アナニーで突っ込んだものが抜けない

 隣の家の幼なじみから、助けてと半泣きの電話が掛かってきたのは土曜の夜も更けた時間だった。内心面倒くさいと思いつつ、お願いだから今すぐ来てと請われて、仕方なく隣の家のチャイムを押した。
 来いと言ったくせに玄関先に現れたのは彼の母で、こんな時間にどうしたのと驚かれてしまったから、電話で呼ばれたと告げて勝手知ったると上がり込む。呼んだくせに出てこない彼に、彼の母も呆れ気味だ。そろそろ寝ちゃうけどという言葉にお構いなくと返してから彼の部屋へ向かった。
 軽くドアをノックしたら入ってという声が聞こえてきたのでドアを開けたが、一見部屋の中に彼の姿がない。おや? と思って視線を巡らせれば、ドア横のベッドが盛り上がっていて、どうやらその中に居るらしい。ご丁寧に頭まで布団をかぶっている。
 助けてというのは体調不良という話なのだろうか? だったら自分ではなくまず母親にでも助けを求めればいい話なのに。
「来たぞ。大丈夫か?」
 それでもそうやって様子を窺ってやる自分は彼に対して甘いという自覚はあった。まぁそれがわかっているから彼も自分を呼ぶのだろうけれど。
「お前だけ?」
「ああ」
 もそもそと顔を出した彼は、半泣きどころではなく泣いていた。真っ赤な目に溜めた涙をボロボロこぼしながら助けてと言われて、さすがに尋常じゃないなと思ったが、何が起きているのかはやはりわからない。
「俺に出来ることならするけど、何をどう助けろって?」
「あの、……そのさ……」
「言わなきゃわからないぞ」
「うん……その、抜けなく……って……」
「抜けない?」
「あの、だからさ……」
 泣くほど困っているのに何を躊躇っているのか、元々泣いて上気していた顔がますます赤みを増していく。
「あの、あの……もちょっと近く来てよ」
「そんな言い難いことなのか?」
 ベッド脇に立って見下ろしていたのだが、仕方ないなと腰を下ろして、彼の顔の横に自分の顔を近づけてやった。
「ほら、これでいいだろ。で、なんなんだよ」
「誰にも、言わないで、欲しい」
「そんなの内容によるだろ」
「だってぇ……」
「さっさと言わないと面倒だから帰るぞ」
「ダメ。やだっ」
 慌てたように伸ばされた手が、ベッドの上に軽く乗せていた手をギュウと握る。その手は彼にしては珍しく冷えて、心なしか震えているようだ。
「本当にどうしたんだよお前。何があった?」
 反対の手で、その手を包むように覆ってやってから、もう一度なるべく優しく響くように問いかける。
「だから抜けなくなっちゃって」
「だから何がどこから抜けないんだよ」
「お尻から……」
「は? 尻? 尻から何が抜けないって?」
「……っが!」
 口は動いたがほとんど音になっていない。
「聞こえねぇよ」
