いつか、恩返し18

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 抱かれている真っ最中で、しかも上り詰める寸前で、けれどどうしようもなく湧き出る愛しさにクスっと笑いが溢れてしまう。
「はは、かわいぃ」
 ついでのように、気持ちまでそのまま声になって溢れた。
「え、なに」
「かわ、いいっ、ぁ、ぁん、おまぇ、ぁっ、かぁいい」
 異常に気づいた相手が聞くのに可愛いと繰り返してやれば、わけがわからないと言った様子で眉間にシワを寄せるから、ますます笑ってしまいそうだ。
「なんだそれ」
「ぁ、ばか、とまんなって、も、いく。いきたいっ」
 腰を止めそうになった相手を煽るように自ら腰を揺すってねだりながら、見せつけるようにペニスを扱く。
「ああ、もうっ」
 感情に任せて吐き捨てたみたいな、どこか苛立った声すら、相手の余裕の無さを表しているようで楽しい。しかも、その後は容赦なく感じる場所をグイグイと抉られたから、笑うに笑えなくて我ながら酷い喘ぎ方をしてしまった。
「うひっ、ぁ、ぁんっ、ひゃぅ、ぁ、いいっ、ぁは、あっ、あんっ、いく、ぁっ、ぁあ、いくぅっ」
 ペニスからどぷっと吐き出される白濁を手の平で受け止めながら、ぎゅうぎゅうとアナルを締め付ければ、少し遅れて肚の中のペニスがドクドクと脈打った。ああ、イッてる、と思いながら見上げる相手は、多分に安堵を混ぜながらうっとりと快感を享受している。
 そんな彼を見ながら、やっぱり可愛いなと思ってしまう自分自身がおかしくて、またしてもくふくふと小さく笑ってしまえば、それに気づいた相手が嫌そうな顔になって腰を引こうとする。
「あ、待って」
「なんだよ」
「抱っこ」
「は?」
「もーちょいお前感じてたいから、抜かずにこのままぎゅってして」
 ちょっとだけでいいからと言えば、小さな溜め息を一つ吐き出した後で、相手の体が覆いかぶさってくる。その背をぎゅっと抱きしめてやれば、軽く背が浮いてもぞもぞっと相手の腕がその下に潜り込みギュッと抱き返された。
「なぁ、俺が童貞だったの、結局お前、どう思ってんの」
「どう、って?」
「知らないまま初めて受け取らされてドン引きなのかと思ったけど、途中からなんかやたら楽しそうだし、逆に初めてで余裕ないのを笑われてんのかと思ってた。けど、こうやって変な甘え方してくるし。このぎゅっとして、も、もしかして馬鹿にされてんのかとか、下手だったのを慰められてんのかな、とか、なんか、色々考えすぎてよくわからなくなってる」
 心許ない声音に、慌てて、違う違うと否定を返す。
「びっくりはしたけど、純粋にすげぇなと思ったよ。お前が未経験だったなんて、ちっとも思わなかったし。後、余裕なくて必死だったお前見て笑ってたのは、嬉しかったのと可愛かったからだってば。抱かれてる時のお前も可愛いけど、俺を抱いてるお前も、可愛いんだって。マジに」
「それ、喜んでいいのか微妙なんだけど。下手だったからと言うか、拙いながらも一生懸命で可愛いね、みたいなやつじゃなくて?」
 別に見下しでもいいけどさ、と続いたセリフに、やっぱり違うと否定を返した。
「俺もう、お前のこと、見下した優越感で可愛いなんて思うことないよ。ただただ素直にお前を可愛いって思えるようになってる。だからお前、俺を抱くことにしたんじゃないの?」
「それは、そうなんだけど」
 やっぱりなと思う。そうだろうと思っていた。こちらの気持ちが育つのを待っていた、というのは、きっとこういう部分のことも指している。
「後、初めて挿入するセックスで、相手イカせてほぼ同時に自分もイクとか、普通に凄いと思うけど」
 俺はそんなの無理だったよと言えば、やっと納得した様子で、ならいいとだけ返ってきた。

