エイプリルフールの攻防3

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 彼の住まいとは片道三時間以上の距離があるとわかっていながら、一度帰って出直すという彼を引き止めることはしなかった。
 引き止めたところで、どう接していいのかわからないというのももちろんある。でも一番はやはり、彼の言葉を信じたい気持ちとともに、またエイプリルフールだと言って手のひら返されるのを恐れる気持ちがあったからだ。もし彼の言葉がまたしてもエイプリルフールの嘘なら、明日彼が来ないというだけで済む。彼の前に、これ以上傷つく姿を晒さなくて済む。
 もちろん、自分だけの片想いじゃないのかもという期待と、全ての本当とやらに対する不安もあった。
 それらを抱えながら気がかりで憂鬱な時間を過ごし、だったらさっさと眠って明日にしてしまえと部屋の明かりを落として布団に潜ってみたものの、結局眠れずに何度も寝返りを繰り返す。
 そんな中で携帯電話が鳴ったものだから、心底驚き布団の中で体が跳ねた。
 発信者は登録されていない。表示されている見覚えのない電話番号に、出るかどうかを迷ったものの、もしかしたら彼なのではという期待で恐る恐る通話ボタンを押した。
「もしもし」
『出てくれてよかった』
 耳に届く心底ホッとした声は、やはり彼のものだった。
「何か、あった?」
『日付越えたから、好きって言っておこうと思って』
 朝まで待てなかったと言いながら、電話の先では相手が苦笑している気配がする。
「え?」
『ずっと、お前が好きだった。子供の頃から、お前が好きだったんだ。そう言ったら、信じるか?』
 驚いてすぐには言葉が出なかったけれど、相手がこちらの言葉を待って黙っているので、考えながらゆっくりと口を開く。
「ちょっと信じがたいけど、でも、だからこそ、嘘じゃないのかなとも思う」
 もうエイプリルフールは過ぎたわけだしと言ったら、すぐにずっとごめんと返ってきた。
『会ってからゆっくり話すつもりだったけど、今、話しても平気か? それともやっぱりそっち行ってからのがいいか?』
「電話のが、いいかな」
 どうせ眠れる気もしないと思いつつ言えば、じゃあ聞いてくれと言って話しだす。
『好きだって気持ちはあるのに、その気持ちがあるからか、お前とは友人のようにすらなれなくて、イライラしておかしな態度ばっかり見せてきた』
 小学生の頃だったが初めて好きだといった日を覚えているかと聞かれて、覚えていると返した。
『思った通りビックリされたのに、バカみたいに腹が立ったんだ。お前が俺をなんとも思ってないどころか、むしろ嫌われてるって知ってたのに、でも、突きつけられる現実にやっぱりいっちょ前に傷ついてた。最初からエイプリルフールを選んで告白したくせに、嘘に出来たこともそれにお前が怒るのも、凄くホッとした』
「あれも、偶然会ったから揶揄ったってわけじゃなかったのか……」
