親睦会(目次)

キャラ名ありません。全18話。
< 寮で親睦会をかねて鍋を囲んでいたら友人が襲われていて、その横で自分もまた違う男に襲われていてのちに二組のカップルが出来る話 > というお題を頂いて書いたもの。

セックスは上手いが色々酷いバツイチ先輩 × 流されやすくて御しやすい色々無頓着な貧乏人(視点の主)
童顔かわいい系先輩 × 童顔先輩に恋する視点の主の同期
の二組のカップルが出てきますが、童顔先輩と同期のカップルについては前半軽くしか出てません。

寮住まいの先輩社員に恋してしまった同期に情報提供していた寮住まいの視点の主が、同期が寮へ引っ越してきた際の親睦会で酔い潰されて、同期が恋する先輩とは別の先輩相手にアナル処女喪失。
あっさり想い人と恋人となった同期を横目に、視点の主はずるずるとセフレのような状態でセックスを繰り返す。やがて攻めを好きになってしまうが、相手の態度から想いが報われないことはわかりきっていて、辛く感じることが増えていく。
そんな中、急に誘われた温泉旅行で攻めの過去やなぜ抱き続けるかなどを聞かされ、謝罪と共に優しくされる。今後の二人の関係をどうするかという話は、結局視点の主が泣き疲れて眠ってしまったため中断するが、一週間後、気持ちの整理をつけたという攻めに付き合って欲しいと言われて恋人になります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してありますが、中盤風呂場での描写はかなり控えめ。優しいエッチはありません。

1話 親睦会で鍋
2話 気づけば抱かれてた(R-18)
3話 幸せそうな同期
4話 温泉に誘われる
5話 大浴場から戻ったら
6話 一緒に昼寝
7話 起きたら一人
8話 様子がおかしい相手と夕食
9話 夜中の露天風呂
10話 最後のセックス宣言(R-18)
11話 揺れる思考と気持ちよさのない指(R-18)
12話 泣いたら優しい
13話 バツイチ
14話 重ねて見ている
15話 試していた
16話 好きの出処
17話 泣き疲れて眠る
18話 恋人に

 
 
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親睦会18(終)

