あの日の自分にもう一度1

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 手の中の携帯画面には、めちゃくちゃ笑顔の可愛い女の子が決めポーズを取る画像が表示されていて、ベッドの上にはその娘の着ている服一式とウィッグと化粧品類が、多少乱雑に並べられている。それらを何度も交互に見比べて、ウーンと唸った後、紘汰は大きなため息を一つ吐き出した。
 だってあの日はしこたま酔っていた。同じ学部学科の気の合う男友達ばかり10人ほど集まって、せっかくの飲み放題だからとガンガン飲みまくって、気分良く盛り上がった結果、悪乗りしすぎたのだというのはわかっている。
 言い出しっぺは誰だったか。どうせ吉田とか山上とか、口が上手くて調子がいい、普段から何かと中心になって騒ぐあの辺だろう。
 お前は絶対イケるとおだてられるまま、某ディスカウントストアのコスプレコーナーになだれ込み、その場で店員巻き込んで一式着替えて化粧までして写真を撮りまくった。新たな自分が誕生した瞬間だった。
 ノリノリで女装したのは自分を含めて数人いたのだが、着用した服や化粧品類は全員で割り勘だったから、そこまで懐が傷んだわけじゃない。しかも自分が着た服と、なぜか使った化粧品全てが譲られたので、むしろ出した金以上のものを得てしまった。
 ただやはり、しこたま酔った状態で、化粧を落として再度着替えるのが面倒だったのはわからなくもないが、ノリと勢いでその格好のまま帰宅したのはどうかと思うし、化粧品類をウキウキで持ち帰ったのもどうかと思う。
 これらが今ここになければ、こんなに悩むことはなかったのに。
 だって携帯の中の女の子は本当に楽しげで、可愛くて、実のところかなり好みのタイプだったりするのだ。好みの女性をイメージしつつ選んだ服だからというのも大きいが、運が良いのか悪いのか、どうやらその服を違和感なく着こなしてしまえる顔と体を持っていた。
 あの日の衝撃と、興奮と、妙な快感が忘れられない。
 詰まるところ、 紘汰の悩みとは、この服にもう一度着替えて化粧をするかどうかだ。
 ただ、酔ってもいないのに自ら女装に手を出してしまったら、取り返しがつかない事態になりそうで怖くもある。自らの手で、自らを好みの女性に変えてしまえるのを知ったら、どうなってしまうんだろう。
 好みの女の子とお付き合いが出来ないので、好みの女の子を作り出しました。なんて、笑い話にもならないドン引き案件という自覚もある。しかも、どんなに理想的な女の子を作り出そうと、相手が自分じゃどのみちデートも出来ない。
「きっも」
 自分自身の思考に思わずそう吐き出すものの、視線はやっぱりベッドの上で、並べた服をどこかに仕舞い込むなり処分するなりしようという気持ちは湧いてこない。
 それくらい、再度女装にチャレンジする、というのは魅力的な誘惑だった。
「あ、飲めばいいのか」
 名案とばかりにぽんと手をうち、紘汰は財布片手にコンビニへと向かう。
 そうだ。素面でスカートを履くにはあまりにハードルが高いが、あの日のように酔ってしまえば、そのハードルはグッと下がる。
「こうた!」
 最寄りのコンビニ店内で、ウキウキと買い物かごにアルコール飲料や軽いツマミ類を次々と放り込んでいたら、ふいに名を呼ばれて振り返る。
「よっ、奇遇」
「たつのり」
 片手を上げてみせたのは今田龍則で、あの日一緒に飲んでいたメンバーの一人だ。こいつは女装はしなかったが、嬉々として人の顔に化粧品を塗りたくってくれた。
 実家を出て一人暮らしをしている奴らの中でも比較的アパートの距離が近いせいか、コンビニに限らず、龍則との遭遇率はそこそこ高い。
「なに? 飲み会でもやってんの?」
 カゴの中の酒の量を見て、一人で消化するための買い物とは思わず、飲み会途中の追加買い出しとでも思ったんだろう。
「どうした?」
 相手を見つめたまま口を開かない紘汰に、龍則が訝しがる。
「あー……その、今日、暇?」
「なに? 俺も参加していいやつ?」
 行く行くとさっそく乗り気な相手に、紘汰は曖昧に頷いてレジへと向かった。
「幾ら出せばいい?」
「いや、龍則は出さなくていいよ」
「いやさすがにそれはダメだろ」
「いいって。てかさ、龍則に頼みたいこと、あんだよね」
「え? 何を?」
「それは帰ってから」
「え、なにそれ怖いんだけど」
 どんな飲み会なのかと聞かれても、この場で正直に話すのは絶対に無理だ。
「じゃ止めとく? この酒飲むなら、途中では帰さないけど」
「ますます怪しいな。危険はないんだろうな?」
「龍則にはないな」
「は? じゃあ紘汰には?」
「どうかなぁ……」
 他人を巻き込もうとしている時点で、危険はなくはないだろう。あの日の事が忘れられなくて、一人で女装しようとしていたと、龍則に知られることになるのだから。

