竜人がご飯2

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 食欲だか性欲だかをそそる強い香りが部屋の空気を揺らしたのは、瞼も上がらないほどに死が近づいた時だった。
 きっと死んだことの確認にでも来たのだろうが、残念ながら少し早かったようだ。
 確実に死んでから戻ればいいのにバカだなと思う気持ちとは裏腹に、なんだかんだ嬉しい気持ちが湧くのは、彼に逃げられた後、孤独に死んでいく寂しさを少なからず感じていたからだろうか。
 こうして戻ってくれたのに、戻ってくれた嬉しさも、今までの感謝も、伝える事が出来ないのが悔やまれる。
 なんとかありがとうを絞り出せないかと、動かすことを試みる唇に柔らかなものが触れた。そしてすぐさま、こじ開けられた口の中に少しザラリとした舌触りの弾力ある塊と、トロリと甘い何かが流れ込んだ。
 先日一瞬だけ触れた彼の腔内の味に近いが、それよりももっとずっと濃厚な旨味がある。嚥下するのも一苦労ではあったが、ゴクリと飲み込んだ瞬間、飢え切った体にその液体が染み渡る気がした。
 次々と流し込まれるそれを無心で啜る。空腹は最大の調味料とは言うが、こんなに美味いものを食べるのは初めてだった。そしてそれは飲み込んだ瞬間からエネルギーに変わって行くようで、じわじわと力が湧いてくる。
 気付けばその旨味の出処である弾力のある塊に舌を絡めて、もっともっとと催促するように舐めまわしていた。
 ザラリとした感触を舌で撫でるとゾクリとした快感が走る。んっんっと鼻を鳴らせば、クスリと笑う気配がして、ようやく自分の身に今何が起きているのかを考えた。
 目の前の気配の主が、世話係の小さな竜人でない事はさすがにもうわかっている。彼が戻ってくれたわけではないのだ。そして甘い液体が相手の唾液だという事も、深いキスによってそれを飲まされていたのだという事にも、すぐに思い至った。
 恐る恐る目を開ければ、それに気付いた相手がゆっくりと顔を離していく。
 信じがたい事だが、そこに居たのは人だった。
 褐色の肌をした、がっちりとした体躯の大柄な若い男で、美青年と呼んで差し支えない整った顔をしている。もちろん初対面の相手だ。
「お前…、なに…?」
 上手く喋れずつっかえながらも問いかける。
「お前の食事だ」
 何者だと聞きたかったのを失敗したからか、シンプルで簡潔な答えが返された。
 彼の唾液を貪り食った挙句に体力を回復しているので、それは間違いではないんだろう。だから引っかかったのは、その答えの中身ではなく彼の発する声だった。初めて会う相手のはずなのに、どこか懐かしさと安堵を感じる。
「どっか…で、…会った?」
 それには肯定も否定も返らなかった。代わりに、再度顔が近づいて唇を塞がれる。
 差し込まれる舌はやはり甘くて、すぐに自ら舌を絡めに行った。今度は相手もただ唾液を与えてくれるだけでなく、絡めた舌を擦るように動かし、更には腔内のアチコチを舐めあげる。
