これを最後とするべきかどうか

* 別れの話です

 元々ねちっこいセックスをする相手ではあったけれど、今日はいつにも増して執拗で、前戯だけで既に2度ほど射精させられている。なのに未だ相手はアナルに埋めた指を抜こうとはせず、器用な指先で前立腺を中心に弱い場所を捏ね続けるから、早く挿れて欲しいとねだった。
「ね、も、欲しっ、お、おちんちんがいぃ、や、も、ゆびだけ、やぁ」
「指だけでも充分気持ちよくなれてるくせに」
 羞恥に身を焼きながら口にすれば、相手は満足げに口角を持ち上げたけれど、まだ挿入する気はないらしい。恥ずかしいセリフでねだらせたいのだと思っていたのに。
「もう2回もだしてるのにな」
 片手が腹の上に伸びて、そこに散って溜まった先走りやら精子やらを、肌に塗り込むみたいに手の平でかき混ぜる。ついでのように腹を押し込まれながら、中からぐっと前立腺を持ち上げられる刺激に、たまらずまた、ピュッとペニスの先端から何かしらの液体が溢れたのがわかって恥ずかしい。
「ぅあぁ」
「ほら、気持ちいい」
 クスクスと笑いながら、新たにこぼれたものも腹の上に伸ばされた。労るみたいな優しい撫で方だけど、一切気が抜けないどころか、また腹を押されるのではと不安で仕方がない。
「怯えてんの?」
 こちらの不安に気づいたらしい相手は、やはりどこか楽しげに口元に笑みを浮かべている。にやにやと、口元だけで笑っている。
 何かが変だ、と思った。しつこく責められることも、焦らされるのも、意地悪な物言いも、経験がある。でもいつもはもっとちゃんと楽しそうなのに。
 そういうプレイが好きってことも、そういうプレイを許すこちらへの好意も伝わってくるし、だから一緒に楽しめていた。
「ど、したの?」
「どうしたって?」
 思わず問いかけてしまえば、相手は全く疑問に思ってなさそうな顔と声音で問い返してくる。いつもと違うという自覚が、本人にもあるらしい。
「なんか、へん、だよ」
「そうか?」
 答えてくれる気がないことはすぐにわかった。腹の上に置かれたままだった手が、するっと降りて半勃ちのペニスを握ったからだ。
「やだやだやだぁ、な、なんでぇ、またイク、それ、またイッちゃうからぁ」
「イケよ。もう何も出ないってくらい搾りきったら抱いてやる」
「な、なに、それぇ……」
「わかるだろ。言葉通りだ」
「む、むり、やぁ、やだぁ、あ、あっ、だめ、あ、いくっ、いっちゃう」
「イケって」
 射精を促すように強く扱かれながら、アナルに埋めた指を素早く何度も前後されれば、あっという間に昇りつめる。
「でるっ、んんっっ」
 ギュッと目を閉じて快感の波をやりすごす間は、さすがに手を緩めてくれたけれど、それでも動きを止めてくれているわけじゃない。特にお尻の方は、お腹の中の蠢動を楽しむみたいに、ゆるゆると腸壁を擦っている。
「はぁ、っはぁ、も、やめっ」
 軽く息を整えてからどうにか絞りだした声に、相手が薄く笑うのがわかった。


 暴力でしかないような酷いセックスだった。言葉通り何も出なくなってから体を繋げて、泣きながら空イキを繰り返す羽目になって、いつの間にか意識が落ちて、目が冷めたら一人だった。
 テーブルの上には別れと今までの感謝とを伝える短なメッセージが残されていて、ああ、本当に終わりなのだと改めて思う。
 最後の方の記憶は少し曖昧だけれど、泣いて謝られたことは覚えている。相手の泣き顔なんて初めて見たから、あまりの衝撃に曖昧な記憶の中でもそれだけはかなり鮮明だ。
「くそっ」
 いろいろな憤りを小さく吐き出して、寝乱れた髪をさらに掻き毟ってボザボサにしてやる。
 追いかけたい気持ちと、このまま手を切るべきだと思う気持ちと。この仕打を許さないと思う気持ちと、許して相手の存在ごと忘れてやりたい気持ちと。
 どうしたいのか、どうするべきか、まずはじっくり考えなければと思った。

