(攻)俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕

俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕 の攻側の話を同じお題で。

 突き上げるたびに、あっ、あっ、と溢れる吐息は甘く響いて、相変わらず随分と気持ちが良さそうだと思う。見た目や口調や振る舞いからは、真面目で堅物というイメージを抱きがちな先輩が、こんな風に男の下で蕩ける姿を、いったい何人の男が知っているんだろう?
 現在付き合っている恋人は居ないと聞いている。けれどこうして、恋人でもない自分を誘って抱かれているのだから、他にも気軽に誘って楽しむ相手がいるかもしれない。
 自分は先輩が初めての相手で、いまだ先輩以外を知らないのに。
「男ダメじゃないなら、俺で卒業してみる?」
 そう言って笑った時、先輩はかなり機嫌よく酔っていた。多分半分以上、童貞であることを揶揄われただけなんだろう。
 少しムキになった自覚はある。
 話の流れで、童貞捨てたいんすよねーなんて言ってしまったのは、先輩も童貞仲間なんだろうと勝手に思い込んでいたせいだ。真面目な先輩からは、今カノどころか元カノ関連の話が出たこともなかったから、交際未経験なんだと思っていた。
 対象が男なら今カノも元カノも話題に上らないのは仕方がないし、隠しておきたい気持ちもわかる。自分だって、男の先輩相手に童貞を捨てた事を、友人たちには隠している。
 こんな関係になった後も、一度たりとも抱かせろと言われたことはないし、童貞かどうかは結局聞けないままだけれど、あの時点で少なくとも処女ではなかった。まさかこんなエロい体をしてるなんて思っても見なかった。
「ふっ、……アァッ、そこっ……」
「センパイここ、強くされるの好きですよね」
「ん、イイ、そこっ、…ぁあ、あっ、も、……っ」
 どこが気持ちいいのか、どうすると気持ちいいのか、言葉にしてわかりやすく教えられたせいで、どこをどうすれば先輩が気持ちよくなれるのかは知っている。回数を重ねるごとに先輩はあまりあれこれ言わなくなったけれど、今はもう、先輩が漏らす吐息や短い言葉からその気持ち良さがわかるようになってしまった。
 自分なりにネットで調べてあれこれ試すこともしているが、先輩は楽しげに、俺の体で色々ためしやがってと笑う程度で、それを咎めることはしない。気持ち良ければなんでもいい。みたいなスタンスは、ありがたいようでなんだか寂しくもあった。
 自分ばかりがどんどんこの関係にのめり込んでいくのが目に見えるようで、なるべく行為に及ぶ間隔はあけるようにしているけれど、このイヤラシイ体の持ち主がその間どうしているのかを考えるのも辛い。いつ、恋人できたからこの関係はもうおしまい、と言われるかもわからないのに、恋人になってくださいなんて言って、逆に面倒だと切らえるのも怖い。
 俺のこと、どう思ってるんですか?
 聞きたいのに聞けないまま、都合の良いセフレを演じている。そんな関係への不満は少しずつたまっていた。
「そろそろイきそう?」
 良い場所をグイグイと擦れば、切羽詰まって息を乱しながらも必死に頷いている。
「ん、んっ、イ、きそ……あ、ぁぁ」
 先輩が昇りつめるのに合わせて、衝動的にその胸元に齧りついてやった。
「ぅああ、ちょっ、なに……?」
「所有印?」
「は、……なに、言って、あ、あぁっ」
 咎められそうな雰囲気を笑顔で封じながら、こちらはまだ達してないので、イッたばかりで敏感になっているその場所を、更に強めに擦りあげる。
 見下ろす先輩の胸元には赤い印がしっかりと刻まれていて、それを見ながら自分自身が昇りつめるのはいつも以上に心身ともに気持ちがよく、けれど果てた後はさすがに気まずかった。いくらなんでも痕なんて残したら怒られるに決っている。
 しかし、くったりと横たわる先輩は胸元にはっきと残っている痕に気づいていないのか、何も言わない。いつも通り、満足気な顔でうとうとと眠りかけている。
「寝ます?」
 これまたいつも通りそっと頭を撫でてやれば、ふふっと幸せそうに口元をゆるめながら、「うん」と短い応えが返った。
「鍵は新聞受けな」
「はい」
 こちらの返事にもう一度小さく頷いて、先輩はすっかり眠る体勢だ。
 あーこれ絶対痕が残っていることに気づいていない。それとも、わかっていて不問なのか?
 そうは思ったが、起こして問いただすなんて出来るはずもなく、文句を言われるにしてもこれは次回に持ち越しだ。
 衝動で付けてしまったその印を軽く指先でなぞってから、グッと拳を握りこむ。こんな目立つ場所に痕を残したことを申し訳ないと思う気持ちはあるが、後悔はあまりなかった。
 問われて咄嗟に所有印と言ったあれは本心だ。もし他の誰かにも抱かれているとしたら、その相手にこの人は俺のだと主張したいのだ。
 先輩とのこの時間を惜しむ気持ちは大きくて、終わりという言葉は怖いけれど、そろそろこの関係をはっきりさせる時期に来ているのかもしれない。先輩の穏やかな寝息を聞きながら、次回スルーで不問にしろ、咎められるにしろ、あなたが好きだと言ってみようと思った。

