兄は疲れ切っている15

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 逃げるみたいに視線を合わせないまま黙り込む兄に焦れて顔を寄せる。その唇にかじりつく。
「んぅっ!?」
 驚いた様子で兄の両手の平が、押しのけるように胸を突きかける。ただ、結局は胸に手を当てられただけで、そう強い力は働かなかった。力比べで勝てるわけがないという諦めなのかも知れない。
 舌先で促せば大人しく口を開いたので、そのままたっぷりと口内をなぶっていれば、ふと、頬を挟む手が濡れる感触に気づいた。顔を離せば、直前までの深いキスで呼気は粗いものの、兄の目からはらはらと涙がこぼれ落ちている。静かな泣き顔に、またか、と思ってしまう。
 酷い真似をしているのはこちらだというのはわかっている。なのに湧き立つ感情は、申し訳無さでも憐れみでもなく、結局のところ苛立ちだった。
「泣くならさっさともう嫌だって言えばいいだろ」
 言わないならこのままもう一度抱くと告げれば、兄が濡れた目のままキッと睨みつけてくる。
「お前がっ!」
 怒鳴るみたいな強い口調に怯んだのは一瞬で、兄はすぐに勢いをなくして、また視線を伏せてしまう。待っても次の言葉はなく、じわりと溜まった涙が一粒こぼれ落ちて行くのを見ながらため息を吐いた。
「俺が、なんだよ。泣いてたらわかんないだろ」
 それでも無言で、けれど胸に当てられた手に、今度こそ突き放すための力がこもる。ぐいぐいと胸を押す力を無視すれば、すぐに諦めたようで、今度はその手が肌を這うように上に登ってくる。兄の手がたどり着いた先はこちらの目だった。目元を覆うように隠されてしまう。
「おいっ」
 兄の頬から手をどけて、目元を覆う兄の手を引き剥がせばいいだけの話なのだけれど、それもなんだか悔しくて声だけで非難を示してみる。
「なぁ、何がしたいんだよ」
「お前に見られてると、それだけで、苦しい……から」
 泣き止もうと思って、なんてことを頼りない声を揺らして告げられ、やっぱりため息がこぼれていく。こっちだって好きで泣き顔を眺めているわけじゃないのに。
「あっそ。で? 泣き止まなきゃもう嫌だすら言えないの?」
「それだけど、なんで、俺に言わせんの?」
「なんで、って?」
「お前が、始めたことなんだから、止めたいなら、お前が終わりにするべきだろ。俺に、選ばせるんじゃなくて」
 お前が嫌になったんだろという言葉を咄嗟に否定は出来なかったけれど、でもじゃあ兄は、この関係が嫌になってないとでも言うのだろうか。泣くくせに。今だって、泣いてるくせに。
「だって、仕方ないだろ。嫌だって突き放されなきゃ、離してやれない。嫌がられても、泣かれても、心が手に入らなくても。体だけでも、このまま俺のものにしてたいんだから」
 色々嫌になってるけど、でも止めたくはなかった。
「欲張りだな」
「知ってる」
「俺がお前に好きだって言ったら、それで満足すんの?」
「えっ?」
「心が手に入らないって、そういうことじゃなくて?」
「そういうこと、だけど」
「じゃあ、やるよ」
「は?」
 好きだよ、と甘ったるい声が耳に届いてドクンと心臓が跳ねる。どうせまたサービスなんだろと思うものの、信じたい気持ちもあって迷う。迷う間にも、兄が好きだと繰り返す。
「好きだよ。なんだかんだ言いながら、俺を甘やかすお前が好きだ。お前が血の繋がりのない女の子だったら、俺の方から付き合ってくれって頭下げてただろうなってくらい好き。男でも、血が繋がってなかったら、もしかしたら告白してたかもなってくらい好き。でもさすがに弟相手に手ぇ出せないだろって思ってたから、お前の方からそこ飛び越えて手ぇ出してきたの、びっくりしたけど、俺が抱かれる側になったけど、でも、嬉しい気持ちもあったから、ずるいの承知でお前に足開き続けてた」
 それくらい、ずっと、お前のことが好きだったよ。
 そう続いた声にたまらなくなって、とうとう兄の頬から手を離し、自分の目を覆う兄の手を引き剥がした。