続きました→

 
 
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今更エイプリルフールなんて

 4月1日がエイプリルフールだということはわかっているが、下らない嘘を吐きあって笑えるような人間関係が成立していたのはせいぜい学生時代までで、社会人となってからはそう縁のあるものではなかった。どちらかというと、企業やらが仕込むネタを楽しむ日、程度の認識だ。
 だから、担当という形で一年近く仕事を教えていた昨年の新入社員の男からの、彼女が出来たという報告も、ただただ単純におめでとうと返した。そんなプライベートの報告は別にしなくてもいいのだけれど、浮かれて誰彼かまわず伝えたいのかも知れないし、そんな内容を話せる相手が他にいないのかも知れない。
 たあいない雑談の中で聞いた、休日に友人と遊びに行った話なども覚えてはいるが、その友人とどのような関係かは知らない。恋人どうこう話せるような相手ではないのかも知れないし、もしかしたらその話に出てきた友人が彼女となったのかも知れない。その友人の性別を聞いた記憶はなかった。
「それだけっすか?」
「それだけ、って、おめでとうじゃ不満なのか?」
「そういうわけじゃ……」
「そんな顔で言われてもな。で、なんて言ってほしかったんだよ」
「っていうか、彼女できたなんて嘘おつ、とか、お前が好きなの俺だろ、みたいなのないんすか?」
「は?」
 とっさに、何言ってんだこいつ、という気持ちから疑問符を飛ばしてしまったが、そういや思い当たるフシがないこともないなと思い出す。
「あー……そりゃ好意はちゃんと感じてたけど、ていうか好きとは言われたことあったけど、でもそれ、俺が担当で良かった程度の意味かと思ってたっていうか、恋愛方面絡んでとか思ってなかったし、彼女出来ましたって報告に、お前俺が好きだったろ、とか返すほど自信過剰でもないし」
 というかあれらは本当に恋愛方面込みでの好意なんだろうか。どう思い返しても、担当に恵まれて良かった、という気持ちをノリと勢いで「好き」という単語にしたようにしか思えないのだけれど。
 しかしそれを確かめてしまうのは躊躇われて、そこはグッと言葉を飲み込んだ。
「いやだから、そんなマジに取られても困るというか、そもそも、おめでとうでスルーされると思ってなかったと言うか」
「ん? どういう意味だそれ」
「えー……っと、だからその、今日、なんの日か知ってますよね?」
 今日がなんの日かと言われてようやく、エイプリルフールのネタだったのだと思い至る。
「つまり、彼女が出来たは嘘ってことか」
「そ、です」
 絶対嘘ってわかった上で乗ってくれると思ってたのにと、不満げに口先を尖らせているけれど、会社でエイプリルフールの嘘を振られるのなんて初めてだったのだから無茶を言うなと言いたい。というか言った。
「えー、マジっすか」
「マジだよ。だからな、今日も、来年以降も、エイプリルフールがやりたいなら、相手は学生時代の友達とか家族だけにしとけよ」
「えー」
「えー、じゃない」
「せめて先輩だけでも、来年も相手してくださいよ〜」
「なんでだよ」
「だって嘘ってわかってたら乗ってくれますよね?」
「いや乗らない」
「なんでっすか!?」
「じゃあ例えば俺が、お前俺が好きだったろ、って返したら、お前それになんて返す?」
「先輩が付き合ってくれんなら今すぐ彼女振ってきます!」
「言うと思った。つまり、お前と嘘ネタでやりあうと大事故起こる未来しか見えないからだ」
 それを耳にした誰もが、エイプリルフールの面白ネタと思ってくれるわけじゃない。もしエイプリルフールと気づかれずに本気にされたらどうするんだ。というか多分気づかれない確率のが高い。
「でも俺、先輩とだったら誤解されてもいいっていうか、まじに付き合うことになってもいいんですけど」
「嘘おつ。てかやめろって言ったそばから!」
 少しばかり声を荒げてしまったが、相手は満足げに笑っている。
「そういうとこ、ほんと好きなのに〜」
「わかった。それは信じるから、仕事しろ仕事」
「はーい」
 機嫌よく自分のデスクへ戻っていく相手の背を見送りながら、これは来年も何かしら仕掛けてきそうだと思って、深い溜め息を一つ吐き出した。エイプリルフールなんて、自身にはもう直接関係のないイベントだと思っていたのに。