受けが追いかけちゃう続きはこちら→

有坂レイへの今夜のお題は『嘘のつけない涙 / 体液まみれ / 恥ずかしい台詞』です。https://shindanmaker.com/464476

 
 
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ツイッタ分(2020年-2)

ツイッターに書いてきた短いネタまとめ2020年分その2です。
その1はこちら→

有坂レイへのお題は「君がいる日常」、アンハッピーなBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。
#140字BL題 #shindanmaker https://shindanmaker.com/666427

この気持ちに気づく前は、当たり前に君がいる日常はただただ幸せだった。でも気づいてから先は違う。一緒に過ごす時間の幸せが、少しずつ恐怖の感情に塗り替わっていく。結局嫌われるなら、気持ちを知られての嫌悪より、勝手に消えたことへの怒りがいい。だから君がいる日常を捨てる俺を追いかけないで

有坂レイへのお題は「実らなくても恋は恋」、あからさまなBL作品を1ツイート以内で創作しましょう。
#140字BL題 #shindanmaker https://shindanmaker.com/666427

これはもう恋なのだと思う。相手は実の弟で、自分は兄で、つまり血が繋がっている上に同性だ。実るはずがないどころか、そもそも実らせる気など欠片もない。だからせめて、この好きって気持ちが恋だってことを、自分だけでも認めてあげたい。


クリスマス(ツイッタ分2019年「一次創作BL版深夜の真剣一本勝負 第287回」の二人です)

 随分疲れた顔をしてるから、なんて理由で差し出された袋の中にはカップケーキとか言うらしいものが入っていて、明らかに手作りとわかる見た目と包装だったけれど、めちゃくちゃに美味しかった。もっと食べたくてまた持ってこいよと言ってみたら、渡されたのはカップケーキではなくクッキーだったけれど、それもやっぱりすごく美味しくて更に次をねだった。
 お菓子作りが得意な彼女持ちなんだと思っていたし、羨ましさと妬ましさも含んでのタカリだった自覚はある。くれと言えばそう強い抵抗もなく渡されるから、こんな不義理な男がなぜモテるのだと不思議に思うこともあった。まぁそれに関しては、結局顔かと、一応は納得していたのだけれど。
 それがまさかそいつ本人の手作りで、菓子作りが趣味と知ったのは数ヶ月ほど前だ。その時に、彼女の手作り菓子を巻き上げてるつもりだったのを知られてドン引かれ、菓子のおすそ分けを停止されそうになったけれど、食い下がって謝って止めないでくれと頼み込んでなんとか事なきを得た。
 既に彼の作る菓子の虜なのだと、彼自身に伝わったせいだろう。頻度も量も変わらず、いろいろな菓子を渡してくれる。
 しかも、貰った菓子はだいたいすぐにその場で食べるのだけど、美味いと言って食べる姿を見る目は、以前よりもはっきりと嬉しそうだ。
 作った相手が目の前にいるということで、こちらも前よりは詳細に味の感想を言うようになったせいか、得意げにこだわりの部分を話してきたりもするし、リクエストに応じてくれることもある。
 キラキラと目を輝かせて楽しげに語ってくれる様子から、本当に菓子作りが好きなことは伝わってくるのだけれど、顔の良さでモテてるんだろうと思っていたような美形の、キラキラな笑顔を直視するはめになったのだけはどうにも対応に困っている。
 好きなのはお前が作る菓子だけと断言した際に、対抗するように、好きなのは菓子を作ることだけだからご心配なくと断言されているのに。最近は菓子を食べながらドキドキしてしまうことがあって怖い。美味い菓子が好きなだけのはずが、美味い菓子を作ってくれる相手のことまで好きになっている可能性を、そろそろ否定しきれない気がするからだ。
「メリークリスマス」
 そう言って差し出された透明な袋の中には、いかにもクリスマスな感じの型で抜かれたクッキーが数枚入っていて、やっぱりクリスマスを意識したらしい赤と緑のリボンが掛かっている。ただ、思っていたよりはシンプルだ。もっと気合の入りまくったものを作ってくるかと思っていた。
「まぁそれはオマケみたいなものだからね」
「は? オマケ?」
「ガッツリデコレーションしたケーキとか、学校持ってこれないし」
「つまりこれの他にデコレーションケーキを作ったって事か?」
「だけじゃなくて、ほかも色々。だってクリスマスだし、僕の趣味家族公認だし」
 彼が自宅で作る菓子の大半は、家族が消費しているというのは聞いたことがある。
「ああ、なるほど。家でパーティーとかするタイプか」
「しないの?」
「しない」
 大昔はそんなこともしていたような記憶があるが、両親は共働きで一人っ子となると、家族揃ってクリスマスパーティーなどもう何年も記憶にない。イベントという認識はあるようで、少しばかり渡される小遣いが増える程度だ。
「じゃあ来る?」
「は?」
「うちの家族に混ざってパーティーする?」
「え、なんで?」
「いやだって、なんか、食べたそうな顔したから」
「そりゃ興味はあるけど」
 彼が作る、学校には持ってこれないという菓子を食べてみたい気持ちはある。それを食すなら、彼の家に行かねばならないのもわかる。わかるけど。
「無理にとは言わないけどさ。でも実は、お前に予定ないなら誘おうと思って、お前の分のゼリーとかも用意してある」
「……行く」
 そこまで言われて、行かないという選択肢は選べないだろう。
 自分の分が既に用意されていると聞いた上で、楽しみだとキラキラな笑顔を振りまかれたら、なにやら期待しそうになる。でも相手は、作った菓子を美味しいと絶賛する人物に食べさせたいだけなのだとわかっているから、零れそうになる溜め息を隠すように、貰ったクッキーを口に詰め込んだ。


