弟の親友がヤバイ9

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 家には弟がいるし、男二人でしかも片方は高校生でと考えたらラブホなんてもってのほかで、結局近くのビジネスホテルのツインルームにチェックインした。
 なんでこんな所に来たかといえば、考えた末に出された彼の答えが、もう一度触れてみたいだったからだ。酷くしなければ本当に反応してくれるのか確かめたいそうだ。
 受け止めて応じる気があるなんて言葉を重ねるよりも、確かに手っ取り早くてわかりやすい。反応しないという事実に打ちのめされていた彼には、反応するという事実を突きつけてやるほうがきっといい。そう思ったから、良いよと返して連れてきた。
 もう一度触れたいと口にした彼も、まさか即座にビジネスホテルに連れ込まれるとは思ってなかっただろう。黙って後ろをついてきているが、背中に彼の緊張がはっきりと感じ取れる。
 部屋に入ってからは、交互にシャワーを使った。彼の手でイきさえすれば良いのかもしれないが、また口でされてしまう展開も多少は意識していたからだ。
 潔癖というほどではないと思うけれど、そんな場所を口にするのに綺麗に越したことはない。男が男のという部分で、行為に自分自身を重ねてしまいがちだからだろうか。萎えたら困るこの状況で、心理的な抵抗感は少なければ少ないほうが良かった。
 ホテル備え付けの簡易な寝間着を揃いで着て、片方のベッドに二人して潜り込むと、状況の異様さになんだか笑いたくなってくる。緊張すると笑ってしまうタイプなので、多分これは自分も相当緊張している。
「さっきからニヤニヤして気持ち悪いんですけど」
 そう思った矢先に、不機嫌な声が掛けられて苦笑するしかない。
「酷っ。緊張してんだよ、これでも」
 緊張すると笑っちゃう系なんだと言ったら、緊張すると怒ったみたいになる系ですと返ってきたから、今度は本気で笑ってしまった。ますますムッとした顔になったが、多分そっちも、ますます緊張したわけではないだろう。
「ごめん。可愛いなって、思った。後、おかげで少し、緊張ほぐれた」
「可愛い、ですか?」
「うん、可愛いよ」
 不信気な顔と声に、躊躇うことなく可愛いと返してやった。
「というわけで、キス、しようか」
「えっ?」
 本気で驚いた顔をするから、ますます可愛いなと思う。まぁ若干自己暗示的な部分もあるけれど。でも可愛いという気持ちが間違いなく湧いたことに安堵していた。
「俺が反応するの、確かめたいんだろ?」
「キス、で……?」
「正確には、君の想いに、反応する」
「想い……」
「復讐してやる、じゃなくてさ。できれば、俺を好きになっちゃった方の気持ちで、キスして欲しいかな」
 どう? と聞いたら、少し困ったような顔をされたけれど、そのままその顔が近づいてゆっくりと唇が触れた。
「もっと。全然足りない。もう一回」
 軽く触れただけであっさり離れていく唇に向かって、誘いをかける。
 その後もこちらが誘えば、誘った分だけ律儀にキスを繰り返してくれた。けれど一向に深くなる気配はない。そんな所に、相手の躊躇いや困惑や恐れや初心さを感じずにはいられない。
 それでも繰り返した分だけ、少しづつ変化は起こる。こわごわと掠めて行くキスが、柔らかに押し付けられるものになって、やがて離れ難いと言わんばかりに最後軽く吸われるようになった。
 その焦れったいまでの緩やかな変化に、こちらもゆっくりと煽られていく。きざし始めた股間に相手の手をそっと導いてやれば、躊躇いながらもぎこちない指先が、変えた形をたどり始める。
 性感を煽ろうとする意志よりも、何かを確かめたがるような、その手の動きがもどかしい。
 はぁ、と熱い息を吐き出せば、ようやく誘う前に口が塞がれ、相手の舌が口内に伸びてきた。

