ありがたいとも思っている。でもどうしたって浮気を疑ってしまうし、求めてくるのは罪悪感からかもと思う気持ちもあるし、まさか浮気相手のセックスと比較されてるんじゃないかと下世話な想像までしてしまう始末だ。
 浮気なんてするはずがないと言い切れないのも、回数が減っている自覚があることと、相手に求めさせている事実があるせいだと思う。
 想いが減ったわけじゃない。今も変わらず相手を想っているし、これからも側にいて欲しいと思うし、このまま一緒に暮らし続けたいとも思っている。ただ、想いが減ってはいなくても、変化はしていると思う。昔ほどガツガツと相手を求めなくなったというか、もう少し穏やかな気持ちで相手を求められるようになったというか、つまり大人になったのだと、自分では思っていたのだけれど。
 ただ、そう思っているのが自分だけという可能性はある。昔と同じように、抱き潰すほどの激しさで求められたいと、相手が思っていないとは言い切れない。
「何か、不満があったりとか、あるか?」
 思った通り、今日は久々に抱かれたいと甘えてきた相手をベッドに押し倒して、キスをして。けれどそのまま抱くことは、やっぱり出来そうになかった。
 結局、両腕の間に横たわる相手を見下ろして、そんな間の抜けた質問をしてしまう。だってコンドームの数が合わないってだけで、それ以外に疑わしいことがあるわけでもなく、いきなり浮気してるのかなんて聞けるわけがない。
「不満? なんで?」
「出張から帰ると、抱いてって言われること、多いから」
「それは寂しかったからだけど、もしかして、誘うの迷惑だった? というか、出張で疲れてるかもとか考えてなかった。ゴメン。無理してしなくて、いいから」
 申し訳なさそうに言い募る相手に、こちらが申し訳ない気分になる。
「いや、疲れてるとか迷惑とかじゃなくて」
「じゃあ、何?」
「なんで、出張後にばっか誘われるんだろうって、思って」
「そ……れは……」
 動揺したらしく、視線が迷うように泳いでいる。やっぱり出張中に何か、あるんだろうか?
「出張中って、何してんの?」
「は? えっ?」
「確かに回数は増えたけど、だいたいいつも数日の出張だろ。今回だって、二泊しかしてない。で、そんなにすぐ、寂しくなるもんなのかなって、思って」
「それは、……それは、その、……」
 少しばかり青ざめながら、そのくせ目元だけは赤く染めて、言葉を探している。まさかちょっと出張中の様子を尋ねただけで、こんなに動揺させることになるなんて思ってもみなくて、こちらも内心大いに慌てていた。というか、もう、黙ってられそうにない。
「確信してるから言うけど、俺が居ない間に、ゴムのストック使ってる、よな?」
「う、ぁあああ、待って。待って。確信してるって、え、ちょ、何言って」
 大慌てで声を荒げる相手を前に、逆にこちらの気持ちはどんどんと冷えていく。知られたくなかったんだって、知られたら困るんだって、その事実に胸が痛い。
「少し前から疑ってた。ゴム、減るの早くないかって。で、俺が出張に行くと減るんだって、今回ので確信した」
「あー、ああー、そっか。うん、その、ゴメン。ごめんなさい。その、怒って、る?」
「怒るっていうか、悲しい、かな」
「ゴメン。ごめん。ただ普段は一緒にいるから、そんなことする暇も必要もないっていうか、一緒に寝てたら、そんな気もなかなか起きないっていうかで。お前が嫌なら、もう、しないから。我慢する。けど、出張から帰ったら、やっぱりなるべく抱いてほしい」
 寂しいのは本当だよと言い募る相手の言葉に、嘘はないと思う。
「もうしないってなら、これ以上咎めないけど。でもどうしても気になるから、相手だけ、教えて。俺も知ってるような人? まさか出会い系とか使ってないよな?」
「は?」
 あっけにとられた顔をしたかと思うと、相手は徐々にその眉を吊り上げて、あっという間に随分と不機嫌そうな顔になった。
「まさかと思うけど、浮気したと思ってる? お前が家に居ない間に、誰か別の男をこの家に入れたって、思ってんの?」
「違うの?」
「違うわっ! つか、そういう心配されてたのは、さすがに心外っつうか、心折れそうなんだけど……」
 うわー最悪と嘆きながら、相手は目元を腕で覆ってしまう。もしかしたら、少し泣かせてしまったのかもしれない。
「じゃあ、なんでゴムの数、減ってんの?」
「それ、俺が言わないと、わかんないの?」
「わかんないから聞いてる」
 やがてか細い声が、一人でするのに使ってると、震えながら伝えてくれたから、そこでようやく、本当に酷い誤解をしていたことに気づいた。
 謝りまくって許してもらって、その後めいっぱい可愛がったから、相手の機嫌もすっかり元通りなのだけれど、最中言っていいのか迷いながらどうしても言えなかったことが一つある。今回は言えなかったけれど、でもきっと近いうちに、言ってしまいそうな気がしている。
 お前のアナニー見てみたいって言ったら、相手はどんな顔を見せるだろう?

