二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった26

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 口内に舌を突っ込むことはしなかったけれど、ただ触れて離れるだけはなく、吸って食んで舐めてを繰り返す。泣いて呼吸を乱す相手の口内に侵入するのを躊躇っただけで、もちろん、相手の呼吸が落ち着いたら深く触れに行くつもりではあった。
 しかしこちらが相手の唇を割って舌を伸ばすより先に、応じるように相手の舌が差し出されてきたので、完全に泣き止んではいないようだったけれども少しずつ触れ合いを深めていく。
 時折しゃくりあげるのに合わせて喉の奥が震えている。
「ぅ゛……ぁ、ぅっ……ん゛んっ……」
 先程よりも苦しそうなのに、口はしっかりと開かれていて、感じるだろう場所を舌先で弄り回しても、呻くだけで逃げる様子はやはりない。それを確認してから、そっと相手の肩を押して仰向けに転がした。
 一旦顔を離し、先ほどと同じように相手の体を挟むように両腕を突いて見下ろした先、赤くなった目を潤ませた相手は間違いなく期待と興奮とを滲ませている。
「もっとキスする? それとも、先、進むか?」
「それは、抱く、ってこと、ですか?」
「ああ、抱くよ」
「こいびと、と、して……?」
「そう。恋人として。それともまだ俺の恋人にはなれないって言う? 理由並べて俺を説得する?」
「そんなの……」
「言わないし、しない。だろ?」
「だって、出来る気がしない、ので」
「じゃあやっぱまだ、俺の恋人にはなりたくないな、って思ってるの?」
 確認すれば、小さな声がズルいと呟いたようだったけれど、わかっててやってるとはもちろん言わなかった。
「言えよ。恋人にしてって。大好きな俺に初めて貰って欲しいって。初めてだからうんと優しく抱いて、って」
 畳み掛けるように告げた言葉に、相手は一瞬唖然として、それから戸惑った様子で視線をあちこちうろつかせた挙げ句、逃げるみたいに顔を横へ向けてしまう。それを言う想像で照れているのか、じわりと頬が赤くなってもいた。
 ははっと小さな笑いをこぼしながら顔を寄せれば、そむけていた顔を戻してキスをちゃんと口で受け止めようとするから、どうにも可愛くて仕方がない。口に出して言えなくたって、行動が依然として好きだ好きだと訴えてくるのだから、もうそれでいいことにしてあげようか。
「恋人扱いで抱いて、いいよな?」
 ちゅっと軽く触れるだけのキスをして問いかける。もうこれに頷くだけでいいことにしようと思って。なのに。
「はい。俺を、恋人にして、下さい。そ、それで……あの、」
「大好きな俺に、初めて貰って欲しい?」
 言う気がある、もしくは認める気がある。というのを察して、再度先程の言葉を一部繰り返してみた。
「は、初めて、貰って欲しいし、初めてだから、や、優しく、して、下さい」
 おお言った。という感動のようなものはあるのだけれど、そこまで言ったなら肝心な部分も言って欲しいという欲が湧く。
「どうせなら、大好きな俺に、ってとこは飛ばさないで欲しかったんだけど」
「うぅっ、大好き、なので、そ、そろそろ勘弁して下さい、よ」
 恥ずかしいしいたたまれないんですけど、と言って、今度は顔を背けるのではなく両手で顔を覆ってしまった。だけでなく、仰向けていた体を横にして身を丸めようとする。逃げ隠れたくて仕方がないらしい。
「こらこら。せっかくそこまで言えたんだから、言われた俺のこと見ておかなくていいのか?」
「え?」
 横向きになろうとした肩を引いて再度仰向けに転がしながら告げれば、興味が湧いたのか顔を覆う手も外されたから、すかさず再度キスを一つ落としておく。しかし相手はどうやらこちらの顔を見つめるのに夢中だ。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった25

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「あんのクソババァ……」
 殆ど口の中だけで小さくつぶやいた後、大きく溜め息を吐き出した。
「親が結婚やら孫やらを期待してんのはわかってるし、それと真っ向から向き合って、結婚しないのを納得させようとはしてこなかったし、これからだって極力向き合うつもりはないけど、俺が結婚しないのはほぼ確だから」
「なんで?」
「親と向き合うつもりがない理由なら、納得させんのが面倒だと思ってるだけだけど。面倒っていうか、理解しないかもと思ってる」
 そこそこ稼いでて、その稼ぎをつぎ込みたいような趣味やらを持っているわけではないのに、嫁や子供に金を使いたくないから結婚しない、なんて理由が理解されるとはとても思えないからだ。