続きました→

 
 
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弟の親友がヤバイ8

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 弟と幸せにと丸投げした方が、彼にとっても幸せなのではと思う気持ちはもちろんあった。弟が彼を想う気持ちは本物だと思うし、あの弟ならば傷付いた彼を幸せにも出来そうな気がする。
 ただそこには兄としての欲目や、弟の恋を応援したい気持ちやらも当然含んでいるだろう。更に言うなら今回の件の発端が弟で、そこに至る原因が自分にあるなら、責任を取るのは兄である自分の方だという気持ちもある。
 しかし責任という気持ちは、余計に彼を傷付けないだろうか?
 彼に対して恋愛感情が湧くかと言えば正直かなり微妙だ。それでも、同情だったり罪悪感だったり責任感だったりが根本にあろうと、もしまだ本当に自分を求めているというなら、彼の想いに応じてやりたい気持ちも嘘ではなかった。
 というところまで考えて、そういや弟の話しか聞いていなくて、彼自身からは復讐としか言われていない事実に気づく。弟の話を鵜呑みにしていたが、彼自身に別の思惑はないのか、そもそも弟の計画に乗って告白する気があったのか、恋人になりたいという気持ちがあるのか、まずはそこを確かめるべきじゃないのかと思った。
 応じる方向で彼と直接話しをしたい。まずは誤解をといて、それから彼の本心を自分の耳で聞きたい。そう弟に告げに行ったら、弟は笑ってそう言うと思ってたと言った。兄さんってやっぱり結構チョロいよねと続けられたのには少し納得がいかない。
 もし自分が彼に応じるとして、それで弟は構わないのかという疑問に対しては、彼の想いを応援したい気持ちがなかったらこんな計画は立ててないし、もっと早い段階で普通に口説いてたよと返されて納得した。
 自分が悩んでいる間ずっと彼と何やら連絡を取り合っていたらしい弟は、ものの数分で駅前のカラオケに呼び出しを完了し、これ以上泣かせたら許さないからねと釘を差しつつも自分を送り出してくれた。一緒に行く気はないようだ。
 カラオケ店の前で待つこと数分、やってきた彼は黙ったまま軽く頭を下げる。どうしたって気になってしまう目元はまだ少し赤いままで、顔色はあまり良くなく全体的にどこか疲れた様子だった。
 取り敢えず入ろうと促した言葉にも黙って頷くだけの彼を連れて入店したが、もちろん歌いに来たわけではないので、部屋に入っても機器類に触れることはしない。
「まず、一番先に言っておきたいんだけど、俺は別に弟を恋愛対象にはしていない。可愛いけど、大事な弟ってだけだ」
 小さな部屋の中、テーブルを挟んで向かい合って席につき、少し気まずい沈黙が流れた後で口を開いた。
「聞きました」
 彼の様子に、会話が出来るかを危ぶんでいたくらいだったので、はっきりと発せられた声にまずはホッとしてしまう。