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 今後のことは帰ってから話そうと言いながらも、そんな時間が取れたのは翌週末の日曜の、それなりに遅い時間だった。
 相手は土曜の朝からその時間まで何処かに出かけていて、一応出かける前には一言貰っていたのだけれど、どこへ何をしに行くのかなどは一切聞いていなかったから、こんな時間に悪いと言って部屋を訪れた相手からの報告には驚かされた。
 お前と今後のことを話す前に気持ちにケリ付けたくてと言った相手は、元嫁と元間男に連絡を取って、わざわざ会ってきたらしい。その後結局二人が結婚したことも、随分と遠方に引っ越していたことも、今回初めて知ったそうだ。
 わざわざ部屋を訪れて報告してきた割に、何故会いに行ったのか、気持ちのケリが何なのか、会って何を話したかなどの詳細はほとんど話さなかったけれど、現実の元嫁と元間男が動いて話すのを目にしたおかげで随分スッキリ出来たという言葉に嘘はないだろう。
「それでだな、色々スッキリ出来たから、俺は多分もうこれで、元嫁やら元間男やらをお前に被せて混乱することはないと思う。後はお前の気持ちと向き合うだけだけど、この一週間でお前も何か考えたか?」
「あんまり。というかもう、どうでもいいかなって思っちゃってる部分もあって」
 思った以上に、好きだという気持ちが胸に湧いてしまっている現状を相手に知られたことと、その気持ちに対してありがとうと言って貰えたことと、彼の腕の中で泣き疲れて眠ったことで満足してしまっていた。ほんの一瞬でも、どうしようもなく持て余していた想いを優しく慰められたことで、ササクレだっていた気持ちが凪いでしまった。
 相変わらずチョロい自覚はある。
「どうでもいいってどういう意味で?」
「あなたがこの関係をどうしたいのかわかんないですけど、取り敢えず提示されたものに従えばいいかなって思ってる。って意味ですかね」
 このまま終わりにしようでも、今までみたいにセフレっぽく続けようでも、どっちでも良いなと思っていた。強いて言うなら、どっちになってもたまには食事に連れ出して貰える程度の、そんな関係でいられたらいいなとは思う。
「え、っと、投げやりになってる? ……って感じでもないよな?」
「あー、はい。なんていうか、あの日もですけど帰ってからも、それに今もですけど、あなた俺に優しい顔を見せてくれてるから、あなたにされた酷いことに関してはもう良いかなって。酷いことされたって言っても、本当に酷かったのは酔い潰して勝手に突っ込んだ最初だけで、後は拒まず受け入れてた俺の自業自得も大きいし、セックス気持ちよかったのも事実、ですしね」
「人がいいのか欲がないのか、なんつーか、お前って、怒りが持続しないタイプではあるよな」
 さんざんそこにつけ込んどいて今更だけどとこぼす相手に、こちらも苦笑交じりにですねと肯定を返した。チョロい同様、もちろん自覚はある。
「自業自得で納得しちまったなら、俺への気持ちも自分で処理済みか?」
 今度は自分が、どういう意味かと尋ねる番だった。
「あれは勘違いの思い込みだったって納得しきったら、俺を好きって気持ちはもう無くなったか?」
「しんどくて、辛くて、切なくて、って感じではなくなったので大丈夫ですよ」
 想いの出処が問題とは言われているけれど、それは同時に、好きと思ってしまったのは仕方がないって意味にも思えたし、ありがとうと言って貰えたから、この感情を強く否定する必要もないのだろう。そう思ったら、随分と胸が軽くなった。
「それ、質問の答えになってないぞ」
「なくなってはいないですけど」
 でもこのまま終わりにしようって言われても多分大丈夫。とまでは続けないでおいた。相手の様子からすると、決して終わりたがってるわけではなさそうだからだ。
 現に、なくなってないと告げた後、随分と安堵したようだった。
「じゃあ俺と付き合って」
「は?」
「付き合って」
「えっ?」
「セックスは出来ても恋人にはなれない、みたいな何かがあるなら言って」
「えっ?」
 唐突過ぎて、あまりの驚きにまともに言葉を返せないこちらに、相手は少し呆れ顔だ。
「こう言われる可能性、全然考えなかったのか?」
「ええ、まぁ。せいぜい、今まで通りご飯食べてセックスする関係がこのまま続くかな程度で」
「お前がそうしてってなら、それでも良かったんだけどな。さすがに今までと同じセックスは無理だけど」
「そうなんですか?」
「でもどうでもいいんだろ? 取り敢えず提示されたものに従うんだろ? だったら俺と付き合って」
「え、なんで……」
「お前の事が好きだから」
「え、嘘?」
「ここで嘘つく意味がないだろ」
 やっぱり呆れた様子でそう告げた相手は、今すぐ返事を決めなくていいから考えてと言って言葉を続ける。
「お前が色々知った後でも俺を拒絶しなかったら、一旦全部やめて白紙の状態から、もしくは今までとそう変わらない関係の中、お前の気持ちがどう変わってくか見守るつもりだった。想いの出処が問題だと思ってるのは今もだし、今後俺がお前に優しくし続けたら、いつかお前は俺が好きだったなんて錯覚だったと自覚するかもしれないと思ってる。でも今現在、お前がまだ俺を好きだと思ってるなら、そして俺との今後の関係をどうしたいかの希望が俺任せなら、俺はお前の恋人って立場で、お前の気持ちが錯覚だったとならないように繋ぎ止めながら、お前の気持ちの変化を見守りたい」
「罪悪感とか責任感とか」
「じゃないって。そういう気持ちだけなら、誠心誠意謝罪して、金積んで許しを請うって教えたろ」
「じゃあ、あの時言ってた、それだけじゃない部分って……」
「あの時は、お前を好きだって言い切れなかった。でも気持ちにケリつけてきた今はもう言える」
 俺もお前を好きになってたよと困ったように笑うから、今すぐ決めなくていいと言われたけれど、あなたの恋人になりたいと返していた。

<終>

最後まで遅刻続きですみません。2カップル成立ということで、取り敢えずここでエンドとさせて下さい。

 
 