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俺のことどう思ってる?/君しか知らない/見える位置に残された痕

 鏡の前に立ち、ため息を一つ。Tシャツの襟首ギリギリのところに、小さいとはいえない鬱血痕が残されている。
 つけられた時のチリリとした痛みを思い出して、眉間に力が入るのがわかった。所有印だなんて言って笑った相手の顔まで、一緒に思い出されてしまったからだ。
 面白半分で、付けてみたいという欲求だけで、試してみただけのくせに。
「なにが所有印だ、バカ」
 小さく毒づいてみるものの、もちろんそれを聞かせたい相手はとっくに帰宅済みで、虚しさだけが大きくなる。恋人でもない相手に、こんな痕をやすやす残させた自分が、相手以上にバカなのだ。
 友人とすら呼べるか疑問の自分たちの関係は、広義で大学の先輩と後輩だ。相手は、自分がたまたま教授の頼まれごとで大きな荷物を移動させていた時に、やはりたまたま通りがかってしまっただけの新入生で、本来なら先輩後輩としての付き合いすら生まれることのなかった相手だ。
 入学早々巻き添えを食らって肉体労働をさせられてしまった彼に、申し訳無さから学食をおごると言ったのは確かに自分だ。しかし、それで手伝いはチャラになるはずだった。まさかそのまま懐かれて、学年もサークルもバイト先もなにもかも違ってほぼ接点のない相手と、互いの部屋を行き来するほどの仲になるとは思っていなかった。
 少しお調子者でいつも笑顔を絶やさない彼は、自分なんかと付き合わなくても、友人も頼れる先輩も大勢いるはずなのに。なんとなく居心地がいいから、というなんとも曖昧な理由で、気が向くと声をかけてくる。
 あの日、なんであんな話になったのかはもう思い出せないが、自分は間違いなく酔っていた。仲の良さそうな女友達もたくさんいるくせに、実は童貞で、捨てたいけどなかなか機会もなくてなどと言い出した相手を、好奇心と揶揄い半分に誘ってしまった。酔ってはいたが、もしドン引きされて最悪この関係が切れたとしても、彼との接点がなくなって困ることはないという判断はあったと思う。
 自分の性対象が同性である事にはもう随分と前に気づいていたが、そういった人が出入りする場所や出会い系などを試す勇気はなく、同性とどうこうなる機会を持つことはなかった。つまり、自分にとってもチャンスだった。
 結果彼はその提案にのり、なんだかんだセックス込みの関係が続いている。好奇心旺盛にあれこれ試されて、こちらも充分楽しい思いをしているが、しかし真夏にがっつりキスマークなどを残されれば、さすがに溜息だって出る。
 現在恋人はいない。とは言ってあるが、実は自分もまったくの初めてだったとは言っていない。相手にしてみれば、経験豊富なお姉さんに手ほどきされて童貞喪失。というありがちな設定の、お姉さんがお兄さんになった程度の感覚なんだろう。
 性対象が同性で、しかも抱かれたい欲求に気づいてから、オナニーでは後ろの穴も使っていたから、初めてらしからぬ慣れた様子を見せたはずだ。本当はこちらもそれなりにいっぱいいっぱいだったけれど、年上としての矜持やら誘った側の責任やらもあって、余裕ぶって見せてしまった自覚はあった。
 鏡を見つつ、そっと鬱血痕に指先を這わせてみる。大きな痣のようにも見えるそれは、押した所で痛みなどはない。痛くもないのに気になってたまらないのは、襟首ギリギリで人に気付かれるかもという不安ではなく、やはり「所有印」という単語のせいだ。
 もちろん彼からの好意は感じているし、自分だって彼のことは好きだ。しかしその好意が恋愛感情かと言われると、途端に自信がなくなる。彼の気持ちもだけれど、自分の気持に対しても。やはりこの関係は、気軽な性欲発散の相手で、つまりはセフレなのだと思う。
 どんなつもりでそれを口にしたのか。彼は一体自分をどう思っているのか。多少なりとも所有したいという欲求からの言葉なのか。
 確かめてみたい気持ちもないわけではないけれど、きっと確かめることはないんだろう。