 更に顔をというか耳を彼の口元へ近づけた。再度告げられた単語はどうにか拾ったが、やはりよく意味がわからない。
「は? マッサージの棒? なんだそれ」
「だからツボマッサージするやつ。あるだろこう棒状の」
「あー……まぁ、それはわからなくない。けどそれが抜けないって……あっ?」
 一つの可能性には行き当たったが、まさかと思う気持ちから相手の顔をまじまじと見てしまった。
「お前、そんなものケツ穴に突っ込んで……た?」
「言わないで。言わないでっ」
「言わないでじゃねぇよ。マジなんだな?」
「うん」
 ぐすっと鼻をすすりながら、更に何粒かの涙をこぼす。
「あー……じゃあちょっと見るわ。布団めくるぞ」
「う、ん……」
 躊躇いを無視して布団をめくれば、むき出しの下半身が現れた。無言のまま足を開かせるように手に力を込めれば、おとなしく足を開いてみせる。
 なんで自分がこんなことをと思いつつも、更に尻肉に手を添えを割り開く。その場所は濡れているようだったが閉まっていて、中にマッサージ棒が入っているなどとは到底思えない。
 大きくため息を吐いて覚悟を決める。
「おい、中、触って確かめるぞ」
 ビクリと体が揺れた。躊躇って戻らない返事を待つ気もなく、その場所へ指を触れさせ力を入れる。
「ぁっ……ァ……」
 するりと入り込んだ指先はすぐに固い何かに触れた。
「ああ、……確かになんか入ってんな。てか材質何? プラスチック? 木の棒?」
「木……」
「普通に力んだら出てこないのか?」
「そんなの試したに決まってるだろ」
「まぁそうだな。で、俺に指突っ込んでこれ抜き取れって?」
「ムリ?」
「わかんねぇ」
「お願い」
「ったく、お前、本当バカ。アホな遊び覚えてんじゃねぇぞ。取り敢えずチャレンジはしてやるけど、最悪抜けなかったら医者行けよ」
「医者やだ。お前が抜いてよ」
「俺にだって出来ることと出来ないことがある。いいから濡らすもんよこせ。ローションか何か使っただろ?」
 最低でも2本の指を入れて摘んで引っ張りだすことを考えたら、何かしら潤滑剤があったほうが良さそうだ。
「そこ、あるやつ」
 言われて目を走らせた先にあったのはワセリンのケースだった。
 結局、どうにかこうにか抜き取ることに成功したのは、既に日付をこえた時間で安堵とともにどっと疲れが押し寄せる。
 さっさと帰って眠りたい。眠って今日のことは忘れてしまおう。
 ごめんねとありがとうを繰り返す相手に適当に相槌を打って逃げるように隣の自宅へ帰り、ベッドの中に潜り込む。しかし疲れて眠いはずなのに、体はオカシナ興奮に包まれて眠れない。
 股間に手を伸ばしながら、変なことに巻き込みやがってと幼なじみの彼を罵ったが、オカズは結局のところ先ほどの彼が見せた痴態でもあった。