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兄は疲れ切っている14

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「フェラなんか、無理してしなくていい、っつったよな」
 唸るように吐き出してしまった声に、兄がビクリと身を震わせる。
「むりした、わけじゃ……」
「むり、してんだろ。どう見たって」
 こんな酷い顔してと続ければ、やっぱり逃げるみたいに頭を振ろうとするけれど、もちろん逃してなんかやらない。逃げられないのがわかってか、兄はギュッと目を閉じてしまったけれど、その目の端からボロボロと涙が溢れ落ちていく。
 たまっていたものが押し出されて落ちただけじゃない。次々と頬に流れる涙は、まさに今、兄が泣いている証だった。
「なぁ、泣くほど辛いなら、……」
 もうこんな関係やめようと、言ってしまえばいいんだろう。でも手放したくなかった。
 心は後から手に入れるつもりで始めた関係で、ちっとも上手く行かなくてしんどいばっかりだけど、それでもまだ諦めきれていない。目の前で、こんなにも辛そうに泣かれているのに、開放してやれない。
 でも、だとか、だって、だとか。頭の中を言い訳めいた単語がぐるぐると回る。
 でも、だって、仕方がないだろう。もう嫌だとか、もう止めてとか、この関係を拒否する単語を兄の口から聞いたことがないんだから。
「やめん、の?」
 やめようと言えないまま押し黙ってしまったからか、閉じていた目蓋を押し上げた兄が、充血した目に涙の膜を貼ってうるませながら、か細い声を震わせ尋ねてきた。ギッと奥歯を噛み締めながら思わず睨んでしまったけれど、兄は身を竦めながらもじっとこちらを見つめている。
 止めると言って欲しいのか、止めるわけ無いと言っても良いのか判断できない、感情の見えない真っ直ぐさに少しばかり怯んでしまう。
「も、飽きた?」
 掠れて震える声がまた疑問符を付けた言葉を吐き出す。
「は?」
「それとも、持て余してる?」
「持て余す、って?」
「実の兄貴が、男に足開いて突っ込まれんのにどんどん慣れてくの、冷静に見たらどう考えたって興ざめだろ」
「いやそれ、俺がそうしたんだけど」
「うん、だから、そろそろそんな現実に嫌気がさしてきたのか、って」
 声は掠れて震えっぱなしなのに、兄の言葉は淡々と吐き出されてくる。顔は両頬を挟み込んで上げさせたままで、目は閉じられていない。けれど逸らされた視線がこちらに絡むことはなかった。
 あんたが俺に落ちない現実には結構嫌気がさしてるけど、と思いながら小さく息を吐く。
「あんたこそ、どうなの。弟に突っ込まれてアンアン言う体にされて、ぐずぐず泣くくせにもう止めてって言わないのなんで?」
「それはお前が、俺を、お前のものにしたから……」
「そりゃそう言ったけど、関係続けてなきゃ何かするって脅してもないのに、イヤイヤ従う理由なんてある?」
 本気で嫌なら本気で逃げればいい。社会人なんだから、家を出れば接点なんかあっという間に激減するのに、出ていかないし、誘えば断らないし、ラブホ代は出す。という部分だけ見れば、この関係を好意的に受け入れてるような印象になるのに、実際はサービスまみれの媚びたセックスに、不本意なのが伝わるような涙を混ぜてくる。
 そんな不満を我慢できずに突きつけてしまえば、兄が狼狽えるのがわかった。
「嫌なら嫌ってはっきり言えば、もう、開放してやってもいいけど」
 ああ、とうとう言ってしまった、と思う。言ってしまったからには、嫌だとはっきり言われたら、兄を開放してやらなければならない。
 兄の言葉を待つ間、胸が締め付けられるように痛かった。