後輩側の話を読む→

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告白してきた後輩の諦めが悪くて困る

彼の恋が終わる日を待っていたの続きです。

 長いこと秘密の想いを寄せていた親友が結婚した日、後輩から告白された。高校時代に入っていた部活の、1学年下の男だ。
 ずっと好きだったと言いだした彼は、そろそろ俺のものになりませんか? などと言って笑う。
「お前、彼女いた事、あるよな?」
 確かめるように問いかける。部活終わりに何度か、彼を迎えに来ていた女の子がいたはずだ。記憶違いということはないと思う。
「ええ、いましたね」
 やはりあっさり肯定されて、揶揄われているのかと思い始めた。その矢先。
「でも彼氏が居たことだってありますよ?」
 バイなんですと躊躇いなく告げて、本気で先輩が好きですと彼は繰り返すけれど、崩れない笑顔がなんだか胡散臭い。
「あー……そう」
「そっち行っていいですか?」
「そっちって?」
「先輩の隣」
 彼は言いながら立ち上がると、机を回ってあっさり隣に腰掛ける。
「え、いやちょっと、待てって。おいっ!」
 いくら個室居酒屋で届いてない注文品がない状態とはいえ、これは明らかにおかしいだろう。けれど後輩の男は随分と楽しげだ。まるでこちらが焦るさまを楽しまれているようで不快なのに、その不快さを示す余裕すらない。
「ね、先輩」
 横から覗きこむようにグッと顔を近づけられて、思わず頭をそらしたら、後ろの壁に打ち付けてしまった。ゴツンと鈍い音が響いて、後頭部に痛みが走る。
「痛っ!」
「俺のものになってくださいよ」
 打ち付けた後頭部をなでさする間すらくれずに、再度彼はそう言ったけれど、今度は笑っては居なかった。先ほどまでの胡散臭い笑みを引っ込めて、真剣な眼差しで見つめてくる。なんだか怖いくらいだった。
「せんぱい?」
 疑問符付きの呼びかけは、返事を待っているんだろう。呆然と見つめていたことに気づいて、慌てて視線を逸らした。
「む、無理」
 だって目の前のこの男とどうこうなるだなんて考えたこともない。というよりも、誰かと恋愛しようと思ったことがない。
 本当に随分と長いこと羨望のような憧れのような愛しさを抱えて、手のかかる弟のような、そのくせいざという時は頼もしい兄のような、そんな親友の隣で過ごしてきたのだ。随分と無茶なことにも付き合わされてきたけれど、それすらたまらなく魅力的で、自分を惹きつけてやまなかった。それは互いに社会人となり、彼が結婚してしまった今現在だって変わらない。自分の中の優先順位一位は依然彼のままだった。しかも多分に恋愛的な感情も含んでいる。それがはっきりと自覚できているのに、他の誰かとお付き合いなんて出来るわけがない。
「どうして?」
「どうしてって……だって、俺の気持ちに気づいてたならわかるだろ?」
「結婚したじゃないですか」
「結婚とか、関係ない」
 もともと告げるつもりもない想いだから、これは最初から自分一人の問題だ。恋愛的な意味も含めて好きなのだと気づいてから、もう何年も経っていて、気持ちの整理はほぼ済んでいる。
 長い付き合いだから、相手のことは熟知している。想いを告げて自分に振り向かせることは可能だったかもしれない。どうすれば頷いてくれるか、多分わかっていた。けれど彼と恋人という関係になるよりも、親友という立場で居続けたかった。
 結婚して子どもが生まれて、今後は家族の時間が増えるだろうから寂しい気持ちはないわけではないけれど、結婚だってちゃんと本心から祝福している。どんな親になるのかと思うと色々不安が湧き出るけれど、その半面楽しみでもあった。 
「結婚した相手を、これからも想い続けるって意味ですか?」
「そうだよ。お前にはバカみたいな話かもしれないけど」
「そこまで想ってて、なんで、やすやす別の相手と結婚なんてされてんですか」
「別に恋人になりたかったわけじゃないから?」
「疑問符ついてますよ。てか、どうして」
「なんで、どうして、ばっかだな」
 ふふっと笑ってしまったら、あからさまにムッとされた。貼り付けたような笑みよりずっと安心感があるから不思議だと思うと同時に、どうやら少しばかり気持ちが落ち着いてきたらしいことにも気づく。
 あまりにも予想外の指摘と告白に動転しすぎていた。
「先輩が気になるようなことばっか言うからですよ」
「お前さっきあっさりバイだって宣言してたけど、俺が好きな相手が男だってわかってたから言えるんだよな? 俺に女の子の恋人ちゃんと居て、異性愛者だった場合でも告白するか?」
「恋人から奪おうとまではしませんけど、可能性が少しでもありそうなら狙いますよ」
「じゃあ性格の違いかな。可能性かなりありそうだったけど、でも俺は嫌だって思った。自分のせいであいつの未来を曲げるのは。親友って立場だけで充分なんだよ。あいつが子ども作って結婚して、はっきり言えばホッとしてるくらいだ」
「本気で、今後も別の誰かを好きになったりせず、あの人を想い続ける気でいるんですか?」
「今のところ、別にそれでいいかなと思ってる。たまにさ、好きだって言ってくれる人いるんだけど、他に特別に思う相手がはっきりいるのに、付き合えるわけないって」
 めちゃくちゃ嫌そうに顔を顰められて、やはりまた笑ってしまった。
「好きだって言ってくれてんだから、付き合えばいいじゃないですか」
「そんなの可哀想だろ。相手が」
「付き合ってみたら、そのうちなんだかんだ好きになるかもしれない。とは思わないんですか?」
「多分無理。やっぱりあいつ以上には好きになれないと思う。それくらい強烈な男なんだよ。って、お前ならわかるだろ?」
 深い溜息が吐き出されてきた。
「良くも悪くも強烈な男、ってとこには同意します」
「だろ? というわけで、お前のものにはなれないよ」
「そこまで納得したわけじゃないです」
「えっ?」
「気持ち晒した以上、今更引く気ないんで。試しにでいいんで付き合ってください。別にあの人のこと好きなままでもいいですし」
「良くないだろ」
「俺がいいって言ってるんだからいいじゃないですか。いっそあの人の代わりだって構いませんよ」
「俺が構うよ」
「でも引く気ないんで諦めてください」
 また胡散臭い微笑みを貼り付けた男の顔が近づいてくる。一応の抵抗で、その顔を押しのけようと伸ばした手は簡単にとらわれて、こぼした溜息を拾うように口付けられた。
「お前がこんな強引な男とは思ってなかった」
「今まで見せてなかっただけですよ。それに多分、間違ってないと思うんで。あなたには少し強引なくらいの相手がお似合いです」
 流されてくれていいですよ。などという言葉に頷けるわけもないけれど、入り込まれてしまったことだけははっきりとわかる。ずっと好きだったのずっとがどれほどの時間かはわからないが、今までお断りしてきた相手とは明らかに違う。
「まいったなぁ」
 こぼれ落ちたつぶやきに、相手は満足気に笑ってみせた。