 スライムによって口の中の性感帯も開発済みだが、甘い唾液のせいか気持ち悪さは欠片もなく、ひたすら美味しくて気持ちが良かった。
 身体中の肌が粟立ち、腰が甘く痺れてたまらない。尻穴と腸内はきゅんきゅんと疼いて、早く弄られ、そこにも彼の唾液や精液を注がれたがっていた。
 お前の食事だと豪語するからには、このまま抱いて貰えるのだろうか?
 そんな期待と共にたまらず腰を揺すって誘えば、口を触れ合わせたまま、彼もベッドに乗り上げてくる。そうすると、彼の体躯の大きさが良く分かる。
 自分も決して小柄ではないどころか、どちらかと言えば体は大きい方だ。その自分にでかいと言わしめる彼は、本当に人なのか怪しむレベルの体格だった。
 そう思ったら、気付いてしまった。彼の声は保護されたあの日、最初に声をかけて来た大柄な竜人のものと良く似ている。体の大きさも、多分これくらいだった気がする。
「なぜ?」
 唇が僅かに離れる隙を狙って問いかけた。
「なぜ、とは?」
 こちらの疑問に応える気があるのか、無視はされずに問い返される。
「なんで、人の姿、を?」
「この方が食べて貰いやすいだろうという判断からだ」
 確信があったわけではなかったが、どうやら相手は本当に人ではないのだ。普通の人間とはサイズが違いすぎるので、成功しているとは言い切れないかもしれないが、竜人が人に擬態できるとは知らなかった。
「やっぱり、竜人、なんだな。あの日、俺と会ってる? 俺を、助けに来たヒト?」
「良く気付いたな」
「声が。あと、目も似てるかも。それと体格」
 こんなでっかい人間を見たことがないと言ったら、少し困った様子で、体格まで変えるのはなかなか難しいと返された。魔法はあまり得意じゃないと続いたから、どうやら彼自身の魔法による変化らしい。
「魔法、使える竜人も居るのか」
「お前が知らないだけで、当たり前に大勢いる」
「そうなのか」
「まぁ、高位の魔族ほど、滅多なことでは人に関わらないからな」
「ならなぜ俺を助ける」
「知らなくていい」
「それは、助けたわけではないからか?」
「どういう意味だ」
「助けるというなら一思いに殺して欲しい。死なせて欲しい。それが俺の希望だと言っても、叶えてはくれないんだろう?」
「そうだな。わかっているなら、食事の続きに戻ろうか」
「待って」
 近づく顔を避けつつ告げれば、気分を害したようで眉間にシワが寄り口角が下がる。人の姿だから表情は格段に読みやすい。
「話せる元気が戻って何よりだが、少しお喋りが過ぎるぞ」
「いやだって、食事、どこまでしていいのかなって思って」
「好きなだけ食べていい」
「後ろ、からも?」
「なんだ。我慢ができないから早くしろ、という話か」
 おかしそうに笑われて、流石に恥ずかしくなってきた。羞恥の感情が残っていたことに驚きだ。
「お前を世話していた者に、抱かれたいと言ったのだろう。だからもちろん、そのつもりで来ている」
 体を引き寄せられ、ここへ連れられてきてから与えられた、簡易な作りの寝間着を捲られる。シンプルな貫頭衣で下着はないので、裾を捲られればすぐに尻がむき出しだった。