「彼が貴方に何を話したか、貴方がなんと答えたか、多分、ほぼ全て聞いてます」
「そ、そうか」
 何やら連絡を取り合ってた中身がそれだったんだろうというのはわかったが、だったらそれも送り出すときに言っておいて欲しかった。
「でも俺は、弟を信じてはいるけど、盲信してはいないんだ」
「盲信、ですか」
「そう。弟からの情報だけじゃ全然足りない。というか、弟の話は補足的なものであって、俺が直接君から聞いてるのは、復讐って言葉と、後は弟に手を出されたくないなら抱かれろって脅迫だ」
「確かに」
「始めっから、俺を脅迫して抱くつもりだった? それとも、俺が素直に君の手でイかされてたら、弟の計画通り告白する気だった?」
「告白する気は、ありましたよ、一応。でも何しても、手だけじゃなくて舐めてすら反応がなかったから、その時点で色々絶望しました」
「いやだからそれ、酷いことされたら萎えちゃう系なんだってば」
 言ったら少し険しい顔になって睨まれる。ああまだそんな顔を向けてくる気概が残っていて良かったと、やはりまた少し安堵した。
「でも俺は、逆の立場で貴方にイかされてるんです」
「穴があったら入れたい盛りの男子中学生と、仕事で日々ヘロヘロになってる社会人とを一緒にするなって」
 苦笑しつつ続ける。
「本当に、幼い君に、酷いことをしたと反省してる。だからその結果の恨みも、生まれてしまった恋心も、君がまだそれを望むならだけど、受け止めたいと思ってる」
「恨みも?」
「そう、恨みも」
「絶望して、すんなり脅迫してでも抱いてしまえって発想が出てくるくらいには、エグい妄想もかなりしてきてますけど」
「うんまぁ、それは、わかってる」
 言えば相手は少し驚いたように目を瞠った。
「本当ですか? あいつの中の俺、けっこう美化されてますよね? その俺に同情したから付き合ってやろうって話じゃないんですか?」
 美化されてるって自覚あるのかと思ったらなんだか笑いそうだった。笑ってしまうのを堪えて、コホンと一つ咳払いしてから口を開く。
「あーうん、それは違う、かな。いやあいつの目を通した君の姿に、罪悪感煽られまくったのはあるから、それも一つの要因ではあるけど。でもさ、あいつが知らないことがあるってのも、話し聞いててわかってるし」
「あいつが知らないこと?」
「あの日、俺がどんな言葉で君を責めたか、弟は知らなかった。君に脅迫されたと言ったら、あいつ凄く驚いてたし。君たちは親友で、かなり色々と深い部分まで話をしているみたいだけど、でも弟が全てを知っているわけじゃない。あいつだって、君にあいつ自身の全てを見せているわけじゃない」
「それは、まぁ、確かに……」
「だから俺は、君自身の言葉を聞きに来たんだよ。弟から大体の事情は聞いた。君の気持ちも弟経由で聞いた。でも、君自身からは、復讐したいとしか聞いてない。今の君の気持ちはどうなってる?」
 そんなことを聞かれると思っていなかったとでも言うように、彼は口元を隠すように手を当てて考え始めてしまった。