「あ、いや、結婚しないのがほぼ確なのは、なんで、なのかと」
 そっちか。というか彼には散々言ってきたはずなんだけれども。
「その気になる予定が欠片もないからだよ。っつーかケチだからだって何度も言ってる。稼いでようと貯め込んでようと、嫁や子供に使ってやる気がないし、それでもいいとかいう女を探す気もないし、まぁこんな事は起こるはずがないんだが、もし稼ぐ力のある女に種だけくれって言われたってお断りだからだよ」
「子供いらなくて共働き希望の女性でも?」
「ないな。多分、結婚って形で相手に対する責任が生まれるのが、そもそも嫌なんじゃねぇかな」
 共働きの予定でも相手の身に何かあれば助けなければならないだろうし、相手が働けなくなった場合にじゃあ離婚と即捨てられるわけじゃないのもわかっている。しかも結婚してしまったら、相手の親兄弟や親戚とも無関係ではいられないというのも知っている。
 金銭的な負担をこちらに一切かけない、というのが信じられるような相手が見つかるとは思わないし、だいたい相手にだって選ぶ権利がある。稼ぎがいいとか資産があるような女が、自分を選ぶ理由がない。
「子供いらねってなるのも、余計な責任背負いたくねぇのかも。まぁ、金使いたくないってのが大前提ではあるけど」
「余計な責任……」
「それより。俺が結婚しないのほぼ確なら、お前が俺の年齢気にして恋人になれないって言い張ってんのは撤回されんのか、てのが知りたいんだけど?」
「それは……」
「まだ何か無理な理由、あんの?」
「無理っていうか、俺を恋人にするメリットがわからない、です。俺を恋人にするのも、そこそこ余計な責任発生しませんか?」
「親にバレたらめちゃくちゃ面倒だな、とは思ってるけど、そこはバレないって前提にすれば、メリットはそこそこあるぞ」
「どんな?」
「まずお前を恋人扱いできる」
「いやそれ、俺が嬉しいだけで、あなたのメリットではないですよね?」
「いやお前マジに色々面倒くさいから、好きなのは勝手に理想化した過去の俺で、とか気にしなくていいし、好きだからただそばに居たいんです、みたいなのもまぁ、恋人ならギリ許容できそうな気がするし、期待するから優しくするなとか言ってビービー泣くのも、期待していいぞって言って気にせず甘やかしていい方が楽だし」
「ちょっ、待って下さい。それってメリットなんですか? てかなんでそんな俺を甘やかそうとしてんですか?」
 お前が面倒くさいから、なんて言ったせいなのはわかっているが、どことなく嫌そうに吐き出されてくる声は不審げだ。
「理想の恋人イメージがとか言ってるお前抱くより、俺が好きで俺の恋人になったお前抱くほうが絶対楽しいから、間違いなくメリットだろ。てかお前があんまり俺を好きすぎるから、間違いなく絆されてんだけど、いい加減諦めて甘やかされてくんない?」
 クシャッと顔を歪めるから、ああまた泣かせてしまったと思いながら、また胸元へ顔を押し付けられる前にその顎を取って唇を塞ぎに行った。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった24

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「いや俺、結婚する気なんてないんだけど……」
「今はそうでも、おばさんは期待してると言うか、あなたが結婚することも子供作ることも疑ってないし、あなただって、その気になれば相手は見つけられるでしょ?」
 スペック高いしなどと続くから頭が痛い。またわけがわからないことを言い出して、とはならなかったが、何を言い出しているんだと、今度はこちらが盛大に呆れてしまう。
「なんだよスペック高いって。至って普通の見た目で、はっきりケチで、恋人に金掛けたくないのが原因でふられて来たってもの教えただろ」
「だからその気になれば、って言ってるじゃないですか。稼ぎの良さと貯蓄の多さは高スペックって言われるんですよ。それにケチって言いながらも奢ってくれたし、このままヤれなかったらホテル代が無駄って言いながらも、このままヤラないで終わってもいいやって思ってるっぽいのにヤらせないならお金出せとか言わないし。婚活中によっぽど出し渋らなきゃ、ケチだって堅実って評価になりますって」
 相手の口調もいささか呆れた様子を呈しているが、さすがに余計なお世話も甚だしいとしか言えそうにない。ただまぁ、何に引っかかっているかはわかった気がする。多分。
「俺の稼ぎやら貯蓄額やらってのは、やっぱうちの母情報なの?」
 さすがに自分の母から相手の母へ伝わった話の又聞きとは思えない。
「えー……まぁ」
 気まずそうに視線が揺れたから、母からあれこれこちらの情報を引き出した、と考えるのが正解だろうか。