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親睦会17

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 この気持が錯覚の思い込みだったとして、じゃあどうすればいいっていうんだろう。話を聞いて、そうかもしれないと思ってしまった所で、そうか別に本気で好きってわけじゃないのかと、あっさり気持ちが覆ることなんてない。
 こんな男を好きになっただなんて、やっぱり気のせいで勘違いで思い込みだったのだと、安堵して喜ぶ気持ちよりも、相手からそう指摘されたこと、相手がそう思っていること、そしてそれを自分自身が受け入れてしまったことへのショックの方がはるかに強かった。
 胸が締め付けられるように苦しくて、浅い呼吸を繰り返す。相手はそれを何も言わずにただジッと見守っているだけだった。
 相変わらず眉尻を下げた困り顔をしているようだったが、その顔を見てもぐちゃぐちゃの感情が更に乱れるだけと気付いてそっと視線を机に落とす。これ以上泣き顔なんて晒したくないのに、なんだか泣いてしまいそうだった。胸が軋んで目の奥が痛くなって、ますます顔を俯ける。涙が溢れてしまわないように、キツく瞼を閉ざした。
 机を挟んで対面に座っていた相手が立ち上がる気配がする。そのまま机を回り込んで近づいてくるのはわかったが、顔は上げられなかった。身構えるように体を固くして、相手がどうするのか気配を探り続ける。
 結局すぐ隣に腰を下ろした相手が、そっと背中に手の平を押し当ててくる。はっきり緊張はしていたし、それはその手から相手にも伝わっただろうけれど、その手を振り払うことはせず、口で何かを言うこともしなかった。もしくは出来なかった。
 まるでこちらの様子を窺うようにしばらく背を撫でていた手がやがて肩へと移動し、ゆっくりとした仕草ではあったものの、引き寄せるようにじわりと力をかけてくる。迷ったのは一瞬で、抵抗はしなかった。
「想いの出処は問題だと思ってるけど、既に自覚があるお前の想いを否定したいわけじゃない。好きだと思ってくれて、ありがとう。辛い想い抱えさせた上に、それに気づくのも遅くて、本当に、ゴメン」
 抱きしめられた腕の中、柔らかな声音で告げられた言葉で涙腺が決壊した。
 相手の肩口に目元を押し付けて、涙が溢れ出るまま子供みたいにわんわん泣いた。相手はありがとうとゴメンを繰り返しながら、抱きしめ続けたまま、時折宥めるように背を擦ってくれてもいた。少なくとも、記憶が途切れる直前まで、ずっと。
 色々なものに目を背けていたせいもあるけれど、色々な情報を一度に受け取って処理許容量を超えて脳が考えることを一旦放棄したのか、泣いて緊張の糸が切れたのか、どうやら泣き疲れて寝たらしい。
 気付いたら布団の上で、しかも夜が明けたのがわかる程度に部屋の中は明るかった。
 上体を起こして布団の上に座ったまま、ぼんやりと昨夜へ思いを馳せる。正直、相手の話は多分まだ途中だったし、なんの結論も出ていないけれど、泣ききったせいかどこかスッキリとしてもいた。
 眠りに落ちる寸前、これからのことは、これからゆっくり考えていこうと言われた気がする。相手にもう眠りなと促されたことも、焦って色々聞かせてゴメンと言われたことも、なんとなく覚えている。
 そう言って泣き疲れた自分を寝かしつけた相手の姿は部屋にない。
 立ち上がって部屋を区切る襖を開ければ、座卓に突っ伏す背中が見えた。起こして少しでも布団で横になって貰った方がいいのか、起こさず少しでも睡眠を取ってもらったほうがいいのか迷いながら近寄れば、気配に気づいたのか相手が身を起こして振り返る。
 寝不足がありありとわかる酷い顔をしていた。
「おはようございます」
「ん、はよ」
「ずっとこっち居たんですか?」
「まぁ、色々な」
 過去の反省でもしていたのか、今後の自分たちのことを考えていたのか、それとも自分の隣で寝る気になれなかったって話なのか。その色々を聞いて欲しいって感じでもないし、もちろんこちらも追求する気はない。
「酷い顔してますよ。朝食まで、少しでも布団で寝たらどうです?」
「あー……お前はどうすんの」
「ちょこっと朝風呂します」
「そっか。じゃ、朝飯の支度整ったら起こして」
 わかりましたと返せば、相手は立ち上がって寝室スペースへ移動するようだった。
「色々あったけど、せっかく来たんだから取り敢えずお前は風呂と飯、堪能しきって。後のことは帰ってからゆっくりな」
 すれ違いざま一度足を止めた相手に、そう言われながらポンと軽く肩を叩かれて、フッと体の力が抜ける。普段通りを意識しすぎて、少しばかり緊張していたらしかった。
「はいっ」
 振り向いて、思わずで力強くそう返す。多分、笑っても居たと思う。
 既に寝室スペースの襖に手をかけていた相手は、一瞬ビックリしたように目を瞠ったけれど、すぐに安堵の滲むどこか満足気な顔で頷かれた。