今年は6月の5周年を機に不定期更新となり、結果、殆ど更新のない状態ですが、それでも覗きに来て下さっている皆さんにはとても感謝しています。本当にどうも有難うございます。
結局、不定期更新になってから先に書けたものは少ないですが、最悪1年の長期休暇になる覚悟もしての隔日更新停止だったので、チャット小説という新しいことにチャレンジできたり、名前を呼び合うカップルが書けているという点では結構満足してたりです。
CHAT NOVELさんに納品済みの残り2作品の後日談はすでに書き上げてあり、年明け6日と8日にそれぞれ公開されるそうなので、それを待っての投稿となります。これは年明けのご挨拶でもう少し詳しく色々お知らせ予定です。
今年は新型コロナの影響で生活が大きく変わりましたし、この年末年始も色々と制限がありますが、感染対策を取りつつ少しでも楽しく過ごせればと思っています。
今年もあと残り数時間となりました。来年もどうぞよろしくお願いします。

 
 
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ツイッタ分(2020年-1)

ツイッターに書いてきた短いネタまとめ2020年分その1です。
その2は今夜22時頃に挨拶を添えて投稿予定です。

有坂レイの元旦へのお題は『不器用な独占欲・「あなたの匂いがする」・片恋連鎖』です。
#ふわあま #shindanmaker https://shindanmaker.com/276636

 帰省しない一人暮らし連中で年越しパーティーをしようと誘えば、相手は誰が来るのと聞いた。参加決定メンバーの名前を挙げていけば、あっさり彼も参加を決めたけれど、その理由はわかっている。彼が密かに想いを寄せる男が参加するからだ。
 なぜ彼が想う相手を知っているかと言えば、彼が自分の想い人だからだ。想う相手を見続けていたら、その相手が見ているのが誰かもわかってしまった。
 男ばかりの不毛な一方通行片想いに、気づいているのは自分だけだと思う。

 当日は一番広い部屋を持つ自分の家に総勢7名ほど集まった。
 想い人の隣席を無事ゲットした彼の、反対隣の席に腰を下ろして、彼を挟んで彼の想い人と話をする。だって彼との会話を弾ませるには、彼の想い人を巻き込むのが一番いい。彼の想い人に、彼へ返る想いなんて欠片もないとわかっているから、胸が痛む瞬間はあるけれど、割り切って利用させて貰っている。
 年明け前からいい感じに酒が回っていたが、年明けの挨拶を交わした後もダラダラと飲み続けて、気づけば大半が寝潰れていた。そして隣の彼もとうとう眠りに落ちるらしい。
 先に寝潰れた連中同様、寝るなら掛けとけと傍らに出しておいた毛布を渡してやれば、広げて被るのではなくそれにぼふっと顔を埋めてしまう。酔っ払いめ。
 そうじゃないと毛布の端を引っ張れば、顔を上げた彼がふふっと笑って、お前の匂いがする、なんて事を言うからドキリと心臓が跳ねた。
 そんな顔を見せられると、男が好きになれるなら俺でも良くない? って気持ちが膨らんでしまう。いつか、言葉にしてしまう日が来そうだと思った。