続きました→

 
 
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竜人がご飯1

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 保護された身の新しい居住場所は、大きな屋敷の中の一室で、そこは無駄に広くて豪勢だった。めちゃくちゃ広くてフワフワで、肌触りの良いシーツが掛かったベッドは人生初とも言える快適さで、久々に心置きなく長い眠りにつけたのは本当に嬉しかった。
 とは言っても外出は許可されていないようで、常に外側から部屋の鍵が掛けられている。結局囚われの身であることは変わらない。しかしこの身の扱いは大きく変わり、そのまま世話係のような形で部屋に出入りする小柄な竜人からは、いたわりも気遣いも強く感じていた。
 特に食事が摂れず日々消耗していく自分を心配し、あれこれと食べられそうなものを探し回ってくれている事は、有り難くもあり申し訳なくもあった。
 ここへ来て最初に出された食事は、見るからに魔界産と呼ぶべき得体の知れない物が色々と浮かんだスープだ。それが馴染みのある見た目に変わっても、人間界の食材そのものを出されても、結局胃はそれらの食べ物を一切受け付けなかった。
 生の果実類は大好物だったはずなのに、いかにも熟れて食べごろな果実類を目の前にしても、美味そうどころか気持ちが悪くてたまらない。胃の中には吐くものなど何もないのに、芳醇なフルーツの香りに何度もえづいてしまったほどだ。
 そもそもスライムたちに嫐られ続けた日々の中、一度だって食事も排泄もしたことがない。擬似的な排泄は何度もさせられたが、あれは彼らによるパフォーマンスでショーでしかなかった。初期はムリヤリに導かれて吐き出した精を彼らが嬉々として吸収していたが、思えば吐精すら久しくしていない気がする。
 この体がどうやって生命活動を維持していたのかわからないし、それは救い出された今もわからない。ただ食事が摂れないことで確実に弱ってきていることは感じるので、魔法による物ではなく、スライムたちからなんらかの栄養を分け与えられていた事は確かなのだろう。
 世話係の竜人から試すかどうか問われた解決策もなくはなかった。それは尻穴から食事を流し込んでみる方法と、スライムを摂取してみる方法だ。
 食事を流し込む方法や、スライムの経口摂取で栄養が摂れるかはわからない。確実に効果が出るのはスライムを後口から摂取する事と言われたが、摂取とは彼なりにかなり言葉を選んだ結果で、要するにスライムに再度嬲られろという話に他ならない。
 もちろん断固お断りだった。
 このまま栄養摂取が出来ず、弱って死ぬならそれでいい。そう言った時の悲しそうな顔が忘れられない。
 人ほどに表情が豊かではない爬虫類顔でも、毎日顔を突き合わせていればそれなりに表情も読めるようになっていた。
 申し訳ないとは思う。気遣ってくれるのもわかる。それでも、生きるためにあんな生活に戻るのはゴメンだ。それでもさすがに、日々あれこれと世話を焼きに来る彼にまで、殺してくれとは言えなかった。