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兄は疲れ切っている13

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 兄のフェラに意識を集中するために目を閉じる。拙い舌使いが直接快感を呼ぶことは少ないし、たまに歯が当たるとヒヤリとするけれど、そのぎこちなさも歯を当ててしまって慌てる様子も、間違いなく興奮を呼ぶ。
 あの兄が、自分から積極的に触れてくれると言うだけで嬉しいのに、慣れないながらも一生懸命にこちらをイカせようとしているのだ。しかも口を使って。
 正直、信じられない気持ちも強い。兄が口を開いて飲み込むさまを見てさえ、そう思ってしまう。
「んっ……ふぁ……」
 ぴちゃぴちゃと濡れた音も、それに混じって聞こえる息遣いにも、興奮が加速する。腰を突き上げて、その喉奥を突き荒らしたい衝動をこらえるのが大変だった。
 こちらの吐き出す呼気もだんだんと荒くなっていく。
「んっ、んっ、んぅ、んんっ」
 それに応じるように、兄が頭を上下させる速度を上げる。ペニスに添えられた舌と、パクリと食んだ唇とでぐちゅぐちゅに幹を扱かれる。
「ん、うぐ……ぅっ、ふ……」
「は、それっ」
 喉奥に先端が触れたらしく、思わず気持ちがいいと喘いでしまえば、深くまで飲み込んでくれる回数も増えていく。同時に苦しげな息遣いも増えてしまったが、さすがに構っていられなかった。頭を押さえつけて腰を振らないだけでも、充分に兄を気遣っているつもりでいた。
「あ、イク。も、出る」
 口を離していいというつもりで伝えた言葉に、けれど兄は真逆の行動をとる。つまりは、グッと頭を下げて喉奥に迎え入れた。
「ぐぅっっぅえっ、んぅう」
「ちょ、ばかっ、出るって」
 えづくように震えた喉に締め付けられるのは、間違いなく気持ちが良かった。しかし同時に血の気が失せる。さすがに兄の口中で果てるつもりはなかったのに。しかも間違いなく兄はそれらを飲み下している。
 兄のを口でしてやったことはあるけれど、前戯の一部でしかなかったから、口の中で出されては居ないし、当然飲んでやったこともない。もし口の中に出されたとして、それを飲んでやれるかは微妙だった。
「……けほっ」
 股間から兄の頭がどいて、苦しげな咳が小さく響く。
「んぅ……んんっ、ぐ、……んくっ」
 くぐもった苦しげな呻きに、射精後のダルさを振り払うように上体を起こした。兄は深く俯き、口元を手で覆っている。口の中で吐き出され、それを飲み下した気持ち悪さに、必死で耐えているように見えた。
「あーもー、何やってんだあんた」
 思わず、無理して飲んでくれなくていいのにとぼやけば、苦しげな呻き混じりにゴメンと呟かれて何やってんだは自分の方だなと思う。頑張って飲んでくれたんだろうに、それを責めてどうする。
「あ、いや、謝ることじゃないっつうか、あー……その、嬉しかった、よ」
 気持ちよかったありがとう、と続ければ、兄が僅かに頭を上げてこちらを伺う。多分、本心からの言葉かを確かめたかったんだろうけれど、見えてしまった兄の顔に驚いたなんてもんじゃない。
「ちょっ……」
 息を呑んで見つめてしまえば、しまったとでも言いたげに、また深く俯いてしまう。
 すぐさま兄との距離を詰めて、うつむく頭を両手でがしりと挟みこんだ。嫌がるように頭を降ろうとするのを力任せに上向かせて、その顔を覗き込む。
 真っ赤に腫れた目には今も涙がたまっていて、頬には幾筋も涙が流れたあとがある。いつから泣いていたのかはわからなくても、結構長いこと泣いていたことはわかる。
 なんで、と思う気持ちは、苛立ちだった。

