親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった2

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 共働きで親の帰宅はいつも遅いという相手の家にあがりこみ、さすがに緊張しつつ並んでベッドに腰掛ける。
「無理強いする気はない。嫌だ、と思ったら言葉でも態度でもいいから、わかりやすく示せよ」
「わかった」
「緊張してるな」
「そりゃあね」
「いや、可愛くていい」
「ばかじゃねーの」
「お前は可愛いよ。少なくとも、俺にとっては」
 じゃなきゃこんな風に誘わないとは言われたが、素直に受け取るには恥ずかしすぎる。
「サービストーク?」
「そういう事にしておいたほうがいいなら」
「だって、アイツが俺にくれないものを、代わりにお前がくれるんだろう?」
「確かに。しかし、その場合、アイツに可愛いと言われたかったって事になるぞ?」
「そうだね。言われたかった、かな?」
「ならいくらでも言ってやるが」
 しごく真面目な顔で、お前は可愛いと繰り返されてさすがに笑った。
「どうなんだろ。友達としてでなく好きって言いたかった。くらいしかわからないや」
「いくらでも言えばいい。なんならアイツの名を呼んだっていい」
「お前に色々されながら、アイツを呼べって?」
「ああ」
「無理だって。あんまそういうこと考えないようにしてたけど、どっちかって言ったら、その場合は俺が抱く方だって気がするし」
「そんなことないだろう。アイツは小柄で童顔かもしれんが、中身は凄く男らしいじゃないか」
「うん。てかお前、けっこうちゃんとわかってんのな」
「一応中学から知ってるからな。お前ら二人はその頃からけっこう目立ってたし」
「お前の見立てだと、もしアイツと俺がそういう関係になったとして、その場合は俺が抱かれる側っぽかったりする?」
 うなずかれて、そっかと返した。だから抱かれるのが最低条件だなんて言い出したんだろうか?
「というか、そういう想像をしたことがないとは思わなかったんだが……」
 少し迷うような素振りを見せたので、なんとなく、その想像は当たりな気がした。
「でも、自覚がまったくなかったってだけで、お前に抱かれてもいいかなって思ったってことは、やっぱり多少はそういう願望があったって事じゃねーかな?」
「だといいんだがな」
「怖気づいたならやめとく?」
「やめるわけがないだろう。ただ少し、慎重にはなるな」
「だからまったく初心者だって言ったのに」
「さすがに頭の中までまったくの初心者とは思わないだろうが」
 男に抱かれるということを、どこまで具体的に想像したことがあるかと聞かれて、ケツ穴に突っ込むってことは知ってるよと返す。
「もう一度言うぞ。嫌だ、と思ったらすぐにちゃんと知らせろよ」
「わかったって」
 不満を示すように少し口を尖らせたら苦笑されたけれど、一応困り顔なのに、なんだか優しさがにじみ出ているようでドキリとした。
「てかそんな凄いことすんの?」
「なるべくしない」
 聞いたらそんな返答の後、ふわりと抱きしめられる。そのまま耳元で本当に可愛いなと囁かれて、ドキドキが加速していく。

続きました→

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった

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 幼なじみの親友を、どうやら恋愛的な意味を含んで好きなのだと気づいたのは、もう随分と前のことだ。知られたら友人関係も終わってしまうと思って必死に隠す自分に、彼はいつだって無邪気に飛びついてくる。ふざけて頬へキスをする。躊躇いなく大好きと笑う。
 付き合いの長さから、それらに友情以上の想いなどないことはわかっていたのに、それでもやはり期待はした。いつか、同じ想いで向かい合えたらと願っていた。
 そんな親友に彼女が出来たのは高校2年の終わり頃だ。小柄で笑顔の可愛らしい彼女は、同じく男にしてはやや小柄で童顔の彼とは、はためにも似合いのカップルだった。
 内心落胆してはいたが、表面的には祝福もしたし、彼らの恋が上手くいくよう応援もした。
 期待は所詮願いでしかなく、親友という立場をなくしたわけではないのだからと、自らを納得させるしかない。けれど時折やはり胸が痛んで、彼の隣で幸せそうに笑っている彼女を見るたび、泣きたいような不安に襲われる。
 そんな自分に気づいて声をかけてきたのは、同じ中学出身で現在もクラスメイトではあるが、特に普段から親しくしてはいない男だった。顔と名前には多少馴染みがある程度の仲だ。
「やらせるなら慰めてやるが?」
 その言葉の意味を、最初はまるで理解できなかった。
「アイツを本気で好きだったくせに、友人でいることを選んだのはお前自身だろう」
 疑問符のない断定に、知られているならと頷いた。
「そうだよ。でもっ」
「そんな顔をするくらいなら、泣けばいいじゃないか」
「いい年した男がそう簡単に泣けるかよ」
「だから泣かせてやるって言ってる。アイツがお前に与えてくれなかったものを、俺が代わりに与えてやる」
「なんで?」
「ただでとは言ってない。お前が俺に抱かれるなら、というのが最低条件だ」
「ヤリ目的かよっ!」
「まぁ間違ってはないな」
「断る」
「そうか。ではもしその気になったら声をかけてくれ」
 男相手に悪びれもせずヤリ目的で優しくしてやると豪語する割に、口調も態度も淡々とした変なヤツだと思った。普段交流がないので、まったく知らなかった。
 その場は相手があっさり引いたけれど、そのやりとりが心にずっと引っかかっている。そして結局、自分から声をかけてしまった。
「後腐れなく一回だけ、とかでも優しくしてくれんの?」
「構わない」
「あと俺、まったく初心者だけど」
「まぁそうだろうな」
「入るかな?」
「むりやりねじ込んだりはしないから心配するな」
「でもそれだと、お前の言う最低条件がクリアできない」
「抱く、というのは突っ込む行為だけをさすわけじゃないだろう」
「そうなの?」
「そうだ。だからそんな顔をするな。お望み通り、めいっぱい優しくしてやる」
 ふわっと頭に乗せられた手が、あやすように頭を撫でつつ髪をすく。指先が頭皮をすべる感触に、ゾクリと背筋を走る快感のようなもの。
「ぁっ……」
 小さく漏れた吐息は、すでになんだかイヤラシイ響きをしていた。

