兄が俺に抱かれたいのかも知れない

 両親共働きで一番先に帰宅する自分が、帰宅時に郵便物を確認することになっている。両親宛のものやチラシ類はダイニングのテーブルに、兄宛のものは兄の部屋の机の上に、自分宛てはもちろん自室に持ち帰るのだが、兄宛のDMを届けた時にふと、兄の勉強机の棚に並んだ参考書の中に漫画本が紛れていることに気づいた。しかもなぜか背表紙が見えないように前後ろに突っ込まれている。
 なんだこれ、と思った時にはそれを引っ張り出していた。
「うわっ」
 肌色の多い表紙に、あ、これ、エロ本隠してたのかということに気づいて慌てたが、すぐに違和感に気づいてマジマジとその表紙を見つめてしまう。
 あれ、これ、もしかしなくても男同士なんじゃ……?
 うわーうわーと思いながらも、手は勝手に表紙を捲り始めてしまう。そして当然の流れとして、そのままそれを読み始めてしまった。しかもしっかり椅子に腰を下ろして。
 読んでいる間にも、脳内にはうわーとかひえーとかの言葉にならない驚きが渦巻いていて、読み終えた後は心臓がバクバクと痛いくらいに脈を打つ。
 知らなかった。兄にこんな趣味があったなんて。というか、他にも隠してたりするのかな?
 部屋を漁ったなんて知られたら絶対に怒られるけど、好奇心には勝てなかった。そんなわけで定番のベッドの下から、数冊新たに発見した漫画を兄の勉強机に積み上げ、黙々と読み耽る。
 やっぱりうわーひえーうわーと思いながらページを捲ってどれくらいの時間が過ぎただろう。
「おい、何してる」
 カチャッとドアノブを捻る音、ドアが開く気配、そして兄の慌てた声が続いた。振り向き兄を見つめる顔は、間違いなく赤くなっているだろう。羞恥でってよりは、興奮で。
「兄ちゃんさ、これオカズに抜いてんの?」
 手にしたままの漫画を掲げれば、多分羞恥で顔を赤くしている兄が、怒ったみたいな険しい顔でドスドスと荒い足取りで近づいてきて、手の中からそれを取り上げてしまう。バンッと音が立つくらい勢いよく漫画を閉じて、それをベッドの方に向かって放り投げる。しかもその後も無言で、机の上に積み上げた漫画を、取り敢えずみたいな感じにベッドへ向かって全部投げてしまう。
 動揺しすぎ。いや、気持ちはわかるけど。
 弟に兄弟ものの、しかもことごとく兄が弟に抱かれてるような描写が入ったエロ本見つかって読まれるってどんな気分? って聞きたい気持ちをどうにか堪える。だって他に聞きたいことがたくさんある。
「ゲイなの?」
「ち、がう……」
「んじゃ腐男子とかいうやつ?」
「は? お前、何言って?」
「あれ? 違った? BLって言うんだろ、ああいう漫画。で、それを楽しむ女子が腐女子で男なら腐男子」
「いや、違ってない、けど。えっ、お前、気持ち悪くねぇの?」
「ビックリはしたけど、気持ち悪かったら部屋漁ってまでして何冊も読まないって」
「いやでも、だって、」
「んでさ、ゲイじゃないなら、あれはそういう漫画のいちジャンルとして楽しんでます、みたいな感じなの?」
「そ……だよ」
 困ったように視線が泳ぐから、これはきっと期待していい。
「なーんだ。残念」
「残念?」
「俺、読んでて結構興奮したけど。兄ちゃんが、あの漫画みたいなこと、俺にされたいのかと思って」
 椅子に座ったままなので、見上げる兄の既に赤い顔が、更にぶわっと赤味を増していく。
「ね、正直にいいなよ。そしたら兄さんのこと、俺がうんと可愛がってあげる」
 さっき読んでた漫画の中のセリフを投げかければ、兄はすぐに気づいたようだった。
「おまっ、それっ」
「あはは。さすがにすぐわかるね。読み込んでるね」
「からかうなよっ。つかもうお前、部屋出てけ。でもって忘れろ。全部忘れろ」
「いやですー。てか、からかってないし」
 もう一度正直にいいなと促せば、うっと言葉に詰まった後、なぜかゲンコツを落とされた。
「暴力反対!」
「お前が悪いっ」
「なんでよ」
「勝手に部屋漁んなバカヤロウ」
「漁ってすぐ出てくるとこに置いとくとか、俺に見つけて欲しかったってことじゃないの」
「違うったら違うっ」
「えーもー漫画と違って全然すんなりいなかいじゃん」
「当たり前だろ。あれはフィクション」
「でもさ、兄ちゃん気づいてる?」
「何を?」
 そんなの、漫画みたいなことをされたいのかという質問に、顔を赤らめただけで否定はしてないってことをだ。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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兄弟ごっこを終わりにした日

