今更嫌いになれないこと知ってるくせに4

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 目を閉じて思い浮かべるのは義兄なのか甥なのか。正直良くわからない。それくらい、記憶の中のまだ姉の恋人だった頃の義兄と、しばらく見ないうちにでっかく成長した甥っ子の外見は似ている。外見が似ているからか、多分声の質も近かった。
 先程聞いた、掠れて甘い声音を思い出すだけでゾクリとする。
 もちろん義兄のそんな声を聞いたことはないけれど、頭の中ではあれも義兄の声になる。
 頭のなかで自分に触れる手を、甥っ子と認識したくない心理が働いているのは認める。
 自分より10も年下の、弟のような存在のはずの彼までを、そういう対象で見てはいけないという強い思いがある。さらに今現在、薄いドアを挟んだ向こうのキッチンで甥っ子が朝食を作っているのだ。そんな相手を自慰の対象にする罪悪感は大きすぎた。
 だからなおさら、義兄のことを強く思い浮かべる。必死に声を噛み殺しながら、心のなかで何度も義兄を呼んだ。
 義兄相手の自慰行為はもちろん初めてではない。しかし、久々にその感覚を思い出すと同時に、スッと心が冷えていく気がする。なぜなら、そこには苦々しい記憶しかないからだ。なんせ相手は、その想いに気づくずっと前から姉の旦那だ。
 優しくて、物知りで、頼もしくて、こんな兄さんが居たらいいのにと思っていたら、姉と結婚して本当の兄になってしまった。最初はただただ嬉しかったのに、優しいのも、色々教えてくれるのも、困った時に助けてくれるのも、全部、自分が彼の妻である姉の弟だからなのだと、気づいてしまったのはいつ頃だっただろうか。
 姉と付き合ってなければ知り合うこともなく、そのまま姉と結婚しなければ自分との縁も一切残らず切れてしまうだろう相手。10も年が違っていたら、そもそも友人として知り合うような機会はなく、姉を介さず友情を育むような関係にももちろん発展しない。結局自分は、姉と結婚したら付いてきただけの付属品だ。そう自覚した時の絶望感を忘れられない。
 義兄なんて好きなっても、いいことなんてひとつもない。ずっと苦しいばっかりだった。
 実家から逃げた後、大学では女性とも男性とも、機会があれば取り敢えず付き合ってみた。中にはそれなりに楽しく過ごせた相手もいる。自慰の相手に義兄を思い浮かべるなんて真似は、とっくの昔に卒業していた。
 けれど未だになかなか実家に顔を出せないくらいには、義兄に心囚われたままなのだと思う。仕方なく実家に帰る事があっても、極力顔を合わさず逃げまわっているから、実は実家を出た後、義兄と会話を交わしたのは数回しかない。
 相手だって年をとって、今ではアラフォーのおじさんになっているはずだから、きちんと向き合ってみたら意外と平気になってたりするのかも知れないが、もしそうならなかった場合を考えたら怖すぎた。欠片も想いを告げることなく、無理矢理に押し込め隠した気持ちは厄介だ。せっかく日々を穏やかに過ごせているのだから、間違って再燃なんてされたらたまらない。
 そう思っていたはずなのに、迂闊にも程がある。すぐに甥っ子を追い返せなかった自業自得を自覚してはいるが、甥っ子との生活を楽しんでいる場合じゃなかった。
 義兄を想って自慰をする羽目になって、余計なことを色々と思い出してしまった。
 体の熱は自ら与える刺激に高まっているのに、抑えきれない胸の奥の苦しさに、涙がボロリとこぼれ落ちて行く。