続きました→

 
 
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弟の親友がヤバイ7

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 順番に話すねと言った弟の最初の話題は、やはり中二のあの時期のことだった。
 手を出してしまった直後くらいからだろう。急によそよそしくなって、家に呼んでものらりくらりと躱されて、問い詰めたら「お前の兄さんを好きになったゴメン」と謝られてビックリした。という最初の所で、さっそく待ったをかける。
「好きになった? その段階で? あんな目に合わせた相手をか? 嘘だろ?」
 疑問符ばかり飛ばす自分に、弟の罪だよね~という言葉と苦笑が突き刺さった。
「まぁ、好きになったっていうか、性癖を自覚させられた、ってのが正しかった気もするけど。あいつ女ダメみたいだし」
 後はショックで好きだと思い込んだ可能性とか? と続けてくる弟の言葉が胸に痛い。ちょっと脅しておこう程度の軽い気持ちで、本当に、随分と酷いことをしてしまっていた。
「それで俺さ、兄さん好きでもいいから友達やめないでって頼んだの。家に遊びに来てとは言わないから、これからも一緒に遊んでってさ」
 そうして普段は普通に親友として過ごしていたらしいし、彼の想いにわざわざ触れることもなかったようだが、でも色々気付いていくよねと弟は少し重めのため息を吐いた。
「高校入ってから、あいつかなりモテだしたけど、でも全部きっぱり断ってたし。断る理由が好きな人いるからだし。たまに俺が兄さんの話とか出すと凄く楽しそうに聞いてるし。でさ、聞いちゃったの」
「何を?」
「今もまだ兄さん好きなの? って」
 しかも肯定とやっぱり謝罪の言葉とを出されて、兄の何がそこまで彼を惹きつけるのか、気になって相当しつこく聞いたらしい。
「それでようやく聞いたのが、兄さんに手コキされてイかされたのが忘れられないとか、なんじゃそりゃだよ」
 頭にきてその話聞いた日に一回兄さん殴ってると言われて、いつだったか八つ当たりみたいにして殴られたことがあったのを思い出す。珍しい癇癪起こして理由も聞けないままだったが、まさか原因がこれだったとは思わなかった。
「その頃には俺も自分があいつを、親友ってだけじゃなく、そういう意味でも好きなんだろうって自覚あってさ。というかそんな理由で兄さん好きになってんなら、俺で良くね? って思うよね」
 これもう完全に、自分が手を出した事が発端で、弟がそっちに目覚めた系だと頭を抱える。
「ほんっとーにすまなかった」
「え、それ、何に対する謝罪?」
「色々だよ。お前の親友どころかお前まで男に恋愛感情抱くようになったとか、これもうどう償っていいかわからないレベルで動揺してる」
「いや別に、そこはどうでもいいって」
「どうでも良くない」
「だって兄さんが手ださなくたって、あいつの性癖は多分変わらないし、女は好きにならないと思うし、あいつが男ありってわかってたら、俺はやっぱりあいつをそういう方向で好きになっちゃうもん。それどころか、あいつが男なしだったとしても、好きになってたかもしれないし」
 すげーいい奴なんだよと語る弟に、わかるよと返した。弟があの男を特別に思っていて、大好きだなんてことは、昨日の二人を見ていたら疑う余地もない。ただそこに、恋愛感情まで含まれているとは、流石に思ってなかったけれど。
「話戻すけど、手コキされてって聞きだした後くらいからは、まぁそれなりにぶっちゃけた恋愛相談的なこともしてたわけ。兄さん好きって気持ちと、でもやっぱりそれなりに恨む気持ちとはあるでしょ。まぁ恨む気持ちがあるって自覚させたの俺だけど」
「はい待って。恨む気持ちを自覚させた? お前が?」
「まぁね。だってあいつ、自分の気持の整理もしないで、闇雲に兄さんの影追っかけてたからね。酷いことされたって自覚あんまりなかったからね」