 好物だと言った生果実にすらえずいてしまった後は、彼が食物を部屋に運びこむことはなくなり、ベッドの中で眠る事が多くなっていた。ひたすら眠っていられるのは、エネルギー消費を抑えるためなのだろう。そしていよいよこの生命も終わるかと思った頃、その衝動は突然やって来た。
 様子見で部屋に訪れた彼の体から、なんとも美味そうな香りがする。それを意識したら、腹の中と尻穴がキュウキュウと蠢いて、彼に抱かれたくてたまらなくなった。
 尻穴を拡げられて中を擦られたい。腹の中を彼の精液で満たされたい。
 なんともおぞましい欲求は、そうやって他者からエネルギーを奪えという体の訴えだ。
「お前、苦しい。だいじょぶか」
 脂汗がにじみ額に張り付いた髪を、鋭い爪先で傷をつけないよう、そっと撫でるように払われただけでゾクゾクと快感が走る。
 スライムは拒否しても、相手が彼なら良いというわけではもちろんない。雄の竜人に抱かれるだなんて当然嫌でたまらないが、それでもやはり、スライムよりはましという気持ちはあった。ここへ来てからの日々はまだ短いが、散々気遣われ世話を焼かれて、多少は表情が読めるくらいには情が湧いている。
 そんな気持ちの緩みがこちらの反応にも如実に現れてしまった。
「ぁぁっんっ」
 甘く吐き出す声に、驚いた様子の彼が慌てて手を離す。
「もっと……撫でて、くれ」
 頼めば再度おずおずと手が伸びてきて、迷うようにそれでも数度髪を梳いた。
 やはり凄くキモチガイイ。しかし喘いだらまたすぐ止められてしまいそうで、グッと唇を噛みしめ呻く。
「どうした!?」
 呻き声を痛みと思ったのか、探るように顔が寄せられた。
 近づくほどに彼の放つ香りも強くなり、たまらずその頭へ手を伸ばす。引き寄せその口元に唇を押し当て、舌を伸ばして尖った歯だか牙だかの隙間へねじ込んだ。
 僅かに触れた彼の腔内は、驚くほどに甘くて美味い。
 しかし舐めすすり堪能する事は許されなかった。
「何するっ、お前、おかしい」
 加減を忘れた力で突き飛ばされて、ベッドの上を転がった。
「あっ……」
 戸惑いと困惑がにじみ、こちらへ伸ばしかけた手は途中で止まっている。
「お前が、食いたい。というか、抱かれたい」
 率直に告げれば、彼の顔にパッと朱が散った。頬を赤らめるなんてことが、竜人にも起こるのだと思うと面白い。というか俄然親しみがわいて思わず笑った。
「む、……むりむりむり。それ、俺、しない」
 クルリと背を向けて、走って部屋を飛び出していく。鍵をかけ忘れたことにも気付いたが、起きだし逃げ出す気力も体力も残っていない。
 暫く彼の反応を思い出して笑い続けたが、やがて疲れて目を閉じた。
 このまま暫く戻ってこなければいいと思う。飢えて死ぬのはきっともうすぐだから、そうなるまで彼にはもう会いたくない。会えばまた誘ってねだって、必死に彼を食べようとしてしまうだろう。これ以上彼を困らせたくはなかった。