 
 
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好きって言っていいんだろ?

ツイッタ分2019年「一次創作BL版深夜の真剣一本勝負 第287回」 → ツイッタ分2020年−2「クリスマス」の二人です。

 クリスマスに呼ばれてから先、学校で渡されるのではなく、彼の家で菓子を振る舞われることもじわりと増えて、先月のバレンタインもチョコケーキを彼の家で食べた。
 バレンタインが日曜だったのもあるし、翌日だろうと学校でチョコ関連の品を渡すのはさすがに抵抗があるし、家ならラッピングや食べやすさを気にする必要がなく、盛り付けにだって凝れるから、というのが相手の言い分だ。
 特に予定もない日曜に呼び出されたって、こちらは菓子を振る舞われるだけなので、なんの文句もない。ただ、バレンタイン当日に、凝った手作りチョコケーキを躊躇いなく振る舞ってくる、というのをどう解釈していいかは難しい。
 学校で渡すのは躊躇われると言う程度には、バレンタインとチョコというものを意識してはいたようだけれど、チョコケーキそのものは多分家族向けに作ったもののお裾分けに違いなくて、自分のために用意されたなどと驕れる要素はほぼ皆無だったからだ。なんせ、皿に乗って出てきたのはカットケーキだったので。
 でも自信作という割には、こちらの様子をいつも以上に気にかけていたのが気になるし、めちゃくちゃ美味いと誉めたら嬉しそうにはにかんでいたのも気にかかる。気にかかると言うか、あれは期待したくなるような顔だった。相手ももしかしたら、恋愛的な要素を含んで、自分に好意を持っているんじゃないのか。
 解釈に悩むのは、自分の中に期待があるから。というのが多分一番正しいのだけれど、要は、彼は菓子作りが好きで彼の菓子を絶賛する自分に食べさせることを楽しんでいるだけ、というスタンスを貫き通すかどうかを迷っている。
 もっと言うなら、ずっと貰いっぱなしなので、ホワイトデーを理由にして、何かしら返そうというのは決定事項なのだけれど、そこに美味い菓子をありがとう以上の感情を乗せていいのかを迷っていた。
 あのチョコケーキに何かしらの意味があったなら、こちらだって躊躇うことなく想いを返せるのに。以前、自分の口から言ってしまった、好きなのはお前の作る菓子だけという断言や、そんな心配は必要ないとはっきり言われているせいで、期待からくる勘違いを疑ってしまう。
 結局迷いながらも、とりあえずでホワイトデー当日の予定を聞けば、マカロンを作るなどと返ってきて驚いた。ついでのように、月曜にお裾分けを渡すつもりだったが食べに来るかと言われれば、頷く以外ない。まぁ当日会えるのが確定したので良しとする。
 そうしてやってきたホワイトデー当日、用意したお返しを手に彼の家に訪れれば、手の中の荷物に気づいた相手が何だそれと問うてくる。そこそこの大きさがあって、しかも明らかにプレゼント用らしきラッピングがされていれば、気になるのは当然だろう。
「ああ、これはホワイトデーのお返し」
「え、僕に?」
「お前以外ないだろ」
 ほらやるよと、相手の胸にプレゼントを押し付けてやれば、開けていいかの言葉とともに、袋の口を閉じるように結ばれているリボンが解かれていく。
 ここはまだ玄関先なのだが、こちらをリビングだったり彼の部屋だったりへ案内する時間も惜しいらしい。待ちきれないのがありありと分かる、期待の滲んだ様子で中身を取り出した彼が、驚きと喜びとを噛みしめるようにして破顔するその一部始終を、こちらもつい、ジッと見守り続けてしまった。
「気に入ったか?」
「うん。それはもう」
 顔を見ればわかるし、そもそも彼が過去に「それいいな」と言っていたものを選んでいるのだけれど、それでも一応確認すればすぐに肯定が返った。
「じゃあ、使ってくれ」
 渡したのは、自分が使っているボックス型リュックと同型の色違いだ。
「ありがと。さっそく明日から使うよ。でもこれ使ったら、お揃いになるけど、いいの?」
「ダメならそれをプレゼントに選ぶとかしないだろ」
 むしろそれを狙っている部分もある。
「まぁそうか。てかさ、じゃあ返せとか言われても困るんだけど、これ結構値段するよね? チョコケーキ一切れに対して大げさじゃない?」
「それは、今まで結構色々貰ってきてるし」
「ああ、なるほど。いやでもまさか、お返し考えてくれるタイプと思ってなくて、どうしよう、なんか今、めちゃくちゃ感動してる」
「まぁ俺も、今、わりと感動してるような気もする」
 だってこれ、期待からくる勘違いだけじゃないだろ。プレゼントを渡してから先の、彼の一連の動作や表情や言葉に、嬉しくて仕方がないその様子に、彼にも同じ想いがありそうだと思ってしまった。
「え、何に?」
「俺、お前のこと、好きになったみたいなんだけど」
「え? は?」
「って言っても、大丈夫そうなことに、感動してる」
 お前も俺のこと好きだろ? とまでは続けなかったけれど、多分通じたのだろう相手の顔が、じわじわと赤く染まっていく。
「好きなの、僕の作るお菓子だけ、って言い切ってたくせに、ズルい」
「それは撤回するけど、ズルいってなんだよ」
「お菓子だけじゃなくて、僕自身に惚れさせて、あの言葉は撤回するね、ってやりたいのは僕の方だった」
「惚れさせて、ってとこまでは成功してるだろ。その結果がこれだろ」
「そうだけどそうじゃない。いやまぁ、先を越されて悔しい、くらいの意味だよ」
「そうか?」
 まだ他に何かありそうな気配に首を傾げてみたが、マカロンはもう出来上がってるから上がっての言葉に、そんな一瞬の疑問はあっさり霧散していった。