『そう、違う。でも自業自得でショック受けて、その後数年はもう二度とやらないって思ってた。お前との関係も、なんとかせめてすぐ険悪にならない程度にはしたくて頑張ってたけど、その甲斐あってか中学の頃は比較的穏やかだったよな?』
「確かに。でもそれをやめたってことは、気が変わったって事なんだろ?」
『だってお前に好きな女が出来たから』
「えっ?」
『お前に好きな子が出来たって知って、なんか居てもたっても居られない気分になって、どうしてもお前に好きだって言いたくなった。だからまた、嘘に出来るようにエイプリルフールを選んだんだよ』
 とにかく好きって言いたいだけだったはずなんだけどな、と相手の続ける言葉に、ただただ耳を傾ける。
『お前は驚きながらも、ちゃんと俺の話を聞いてゴメンとまで言って振ってくれたのに、逆にその対応で諦められないなと思ったんだ。というか、お前の優しい対応に味しめたというか、エイプリルフールにならお前に好きって言えるんだって、思っちまったんだよな』
 たとえ嘘としか思われなくても、年に一度だけでも、お前に好きって言っていいんだって事実が魅力的すぎたと、相手の声が申し訳無さそうに響いた。
『お前を好きって気持ちがどうにも出来ないのは、もうとっくに気付いてたからな。年に一回くらいバカバカしい遊びに付きあわせたって許されるだろって思ってた。何もかも自分勝手なのは自覚してる。でもな、だんだん欲深くなっていくんだ』
 自意識過剰かもしれないけど、高校三年頃からお前に意識されてるかもって思うようになったと言われて、思わず正解とこぼしそうになった言葉を慌てて飲み込んだ。
『お前が進学してそのアパートに住むようになってすぐ、押しかけた俺をあっさり部屋に上げただろ。しかもお前からの好きって嘘を待ってるって言ったら、やっぱりあっさり好きって言うから、あの時実はかなり驚いた。嘘でも言えるかって返ってくると思ってたから。もしかして少しは俺を好きって気持ちがあって、お前も俺同様、嘘ってことにして好きって言ってるんじゃないかって頭をよぎった』
 答えたくなきゃ答えなくてもいいが、当たってるかという問いに、少し迷ってから当たってると返した。相手はそうかと言って少し黙った後、また話し始める。
『でも今までが今まで過ぎだし、もし実は本当に好きなんだなんて話をしてふざけんなって振られてしまったら、もうこんな遊びすらできなくなる。それくらいなら嘘ってままにして、お前が好きって言ってくれる事を楽しもうと思った。これが俺の、全ての真実だ』
 年に一度だけの遊びってことに色々甘えすぎてたんだと言って、もう一度彼は本当にゴメンと謝罪の言葉をくれた。
 呆れるだろうと聞かれたので、呆れてるよと正直に返す。
「俺、お前を好きって思い始めてから先、この遊びのせいで結構泣いたからね?」
『すまん。俺に出来ることがあれば何でもする』
 じゃあ今から考えとくから、朝になったら覚悟決めてこっち来いよと言ったら、神妙な声がわかったと告げた。