 給与や貯蓄額やらの詳細を知らせているわけではないが、親が不安にならない程度には稼いでいるし貯めてもいると教えていたし、その貯蓄をいつか家庭をもつ時のためにと親が誤解するだろう態度を取っていた自覚は確かにある。のらりくらりと親の期待を躱しながら、親が結婚やら孫やらを諦めるのを待てばいいという判断だ。
 欠片もその気がないと知られるのは面倒が増えそうだと思ったし、だから親に結婚する気がないと宣言する必要などないと思っていた。というか、今だってそう思っている。親がしびれを切らして追求でもしてこない限りは、極力結婚の意志がないことは隠しておくほうが無難だろう。
 恋人になるかも知れない相手が、自分より先に親からあれこれ聞いている、なんて状況があまりにイレギュラー過ぎる。
「一応確認するけど、うちの母に、俺の恋人の有無とか、結婚の意志とか、聞いてくれみたいなこと言われてないよな?」
「そういうのは、なかったです」
「そういうのは、てことは、俺の結婚絡みでやっぱ何か言われてる?」
「えー……いやぁ……」
 言葉を濁すので、間違いなく何か言われてはいるようだ。一体何を言ったのか、正直聞きたくない気持ちもでかいが、これは聞かないわけにいかないだろう。
「なんか変なこと言ったっぽいな? で、何言った? いったい何聞かされた?」
「でも冗談みたいな感じだったし、チラッと言われただけで本気じゃなかったと思うし」
「冗談でも言っていいことと悪いことってあるだろ。てかマジになんか相当ヤバいこと言ったの?」
「あー……その、大学とかバイト先にいい子居ないか、みたいなことを、ほんと、チラッとですけど」
 どうやら、稼いでるし貯め込んでるし若いお嫁さんが来たら絶対大事にすると思う、的な事を言ったらしい。年の差オッケーな代わりに専業主婦狙いの子とか、などと具体的な話も出たようだから、それはちっとも冗談じゃなくてかなり本気じゃないのか。
 というか結婚予定の彼女がいる的な嘘は、さすがに見破られていたようだ。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった23

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 わかりやすく順番に話してくれというこちらの要望に、沿ってくれたのかも知れない。
「別に他に付き合いたい相手がいるわけでなし、お前が俺を捨てる気になるまで待ってやるつもりだけど、って言ったら?」
 俺からはふらないって思ってくれていいよと付け加えてやる。なのに、喜ぶような様子は欠片もなく、むしろ呆れられた気配がする。
「だから年齢考えてくださいってば。あなたクズだよとか言いながらも優しいから、本気で俺の気が済むまで付き合ってくれそうで、そんなの困るんですよ。というかあなたこそ、俺をつけあがらせるし、そんな俺に付け込まれること考えてくださいよ。さっきのあなたじゃないですけど、どこまで先のこと考えて言ってんですか、それ」
 数ヶ月も付き合ってやれば飽きるか幻滅するって思ってませんかと言われたけれど、数ヶ月で相手からもう終わりにしようと言われるならそれでもいいし、逆にだらだらと何年も続いたとしたって別に構わなかった。正直にそう伝えれば、やっぱりまた、ちっとも年齢を考えてないと返された上に、二十歳の彼と一回り以上年上の自分とでは、一年の価値が違うだろうとまで言われてしまう。
 まるでこちらの一年のほうが貴重だという口ぶりだけれど、普通は若い子の一年のほうが貴重なはずなのに。年齢差があるお付き合いの場合、大抵は年上側が若い子のいい時期を食い潰している、的な見方をされるものなはずだ。
「一年の価値が俺とお前で違うってのはわかるけど、それと俺の年齢がどう絡んでんだかわからねぇよ。俺がお前に付き合って自分の時間を無駄にするんだとして、それをお前が気にする必要ある? 逆に俺は、お前の貴重な二十代をケチなおっさんに付き合わせようとしてるんだけど? こんだけ年齢差あって、普通に仕事してんだから金だって本気でないわけじゃないけど、お前相手に金銭的な優位を利用する気がないってのは、お前の俺が好きって気持ちがなかったら成立しない関係だぞ。というか、たいした金出さずに若い体抱かせてもらうんだから、時間くらい好きに持ってけば?」
 時間くらい好きに持って行けと言ったところで、こちらにも仕事やらがあるのでそうそう相手に時間が割けるわけではないけれど、やらせてくれないなら会う必要がないと思うほど性欲に支配された思考は抜けているから、ただ一緒に居たいだけなどという理由で傍をうろつかれても受け入れてやれると思う。もちろん枯れたわけじゃないので、やりたい気持ちになった時に断られるというのが続くのは困るが、現状そうなる可能性は低そうだとしか思えない。