 自己防衛かもねと言って弟は続ける。
「じゃあなんであいつ家来なくなったの? 兄さん好きならむしろ会いに来ればいいじゃん。それしないの兄さんに怯えてたからじゃん。好きって言いつつ怖かったんじゃん。あいつは兄さんにもっと怒っていい。ってのをけっこう時間かけて自覚してもらった」
「なんとなく読めてきたけど、昨日の復讐って、やっぱお前の発案?」
「え、ちょっとそれ、ネタばらし早くね?」
「何年お前の兄貴やってると思ってんの。あーでもまぁ、ちょっと納得できる部分もある」
 なんか全体的にアンバランスで、復讐と言いつつもすぐ泣きそうになっていた。
「ちなみに兄さんの手縛ったのは俺。色々考えてたけど、ソファで寝てくれて本当良かったよ。一応気は使ってタオルとか巻いたの正解だったっぽいね」
 弟の視線が手首に注がれて、そういやかなりガッチリ拘束されていた割に、痕などは残っていないことに気づく。
「そりゃどうも。で、復讐って何させるつもりで、本来の落とし所ってなに? あいつに俺を抱かせることまでは考えてなかったんだろ?」
「基本やられたことはやり返す。だから兄さんむりやりイかせるのだけが目的だったよ。まさか勃たないとか思ってなくて、完全に想定外。あいつめっちゃテンパってたと思う」
 それはどうかな。とは藪蛇になりそうで口にしなかった。
 弟はあの日自分がどんなセリフを掛けながら彼に触れたのかまでは聞いていない。弟の計画に乗って、それ以上のことをしようと考えていた可能性はあると思う。そうでなければ、弟に手を出されたくないなら抱かれろなんて話がサラッと出てくるとは考えにくい。
「一応聞くけど、それ成功してたら、その後どうするつもりだった?」
「告白?」
「誰が誰に?」
「あいつが兄さんに。てか、振られたって言ってたから、告白はもうしたんだって思ってた。正直、兄さんがその場でOKするかは五分くらいの確率って俺は踏んでたんだよね。それはあいつにも言ってあった」
「その数字、どっから出てんの」
「弟として過ごしてきた時間から? てかさ、俺の計画では、兄さんがあいつにむりやりイかされるじゃん? でもってあいつが、昔やられた事が忘れられなくて好きになりましたって告白するじゃん? 兄さん絆されてOKするか、ゴメンちょっと考えさせてって反応かなと思ってたの。でもって俺に相談してくると思ってた。泣くほど酷いフラレ方になる想定はゼロだった。おかげですげー焦って、兄さんじゃなくて俺にしなよとか言っちゃったの本当に下手うった。まさか二人の間で、俺に手を出す出さないなんて話が出てると思ってなかった」
 弟は酷く苦々しげに言い募る。
 後半部分は独り言のような愚痴に近いが、前半部分は確かに、そういった流れで告白されてたら、抱かれる覚悟まで決めたくらいだから告白を受け入れてたかもしれないし、さすがにちょっと待ってと保留して弟に相談していただろう可能性も高いなと思う。
「あー……まぁ、お前の読みは間違ってないよ。勃たなかったけど」
「そこは正直頑張って欲しかった」
「無茶言うな」
「でさ、あいつ確実に兄さんが俺をそういう意味で好きって誤解してるけど、どうしよう?」
「それ、俺に否定しに行けって言ってんの?」
「言ってる。てか兄さん的には今の話聞いててどうなの? あいつの気持ちに応えてやろうって気が少しでもある? それとも俺と幸せになってねって感じ?」
 さすがにすぐに答えられなかった。
「俺と幸せにってんでもいいけど、誤解といた上で、俺とのことに反対しない祝福する応援するくらいの事は言ってもらうからそのつもりで」
「うっ……わかって、る。けどさすがにちょっと、考えさせてくれ」
 適当に答えられるよりいいけど、でもなるべく急いでと言って弟は立ち上がる。
「あんな状態、ちょっと放置してたくないから」
 思わずそうだなと同意すれば、弟の表情が少しだけ和らいだようだった。
 取り敢えず部屋戻るけど、気持ち決まったら声かけてと残して、弟はリビングを出て行った。