続きました→

 
 
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明日の更新時間変更(雑記)

夕飯時に歯の詰め物が取れてしまって、現在かなり動揺中です。
かなり大きな詰め物取れちゃって、がっつり大きな穴が出来てて、口の中が気になってたまらない!
明日の朝一番で歯医者の予約入れようと思ってますが、朝の予定が狂いまくりなのと動揺とで、明日の朝の更新に間に合う気が全然しません。
そんなわけで明日の更新は定時の9時半ではなく、書き上がり次第更新となります。すみません。

 
 
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エイプリルフールの攻防2

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 大学2年目の春は、やはりわざわざ始発でアパートまでやってきた相手を部屋に上げて、好きだの言葉に好きを返し、舌を触れ合わせる深いキスを自分から仕掛けて行った。相手の驚く顔が見れて、少しだけ溜飲が下がった。
 お前も懲りないよなとフフンと笑い、今までの鬱憤を晴らすべく嘘に驚くなよと嘲って、ざまーみろと付け加えれば、相手が嫌そうに眉を寄せたのでますます気分が良かった。しかも自主的にさっさと帰ってくれたので、初めて勝ったような気がして嬉しかった。
 でも同時に、仕掛けたキスに丁寧に応じてきた相手を、そのキスに感じてしまった自分を、しばらく忘れられなくて苦しかった。
 3年目の春も懲りずに訪れた相手を、同じように部屋に上げてキスを仕掛けていったら、押し倒されて撫で回された挙句、手で握られ擦られ相手の手の中に吐精してしまった。やめてとか嫌だとかの言葉はキスで封じられていたし、力は明らかに相手の方が強い。でも本気で抵抗しきれなかったせいだという事もわかっている。
 大学進学で物理的な距離が大きく開き、年に一度エイプリルフールに会うだけの相手なのに、他の誰かを好きになる事は出来なかった。そして4月1日の朝にドアを開けて相手の顔を見ると、やはり好きなのだと思い知るのだ。
 強引にされた事よりも、その手を拒否出来なかった事が辛くて涙が抑えられず、相手を相当驚かせた上に随分と気まずそうな顔をさせたから、結果的に相手に一矢報いる事は出来たらしい。
 ただ、泣いてしまったショックもあり、無理矢理追い出すタイミングを逸したせいで、気まずそうな相手に優しく宥められたのは、その後もかなり引きずる事になった。
 ぐずぐずと泣く自分を緩く抱きしめそっと背を撫でてくれながら、しかし決して謝る事はせず、代わりとばかりに可愛いかったとか感じて貰えて嬉しいだとか好きだとか繰り返されて、嬉しいのに苦しくて辛くて涙はなかなか止まらなかった。だってエイプリルフールであるこの日に彼の吐き出す言葉が、嘘だという事を自分は知ってしまっている。