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いつか、恩返し17

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 いろいろな衝撃が去ってから、改めて、どういうことだと聞けば、言葉通りの意味だよと苦笑される。
「いやだって、お前、彼女いたろ。お前の歴代彼女、ほぼ言えるぞ」
「それ言ったら、大学入ってからは作ってないのも、お前はちゃんと知ってるだろ」
 お前だって大学入ってから童貞捨てたろと言われてしまえば、確かにその通りではあるのだけれど。
「お前と違って、大学での彼女が初彼女だっての」
「仮に、高校時代に彼女がいたとして、お前、自分が童貞捨てれたと思う?」
 あー……と言葉を濁せば、そういうことだよと返される。
「いやでもお前ならさぁ」
「俺の初めて、やっぱ重すぎた?」
 騙してゴメンねと謝られてしまうと、いや別にそういうことじゃなくて、と思ってしまう。ただただ驚いたというだけで、言い出しにくかったと言われれば、まぁわからなくもない話でもある。
「お前のそういうとこも、好き」
「は?」
 黙ってしまえば唐突にそんなことを言われた上に、ゆるっと腰を揺すりだす。
「あとでもっかいちゃんと謝るし、聞きたいこと教えるから、も、こっち集中させて」
 どことなく切羽詰った顔と甘さの滲む声に、確かにこの状況で話し続けるのも辛いだろうと思う。
 小さく頷いてやれば、ホッとした様子で小さく笑い返されて、その後、ゆっくり腰が引かれていった。
「ぁ……」
 ぬるると引き抜かれていく感覚にゾクリとした快感が走って、口から熱い息がこぼれ出ていく。そしてぎりぎりまで引き抜かれた後は、今度こそゆっくりと、またそれが押し入ってくる。
「はぁ……」
 今度はこちらも、熱のこもった息を吐くだけだった。
 初めてのくせに。難しいと言ったくせに。集中させての言葉通り、必死でゆっくりと腰を使う相手を見ていたら、無理すんなよとすら言えそうにない。
 初挿入だってのに、飽く迄も、相手はこちらを気持ちよくさせたいのだ。だったら、先にイッてもいいよ、なんて事を言うよりも、気持ちよくなる事にこちらも集中するべきだと思った。
 充分に時間をかけて慣らし拡げられた体は、ちゃんと快感を拾えるはずなのだから。
「んっ、そこっ」
 気持ちのいい場所を擦られた時に、そこがいいと伝えてやれば、わかったと頷かれてその場所をちゃんと擦ってくれるくらいには、相手は起用だし物覚えだっていい。というか、こういう方面においても、彼は常に優秀だった。なんせ、キスから抜き合いに発展して、彼を抱くようになってさえ、彼が童貞だなんて全く思わないくらい、こういった行為に手慣れた様子を見せていた。
 それらが全て、経験に基づいたものではなく、知識からのみだったなんて、本当に驚く。
「ぁ、ぁっ、ぁあ」
 気持ちのいい場所ばかりを重点的に刺激されて、さすがにこちらも追い詰められていく。たまらなくなって自身のペニスに手を伸ばした。
「イケそう?」
「ん、いい、いく、いける」
 頷いて、握ったペニスを自分で扱き出せば、相手の腰の動きも加速する。立場が代わっても、できれば一緒に果てたい、というこちらの気持ちに沿って、それを目指してくれるのは変わらないらしい。
 こちらに揺さぶられて甘い声をとろかせている時と違って、相手は随分と切羽詰った必死な様子なのだけれど、自分のためにと発揮されるその集中力がたまらなく嬉しくて、必死な様子がとてつもなく可愛いと思った。