お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzH

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あと少しこのままで

キスしたい、キスしたい、キスしたいの続きです。

 日付けが変わる30分程まえ、明日は祝日だしとだらだら雑誌を捲っていたら、控えめに部屋のドアがノックされた。少し前に玄関ドアが開閉された音は聞こえていたが、こんな時間に従兄弟が部屋を訪れるのは珍しい。
「なにー?」
 ベッドから起き上がりつつ、ドア越しにも聞こえるだろう声量でとりあえずそう返せば、やはりそっとドアが開いた。
「起きてて良かった」
 顔を覗かせた従兄弟の、軽やかな声とどこか浮かれた表情に、そう深刻な問題が起きたわけではないらしいと思う。
「何かあった?」
「うん。焼き鳥あるからちょっと晩酌付き合わない?」
「食べる!」
 即答してうきうきで部屋を出る。
 リビングへ行けば、ソファの前のローテーブルの上、ざっと15本程度の焼き鳥が無造作に皿に盛られていた。
「てかさ、どーしたのこれ」
 今までも出張土産とかいうお菓子類は何度か渡された事があるけれど、こんな土産は初めてだ。
「お前にって思って買ってきた」
「え?」
「今日飲んでた店、焼き鳥すんごく美味かったんだよ。で、途中、大学生の従兄弟が同居中で若いからか肉ばっか食ってるっつー話したら、土産に持ってってやれって言われてさぁ。この店の焼き鳥、お持ち帰りしても美味いんだって」
「なにそれ優しい。てか乗せられて買っちゃった系?」
「うっせ。お前はありがたく食っとけばいーの」
「食うよ。食うけど!」
「食うけど?」
「やっぱ最近、なんかちょっとオカシクない?」
 どこらへんがと問われて口ごもる。なぜなら、従兄弟の変化のきっかけは、やはりあの日のキスにある気がしているからだ。それとも自分が意識しすぎなだけだろうか?
「なんか、シタゴコロ的な……」
「まぁ、否定はしない。そりゃ多少はあるよな、下心」
「あんのかよっ」
「そう警戒すんなって。食ったらならキスさせろ、なんてことは言わんから」
「本当に?」
 ホントホントと軽いノリと、やはり目の前の美味しそうな焼き鳥の誘惑に負けて、いそいそとソファに腰掛けた。
 食ってていーぞと言って、いったん併設の小さなキッチンに引っ込んだ従兄弟は、冷蔵庫を開けてからお前なに飲むのと問いかけてくる。
「晩酌付き合えって俺にも飲めって事じゃないの?」
 二十歳になった時、お祝いで飲みに連れて行って貰って以降、たまーに誘われて一緒に飲んでいたから、今日もそれだと思っていたのに。
「と思ったけどやっぱなし。お前今日は酒禁止」
「なんで!?」
 何を飲むかの返事はしていないのに、戻ってきた従兄弟はビールの缶とペットボトルのお茶とグラスとを器用に抱えている。
「今日の俺は下心があるから。てかお前のせいで下心湧いちゃった~」
 お前が酔ったらイタズラしそう。なんてどこまで本気かわからない笑顔と共にお茶とグラスを差し出されたら、黙って受け取る事しか出来ない。
「でも乾杯はして?」
 隣に座った従兄弟はプルタブを上げてビールの缶を軽く掲げて見せる。
 お茶で? とは思いつつも、望まれるままグラスをカチンと合わせてやれば、酷く嬉しげだ。やたら幸せそうに崩れかけた頬と口元が目に入って、なるほど既に少し酔ってるのだとようやく気付いた。そういえば、この焼き鳥を買った店で飲んできたのだと言っていたのを思い出す。
「どーした?」