続きました→

 
 
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BAD END回避(スライム姦)

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 自分が魔界の見世物小屋と思しき場所へ連れてこられ、スライムたちに陵辱される日々を送るようになってからどれほどの時間が流れたのかは定かではないが、その生活はある日唐突に終わりを告げた。
 それは体を宙に持ち上げられ、大きく開かされた足の間から腹に詰まったスライムたちが、自重によって落ちていくショーの真っ最中で、ずるりぬるりと腸壁を滑っていくスライムたちのおぞましい感触に呻き喘いでいた時だった。
 気持ちが悪いと思うのに、ゾクゾクと背筋を走る快感は、ここでの日々の中で覚えこまされたものだ。
 何を言っても叫んでも懇願しても無駄だった。何もかもとうに諦めきっていて、口から漏れる言葉は失くし、ただ苦しさに呻き快楽に喘ぐ。何も考えず体の示すままに声を漏らすのが楽だった。
 初めは何が起きたのかさっぱりわからなかった。
「あっ…んんっ、ぁ…ひゃっ?……んぁぁぃゃあああっっ」
 体の中からゆるりと落ちていたスライムたちが、急速に動いて次々と体外に排出して行くから驚いて、その感触に久々に大きな悲鳴を上げてしまった。
 宙に吊るされていた体も無造作に床へ下ろされて、体に纏わり付いていたスライムたちがそそくさとどこかへ消えていく。一切の拘束が解かれるのは、この場所へ連れてこられてから初めての事だった。
 ふと気づけば、先程まで目の前に並び、下卑た様子でこちらを見ていたモンスターたちの姿もない。ぼんやりと見回す室内では、客と思しきモンスターたちが慌てた様子で逃げ惑っている。
 自分も逃げるなどという思考も体力もなく、そのまま呆然と逃げ惑うモンスターたちを眺めていたら、肌をウロコで覆われた大柄な二足歩行のモンスターが近づいてきた。見た目の特徴的に雄の竜人とわかってはいるが、ここまで大柄な竜人と対峙するのは初めてだ。
 かつて戦ったことがある竜人は、せいぜい自分の背丈と同じくらいだったし、もちろんこちらは何人もの仲間が居た。それでもさすが竜人と思わされる強さだったし、戦闘態勢を整えた状態で出会うならまだしも、こんな状態で出会った所で何が出来るわけでもない。
 むしろこれはチャンスかもしれないと、わかりやすく怒気を孕んだその姿に、一筋の希望を見た気がした。
 近づいてくるのを黙って見上げていたら、その竜人は目の前にしゃがんで顔を寄せてくる。まるで瞳の奥の何かを探ってでも居るようだ。
 見るからに屈強そうな体躯をしていたし、こちらを射抜くように見つめる眼光も鋭いのに、何故か欠片も怖いとは思わなかった。卑猥な目的で近づいてきたのではないことがはっきりとわかる、彼の澄んだ瞳のせいかもしれない。
「意識ははっきりしているか?」
 久々に聞く人の言葉だった。体の大きさからも、周りを圧倒する力強い気配からも、相当高度な種族だろうことは感じていたが、目の前の竜人はどうやら人語を操るらしい。
 随分と流暢に人語を話すのだなと、場面に似合わずのんきにそんな事を思った。
「ダメか……」
 がっかりした様子のため息と共に立ち上がりかける竜人に慌てて手を伸ばす。とは言っても、久しく拘束される事に慣れきった体の動きは緩慢だ。
「待って」
 諦めきって喘ぐ以外に言葉を発しなくなっていたせいか、それだけの短い単語ですら、舌がうまく回らない。
「話せるのか!?」
「殺して、くれ」
 驚きの声からも僅かに動いた表情からも明らかだった喜色は、こちらの発した言葉ですぐさま霧散してしまった。
 すっと顔を逸らした彼は立ち上がり、遠くへ向かって何事か吠える。それは人の言葉ではなかったから、彼が何を言ったのかはわからない。
 やがて駆け足で近づいてきたのは、打って変わって随分と小柄な竜人だった。まだ子供というよりは、きっとそういう種族なのだろう。その小柄な竜人へ何事か託すと、それきり彼は居なくなってしまった。
 一旦姿を消した小さな竜人は、やがて清潔そうな布を抱えて戻ってきた。その布で裸の体を包まれた後は、軽々と言った様子で抱き上げられる。
 並んで立ったら自分の背丈の半分程度しかない体躯のくせに、やはり竜人だからなのか凄い力だ。
「お前、あばれる、しない。わかった」
 先ほどの彼ほど流暢ではないが、こちらの彼も多少人の言葉を話せるらしい。片言でも暴れるなという警告は理解して、わかったと返して頷いてみせた。
「お前、運いい。たすかる」
 こちらを気遣ってかゆっくりと歩き出しながらそんな言葉をかけられて、やはりこれはここに囚われている人間たちを救い出すための動きらしいと認識した。
 人を助けるのかと思うと不思議だったが、人間界にも囚われ無体な仕打ちを受けているモンスターたちを保護する活動がないわけではないから、きっと似たようなものなのだろう。
 助かりたかったわけではないのだが、どうやらこのまま殺して貰えそうにはない。それでもスライムたちに嫐られるためだけに、ただただ生かされているような日々から抜け出せることは、確かに幸運なのかもしれないと思った。