 そして大学4年の今年も、よくまあ顔を出せると思いながらも部屋の中へ迎え入れ、今年も来てくれて嬉しいと笑う。嬉しいのは嘘じゃないけど、見せる笑顔は嘘だった。全く笑えるような気分じゃないのに笑えるのだから、この数年で随分と嘘が上手くなってしまった。
「喜んで貰えて俺も嬉しい」
 柔らかに笑い返されながら、腰に回った腕に引き寄せられる。ドキドキを隠して、慣れたフリで自分から顔を寄せ唇に触れた。
 軽く何度か触れた後で舌を伸ばせば、簡単に迎え入れられ舌先をチュウと吸われて甘噛みされる。ぞわっと肌が粟立って、腰に何かが集まり重くなる。
「あっさり感じて、相変わらず可愛いな」
 ふふっと笑われながら押し倒してくる相手の背を、腕を伸ばして抱いてみた。昨年同様触れられる覚悟も、それどころか抱かれるつもりまである。
 自分の意思で受け入れるのだから、少なくとも、彼がこの部屋にいるうちは泣き顔を見せずに過ごせるはずだ。
「今年は、最後まで、抱いてくれる?」
 相手の顔を直視しながら口にする勇気はなかったから、引き寄せた彼が覆いかぶさって来た後に、そっとその耳に吹き込んでみた。
 腕の中でギクリと小さくはねる体。しかし相手の驚きに、してやったりと笑える余裕はない。
「ねぇ、好きだよ」
「ああ。俺も好きだ」
 好きの言葉に反応して、すぐさま好きが返された。
「ほら、せっかく両思いなんだから、最後まで、しよ?」
 相手の躊躇いを感じながら、それでさと言葉を続けていく。
「でさ、もう、終わりにしてよ。お前は楽しいのかも知れないけど、俺はやっぱり嘘吐くの向いてないし、年一回の遊びってわかってても、遊びと割り切って今日だけの事に出来ないんだよ。お前が好きだよ。今日は嘘で良いけど、今日が終わったら無くなる訳でも、反転して嫌いになれるわけでもないからさ。だから、終わりにさせて」
 なんせ今日はエイプリルフールなので、これすら嘘と思われるかも知れない。だから一応、エイプリルフールだけど今日は全部本当の事しか言ってないよと言ってみた。
「わかった。終わりにする」
 これ本当なと耳元に囁かれた言葉に、ホッとし過ぎて体の力が抜けていく。
「でも、今日このままお前を抱くのは無理」
「ああ、うん。いいよ」
 言われて、確かにそうなるよなと、内心苦笑するしかなかった。
「本気で好きとか言ってる男に、好きだの可愛いだのの嘘言ったって面白くないよな。本気で抱かれたがってる相手なんて抱けないってならそれでいい。お前、俺が喜んだら悔しいもんな」
 抱かれるつもりでそれなりに体を慣らしてあったから、少し残念でもあったけれど、でも自分ばかりが好きなセックスなんて、しなくて済むならしない方が良いと思う気持ちもある。
「違う。そうじゃなくて、お前を抱くのは明日にさせてくれ」
「は? 明日?」
「今日が終わったら、もう一度、お前に好きって言う。今日のうちに俺も本気でお前が好きだって言っても、どうせお前、信じられないだろ。まぁそれも全部俺のせいだけどな」
 明日、全ての本当を話すよと、柔らかで優しい声が鼓膜を震わせた。