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兄は疲れ切っている12

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 落ち着いたらシャワーしてきていいよと言って、雑にゴムを外しただけの、体力的にと言うよりは精神的に疲れた体をベッドの上に投げ出せば、のそりと起き上がった兄が中途半端に萎え掛けたこちらのペニスに手を伸ばしてくるから驚いた。
「なに?」
「何って、お前、イってないから」
「うん、まぁ、そうだけど。で?」
「で、って……」
「握って扱いてイカせてくれようとしてんなら、別にしなくていいよ」
 一晩に何回もは付き合えないと言われて、それなら手を貸せと言って兄の手で抜いた事は確かにある。けれど、途方に暮れてただただ手を差し出される、みたいなことをされたから一回で懲りた。
 つまり兄とのセックスは、だいたい双方一回イッたら終了だ。以前は兄が前戯段階で先に出してしまうことも結構あったけれど、射精したらいわゆる賢者タイムが発生してしまうので、慣れた今はもう、そんな失敗はほとんどなくなっている。
 イカせてやることもなく、しつこく焦らしがちになるのは、きっとそれらのせいだった。互いをギリギリまで高めて、濃厚な一発にしたいと考えてしまうのは仕方ないと思う。
「動けんならシャワー行ってこいって。多分、その間に治まってるから」
「けど」
 そういう気分じゃないんだと言ったら、しばらく迷った後で、口でするのは? と問われて、倒していた背を思わず浮かせた。
「は? え? 口で?」
「興味ない、てことはなさそうだよな?」
「そりゃなくは、ない、けど、えっ?」
 前戯の流れで兄に握らせ扱かせることは今でも時々するけれど、口でしてくれなんて頼んだことはない。なし崩し的に抱かれているだけの男に、男のモノを口に入れろなんて言えるはずがなかった。というか、手ですらただ差し出すだけだった男に、一体何が出来るというのか。
「そりゃ、上手くはない、かも、だけど」
 嫌かと聞かれて嫌っていうかと言葉を濁してしまう。
「別に、無理してそんなこと、しなくていいんだけど」
「嫌じゃないなら、したい」
「うぇっ!? マジで??」
 兄の方からしたいだなんて言い出す衝撃展開に、思いっきり驚いて変な声を上げてしまえば、兄はこちらの視線から逃げるみたいに俯いて、けれど確かにコクリと頭を縦に振った。そしてそのまま、ゆるく勃ち上がったままのペニスを握り込んだかと思うと、そこへ向かって頭を落としていく。
 前髪が落ちて影になってはいるが、両肘を突いて軽く背を浮かせているだけでほぼ寝ている体勢からだと、口を開いたのも、そこからチロリと舌先が伸ばされたのも、その舌がペニスの先端に触れるのも、見えていた。
「ふ、…ぅっ……」
 緊張の滲んだ吐息が自分の口からこぼれていく。気持ちが良くてというよりは、視覚から受け取る衝撃のでかさに思わずといった感じだった。
 兄は少しためらった後、何度か先端をチロチロ舐めて、それからパクリと亀頭部分を咥え込む。
「ぁあっっ」
 ぢゅ、と強めに吸われて、今度こそ快感で声が上がった。こちらの声に反応してか、ちらっと上目遣いに様子を探ってくるのが、強烈にエロい。
 兄の口の中で、ペニスがドクリと脈打ち膨らんだせいだろう。口は離さなかったものの、ビックリした様子で目を見張られて、逃げるみたいに背中をベッドマットの上に落とした。あんまり見てると、暴力的な衝動が湧きそうだった。