 彼とその母親がこの家に住むようになったのは、中学に入学する直前の春休み中だったと思う。父の再婚を反対しなかったというだけで、もちろん彼らを歓迎する気持ちなんてなかったが、だからといって追い出そうと何かを仕掛けるような事もしなかった。
 子供心に両親の仲が冷え切っているのはわかっていたし、家の中から母が消えた時にはもう、なんとなくでもこの未来が見えていたというのもある。
 本当なら父だって、新しい妻と幼い息子の三人で、新たな家庭を築きたかったはずだ。単に、父は自分を捨てるタイミングを逃しただけなのだ。
 母の行動の方が一歩早かった。もしくは、自分を置いていくことが、母の復讐だったのかもしれない。なんせ、当時二歳の弟は連れ子ではなく父の実子だった。つまり自分とも半分血が繋がっている。
 自分は両親どちらにとってもいらない子供だったから、再婚するから出て行けと言われなかっただけマシだ。だから家族の一人として彼らに混ざろうなんて思わなかったし、必要最低限の会話しかしなかったし、練習のハードそうな部活に入って更には塾にも通い、極力家に居ないようにしてもいた。
 高校からは逃げるように家を出て寮生活だったし、もちろん大学も学校近くにアパートを借りたし、社会に出ればもっともっと疎遠になっていくのだろうと、あの頃は信じて疑わなかった。それでいいと思っていたし、そう望んでいた。
 父とは疎遠どころか二度と会えない仲になったので、あながち間違いではないのかもしれないが、望んでいた形とは全く違うものとなったし、まさかまたこの家に住む日がくるなんて、あの頃は欠片も思っていなかったけれど。

 父と後妻が揃って事故で亡くなったという連絡が来たのは、大学四年の冬の終わり頃だった。卒論は提出済みで、もちろん就職先も決まっていて、後は卒業を待つばかりというそんな時期だったのは有り難かったが、後処理はなかなかに大変だった。
 父はやはり元々の性格がクソだったようで、どうやら性懲りもなく浮気をしていたらしい。事故という結論にはなったものの、事故を装った後妻による心中じゃないかと疑われていたし、実際自分もそうだったのじゃないかと思っている。幸い血の繋がった新たな弟妹の出現はなかったが、父と付き合っていたという女は現れたし、遺産を狙われたりもした。
 でも何より大変だったのは、残された弟のケアだった。ちょうど中学入学直前という時期だったから、昔の自分とダブらせてしまったのだろうと思う。
 彼もまた、冷え切った両親の仲にも、父の浮気にも、元々気づいていたようだったし、両親の死は母の無理心中と思っているようだった。自分は両親に捨てられたのだと、冷めきった表情でこぼした言葉に、グッと胸が詰まるような思いをしたのを覚えている。
 放っておけないというより、放っておきたくなかった。
 半分血が繋がっているとは言え、互いに兄弟として過ごした記憶なんて欠片もなく、年も離れている上に七年もの間別々に暮らしていた相手が、今後は一緒に暮らすと言い出すなんて、相手にとっては青天の霹靂もいいところだろう。
 それでも、施設に行くと言う相手を言いくるめるようにして、彼の新たな保護者という立場に収まった。
 そうして過去の自分を慰めるみたいに、自分が欲しかった家族の愛を弟相手に注ぎ込んでやれば、相手は思いの外あっさり自分に懐いてくれた。そうすれば一層相手が愛おしくもなって、ますます可愛がる。そしてより一層懐かれる、更に愛おしむ。その繰り返しだった。
 それは両親から捨てられた者同士、傷の舐めあいだったかもしれない。それでも自分は彼との生活に心の乾きが満たされていくのを感じていたし、父は間違いなくクソだったけれど、彼という弟を遺してくれたことだけは感謝しようと思った。
 ただ、やはり今更兄弟としてやり直すには無理がありすぎた。自分が家を出た時、彼はまだ小学校にも上がっていなかったし、そもそも中学生だった自分が彼と暮らした三年間だってほとんど家にはいなかったし、彼を弟として接していた記憶もない。父の後妻同様、同じ家に暮らす他人、という感覚のほうが近かった。それは彼の方も同じだろう。
 便宜上、彼は自分を兄と呼んではくれていたが、互いに膨らませた情が一線を超えるのは時間の問題のようにも思える。兄として慕ってくれているとは思っていないし、自分だってもうとっくに、過去の自分を慰めるわけでも、弟として愛しているわけでもなかった。