続きました→

 
 
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はっかの味を舌でころがして

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 生まれた時から同じマンションのお隣さんとして育って15年。
 生まれ月の関係で自分より1学年上の幼なじみは、この春から通学時間1時間弱の私立高校へ通っている。
 幼稚園に入る時は親が3年保育というのに入れてくれたので入園が同時だったが、幼なじみが小学校に上がる時はそりゃあもう盛大に泣いて怒った記憶がある。
 中学の時も、さすがに泣きはしなかったがやはり納得は行かなかった。だって3ヶ月だ。3ヶ月しか違わないのに離れ離れだなんて。小学校と中学校は隣り合っていたけれど、そこには簡単には越えられない、見えない壁が確実に存在している。
 しかも中学へ入学したら部活動なんてものが始まって、帰宅が随分と遅くなった。追いかけるように1年後に同じ部活に入部したら、規律がどうだの示しがつかないだので先輩と呼ばなければならなくなった。
 部活なんてやめてしまおうかとも思ったが、少しでも長く放課後一緒に居たい気持ちから続けてしまった部活は、3年が引退した昨年秋から部長を任された。同じく部長だった彼から引き継ぐのだと思えば、誇らしくはあったのだけれど、やはり先を行かれる悔しさと寂しさと腹立たしさは変わらない。
 滑り止めで近所の公立高校を受験したことも当然知っていて、本命の遠い私立高校なんて落ちてしまえと本気で願っていた数ヶ月前の自分があまりに腹黒く思えて、それからなんだか少しおかしい。彼を真っ直ぐに見れなくなって、なんとなく避けてしまうようになった。といっても、どうせ通学に1時間掛ける彼との接点は、この春からほぼないに等しいのだけれど。