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兄は疲れ切っている11

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 目元を覆い隠していた腕を下げた兄が、不安げにこちらを見上げてくるから、苦笑しながら焦らしてゴメンねと謝っておく。
「んな顔しないでよ。もう挿れるから」
 困ったように逡巡したあと、それでもコクリと小さく頷くのを目の端に捉えながら、自身の準備を手早く済ませる。開かれたままの足を更に押し開き、散々弄ったせいで濡れてヒクついている兄の尻穴にゴムを被ったペニスの先端をあてがえば、んっ、と期待混じりの甘い息が漏れ聞こえた。
 今のは演技でもサービスでもなさそう、と思った瞬間に、ぶわりと増すのは欲情と興奮だ。思いっきり突っ込んで、サービスなんて出来ないくらい激しくかき回してやりたい。しかしギッと奥歯を噛み締めて、そんな暴力的な衝動を押し殺した。
 好き勝手に激しく突き荒らしても感じて貰えるほど、兄の体は抱かれ慣れてるわけじゃない。というよりも、兄の体は丁寧に優しく抱かれた経験しかなくて、焦らすような意地悪はされても、男の下衆な欲望に晒されたことはない。なぜなら、逆らわずにこちらの言い分をほぼ全て飲むことで、乱暴な扱いをするなという意思をはっきり兄に示されているからだ。
 顎の力を抜いて深く息を吐き出した後、ゆっくりと腰を進めていく。期待に甘い息を漏らしてくれるというのなら、その期待には応えておくのが正解だろう。
「ぁ、…ぁっ…ぁあ、っん」
 控えめに上がる声は、やっぱりサービス的だった。押し込まれる力に従い穴が開いて、ぬぷりとペニスの先端を飲み込んでいくさまは酷く卑猥なのに、興奮するというよりもなんだか虚しい。
 ゆっくり深くまで押し込んで、またゆっくりと引き抜く動作を繰り返し、緩やかに兄の体の熱を上げていく。
「ぁ、……ぁあっ、……そこ、きもちぃ」
「ん、ここ、な」
 気持ちがいいと教えられた場所を、優しくこねるように腰を回す。そうされるのが好きだと、知っている。
「んぁっ、あっ、ぁあっっ」
「気持ちよさそ」
「ん、んんっ、きも、ちぃ」
「うん。もっと気持ちよくなって」
 兄の作られたような甘い声に、応じて吐き出す自分の声の、もったりと甘たるい響きに反吐が出そうだ。そう思うのに、気持ちぃと漏らされる声に何度も頷いて、もっともっと気持ちよくなってと甘やかに繰り返す。
「ぁ、ぁあ、も、イキ、たい」
「いいよ、イカせてあげる」
 あっさり了承を返して兄のペニスに手を伸ばせば、ビックリしたように体が小さく跳ねた。戸惑うように見上げてくる視線は無視して、先走りを零して濡れるペニスを握ってゆるゆると扱いてやる。
「ぁあっっ」
「きもちぃ?」
「ん、うん」
 戸惑いを滲ませながら、それでも素直に頷いてくれたから、イッていいよと声を掛けて少し強めに擦り上げてやった。
「ぁ、まっ、て、や、イッちゃう、イッちゃう」
 いつもと違う気配に気づいてか、少し慌てた声が上がる。しかし手を緩めるようなことはしなかった。
「だからイッていいよ、って」
 ぐちゅぐちゅとペニスを扱きながら、軽く腰を揺すって中のイイトコロを刺激してやれば、そう持たずに白濁を吐き出してしまう。
「ぁぁああ……」
 気持ちよく絶頂を極めたというよりも、不本意な吐精だったのが丸わかりな、呆然とした失意混じりの声に苦笑を噛み締めた。
「お疲れ様」
 腸の収縮が落ち着くのを待ってからズルリとペニスを引き出せば、なんで、と力ない声が不安げに揺れる。理由はもちろんわかっている。兄だけイカせてこちらは射精せず、兄の中からペニスを抜ききってしまうのが初めてだからだ。