バレンタイン

 金曜だからと誘われて飲みに行った帰り、ほろ酔いで駅までの道を歩いていたら、隣を歩いていた同僚の男が前方に見えたコンビニに寄りたいと言う。急いで帰る理由もないので二つ返事で了承を返し、一緒にそのコンビニに入店すれば、その男は入口近くに設置されたイベントコーナーで足を止める。
 並べられているのはどう見たってバレンタイン用のチョコレートで、バレンタイン当日の夜というのもあってか、さすがに種類も数も残りが少ない。
「なに? まさか買うのか?」
「なぁ、どれが一番美味そうに見える?」
 それらをジッと見つめている相手に問えば、問いの答えではなく、全く別の質問が返される。それでも聞かれるがまま、一番気になる商品を指差した。
「美味そうっていうか、気になるのはこれかなぁ」
「ふーん。じゃ、これでいいか」
「え、マジで買うの」
 驚くこちらに構うことなく、その商品を手に取ると真っ直ぐにレジへ向かっていくから、頭の中に疑問符が溢れ出す。まさかコンビニに寄った理由がバレンタインチョコの購入だとは考えにくいが、相手の行動には一切の躊躇いがなく、他商品には目もくれなかった。
 すぐに会計を終えて戻ってきた相手に促されるまま外に出れば、ズイと差し出されるコンビニの袋。またしても脳内は疑問符でいっぱいだ。
「は? え? どういうこと?」
「さっき、」
「さっき?」
「言ってたじゃん。チョコ欲しい、って」
「あー……ああ、まぁ、言ったけど、でも」
 バレンタインの夜に男二人で飲みに来ている虚しさを嘆いて、ここ何年もご無沙汰だって言う話は確かにした。ただ、ご無沙汰なのは本命チョコ、って言ったはずなんだけど。確実に義理で渡されるチョコは、今年も数個は貰ってる。
「うん、だから、本命チョコ」
 グッと袋を押し付けて、くるりと踵を返すと、なんと相手は走り出す。
「あ、おいっ」
 慌てて声を掛けたが、相手の背中はどんどんと遠ざかって行く。今更追いかけたところで、多分きっと捕まえられない。
 大きく息を吐いて、押し付けられたチョコを取り敢えず鞄にしまったけれど、さて、本当にどうしよう。


SM=SiroMesiというツイを見て

 同窓会に参加して数時間。そろそろお開きも近そうだという頃合いに、少し離れた席から「SM同好会に入ってた」などという単語が飛んできて、思わず飲みかけだったビールを思い切り吹き出した挙げ句に盛大にむせてしまった。すぐさま隣から何やってんだの声と共に布巾が差し出され、わたわたと後処理に追われている間に、SM同好会についての話題は終わってしまったようだが、チラと視線が合った発言者が悪戯が成功したみたいなちょっと悪い顔で笑ったから、どうやらわざと聞かせたらしいと思う。

