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共に体育会系なだけでなく、就職後も体を鍛えている。というよりも、基本的に体を動かすのが好きなせいで、お互い無駄に体力が有り余ってるのが多分良くなかったんだろう。
興味本位で抱いてみた男や、恋人だった女の子たちとは経験したことのない、長時間に及ぶセックスを、しかも自分が抱かれる側で体験するとは思わなかった。
結局何回イカされたのかも曖昧だ。途中からは、ちゃんと射精してるのかどうすら曖昧だったからだ。きっともう空っぽで何も出ない。と思うくらいには搾られ尽くした気がする。
それでも、抱き潰されて飛ぶようなことも無ければ、終わると同時に寝落ちることもなく、暫くグッタリしていた程度であっさり復活してしまったのには、我ながら自身の体の頑強さに驚いた。
長いこと相手を受け入れていた穴の違和感は残っているし、散々囁かれた甘い言葉やそれらと同時にもたらされた甘い痺れも、時折思い出されては幻聴や幻覚のように蘇っては来るけれど、それ以外は適度な疲労と爽快感という感じなのも、我ながら少々呆れてしまう。
「落ち着いたならシャワーにって思ってるんだけど、体、どっかおかしい?」
ざっくりと後始末を終えたらしい相手が、脇に腰を下ろして少し不安げに聞いてくる。こちらはダラダラと横たわったまま、そんな相手を眺めていただけで何もしていないが、それはもちろん、体に支障を来たしているせいじゃない。
「いや……」
「さっきから難しい顔してるけど、何か気掛かりだったり、それとも思い返すと不快な何かがあったりする?」
「不快ってよりは、不思議って感じ?」
「不思議って?」
「ダメージが有るようでないような、あんなに長いこと抱かれてイキまくってたのに、意外とピンピンしてるよな俺、みたいな」
「え、なに、抱き潰されたかったとかそういう話?」
「そうは言ってない。けど、そうなってもおかしくないくらい、俺、お前に好き勝手されてなかったっけ?」
「好き勝手ってほど好き勝手な扱いはしてないけど。むしろ、めちゃくちゃ気を遣ってたつもりだけど。というかダメージ少ないのは、つまり俺の功績じゃないの」
「まぁそれはそうなんだろうけど」
わかっている。わかっていた。これは充分に加減された結果だし、相手にはまだまだ余力があるって事も。
「にしては不満そうだね」
「不満っつーか、あー……でもやっぱ不満なのかな。お前とのセックスが善くて、お前が上手くて、なんか悔しい、みたいな?」
「それは褒められてる?」
「褒めてない。けど、お前が上手いの、素直に嬉しいとは言えないだろ」
「男のプライド的な何か? それとも、俺の過去に嫉妬の方?」
「どっちも」
「まさかそんなこと言い出さないって信じてるけど、セックスが上手いのが嫌だ、なんて理由で振ったりしないでよ?」
「するかよ」
「ならいいよ。いくらでも、悔しがって?」
ふふっと笑った顔が近づいてきて、ちゅっと軽いキスを落としていく。
「その余裕がムカつくな」
「余裕ってよりは浮かれてる」
わかってるかと聞かれて何をと返せば、あんた俺の初めての恋人だよと、嬉しそうにはにかまれてグッと胸の奥が詰まった。
「そ、っか……」
「そうだよ」
「俺、今日、こんなつもりでお前誘ったわけじゃないのに……」
じわじわと嬉しさが込み上げると同時に、ほんの少しの罪悪感じみた気持ちが湧くのは、誰に対する罪悪感なんだろう。
「俺を好きって、隠し通したかった?」
「いや。気付かれないまま、お前の気持ちも知らないまま、終わらなくて良かったとは思ってる」
自分が抱かれる側になることを選べば、相手からの慰めが貰えるのだと、そんな一縷の望みに掛けて誘った数時間前が、なんだかもう遠い過去のような気さえする。
「俺が、抱かれれば慰めてくれんだろ、なんて理由で、素直に慰めてあげられるお人好しじゃなくて良かったよね」
「お前はなんだかんだで俺に結構甘いとこあったから、本気で頼めばきっと許してくれるって、思ってたんだ。けど、」
まさか相手にも恋情が育っているなんて欠片も思っていなかったから、その甘さが好意からのものとは気づけなかった。
「お前が俺に甘いの、俺を好きだったから、だよな。とすると、もしかして、俺ら、かなり時間無駄にした?」
したね、という肯定はかなりの呆れ口調だった。
「というかそれ、今気づいたとか言う?」
「えっ?」
「あんたが呆れるほど俺の気持ちに鈍いのは、今日めちゃくちゃ思い知ったけどね」
どういう意味かと首を傾げてしまえば、そんな事を言われた後。
「ほんっとバカ」
「お前今日、ほんっと、バカバカ言い過ぎだろ」
「そんなのわざとに決まってるでしょ」
いちいち可愛いあんたが悪いと言われながら、再度顔が寄せられる。柔らかに長く触れ合うだけのキスは、優しい甘さで唇を包んだ。
<終>
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