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兄は疲れ切っている10

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 閉塞感に迷ってはいるものの、金曜夜から土曜の夜までのどこかしらに時間を見つけては、誘い出して兄を抱く。
「ぁ、はぁ、んな、しなくて、も」
「まぁ、確かにじゅうぶん解れてはいるけどさ。兄貴が自分で後ろの準備するようになったからって、足開かせて突っ込むだけとかするわけないって、何度も言ってるだろ」
 お腹の中を空にしてたほうが突っ込まれるのは楽だろうし、かと言って弟の手で洗われるのなんて絶対に嫌だと思うから、兄が自主的にお腹の中を空にしてくれることそのものは歓迎するけれど、その後自分で慣らして拡げてローションを仕込むような真似まではしなくていい。多分さっさと突っ込んで、さっさと終わって欲しいんだとは思うけれど、そう思うほど、逆に突っ込むまでの前戯に時間を掛けてやりたくなる。
「んっ、けど」
「いいから。俺がしたくてやってんの」
 言えば困ったように曖昧な笑みを浮かべて、逃げるように顔を背けた上に、持ち上げた腕で目元を隠してしまう。その腕をどけるような真似はせず、しつこく穴だけを弄って拡げて、中のイイトコロを優しく柔らかに擦っていく。
「っぁ、ぁぁっ、んぁ」
 逃げるみたいに顔を隠しても、口を閉じて声を噛むようなことはない。
「ん、きもちぃ、そこ、ぁ、あっ」
 控えめに喘ぎながら、ちゃんと気持ちがいいとも教えてくれる。けれど。
「ゃっ、つよ、いっ、ぁ、やだっ、ぁあっ」
 刺激を強くすればすぐに嫌がってしまうし、それを無視して続ければ、嫌だと訴えるのを止めて静かに泣き出してしまうのも経験済みだ。全く喘がなくなるわけじゃないけれど、漏れる喘ぎも確実に減るから、気持ちがいいと素直に声を漏らしてくれるのは、兄の演技とまでは言わなくても確実にこちらへのサービスではあるんだろう。
 そんな現実を突きつけられるのも嫌だから、時々強く弄る意地悪を挟んでしまうものの、追い詰めるような真似はせずに嫌だと言われたら引くようにはしている。
 そうやって丁寧に前戯を施すこれが、どれくらい兄の心の負担になっているのかはわからない。かと言って、そうする以外のやり方だってわからなかった。
「ぁ、もっ、もぉ、ぁあっ、なぁ、って」
 やがて、早く挿れろとねだるような声に急かされる。少しだけ媚びたような甘い声が、胸の奥をチクチクと刺激する。どうせこれもサービスだとわかっているからだ。
「もーちょっと」
 ここで焦らさず突っ込む場合、指を引き抜いた時に兄が相当安堵するらしいのを知っている。だから素直に応じてやることのほうが多いのだけれど、今日はもう少し兄に求められたかった。せめて、言葉だけでも。たとえ演技だとしても。
「ん、ぁ、……そん、な……も、」
 待てないと弱々しく続いた言葉にも、再度もうちょっとと返して指を動かし続ければ、どこか諦めに似た気配が滲み出す。
「なぁ、も、いれて。早く、お前、ちょうだい」
 焦らしだした時に、どうすればこちらが動くのか、兄だってきちんと学習している。今日はこちらのもうちょっとに付き合ってくれる気はないらしい。
 ここで応じず、更にもうちょっとと焦らしてやりたい気持ちはもちろんある。やってみたこともある。結果、兄は諦めを深くしただけだった。
 兄を焦らして追い詰めて、その体をグズグズになるまで甘やかそうとすればするほど、兄の心が閉じていく。こちらが甘やかに接していれば、もっと簡単に絆されてくれると思っていたのに、全く上手くいかない。
 今度はこちらが諦めのため息を吐いて、兄の尻穴に埋めていた指を引き抜いた。

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