「もし俺が女の子だったら、あなたの言い分にも納得、できるんですけど……」
 黙って聞いていた相手が、先程までの呆れた様子から一転して、苦しげな声を絞り出すからドキリとして息を飲んだ。
「若いって言ったって、男の俺にそこまでする価値、ないですよ。付き合ったって結婚できないし子供も産めないし。年齢的にそろそろ後がないんだから、俺なんかに付き合って時間無駄にするべきじゃないです」
 一人息子なんだから、と続いた言葉に、ようやく彼が気にする年齢の意味が理解できた気はしたが、こんなに何度もケチだと訴えているのに結婚したい意思があると思われていることに驚く。自分の稼いだ金を嫁だの子供だののために使う、という生活を受け入れられるなら、とっくに結婚していただろう。
 恋人を作らなくなった理由の一つに、年齢的に相手が結婚を期待する、というのが間違いなくある。男である彼と恋人になってもいいと思ったのだって、結婚やらをせっつかれる面倒さがないから、という考えがあったことを否定する気もない。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった22

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 少なくとも、なんでここでそんな言葉が出てくるんだと、いちいち驚いたり悩んだりはしなくなった。と思ったそばから。
「俺ちゃんと言いましたよ。期待したくないし、ぬか喜びしたくないし、リップサービスで好きって言われたら泣いちゃうって」
 睨みつけてくる瞳に、ぶわりと涙がたまって流れ出すからギョッとする。しかもその後すぐに、自ら開けた距離を再度縮めて胸元にすりよってくるから、何してんだと思わずにいられなかった。
 顔を隠したいだけなのか、もしくは先程泣いた時の姿勢に戻っただけなのか。どちらにしろ、恋人になんてなりたくないという口ぶりで、泣きながらくっついて甘えてくる仕草のチグハグさには、結局驚かされて考え込む羽目になっている。考え込む原因になっているのは、泣く直前の言葉のせいも大きそうだけれど。
 本当に恋人は居ないのだと伝えた結果、なぜ期待やぬか喜びをしたくないと泣かれるのかがわからない。
 恋人がいると強く信じていて、嘘をついているように思っている。という線が一番強そうではあるが、じゃあなぜそんな誤解をしているのか。そんなのどう考えたって、親経由情報だろう。彼女が居る素振りで、親の結婚やら孫やらの催促をのらりくらりと躱していた自覚がなくはないので、まぁ間違いなくそれが原因だ。
「うちの親から何か聞いてんのかもだけど、恋人居ないってのはホントだぞ」
「今はっ、そ、でも、俺がっ……邪魔に」
「邪魔? 二股とか、俺がお前と恋人になった後、他の女に目ぇ向ける心配してる? 一応、そういうことするタイプのクズでもないつもりなんだけど」
 やりたい盛りの頃ならそこに、やらせてくれる限りは、という一文が追加されていたかも知れない。ただここ何年もオナホで充分な生活をしていたことを思うと、セックスの頻度や良し悪し如何で、他の女を探そうとはならないはずだ。
 というかそもそも、恋人なんていらない気持ちのが大きい。それでもこの従兄弟との恋人関係を有りと考えるのは、相手の抱える複雑な感情の何割かが現在の自分への恋情として存在するなら、いっそ恋人関係になってしまった方が、抱くにしろ飲みに行くにしろ扱いやすそうだと思ったからだ。
 ついでに言うなら、恋人なんていらないと思ってるからこそ、恋人になってもいいと思ったと言える。だから他の誰かなど気にする必要はなかった。
「だからっ、年齢が……あなた、優しい、からっ、……俺が、邪魔、しちゃ、って」
 また年齢が出てきて、どうやら彼は何かを一貫して訴え続けているらしい。イマイチ会話が成り立っていないというか、彼が何を訴え続けているのかはわからないままだけれど。
「よし、一回口閉じて落ち着こうか。泣いてるのに喋らせて悪かったよ。何言われてるか理解できてないけど、お前にはお前の言い分がちゃんとあるのはわかったから、一回落ち着いて、俺がわかるように順番に話して欲しい」
 宥めるように頭や背中を撫でてやれば、相手も落ち着こうとしているのか、胸元で深い呼吸を繰り返している。最初少し震えていた呼吸は、すぐに安定したようだった。
「あの、恋人になっても、俺、あなたに幻滅とか出来ると思えないというか、むしろもっと好きになっちゃう気がするし、あなたに恋人として扱われる経験なんてしちゃったら、終わるとき凄く辛くなると思うので、無理、です」
 やがてそっと顔を上げておずおずと告げられた言葉は、先程尋ねた恋愛できない理由だった。