 それでもギリギリ一線を超えないまま、兄弟ごっこを続けること更に数年。
 ある土曜の日中、彼はふらっと出かけていくと、暫くして花束を抱えて帰宅した。真っ赤なチューリップが束になって、彼の腕の中で揺れている。
「どうしたんだ、それ。誰かからのプレゼント?」
 今日は彼の誕生日だし、誰かに呼び出されて出かけたのかもしれないと思う。でもいくら誕生日だからって、男相手にこんな花束を贈るだろうか? 贈るとして、それはどんな関係の相手なんだろう。
「違う。自分で買ってきた」
 そんな考えを否定するように、彼ははっきりそう言い切った。差し出されたそれを思わず受け取ってしまったけれど、全く意味がわからない。
「え、で、なに?」
「今日で十八になったから、もう、いい加減言ってもいいかと思って」
「待った」
 とっさに続くだろう言葉を遮ってしまった。
「高校卒業するまでは、言われないかと思ってた。んだけど……」
 彼が十八の誕生日をその日と決めていたなんて思わなかった。さすがに想定外で焦る。
「待てない。もう、じゅうぶん待ったと思う」
 けれど、お願い言わせてと言われてしまえば拒否なんてできない。自分だって、この日を待っていたのだから。
「あなたが好きだ」
 そっと想いを乗せるように吐き出されてきた柔らかな声に、手の中の花束をギュッと握りしめる。
「兄弟としてじゃない。兄さんって呼んでるけど。事実半分とは言えちゃんとあなたは俺の兄なんだって知ってるけど。わかってるけど。でも何年一緒に暮らしても、やっぱりあなたを兄とは思えない。兄としては愛せない。愛したく、ない」
 真っ直ぐに見据えられて、あなたはと問い返された。彼だってこちらの想いに気づいているのだから、その質問は当然だろうし、自分だってちゃんと彼に想いと言葉を返さなければ。
「こんな俺に、誰かを愛するって事の意味を教えたのは、間違いなくお前だよ。お前以外、愛せないよ」
「なら、これからも愛してくれますか。これからは、恋人として」
 大きく頷いて見せてから、手の中の花束をグッと相手の胸に押し付けるようにして、そのまま花束ごと相手のことを抱きしめてやった。

続きました→

有坂レイへのお題【押し付けた花束/「これからも愛してくれますか」/まだ僕が愛する意味を知らなかった頃。】
https://shindanmaker.com/287899

 
 
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兄弟に欲情しています(目次)

キャラ名ありません。全9話。
2歳差の兄弟でセックスは弟が抱く側です。
精通後ずっと弟をオカズにオナニーしている兄と、そんな兄のオナニーをオカズに抜いてた弟が、オナニーしたりアナニーしたり相互オナニーの末、セックスまで経験しちゃう話。セックスよりもオナニー・アナニーがメインな感じ。
視点は兄→弟→兄→弟→兄と移動します。
どちらの視点でも恋愛感情にはあえてほとんど触れていませんが、兄の方は後ろめたい気持ちがチラチラとこぼれています。
兄は好きを自覚するのが怖くて目を逸らしてるようなイメージ。弟は赤裸々に求められているので、今はまだ単純に浮かれてるようなイメージで書いてます。
いつか兄が自分の気持ちに目を逸らせなくなった時、兄は弟から逃げていくと思うので、その時に弟がどうするのか、慌てて追いかけるのか、そもそも逃さないのか、そんな彼らの未来をアレコレ想像するのが楽しいです(余談)