 二次会には参加せず、地元の同窓会だったにも関わらず自宅へも戻らず、わざわざ少し離れた駅に取っていたホテルに戻ったのは、結構遅い時間だった。隣には、先程SM同好会なる爆弾発言を投げ落とした男がいるが、もちろん偶然でも誘ったわけでもなく、元々、二人でこの部屋に泊まる予定だっただけである。
 高校時代そこまで仲が良かったわけでもなく、大学なんて飛行機移動が必要な遠さだった自分たちが、同窓会に合わせて一緒に帰省したり、同じホテルの同じ部屋に泊まるような関係になったのは数ヶ月前だ。連絡を取り合うような関係ではなかったから、まさか相手も同じ地域に就職していたとは知らなかったし、仕事絡みで顔を合わせたのは本当にただの偶然だった。
 懐かしさから意気投合し、そこから何度か飲みに出かけ、あれよあれよと恋人なんて関係に収まってしまったのは、間違いなく相手の手管にしてやられたせいだと思う。気楽に出会いを探す勇気など持たないゲイの自分には、一生恋人なんて出来ないと思っていたし、無駄に清らかなまま終わる人生だろうと思っていたのに。
 なんとなくそんな気がした、などという理由から、なぜかあっさりゲイバレした上に、バイで男とも経験があると言った相手に口説き落とされた形だけれど、今の所後悔はない。既に2度ほど抱かれたけれど、めちゃくちゃ気を遣ってくれたのは感じたし、出会いを求めたことはなくとも自己処理では多少アナルも弄っていたのが功を奏して、ちゃんと気持ちがいい思いも出来た。
 そして今夜、3度目があるんだろうという、期待は間違いなくあるんだけど……
「やっぱSM同好会、気になってる?」
 部屋に入るなりスッと距離を縮めてきた相手に、含み笑いと共に耳元で囁かれて、ビクリと体が跳ねてしまう。
「そりゃ、だって、てか、事実?」
「事実だよ。って言ったら、期待、する?」
 ピシリと体を硬直させて黙ってしまえば、可笑しそうなクスクス笑いが聞こえてくる。
「あれね、シロメシ同好会の略。白飯て白米ね。美味しい炊き方とか、白飯に合うおかず探しとか」
 吹いたビールの片付けで全然聞こえてなかっただろと続いたから、きっとあの後も、そんな説明をしていたんだろう。なるほど。あの悪い顔の意味がやっとわかった。
 ホッとしたら体から力が抜けて、咄嗟に隣に立つ男に縋ってしまう。ジム通いもしている相手の体は逞しく、よろける事なく支えてくれる。
「あんま脅かすなよ」
「んー、残念。これ、脅しになるのかぁ」
「え、残念て?」
 思わず聞き返せば。
「白飯も好きだけど、プレイ的なSMも、好きなんだよね。っつったら、どーする?」
 再度身を固めてしまえば、元々耳元に近かった相手の顔が更に寄せられ、チュッと食まれた耳朶にチリとした痛みが走った。

その2はこちら→

 
 
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それはまるで洗脳

お題箱より「スレンダーな兄が、自分より体格が良い弟に襲われ、快楽に逆えず兄としての尊厳をへし折られる、的な短編。年齢差は3歳位」な話その2
その1はこちら → 知ってたけど知りたくなかった

 ぐじゅ、だとか、ちゅぷ、だとか。下腹部で発している湿り気を帯びた卑猥な音を聞きたくない。しかしどんなに耳を塞ぎたくても、両手は背の後ろで脱ぎかけた衣服でもって拘束されている。
 ノックもなく部屋に押し入ってきた弟の顔を見た瞬間に、両親が泊まりで出かけると知っていたのに、自分もどこかへ外泊しなかった事を後悔したが遅かった。
 三つ下の弟は長いこと運動部で鍛えてきたからか、身長はそこまで差がないものの、細身体型の自分と違ってガッシリとした筋肉をまとっている。つまり体格的にも筋力的にも、最初からこちらに勝ち目なんか欠片もない。
 弟の気持ちにはなんとなく気付いていながら長いこと放置していたのも、半月ほど前に意を決した様子でなされた告白を手酷く振ったのも自分だ。だが、それ以降あからさまにこちらを避け続けていた弟が、親の留守を狙ってこんな真似を仕掛けてくるとは、さすがに予想できなかった。
 あっという間に詰め寄られて、引きずられるようにベッドの上に投げ出された後、無理やり服を剥ぎ取られて行く間に、敵わないとわかっていながらも一応は抵抗した。身を捩って手足をばたつかせれば、早々に腕も足も手早く拘束されてしまったが、それでもなお、やめろ、バカ、正気に返れ、俺はお前の兄貴だぞと、必死に声を上げもした。
 けれど弟は手を止めることなく、黙々と作業に没頭している。視線を合わそうとはしないから、酷い真似をしているという意識はちゃんとあるんだろう。
 何をする気かという目的は、尻の谷間にローションを垂らされ、尻穴に指を突っ込まれればさすがに理解しないわけには行かないが、到底受け入れられるわけがない。自分の想いが受け入れられなかったからと言って、こんな強行が許されるはずがないし、許してはいけない。
 なのに。
 しつこく尻穴をかき混ぜられて、時折、ありえない感覚に襲われている。腰が甘くしびれるような、いわゆる快感と呼べそうなもの。
 わざとらしくクチュクチュと音を立てられるのに合わせて、あああと溢れてしまう声だって、だんだんと嬌声じみている。
 嘘だ嘘だ嫌だダメだと思うのに、体は間違いなく、この行為を気持ちがいいものとして捉え始めていた。
「ひぅっ!」
 ずっと尻穴ばかりを弄られていたのに、突然さらりとペニスを撫でられ息を飲む。
「ぅっ、ぁっ、や、めっ、やだぁっ」
 尻穴を弄られながら勃起している、という事実を知らしめるように、何度か育ったペニスを根本から先端まで往復していた手が、とうとうそれを握って扱き出す。そしてすぐさま、尻穴に突っ込まれた指が、同じリズムで穴を前後しだした。
「ぁっ、やっ、ぁあっ、だめだめだめっ」
 たぶん数分も保たなかった。あっという間に弟の手の中で射精すると同時に、尻穴をきゅうきゅうと締め付けてしまうのがわかって恥ずかしい。
 大きく息を吐いて、終わった、と思った。こんなこと許してはいけないのに、弟の手でイカされてしまった。
 じわりと浮かぶ涙を隠すようにシーツに顔をすりつけながら、意識的に深めの呼吸を繰り返す。
「気は、済んだのか。済んだなら、ぁ、えっ、ちょっ」
 まずは拘束を解かせて、それから説教を。なんて考えを嘲笑うかのように、また尻穴に埋められた指がグニグニと動き出す。
 