続きました→

 
 
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エイプリルフールの攻防

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 まだ寝ていた春休みの朝、チャイムを連打されて起こされた。渋々玄関の戸を開ければ、そこには思いもかけない人物が立っている。
「え、何? なんでお前?」
 そこに居たのは地元の知り合いだった。いや、知り合いというか犬猿の仲というか、あまり良好とは言い難い関係を長年続けてきた元同級生だ。
「寝ぼけてんのか? お前に愛を囁きに来たに決まってんだろ」
 にやりと笑ってみせるから、今日がエイプリルフールだったことを思い出す。
「まさか今年も来るとは思ってなかった」
 大学への進学を決めて、先日引っ越してきたばかりのこのアパートは、実家から片道三時間オーバーの場所にある。
「もはや恒例行事だ」
「というか住所良くわかったな」
「お前の親に聞いたら、笑いながら教えてくれたぞ」
 思わず何やってんだよ母ちゃんと呟いてしまったら、相手は楽しそうに笑いながら、離れても仲良くしてやってねって言ってたぞなんて言うから、親は自分たちの関係を大きく誤解しているらしいと知った。
 いや、毎年毎年、春の玄関先で告白ごっこをしている息子たちを見ていたら、そう誤解するのも仕方がない。
「お前、どんだけ俺好きなんだよ」
「始発で駆けつける程度には、愛してるよ」
 にやりと笑い返してやったら、ふわっと笑いつつも真剣な声のトーンで告げてくるから、ああくそダメだと内心では既に白旗を振った。嘘だってわかってても嬉しいとか頭沸いてる。
「照れんなよ。可愛いな」
 顔赤くなってんぞと指摘されて、言われなくてもわかってると思いつつ、相手の腕を掴んで取り敢えず家の中に引き込んだ。どう考えても玄関の戸を開けながらする会話じゃない。
「今年はやけに積極的じゃないか」
「引っ越してきたばっかだし、近所に見られたくない」
「ああ、まぁ、確かに。配慮不足で悪かった」
 素直に謝られて拍子抜けだ。どうやら親含む実家近辺では、エイプリルフール限定の遊びとして認識されている自覚が、こいつにもちゃんとあったらしい。
「つーかお前も、本当によくこう長いことこんなバカなこと続けるよな」
「お前に正面切って好きだといえるのはこの日だけだしな」
「でももういい加減俺も慣れきってるし、そうそうお前が楽しい反応もしてないんじゃないの?」
 言いながら、初めて好きだと言われた大昔へ思いを馳せる。あれはまだ小学生の頃で、多分たまたま出くわしただけだった。普段何かと衝突することが多かった相手に、いきなり好きだと言われて腰を抜かす勢いで驚いたら、こいつは爆笑してエイプリルフールだと言ったのだ。もちろんその後、自分たちの関係が悪化したのは言うまでもない。
 その後数年は何もなかったのに、中学三年の春にわざわざ自宅まで押しかけてきたこいつは、またしても好きだと言って驚かせてきた。過去にエイプリルフールと笑われた事なんて忘れていたから一瞬本気にした。中学に上がってからはそこまで険悪な仲ではなかったし、好きな女子にすら告白できない自分と違って、男相手に告白するという勇気を純粋に凄いと思って、好きな子いるからゴメンと誠意を持って丁寧にお断りしたのだ。なのにこいつはにやりと笑って、エイプリルフールと一言残して帰っていった。もちろんその後、自分たちの関係は悪化した。
 そして高校に入学してからは、毎年4月1日に実家を訪れ、お前が好きだと言うようになった。さすがにもう信じることもなく、嘘つきと追い返したり、はいはいお疲れ様ですと軽く流してみたりしたのだが、昨年、嘘だとわかっているのにトキメイてしまって慌てた。おかげで、高校三年次はひたすらこいつを避けて生活するはめになってしまった。
「お前の反応がおかしくて続けてるってより、待ってる、が正しいな」
「待ってるって何を?」
「お前が俺に好きだっていうのを」
「は?」
「こんだけ嘘の好きを並べ立ててるのに、お前は驚くか呆れるかで、自分も嘘をつき返そうとはしないんだよな」
「ああ、その発想はなかったわ」
 そうか。嘘ってことにして好きって言っていいのか……
「じゃあ、俺もお前のこと、好きだよ」
 口に出してみたら、思いのほか恥ずかしい。だって嘘だけど、嘘じゃないから。
「そうか。ならやっと、両想いだな」
 グッと腰に手が回ったかと思うと、ふふっと楽しげに笑った相手の顔が近づいて、軽く唇が塞がれる。
 すぐに離れていく顔を呆気にとられて見つめてしまったら、満足気な顔でにやりと笑う。胸の奥を鋭い何かで突かれるような痛みが走るくらい、それは酷く嫌な顔だった。
「バカすぎだろ。お前の反応、まだまだめちゃくちゃ楽しいぞ?」
「死ねっ!」
 閉じたばかりの玄関扉を開いて、グイグイと相手を押し出した。
 ガチャリと鍵を閉めて、閉じたドアに額を押し付ける。ぐっと歯を食いしばっていなければ、泣いてしまいそうだと思った。