続きました→

 
 
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仲間のために一人残って戦った結果(スライム姦/BAD END)

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 魔界へ続くとされるダンジョンの中、殺されるつもりで自分が残った。自分が残り敵の目を惹きつける事で、大事な仲間たちが無事に逃げ切れるならこの命など惜しくはない。
 少しでも時間を稼ごうと、持てる力を振り絞って剣を振り回し続けたがそろそろ限界だ。足に力が入らず、敵の攻撃を受けて吹き飛んだ体が壁に激突する。
 背を打ち付けた衝撃で脳みそまで揺れた気がした。ゆっくりと意識が暗転する中、仲間たちが逃げ切れている事を切に願った。

 体を這いまわるスライムたちに肌が粟立ち抑えきれない声があがる。
「あぅ、あぁ…やめっ、ろ……コロセ」
 多少数が多かろうと、最下層の弱小モンスター相手に良いようにされているのは、武器も防具もアクセサリーも全て取り上げられて丸裸な上、何らかの魔法でスライムたちが強化されているか、逆にこちらの攻撃力が下げられているせいだ。
 もともとパワープレイヤーで魔法類は使えない。なのに、腕に絡みつきまとめあげて拘束してくる1匹を、引き千切ることすら敵わない。
「う…ぁっ……いや、だっ」
 人語を解すことのない彼らに何を言っても無駄だ。それでも嫌だ、ヤメロ、殺せを繰り返すのは、彼らを自分にけしかけている存在を認識しているからだった。
 自分が今いる場所はステージの上か、もしくは動物園の檻の中のようなもので、スライム相手に為す術なく陵辱される自分を、楽しげに見つめてくる視線がある。
 死を覚悟して一人残って戦った自分は、結局殺されずに連れ去られ、魔界における見世物小屋的なものへ売られたのだと思う。
 スライムたちによって頭もほとんど固定されているから、じっくり周りを観察する余裕はないが、部屋の中はかなり広い様子で、アチコチで自分と同じように、連れられてきた人間たちが下等なモンスター類に弄ばれているようだった。
 固定された視界の中、つまらなそうに通り過ぎて行くのも、足を止めて興味深げにこちらを見つめてくるのも、にやにやと眺め続けているのも、今まで倒してきたモンスターや対峙したことのない未知のモンスターたちだ。
 高度なモンスターたちの中には人語を話すモノも居ると聞いたことがあるが、稀に掛けられる言葉の意味はわからなかった。ただしそれらが揶揄いや侮辱を含むものなのだろうことは、彼らの雰囲気と声音でわかる。
「んぁっ」
 熱を冷ますように体の上をアチコチ這っていたスライムの一部に胸を覆われ、少し高い声が上がってしまった。この後何が始まるか、体はもう嫌というほど知っている。
「あっ、あぁっ、んんっ」
 ぷにぷにとした触感で胸を揺すられながら、尖りっぱなしの乳首を捏ね回されれば、先程までとは比べ物にならない快感が走って身をよじった。
 床に投げ出されて横になった状態から、やがて背中に集まったスライムたちにより掛かる体勢へと変えさせられ、立てた膝を大きく割り開かれる。
 顔は正面に固定された。目の前にはショーのスタートを嗅ぎとったモンスターたちが並び、興奮気味にこちらを見つめている。
 開かれた足の間に勃ち上がるペニスに絡みついた一部に、擦るように上下しながら締め付けられれば、鈴口からはたまらず透明な雫がこぼれ出た。
「あ、あっ、イヤ、だっ。入る、なっあああっっ」
 亀頭を覆い先走りを吸収した後、足りないとばかりに小さな入口を拡げるように、穴の奥へと触手を伸ばされる。既に慣れた行為に痛みはないが、そんな場所をスライムのツルリとした触感で擦られてさえ、快感に声を漏らす自分自身に絶望することは避けられない。
 ペニスから侵入した触手に前側から前立腺をつつかれ、尻肉を左右に引っ張られて晒されている後ろの穴が、より深い快感を求めてヒクついているのがわかる。後ろから侵入した触手と前後同時に責められた時の、恐ろしいまでの快感を思い出して体が震える。
 今回はどんな風に責められるのか、何度イけば終わるのか。そして終わってもどうせ少しの休憩を挟んで、何度だって繰り返される。
 何らかの魔法か、もしくはスライムから直腸を通して栄養を与えられているのか、力尽きて事切れることさえ許されないのだ。
「いや、だ……助けて……殺して、くれ……」
 ボロリとこぼれ落ちる涙さえ、喜々として頬に這い上がってきたスライムにすぐさま吸収されて行く。
 ここにあるのは絶望だけで、なのに死ぬことさえ許されない。舌を噛み切ろうとすれば、腔内にまでスライムが侵入してきて阻まれるのは実証済みだった。
 誰か……
 どこにも届かない願いを虚しく繰り返しながら、責めを激しくするスライムたちに翻弄されて嬌声を響かせた。

救出しました→

お題提供:pic.twitter.com/W8Xk4zsnzH

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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(初詣2)