 
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彼の恋が終わる日を待っていた

 高校の部活で知り合った先輩たちとは、大学を卒業して社会人となった今でも年に数回飲みに行く程度の付き合いが続いていて、今日は自分が高校2年の時に部長だった男の結婚式だった。
 花嫁さんのお腹の中には既に新しい命が宿っている。
 アイツが親になるなんてと、うっすら目に涙をためながら感慨深げに呟く隣の席の男は、当時副部長を務めていた新郎の親友だ。自分はこの隣の男が、ずっと新郎を想っていた事を知っている。
 応援する気などは一切なかったが、もし仮に二人の仲が友情をこえて発展したら祝ってやろう程度の思いはあった。二人とも、自分の人生においてかなりの影響を与えてくれた大事な先輩たちだからだ。
 ただ、その想いを知っている、ということすら口にしたことはない。
 一歩引いて、無関係を装って、そして機会を窺っていたのだ。二人が付き合うのなら笑ってお幸せにと言える立場を保持しつつ、内心は今日のような日を待ちわびていた。副部長だった彼はモテるくせにのらりくらりと彼女も作らず、かといって他の男と付き合うようなこともせず、そのくせ想いを遂げようとする様子もなくずっと一途に親友を演じていたから、いつかこんな日がくる可能性は高いだろうとも思っていた。