 午前中だけの部活を終えて帰宅した休日の午後、ベッドの上に寝転がりながらイヤホンで音楽を聞いているうちに、どうやらウトウトと寝落ちしていた。
 ぼんやりと意識が浮上して、目を開けた先に見えた頭髪に心臓が跳ねる。自分が彼を見間違うはずもない。
 一気に覚醒してガバリと起き上がれば、ベッドに寄りかかるようにして本を読んでいた彼が振り向き、柔らかに笑って、多分おはようと言った。
「なんで居んだよっ!」
 装着しっぱなしだったイヤホンを毟り取りながら叫ぶように告げれば、柔らかな笑顔が少し困ったような苦笑に変わる。
「今日うち、母さん出かけててさ。夕飯、こっちで食べさせてくれるって言うからお邪魔してる。お前とも久々にゆっくり話でもと思って早めに来たけど、寝てるの起こすのも悪いと思って。でも却って驚かせたよな」
 ゴメンなと謝られても、どう返していいかわからなかった。わからないから無言のまま、ただ見つめ合うのすら居た堪れなくて、そっと視線をそらす。
「なぁ、……」
「なんだよ」
「何でもない。やっぱいい」
 呼びかけの声までは無視できずに返事をすれば、躊躇う様子の後で撤回された。
「なんだよ。気になるだろ。言えよ」
「あー……と、そう、飴食べない?」
 絶対に最初の話題とは違うと思ったが、更に食い下がるのも面倒になってその話題に乗ることにする。
「何味?」
「ミント」
「貰う」
「じゃあ、はい」
 言いながら差し出された舌の上には、半透明の小さな丸い固体が乗っていた。
「は? ふざけんな」
「冗談だって」
「で? 俺の分は?」
「ごめん。ない」
「なんなんだよお前」
「うん。本当、ゴメン」
 ちょうど暮れてゆく空に、この短い時間で部屋の中もだんだんと薄暗くなっていく中、困り顔の笑みを貼り付けたままの彼が泣いているようにも見えてドキリとする。
「なんか、あったんかよ」
「やっぱりわかる?」
「だってお前おかしいもん」
「お前もここんとこ十分おかしいけどな」
 長い溜息を吐きながら、彼は上半身ごと振り向いていた体を戻して、疲れたようにベッドの縁により掛かった。仕方なく、自分もベッドを降りてその隣に座り込み、同じようにベッドの縁に背を預けた。
「で、何があったって?」
 高校馴染めてないのかと聞いたら、そういうんじゃなくてと言いながらもう一つ溜息が落ちる。
「ずっと好きな子が居るんだけどさぁ、なんかちょっと最近避けられちゃってて。何が原因なのか、思い当たることありすぎてわかんないんだよね」
 まさかの恋愛相談に、呆気にとられつつその横顔をまじまじと眺めみてしまう。見られていることに気づいてか、それとも初めてともいえる恋愛相談が気恥ずかしいのか、その頬にうっすらと赤みがさしていくのがわかった。
「見てないでなんか言えよ」
 視線から逃げるようにフイと顔を逸らされる。
「いやだって、恋愛相談とか無理だって。好きとかわかんねーもん俺」
「好きな子、いないの?」
 驚いた様子で逸らしていた顔を向けられたが、そこまで驚かれることに驚いた。彼の恋愛相談を受けるのも初めてだが、自分が恋愛相談を持ちかけたことだって一度たりともないのだから。
「女と遊び行きたいとか思ったことねぇよ」
 アイドルの誰がいいとか、何組の誰それが可愛いとか、適当に話を合わせる程度のことはしても、本気で誰かと交際をしたいと思ったことなんてない。楽しそうだなんて欠片も思わないどころか、面倒そうだとしか思えないのだ。
「俺のことは?」
「は?」
「お前、俺にはけっこう執着してたじゃん」
「執着っつーか、だって悔しいだろ。たった3ヶ月しか違わねぇのに、なんで学年違ってんだよ。家じゃ普通にタメ口聞いてんのに、学校じゃ後輩としての立場わきまえろとか言われんの最悪」
「学年の違いは仕方ないだろ。てかさっきの質問の答えは?」
「さっきのって?」
「俺のことは好きか嫌いか」
「嫌いな奴の親友なんかやるかよ」
「でもお前、俺のこと避けてんじゃん。親友とか言うなら避ける前にやることあるだろ。俺に気に入らないことがあるならちゃんと言えよ」
「いや、それは、別にお前が気に入らないとかじゃなくて」
「高校もさ、またしばらく拗ねてむくれて暇を見つけては押しかけてくるみたいな事になるのかなって思ってたんだよ。俺が中学あがった最初の頃、お前、俺が学校帰ってくるの家の前で待ってたりしたよな」
「3年経てば成長もすんだよ。てかちょっと待て。お前好きな子に避けられてって、それ、まさか俺のことじゃ……」
「うん」
「えっ、てかええっ??」
 驚きすぎて続く言葉が浮かばないまま、結局相手を凝視する。彼はゴメンと言いながら引き寄せた膝に顔を埋めてしまった。
「じゃあなんで、遠い私立とか受験したんだよ。すぐそこの公立で良かったろ」
「先のこととか親の期待とか、こっちだって色々あんだよ。それでお前に避けられる事になるなんて思ってなかったし。てかこうなるのわかってたら、もっと真剣に近くの公立に通うことだって考えたよ。というか、お前が俺を避ける原因は、やっぱり俺の進学先ってことでいいのか?」
 お前がおかしくなったの俺が今の高校合格した時からだもんな、と続いた言葉に、慌てて違うと否定する。
「いやぜんぜん違うってわけでもねぇけど。でも原因はお前じゃなくて俺にあるっつーか」
「じゃあ、それって何?」
 お前が受験勉強していた頃、毎日落ちろと願ってた。などという黒い過去を晒せというのか。
 言えずに口ごもっていたら深い溜息が聞こえてきた。相変わらず顔は膝に埋まっていて、その表情はわからない。
 同じように深い溜息を吐き出して、それから仕方がないなと口を開いた。