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二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった21

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「それはごめん。でも今もまだ俺と飲みに行きたい気持ちがあるって聞いてから、確かめたくて」
「何をですか?」
「片恋のまま俺のそばうろつきたい理由って何? 俺を落とす気でそばに居たいわけじゃないんだろ?」
 積極的にセフレになろうとしてる辺り、落とす気がない、のかどうかもいささか怪しいとは思うが、恋愛したいわけじゃないと言い切っていながら、共に過ごす時間をやたら求められている理由は気になる。
「え?」
「お前の気持ちを気にしないのは無理だけど、例えば俺と今後も飲みに行きたい理由が、現実の俺を知ることで他の誰かを好きになれたらいいな。みたいな気持ちだってなら、多少は協力してやってもいいかなと」
「他の誰か?」
 なんだそれと言いたげな顔と声に、どうやらその線もないらしいと思う。しかし他に思い浮かぶ理由がない。
 いやまぁ、なんの狙いもなく好きな相手とただただ共に過ごしたいだけ、という可能性もあるんだけれど。どう考えても恋愛初心者なので、その可能性が高いのかと思ったりもするのだけれど。
 さすがにそれを受け入れてやるのはどうなんだ。というか、無理だと思う。めちゃくちゃ好きだけど好きになって欲しくはないんです。なんて態度の相手にそばをうろつかれて平静が保てるわけがない。
 自分を好きだとわかっている相手と、恋愛しない関係の構築など試みたことがなかった。相手の好意に応える気がない時はさっくり距離をおいたし、応えてはいけないという状況でも多分同じだ。すぐに面倒くさいとか鬱陶しいとか思って、相手を避けるようになる気がする。
 それは多分、相手からすれば回避したい展開だろう。
 いっそ、こちらから落としに行ってしまおうか。相手に恋愛する気がなくたって、勝手に始めてしまえばいい。
 相手はかなり年下の男で、従兄弟でもあるけれど、一応は二十歳を超えた大人なのだし、抱けると思ったのだから、年の差や男であることはとりあえず問題なしといえる。従兄弟だってことも親バレしなきゃいいだろう。
 今日のように確実に親が仕事の平日昼間から会えるなら、場所代ケチって家に連れ込むなんてこともするかもしれないが、万が一親と鉢合わせた時の態度にさえ気をつけておけば大丈夫じゃないのか。まさか馬鹿正直に、恋人として紹介するはずもないのだから。
「なぁ」
「じゃあ」
 こちらが口を開くと同時に相手も口を開いたので、双方そこで言葉を区切った。
「じゃあ、何?」
 先にどうぞと促してやれば、こちらの続きを気にする様子を見せながらも口を開く。
「えと、現実のあなたを知れば他の誰かを好きになれるかもなので」
 こちらがあれこれ考えている間に、相手も先程告げた言葉について考えていたのかも知れない。ただ、すぐにそうだと肯定が返らなかった時点で、あの話は終わりになっている。なんせ既にこちらは相手を落とす事を考え始めているのだから、今更、幻滅するのに協力してくださいなんて言われて、わかったと返すわけがない。
「それ本気で言ってる? てか理想イメージ育てた自覚があるから現実のオレに幻滅したくてそばにいたい、ってわけじゃないのはわかったから、片恋のまま俺のそばうろつきたい理由が話せないなら、俺と恋愛出来ない理由教えて」
「ええっ!?」
 その驚きようからすると、そこを突っ込まれる想定はなかったらしい。
「年の差ありすぎて恋愛対象にならない、ってことかと思ってたけど、一緒に飲みいくの楽しめるならデートできるし、俺相手にキスも出来るし、まだ突っ込んでないけどセックスだって出来る予定だろ。しかも一度だけ抱かれたいってわけじゃなく、都合よく呼び出されたいってのは継続希望なわけじゃん。じゃあお前が言う、恋愛したいわけじゃない理由って何よ。俺がお前にほだされてお前好きになったとして、嬉しいより困るってのはなんで?」
「それはあなたの年齢が、」
「いやだから、今言ったろ。年齢差あるのはわかってるけど、別に恋人やれなくないだろ」
「じゃなくて。自分の年齢考えろ、って話、です」
「自分の年齢くらいわかってるけど」
「じゃあなんで恋人居ないなんて言うんですか」
「実際に居ないんだから、そりゃ居ないって言うだろ」
 またわけがわからないことを言い始めたなとは思ったが、事実を淡々と告げれる程度には、いい加減慣れ始めているのかも知れない。

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