 二次会を終えた帰り際、もう1軒行きませんかと誘えば、副部長だった彼はあっさり了承する。他にも数名、同じ部活のメンバーが披露宴から参加していたが、既に家庭があったり翌日も仕事だとかで帰って行った。もちろん、そうなるだろうことは見越して誘った。
 その辺の店に入ろうとするのを阻止して、行ってみたかった店があると事前調べの雰囲気の良い個室居酒屋に連れ込み、軽いつまみと酒を頼む。ここには居ない本日の主役を祝いながらグラスを合わせれば、目の前に座った男はまた、アイツも父親になるんだなぁと呟く。
「羨ましいですか?」
「いや、羨ましいってより、純粋な感動と不安かな。だってアレが人の親とか、想像できなくて」
 部長はなかなか破天荒な男で、そんな彼をなんだかんだサポートしてきたのが目の前の男なのだから、わからないこともない。自分は高校で知り合ったが、二人は小学校からの付き合いだというし、アイツは子供の頃から変わらないというのがこの男の口癖だから、付き合いの長さの分だけ不安にもなるんだろう。
「そうじゃなくて。花嫁さんが、羨ましくはないですか?」
「は? なんで?」
 明らかな動揺に、畳み掛けるように言葉を続ける。
「部長のこと、ずっと好きでしたよね? 告白しようとは思わなかったんですか?」
「いやお前、いきなり何言いだして……」
「ずっと気になってたんですよ。部長が人の旦那になったんで、そろそろ言ってもいいかと思っただけです」
「わかんねーよ。なんで、今なんだよ。それに、アイツは腐れ縁の親友だけど、それ以上でもそれ以下でもねぇよ」
「腐れ縁の親友も、何かの拍子に恋人に進展するかもしれないじゃないですか。幼なじみの定番ですよ」
「男女の話だろ、それ」
「それだって一緒ですって。何かの拍子に同性でも恋人になるかも知れないじゃないですか。しかも片方が既に恋をしている状態なら尚更」
 男はグッと言葉に詰まる。恋などしていないと否定することはしないらしい。それとも今まで一切触れたことのない話題を投げかけたせいで、動揺してそこまで思考が巡っていないだけだろうか。その可能性が高そうだ。
「だからあなた達の関係がはっきりするまで待ってたんですよ。知られたくなかったし」
「何、を?」
「俺が、あなたの気持ちに気づいてること。それと、俺があなたを好きなこと」
「えっ……」
 さすがに予想外過ぎたようで呆然となる男に、出来る限り柔らかに笑ってみせる。
「ずっと好きでしたよ、先輩。だから、そろそろ俺のものになりませんか?」
 もちろん、嫌だと言っても逃してやる気は毛頭ないけれど。

続きました→

 
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はっかの味を舌でころがして

目次へ→

 生まれた時から同じマンションのお隣さんとして育って15年。
 生まれ月の関係で自分より1学年上の幼なじみは、この春から通学時間1時間弱の私立高校へ通っている。
 幼稚園に入る時は親が3年保育というのに入れてくれたので入園が同時だったが、幼なじみが小学校に上がる時はそりゃあもう盛大に泣いて怒った記憶がある。
 中学の時も、さすがに泣きはしなかったがやはり納得は行かなかった。だって3ヶ月だ。3ヶ月しか違わないのに離れ離れだなんて。小学校と中学校は隣り合っていたけれど、そこには簡単には越えられない、見えない壁が確実に存在している。
 しかも中学へ入学したら部活動なんてものが始まって、帰宅が随分と遅くなった。追いかけるように1年後に同じ部活に入部したら、規律がどうだの示しがつかないだので先輩と呼ばなければならなくなった。
 部活なんてやめてしまおうかとも思ったが、少しでも長く放課後一緒に居たい気持ちから続けてしまった部活は、3年が引退した昨年秋から部長を任された。同じく部長だった彼から引き継ぐのだと思えば、誇らしくはあったのだけれど、やはり先を行かれる悔しさと寂しさと腹立たしさは変わらない。
 滑り止めで近所の公立高校を受験したことも当然知っていて、本命の遠い私立高校なんて落ちてしまえと本気で願っていた数ヶ月前の自分があまりに腹黒く思えて、それからなんだか少しおかしい。彼を真っ直ぐに見れなくなって、なんとなく避けてしまうようになった。といっても、どうせ通学に1時間掛ける彼との接点は、この春からほぼないに等しいのだけれど。