「私立高校なんか落ちて、滑り止めだっつー近所の公立通うことになりゃいいのに。ってずっと思ってたんだよ。なんつーか、そりゃもう、呪いってレベルで。でも本命受かって喜んでるお前見てたら、お前の不幸をずっと望んでた自分が嫌になったっつーか、お前に合わせる顔がないっつーか、まぁ、そんな理由」
 やはり呆れただろうか。反応がなく黙り込まれてしまうと、気まずさでなんだか気持ちが焦る。
「悪かったとは思ってる。あー……その、今更だけど、高校合格おめでとう。いやむしろありがとう?」
「なんだそれ」
 小さく吹き出す気配にあからさまにホッとした。
「いやもしあれでお前が本当に落ちてたら、俺の罪悪感今の比じゃねぇだろなぁって」
「お前は単純に喜びそうな気もするけど」
 ようやく顔を上げた彼はよく知る穏やかな笑みを見せている。
「いやいやいや。俺が呪ったせいでお前の人生狂わせた。って気づいた時がヤバいんだって」
「ああ、なるほど。じゃあこれからがヤバいな、お前」
「なんでだよ」
 ヤバくならなくてよかった、という話をしていたはずだ。なのに酷く真剣に見つめられながらそんなことを言われると不安になる。
「俺の人生、お前に呪われてとっくに狂ってるんだけど。って事」
「はあああ?」
「ずっと好きな子が居るって言ったろ。それがお前って事も。お前に呪われた結果じゃないのか、これは」
「呪ってねぇし!」
「学年の違うお前が、俺と同じじゃないって泣いて暴れて拗ねるあれは、呪いみたいなもんだったって」
「泣いて暴れたのはお前が小学校あがった時くらいだろ!」
「でも春になるとだいたいお前は機嫌が悪い」
「それは、だって」
 学年が上がるたびに思い知らされるようで、確かに4月は好きじゃない。
「お前のせいでお前好きになったんだから責任取れよ」
「責任、って?」
「俺を、好きになって」
「嫌ってねぇって」
「そうじゃなくて。恋愛対象として」
「だからそういうの良くわかんねぇんだって」
「わかんねぇじゃなくて自覚しろって言ってんの。お前の俺への執着、それもうホント、普通の友情と違うから。考えてみろよ。俺以外にだって普通に仲の良い友達居るだろ?」
「そりゃいるけど、お前は特別で、だから親友なんだろ」
「もしお前が今後も親友だって言い張るなら、俺はお前を諦めて、彼女か彼氏かわからないけど恋人作るよ?」
 言われて初めて、彼に恋人という存在がいる状態を想像した。確かに嫌だ。絶対に嫌だ。彼と隣り合って歩くただの友人にすら、学年が同じならその場所は絶対に俺のものなのにと思うくらいなのだから、我が物顔で彼を自分のものと主張する恋人が出現したら自分がどうなるかわからない。
「えー……ええー」
 けれどだからといって、即、彼を恋愛対象として好きだと思えるかは別だ。というか本当に、恋をするという気持ちが良くわからない。
「本当はさ、いつかお前から告ってくるだろって思ってたんだよね。なのになにこれ。大誤算もいいとこだよ」
 あーあと嘆きながらも、先程までの悲壮感は欠片もない。彼が穏やかに笑っていると、それだけで安心するのは、きっと長い時間をかけてそう学習してきたからだ。この顔の時は平気、という根拠のあまり無い自信のようなもの。
「それ、俺が悪いのか?」
「どうだろ。まぁきっかけにはなったよな」
 避けられなきゃ待つつもりだったと彼は続けた。
「ならもう少し待ってくれよ」
「いつまで?」
「俺が好きって気持ちをわかるまで?」
「いやだから、そこが想定外だったんだよ。自覚ないとか思ってなかった」
「待てねぇの?」
「自信揺らいだからあんま待ちたくない」
「俺がお前を好きなはずだって?」
「そーだよ。でも揺らいだ。このままのんびり余裕かまして待ってたら、お前が自覚した時、その好きって気持ちの向かう先が俺じゃない可能性高そうでやだ」
「だってなぁ~……」
 好きって気持ちはいつかこれはって女に対して湧いてくるのだろうと、漠然と思っていた節はある。それに彼とはずっと親友で居たいという気持ちも根強く残っている気もする。彼に恋人ができるくらいなら自分が恋人になってもいいという気持ちもないわけではないが、恋人なんかになってしまってその後破局したらどうするんだ。
 今までの関係を変えるというのはやはり勇気と覚悟が必要で、そのどちらも自分は所持していない。
「お前さ、俺とキスできそう?」
 グダグダと迷っていたら唐突な質問で面食らう。
「キスできたら、もう少しお前信じて待ってもいい。無理だっつーならやっぱりお前を諦めることも考えるよ」
 人生の修正がききそうなうちに。なんて続けられて、先程、お前の呪いで人生狂ったと言われたことを思い出す。
「人生修正きくってなら、キスなんてしてる場合じゃねぇんじゃね?」
「ああうんそうだな。わかった。お前のことは諦める」
 怒らせた。というのがわかって焦る。
「待って。待って。ゴメン。今のは俺が悪かったから、俺のこと諦めないで。てか恋人作ったりしないで」
「俺に好きとも言えないくせに? キス一つ出来ないくせに?」
 冷たく響く声に、ああこれは本当に猶予がないと知らされる。だから相手の体を引き寄せて、ままよとその唇に自らの唇を押し付けた。
 これしか現状を維持する方法がわからない。触れてしまったら現状維持と呼べるのかはともかくとして、少なくとも彼への答えは少しだけ先延ばしにできるだろう。
「これで、もう少しは待ってくれんだよな?」
「そうだね。お前はもうちょっと色々しっかり考えた方がいい。でも俺だって俺の人生があるんだから、そんなに気長に待ってられないってのは覚えとけよ」
 わかった。とは言えなかった。
 お返しとばかりに引き寄せられて唇を塞がれたからだ。しかも先ほどのように一瞬の接触ではなく、吸われて甘噛まれてこじ開けられた口の中、小さな小さなミントキャンディーの欠片が転がり込んできた。それはほどなくして、口の中で溶けて消えていった。