この2人は、どっちも自分が抱く側を主張して揉めるカップルになりそうな予感がしてる。ので、またそのうちうっかり続くかも知れない。

 
 
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カレーパン交換

 自室の勉強机の上に置かれた黒い袋の中身はカレーパンで、昨日コンビニで買ってきたものだ。有名なチョコブランドとのコラボ品で、発売情報は事前に得ていた。
 バレンタインというイベントに乗っかって、チョコを渡しながら想いを告げたい気持ちはない。むしろこの胸の中に抱える恋情は隠し通したい。でも好きな相手にチョコを渡すという、ドキドキだったりワクワクだったりは味わってみたい。
 そんな自分にとって、チョコ入りカレーパンというのは絶好のアイテムに思えたのに。これならおもしろネタとして購入しやすいし、あまりバレンタインだのチョコだのを意識させることなく、相手にも渡しやすそうだと思ったのに。
「はぁあああ」
 目の前のカレーパンを見つめながら盛大に溜息を吐いた。
「なんで、今年に限って日曜なんだよ……」
 吐き出す声は恨めしさがありありと滲んでいたが、それも仕方がないと思う。平日だったら学校で弁当を食べるついでに取り出して、面白そうだったから買ったと言って、半分わけてやるなどで相手に食べさせることが簡単にできるのに、日曜じゃそうもいかない。
 仲はそれなりに良いし、映画やら買い物やらで休日に一緒に遊びに行くことだってしないわけではないけれど、カレーパンを渡すために会うとか意味がわからない。というよりも、せっかくバレンタインやらチョコやらを意識させないためのカレーパンなのに、そんなことをしたらさすがに気づかれそうだ。
 だってカレーパンを包む袋にははっきりとコラボしたブランド名が書いてあるし、このブランド名を見たらチョコを意識せざるを得ないし、わざわざ呼び出してこれを渡したら、きっとチョコを渡すのとそう変わらない。それじゃカレーパンである意味がない。
 元々、バレンタインなんてイベントは自分の想いには無関係だと思っていたのだから、好きな相手にチョコを渡してみたいなどという、乙女じみた野望を捨ててしまえばいいのはわかっている。でもこのカレーパンの発売情報を見た瞬間に、これなら俺でも渡せるじゃん! と浮ついた気持ちが忘れられない。
 諦めきれないまま、手の中の携帯を弄った。さっきから何度も、相手に今日会えないかと問うメッセージを書いたり消したりしている。会って渡したら意味がないと思うのに、どうにかしてさりげなく渡す方法はないかと模索している。
「うわっ!」
 そんな中、相手から暇かどうかを問うメッセージが届いて、思わず驚きの声を上げてしまった。すぐさま暇だけどと返せば、次には、近くまで来てるから遊ぼうというメッセージが届く。
 向こうから申し出てくれるなんて、なんて都合がいい。
 机の上のカレーパンはそのままにこの部屋に呼び、ちょっとでもカレーパンに興味を示したら面白そうだったから買ったと告げて、一緒に味見をすればいい。この流れなら、当初の予定とそう変わらない。