下記タイトルは投稿時に付けたものそのままです。
性的な内容が含まれないものがないので、タイトル横に(R-18)の記載はしていませんが全話R-18です。タイトルに「弟」が付く場合は兄視点、「兄」が付く場合は弟視点です。

1話 ショタ/弟に欲情しています
2話 兄に欲情しています
3話 弟に欲情しています2
4話 兄に欲情しています2−1
5話 兄に欲情しています2−2
6話 弟に欲情されています1
7話 弟に欲情されています2
8話 弟に欲情されています3
9話 弟に欲情されています4

 
 
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好きだって気付けよ1

 生まれた時からどころか、母のお腹の中に居た時から、自分たちはずっと一緒だった。もっと言うなら一卵性の双子だから、ずっと一緒どころか元は一つだ。
 時には親でさえ間違うほどそっくりな自分たちは、ずっと互いが一番の理解者で、なんでもわかり合えていた。
 なのに最近、弟が何を考えているのかわからない。なんて思ってしまうことが増えている。
 せっかく出来た初めての彼女を、さんざんブスだなんだと貶しまくったくせに、何故かその彼女と出掛けているフシがある。しかも、自分になりすまして。
 彼女と話していて、時々違和感を感じることがあったのだが、それは自分が彼女との会話を忘れているのか、彼女が別の誰かと混同しているのかと思っていた。でも違う。きっと自分になりすました弟が、彼女と会っていたのだろう。
 確証はない。実際に弟が彼女と出掛けたり親しく話している姿を見たわけじゃない。でもそうとしか思えなかった。
 元は一つの自分たちは、なんだかんだ好みだって似ている。結局のところ弟だって、彼女のことを好きなのかもしれない。そう思うと、胸の何処かが少し苦しい。
 初めて出来た彼女だから大事にしたいとは思うけれど、自分の代わりでいいから少しでも彼女と話したいデートしたいと思うほど弟が思い詰めているなら、きっと自分は身を引くだろう。そんな自分の性格を、弟がわからないはずがない。だからこそ、隠れてコソコソと会われているのが辛いし、出来れば気の所為にしたかったのに。
 弟の態度にあからさまな変化はなく、そんな弟を疑うことに罪悪感を感じたりもしたが、もんもんとする日々に耐えられたのはひと月が限度だった。本当に弟が自分になりすまして彼女と会っているのか、確かめずには居られないほど、こちらの気持ちが追い詰められてしまった。
 やったことは簡単だ。休日に彼女と出かける予定を立てて、当日の朝、具合が悪いと言って彼女に断りの連絡を入れただけ。そしてそれを、せっかくデートだったのに残念だと弟に漏らしただけ。
 弟はデート云々をまるっとスルーしつつ、早く治せよとこちらの体調をかなり心配げに気遣ってくれたが、暫くすると買い物に行ってくると言って家を出ていった。もちろんこっそり後を追いかけたのは言うまでもない。
 はるか前方を歩く弟がどこかに電話をかける姿を見ながら、それでもまだ、相手が彼女ではないことを祈っていたのに。
「会ってて欲しくなかったな」
 彼女と合流するのを見届けた後、そう言って声をかけたら、彼女はえらく驚いた顔をして、弟は不貞腐れたような顔になった。
 聞けば彼女は本当に何も気付いていなかった。彼女とのやり取りはほぼラインを使っているのをいいことに、彼女の携帯に登録した電話番号はいつの間にか弟のものに変えられていて、弟は電話で彼女とやりとりしていたらしい。
 彼女が酷いと怒るのは当然だ。なのに弟は、彼氏とその弟の区別もつかないようなクズ女だと嘲り、こんなブスとはさっさと別れりゃいいとまで言って彼女を泣かせたので、思わずその頬を叩いてしまった。
 ギラリと睨まれたけれど、こちらが悪いなんて欠片も思っていなかったので、呆れたと言わんばかりにため息を吐いてみせる。
「最近お前、ちょっとオカシイぞ。帰って少し頭冷やせ」
「アンタは? 体調悪いくせに、一緒に帰らないつもり?」
「泣いてる彼女放っておけるわけないだろ。後ごめん、体調不良っての、嘘だから」
「ああ、つまり、最初っから全部罠かよ。クソがっ」
「凄むなって。彼女が怖がるだろ。彼女送ってから俺も帰るから、そしたら一回しっかり話、しよう」
 それだけ言って、まだグスグスと泣いている彼女を促し、取り敢えずは急ぎその場を離れることにする。まっすぐ帰ったかは怪しいけれど、少なくとも弟が自分たちを追ってくることはなかった。