 
 
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18歳未満の方へ

一部18禁ブログと言いながら、18禁作品とそうでない作品をそのまま雑多に並べてあり、18歳に満たない方たちへの配慮がまるでない作りだったことを反省し、このページを作りました。
ここに私基準ではありますが、これは18禁ではないだろうと思われる作品へのリンクを並べますので、18歳を過ぎるまではこのページに載った作品のみ楽しんでいただければと思います。
5/15 コネタ・短編「エイプリルフールの攻防」に1年後のオマケ小ネタ追加

<1話完結作品> *右下に行くほど古い作品
大事な話は車の中で  大晦日の選択  捨て猫の世話する不良にギャップ萌え、なんだろうか  ずっと子供でいたかった  離婚済みとか聞いてない  初恋はきっと終わらない  今更エイプリルフールなんて  好きって言っていいんだろ?  カレーパン交換  ツイッタ分(2020年-2)  ツイッタ分(2020年-1)  あの日の自分にもう一度  ツイッタ分(2019)  禁足地のケモノ  お隣さんが気になって  間違ってAV借りた  ツイッタ分(2018)  結婚したい相手はお前  ときめく呪い  昔と違うくすぐり合戦  兄が俺に抱かれたいのかも知れない  ただいまって言い続けたい  親友に彼女が出来た結果  週刊創作お題 新入生・再会  60分勝負 同居・灰・お仕置き  いくつの嘘を吐いたでしょう  ヘッダー用SS  出張に行くとゴムが減る  ゴムの数がオカシイ   チョコ味ローション買ったんだって  なんと恋人(男)が妹に!?  卒業祝い  120分勝負 うっかり・君のそこが好き・紅  バレンタインに彼氏がTENGAをくれるらしい  青天の霹靂  初めて抱いた日から1年  叶う恋なんて一つもない  墓には持ち込めなかった  呼ぶ名前  酒に酔った勢いで  思い出の玩具  兄の彼氏を奪うことになった  俺を好きだと言うくせに  夕方のカラオケで振られた君と  死にかけるとセックスがしたくなるらしい  草むらでキス/戸惑った表情/抱きしめる/自分からしようと思ったら奪われた  ハロウィンがしたかった  引っ越しの決まったお隣さんが親友から恋人になった  戸惑った表情/拘束具/同意のキス  夕方の廃ビルで