続きました→

 
 
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親睦会16

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 自分の気持ちも試してたんだって言ったろと続けた相手は、今更なのはわかってるけどお前に優しくしたいとも続けていく。だからそれが罪悪感と下心からだろって話なのに。
「あー、難しいな。どう言えばいいんだ」
 何言ってんだというこちらの気持ちに気づいたようで、相手はますます困った様子で考え込んでしまう。
「だからさ、例えば罪悪感と恨まれたくない下心、だけ、ならお前に優しい態度取る必要ないだろって話なんだけど」
 だけって部分をいやに強調した言い方だった。
「お前への謝罪の気持ちだけなら、酷い真似してたって自覚出来たからもう止めるって言って、謝って、誠意って形で慰謝料包んで終わりにする。それでお前の気が済まない場合、俺の顔を二度と見たくないってなら寮を出るとか、仕事辞めるとか、そういう話に発展する可能性はあるけど、謝罪の意思とお前に優しくしたいは違うものなんだよ」
「優しくするのは罪悪感と恨まれたくない下心から、って言ったのあなたですけど」
「だーかーらー、それ ”だけ” じゃないって話だろ」
「でもその ”だけ” じゃない部分、言わないじゃないですか」
 自覚はあるようで、一瞬、言うかどうかを迷う素振りを見せた。けれど結局、その口から次の言葉が告げられることはない。
「結局言えないんですか」
「だってお前に、俺を好きって自覚あると思ってなかった。ついでに言うと、お前の食いついてくる部分が一々なんか俺の想定とズレてて、わかってて話逸らしてるのかと思ったりもして悩んでる」
 彼の何かをわかっていて、意識的に話をズラしているつもりはないけれど、彼の過去も後悔も自分への謝罪も、積極的に聞きたいわけじゃない自覚はある。だから、無意識に避けようとしている可能性はあるし、実のところ、相手の真剣具合に比べたら、そこまで真剣に彼と向き合っているとは言えない状態にあるのかもしれない。
「わざと話を逸してるつもりはないですけど。それより、俺にあなたを好きって自覚があると、何かマズイんですか?」
「マズイっていうか、そもそもお前に自覚があってもなくても、その好きの出処が問題だと思ってて、既に自覚があるってなるとさすがに慎重にもなる」
「好きの出処……ですか」
 なんでこんな男を好きなのかなんて、本気でわからないのだけれど。それとも相手には、何かしら理由となるものがわかっているんだろうか。
「俺の何を好きか、わからないんだろ?」
「あなた自身、なんだって俺なんか、って言ってたじゃないですか。それくらい、オカシナ感情だってことはわかってますよ」
「うん。だからそれさ、多分、本当には好きなわけじゃないと思う」
「は?」
 意味がわからなすぎて、咄嗟に口から溢れたのは疑問符の乗った音だけだった。気持ちを落ち着けるように、一度深い呼吸をしてから再度口を開く。
「どういう意味ですか」
 深呼吸はしたものの、それでも結局、言いながら相手のことを睨みつけてしまった。
 だって本当に勝手だ。この胸の中のしんどい気持ちが、あの切ない胸の痛みが、相手にどれだけわかるって言うんだろう。
「多分自己防衛本能みたいなものの一種でさ、酷い目にあってメチャクチャ傷つくと、わざと似たような経験繰り返して、こんなの大した事ないって思い込むようなやつ。の発展形で、酷い形で始まったセックスでも、ずっと続けてられるのは相手のことが好きだから、好きでもない相手とセックスしてこんなに気持ちいいはずがない、って思い込んだ……のかと思ってる」
 お前が誰相手でも気持ち良くなれるのかって方向に走って、色んな男に抱かれる経験積み始めるよりは、好きだからって思い込んでくれて良かったけどと続いた声は、既にどこか遠くの方で響いている感じがした。
 頭の中がグラグラと揺れている。彼の言葉にショックを受けたのだと言うことに気付いて、それから、なぜこんなにもショックなのかと考え、彼が告げた理由を心の何処かで正解として受け入れたせいだと思い至った。