続編を読む→

レイへの3つの恋のお題:はっかの味を舌でころがして/薄暗い部屋で二人きり/なぁ、……何でもない。
http://shindanmaker.com/125562

 
 
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トキメキ11話 覚悟を決める

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 目が覚めると、部屋の中はわずかにオレンジがかっていた。カーテンの隙間から入り込む光の色で、今が夕方なのだとわかる。
 遠井に抱きこまれた時は、また緊張と激しい動機に襲われて、突き飛ばすことになるかと思ったのに。あっと言う間に眠ってしまった遠井の腕の中は暖かく、酷く心地が良かった。遠井の寝息に誘われ、吐精後の疲れも手伝って目を閉じてしまったが、どうやら随分寝ていたらしい。
 身体を起こすよりも先に隣を確認した神崎は、そこに遠井の姿がないことに、まずホッとしてしまった。どんな顔をすればいいのか、どんな顔を見せてしまうのか、わからない。
 あの日の朝聞いたのと同じ、トロトロと思考を溶かしていく甘い声にあやされながら、少しかさつく大きな手で撫でられ、たくさんのキスを至る所に落とされた。男でもあんな声をあげられるなんて、知らなかった。
 恥ずかしさに何度も逃げ出そうとし、そのたび、より甘い囁きであやされる。みっともない姿を晒す神崎に、けれど遠井は柔らかに笑って可愛いなどと言うのだ。たとえこの場限りの嘘でも、嬉しいと思った。そんなことを思う自分が情けなくて泣きそうになっても、目元に寄せられる唇で滲む涙は吸い取られ、申し訳なさそうにゴメンなどと言われてしまったら、泣いてしまうことも許されない。
 神崎に許されていたのは、与えられる快楽に従って声をあげ、遠井の名前を呼び、その肩に、背に、縋ること。それと、遠井に導かれるまま、遠井へ少しでも多くの快楽を返すこと。それだけだった。
 自分以外の男の、興奮を示す性器に触れたのなんて当然初めてだったが、あんなにぎこちない仕草でも、遠井は気持ち良いよと嬉しそうに笑ってくれた。そして、嘘ではない証拠を示すように、神崎の手を吐き出したもので濡らした。
 こうして遠井のベッドの上で目が覚めて、あれが冗談でも夢でもないのだと思い知ると、神崎の胸に押し寄せてくるのは喜びに満ちた幸せなどではなく、罪悪感とも呼べるような思いだった。
 まさかこんなことになるなんて、カケラも思っていなかったのだ。寝ぼけた遠井にちょっと抱きしめられたくらいで、必要以上に意識して、逃げて逃げて、そのせいで、遠井にまで余計な気持ちを持たせてしまった。
 甘く名前を呼ばれて、誘われて。それでも、その優しさから告げてくれたのだろう、本気で嫌ならという言葉にすら、一度だって頷く事が出来なかった。頭ではダメだとわかっていたのに抗えず、その手を自ら望んで、受け入れてしまった。
 神崎はようやく上体を起こすと、深い溜息を吐き出した。遠井はどれだけ自分を甘やかす気でいるんだろうと思う。こんな気持ちに、つきあってくれる必要なんてないのに。何言ってんだ気持ち悪いと笑って、相手になんかしてくれなくていいのに。遠井の中にも生まれてしまったという気持ちを、それこそ、勘違いだと思ってくれれば良かったのに。こんな関係を、本当に今後も続ける気でいるのだろうか。
(だとしたら、チームの誰にもバレないように気を使って……?)
 考えてみても、そんなことが可能だなんてとても思えない。けれどきっと、神崎からは遠井を拒絶しきれないのだ。誘いを混ぜた囁きだけで、次はもっと簡単に、身体はその手を喜びと共に受け入れてしまうだろう。そしてそれを、確かに自分は望んでいるのだ。ということも、神崎はもう知ってしまった。
 ここに遠井がいないから、少しだけ、泣いてもいいだろうか。
 立てた膝を胸へと引き寄せ、そこへ顔を埋めるようにして、声を殺しながら神崎は泣いた。子供みたいにワーワーと、声をあげて泣いてしまいたい衝動は、その声を聞きつけて遠井がやってくるかも知れない不安から押さえつける。この涙を、遠井に見せたくはなかった。
 暫く泣いて、それから深呼吸を数度繰り返した後、神崎はようやくベッドを降りる。今回は本当に、下着一枚身にまとってはいなかったけれど、先ほど自ら脱ぎ捨てた服はまだ、全てこの部屋の中にあるはずだ。部屋の中を見回せば、それは丁寧に畳まれて、ベッド脇の、サッカーボールを模したスツールの上に乗っていた。そんな気遣いにも、胸の奥が小さく痛む。
 服を身に着け寝室を出た神崎は、最初に洗面所へ向かった。鏡を見て、今の自分の顔を確認して置きたかったし、できれば顔を洗いたい。
 鏡の前へ立てば、その中にはやはり酷い顔をした自分の姿があった。顔を洗ったくらいで、泣いた後の赤い目はごまかせないかもしれない。そう思いながらも蛇口を捻り、流れ出る水を両手ですくう。
「……ハル、さん?」
 水気を軽く手で払ってから顔を上げれば、鏡の中、心配そうな顔をした遠井が立っているのが見えた。神崎の気配に気付いて、様子を見に来たのだろう。
 慌てて振り返れば、スッとタオルが差し出される。
「あ、ありがとうございます」
 礼を言って受け取り、取り敢えずは濡れた顔に押し当てた。拭き終えタオルを顔から離せば、伸ばされた右手が左頬に添えられ、親指がそっと目元を拭っていく。
「泣いたのか?」
「……少し、だけ」
「どうして?」
「ハルさんが、いなかった、から……」
 どう返せばいいのかわからなくて、結局、そんな言葉で答えを濁した。その言葉が、目覚めたときに傍にいて欲しかったというような甘えた感情ではないことを、遠井も当然察しているようで、心配そうな表情が晴れることはない。
 神崎は半歩進んで遠井との短い距離を詰めると、遠井の肩にそっと額を押し当てた。ゆっくりと腕を持ち上げてその背を抱けば、同じように、ゆっくりとした動作で抱き返される。
 幸せだ、と思ったら、鼻の奥がツンと痛んで、神崎は幾分慌てながら言葉を紡ぐ。このままジッとしていたら、また、泣いてしまいそうだった。
「これだけ近づいても、もう、ドキドキしてどうしたらいいかわからなくなる、なんてこと、なくなりました」
 もっとずっとドキドキして、うんと恥ずかしくて、逃げ出したくてたまらない程の強烈な刺激の後では、今感じているこの胸のトキメキなんて、穏やかで心地良いものだった。
「だから、もう、大丈夫だと思います。慣れる事が出来たのは、ハルさんのおかげ、です」
「それはようするに、俺が、俺の方が大丈夫じゃないよって言ったら、お前を泣かすことになるんだってことだよな?」
「そう、ですね。嬉しくて、泣くかも知れないです。だから、言ってください。アレは、意識し過ぎる俺を慣らすためだったって。慣れたならもう必要ないだろって。そして、明日からは、またチームの仲間として、頑張って行こうって。そう、言っていいです。じゃないと、俺、ハルさんの気持ち、本気にしてしまいます」
 遠井は暫く考えるように黙った後で、神崎の耳元へぐっと唇を近づけてきた。
「俺が大丈夫じゃないから、泣いてくれるか? 太一が好きだよ。信じて欲しい」
 甘く甘く囁く声に、神崎は遠井の背を抱く腕に力を込めて、胸がピタリと合わさるほどに強く抱きしめる。同じトキメキを刻めたらいいと願った。
 遠井はそんな神崎の背を、優しく撫でさすってくれる。腕の力を抜いてそっと身体を預けても、その手は変わらず神崎をあやし続けた。
 この手の温もりを、放したくなんかない。この気持ちに巻き込む申し訳なさを飲み込んで、どこまでも自分に優しい目の前の男に、このまま甘え続ける覚悟を決める。
 易しい道ではないだろう。それでも、いつかこの手を放される日まで、好きだと言ってくれるその言葉を信じ続けようと思った。
「俺も、ハルさんが、好きです」
 うっとりと目を閉じ囁けば、その目元に柔らかなキスが落ちた。

< 終 >

 
 