<コネタ・短編> *下に行くほど古い作品

煮えきらない大人1 → 煮えきらない大人2 → 煮えきらない大人3(終) 年の差。カフェ店員×学生(視点の主)で両想いなはずなのに恋人になれない話。
片想いが捨てられない二人の話1 → 片想いが捨てられない二人の話2(終) 教師と元生徒で受け二十歳の誕生日前日にそれぞれ悶々としてる話。受け視点 → 攻め視点
意気地なしの大人と厄介な子供1 → 意気地なしの大人と厄介な子供2 → 意気地なしの大人と厄介な子供3 → 意気地なしの大人と厄介な子供4 → 意気地なしの大人と厄介な子供5 年の差。叔父の友人を酔って誘ってみたけど応じてもらえなかった大学生の話。受け視点 → 攻め視点 → 受け視点。
秘密の手紙 → 君の口から「好き」って聞きたい1 → 君の口から「好き」って聞きたい2 両片想いだった高校同級生。攻め視点 → 受け視点。
感謝しかないので → 酔っ払いの戯言と笑い飛ばせなかった
義理父子。息子視点片想い話と、父視点告白され話。
罰ゲームなんかじゃなくて1 → 罰ゲームなんかじゃなくて2
周りの友人に囃し立てられながら告白したら、罰ゲームと思われてOKされてた話。
勝負パンツ1 → 勝負パンツ2 → 勝負パンツ3
遠距離恋愛中の恋人に、勝負パンツならこういうの穿いてと言ったら、本当にフリルのパンツを穿いてきてくれた話。
彼女が出来たつもりでいた1 → 彼女が出来たつもりでいた2 → 彼女が出来たつもりでいた3 → 彼女が出来たつもりでいた4(終)
社会人(視点の主)と大学生。彼女だと思ってた相手が女装男子だった話。
何も覚えてない、ってことにしたかった1 → 何も覚えてない、ってことにしたかった2(終)
会社の後輩×先輩(視点の主)。酔って何も覚えてないってことにしたかったけど、後輩が意外と色々覚えてたから逃げられなかった話。
女装して出歩いたら知り合いにホテルに連れ込まれた → 友人の友人の友人からの恋人1 → 友人の友人の友人からの恋人2(終)
童貞拗らせて女装してみた受とそれをナンパした知り合いな攻。2話目からは視点が変わります。
兄弟ごっこを終わりにした日 → 兄弟ごっこを終わりにした夜
10歳違いの腹違い兄弟。両親死亡で兄が保護者中。弟が18の誕生日に告白してくる話。受攻未定。
ダブルの部屋を予約しました1 → ダブルの部屋を予約しました2 → ダブルの部屋を予約しました3(終)
付き合いの浅い、割と消極的な社会人二人のカップルが、初めて旅行をする話。
フラれた先輩とクリスマスディナー → フラれたのは自業自得1 → フラれたのは自業自得2(終)
大学サークルの先輩後輩の話。1話目後輩視点。2話目から先輩視点。両片想いから恋人になるとこまで。
好きだって気付けよ1 → 好きだって気づけよ2(終)
一卵性双子兄弟で兄視点。弟が自分のふりして自分の彼女と会ってる事に気づいちゃった話。
ベッドの上でファーストキス1 → ベッドの上でファーストキス2(終)
兄弟で弟視点。ベッドに潜り込んでくる兄を意識しちゃう弟と弟が好きな兄の実は両想いだった話。
結婚した姉の代わりに義兄の弟が構ってくれる話1 → 結婚した姉の代わりに義兄の弟が構ってくれる話2(終 
母代わりだった姉が結婚して家に一人になった視点の主を、義兄の弟が構いに来てくれる話。恋愛要素かなり薄い。女装有。
憧れを拗らせた後輩にキスを迫られたので1 → 憧れを拗らせた後輩にキスを迫られたので2(終)
割とタイトル通り。最終的には脳筋な視点の主が後輩に期待させちゃう話。
エイプリルフールの攻防 → エイプリルフールの攻防2 → エイプリルフールの攻防3 → エイプリルフールの攻防4(終) → エイプリルフール禁止
4月1日だけ好きって言ってくる普段は仲の悪い相手に惚れちゃった話。
太らせてから頂きます → 太らせてから頂きます2(終
大学の先輩後輩。いっぱいご飯奢られてたけど、先輩が太らせたかったのは体じゃなくて心だったって話。
常連さんが風邪を引いたようなので1 → 常連さんが風邪を引いたようなので2 → 常連さんが風邪を引いたようなので3
飲食店店員とリーマンで3つのお題に挑戦。気になる常連さんが風邪を引いたのをキッカケに恋人になる話。
雄っぱいでもイケる気になる自称ノンケ1 → 雄っぱいでもイケる気になる自称ノンケ2(終)
高校の先輩後輩。おっぱい星人な先輩が筋トレマニアな後輩の雄っぱいが忘れられなくなる話。
寝ぼけてキスをした → キスしたい、キスしたい、キスしたい → あと少しこのままで 
大学生とその従兄弟。年の差14。従兄弟の家に同居中、寝ぼけた従兄弟にキスされて意識するようになる話。意識してるけど恋にすらなってない、めちゃくちゃ中途半端な所で終わってます。
彼の恋が終わる日を待っていた → 告白してきた後輩の諦めが悪くて困る
高校時代の部活の先輩後輩関係。現在は社会人。後輩→先輩(元副部長)→先輩の幼なじみで親友(元部長) 元部長が結婚したので、後輩が先輩を落としにかかる話。