続きました→

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(卒業3・終)

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 それなりの準備は自分でしてみたものの、今まで弄ったり、ましてや拡げようなんてしたことがないその場所を、男と繋がるための性器に変えるのは大変だった。
 さっさと童貞を捨てたいだろうに、相手が思いのほか辛抱強く、慣らす行為にむしろ積極的だったのは助かったが、でもその分めちゃくちゃ恥ずかしい。恥ずかしさから早く入れろと思う気持ちと、痛いの嫌だし十分慣らされたいって気持ちとの間で揺れる。
「うっ、……ぁっ……」
 指を増やされたせいで、苦しげな息が漏れているのが自分でもわかる。
「ゴメン、辛い? 戻す?」
 戻すというのは、指を減らした状態でもっと慣らすかという意味らしい。
「痛く、ないから、へーき」
 そのまま続けろと言えば、辛かったらちゃんと言ってよと、頼りなげな声が掛かったものの、埋められた指の動きが少しずつ大きくなっていく。
 セックス中、感じている演技をする女性が少なからず居るらしいが、自分が抱かれる側になってその気持ちが少しわかる気がした。もう少しアンアン出来れば、きっと相手も安心して先に進めるだろう。
 うん、でも、無理。ちょっとそれどころじゃない。
 自分の体に起こっている未知の感覚に、慣れるだけでも精一杯だった。
「ふあぁっ、ん……んぁあっ、あっ……」
 それでも意識すると少しは変わるらしい。恥ずかしい気持ちをねじ伏せて口を開き、少しでも気持ちが良いと思った時にはなるべく声を出してみた。
「ここ? これ? これ気持ちいいの?」
 素直に聞いてくるから、恥ずかしさは倍増する。ばかやろうと思うのに、でもそんな憎まれ口を叩く気にはならなかった。
「ぁあ、ん、た、多分、きもちぃ」
「わ、わかった」
 そんなやり取りを何度か繰り返せば、最初は気のせいみたいだった僅かな快感が、はっきりと自覚できる大きさに膨らんでいく。自分の体のことだけれど、まさか本当に感じ始めるとは思っていなかったので、驚きと安堵が入り混じって、喘ぎながらもなんだか泣きそうになった。
「えっ、ど、どうしたの?」
 すぐに気付かれたが、どう説明していいかなんてわからない。
「な、なんでも、なっ」
「なんでもないわけないだろっ。何? 言って。教えて。嫌になったなら止めるから、だから、泣かないでよ」
「バカかっ」
「酷っ」
「ちゃんと、気持ちぃの、びっくりしてる、だけ」
「本当? 本当に気持ち良く、なれてる?」
「ほん、と」
 演技で喘げるほど慣れてねーよなどと言える余裕はもちろんなかったが、それでも相手は嘘とは思わなかったようで、安心した様子で嬉しそうに笑った。
「ね、じゃあ、そろそろ、いい?」
 必死で頷けば、涙の浮きかけた目元に唇が落ちた後、きざったらしいことすんなと言うより先に、体の中に埋められていた指が引きぬかれていく。
「んあぁぁあっ」
 ぞくぞくと背筋を走る確かな快感に声を上げた。
「だいじょうぶ?」
「いちいち聞くな、バカ」
「だって気になる」
「いいからさっさと来いよ」
「待って今ゴム着ける。というか、指入れてる時とのギャップ凄いんだけど」
「うっ……っるさいな。余計なこと言わなくていいから早くしろって」
「えーもーどんだけ可愛いくなる気なの」
「は?」
「可愛いよ。凄く、可愛い」
「はぁああ??」
 言葉をなくしてはくはくと口を開けたり閉じたりしている間に、ゴムを着け終えた相手が足の間に割り入ってくる。
「そんなビックリされると、こっちもビックリだよ」
「いやだって、お前、か、かわいい……って……」
「好きな相手可愛く思うのなんて、当たり前のことだと思ってたけど」
「う、…あ、ああ、うん。そ、そうか」
「そこで照れちゃうのもビックリなんだけどさ。あの、本当に、大好きだから。だから、その、初めてだし、その」
 もごもごと口ごもる相手に、だって童貞だもんなぁと思ったら、少しだけ気持ちが落ち着いた。
「ああ、うん。大丈夫だからおいで。ちゃんと童貞、貰ってやるから」
 伸ばした手で相手の腕を掴み、そっと自分に引き寄せる。相手は少し困った様子で、ギャップ凄すぎと苦笑した後、ゆっくりと挿入を開始した。
「んっ、んんっ、ぅああっっ」
「ご、ごめっ」
「あやまんなっ」
 平気だからとむりやり笑って見せたら、カッコイイのに可愛すぎて困る、なんてことを呟くように漏らしながら腰を進めて来る。
 さっきから人を可愛い言いすぎだ。童貞丸出しでいっぱいいっぱいのお前だって、こっちからすりゃ相当可愛い。
 なんてことを言える余裕はもちろんない。だから無事に繋がれたあかつきには、まずは童貞卒業おめでとうと言って思いっきり頭でも撫でてやろうと思いながら、詰まりそうになる息を意識的に吐き出した。

<終>

ダラダラと長い期間お付き合いありがとうございました。この二人のお話はこれで終わりたいと思います。

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(卒業2)