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いつか、恩返し16

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 今だから言う、というのは、今日あたりいい加減抱かれることになるだろうという予測を、肯定されたようなものでもある。そう思った矢先に、短な宣言が伝えられる。
「抱くね」
「ああ」
 頷けばアナルから相手の指が引き抜かれていき、暫くして、今度はペニスの尖端が押し当てられるのがわかる。期待と興奮と混じりに見上げてしまう相手の顔は、自分と同じように期待と興奮とが混じっているみたいだった。さすがにもう、キラキラとした輝きはない。
 目があって、少しの間黙ったまま見つめ合う。先に口を開いたのは、相手の方だった。
「楽しみ?」
「そりゃあな。お前は?」
「もちろん楽しみでもあるけど、」
「あるけど?」
「嬉しいって気持ちがとにかく強いかな」
「ちょっと気が早くないか? まだ入ってないのに」
「確かにそうなんだけどさ」
 苦笑する相手の顔が、前屈みに寄ってくる。両手を伸ばして相手の肩を掴み、相手を引き寄せると同時に、自分自身も軽く身を起こして、相手へと顔を寄せた。
「ね、好きだよ」
 柔らかな笑いに変えた相手が、甘い声で囁いてくる。
「……俺も、」
 好きだ、とまでは言えなかったが、それは相手に唇を塞がれたからにすぎない。
 軽いキスを何度か繰り返している中、ぐっと足を抱え直されて、くる、と思う。その直後、ぐぷっと太く熱い塊が押し込まれたのを感じた。
「ぁうぅっ」
「痛い?」
「いた、くなっ」
 痛くはない。でも指とは違う質量が、相手のペニスが、自分の体を押し開いて貫いていく、というのを意識せずにいられない。多分、体にかかる圧のせいだ。こんな風にのしかかられるみたいな格好で、解されたことはなかったから。
「痛かったら、言ってよ」
「ん、ぁ、ぁああぁあ、ああ」
 こちらが頷くのも待たずに、そのまま体重をかけられて、ぬぷぷと体内に相手のペニスが沈んでいく。それを感じながら吐き出す息は、戸惑いの交じる情けない音を乗せている。
「おまっ、おまえっ」
 ほぼ一息にきっちり最後まで繋がってきた相手の動きが止まって、文句の一つも言ってやろうと口を開いたけれど、上手く舌が回らない。強い痛みは確かになかったが、それなりに動揺はしていた。
「ゆっくりするより、こっちのが楽かと思って。経験的に」
 経験的にだなんて言われてしまうと、こちらは返せる言葉がない。
 彼を初めて抱いた時、めちゃくちゃ気を遣ってゆっくりと挿入したけれど、確かにずっと、ふぅふぅ荒い息を繰り返しながら辛そうな顔を見せていた。大丈夫って言いながら無理やり笑顔を作る姿に、胸を締め付けられるような思いだってした。さっさと繋がってしまった方が楽だった、と言われても納得ではある。
 不満を残しながらも口を閉じてしまえば、相手は少し困ったように笑って、ゴメン嘘、と続けた。
「うそ、って?」
「ゆっくり挿れてあげたかったけど、無理だった。思ったより難しい」
「思ったより?」
「ごめん。これは意図的に隠してたんだけど、ほんの数分前まで、童貞だった」
 はぁあああと声を上げたら、どうやら腹筋にけっこうな力が入ったらしい。その結果、二人同時に呻く羽目になった。

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いつか、恩返し15

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 気持ちよさそうで幸せそうな相手を前に、可愛いと繰り返す自身の感情がゆるりと変化し、目の前の相手をただ素直に愛しんでもいい存在なのだと認識しだした頃。
「そろそろ、代わってみる?」
「えっ?」
「セックスする時の立場の話。って言っても、ちゃんと気持ちよくなれるのに俺もそこそこ時間掛かったし、暫くはお前の後ろ慣らしつつ最終的には俺が抱かれるってのでいいけど」
 抱かれて気持ちよくなるってことに興味あるだろ、と続いた言葉に頷きながらも、興味があるのはそれだけじゃないな、とも思っていた。
 自分が抱かれる側に回るというのは、相手からすれば、好きな子を抱くというセックスになる。彼が自分に向かって可愛いと言うのかはわからないが、言ったとしてもそこに優越感や見下しや憐憫なんか欠片もないのは最初からわかりきっているわけで、どんな風に抱くんだろう、彼に抱かれている自分相手にどんな感情を持つんだろう、という興味だ。好奇心、ではないと思う。
 そこから先、前戯で彼にアナルを弄られる、という過程が増えたけれど、彼のように自分で自分の体を慣らして拡げるというような事はしていない。どうしても自分で自分の体を開発したいなら止めないけど、できれば全部任せて欲しいと言われたせいだ。
 自分で自分の体を開発、という部分に興味だったり好奇心が発揮されていたら、とっくに弄っていただろう。それに、相手が自分に対して何か要望を口にするというのが珍しかったし、一から全部相手任せで自分の体を変えられていく、とういのもそれはそれで楽しそうかなと思ってしまった。こっちは好奇心だろうな、という自覚はある。
 いくら全部相手任せとは言え、さすがに中を洗うだのの準備は自分で済ませたけれど、それ以外は本当に相手に委ねていた。ゆっくりじっくり、こちらのアナルを弄り拡げて、その場所で快感が得られるようにと変えられていく。
 元々抱かれる側も経験してみたい気持ちはあったし、目の前で彼の体が変化していく過程をずっと見てきたわけだし、そんな場所を弄られるという違和感はあっても不快感はなく、自分の体が変えられていくのも、目の前の彼がいきいきと楽しそうにしているのも、面白かったし楽しかった。
 好きだ好きだと言いながらも、こちらの様子を窺って、こちらの好奇心やら興味やらを満たせるようにと寄り添い協力してくれている、みたいなイメージが強かったから、そんな彼がこちらの体を好き勝手弄って楽しんでいる、という事実が新鮮だ。そんな彼を面白がっている、という部分も見抜かれてはいるようだが、もちろんそれを咎めるような相手じゃない。
 ただ、こんなにも抱きたい意思があったなら、もっと早く言ってくれればよかったのに、と思う気持ちも強い。その気持のまま、口を開いた。
「こんなに俺を抱きたいと思ってたなら、もっと早く言えば良かったのに」
「俺はちゃんとタイミング考えて行動してるよ。お前の興味や好奇心をただ満たしてやるだけの、抱く側セックスがしたわけじゃないからね」
「ん? どういう意味?」
「お前が俺の策に嵌って、ゆっくりじっくり、俺への気持ちを育てるの待ってたよって話?」
「んん??」
「俺を恋愛的な意味で好きになって、とは言わないって言ったけど、そういう意味で好きになって貰う努力をしてなかったわけじゃない。このまま恋人ごっこができればいいって気持ちも嘘じゃなかったけど、ごっこが外れる恋人になれたらいいなと思う気持ちがないとは言ってない」
「それを、今、言うのかよ」
 もちろん今だからこそ言うんだよと笑う顔は、なんだかキラキラと輝いて見えた。