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弟の親友がヤバイ6

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 先に昨夜何があったか聞かせてと言われて、渋々と話し始める。
 気づいたら手は拘束されてて、復讐だと言って弄られたけど、何されても勃たなくてとまで言ったら、インポなの? という言葉が早速飛んできた。発想があいつと一緒で苦笑する。
「俺、酷いことされたら萎えちゃう系なの」
 だから同じセリフを返してやった。
「えー何それ聞いてないんだけど」
「なんでお前に知らせなきゃいけないんだよ、そんなの」
 というかそんなの、自分だって昨日はじめて自覚したわ。
「あーでもそれか。そこかー……勃たない想定なかったー……」
「それとかそことか何?」
「こっちの話。後で話すからそっちの続き」
 ほら早くと急かされてため息を吐いた。
「でまぁ、泣きそうになってるからちょっとくらい付き合ってやってもと思って、復讐って何したら完了なのって聞いたんだよ」
 で色々あって抱かれることになったんだけど、と続けたら、今度はぎょっとした顔で抱かれたの? と茶々が入る。
「俺が風呂使ってるうちに気が変わったってよ。萎えたからもういいって言われてシャットアウトで終わり」
「てか、抱かれるのオッケーして風呂まで入ったのは事実なの?」
「事実だな」
「ちょっとくらいで抱かれるまでする? 兄さんビッチ説?」
「色々あったって言ったろ! なんだビッチ説って」
「同情とか?」
「違う。あー……まぁその、脅迫されて?」
 また弟の目が大きく見開かれた。
「脅迫? あいつが?」
「そう。まさに脅迫。てかあいつは俺が何言ったら頷くかはっきり知ってたよ」
「何言われて頷いたの」
「俺の弱点はお前」
「え、俺?」
「そう。お前に手を出す代わりにって言われた」
 弟はえええーと戸惑いの声をあげつつ、何やら渋い顔で考え始めてしまう。
 目の前に置かれたカップを手に取り、中の紅茶を一口すすった。リビングに入ったら既にテーブルの上に用意されていたそれは、もちろん弟が淹れてくれたものだ。弟の気遣いと暖かさが胃に染み渡るようだった。
「あのさ、まさかと思うんだけど、昔あいつに手を出したのも俺絡みなの?」
「あー……」
「マジか。てかやられた内容は聞いたけど、なんでそんな事になったかは教えて貰えなかった。てわけで、はい、聞かせて。昔あいつに何言ったの?」
「いや、それはちょっと……」
「俺に言えないような酷いこと言ったんだ」
「ざっくり言うと、弟には手を出すな」
「な、ん、で!?」
 驚きと怒りとを混ぜた弟が、強い口調で問いかけてくる。
「いやだって、あいつ絶対お前狙ってると思ったし、お前が男にどうこうされんのなんて冗談じゃないぞと思ったし……」
「俺今かなり、余計なことしやがってって思ってるんだけど。兄さんが余計なことしないでほっといてくれたら、俺たち普通に惹かれ合って恋人って可能性あったんじゃないのこれ?」
「だってお前があいつを恋愛的に好きなるとか思わないだろ。てかその時点でのお前、俺に隣のクラスのなんとかって女子が気になるって恋愛相談してたからな?」
「ああああそーか、その時期だった確かに」
 あいつに避けられだして、気になる女の子どころじゃなくなったんだったと言われて、まさか自分が手を出したせいで弟がそっちに目覚めたんだったらどうしようかと、内心焦った。
「で、兄さん的には、自分の体差し出してでも、俺をあいつから守りたかったわけ? 一応聞くけど、俺とセックスしたいとか思ってないよね?」
「思ってねぇよ!」
 大事な弟だけどセックス対象なんかにするか気持ち悪いと言ったら、まぁそうだよねとあっさり返ってきた上、今フリーだけど普通に彼女もいたもんねと続いた。
「そういや男の恋人いた事ってあるの?」
「ない」
「てことは兄さん処女じゃん? よくそれで抱かれるのオッケーしたよね、マジで」
「処女言うな。脅迫されて頷いたけど、でもまぁ、自業自得って気持ちも強かったよ。子供に手ぇ出したのは紛れもない事実だし。あいつメチャクチャモテそうなのに、復讐で親友の兄貴抱きたいとか、すっげー人生狂わせた感あるだろ。なんかもうそこまで恨まれてるなら仕方ないかなって思ったんだよ」
「まぁ完全に裏目に出てるけどね。あいつ絶対、兄さんにそこまでさせる俺に、敵うわけ無いって思って身を引いたよね」
「そう、それ。俺は復讐としか言われなかったけど、お前から見るとどうなってんの。恋させたって何? あいつ、まさか俺を好きだったりすんの?」
「そのまさかだよ」
 弟は少し呆れた顔をしながら言って、彼が家に来なくなってからの数年について話し始めた。

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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(バレンタイン)