「今、どんくらい酔ってんの?」
「酔ってないよ?」
「嘘ばっか。けっこー飲んだろ」
「まぁ飲んだけど。でも帰ってからシャワー浴びてさっぱりしたし、もうあんま残ってないって」
 ジロジロと見つめる従兄弟は確かに風呂あがりで、しかも綺麗に髭も剃られている。
「明日、仕事は?」
「さすがにないよ。あったらこの時間に追加で飲まないって」
 前から休前日の夜にもこんなに小奇麗にしていただろうか?
 忙しい従兄弟は休日出勤も多い上に、こんな風に夜間一緒に過ごすことはめったにないので分からない。いや、たとえあったとしても、きっと覚えてなかっただろう。だらしなく小汚いおっさんだったあの朝が珍しかったのは確かだが、キスの上書きなんて話がなければ、従兄弟の普段の格好など気に留める事もなかったのだ。
 ああ、やっぱり自分が意識しすぎている。
「お前、本当にあれトラウマになってんのな」
 従兄弟を見つめたまま黙ってしまったら、苦笑とともにそう言われたけれど、唐突過ぎて意味がわからない。
「どういう事?」
「だってさっきから、何度も繰り返し思い出してんだろ。俺にキスされたこと」
 ごめんと謝る顔は一転して真剣だった。
「もう少しこのまま様子見ようかと思ってたけど、やめるわ」
 そんな前置きの後、従兄弟は続ける。
「キスなんてたいしたことないだろーって流しちまおうかと思ってたけど、なんかお前どんどん意識してるっぽいし逆効果だったよな。本当、ごめん。寝ぼけてやらかしたことだから、二度としない、とは言えないけど。でももう、あんな醜態晒さないようにはするつもりだし、キスしようなんてことも、もう言わない。それでもお前が不安になるってなら、一緒に飯食ったりするの一切やめてもいいけど、どうする?」
 生活費を持つんじゃなくて家事負担分はバイト代みたいな形で定額払うよ、なんてことまで言われて、かなり本気の提案なのだと思う。もしこれに頷いたら、どうなるんだろう? 頭のなかはいっきに真っ白だった。漠然とした不安だけが押し寄せる。
「ついさっき、シタゴコロあるって言ったくせに」
「うん。一緒に住んでんだから、お互い家に居るときくらい、お前と普通に楽しく過ごしたいって下心は、ある」
「なにそれ。本気で言ってんなら、俺が酔ったらイタズラするかもって言ったのなんなんだよ」
「お前酔っ払うとちょっと可愛いから、そんな状態で俺意識されんの嫌だな~って思っての牽制。まぁ、言葉が悪かったのは認める。お前あれで余計身構えたもんな」
 すぐに答えだせとは言わないから、俺との生活どうするのが理想か考えて。と言って従兄弟はビールの缶を片手に持ったまま立ち上がる。
「焼き鳥はせっかく買ってきたんだからお前が食べろよ。全部食べなくてもいいけど、明日の朝、もし手付かずで残ってたら俺は泣くからな!」
「なんだその脅迫。食うよ。てかちょっと待って」
 とっさに伸ばした手でシャツの裾を握った。
「俺をからかって遊んでるわけじゃなくて、本当にキスする気だったなら、……キスして、いいよ」
 従兄弟を見上げつつ、かなりの覚悟でそう告げたのに、従兄弟は困ったように笑う。
「今のお前にキスしたら、ほらたいしたことないだろ、なんて言えない感じになりそうだからダメ」
 まさか断られるとは思っていなくてショックだった。意識させてごめんともう一度謝ると、従兄弟は服の裾を握る手をそっと撫でてくる。力が抜けてしまった手の中から、服の布が逃げていく。
 お休みと言ってリビングを出て行ってしまった従兄弟の背を見送る頭のなかは、やはり酷いとかズルイとかの単語でいっぱいだった。