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いつか、恩返し14

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 結局、彼が一番問題にしたのは、優越感だの見下しだの憐憫からの可愛いではなく、そんな自分に嫌気がさしている、という部分だった。こちらが自己嫌悪じみた感情を持つことで、彼と距離を置きたがったり、せっかくなんだかんだ着々と進展している恋人ごっこが中断されるのを嫌がった。
 ある意味、徹底している。彼の主張は一貫していて、酷くわかりやすい。
 しかも彼は、そんな彼の主張を理解していながらも、割り切れずに気持ちを揺らすこちらに対して、なぜかかなり好意的だった。
 お前は根っこの性質が善人なんだよと言って、正直者のお前とはむしろ安心して付き合えると笑う。全くいい意味で使ってないことを教えたというのに、可愛いって言っていいよとも言う。実際に可愛いと言えば、嬉しさと恥ずかしさを混ぜたみたいな反応をする。その反応すら可愛いと思ってしまうこちらに、楽しげに笑ってみせたりもする。
 優越感で見下されて、健気で不憫で憐れだ、と思われることが嫌ではないというのが正直かなりの驚きだ。彼を見下している相手が自分だという部分が、ますますその気持ちを大きくさせる。だって、本来なら彼を見下せる要素なんて欠片もないことは、自分自身良くわかっている。
 なのに、彼の言い分としては、どんな感情からだろうと、可愛いって思われて大事に扱ってもらえるなら儲けもの、だそうで。可愛いって気持ちからたくさんのキスが貰えるなら、断然そっち優先で、見下しも憐憫も気にしないという割り切り方がすごい。
 そこまで割り切られてしまったら、こちらはもう何も言えない。相手が喜ぶならと、なるべく気にせず、可愛いと思ったままを口から吐いて、可愛いと思ったまま相手に触れるセックスを繰り返した。
 だんだんと行為に慣れて、変化していく相手の体も、相手の反応も、いちいち可愛くて仕方がない。
「ぁ、ぁぁ……ぁあ、ぃい……きもちぃ……ぁ、っ」
 気持ちよさそうにとろける声を聞きながら、可愛いと呟くように告げてキスを落とした。
「んっ、ふふっ」
 くすぐったそうに、嬉しそうに、笑う顔もやっぱり可愛くて、何度もキスを繰り返す羽目になる。こんな時、決していい意味ではないはずの可愛いでも、彼にとってはいい意味の可愛いと変わらないのだと、思い知らされるようだった。
「ぁんっ……ね、……も、いきた、」
 甘えた声にねだられて、穿つ速度をあげていく。あっあっと溢れる声が連動するように早く、こらえきれないとばかりに少しずつ音量をあげていくのを感じながら、なるべく同時に果てられるようにと調整する。
 ほぼ同時にイケた時の達成感がたまらなく好きで、つい狙ってしまう。お前らしいと笑った相手も一応は協力的だった。
「ぁ、ぁっ、あっ、いく、いくっ、も、いっちゃうっ、ねぇっ」
 そう言いながらも必死に耐えて、こちらの絶頂が近づくのを待ってくれているのだ。
「いいよ、俺も、いく」
 告げればホッとした様子で緊張が緩み、次いで腸内が大きくうねる。
「あっ、あああっ」
 気持ちよさげにトプトプとペニスの尖端から白濁を吐き出す姿を見ながら、収縮する腸内に持っていかれるまま自身もまた吐精した。
 しばし余韻を堪能してから、ゆっくりと繋がりを解いて、彼の隣に寝転がる。甘えるみたいにすり寄ってくる体をゆるっと抱きかかえて、無言のままちゅっちゅと顔のあちこちに軽いキスを落とせば、やっぱりくすぐったそうに、嬉しそうに、んふふと笑ってみせる。
 可愛い可愛いと繰り返す内に、それを彼が幸せそうに受け止めるのを見ている内に、だんだんと優越感だの見下しだの憐憫だのが、自分の中でもどうでもいいものとなって薄れていくのは、確かに感じていた。