 そこから先、弟の手で何度絶頂させられたかわからない。
 手足の拘束は弟と繋がる直前には解かれたが、それはつまり、弟を受け入れたのと同義でもある。黙々とこちらの体を弄り回していた弟は、こちらが確実に快感に抗えなくなった辺りから少しずつ言葉を発するようになったが、諦めて受け入れろと繰り返すそれはまるで洗脳だった。
 尻穴とペニスとを同時に弄られて上り詰める快感を知った後、追い詰められてイキたくてたまらなくなったところで刺激を止められるのを繰り返されたら、頼むからイカせてくれと泣いてねだってしまったし、そこに、弟の恋人になればなんていう条件を出されて突き返せはしなかった。
 こんな強引な方法で、と軽蔑する気持ちも、叱りつけたい気持ちもあるが、弟に抱かれて絶頂する自身を、随分と愛しげに見つめる目を前にしたら何も言えそうにない。
 それでもちょっとした意趣返しで、絶頂時に縋り付く弟の肩や背に、思い切り爪痕を残してやった。弟は痛いと言いながらも満足げに笑っているから、ちっとも仕返しになっていない可能性のが高いけれど。

 
 
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知ってたけど知りたくなかった3(終)

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 ダメだダメだと思っているのに、慣れた体は弟の指をあっさりと受け入れて、それどころか気持ちが良くてたまらないと訴えてくる。弟が相手だというのに、否応なく感じてしまうのが辛い。弟が相手だからだと、頭のどこかではわかっているから尚更だ。
 嫌だと逃げかけるたびに力で押さえつけられてしまえば、逃げ出せないのだと思い知っていくばかりだけれど、だからってこのまま抱かれてしまってもいいとは思えない。なのに、血の繋がりなんかクソくらえと言い切った相手に、どう引いて貰えばいいのかなんてわからない。
「なぁ、なぁ、やめよって」
 それでも繰り返し、止めようと訴えかける。どうしていいかわからなくても、弟の手に感じていても、この行為を受け入れているのだと思われたくない。
「こんな感じてて、まだ言うのかよ」
「だって俺じゃなきゃダメな理由、ある? だいたいお前、彼女いた事あるだろ。まだ、引き返せるから。だから」
「ふーん。じゃ、兄貴じゃなきゃダメな理由があればいいって事?」
「だからっ、ないだろ、そんなのっ」
「あるけど」
「嘘だっ」
「言っていいの? 兄貴が俺を好きだから、って」
 それを聞いて胸の中に広がったのは絶望だ。ぶわっと涙が盛り上がってしまうのを止められないし、言わんこっちゃないと嫌そうに舌打ちされればさらなる涙を誘う。
「酷い……」
「どっちがだ。つか泣くなら言わすなよ」
「わかってんなら、引けって。てかお前が俺を好きなの、俺のせいだろ。俺が、無意識にだったにしろ、お前を誘惑してたせいでお前までその気になったとか、親に合わす顔がない」
「あー……なるほど。で、逃げたのかよ。アホらし」
「なんでだよっ。だってお前、彼女が」
「あーはいはい。女抱けるから何なの。男でも兄貴なら抱けるし問題ないって、今から証明してやるけど?」
「ちがうっ。俺がお前を好きだからって、俺なんか相手にする必要ないって、言ってんの」
「無理」
「だから、なんでっ」
 聞いても答えは返ってこなくて、アナルを弄りまわしていた指が抜けていく。続いてコンドームを取り出すのを見て、この隙に逃げられないかと体を起こした。こんな格好で外には出れないけれど、トイレに閉じこもるくらいは出来るだろう。