 午前中だけの部活を終えて帰宅した休日の午後、ベッドの上に寝転がりながらイヤホンで音楽を聞いているうちに、どうやらウトウトと寝落ちしていた。
 ぼんやりと意識が浮上して、目を開けた先に見えた頭髪に心臓が跳ねる。自分が彼を見間違うはずもない。
 一気に覚醒してガバリと起き上がれば、ベッドに寄りかかるようにして本を読んでいた彼が振り向き、柔らかに笑って、多分おはようと言った。
「なんで居んだよっ!」
 装着しっぱなしだったイヤホンを毟り取りながら叫ぶように告げれば、柔らかな笑顔が少し困ったような苦笑に変わる。
「今日うち、母さん出かけててさ。夕飯、こっちで食べさせてくれるって言うからお邪魔してる。お前とも久々にゆっくり話でもと思って早めに来たけど、寝てるの起こすのも悪いと思って。でも却って驚かせたよな」
 ゴメンなと謝られても、どう返していいかわからなかった。わからないから無言のまま、ただ見つめ合うのすら居た堪れなくて、そっと視線をそらす。
「なぁ、……」
「なんだよ」
「何でもない。やっぱいい」
 呼びかけの声までは無視できずに返事をすれば、躊躇う様子の後で撤回された。
「なんだよ。気になるだろ。言えよ」
「あー……と、そう、飴食べない?」
 絶対に最初の話題とは違うと思ったが、更に食い下がるのも面倒になってその話題に乗ることにする。
「何味?」
「ミント」
「貰う」
「じゃあ、はい」
 言いながら差し出された舌の上には、半透明の小さな丸い固体が乗っていた。
「は? ふざけんな」
「冗談だって」
「で? 俺の分は?」
「ごめん。ない」
「なんなんだよお前」
「うん。本当、ゴメン」
 ちょうど暮れてゆく空に、この短い時間で部屋の中もだんだんと薄暗くなっていく中、困り顔の笑みを貼り付けたままの彼が泣いているようにも見えてドキリとする。
「なんか、あったんかよ」
「やっぱりわかる?」
「だってお前おかしいもん」
「お前もここんとこ十分おかしいけどな」
 長い溜息を吐きながら、彼は上半身ごと振り向いていた体を戻して、疲れたようにベッドの縁により掛かった。仕方なく、自分もベッドを降りてその隣に座り込み、同じようにベッドの縁に背を預けた。
「で、何があったって?」
 高校馴染めてないのかと聞いたら、そういうんじゃなくてと言いながらもう一つ溜息が落ちる。
「ずっと好きな子が居るんだけどさぁ、なんかちょっと最近避けられちゃってて。何が原因なのか、思い当たることありすぎてわかんないんだよね」
 まさかの恋愛相談に、呆気にとられつつその横顔をまじまじと眺めみてしまう。見られていることに気づいてか、それとも初めてともいえる恋愛相談が気恥ずかしいのか、その頬にうっすらと赤みがさしていくのがわかった。
「見てないでなんか言えよ」
 視線から逃げるようにフイと顔を逸らされる。
「いやだって、恋愛相談とか無理だって。好きとかわかんねーもん俺」
「好きな子、いないの?」
 驚いた様子で逸らしていた顔を向けられたが、そこまで驚かれることに驚いた。彼の恋愛相談を受けるのも初めてだが、自分が恋愛相談を持ちかけたことだって一度たりともないのだから。
「女と遊び行きたいとか思ったことねぇよ」
 アイドルの誰がいいとか、何組の誰それが可愛いとか、適当に話を合わせる程度のことはしても、本気で誰かと交際をしたいと思ったことなんてない。楽しそうだなんて欠片も思わないどころか、面倒そうだとしか思えないのだ。
「俺のことは?」
「は?」
「お前、俺にはけっこう執着してたじゃん」
「執着っつーか、だって悔しいだろ。たった3ヶ月しか違わねぇのに、なんで学年違ってんだよ。家じゃ普通にタメ口聞いてんのに、学校じゃ後輩としての立場わきまえろとか言われんの最悪」
「学年の違いは仕方ないだろ。てかさっきの質問の答えは?」
「さっきのって?」
「俺のことは好きか嫌いか」
「嫌いな奴の親友なんかやるかよ」
「でもお前、俺のこと避けてんじゃん。親友とか言うなら避ける前にやることあるだろ。俺に気に入らないことがあるならちゃんと言えよ」
「いや、それは、別にお前が気に入らないとかじゃなくて」
「高校もさ、またしばらく拗ねてむくれて暇を見つけては押しかけてくるみたいな事になるのかなって思ってたんだよ。俺が中学あがった最初の頃、お前、俺が学校帰ってくるの家の前で待ってたりしたよな」