続きました→

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに3

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 義兄に抱かれる夢を見た。正確には、キスをされて頭を撫でられて可愛いと言われて愛撫を受ける程度の、抱かれるとまではいかない夢だったけれど、そんな夢を見てしまった衝撃と居たたまれなさは絶大で、泣きたいくらいに最悪の目覚めだった。
 夢を見た原因なんてわかりきっている。一昨日、とうとう滞在2週間目に突入した甥っ子のせいだ。ワンルームの小さな部屋で、在宅中はずっと甥っ子と一緒、なんて生活を続けているからだ。
 このままでは色々マズイと思いながらも、結局、追い出せずにずるずると居座られ続けている。その結果がこれだった。
 相手は自分が仕事に出かけている間は自由に過ごしているのに、自分の方は仕事にしろ家の中にしろ四六時中他人の気配がある。そんな中で日々溜まるのはストレスだけじゃなかった。もっと端的にいうと、自己処理ができていない。要するに抜いていない。
 さすがにこの年齢になって夢精とはならなかったが、夢のせいもあって、朝っぱらからベッドの中で悶々としてしまう。しかも、体の熱を持て余して吐き出す息が、なんだかそれだけでもイヤラシく響く気がして、隠すように枕に顔を埋めてみたら普段とは違う匂いを感じてしまい、余計に体の熱が上がってしまった。
 狭いシングルベッドに甥っ子と二人で寝るなんて真似は絶対にお断りだったが、夜間あまりしっかり眠れていないだろう甥っ子に、昼間ベッドを使うことを勧めたのは自分だ。普段と違う香りは、すなわち甥っ子の匂いだった。だからこれは自業自得なんだとわかっているが、ますます泣きたい気持ちになった。
 ああ、どうしよう……
 今日も仕事があるのだから、早いとこ収まって貰わないと困る。なのに焦れば焦るほど、今もベッドのすぐ隣の床に冬物の厚手の掛け布団を敷いて、その上で寝ている甥っ子の存在を意識してしまう。
 時計の確認もしていないが、甥っ子がぐっすり寝ているのなら、こっそりトイレで処理してくるというのもありだろうか?
 しかしこちらが動いたら、甥っ子はあっさり目を覚ます可能性が高い。これは実際、夜中トイレに起きた時の実体験からも明白だ。いくら厚手の掛け布団の上とはいえ、やはり眠りが浅いんだろう。
 昼間ベッドで足りない分の睡眠を補っているにしろ、夜間しっかり眠れない生活を続けさせるのも気にかかってはいた。しかもなんだかんだ朝と晩は二人分の食事を用意してくれてもいる。
 朝食は簡易なものだが、それでも自分が起きだす1時間前には携帯のアラームをセットして、朝食を作り始めることを知っている。あの小さなキッチンで、どれだけの時間を使って夕飯を作っているのかは知らないが、大学に行く気で居る受験生の夏休みの過ごし方として、これは明らかにオカシイだろう。
 こちらのやましい事情は別にしたって、ここに居続けるべきではない理由なんて次々と湧いて出てくるのに、当の本人は未だその気がまるでないようだ。そして、結局それを許しているのが自分なのだともわかっていた。
 そうだ。本気で追い返せないのは、なんだかんだ彼の居る生活を楽しんでいるからだ。彼の作ってくれる食事も、何気ないやりとりも、懐かしいとか子供の成長が嬉しいとかではなく、なんというかとにかく新鮮だった。
 その成長過程を共に過ごさなかったせいか、口調や態度には極力出さないよう注意しているものの、弟のように愛していたかつての甥っ子とは、やはりまったく別人として感じている。
 頭のなかではあの甥っ子が成長した姿なのだとわかっているつもりだが、それでもここ数年決まった恋人もいない身としては、初恋とも言える相手にそっくりな外見の男が、ほぼ無条件に好意全開で接してくれるこの生活が魅力的でないわけがなかった。
 年下の甥っ子相手に強く出れない理由に、やはり義兄そっくりに育ってきている甥っ子への下心も混ざっているのかと思うと、なんともやる瀬ない。
 はああと深い溜息を枕の中に吐き出せば、控えめな音で甥っ子の携帯が鳴り出した。
 その音はすぐに止まり、甥っ子が起きだす気配を背中に感じる。うつ伏せて枕に顔を埋めた状態のまま、思わず息を潜めてその気配を追いかけた。
 んんーと音になるかならないかの息を吐きながら伸びをして、それからどうやらベッドの端に手をかける。そのままぐっと近づく気配に体を固くしていたら、さらりと頭を撫でられた。
「にーちゃん、おはよ」
 そっと掛けられる挨拶の声は、寝起きのせいか少し掠れていて、なのに酷く甘ったるい。しかも彼が立ち上がる直前、近すぎる気配とともに頭の上で響いた小さな音は、まるでキスのリップ音のようだった。
「さて、朝飯作るか」
 やがて呟くような独り言を残して、部屋の中から彼の気配が消える。
 居室と狭いキッチンとを隔てるドアが閉められる音を聞くとともに、詰めていた息を大きく吐き出した。頭のなかは混乱でいっぱいだった。
 控えめとはいえ携帯のアラームが鳴るせいで、なんとなく意識が浮上してしまう朝は多いけれど、覚えがある中ではこんな真似をされるのは初めてだった。深く寝入っていると判断されたのか、それとも、体の熱を持て余して悶々としている現状を知られて揶揄われたのか。
 前者でも後者でも意味がわからないことには代わりがなく、今現在明確なのは、キスされた気になって昂ぶる自分自身の浅ましさだけだ。
 彼が作り終えた朝食をこちらの部屋に運び始めるまで、短く見積もっても30分以上はあるだろう。
 本当に最悪の朝だと内心毒づきながら、昂ぶる自身へそっと手をのばした。