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 あちこちの出店を覗いてまわり、あれこれ食べつつ家族への土産も買って、自宅の最寄り駅に戻って来たのは5時頃だった。
 シンと静まり返る住宅街を並んて歩く。ぽつりぽつりと会話はあるが、さすがに疲れと眠さとで朦朧としている。
 ふわわと大きなアクビをしたら、隣の彼が付き合ってくれてありがとうと言った。
「良いって。これはこれで、なかなか楽しかったし」
 今回は受験生な幼なじみが相手だから付き合ったというだけで、きっともう二度としないけれど、人生一度くらいそんな経験があったっていい。
「いや、今日だけの話じゃなくてさ。お試しでも、ごっこ遊びでも、恋人になってくれてありがとって事」
「気がはやいな。それは大学合格してから言えよ」
「言いたかったんだからいいじゃん。そりゃ可愛い彼女ならなお良いのかもだけど、高校最後のクリスマスも年越しも、恋人と過ごせたってのが奇跡っつーかさ」
 嬉しかったんだもんと続ける口調の子供っぽさに思わず笑う。子供っぽさそのままに、彼は口を尖らせた。
「そりゃそっちはモテモテだから、こんなのたいした出来事でもないのかもだけどさー」
「いやこっちもそれなりに大した出来事だけどな。俺あんまイベント熱心じゃねぇから、年越しを神社でなんて初めてだったし」
「えっ? 初めてだったの?」
 そう言う彼は、今日程の規模の神社は初めてでも、過去に何度か友人たちと経験済みらしい。
「告白されて付き合ってみても続かないの、多分そういうの嫌がるせいなんだよな。あーあと、メールとかラインとか定時電話とかも面倒で、それも振られる原因か?」
「マジでっ!?」
 振られる側なのかと驚かれて、そうだと苦笑で返す。自分から振ることなんて殆ど無かった。そしてそんな事が続けば、だんだん特定の恋人を作ることに消極的になる。
 だからあの時、話の流れだったとしても、なんで自分から試しに恋人してやるなんて口にしたのか、今でも不思議で仕方がない。
「え、じゃあ、クリスマスの時の、十分恋人してるって、あれもしかして本気で言ってた?」
「当然だろ。歴代彼女よりお前相手のが色々してやってるくらいだわ」
「わーマジかー。俺にはお試しだからって手ぇ抜いた対応すんなとか言ってたの誰だよ」
「あー、確かに言った言った。でもそれ、女の子紹介のために取り敢えず形だけ付き合ってみましたって態度ありありなのは、さすがにこっちも腹立つかなってくらいの意味だわ」
「それさ、どっちかって言ったらそっちが、俺を勉強させるために取り敢えず形だけ付き合ってみました。って態度ありありだった気がするんだけど……?」
「そうか?」
「自覚ないとか割と酷い」
「嫌になったなら振ってもいいぞ。本命受かったら女の子の紹介はしてやるし」
「振らないよ勿体無い。ちょっとビックリしただけ。てか逆に、俺かなり優遇されてるっぽい感じもある」
 イベント嫌いなのに神社調べてくれてたし、初詣も一緒に行ってくれたし、自分の分の絵馬にまで俺の受験合格祈願してくれたしと続ける声は機嫌が良さそうだ。
「なんで?」
 ひょいっと目の前に回りこまれて足を止めれば、真剣な顔で見つめられた。
「なんで、って何が?」
「なんで、俺相手だと、嫌いなイベントごとも付き合ってくれるの?」
「お前が幼なじみで受験生で、一応金貰ってる立場だから?」
「それは正直にぶっちゃけ過ぎ」
 嘘でもお前が好きだからとか言ってよと苦笑する。
「ごっこでもお試しでも、今は俺が恋人でしょ。てわけでやり直しね」
 もう一度、なんで? と繰り返されて、思わずため息がこぼれ落ちた。
「お前が、好きだからだ」
「うん。俺も好きー」
 にっこり笑った顔が近づいてくる。
 屋外だし家の近所でもあるけど、どうせ周りに人なんて居ないし、もうかなり疲れてるしいい加減眠い。まともな判断が出来なくたってこれはきっと仕方がない。
 調子にのるなと頭を叩いてやりたい気持ちも、これ以上あれこれ許すのはマズイのではとチラリと過る思考も、そんな言い訳で押さえつけて目を閉じた。

続きました→

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(初詣1)