続きました→

 
 
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親睦会15

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 釣られたように、こちらも深く息を吐く。
「もし俺が、あなたが起きたことに気付かず朝になってたら、どうするつもりでした?」
「逃げて疎遠になって終わりにしたかって話?」
「そうしたかったですか? と聞いてます」
 わざわざ離婚した過去だのを話すことなく、もうそういう気にならないと、一方的に切って捨てることも出来たはずだ。クズでクソな自覚があるなら、その道を選んだと言い切ってくれたほうが、いっそスッキリするかもしれない。
 けれどやはり相手は、そうしたかったとは言わなかった。
「元嫁に対しては裏切られたって気持ちがはっきりあったけど、今回の場合はお前に落ち度なんもなくて、お前はただの被害者なのに、それ切って捨てて平然と生きてくのはちょっと俺には難しい、かな」
 つまり、口では許せとも恨むなとも言えないだとか、でも出来れば付けた傷を癒やしたいだとか償いたいだとか言っていたって、結局は自分自身の心の平穏のためにそうしたいってだけだ。なんてことを思ってしまうくらいには、自分も随分と思考がひねくれている自覚がある。
 酷い真似をしたという自覚があるなら、本当に申し訳ないと思っているなら、下手な言い訳なんか一切無しで恨ませてくれればいいのに。優しさの欠片なんて見せないまま、非情に切り捨ててくれれば良かったのに。泣いたからって手を引かず、強引に突っ込む快楽の伴わないセックスをして、そのまま宣言通り終わっていたら良かったのに。
「じゃあもしさっき、俺が泣いたりしなかったらどうしてたんです? 結局最初っから、最後まで抱く気なんかなかったって事ですか?」
「ゴメン」
「ゴメンじゃわかりません」
 今更謝罪が欲しいわけじゃない。そんな気持ちのまま吐き捨てれば、最後まで抱く気はなかったと返された。
「簡単に言うと、お前を試した……んだと、思う」
 思う、という言い方に多少引っかかったものの、それよりも何を試されていたかのほうが気にかかる。
「試したって、何を?」
「お前の気持ちを」
「俺があなたを好きだって、気づいてたってことですか?」
「気づいてたっつーか、そんなわけないって否定ならしてた、かな。だって俺なんかを好きになる要素がないだろ」
「ないですね」
「でもお前は誘えばホイホイついてくるし、ちょっと強引だったけど結局こうやって旅行にも来てる。しかも俺が、普段は一回イケばもう十分って感じのお前を、しつこく何度も抱こうとしてるって気づいてて、受け入れようとしたろ」
 しましたねと返してから、ああ、そういうことかと思う。試されていたのはきっと、自分が相手をどこまで受け入れているのかだ。
「つまり、あなたの無茶な欲求を、どこまで許すか試したと?」
「ああ、うん、それに近い、かも」
 とことんクズだと言えば、相手はそうだなと苦笑する。
「ただやっぱり、お前が俺をどこまで許すかよりも、お前の気持ちを試してたんだと思う。さすがにあの時はもう、お前が俺を好きになってる可能性をそこそこ意識してた。だから同時に、俺自身の気持ちも試してたんだと思う」
「思う、思う、ばっかりですけど」
「振り返ってみれば、って話だろ」
 そもそも、こちらが目を覚まして風呂場に突撃してくる、なんて想定がなかったらしい。しかも風呂でヤりたくて来たんじゃないのか的な誘いを受けて、あの時内心ではそれなりに焦ってもいたようだ。
「そんなときでも冷静にあれこれ考えて行動できるなら、お前や自分の気持ちを試すにしたって、もーちょい言葉選んで優しくしただろうよ」
 それはどうだろう。だって今は色々諦めたみたいにあれこれ話してくれているけれど、あの時点でそんな態度が取れていたかは謎だ。焦った顔すら隠して意地悪く「お前がそういうプレイをしたいんだろ」と笑ったこの人が、冷静な判断ができた所で素直に優しくしてくれるイメージがない。
 この人がガラリと態度を変えてきたのは、はっきりと泣き顔を晒してしまったからだと思っていたのだけれど。
「無理じゃないですかね。あなたは意地悪な方がらしいですよ。今は、俺が泣いたから、罪悪感と恨まないで欲しい下心で、優しくしてくれてるだけでしょ」
 若干どころじゃなく今更な感じですけどと言えば、相手は困ったように眉尻を下げて、それだけじゃないよと言った。