続きました→

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに2

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 食事は外食や弁当類に頼りっきりだと話したら、甥っ子は張り切って自分が作ると言った。飲み物と調味料程度しか入ってない小さな冷蔵庫と、一口コンロの小さなキッチンで、高校生男子に何が出来るというのか。しかし、いいから何も買わずに帰って来いと言われて帰宅すれば、小さなテーブルの上に所狭しと料理の皿が並んでいる。
 調理器具すらたいしたものは揃っていなかったはずなので、結局スーパーで買った惣菜を皿に出しただけだろうと思った。しかし口に入れて違うことに気づく。
「あっ、これ……」
「わかった? ばーちゃんの味。っつーかにーちゃん的にはオフクロの味? みたいな」
 そこですんなりそんな言葉が出てくるあたり、間違いなくこれは実家の味付けなんだと確信した。しかし意味がわからない。
「え、何お前、母さんに料理教わってんの?」
「色々とあって、簡単に作れそうなものだけ幾つか習った」
「色々ってなんだよ。しかもなんで母さんに」
「だってばーちゃんの味とうちの母さんの味って違うんだもん。にーちゃんに振る舞うこと考えたらばーちゃんに習わないと意味無いじゃん」
 どうよ懐かしい? なんて言いながらのドヤ顔に、嬉しいとか懐かしいとかではなく不信感が湧いた。親と喧嘩した衝動で家出してきたはずではないのか。
 眉間に力が入ったらしく、対面に座る甥は若干不安そうな顔になった。
「美味しくない?」
「そうじゃない。あざとい真似しやがってとは思うけど、確かに懐かしいし美味いよ。ただお前さ、ここ来たのって、まさか計画的?」
「あー……」
 しまったという顔をするから図星なんだろう。
「親と喧嘩して飛び出して、行くとこなくてここ来た、ってわけじゃないんだな?」
「進路で揉めてるのは本当。でも衝動で飛び出てきたわけじゃない。最初っから、夏休み入ったらここ押しかける気で計画立てたよ。計画って言っても、主に金銭的なものだけど」
 往復の交通費とある程度の食費は用意したけど、フライパンと鍋から買わなきゃならなかったのはちょっと予定外だったと言って、甥っ子はすねたように唇を尖らせる。
「ああ、食費……とフライパンと鍋な。金は後で渡すよ」
「やった。そう言ってくれると思ってた」
 うひひと笑う顔は、図体ばっかり大きくなっても、まだまだ子供っぽいあどけなさが残っていると思う。大学受験を控えた高校生相手に感じていい感情なのかは微妙かなと思わないでもないけれど、かなりホッとしたのも事実だった。
 自分が知る甥っ子は小学生の頃までが大半で、後は逃げきれなくて仕方なく実家に戻った際に顔を合わせた記憶しかないのだ。成長して突然やってきた現在の甥っ子は、記憶の中の甥っ子よりも記憶の中の義兄に近い。
 なるべくかつての関係を思い出すようにして接しているし、甥っ子自身が離れていた時間を感じさせない慣れ親しんだ態度を見せるおかげで、なんとか普通っぽい態度がとれているだけでしかない。実際の所は、ふとした瞬間に甥っ子相手にドキドキしっぱなしで、慌てて実家を離れた自分の大学受験期以上にヤバイ気配が濃厚だった。
 正直さっさと帰って欲しくてたまらない。距離をおいて心の奥底に封じ込めた、義兄への想いを刺激しないで欲しかった。
「つかその計画では何日ここ泊まる予定なんだよ。昨日泊まってわかったと思うけど、長期滞在なんて絶対無理だからな?」
「それはにーちゃん次第かな。答えが出るまでは帰らない」
「なんで俺次第なんだ。お前が出すのは自分の進路の答えだろ」
「まぁそうなんだけどさ」
 フッと黙り込んでうつむく顔の大人びた様子に、ああやっぱりこれは早々に追い出さないとかなりマズイと思って、否応なく高鳴る心臓に内心で舌打ちした。