「3年経てば成長もすんだよ。てかちょっと待て。お前好きな子に避けられてって、それ、まさか俺のことじゃ……」
「うん」
「えっ、てかええっ??」
 驚きすぎて続く言葉が浮かばないまま、結局相手を凝視する。彼はゴメンと言いながら引き寄せた膝に顔を埋めてしまった。
「じゃあなんで、遠い私立とか受験したんだよ。すぐそこの公立で良かったろ」
「先のこととか親の期待とか、こっちだって色々あんだよ。それでお前に避けられる事になるなんて思ってなかったし。てかこうなるのわかってたら、もっと真剣に近くの公立に通うことだって考えたよ。というか、お前が俺を避ける原因は、やっぱり俺の進学先ってことでいいのか?」
 お前がおかしくなったの俺が今の高校合格した時からだもんな、と続いた言葉に、慌てて違うと否定する。
「いやぜんぜん違うってわけでもねぇけど。でも原因はお前じゃなくて俺にあるっつーか」
「じゃあ、それって何?」
 お前が受験勉強していた頃、毎日落ちろと願ってた。などという黒い過去を晒せというのか。
 言えずに口ごもっていたら深い溜息が聞こえてきた。相変わらず顔は膝に埋まっていて、その表情はわからない。
 同じように深い溜息を吐き出して、それから仕方がないなと口を開いた。
「私立高校なんか落ちて、滑り止めだっつー近所の公立通うことになりゃいいのに。ってずっと思ってたんだよ。なんつーか、そりゃもう、呪いってレベルで。でも本命受かって喜んでるお前見てたら、お前の不幸をずっと望んでた自分が嫌になったっつーか、お前に合わせる顔がないっつーか、まぁ、そんな理由」
 やはり呆れただろうか。反応がなく黙り込まれてしまうと、気まずさでなんだか気持ちが焦る。
「悪かったとは思ってる。あー……その、今更だけど、高校合格おめでとう。いやむしろありがとう?」
「なんだそれ」
 小さく吹き出す気配にあからさまにホッとした。
「いやもしあれでお前が本当に落ちてたら、俺の罪悪感今の比じゃねぇだろなぁって」
「お前は単純に喜びそうな気もするけど」
 ようやく顔を上げた彼はよく知る穏やかな笑みを見せている。
「いやいやいや。俺が呪ったせいでお前の人生狂わせた。って気づいた時がヤバいんだって」
「ああ、なるほど。じゃあこれからがヤバいな、お前」
「なんでだよ」
 ヤバくならなくてよかった、という話をしていたはずだ。なのに酷く真剣に見つめられながらそんなことを言われると不安になる。
「俺の人生、お前に呪われてとっくに狂ってるんだけど。って事」
「はあああ?」
「ずっと好きな子が居るって言ったろ。それがお前って事も。お前に呪われた結果じゃないのか、これは」
「呪ってねぇし!」
「学年の違うお前が、俺と同じじゃないって泣いて暴れて拗ねるあれは、呪いみたいなもんだったって」
「泣いて暴れたのはお前が小学校あがった時くらいだろ!」
「でも春になるとだいたいお前は機嫌が悪い」
「それは、だって」
 学年が上がるたびに思い知らされるようで、確かに4月は好きじゃない。
「お前のせいでお前好きになったんだから責任取れよ」
「責任、って?」
「俺を、好きになって」
「嫌ってねぇって」
「そうじゃなくて。恋愛対象として」
「だからそういうの良くわかんねぇんだって」
「わかんねぇじゃなくて自覚しろって言ってんの。お前の俺への執着、それもうホント、普通の友情と違うから。考えてみろよ。俺以外にだって普通に仲の良い友達居るだろ?」
「そりゃいるけど、お前は特別で、だから親友なんだろ」
「もしお前が今後も親友だって言い張るなら、俺はお前を諦めて、彼女か彼氏かわからないけど恋人作るよ?」
 言われて初めて、彼に恋人という存在がいる状態を想像した。確かに嫌だ。絶対に嫌だ。彼と隣り合って歩くただの友人にすら、学年が同じならその場所は絶対に俺のものなのにと思うくらいなのだから、我が物顔で彼を自分のものと主張する恋人が出現したら自分がどうなるかわからない。
「えー……ええー」
 けれどだからといって、即、彼を恋愛対象として好きだと思えるかは別だ。というか本当に、恋をするという気持ちが良くわからない。
「本当はさ、いつかお前から告ってくるだろって思ってたんだよね。なのになにこれ。大誤算もいいとこだよ」