レイへの3つの恋のお題:寝ぼけてキスをした/キスしたい、キスしたい、キスしたい/あと少しだけこのままで
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お題は消化したけど、これこんな所で終わりにしていいのか……?

 
 
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キスしたい、キスしたい、キスしたい

寝ぼけてキスをしたの続きです。

 共同生活ルールの中には、従兄弟が在宅中に食事を作る場合は従兄弟の分も一緒に作る事。というのがある。
 比較的自由にさせて貰ってはいるが、こちらは学費と従兄弟へ払う家賃(激安)以外の生活費はバイトで賄う大学生だ。自分がここに放り込まれた主な理由はどう考えても親の経済力だが、従兄弟がそれを受け入れた理由ははっきり知らない。ただ、共用部分の掃除と洗濯と買い出しとたまの簡単な食事作りで、大半の生活費を向こうが負担する条件を提示してきたのは従兄弟なので、こんな自分が適当にこなす家事でも、一応役には立っているのかもしれない。
 自分で買い物をしている手前、それがどれだけ割の良い待遇かはわかっているつもりだ。自分のバイト代だけで食費も雑費も遊ぶための小遣いも全部賄う事を考えたら、多少家事が増える方が断然いい。二人分だからといって手間が二倍になるわけじゃないのだから尚更だ。
 そんなわけで、あんな事があった後ではあるけれど、今から少し遅めの朝食を作る以上、やはり彼の分も考えなければならないだろう。とすると、まずは食事がいるかどうかの確認が必要だ。家に居るからと勝手に作って無駄になった事が数回あって、残された分を捨てたのを怒られて以降は、確認も必須になった。
 リビングを出た所でかすかに水音が聞こえて来たので、どうやら従兄弟はシャワー中らしい。あの状態なら、自分だってまずはシャワーを浴びるだろうから、なんの不思議もないけれど。
 なのでそのまま洗面所に入り、バスルームの扉を軽く叩き、少しだけ扉を開いて声をかけた。
「ちょっといい?」
 従兄弟は髪を洗っている最中で、振り向くことはなかったが、それでも返事はしてくれる。
「どーした?」
「朝飯作るけどいる?」
「ご飯と味噌汁なら食べたい」
「冷凍のご飯でいいなら。もしくは炊飯器のセットだけする」
「チンでいーよ。よろしく」
「出たらすぐ食べる?」
「食べる」
「わかった」
 言って扉を閉めた。その後はリビングに戻って、二人分の朝食を用意する。
 自分一人が食べる弁当類は自腹だが、食材なら従兄弟が出してくれるおかげで、自炊率は高い方だ。しかしだからと言って料理が上手いかどうかは別だった。
 朝食の用意と言ったって、冷凍しておいた白米をレンジに突っ込み温めている間に、お湯を沸かしてインスタント味噌汁を作って、二個の卵を目玉焼きにして、一袋分のソーセージを焼き、後はご飯のお供系瓶詰め類をテーブルに並べるだけの簡単すぎるお仕事だ。なお卵二つとソーセージの大半は自分の胃袋に消える計算で焼いている。多分従兄弟はそれらにほとんど箸をつけないだろう。
 自分的には十分だけど、これ絶対また野菜が足りないとか言われるメニューだ。なんてことを、並べ終わったテーブルの上を見つつ思っていたら、風呂から上がった従兄弟がさっぱりとした様子でリビングに戻ってきた。
「野菜足りない?」
 言われる前に自分から言ってしまえと口にすれば、テーブルの上を確認した従兄弟はあっさり足りないと返してくる。
「自分で足す? 俺に作れって言うなら作る物も決めてよ」
「いや、足りないけどお前がいいなら今日はいーわ。でも卵残ってるなら出して。生卵。卵かけごはんしたい」
「わかった」
 冷蔵庫から出した生卵を小鉢に割り入れて、醤油と共にテーブルへ運ぶ。
「はい。これでいい?」
 席に着いた従兄弟の前にその二つを置き、さて自分も席に着こうと移動しかけたら、従兄弟に腕を掴まれた。
「なに?」
「どうよ」
「どうよって何が?」
「さっきの、小汚いおっさんてやつを訂正して欲しいなーって」
 にっこり笑って見せる顔は、じゃっかん作りモノめいている。笑顔がなんとも胡散くさかった。
「えー……」
 確かに今の格好を小汚いおっさんとは言わないどころか、こうしてラフな服装だとむしろ実年齢より若く見えるけれど、言われるまま訂正してやるのはなんだか納得いかない。だって思い出さないようにしているだけで、小汚いおっさんにキスされた事実は変わらないのだ。
 そう言ったら、じゃあキスする? などと返ってきて、まったく意味がわからない。
「はあぁ?? なんでそーなる」
「トラウマかわいそうだし上書き」
「小汚くなくてもおっさんに変わりないし。おっさんにキスされたらどっちにしろトラウマだよ」
「んなこと言われるとますますしたくなるな」
「だからなんでだよっ!」
 変態かよと言っても否定されなかったから、どうやら従兄弟は変態のお仲間ということで良いらしい。普段は下の名前にさん付けで呼んでいるが、今度から変態さんとでも呼んでやろうか。
「おっさんのテクでトラウマとか言えないくらいには良くしてあげるから、まぁちょっとキスくらいさせなさいよ」
「バカじゃないの! 絶対やだ」
 ちょっと焦りつつ掴まれた手を振り払ったら、めちゃくちゃ楽しげに笑われた。からかわれただけっぽいとわかって、ホッとしつつも腹が立つ。
 さらに面倒なのは、このやり取りがあってから、たまに思い出したようにキスしようかと言われる事だ。
 遊ばれてるのは悔しいし、時々本気かと思ってドキッとさせられるのはもっと悔しい。悔しさのあまり最近は、いっそのことキスの一つくらいしてしまおうかとまで思い始めている。