続きました→

有坂レイへのお題は『貴方と私でひとつ・「好きだって気付けよ、ばーか」・やわらかい唇』です。https://shindanmaker.com/276636

 
 
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ベッドの上でファーストキス1

 風呂から上がって自室に戻れば、ベッドがこんもり盛り上がっていた。もちろん、風呂へ入るために部屋を出る前のベッドに、そんな盛り上がりはなかった。
 無言でベッドに近づき足を持ち上げ、その盛り上がりを足の裏でグイグイ蹴り押す。
「ちょっ、やめろって」
「それはこっちのセリフだ」
 なおもグイグイ押していたら、ようやく盛り上がりが動く気配がして足を下ろした。けれど起き上がるのかと思ったら、その盛り上がりはくるりと寝返りを打っただけだった。
「起きろよ」
「やだ。ここで寝る。寒い」
 確かに今夜は相当冷え込んでいるけれど、そんな理由で弟のベッドに我が物顔で入り込むのはホントどうかと思う。
 こちらが嫌がるからか頻度は減ってきたけれど、隙を見ては潜り込まれていた。それでも、こうして最初から一緒に寝ようという態度で来ることは珍しい。いつもは夜中に目覚めてしまい、寒さで二度寝が出来ない時にやってくる。
「狭くなるから嫌だって言ってんだろ」
「俺の部屋のベッド使っていいって言ってんじゃん。でも俺が寝入った後でな」
「なんで自分のベッド追い出されて、兄貴のベッド使わなきゃなんねーんだよ。しかもアンタ、俺が移動した先に、更に俺追っかけて移動してくる可能性高いだろ」
「だって寒いと目が冷めちゃうんだもん。てかいい加減諦めて、寒い日の夜は俺のための人間カイロに徹しなよ」
 冷え性な兄を持った弟の使命だよ。なんて、随分と勝手なことを言っている。
「たった一年先に生まれただけで横暴すぎ。冷え性どうにかしたいなら筋肉つけろ。筋肉を」
「そりゃ運動部のお前より筋肉ないのは認めるけど、吹奏楽部だってそれなりに筋トレしてますぅ。母さんも冷え性だし、これ絶対遺伝だって」
 背だってなかなか伸びないしと口を尖らせる兄は、確かに母の遺伝子が強いのだと思う。対するこちらは父の血が濃いのは明白だった。
 父の血が濃いせいで、好みまで父に似たのだったら最悪だなと思う。母によく似た兄相手にこんなにもドキドキする理由が、父親からの好みの遺伝という可能性はどれくらいあるんだろう。そして母の血が濃い兄も、母の好みに似て父に似た自分を好きだと思う可能性はあるだろうか?
 兄弟で、男同士で、考えるような事じゃない。考えていいことじゃない。
 それでも体は正直だった。考えないようにしてたって、暖を求めてひっついてくる兄相手に問答無用で股間が反応してしまう。バレるわけに行かないから、意識がある時は絶対に背中を向けて寝るけれど、気づかれるのも時間の問題じゃないかと思う。
 性欲なんてもののなかった子供の頃は良かった。冷たい手先や足先を自分の肌の温かな部分で包み込んで、兄がありがとうと笑うのも、ホッとした様子で眠りに落ちていくのを見守るのも、ただただ純粋に嬉しかった。
 今だって、寒くてぐっすり眠れないのは可哀想だと思うし、だから夜中知らぬうちに潜り込まれたものを蹴り出すほどの拒絶はしたことがないが、でもこのどうしようもない下衆な欲求に気づかれるくらいなら、もっと厳しい態度で拒否を示した方が良いのかもしれない。
「どーした? てか早く入ってきてくんないと、寒くて寝れないんだけど」
 こちらの気持ちを知る由もない兄に急かされ、大きなため息を一つ吐き出した。我ながら甘すぎる。兄に対しても、自分自身に対しても。
 想いにも欲望にも気づかれたくないし、気づかれるのが怖いのに、兄が昔と変わらずこうしてベッドに潜り込みこちらの熱を奪って眠るのが、嬉しいし愛おしい。迷惑そうな顔をして口先で嫌がったって、きっと本気で嫌がってないのは丸わかりなんだろう。だから平然とベッドへ潜り込むことを、本気で止めはしないのだ。

