ジッと見られると照れるだとか緊張するだとか言いながらも、ローションの扱いには躊躇いも戸惑いもなく、手早く準備を終えたらしきローションまみれの手が股の間に伸びてくる。
「まずは触るだけね」
いきなり突っ込んだりはしないから大丈夫と言われても、さすがに身構えずにはいられない。
「うっ」
ぬるぬるの指先が肌に触れた瞬間に小さく呻いた。ゾワッと腕のあたりが粟立つのがわかる。
「冷たかった?」
「つめたくは、な、ぁっ」
指の腹がキュッと尻穴に押し当てられて、多分反射で身が竦む。
「どう?」
「どう、って」
「くすぐったいとか、気持ち悪いとか。怖い、とか」
言いながら、ぬるぬると滑る指先が尻穴を何度も行き来して、その周辺をベッタリとローションで濡らしていく。
確かにくすぐったさも、慣れない気持ち悪さもある。人の手でそんな場所をまさぐられるのが初めてなのだから、未知の体験に恐れる気持ちもある。でも。
「ぞわぞわ、する」
「うん。鳥肌すごいたってる」
気持ちぃの? と尋ねる相手の興奮がわかるから、多分、と曖昧ながらも肯定しておく。
「怖くないなら、少しずつ挿れていくけど、いい?」
ここに、と言いたげな指先が、尻穴をトントンと突いている。
「ああ」
頷いて身構えたのに、指先は尻穴を突くばかりでなかなか入っては来なかった。周りに塗りつけたローションを集めて穴の中へと押し込めるような動きを何度もされている。
少しずつ押し込む時に触れる圧が高くなって、再度離れて動き出すまでの時間が長くなってはいるものの、入り込もうという強い意志は感じない。
「挿れないのか?」
だんだんと慣れていくのに合わせて、身構えるのにも疲れてしまって、頭の中の疑問を相手に向かって投げてみた。
「挿れてるよ。かなりちょっとずつだけど」
ほら、さっきより少し深く入ってる、と言いながら、指先がぐっと尻穴を押してくる。しかし、押されてるとは思うが、指が入っているという感覚はない。と思った瞬間。
「あっ……」
つぷっと指先が肉の輪を抜ける感覚がして声を上げた。
「入った感じした?」
「してる」
「痛くない?」
「ない」
「ん、良かった」
痛くないならもうちょっと挿れさせてねと、そのままぬるっと指が入り込んでくるのがわかる。入っている、というのはわかるが、思ったよりも異物感は少ない。
「なんだこんなもんか、みたいな顔してる」
ふふっと笑いながら指摘されたけれど、そう思っているのも事実ではある。
「思ったよりイケそう、かも。てかもちょっとペース早めても、多分、イケる」
「そうだね。もうちょっと慣れたらね」
初めてなんだからじれったいくらいがちょうどいいよと言い切って、埋めていた指をゆるゆると時間を掛けて引き抜いていく。挿れられるときよりも、ゾワゾワと肌が粟立つ感じがした。
「んんっ」
「気持ちぃ?」
「たぶん」
やっぱり曖昧に肯定を返したけれど、相手は満足そうに頷いている。
そうして何度もゆるゆると指を抜き差しされて、じわじわと体の熱が上がっていく。こんなもんかという余裕が無くなり、実感として「じれったい」を感じるようになって、もどかしさに腰が揺れた。
「ちゃんとお尻で感じられてるね」
良かったと嬉しそうに笑われると、恥じらいやらが安堵で塗りつぶされる気がする。
初めてで感じるようなものじゃないだろ、とか、お前は気持ちよくなれなかったって言ってたよな、とか。しっかり感じているらしい自身の体に対する疑問がないわけではないのに、頭の片隅に浮かぶその疑問は、相手の嬉しげな笑顔に押しやられて言葉になって漏れることはなかった。
気持ちいいに集中できるかどうかは気持ちの問題とは言っていたが、恋人の嬉しそうな笑顔、というのは自分にとってはかなり大きな要因だと思う。もちろん、経験を生かした相手のテクによって引き出されている部分も、間違いなく大きいのだろうけれど。
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