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 滑り止め含めて当然幾つか受ける入試の、最初の受験日前日に、早いけどバレンタインと言いながらキットカットを渡した。受験生ならキットカットの意味はわかるだろう。
 二月の頭だったから、バレンタインと言い切っても別にいいかと思っていたが、相手はありがとうと受け取った後、これってバレンタイン当日も期待していい流れだよねと笑ってみせた。ちょっとわざとらしい笑いに、内心舌打ちしたのを覚えている。
 バレンタインなんて行事をしてやる気がない事を、相手は瞬時に理解しただろう。まさかこれだけ? なんて反応だったら、当たり前だと返すつもりでいた。そこを当日も楽しみだと前座程度に扱われてしまったら、当日も何かしら用意しろと、暗に言われているも当然だ。
 ああ、やってやるよ。やりゃあいいんだろう。まんまとそういう気分にさせられた。
 長い付き合いだから、そう言われたら自分がどうするかを、相手はわかっていて言ったのだ。前の彼だったらあっさり不満を口に出していただろうから、最近の彼は自分相手にも結構頭を使って対応してきている。
 そんな所に脳みそ使ってないで受験に集中しろとも思うが、受験に集中した結果、全体的な頭の働きが良くなった可能性も捨てきれない。どっちにしろ厄介なことには変わりがないけれど。
 
 バレンタイン当日といえば、彼の本命校の受験日だ。まだ恋人ごっこなんてものを始める前、バレンタインに試験とか最悪だとぼやいていたのを覚えている。
 受験生なのにバレンタインなんて入試真っ盛りのイベントを気にするなんて余裕だなと思ったが、でもまだ入試の実感がないだけかもとも思った。あの時は確か、もし本気でお前に告白する気がある女の子がいたら、本命校の受験が終わった開放感の中で本命チョコ貰えるってことだぞと言ったような気がする。バレンタイン当日が本命校の受験日で本当に良かったと、彼があっさり意見を翻したのは言うまでもない。
 彼に本気の女の子が、試験後に本命チョコ持参で彼の元を訪れる可能性がどれくらいあるかはまったくもって不明だが、そんなことを言ってしまった手前、試験後に渡すのはなんだか色々躊躇われる。もしかしたら本当に女の子が訪れるかもしれないし、ごっこ遊びとはいえ恋人として明らかに義理とは言えないレベルの品を用意しなければならないなら、渡すのは朝しかないと思った。
 だって彼に渡すのは、義理とは言えないが当然本命とも言い難い、かなり中途半端なチョコなのだ。
 まぁ近所だし、彼が家を出るだろう時間だって簡単に予測はつく。
 だからバレンタインの朝、家の前を通る彼を捕まえて、かなり小さな箱を渡した。
「え、これって」
「お望み通り、用意してやったんだから持ってけ。これくらい小さきゃ、鞄にも入るだろ」
 どう考えたって質より量派だろう相手に、それの価値がわかるとは思えなかったが、キットカットよりは本気度が見えれば満足するだろう。
「じゃ、頑張ってこい。引き止めてゴメンな」
 マジマジと箱を見つめていた相手は、ハッと顔を上げると、満面の笑みで任せろと言った。
「まさか本命受験日の朝に応援見送りして貰えるなんて思ったなかった。すげー嬉しい。ありがとう。頑張ってくる」
 今にもスキップを始めそうなくらい喜びを溢れさせながら去っていく背中に、そこじゃないだろうという内心のツッコミは当然届かない。確かに結果的には応援見送りだったかもしれないが、こちらにその意図はまるでなかった。むしろ言われて初めて気付いたレベルで驚いた。
「まさかチョコ渡されたって気づいてないとか……?」
 ありえると思って頭を抱えたが、事実そうだった事を知らされたのは、それから少し後のことだった。気になって箱を開けたらしい相手からラインでメッセージが届いたからだ。
 チョコならチョコって言えよ!という短い文面の後、感謝や歓喜や愛情を示すスタンプを連続で送りつけてくる。
 大量のスタンプで流れていく画面を見ながら小さなため息を一つ吐き出して、こんなことやってる暇があるなら単語帳の一つでもめくっとけと、怒りスタンプとともに返信しておいた。