「おいこらっ。まだ諦めてなかったのか」
 しかしベッドを降りる事すら叶わないまま、弟に腕を掴まれて引き倒される。
「バカなの? 逃げれるわけ無いだろ」
「だとしても、お前にこのまま抱かれるわけに行かないの」
「へぇ? ゴムなしでしてって、わかりにくくお願いされてんのかとも思ったんだけど」
「は?」
「逃げられないのも、逃げたら酷い目に合うのもわかっててやってんなら、これもう、ゴム着けるの待てなかったってことでいいかなって」
 挿れるねと宣言されて確かめてしまった弟のペニスは剥き出しだ。
「ダメ、だ、ぁ、ぁああっっ」
 もちろん静止の声なんて聞いてもらえず、挿入の快感に甘く声を上げてしまう。ヤダヤダ言ってたってこんなに気持ちよさそうにして、とでも思ったんだろう。満足気に笑われた気がするから、いっそ消えてなくなりたい。
「だめだって、も、お前、ナマでとか、信じられない……」
「ゴム無しでしたことは?」
「あるわけないだろ」
「じゃあ初めては俺が貰ったってことで。てか丁度いいから、俺に種付けされて、俺のものになるんだって思い知れば?」
「いや何言ってんの」
「本気だけど」
「お前とはこれっきり。二回目なんかないから」
「それに大人しく頷くわけ無いだろ。あんたこそ、二度と他の男に足開くなんてないから」
 ああそうだと何かを思い出したようにベッドの上を探った相手が手に取ったのは携帯で、カメラをこちらに向けてくる。嘘だろと思いながらも、嘘だろと声に出すことは出来ず、呆然と見つめてしまうしかない。
「これ、動画な。てわけで、俺の声も入ったし、兄弟でセックスしてる証拠とったから。これでも諦められないなら、このまま撮影し続けて、弟相手にアンアン善がってる姿も撮ってあげるけどどうする?」
 無言のままブンブンと首を横に振れば、取り敢えずは気が済んだのか携帯は手放したけれど、ますます追い詰められてしまった事実を前に途方に暮れる。そんな自分に、仕方がないと言いたげに、大きくため息を吐かれた。
「言っとくけど、兄貴が俺を好きなのかもって思ったのは今日だし、俺に似た男とラブホ入るとこ見るまで、本気で、俺が気持ち悪くて逃げたんだと思ってたから」
「見るまで……って、え、見てた?」
 またしても、嘘だろと思いながらも口には出せない。信じたく、ない。でも嘘じゃないんだってのは、その顔を見ればわかってしまう。
「たまたまだけど、その偶然に感謝してるよ。連絡もなく押しかけたのは、帰宅直後に捕まえて、あの男に抱かれたのか、抱いたのか、確かめたかったから」
「もし俺が、抱く側だったら、諦めてた?」
「男有りってわかって諦めるかよ。まぁ即抱いて俺のものにするのは無理だった、ってだけだな」
「自分が抱かれる側になる発想はないのか」
「ぜってー抱いてくれないくせに何言ってんだ。俺が抱かれる側になるとして、押さえつけて勃たせて経験もない穴に突っ込ませるって、無理がありすぎんだろ」
 確かにそれは無理そうだ。黙ってしまえば、またしても小さくため息を吐かれてしまった。
「ついでにいうと、あの男と恋人だって言われても、奪う気満々で来てるから。あんたが無意識に俺を誘ったせいで好きになったかなんて正直どうでもいいけど、もしそうだとしてもそれを気に病む必要なんかないし、なんで好きになったかより、今、どうしようもなく兄貴が好きだってことのがよっぽど重要なんだよ」
 俺が好きだから逃げる、なんてのは許さないと、強い視線に射抜かれてとうとう白旗を上げた。

<終>

同じお題で書いた別のお話はこちら → それはまるで洗脳

 
 