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 初詣は言われるまでもなく一緒に行くつもりでいた。一緒に行って、一緒に彼の大学合格を祈願してやろうと思っていたから、近隣の合格祈願向け神社と寺もチェック済みだ。
 クリスマスの時同様にゴネてこちらを頷かせるつもりだったらしい相手は、一緒に初詣に行きたいという願いも、大晦日から出かけて年越しの瞬間を神社で迎えたいという願いも、二つ返事でOKした自分に随分と驚いていた。
 どこへ初詣に行きたいかと聞きながら、調べておいた神社と寺のリストを見せる。
「これって」
「受験生向けの合格祈願用。行けそうなとこ探しといた」
「マジで? てかどういう風の吹き回し?」
「クリスマスにお前が頑張ってるの見せたから?」
「でもあれは、キス、させて貰ったし……」
 あの日のキスを思い出しているのか、相手の頬が薄く色付いていく。なんとなく期待のこもった視線を感じたが、さすがにそれは無視をした。
「まぁ、俺が横についてなくてもちゃんと勉強やってんなら、俺もイベント事は渋らず付き合わないと。お前にも、もっと恋人らしくしろって言われたしな」
 でもエロい事は受験終わってからなーとオマケのように付けたら、ギョッとした顔をするので、慌てて、女の子紹介されたいなら受験終わるまでは俺で我慢しとけと付け加えた。
「ああ、そういう事」
 ホッとするのかと思ったら、何やら渋い顔をしている。まさか俺にエロいことしたいわけ? なんて事を、冗談でも言えそうにない雰囲気だ。
 触れてはいけない。突き詰めてはいけない。これはお試しで、彼の受験が終わるまで限定の恋人ごっこをしているだけ。
「それで、どこにするよ」
 何にも気づかなかったことにして、少し強引に話題を戻した。
「周りに出店多そうなとこ?」
「お前の初詣の目的ってそこなのかよ」
「当然じゃん」
 出店の多さはやはり知名度に比例するだろうか。
「知名度高いとこって言ったらやっぱここだろ」
 リストの中から自分もよく知る大きな神社を一つ選んで指差した。しかし相当の人が押しかけるのだろう事も想像に難くない。
「でもめちゃくちゃ混みそう」
「人混み嫌?」
「いや。お前がいいならいいよ。たまにはそんな初詣も楽しそう」
 調べたら大晦日から三が日までは24時間ずっと開門しているそうなので、どうせ並ぶだろうと、23時半に向こうへ着くよう逆算して待ち合わせ時間を決めた。
 
 
 毎年テレビのゆく年くる年で賑わう神社を見ては居たが、実際の年越し神社を舐めていた。知名度の高いところを訪れたのだから当然なのかも知れないが、最寄り駅を降りた時から既に人が一杯で、その流れに乗って神社へ向かうものの、なんとか門を通った辺りで年を越してしまった。
 年越しの瞬間は見知らぬ周囲も一緒におめでとうと盛り上がったものの、だんだん口数も少なくなって、黙々と本殿へ向かってゆっくりと進んでいく。
 とにかく人が多いので、はぐれないようにを言い訳にして、当たり前のように途中からは手を繋いでいた。数時間は外にいる想定で防寒対策バッチリなのに、人混みに揉まれて暑いくらいで、相手の手は少し汗ばんでいる。 
 互いになんでもない振りをしているのは明らかだった。きっと自分だけがドキドキしているわけではないのだろうけれど、それはそれでやっぱりちょっと問題なんじゃないかという気もする。
 実際付き合う事になってから、彼が真面目に受験勉強に励んでいるのは確かなようだから、今更やっぱりこんな事は止めようなんて言い出せない。そんな事を言い出して、せっかくやる気になっている、受験前の彼の気持ちを乱したくはなかった。
 それでも、こんな提案するんじゃなかったという後悔は、日に日に大きくなっている。特に、こんな風にデート紛いの事をしている時は強く思う。
「疲れた?」
 参拝を終えた後も人波に従い移動し、周りの人がようやくバラけ出した辺りで、やっとホッと安堵の息を吐けば、隣から気遣う様子の声がかかる。手は参拝時に放して以降は、さすがにもう繋いでいない。
「少しね。思ったよりずっと混んでた。でもお前としてはこっからがメインなんだろ?」
「疲れてるなら、出店巡りなんて無理にしなくてもいいけど」
「大丈夫。でも出店覗きに行く前に、社務所寄らないか?」
 せっかくだし絵馬書いたりお守り買ったりしたらどうかと誘ってみたら、行く行くと元気良く笑うので、その笑顔にこちらも少し気持ちが晴れる。
 ぐちゃぐちゃと色々考えて後悔しても、それに彼を巻き込んでしまったら本末転倒だ。あまり自分を気遣わせてはいけない。気持ちを切り替えて、今は初詣後の出店巡りを一緒に楽しむのが正解だ。

続きました→

 
 
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