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに1

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 10ほど年の離れた姉が二十歳に産んだ子供は、年の離れた弟のような気がしていた。だって自分と姉の年の差と同じだったから。
 家が近かったのもあって、精一杯アニキ風を吹かせながら、確かにその甥っ子をめちゃくちゃ愛してきた自覚はある。小さな頃は本当に見た目も仕草もなにもかもが可愛かった。
 これはまずいと気づいたのは自分が高校生の頃で、大学受験などを理由に彼との距離をいっきに離した上、そのまま遠方の大学に進学して逃げてしまったが、正直に言えば彼には一切落ち度はない。もっと正直に言うなら、逃げたのは彼からではなかった。彼の父親である義兄から逃げたのだ。
 義兄を恋愛的な意味で好きなのだと気づいてしまったら、甥っ子は甥であるより先に、好きな人の息子になってしまった。まだ小学生の無邪気な彼の中にまで、義兄の面影を見てしまうなんて重症すぎる。
 義兄には手が出せなくても、懐いてくれる甥っ子になら簡単に触れられる。それどころか向こうから抱きついてくる事だってある。そんな事でグラグラと理性が揺れる自分が心底怖かった。
 就職ももちろん、大学ほどではないが実家からそこそこ離れた場所に決めたし、在学中も卒業後もなるべく帰省はしていない。なのにある日いきなり、自宅に甥っ子が押しかけてきた。
 心臓が止まりかけるほど驚いたのは、成長した甥っ子の姿が、もう随分と昔、姉の恋人として初めて出会った頃の義兄にそっくりだったからだ。玄関扉を開けたまま硬直していたら、しばらく泊めてとぶっきらぼうに吐き捨てた後、いささか強引に自宅にあがり込まれてしまった。
 勝手に奥の部屋へと向かう背中を慌てて追いかける。
「えっ、ちょっ、待てよ。なんでいきなり? 学校は? いやそれより姉さんは知ってんの?」
 気まずそうに黙ったままなので、これはもしかしなくても家出だろうか?
「黙って出てきたのか?」
 やはり沈黙で返されて溜息を吐き出した。
「自分で言えないなら俺が電話するぞ」
「しばらく泊めるから心配しないで、って言ってくれる?」
「言うわけ無いだろ。明日追い返すって言うよ」
「学校なら昨日から夏休み入ったよ。だからしばらく泊めてよ」
「お前が夏休みでも俺は普通に仕事あるの。子供の面倒見てる余裕なんてねーの。ついでに言うなら、大人顔負けに育った子供の寝るスペースもねーよ」
「にーちゃん、お願い」
 にーちゃんと呼ばれてグッと言葉に詰まる。そう呼ばせて喜んでいたのは幼いころの自分だからだ。そしてやはりそう呼ばれると、心の奥が疼いてしまう。きっと自分の中のどこかに、彼の兄を本気でやっていた頃の思い出が染み付いている。
「俺はお前の叔父であって兄貴じゃない」
「わかってるよ。でも俺が本当に困ったときは、助けてくれるんじゃなかったの?」
 本当の兄じゃなくても兄代わりで、血だって繋がった叔父なのだから、困ったときは何でも言え。なんてことを言ったのもやはり随分と昔のことだけれど、何度も繰り返したせいで、もちろん自分も忘れてはいない。
「黙って家を出てくるような悪い子に、無条件で味方するわけ無いだろ」
 甥っ子は少しだけ考えた後、進路で喧嘩してるのだと口にした。どうやらそれが家出の原因、ということらしい。
「でも責任の一端はにーちゃんにもあるんだからな」
「なんで俺?」
「大学入ったら全然こっち帰ってこなくなったじゃん。大学はもう少し遠かったけど、今は片道2時間くらいでそこまで遠くもないのにさ。俺までそうなったら嫌だから自宅から通えるとこに進学しろってうるさい」
「それで俺んとこ逃げ込まれたら、俺がますます姉さんに恨まれるだろ。てかそれ言ってんのお前の母さんでいいんだよな? 父親はなんて言ってんだよ」
「父さんも出来れば自宅から通えるところにと思ってるっぽいけど、理由は仕送り関係がでかいっぽいから、奨学金借りてバイトしてやりくりするって覚悟見せたら多分そこまで反対しない」
「いやいやいや。奨学金って借金だからな? なくて済むならない方が絶対いいぞ」
「それでも譲れないことがあんの」
「それって何? どうしてもそこじゃなきゃ学べない大学とかあるなら、姉さんだって納得するんじゃないか? ちゃんと話しあったのか?」
「それも含めてちょっと考えたいことあるからしばらく泊めて。答えが出たら帰るから」
 夏だしその辺の床で寝るんで構わないからとまで言われてしまったら、もともと甘やかしまくってた愛しい甥っ子をムリヤリ追い返せはしない。
 結局、しばらく泊めるから心配いらないという電話を姉に入れる羽目になった。