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 改めて告白されて了承し、晴れてごっこの付かない恋人という関係に収まった後、じゃあ行こうかといって連れてきたのはラブホテルだった。
 相手は黙ってついて来たけれど、緊張と期待とでずっとこわばった表情をしている。
「先に言っとくけど、さすがに俺も男相手初めてというか後ろは使ったことないから、一応童貞貰ってやるつもりはあるけど、突っ込めない可能性もあると思う」
 期待されすぎも困るし、出来れば理性ぶっ飛ばしてガツガツ来られるのも勘弁して欲しい。なんてことを思いながら口にした言葉にも、この展開にいっぱいいっぱいらしい相手の返答はない。
 まぁ童貞卒業は当分先の覚悟とともに告白してきのだろうし、当然の反応なのかもしれない。
「じゃあちょっと準備してくるから」
 持ってきた荷物ごとバスルームへ向かおうとしたら、慌てた様子でその腕を掴まれる。
「どうした?」
「ど、どうした、じゃなく、って!」
 つっかえつっかえながらもようやく出てきた声は少しかすれていた。
「え、あの、本気で俺に抱かれる気、なの?」
 ここまで付いて来て何を言い出しているんだ。
「そりゃまぁ、お前抱いてもお前の童貞卒業にはならないし」
「てか約束守るつもり、あったの?」
「なに意外みたいな顔してるんだよ。お前だって、約束守れって言い続けたら俺が折れると思ってただろ」
「それは、そうだけど、でも……嫌なんだと、思ってたから……」
「あー……もしかして、考えろは時間稼ぎとでも思ってたか?」
「それもあるんだろうとは思った。告白したら受けてやるって意味なのはすぐわかったけど、正直、恋人って状態でなぁなぁでごまかされて飼いならされるのかと……」
 思わず口をあんぐり開きそうになった。いやまぁ、あまりいい恋人にはならないだろうと、そう思わせるようなことを言った記憶は確かにあるけれど。
「そう思ってて、なのに告白してきたとか、逆に凄いな」
「だって諦めきってた相手が、そんな餌ちらつかせてきたら、罠だろうと毒だろうと食うに決まってる。実際恋人ごっこもなんだかんだ楽しかったから、ごっこのつかない恋人になっても、童貞卒業出来なくっても、多分きっと楽しいこともあるだろって思って」
「お前、健気すぎ」
「うるさい。人の純情弄びやがって」
 あんたって昔っからそうだよなと、諦めの滲む声とともに肩をがっくり落とされる。
「昔っからって、俺、そこまで酷いことお前にしてた?」
「俺の初恋も、ファーストキスも、誰だと思ってんの?」
「は?」
「しかもすっかり忘れてんだろ。薄情もん」
「え、ちょっと待った。話がさっぱり」
「いいよもう。お試しで恋人も、ただの思いつきだったんだろどうせ。知ってるから」
「待った待った待った。え、お前、元から俺が好きとかないよな? あんなに彼女ほしがってて、俺を好きとかないないない」
「そりゃ一回きっぱり諦めてますんで」
「いつ?」
「あんたが童貞捨てた頃。というかあれって俺へのあてつけじゃないの?」
「あー…………そうだった、かも」
 一つ下の幼馴染がしつこくまとわりついてくるのが鬱陶しくて、だんだん体がでかくなって生意気になってくるのも腹が立って、なんだったか些細な事で喧嘩して、むしゃくしゃしながら女の子とそういう事をして、童貞捨てたと報告して以降はしつこく遊びに誘われるのがなくなって、追い払うの大成功と思ったような気がする。
 というか、先に背が伸びた相手に、力で押さえつけられてキスされて、激怒したのが喧嘩の原因だったような……
 ああ、なるほど。自分のファーストキスの相手もこいつだったわ。
 嫌がらせと思ってたし、年下に力負けしたのも悔しかったし、完全黒歴史として記憶を抹消していた。
 黙って相手を見つめてしまえば、思い出した? と聞かれて、少しと返した。
「好かれてたとは思いもしなかった」
「それはまぁ、俺にも原因はあるってわかってる」
 ガキだったからと自嘲する姿に、そう思うと本当に対応が大人になったと思う。
「お試しで恋人は確かに思いつきだったけど、そのお試し期間に俺の気持ちを動かしたのは、間違いなくお前自身だよ」
 吐き出す声は穏やかだった。
「考えろって言ったのは時間稼ぎってわけじゃなくて、もう失敗したくないと思ったから。お試し恋人なんて曖昧なことをやって、お試しだってのに、気持ちがお前に引きずられて育ってくのが怖かった。だからもう、お前と曖昧な状態で関係を進展させるのが嫌だった。本当に、それだけだよ」
 セックスするなら恋人って状態でしたかっただけと言ったら、相手は驚いた様子で目を何度か瞬かせる。
「そういやちゃんと言ってないもんな。ごめんな。俺も、かなり本気で、お前を好きだよ」
 好きになったよと繰り返したら、相手の顔が泣きそうにくしゃりと歪んだ。

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