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トキメキ10話 感じ合う

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 顔を離して様子を窺う。神崎は呼気を乱してはいたが、先ほどと違って、苦しそうな顔を見せてはいなかった。
「気持ちい?」
「……はい」
 恥ずかしそうに、けれど肯定の声ははっきりと発された。
「俺も、気持ち良かった」
 笑ってやれば、釣られたというよりもきっとこちらに応じようとして、同じように笑い返してくる。本当に、可愛い。それを素直に口に出したら、一転、困ったような顔になってしまった。
「可愛いって言われても、そりゃ、あんまり嬉しくはないよな」
 確かに男に対する褒め言葉ではないだろう。けれど口にせずにはいられない。
「でも、嘘じゃないんだ。お前が、可愛くってしかたないよ」
 本心からの言葉は、けれどなんの慰めにもならないどころか、却って傷つけたのかもしれない。考えてみれば当然だ。本気で可愛いだなんて、余計に性質が悪い。
 ゴメンと告げて、詫びるように目元にキスを贈った。滲んでいた涙が唇に触れて、微かな塩味が口内に広がって行く。
 そのまま唇を耳元へと滑らせれば、この後与えられる快楽を予期してか、神崎の身体に緊張が走った。
「もっといろんな所にキスしても、構わない、よな?」
 囁く声にも感じるようで、はい、と返す声は小さく震えていた。
 弱い場所は既にわかっている。そこをなぞりながら、先ほどと同じように声を噛んでしまう神崎の唇に、そっと指先を滑らせた。少しばかり力を込めて、閉ざされた唇を割り開く。
「あっ、やぁああ、あー、……うぅー」
 声を聞かせてくれと告げながら、いささか強引に指先を突きいれ、口腔内をかき回してやれば、非難めいた声があがった。
「嫌なら噛んでいい」
「うーっ、あぁー」
 嫌がって振ろうとする首を、顎を捉えて固定する。声が聞きたいだけなんだよと再度耳元で囁いた。
「どうしても嫌なら、本当に噛んでいい。噛んで、俺を止めてくれ」
 やはり嫌そうな声を発していたが、それでも噛まれることはなかった。それは神崎の優しさなのかも知れない。たとえそうだとしても、今はその優しさにつけ込む気でいっぱいだった。だから遠井は、神崎を感じさせることに意識を集中させる。聞きたいのは、快楽を混ぜてこぼれる艶やかな声だ。
 耳から首筋を辿り、肩から胸へ。触れて弄る前から、乳首の先がツンと尖っていた。軽く爪弾いただけで、ビクビクと肌が震える。高い声があふれ出す。
「あーっ、あっ、んふっ、ふぁっ」
 今度こそと、指で弄る反対側の突起へしゃぶりつき、舌で転がし、吸い上げ甘噛んでやれば、益々高くなった声が絶え間なく耳に届いた。そっと指を引き抜いても、閉じることを忘れたように、その声がおさまることはない。
「やぁ、やだぁ、……ああ、んっ」
 けれど、口腔内を弄って充分に濡れた指を、下腹部で熱を持つ陰茎へと絡めれば、喘ぐ声に嫌だという単語がはっきりと混じった。喘ぐ声も、どこか啜り泣きに近いものへと変わってしまう。
「ハルさん、ハルさんっ……おねが、い……待っ、て」
 切なく名を呼ばれ、待ってくれと懇願されて、それを無視など出来るはずもない。お手上げだと言うように両手をあげて見せた後、遠井は神崎の顔を覗き込んだ。
 ふーふーと荒い息を吐き出すその顔は上気し、赤くなった目元には今にもこぼれそうな涙が溜まっている。けれどどう控えめに見ても、嫌悪の感情は見当たらない。むしろ、中途半端な所で放り出され、開放されない熱を内に湛えた神崎の潤んだ瞳は、先ほどこぼした言葉とは裏腹に、遠井の手を待っているようにさえ見えた。
 正直、何がそんなに嫌なのか、本気でわからない。
「まだ、早いか? 俺の手が嫌なわけじゃ、ないんだよな?」
 こんなに感じて、早くイきたいだろう?
 そんな問いかけに、困ったように眉を寄せた神崎は、遠井の視線から逃げるように、目元を両手で覆ってしまった。
「太一?」
「あの、……だって、その、……お、俺ばっか、感じて、は、恥ずかしくて……」
 酷く躊躇った後で小さく吐き出されてきた理由に、口の端が持ち上がる。