続きました→

 
 
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親睦会14

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 その後、やっと何故こんなことをするに至ったか話し始めた相手は、間男の姿を重ねていたと言った。
 離婚の原因は奥さんの不倫で、相手の男が自分に似ていたらしい。とは言っても、直接会ったことはなく、集めた証拠写真で見ただけだそうだけれど。
 恋愛結婚だった相手に裏切られたショックが大きくて、浮気に気づいた後は奥さんともたいして会話することなく、調査会社と弁護士とに丸投げで逃げてしまったと言った相手は、あの当時しっかり向き合わずに逃げた事のしわ寄せが、今になってお前に向かった感じになって本当に申し訳ないと頭を下げた。
 しかしその経緯でなぜ自分を抱こうと思ったのかは、やっぱりさっぱりわからない。
「あの、俺が浮気相手に似てたのはわかりましたけど、でも相手の男を抱きたいって思う気持ち、全くわかんないんですけど」
「だよな」
 相手はそう言って苦笑した後、凄く歪んだ発想だけどと前置いて、離婚話が進む中で奥さんにセックスが苦痛だったと言われたこと、離婚後女性不信から一時期一切勃たなくなったこと、ある程度落ち着いた後も女性相手には勃たずそこから男との行為に嵌っていったこと、セックスが苦痛だったと言われたトラウマから行為の技巧ばかり追求してきたことなどをゆっくりと話していった。
「お前が寮に入って来た時、すっかり忘れた気になってた間男を思い出して、なんかヤバイとは思ってた。だからお前とは距離おいてたんだけど、例の件でお前っからわざわざ近寄ってきた上に、男同士にそんな抵抗なさそうだなって思ったら、お前を抱いてみたくなった。かつて俺の嫁だった女を善がらせたんだろう男が、俺の下で善がってると思うと、ざまぁみろって思って少し気分が良かった」
 お前が間男だったわけじゃないのに、それでもそんな錯覚が気持ちよかったと言った相手は、更に、お前が俺との行為をキモチイイってだけで受け入れてるのも、こんな関係を続けてしまった理由の一つになっていたと言う。
「離婚後関係を持った男は全員アナルセックス経験アリの慣れたガチゲイだったから、元々ゲイじゃなくて俺以外の男に抱かれたこと無いお前が、嫌々ながら、それでも快楽に抗えなくて、流されて理不尽に関係を続けてるってのが、下手くその烙印持ちの俺には快感だった。それがお前に与える影響なんて考えたこともなく、ただただ身勝手に楽しく、お前を弄り倒して喘がせて満足してた」
 そこまで言ってから、我に返った様子で、我ながら屑だなと独りごちる。うん、知ってた。
「ホント、徹頭徹尾クズですね。ま、知ってましたけど」
「だろうな。で、更に俺がクズでクソなのは、元嫁のセックスが苦痛だったって言葉をずっと、浮気相手よりセックスが下手くそだったって言われたんだって思い込んでたとこだな」
「違うんですか?」
「今更確かめられないけど、多分。最初に言ったけど、俺らちゃんと恋愛結婚だったんだよ。交際期間中とか新婚だった頃は、気持ちぃセックスも間違いなくしてたはずなの。というかそういう時期があったこと、すっかり忘れてた」
 さっき思い出したと言った相手は、昼間お前と一緒に昼寝しただろうと続ける。
「お前が寝てる顔見たら、浮気相手の男じゃなくて、なぜか元嫁の顔を思い出した。俺とのセックスが苦痛だって思ってただろう頃の顔だよ」
 いったいどんな寝顔を晒していたんだと思ったら、苦しくて切なくてしんどそうな寝顔だったと、あっさり答えが告げられた。
「俺に抱かれてあんなに善がってるお前が、俺とのセックスが苦痛だった頃のあいつと同じ顔で寝てるから、なんか色々ショックだった。ショックと同時に、俺は一体何やってんだろって思った。一気に目が覚めたんだよ。でもなかなかお前にしてきた酷い真似と向き合えなくて逃げてた」
 なるほど。それで夕飯時はあからさまに様子がおかしくて、深酒までしてさっさと寝てしまったのか。
「ホント、あの頃から全く成長してないな、俺」
 相手はそう言いながら深いため息を吐いた。

続きました→

 
 
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