<シリーズ物> *下に行くほど古い作品
オメガバースごっこ(全17話)
キャラ名なし。「ここがオメガバースの世界なら」続編。双方が両想いに気づくこと・ヒート(発情期)・巣作りの3つを消化したかっただけ。
ここがオメガバースの世界なら(全16話)
キャラ名なし。隣に住む同じ年の幼馴染で高校生。受けは腐男子。もしオメガバースの世界なら自分たちは番。と認識した後、恋人になるまでの話。
俺が本当に好きな方(全6話+番外編1話)
高校生の祐希が親友の隆史とその弟悟史の間で揺れ動く三角関係。隆史と恋人エンド。
あの日の自分にもう一度(全8話)
もう一度女装がしたい大学生の春野紘汰(視点の主)と、その友人でメイクが出来る今田龍則。「理想の女の子を作る遊び」という秘密を共有する仲へ。
兄の親友で親友の兄(全12話)
キャラ名なし。兄を好きな兄の親友かつ親友の兄でもある男に相互代理セックスの誘いを掛けた結果、最終的には両想いの恋人になる話。

 
 
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ゴムの数がオカシイ

 先週末は恋人の家にお泊りして、当然のように抱かれたのだけれど、あの日ベッドの中で一瞬感じた違和感の正体がわかったのは、週も半ばを過ぎてからだった。
 ずっとなんだかモヤモヤとして、恋人に対する不信感のようなものが胸の中に巣食っていた。でも思い返しても思い返しても、あの日の彼に、普段と違う様子なんてまるでなかったから、自分は一体何をそんなに不安がっているんだろうと思っていた。
 原因はどうやら、あの日彼が新しく開封したコンドームの箱らしい。時々面白がって、どこからか変なコンドーム(イボがついてたり香りがついてたり、時には味までついてたりする)を調達してくることもあるけれど、基本的には使っている銘柄はいつも一緒だ。今のところそれが一番お気に入りってのは知っているし、あの日開けた箱もいつも通りの同じ箱だった。
 なのになぜそれが原因かと言えば、問題はコンドームの数だった。新しいものを開けるということは、使い切ったということだ。一箱12個入りだけど、前回新しいのを開けてから、どう考えてもそんなに使っていないと思う。
 少し忙しい日々が続いて、なかなか会えなかったから尚更、そこまで減っている事がオカシイとしか思えない。オカシイというか、つまり、他の誰かに使ったんじゃないかという、疑惑だ。
 浮気なんてするタイプじゃないと思ってるし、そこそこ長い付き合いの自分たちの間で、相手の隠しごとに気づかないなんてことはあるだろうか。それとも、付き合いが長いからこそ、本気で隠されたら気づけないって事なんだろうか。
 最近は関係も安定していたから、こんな風に相手を疑って気持ちを揺らす事が久々だった。でもどうせ週末はまた会うんだし、その時にでも軽く聞いて確かめればいい。
 なのに恋人の家を訪れて、玄関先で顔を合わせた瞬間から、ビックリするほど気持ちが激しく揺れてしまった。あっさり涙目になったものだから、こんな自分を目にした相手も相当驚いている。
「は? え? どした? なんか会社で嫌なことでも起きてんの?」