「バカだな」
「ご、ごめんなさい」
 極力優しく告げたつもりだったが、怒られたとでも感じたのか、神崎は身を竦めて謝罪の言葉を口にする。そんな神崎に、遠井は困惑と諦めと愛しさとを混ぜ込んで、溜息を一つ吐き出した。
「ホント、どうしてそんな可愛いんだよ、お前」
「え、? ……っと、ごめ、」
「謝らなくていい」
 再度告げようとする謝罪の言葉を途中で遮り、そっと目元を覆う両手首を握って、ゆっくりと外させる。抵抗はなかった。そして現れた瞳に向かって、わかってなかったのかと柔らかに笑ってやる。
「恥ずかしがらせたいと思ってやってんだから、恥ずかしいのは当然だろ。嫌なのを我慢してるってならともかく、恥ずかしいからって逃げても、そんな理由じゃさすがに逃がしてやれないよ。それに、俺だって充分感じてる」
 掴んでいた片手を引き寄せ、遠井は自身の股間へと導いた。神崎は驚いたように目を見張った後、恐る恐るといった様子で、熱を持って存在を主張する遠井の性器へ指を絡める。確かめるように、握り締める。
「な? 俺なんか、どこも触られてないのに、既にこんなに感じてる」
 どうしてだかわかるかと問えば、やはりどこか困った顔で、それでも頷いて見せた。さすがに神崎も、男として経験があるのだろう。
「ほ、ホントに? 俺で?」
「そう」
 ホントにお前でだよと笑い、もし嫌じゃないならと続ける。
「自分ばかり喘がされて恥ずかしいと思うなら、そのまま握って扱いて、俺のことも喘がせればいい」
 その代わり、頼むからもう待ったはなしにしてくれと、苦笑と共に頼み込む。恥ずかしそうに頷いて、それからゆっくりと手の中の遠井を扱き始める。掴んでいた手を放せば、すぐにもう片手も股間へ伸びてきた。
 ぎこちない仕草ではあっても、さすがに自身で慣れているからだろう。快楽を誘う動きに、熱い吐息がこぼれ落ちた。
「気持ちいいよ」
 窺うように見つめる視線に笑いかけ、それから遠井も、再度神崎の性器へ指を絡める。そして、神崎の動くリズムを追うように手を動かした。
 だんだんと加速する動きを忠実に追いながら、先ほど感じる様子を見せた箇所へ唇を落とし、時に吸い上げ、軽く歯を立ててやる。
「あ、あっ、やぁっ」
「もっと感じて、恥ずかしい声を俺に聞かせて。その声で俺を煽って、そしてもっと感じさせてくれ」
 告げれば、遠井が与える快楽の刺激に、一旦止まってしまっていた神崎の手が再度動き出す。その動きに合わせるように腰を揺すった。
「いいよ。気持ち、イイ。お前は?」
「イイ、です。俺も、……気持ち、い」
「一緒に、イこうか」
 イきたいんだと、遠井から先に誘いをかける。はい、と返された応えに満足気に笑って、遠井は一度、張り詰めた自身を握りこむ神崎の手を開かせた。そしてその手の中に、神埼自身の怒張した陰茎をも握らせる。そうしてから、神崎の手を上から覆うように握り、激しく擦りあげた。
「ああっ、いいっ、イくっ、イっちゃう」
「いいよ。俺も、イく」
「っ、……はぁっんっ」
「クッ……」
 神崎の身体に緊張が走り、一度大きく身体を震わせた後、いっきに弛緩する。それとほぼ同時に、遠井も息を飲んで身を震わせた。
 どこか呆然と、それでも満たされた表情で荒い息を吐き出す神崎に、同じく満たされた気持ちいっぱいに笑いかけ、遠井は優しいキスを一つ落とした。
「少し、休憩な」
 汚れもそのままに、神崎の隣にゴロリと横になり、神崎の身体を引き寄せ抱きしめる。目を閉じれば、心地よい疲労感と共に、抗いがたい眠気が押し寄せた。
 次に意識が浮上した時には、腕の中で神崎が寝息を立てていた。眉を寄せた寝顔はどこか辛そうで、申し訳ない気持ちに襲われる。本気で拒まれはしなかったけれど、それでもやはり、そもそもは神埼から望んだ行為ではない。
 苦笑を飲み込み、遠井はゆっくりと身体を起こした。あれからどれくらいの時間が経ったのかはわからないが、神崎の腹の上に残った汚れはまだ乾いていないので、そう長いこと寝ていたわけではなさそうだ。
 ベッドを降りた遠井は、神崎の肌に残る汚れを簡単に拭った後、そっと掛布を掛けてやる。先ほど脱いだ服を着込み、神崎の服を畳んでベッド脇のスツールの上に置いた遠井は、その髪や頬に手を伸ばしたい気持ちを抑えて、静かに部屋を後にした。