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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった(目次)

日々投稿する小ネタのつもりで書いたもので、正直こんなに長く書く予定がまるでなかったものなので、キャラの名前は一切出てきません。途中けっこう後悔しました。でも名前つけて出すタイミングがわかりませんでした。
彼だのあいつだのが誰を指すのか、わかりにくい可能性があります。読みにくかったらすみません。
 
登場人物は 視点の主・親友・クラスメイト の3人です。
親友に彼女が出来たさい、親友に片思いしている主にクラスメイトが、やらせるなら慰めてやると代理セックスのお誘い。
行為を重ねるうちに主の気持ちは親友からクラスメイトへ移っていくが、好きになったとはいえずに親友が好きな振りを続けてしまう。
そんな主ですが、最終的にはクラスメイトと恋人になります。

下記タイトルは内容に合わせたものを簡単に付けてあります。
なお、シリーズに移すにあたって、「色々コネタ」「R-18コネタ」のカテゴリは外しました。「R-18コネタ」で投稿したものに関しては、タイトル横に(R-18)と記載してあります。
タグもこの目次頁に一括して載せ、各頁のものは外してあります。

12月31日追記。
続編「大学生になったら親友にも彼氏ができたかもしれない」(全2話)追加しました。

1話 おかしな誘いに応じる
2話 始める前の確認
3話 キスだけでもう気持ちが良い
4話 手と口で(R-18)
5話 重ねる行為に情がわく(R-18)
6話 親友に気付かれて話し合い
7話 親友の応援
8話 クラスメイトからの告白
9話 気持ちの確認
10話 恋人同士のH(R-18)

< 続編 >
大学生になったら親友にも彼氏が出来たかもしれない1
大学生になったら親友にも彼氏が出来たかもしれない2(終)

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった10(終)