「そ、じゃな……」
「ああ、うん、話は聞くから。とりあえず玄関じゃなくてリビングまでは行こ。お茶淹れるから、座って、落ち着いて、ゆっくり話そ」
 心配げにそう促してくれる相手の優しさに、グッと胸をつまらせる。疑って申し訳ないって気持ちで一杯になる。でも、ちゃんと確かめないと、このままだと疑惑に自分が押しつぶされてしまうのも、もうわかる。
 浮気されてるかもってちょっと考えただけでこんな風に泣けるくらい、いつのまにか、こんなにも好きで好きで仕方がなかったなんて、知らなかった。しんどい気持ちの片隅に、こんな状態になっている自分自身に驚いている自分がいる。
「先に、寝室、行きたい」
「うぇっ!?」
 めちゃくちゃ驚いているのは、こちらが事前にシャワーを浴びたい派だってことも、抱き合う前に準備が必要だってことも、彼がちゃんと知っているからだ。
「今すぐ抱いてってんじゃなくて、ちょっと、確かめさせて」
「何を? てかまぁいいや。何か気になってんなら、お好きにどうぞ?」
 何の警戒もしていないところから、やっぱり浮気なんてしてるはずがないと思うのに、気づかれるはずがないって自信からかもと疑う気持ちが湧いてくるから、本当に自分の思考が嫌になる。
 ゴメンと一言呟いてから、真っ直ぐに寝室へ向かってドアを開けた。コンドームやローションがどこにしまわれているかは当然わかっている。引き出しをあけて、先日開封したばかりの箱を手に取った。
 箱を開けて、中身の数を確認する。やっぱり、あるべきはずの数よりも、足りない。
「あの、これ」
 手の中の箱を、相手に向けて突き出した。相手はわけがわからないという顔をしながらも、律儀に頷き、それがどうかしたかと、話の先を促してくれる。
「うん。それが?」
「数、オカシイ、よね?」
「は? 数?」
「そう、数。これ、この前新しく開けてた箱でしょ。で、あの日俺に使った数より、減ってる」
「あ? あー……ああ、なるほど? つまり、俺が浮気してるかもって?」
「まぁ、そう」
「お前、自分で抜く時、ゴム使わない派? というか使わないからこその、浮気疑惑だよな」
 こちらが何を疑って、涙目になったり寝室に突撃したりしてるかに気づいた相手は、困ったような、それでいて笑いをこらえているような、どうにも微妙な顔を見せている。
「自分で抜く時? って?」
「まんまその通りだって。オナニーする時、シーツや布団に垂らして汚すの嫌だし、後始末面倒だからゴム使ってすんだよね」
「は? え? マジで?」
「マジで。てわけで、浮気なんてしてないから安心して? てか浮気疑って心配になって、さっき泣きそうになってたのかと思うと、今すぐぎゅーぎゅーに抱きしめて、そのままベッド押し倒して抱き潰したいくらい可愛いんだけど」
 とうとうニヤニヤがおさまらないって感じに表情をがっつり崩してしまった相手に、こちらはいたたまれなさでいっぱいになりながら。
「抱き潰すのは、夜にして」
 言えば了解と言いながら伸びてきた腕に、先程の言葉通りぎゅーぎゅーと抱きしめられた。

 
 
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