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いつか、恩返し13

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「そんな顔されると困るな」
 疲れ切った顔でこちらを見ながら、言葉通り困ったように苦笑されて、そんな顔を見せられて困るのはこっちも一緒だと思う。多分きっと同じような困り顔を見せながら、それでもまずは謝ろうと思った。
「ごめん」
「謝ってほしいわけじゃないって」
「けど、無理させた、し」
「そこは加減できないほど夢中になった、って思っとくからいい。それより、今の気持ちが知りたい」
「今の、気持ちって……?」
「だって気持ちよかったサイコーって顔じゃないから。イッて冷静になった今、どんなこと思ってんのかなって。思ったほどには、楽しめなかった? やっぱ今後は、突っ込むのはなしで、手で抜きあうほうがいい感じ?」
 ああ、そうか、と思う。
 一緒に気持ちよくなりたいこちらの気持ちに、ただ寄り添ってくれているだけだとわかっていたのに。穴だけ差し出してこちらが気持ちよくなるだけだって、彼にとっては充分に満足する好きな子とのセックスだとわかっていたのに。
 こちらがこの行為を楽しんで、気持ちよくイケるかどうかこそが彼にとっては大事なのだ。好奇心でいいのも、恋愛感情でなくていいのも、その好奇心をもっと満たすためにもう一度したいと言われる方が、彼にとっては嬉しい事だからなんだろう。
「お前が嫌じゃないなら、またしたい」
 なら良かったと安堵されて、ほらな、と思う。
「ただ、次したら、お前を可愛いって言うの、我慢出来ないと思う」
「へ?」
 間抜けな音を漏らしながら呆気にとられた顔をされて、それすら可愛いと思ってしまうから、どうやらまだ行為中の気持ちをかなり引きずっているらしい。
「可愛い」
 その顔が、とまでは言わないまま、顔を寄せて軽く唇を塞いでやった。
「可愛いんだよ、お前が」
 告げて何度かキスを繰り返せば、キスの合間に、えっ、とか、あの、とか短な戸惑いが漏れる。うっすらと目元が赤く染まっていくのも見えてしまって、やっぱり胸の中がもやもやとしてしまう。
 可愛いと言われて、怒らないどころか多分きっと嬉しいか照れくさいのだろう相手に、なんでだと八つ当たりじみた気持ちまで湧きそうになって、慌てて顔を離した。でももう、遅かったらしい。
 こちらの顔を見た相手が、頬を上気させたまま訝しげに眉を寄せて、それから不安そうに瞳を揺らす。
「可愛いって、いい意味ではないんだな」
 喜んじゃいけなかった? と聞かれて、喜ばせてゴメンと謝った。さすがに落胆を隠せない様子に胸が痛い。
「優越感と見下し、だよ。俺にはっきり恋愛感情って呼べるものがないのわかってて、好奇心でいいって言いながら、必死になって俺に抱かれてるお前が、健気で、憐れで、どうしようもなく可愛いんだ。なんで俺なんかにそこまでって思うのに、お前の献身的な好きを見せつけられるたび、たまらなく嬉しい。あのお前が、俺をここまで求めてるって事実に、多分興奮してる」
 そしてそんな自分にかなり嫌気がさしてる、と伝えれば、相手は困ったように笑って、そういうとこも好きなんだけどね、と言った。
「可愛いって思った部分だけ抜き出して俺に伝えて、何を可愛いって思われてるかわからないまま喜ぶ俺を見て、心の中でバカにしたり気を晴らしたりしないんだよな、お前って。それどころか、バカ正直にお前を見下してる優越感で可愛いと思ってる、なんて言ってくるんだもん」
 そういう所すごく好きだよ、と続ける声は穏やかで優しい響きをしていた。

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