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トキメキ9話 寝室へ

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 暫く待たされた後、ようやく神崎の手が伸ばされる。緊張からか、随分と指先が冷えていた。熱を分け与えるようにキュッと握り締めれば、それを誘いと取ったのか、ゆっくりとソファから立ち上がる。
「もう、待ったは聞かないからな?」
 まっすぐに見上げてくる黒い瞳を見つめ返し、覚悟の程を確かめるようにそう告げても、瞳は逸らされなかった。
「わかって、ます」
 幾分掠れた声で吐き出されたセリフに、遠井はどこかホッとしつつ柔らかな笑みをこぼす。逃がしてやる気はなくても、傷つけたいわけじゃない。神崎の気持ちを無視して、強引にことを運びたくはなかった。
 握った手を放さぬまま、寝室までの短い距離を移動する。換気のために少しばかり窓を開いていたので、部屋の中は若干冷えていた。
 さすがに窓は閉じて事に及びたい。神崎をベッド脇へ置き、窓とカーテンとを閉めた遠井は、振り返って苦笑をこぼす。随分と薄暗くなった部屋の中で、神崎はさっさと服を脱ぎ捨てている。覚悟が決まったのはなによりだが、脱がす楽しみが減ってしまった。
「俺が脱がしてやりたかったのに」
 ベッドへと近づきつつ、そのまま気持ちを伝えれば、神埼も同じように苦笑をこぼす。
「すみません」
 言葉は謝罪を告げていたが、本心ではなさそうだった。こちらの気持ちをわかっていて、敢えて自ら脱いだのだろう。今までは脱がす立場にしか立ったことがないだろう彼にしてみれば、脱がされる、なんて行為はそれだけで耐え難いのかもしれない。
 相手も同じ男なのだ。することはあっても、されることなんて、よほど積極的な女性とでも付き合ってなければ、そうそう経験していないだろう。神崎がいままでどんな女性と付き合ってきたのかなんて話は、そういえば聞いたことがなかった。
 基本男ばかりの世界な上、半分近くのメンバーが寮で生活し、遠征だの合宿だのと寝食を共にする機会もやたらと多い。だから下関係の話題に巻き込まれることは多々あるし、避けていたってある程度は吐かされているものだ。
 遠井も、特別そういった話題に興味を持ってはいないが、だからと言って嫌いなわけでもない。自ら聞いて回ったりはしないが、それでもだいたいは耳に入ってくる。
 神崎が童貞だという話は聞いたことがないから、経験はあるのだろう。童貞だなんて話した日には、まず間違いなく、翌日には話題の人となってしまうからだ。けれどそれ以上のことはほとんど知らなかった。
 神崎の性格からして、そういった話題に巻き込まれて逃げ切れるとは思えない。だから知っている人間もいるだろう。広まらないのは、神埼がそういう話題を苦手にするタイプだからだ。そういう話題に興味津々なメンバーたちも、さすがにそれくらいの気は遣う。
 こんなことなら、神崎の恋愛事情にもっと探りを入れておけば良かったと、今更ながらに思う。意識されていると気付いた後も、まさかこんな風に惹かれることになるなんて、カケラも思っていなかったのだから仕方がないけれど。
「ま、積極的なのも、それはそれで歓迎だからいいけどな」
 ニヤリと笑ってやって、遠井も自らの服に手をかける。同じように服を全て脱ぎ捨ててから、隣に立ったままそれを黙って待っていた神崎の腕を取り、揃ってベッドの上へと転がった。
 仕切りなおしのキスでもなく、先ほど中断した胸の先に触れるでもなく、まずは股間に手を伸ばす。
「は、ハルさんっ!?」
 上擦った声が名前を呼んだ。うん、とだけ答えて、握ったモノの形を確かめるようにヤワヤワと揉みこんでやる。先ほどの刺激によってか既に形を変えていたそれは、あっと言う間に硬度を増した。
「ハルさんっっ」
 必死な声が再度名前を呼んだ。さすがに男の握力は違う。縋るように掴まれた肩の痛みに、こぼれるのは苦笑。それを、感じる自分を笑われたと思ったらしい。目にわかるほど、神崎の頬の赤味が増した。
「ま、って」
「もう待たないって言ったろ?」
「で、でもっ」
「どんどん硬くなってる」
「だ、だって、……」
「だって、気持ちイイんだよな?」
 今度は本当に、神崎に対して笑った。覚悟をチラつかせながら、自分から進んで服を脱ぎ捨てたくせに。男なのだから、感じていることは隠しようがない。そんな状態を自ら晒して、なのに握られた程度であっさり狼狽えてみせる。年齢の差によるものは当然あるだろうけれど、そんな慣れないところが益々愛しい。
「可愛いよ」
「嘘っ」
「嘘なもんか」
 元々、神崎は可愛い後輩だった。確かに、姿かたちがという意味ではない。少し吊り気味の瞳は一見きつく感じるし、口数少なく寡黙な態度は時に冷たい男にも見える。間違っても、愛想がいいなんてことは言えない。けれどその実、とても素直で真面目な本質を持っている。
 妹という繋がりがなければ、遠井もその本質に気付くまでにもっと時間を要しただろう。打ち解けてしまえば、軽いジョークにだって笑顔を見せるし、積極的に話題を提供するほうではないけれど、会話が続かないなんて状態にはならない。むしろその真面目さから、一見くだらない話さえ、真剣に耳を傾けてくれる。
 遠井自身がよく構うことと、打ち解けるのが早かったせいもあってか、比較的良く懐かれているとも思う。だから余計に可愛いのだろう。もちろん、それはちゃんと自覚していた。しかしそれを今までは、弟のようだと感じていたのだ。
 いくら可愛い後輩でも相手は男で、本来、遠井の性愛の対象は女性だ。だから当然、性の対象になんて考えたことがなかった。けれどこうして向かい合えば、その姿かたちも愛しく、ぎこちない仕草はいちいち可愛いと思う。
 柔らかで豊かな胸などなくても一向に構わないと思わせるほど、張りのある筋肉や手の中で硬度を増していくわかりやすい快楽の象徴、そして戸惑い気味にこぼれる歓喜の混ざる声に、充分に煽られ興奮が増していく。
「本当に、可愛いよ」
 念を押すように告げて、それからようやく唇を塞いだ。手の中の性器に刺激を送り続ければ、今度はあっさり、堪えきれないとばかりに口を開く。喘ぐ呼吸を遮ってしまうのは可哀想かと思いながらも、ここぞとばかりに舌を伸ばし口腔内を探った。
「ふぅ、んっ、……やぁっ」
 くぐもった声に混じる否定の意思は、取り敢えず無視を決め込んだ。けれどそう長くは続かない。本気で抵抗されれば、力でどうこうできるわけもなかった。
 肩をきつく掴まれ、引き剥がす勢いで押される。さすがの痛みに、遠井は諦めて身を離した。困ったなと思いつつ覗き込んだ瞳は、潤んで揺らめいていたが、それでも嫌悪の色はない。真っ赤になって荒い息を吐き出すその様子に、まさか息継ぎが出来ないとかいうオチじゃあるまいなと思いながら問いかける。
「何が、嫌?」
「何が……って」
「深いキスが? 扱かれるのが? それとも感じることがか? まさか息ができないとか言うなよ?」
 ほぼ一息に浴びせかければ、神崎は考え込むように口を閉ざしてしまった。何が嫌だったのかを、真剣に探しているのかもしれない。
 目の前に居るのは二十歳を超えた大人だけれど、そこらの処女よりよっぽど初心で、自分が押し倒される状況を、カケラだって考えたことがないだろう相手なのだと言うことを、うっかり失念していた。慣れない態度に、可愛いなどと思っているだけではダメなのだ。
 多分きっと、強引に快楽で流し、先に進もうとするこちらの気配に気づいて、驚いたか怖くなったかしたのだろう。
「ゴメンな。ちょっと急ぎすぎたよな」
 返事を待たずに謝罪を告げれば、考え込んでいた神崎は驚いたように目を瞬かせる。
「深いキス、嫌じゃないよな?」
「はい」
 未だ突然の謝罪に戸惑っているようだったけれど、それでもそれには即答された。そんな些細なことでもこみ上げる嬉しさに、笑って再度顔を寄せる。唇は薄く開かれていた。舌で突けば、応じるように舌を伸ばしてくる。口の先で触れ合わせ、絡め合った後、口内に導くように吸い上げた。
「ん、……う、ふぁ」
 甘えを含んだ呼気が漏れ聞こえてくる。柔らかに舌を食んで舐め啜り、開放と同時に引っ込む舌を追いかけ、今度は相手の口腔内へ舌を差し込んだ。
「あ、はぁ……っ、あぁ」
 性急にならないようにと気をつけながら、確かめるようにゆっくりと、その内側を舐めあげて行く。甘い吐息が途切れることはなかった。

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