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 今までも可愛いと言われながら触れられることは多々あって、恋人になったからといって、その言葉や響きに大きな変化があったわけじゃない。変わってしまったのはその言葉を受け取る自分自身だ。
「ん……、ふっぁ…ぁ……」
 薄いインナーシャツの上から両胸の先をいじられるだけでも、熱い吐息が抑えられない。胸の先がしびれるように疼いて、連動するように、触れられても居ないペニスの先まで疼いてしまう。
「胸だけでそんなに感じて、相変わらず可愛いな」
 少し楽しげに、そしてどこか嬉しげに笑む顔は優しい。この表情だって、前とそんなに変わったわけじゃない。ただ、気づけることが増えたのだ。
 そういえば、最初は楽しげだとか嬉しげだとかという表情だって、読み取れはしなかった。こちらにそんな余裕がなかったのもあるが、目の前の男はあまり感情表現が豊かではないせいが大きい。
 なのに今はどうだろう。可愛いという言葉の響きの中に、柔らかに笑む瞳の中に、愛しくてたまらないといった彼の感情が溢れているのを感じるようになった。パッとはわかりにくい彼の感情表現にも、ずいぶんと慣れてきたたようだ。
 嬉しくて、けれどまだ少し恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じるから、きっと赤面しているんだろう。
「いや、最近はますます可愛くなったか」
「だ、って、お前が……」
「俺が?」
「俺のこと、すごく好きって、わかるから」
「隠すのをやめたからな」
 好きだよと続く言葉に、やはり嬉しさ半分照れくささ半分。
「ねぇ、前は、本当に隠してた?」
「どういう意味だ?」
「好きって言ってくれるようになった以外、実はそんなに変わってない。気もして」
 気づこうとしなかっただけで、前からずっと、愛しいという気持ちで触れてくれていたに違いない。それを「優しい」という一括りにして、目をそらしていただけなんだろう。そのほうが都合が良くて、なにより彼と向き合うのを怖がっていたから。
「まぁ、最初からお前が好きで誘ったし、途中で気持ちが変わったわけではないからな」
「ずっと、気付かなくてゴメン。お前だって辛かったろ?」
 別の相手を好きだと言い続ける相手を、ずっと優しい態度で抱き続けてきたのだ。
「それを気にされると困るな。人がいいのもお前の魅力の一つではあるが、俺はお前の弱みに付け込んだだけだぞ」
 感度の良さと快楽への弱さは嬉しい誤算だったが、と続けながらシャツをまくり上げられ、胸の先を直に摘まれて捏ねられた。
「ぁああっっ」
 油断して上げてしまった大きな声が恥ずかしいが、相手はしてやったりと満足気だ。
 そのまま胸の先を緩急をつけつつクリクリと摘まれ続ければ、既に張り詰めたペニスの先から、トロリとこぼれる先走りを感じてしまう。
「ぁっ、あっ、ダメぇっ」
 その訴えに、彼はちらりと視線を下腹部へ落とす。
 シワになるからと制服のズボンは最初に脱いでいたので、きっと下着に広がる先走りのシミを見られてしまった。そう思うと体の熱が更に上がっていくのがわかる。自分で自分を追い詰めるような悪循環だった。
「このままイッてみないか?」
「ヤぁ、だっ」
「替えの下着はあるんだろう?」
 まだ恋人関係になる前、一度下着の中で果ててしまって以降は、確かに一応持参している。ただ、あの時は下着の上から握られ擦られたのが原因で、胸を弄られるだけでイきたくなんてなかった。
 両親共働きで案外家事スキルの高い相手は、汚してもまたウチで洗ってやるぞと言いながら刺激を強めてくるから困る。
「やっ、やぁっ、ダメ、ムリっ、むりだっ…て」
「仕方ないな」
 やめてもらえると思ってホッと息を吐いたその瞬間。
「あぁあっだめぇっっ」
 股間の膨らみをグリっと圧迫される刺激に、たまらず声を上げて果ててしまった。何が起きたかわからなくて呆然としていたら、汚れた下着を脱がされる。
「奥、触るぞ」
「今、何したの?」
「ん? ああ、膝で押した」
「ひざ……」
 そうか、あれは膝の刺激なのか。
「やだって言ったのに」
「だから胸だけでイかせるのは諦めた」
「ずるい……」
「言っただろう。もっとたくさんの快楽を刻みこんでやると」
 いつか胸の刺激だけでもイけるようになって貰うと宣言されて、今は触れられていない胸の先が、先ほどの刺激を思い出して疼いてしまうのだから、きっとそんな日もそう遠くなく訪れそうだ。
「お前から離れられないように?」
「そうだ」
「とっく、んあぁっ」
 とっくにそうなってる。と告げるより先に、ローションをまぶし終わった彼の指先に入口を掻かれて、別の声があがってしまう。
「お前が思うより、きっと俺は欲深い。この場所も、もっともっと気持ち良くしてやりたいが、しかし恋人になったことを後悔してる、などと言われるのも困るな」
「言わねーよ」
 即答したら、彼にしては珍しいほど、随分と嬉しげに笑われてマイッタなと思う。だって恋人になったら、なんだかだんだん相手が可愛くなってしまった。正確には、可愛いと感じるようになってしまった。
 だから、ぬるりと入り込んできた彼の指が与えてくれる、まだ緩やかな刺激に甘い吐息をこぼしながら。
「お前が好きだよ。お前こそ、もっともっと欲深く俺を求めて、俺なしじゃいられなくなればいいよ」
 告げたら中を弄る指の動きが止まった。驚いた様子でこちらを見下ろす呆然とした顔に笑いそうになる。というか笑った。
「本気だよ」
 笑いながらもダメ押しとばかりに本気を伝えれば、うっすらと相手の頬が色づいていくから困る。照れる彼なんて初めて見た。
 可愛いなぁという気持ちはどうやらそのままこぼれたらしく、ますます驚き照れさせてしまったので、彼が持ち直して行為が再開するまで少しばかり待たされたけれど、こんな風にまだ知らない彼を、これから先もたくさん知ることになるのだろうと思うと楽しみで仕方がない。この男と、恋人という関係に進めてほんとうに良かったと思った。

< 終 >
数話で終わるつもりだったのに、長々とお付き合いどうもありがとうございました。

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