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知ってたけど知りたくなかった2

1話戻る→

 焦るこちらがおかしいのか、フッと小さな笑いを吐いた後で弟の顔がゆっくりと近づいてくる。とても見ていられないし、キスなんかされてたまるかと、ぎゅっと目を閉じ顔をそむければ、弟の顔は首筋に埋まってそこで大きく息を吸い込まれた。というよりは、嗅がれた。
 カッと体の熱が上がるくらいに恥ずかしい。季節的に汗臭い可能性は低いけれど、問題はそれじゃない。普段決して香るはずのない、甘ったるい匂いがしているはずだとわかっているせいだ。
「泊まりにならない、恋人でもない相手とで、ちゃんと楽しめた?」
「な、なに、言って……」
「こんな匂いさせて、どっから帰ってきたかなんて聞くまでもない」
「そ、それは、でも、お前には関係な、いっってぇ」
 顔を埋めたままの首筋に齧りつかれて痛さに喚く。ふざけんなと殴ってやりたいが、両手首とも捕まれベッドシーツに縫い付けられているし、蹴り上げたくても腿辺りに弟の腰がどっしり乗っていて動かせそうにない。
 多少体を捻ったところで、何の抵抗にもなっていない。
「や、ちょっ、やだっ」
 噛んだ所を舐められて体が震える。恐怖の中に紛れもなく快感が混じっているから泣きそうだった。
「これ以上痛くされたくなかったら、ちょっと大人しくしてて」
「んなの、やだ、って」
「痛くされるのが好き?」
「アホかっんなわけなぃったぁ! ちょ、やだぁっ」
 痛い痛いと繰り返しても今度は放して貰えなかった。しかもじわじわと圧が増していると言うか、肌に歯が食い込んでくるようで怖い。
「わか、わかったから、や、やめて」
 もう従うしかないのだと諦めて訴えれば、あっさり開放されて弟の顔が離れていく。今度は宥めるみたいに舐めてはくれなくて、それを少しばかり残念に思ってしまった事が辛い。相手は正真正銘、血の繋がった弟だって言うのに。
 自分が家を出たのは、弟にこんな真似をさせないためだったはずなのにと思うと、今度こそ本当に泣けてくる。心が痛い。
 ただの仲良し兄弟のままでいたかった。離れて過ごすうちに、気の迷いだったと気付いてくれたらと願う気持ちは、どうやら叶わなかったらしい。
 目元を腕で覆って泣くこちらに、弟が何を思うのかはわからない。黙々とズボンと下着を剥ぎ取られ、開かれた足の間に躊躇いもなく触れられて身が竦んだけれど、腕を外して弟の顔を確かめる気にはなれなかった。
「やっぱ抱かれる側かよ」
 小さな舌打ちとともに乾いた指先が少しだけアナルに入り込む。痛みではなく、ゾワッと肌が粟立つ快感を耐えて、歯を食いしばった。
「最っ悪」
 吐き捨てるような言葉とともに指を抜かれて、あれ? と思う。この体を知られたら、これ幸いと抱かれてしまう未来しか想像していなかったのに。というか、やっぱり抱かれる側か、ってどういう意味なんだ。まるで知っていたような口振りだが、自分がゲイだって事すら家族に伝えたことはない。
「やっぱりって……?」
 気になりすぎる展開に、腕を下ろしておずおずと弟を伺えば、弟は小さなパックの封を切っている所だった。中身を手の平に出していくのを、思わずマジマジと見つめてしまったけれど、のん気に眺めている場合じゃない。
「なに、してんの」
「カマトトぶんなよ。わかんだろ」
 抱くんだよとはっきり言い切られて、じゃあさっきの「最悪」ってのは何だったんだと思う。
「俺にドン引きだったんじゃ?」
「知ってたらもっとさっさと手ぇ出してたのにってだけ」
「お前に手ぇ出されたくないから、家を出た、とは思わないの?」
「男にそんな目で見られるのが気持ち悪くて逃げた。って思ってたんだよ。でも、あんた自身が男有りなら、大人しく引き下がってられっか」
「男は有りでも、お前は無しだろ」
「兄弟だから?」
「そうだよ」
「血の繋がりなんかクソくらえ、って思ってんだけど」
「俺はそうは思ってない」
「悪いけど、それを受け入れてやる気が俺にない」
 ムリヤリされたくないなら暴れんなよと言いながら、ローションに濡れた手が伸びてくるのを、どうしていいかわからなかった。

続きました→

 
 
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