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寝ぼけてキスをした

 今日の講義は3限からなので、のんびりと起きだした朝。とりあえず何か飲みたいと思いつつキッチンへ向かうが、併設されたリビングの惨状に、冷蔵庫へ辿り着く前に足を止めてしまった。
 リビングの床にスーツを脱ぎ散らかして、下2つだけボタンの止まったYシャツにトランクスというひどい格好でソファに沈んでいるのは、従兄弟でありこの家の世帯主でもある男だ。親の間でどういう話があったのか、入学したら大学の近くで一人暮らしが出来るのだと思っていたのに、気づけばこの従兄弟の家に放り込まれていた。
 最初は本当に苦労した。なんせ従兄弟とはいっても年が離れすぎていて、一緒に遊んだような記憶どころか、話しをしたという記憶すらほとんどない相手だ。正直、いきなり見知らぬ他人との共同生活が始まったといってもいい。
 しかし共同生活におけるルールがある程度決まってしまえば、多忙な従兄弟とはすれ違いも多く、ここでの生活は既に2年を越えたがけっこう気楽に過ごせてもいる。最初は憂鬱だったここでの暮らしは、思っていたよりもずっと快適だった。
 ソファの脇に立って、改めて従兄弟を見下ろす。確か14ほど上と聞いた気がするから、そろそろ30代も半ばだろうか。眠っていてさえ疲れの滲みでている顔には無精髭が伸びていて、ボサボサの頭髪にはちらりと白いものが混ざり始めている。
「わー……いつにも増しておっさんくさい」
 起きていたらさすがに咎められそうな事を、そこそこの声量で口に出しても、相手は依然無反応だ。
 こんな場所で無造作に寝るから余計に老けていくんじゃないのか? と思いつつも、だからといって起こしたほうがいいのかはわからなかった。忙しいのは知っていたが、さすがにこんな状況は初めてだからだ。
 パッと見、疲れてる以外のおかしな様子はないけれど、まさか具合が悪くてここで力尽きたという可能性もあるだろうか?
 そっと額に手のひらを当ててみたが、とりあえず熱はなさそうだ。
 ますますどうしようか迷いつつ、目の前に垂れていた結び目だけ解いて首にぶら下がったままのネクタイを、なんとなく握って引っ張った。スルリと抜けるかと思ったそれは何かに引っかかって、従兄弟の頭がぐらりと揺れる。
 あ、まずい。と思った時には従兄弟の目がゆっくりと開いていく。
「ご、ごめん。起こすつもりはなくて」
 体はネクタイを握ったままフリーズしていたけれど、口だけはなんとか動かした。従兄弟はぼんやりとした表情のままこちらの顔を見て、それからネクタイへと視線を移す。
「なに? 人の寝込み襲うとか、お前欲求不満なの?」
「は? ちょっ、んなわけなっ、うぁ……って、なんだよっ」
 否定の途中、結構な力で腕を引かれてよろけて倒れこめば、わしゃわしゃと頭を撫でられる。
「んー? ちゅーくらいならしていいぞ」
「だからっ! 欲求不満じゃ」
 ない、という言葉は続けられなかった。
 14も年上の、だらしなく小汚いおっさんにキスされたという衝撃でそのまま硬直していたら、「うわっ」という慌てた様子の声とともに、唐突に突き飛ばされて尻もちを付いた。
「えっ、ちょっ、何してんの」
 何してんのはこっちのセリフだと思ったけれど、それは言葉にならなかった。なんで朝からこんな目にと思いつつ相手を睨みつけたけれど、正直怒りよりもショックが強くて泣きそうだ。
「あー……悪い。スマン。多分寝ぼけた」
「酷い。色々酷い。小汚いおっさんにキスされたなんてトラウマになりそう」
「小汚いおっさん、ってお前もたいがい酷いぞ」
「ホントの事だろ。てか自分が今どんな格好してるかわかってんの?」
 言ったらようやく自分の格好に気づいたようで、情けない顔になって本当に悪かったと繰り返した。その後はソファの周りに散らかした服類をまとめると、それを抱えてそそくさとリビングを出て行く。
 尻餅をついたまま、そんな従兄弟を視線だけ追いかけてしまったが、彼から掛かる言葉はもうなかった。酷いとかズルイとかの単語が頭のなかをグルグルとまわる。のどが渇いていたことを思い出して立ち上がるまで、随分と時間がかかってしまった。

続きました→

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(攻)俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕

俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕 の攻側の話を同じお題で。

 突き上げるたびに、あっ、あっ、と溢れる吐息は甘く響いて、相変わらず随分と気持ちが良さそうだと思う。見た目や口調や振る舞いからは、真面目で堅物というイメージを抱きがちな先輩が、こんな風に男の下で蕩ける姿を、いったい何人の男が知っているんだろう?
 現在付き合っている恋人は居ないと聞いている。けれどこうして、恋人でもない自分を誘って抱かれているのだから、他にも気軽に誘って楽しむ相手がいるかもしれない。
 自分は先輩が初めての相手で、いまだ先輩以外を知らないのに。
「男ダメじゃないなら、俺で卒業してみる?」
 そう言って笑った時、先輩はかなり機嫌よく酔っていた。多分半分以上、童貞であることを揶揄われただけなんだろう。
 少しムキになった自覚はある。
 話の流れで、童貞捨てたいんすよねーなんて言ってしまったのは、先輩も童貞仲間なんだろうと勝手に思い込んでいたせいだ。真面目な先輩からは、今カノどころか元カノ関連の話が出たこともなかったから、交際未経験なんだと思っていた。
 対象が男なら今カノも元カノも話題に上らないのは仕方がないし、隠しておきたい気持ちもわかる。自分だって、男の先輩相手に童貞を捨てた事を、友人たちには隠している。
 こんな関係になった後も、一度たりとも抱かせろと言われたことはないし、童貞かどうかは結局聞けないままだけれど、あの時点で少なくとも処女ではなかった。まさかこんなエロい体をしてるなんて思っても見なかった。
「ふっ、……アァッ、そこっ……」
「センパイここ、強くされるの好きですよね」
「ん、イイ、そこっ、…ぁあ、あっ、も、……っ」
 どこが気持ちいいのか、どうすると気持ちいいのか、言葉にしてわかりやすく教えられたせいで、どこをどうすれば先輩が気持ちよくなれるのかは知っている。回数を重ねるごとに先輩はあまりあれこれ言わなくなったけれど、今はもう、先輩が漏らす吐息や短い言葉からその気持ち良さがわかるようになってしまった。
 自分なりにネットで調べてあれこれ試すこともしているが、先輩は楽しげに、俺の体で色々ためしやがってと笑う程度で、それを咎めることはしない。気持ち良ければなんでもいい。みたいなスタンスは、ありがたいようでなんだか寂しくもあった。
 自分ばかりがどんどんこの関係にのめり込んでいくのが目に見えるようで、なるべく行為に及ぶ間隔はあけるようにしているけれど、このイヤラシイ体の持ち主がその間どうしているのかを考えるのも辛い。いつ、恋人できたからこの関係はもうおしまい、と言われるかもわからないのに、恋人になってくださいなんて言って、逆に面倒だと切らえるのも怖い。
 俺のこと、どう思ってるんですか?
 聞きたいのに聞けないまま、都合の良いセフレを演じている。そんな関係への不満は少しずつたまっていた。
「そろそろイきそう?」
 良い場所をグイグイと擦れば、切羽詰まって息を乱しながらも必死に頷いている。
「ん、んっ、イ、きそ……あ、ぁぁ」
 先輩が昇りつめるのに合わせて、衝動的にその胸元に齧りついてやった。
「ぅああ、ちょっ、なに……?」
「所有印?」
「は、……なに、言って、あ、あぁっ」
 咎められそうな雰囲気を笑顔で封じながら、こちらはまだ達してないので、イッたばかりで敏感になっているその場所を、更に強めに擦りあげる。
 見下ろす先輩の胸元には赤い印がしっかりと刻まれていて、それを見ながら自分自身が昇りつめるのはいつも以上に心身ともに気持ちがよく、けれど果てた後はさすがに気まずかった。いくらなんでも痕なんて残したら怒られるに決っている。
 しかし、くったりと横たわる先輩は胸元にはっきと残っている痕に気づいていないのか、何も言わない。いつも通り、満足気な顔でうとうとと眠りかけている。
「寝ます?」
 これまたいつも通りそっと頭を撫でてやれば、ふふっと幸せそうに口元をゆるめながら、「うん」と短い応えが返った。
「鍵は新聞受けな」
「はい」
 こちらの返事にもう一度小さく頷いて、先輩はすっかり眠る体勢だ。
 あーこれ絶対痕が残っていることに気づいていない。それとも、わかっていて不問なのか?
 そうは思ったが、起こして問いただすなんて出来るはずもなく、文句を言われるにしてもこれは次回に持ち越しだ。
 衝動で付けてしまったその印を軽く指先でなぞってから、グッと拳を握りこむ。こんな目立つ場所に痕を残したことを申し訳ないと思う気持ちはあるが、後悔はあまりなかった。
 問われて咄嗟に所有印と言ったあれは本心だ。もし他の誰かにも抱かれているとしたら、その相手にこの人は俺のだと主張したいのだ。
 先輩とのこの時間を惜しむ気持ちは大きくて、終わりという言葉は怖いけれど、そろそろこの関係をはっきりさせる時期に来ているのかもしれない。先輩の穏やかな寝息を聞きながら、次回スルーで不問にしろ、咎められるにしろ、あなたが好きだと言ってみようと思った。

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俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕

 鏡の前に立ち、ため息を一つ。Tシャツの襟首ギリギリのところに、小さいとはいえない鬱血痕が残されている。
 つけられた時のチリリとした痛みを思い出して、眉間に力が入るのがわかった。所有印だなんて言って笑った相手の顔まで、一緒に思い出されてしまったからだ。
 面白半分で、付けてみたいという欲求だけで、試してみただけのくせに。
「なにが所有印だ、バカ」
 小さく毒づいてみるものの、もちろんそれを聞かせたい相手はとっくに帰宅済みで、虚しさだけが大きくなる。恋人でもない相手に、こんな痕をやすやす残させた自分が、相手以上にバカなのだ。
 友人とすら呼べるか疑問の自分たちの関係は、広義で大学の先輩と後輩だ。相手は、自分がたまたま教授の頼まれごとで大きな荷物を移動させていた時に、やはりたまたま通りがかってしまっただけの新入生で、本来なら先輩後輩としての付き合いすら生まれることのなかった相手だ。
 入学早々巻き添えを食らって肉体労働をさせられてしまった彼に、申し訳無さから学食をおごると言ったのは確かに自分だ。しかし、それで手伝いはチャラになるはずだった。まさかそのまま懐かれて、学年もサークルもバイト先もなにもかも違ってほぼ接点のない相手と、互いの部屋を行き来するほどの仲になるとは思っていなかった。
 少しお調子者でいつも笑顔を絶やさない彼は、自分なんかと付き合わなくても、友人も頼れる先輩も大勢いるはずなのに。なんとなく居心地がいいから、というなんとも曖昧な理由で、気が向くと声をかけてくる。
 あの日、なんであんな話になったのかはもう思い出せないが、自分は間違いなく酔っていた。仲の良さそうな女友達もたくさんいるくせに、実は童貞で、捨てたいけどなかなか機会もなくてなどと言い出した相手を、好奇心と揶揄い半分に誘ってしまった。酔ってはいたが、もしドン引きされて最悪この関係が切れたとしても、彼との接点がなくなって困ることはないという判断はあったと思う。
 自分の性対象が同性である事にはもう随分と前に気づいていたが、そういった人が出入りする場所や出会い系などを試す勇気はなく、同性とどうこうなる機会を持つことはなかった。つまり、自分にとってもチャンスだった。
 結果彼はその提案にのり、なんだかんだセックス込みの関係が続いている。好奇心旺盛にあれこれ試されて、こちらも充分楽しい思いをしているが、しかし真夏にがっつりキスマークなどを残されれば、さすがに溜息だって出る。
 現在恋人はいない。とは言ってあるが、実は自分もまったくの初めてだったとは言っていない。相手にしてみれば、経験豊富なお姉さんに手ほどきされて童貞喪失。というありがちな設定の、お姉さんがお兄さんになった程度の感覚なんだろう。
 性対象が同性で、しかも抱かれたい欲求に気づいてから、オナニーでは後ろの穴も使っていたから、初めてらしからぬ慣れた様子を見せたはずだ。本当はこちらもそれなりにいっぱいいっぱいだったけれど、年上としての矜持やら誘った側の責任やらもあって、余裕ぶって見せてしまった自覚はあった。
 鏡を見つつ、そっと鬱血痕に指先を這わせてみる。大きな痣のようにも見えるそれは、押した所で痛みなどはない。痛くもないのに気になってたまらないのは、襟首ギリギリで人に気付かれるかもという不安ではなく、やはり「所有印」という単語のせいだ。
 もちろん彼からの好意は感じているし、自分だって彼のことは好きだ。しかしその好意が恋愛感情かと言われると、途端に自信がなくなる。彼の気持ちもだけれど、自分の気持に対しても。やはりこの関係は、気軽な性欲発散の相手で、つまりはセフレなのだと思う。
 どんなつもりでそれを口にしたのか。彼は一体自分をどう思っているのか。多少なりとも所有したいという欲求からの言葉なのか。
 確かめてみたい気持ちもないわけではないけれど、きっと確かめることはないんだろう。

後輩側の話を読む→

レイへの3つの恋のお題:俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕
http://shindanmaker.com/125562

 
 
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