 あーあと嘆きながらも、先程までの悲壮感は欠片もない。彼が穏やかに笑っていると、それだけで安心するのは、きっと長い時間をかけてそう学習してきたからだ。この顔の時は平気、という根拠のあまり無い自信のようなもの。
「それ、俺が悪いのか?」
「どうだろ。まぁきっかけにはなったよな」
 避けられなきゃ待つつもりだったと彼は続けた。
「ならもう少し待ってくれよ」
「いつまで?」
「俺が好きって気持ちをわかるまで?」
「いやだから、そこが想定外だったんだよ。自覚ないとか思ってなかった」
「待てねぇの?」
「自信揺らいだからあんま待ちたくない」
「俺がお前を好きなはずだって?」
「そーだよ。でも揺らいだ。このままのんびり余裕かまして待ってたら、お前が自覚した時、その好きって気持ちの向かう先が俺じゃない可能性高そうでやだ」
「だってなぁ~……」
 好きって気持ちはいつかこれはって女に対して湧いてくるのだろうと、漠然と思っていた節はある。それに彼とはずっと親友で居たいという気持ちも根強く残っている気もする。彼に恋人ができるくらいなら自分が恋人になってもいいという気持ちもないわけではないが、恋人なんかになってしまってその後破局したらどうするんだ。
 今までの関係を変えるというのはやはり勇気と覚悟が必要で、そのどちらも自分は所持していない。
「お前さ、俺とキスできそう?」
 グダグダと迷っていたら唐突な質問で面食らう。
「キスできたら、もう少しお前信じて待ってもいい。無理だっつーならやっぱりお前を諦めることも考えるよ」
 人生の修正がききそうなうちに。なんて続けられて、先程、お前の呪いで人生狂ったと言われたことを思い出す。
「人生修正きくってなら、キスなんてしてる場合じゃねぇんじゃね?」
「ああうんそうだな。わかった。お前のことは諦める」
 怒らせた。というのがわかって焦る。
「待って。待って。ゴメン。今のは俺が悪かったから、俺のこと諦めないで。てか恋人作ったりしないで」
「俺に好きとも言えないくせに? キス一つ出来ないくせに?」
 冷たく響く声に、ああこれは本当に猶予がないと知らされる。だから相手の体を引き寄せて、ままよとその唇に自らの唇を押し付けた。
 これしか現状を維持する方法がわからない。触れてしまったら現状維持と呼べるのかはともかくとして、少なくとも彼への答えは少しだけ先延ばしにできるだろう。
「これで、もう少しは待ってくれんだよな?」
「そうだね。お前はもうちょっと色々しっかり考えた方がいい。でも俺だって俺の人生があるんだから、そんなに気長に待ってられないってのは覚えとけよ」
 わかった。とは言えなかった。
 お返しとばかりに引き寄せられて唇を塞がれたからだ。しかも先ほどのように一瞬の接触ではなく、吸われて甘噛まれてこじ開けられた口の中、小さな小さなミントキャンディーの欠片が転がり込んできた。それはほどなくして、口の中で溶けて消えていった。

続編を読む→

レイへの3つの恋のお題:はっかの味を舌でころがして/薄暗い部屋で二人きり/なぁ、……何でもない。
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トキメキの行方 目次

同じチームに所属するプロサッカー選手である遠井遙と神崎太一の話。
8つの歳の差がある先輩(遠井)と後輩(神埼)。
ある日の飲み会で潰れた神埼は、翌朝遠井のベッドで目を覚ます。その際寝ぼけて抱きしめられたせいで、遠井を意識しだしてしまう。
遠井には神埼と同じ年の妹が居て、元々弟のように可愛がっていたのだが、神埼に意識されたことで手を出してしまう。
エロ描写はそこそあるのですが、行為は控えめで挿入はしていません。
視点はシーンによって変わります。目次にのみどちらの視点かわかるよう表示しました。

1話 酔いつぶれ(遠井)
2話 連れ帰り(遠井)
3話 翌朝の動揺(神埼)
4話 意識される(遠井)
5話 迷い(神埼)
6話 来訪(遠井)
7話 触れる(遠井)
8話 弄る(遠井)
9話 寝室へ(遠井)
10話 感じ合う(遠井)
11話 覚悟を決める(神埼)

 
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