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弟の親友がヤバイ5

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 なかなか寝付けず、翌日も寝坊する気満々だった。弟に手を出したりしないという彼の言葉に嘘はなかったと思うし、また一日中二人の勉強風景を見張り続ける気はさすがにない。
 しかし乱暴に部屋のドアが開けられる音で、眠りに落ちたばかりの意識が浮上した。
 次いでドカドカと近づいてくる、やはり乱雑な足音。寝ぼけた頭でも、それが弟のものだというのはわかっていた。しかも多分何かを怒っている。
「おいコラ、クソ兄貴」
 掛布をバサリと剥がされ、寒っと思う間もなく、ドスのきいた声と弟の体重が降ってくる。
「起きろ」
 言われなくてもさすがにもう起きている。目を開けて、腰をまたいで座る弟を見上げれば、やはり眉を吊り上げた顔でこちらを見下ろしている。まぁ怒った顔も怖いってよりは可愛いんですけど。
「おはよう。で、どうした?」
「どうしたじゃない。兄さん、あいつに何言ったの?」
「あいつ?」
「とぼけんな。俺の大事な親友泣かせて、何やってんのあんた」
「あー……」
 泣いたのかと、泣きそうになっていた顔を思い出す。彼の方から弟に泣きついたとは思わないしちょっと想像がつかないが、それでも弟の前では泣くらしい。
「あーじゃない。しかも自分はあいつ振っといて、弟の俺とは付き合わないでって約束させたとか、ホント意味分かんないんだけど」
「は?」
「だからとぼけんなって。俺と付き合うなって言ったんでしょ?」
 なんだろうこの言い方。
 確かに弟に手は出さないという言葉は聞いた。弟に手を出されるくらいならと、この体を好きにさせようともした。けれど約束させたって言うのとはちょっと違わないか?
 いやいや問題はそこじゃない。
「お前らって親友なんだよな?」
「そーだけど何か?」
「でもお前は、あいつを恋愛的な意味で好きだったりすんの? 好き好き言ってたらしいけど、それってお友達としてじゃなく?」
「そーだよ」
 まさかの肯定に、さすがに驚きを隠せない。目を見開いて弟を見つめれば、さすがにバツが悪そうで、自分を見つめる視線が逸れた。
「でも大事な親友だから、あいつの恋を応援したい気持ちだって本物だったよ」
「んんっ?」
 またしてもの違和感に、なんだか話が食い違っているようだと思った。
「おいちょっとお前降りて。でもって、ちゃんと話、しよう。てかあいつは?」
 元凶の相手も呼んでしっかり話そうと思ったのに、弟はまた少し眉を吊り上げる。
「帰った。目ぇ真っ赤にして起きてきて、さすがに今日は勉強できないからゴメンって」
「そうか……」
「てかホント、何したの。何言ったの。どんだけ酷い言葉投げつけたらあんな目になるの。一晩中泣いてたかもとか思ったら、いくら兄さんでもちょっと許せそうにないんだけど」
 ああ、別に弟も泣き顔を見たわけではないのか。そして過去はともかく、昨夜酷い真似をされていたのはどちらかというと自分のほうだ。
「お前さ、俺とあいつのこと、どれくらい知ってる? 俺が昔あいつにちょっと酷いことして、恨まれてるって知ってた?」
「そりゃまぁいたいけな中学生に手コキだけとはいえ手ぇ出したうえ、恋までさせちゃったら、多少恨まれてても仕方無くない?」
「待て待て待て。てかホント一回降りて。お前の話ゆっくり聞きたい。俺の認識とメチャクチャずれてる」
 一つ大きなため息を吐き出した後、弟はゆっくりとベッドを降りた。
 ようやく体を起こしたが、寝足りないのは明らかでやはり少し頭が重い。
「先リビング行ってちょっと待ってて」
「寝直したら承知しないけど」
「わかってる。顔洗ったら行くから」
 もう一つため息を吐いた弟は、待ってるからねと念を押して部屋を出て行った。

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