続きました→

有坂レイさんにオススメのキス題。シチュ:ベッドの上、表情:「真剣な顔」、ポイント:「ファーストキス」、「お互いに同意の上でのキス」です。
https://shindanmaker.com/19329

 
 
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一卵性双子で相互オナニー

 目の前の勃起ちんぽは自分の股間にぶら下がるものと形も大きさもほぼ変わらない。持ち主はお前のより数mmデカイと主張しているが、そんなのその日の体調や興奮具合や測り方で変わってしまう誤差の範囲だろう。
 そっと舌を伸ばして握ったソレの頭ににじむ僅かな雫をなめ取れば、んっと気持ちよさ気な吐息の後、己の股間にも同様の刺激が走った。同じように吐息を漏らしてから、もう一度舌を伸ばす。今度はもっとゆっくりと、張り出すカリの周りを舌先でくるりとなぞってやった。もちろんそれも、数テンポ遅れで同じように舌先を這わされる。
 ベッドに転がり互いに相手の股間に顔を埋めるようなこの状況では相手の顔は見えないが、にやにや笑う相手の顔が浮かんでしまってまったく意地が悪いと思う。
 今までは自分のほうが、相手を追うようになるべく同じことをやり返していたのだが、相手はどうやらその事実に最近気付いたようだった。
 所詮これはオナニーで、自分がされたいことを相手にしている。という前提から、相手がそうされたいのだと思ってそうしていた。
 理由を聞かれてそう答えたら、相手は少し嫌そうな顔で不公平だと言った。なんでもっと早く言わないんだと怒られて、今日は始める前に、相手が後を追うから自分がされたいことをしろと告げられてからスタートした。
 正直面倒くさい。
 嫌そうな顔も、怒ったのも、別にこちらを想っての言葉ではないのだ。今回の提案はこちらももっと積極的になれというワガママに近い。
 確かにきっかけを作ったのも行為に積極的なのも彼の方だ。一卵性の双子なのだから、互いのを扱きあうのもオナニーと一緒だと言うのが彼の主張で、それを熱弁しつつ取り敢えず試してみないかと誘われたのが最初だった。
 好奇心盛大で色々と試してみたい気持ちが強い相手に、物事へのこだわりや執着が薄めな自分が付き合い、共にそれなりの楽しみを見出す。なんてのはコレに限らずよくある事だ。
 相手に付き合うパターンが多くとも、自分たちの間に主従関係があるわけじゃない。気が向かないことにはちゃんとノーを突きつけるし、これだって嫌ならとっくに止めている。互いのを扱きあうどころか互いに舐め合うまでに発展しているが、これがただのオナニーだということに納得もしている。
 けれどそんなことは相手だってちゃんとわかっているのだ。
 不公平だ何だと言ってこちらを動かそうとするのは彼の手法の一つでしかなく、にやにや笑っているだろう顔が浮かんでしまうのは彼の好奇心が自分に向いている事がわかっているからで、意地が悪いと思うのは面倒くさいと思いつつも自分が彼の望むよう振る舞う事までわかられているからだ。
 口を開けて亀頭部分を咥え、軽く吸いながら舐めまわしつつ、竿部分を握った手を上下させる。
「んふっ……」
 楽しげな鼻息を漏らしつつ、すぐさま同じように追いかけてくる相手の機嫌は良さそうだが、内心ばーかと罵ってやった。
 相手に言われるまま、自分がされたいことを素直に実行するわけがない。本能のままに自分が本当にしたいことやされたいことをしてしまったら、相手がドン引くのはわかりきっている。
 慣れた手順で、相手がされたいだろうことを予測してしているに過ぎないのだが、自分が彼の後追いをしていたことすら最近やっと気づいた相手が、それに気づくのはきっともっとずっと先のはずだ。
 何もかも分かり合っているようでも、そこはやはり自分と相手とは別の人格があり、言わば騙し合いをしている部分もある。これは自分のほうが多少有利な気がしているが、確たる自信があるわけではないから、知られたくないことは細心の注意を払って隠し通す。
 これはただのオナニーということを忘れてはいけない。
 それを肝に銘じつつ、喉の奥まで迎え入れて相手の性感を追い立てていく。

 
 
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