好きって言っていいんだろ?

ツイッタ分2019年「一次創作BL版深夜の真剣一本勝負 第287回」 → ツイッタ分2020年−2「クリスマス」の二人です。

 クリスマスに呼ばれてから先、学校で渡されるのではなく、彼の家で菓子を振る舞われることもじわりと増えて、先月のバレンタインもチョコケーキを彼の家で食べた。
 バレンタインが日曜だったのもあるし、翌日だろうと学校でチョコ関連の品を渡すのはさすがに抵抗があるし、家ならラッピングや食べやすさを気にする必要がなく、盛り付けにだって凝れるから、というのが相手の言い分だ。
 特に予定もない日曜に呼び出されたって、こちらは菓子を振る舞われるだけなので、なんの文句もない。ただ、バレンタイン当日に、凝った手作りチョコケーキを躊躇いなく振る舞ってくる、というのをどう解釈していいかは難しい。
 学校で渡すのは躊躇われると言う程度には、バレンタインとチョコというものを意識してはいたようだけれど、チョコケーキそのものは多分家族向けに作ったもののお裾分けに違いなくて、自分のために用意されたなどと驕れる要素はほぼ皆無だったからだ。なんせ、皿に乗って出てきたのはカットケーキだったので。
 でも自信作という割には、こちらの様子をいつも以上に気にかけていたのが気になるし、めちゃくちゃ美味いと誉めたら嬉しそうにはにかんでいたのも気にかかる。気にかかると言うか、あれは期待したくなるような顔だった。相手ももしかしたら、恋愛的な要素を含んで、自分に好意を持っているんじゃないのか。
 解釈に悩むのは、自分の中に期待があるから。というのが多分一番正しいのだけれど、要は、彼は菓子作りが好きで彼の菓子を絶賛する自分に食べさせることを楽しんでいるだけ、というスタンスを貫き通すかどうかを迷っている。
 もっと言うなら、ずっと貰いっぱなしなので、ホワイトデーを理由にして、何かしら返そうというのは決定事項なのだけれど、そこに美味い菓子をありがとう以上の感情を乗せていいのかを迷っていた。
 あのチョコケーキに何かしらの意味があったなら、こちらだって躊躇うことなく想いを返せるのに。以前、自分の口から言ってしまった、好きなのはお前の作る菓子だけという断言や、そんな心配は必要ないとはっきり言われているせいで、期待からくる勘違いを疑ってしまう。
 結局迷いながらも、とりあえずでホワイトデー当日の予定を聞けば、マカロンを作るなどと返ってきて驚いた。ついでのように、月曜にお裾分けを渡すつもりだったが食べに来るかと言われれば、頷く以外ない。まぁ当日会えるのが確定したので良しとする。
 そうしてやってきたホワイトデー当日、用意したお返しを手に彼の家に訪れれば、手の中の荷物に気づいた相手が何だそれと問うてくる。そこそこの大きさがあって、しかも明らかにプレゼント用らしきラッピングがされていれば、気になるのは当然だろう。
「ああ、これはホワイトデーのお返し」
「え、僕に?」
「お前以外ないだろ」
 ほらやるよと、相手の胸にプレゼントを押し付けてやれば、開けていいかの言葉とともに、袋の口を閉じるように結ばれているリボンが解かれていく。
 ここはまだ玄関先なのだが、こちらをリビングだったり彼の部屋だったりへ案内する時間も惜しいらしい。待ちきれないのがありありと分かる、期待の滲んだ様子で中身を取り出した彼が、驚きと喜びとを噛みしめるようにして破顔するその一部始終を、こちらもつい、ジッと見守り続けてしまった。
「気に入ったか?」
「うん。それはもう」
 顔を見ればわかるし、そもそも彼が過去に「それいいな」と言っていたものを選んでいるのだけれど、それでも一応確認すればすぐに肯定が返った。
「じゃあ、使ってくれ」
 渡したのは、自分が使っているボックス型リュックと同型の色違いだ。
「ありがと。さっそく明日から使うよ。でもこれ使ったら、お揃いになるけど、いいの?」
「ダメならそれをプレゼントに選ぶとかしないだろ」
 むしろそれを狙っている部分もある。
「まぁそうか。てかさ、じゃあ返せとか言われても困るんだけど、これ結構値段するよね? チョコケーキ一切れに対して大げさじゃない?」
「それは、今まで結構色々貰ってきてるし」
「ああ、なるほど。いやでもまさか、お返し考えてくれるタイプと思ってなくて、どうしよう、なんか今、めちゃくちゃ感動してる」
「まぁ俺も、今、わりと感動してるような気もする」
 だってこれ、期待からくる勘違いだけじゃないだろ。プレゼントを渡してから先の、彼の一連の動作や表情や言葉に、嬉しくて仕方がないその様子に、彼にも同じ想いがありそうだと思ってしまった。
「え、何に?」
「俺、お前のこと、好きになったみたいなんだけど」
「え? は?」
「って言っても、大丈夫そうなことに、感動してる」
 お前も俺のこと好きだろ? とまでは続けなかったけれど、多分通じたのだろう相手の顔が、じわじわと赤く染まっていく。
「好きなの、僕の作るお菓子だけ、って言い切ってたくせに、ズルい」
「それは撤回するけど、ズルいってなんだよ」
「お菓子だけじゃなくて、僕自身に惚れさせて、あの言葉は撤回するね、ってやりたいのは僕の方だった」
「惚れさせて、ってとこまでは成功してるだろ。その結果がこれだろ」
「そうだけどそうじゃない。いやまぁ、先を越されて悔しい、くらいの意味だよ」
「そうか?」
 まだ他に何かありそうな気配に首を傾げてみたが、マカロンはもう出来上がってるから上がっての言葉に、そんな一瞬の疑問はあっさり霧散していった。

この2人は、どっちも自分が抱く側を主張して揉めるカップルになりそうな予感がしてる。ので、またそのうちうっかり続くかも知れない。

 
 
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