 しかし、ウキウキで遊びに来た相手は、部屋に入った瞬間に、あっ! と声を上げて立ち止まってしまった。視線の先はカレーパンだ。
 ちょっとでも興味を示したら、というレベルじゃない反応にドキリとする。
「あ、いや、これはその、なんか面白そうだったから買ってみただけで、誰かにあげるつもりとかは、あ、じゃなくて、誰かに貰ったものじゃなくて、その、あー……」
 焦って口からこぼれていく言葉はどれもこれもが最悪だ。このカレーパンがバレンタインのチョコを意識した品だと、自ら暴露してしまった。
 これでもう、さりげなく相手にチョコを渡すのなんて絶対に無理。このカレーパンを買ってきた意味がなくなった。
「くそっ」
 自らの盛大な失態に悪態をつけば、相手はそんな動揺しなくてもいいのにと笑う。
「バレンタインコラボのチョコ入りカレーパンを自分で買ったからって、そんな恥ずかしがるような事じゃないだろ。面白そうだったから買った、だけでいいじゃん」
「わかってんよ」
「それにさ、もしお前がバレンタイン用の包装された可愛いチョコを買ってたって、チョコ貰えなくて自分で買っちゃう可哀想なやつ、なんてこと、俺は思わないぞ?」
「いや、そうじゃねぇよ。つか、つまり俺がこれを誰かにやるつもりで買ったとか、誰かから貰ったとかは、欠片も思わねぇってことかよ」
「最初に言った、面白そうだから買った、が事実だと思ったけど。それとも、誰かにあげたくて買ったものだから、あんなに焦った?」
 またしても完全に墓穴を掘った。チッと舌打ちして視線をそらせば、図星だ! という言葉に追い打ちをかけられる。
「え、まじで? お前、チョコ渡したいような相手いるってこと? え、誰だよそれ。俺の知ってるやつ?」
「あーあーあーあー、うーるーせー」
 続けざまに質問が飛んできて、それを遮るように声を荒げて机に近づいていく。
「これは、俺が自分で食うために買っただけ」
 取り上げたカレーパンの袋を思い切り開封し、中身にかぶりつこうとしたその時。
「待って!」
 手の中から相手がカレーパンの袋を奪っていった。
「何すんだっ!」
「自分が食べてみたくて買っただけなら、これじゃなくて俺が買ってきたやつ食って」
「は?」
「俺が、買ってきたのを、食え」
 言い含めるようにゆっくりと吐き出されてくる声は、どこか怒りを孕んでいる。
「え、なんで?」
「俺のは明確に、お前に食べさせるために買ってきたものだからだ」
「え、なんで?」
「今日がバレンタインだから」
「え、つまり、お前からの……チョコ?」
 最後の部分は言うのをかなり躊躇った。けれど確かめずにはいられなかった。
「そーだよ! ほらっ」
 鞄から取り出された黒い袋が突きつけられる。紛れもなく、先程まで机の上に置かれていたカレーパンと同一のものだ。
「まじかよー」
 受け取った袋を抱えながらへなへなとしゃがみこんでしまえば、同じようにしゃがんだ相手が、俺からのじゃ食いたくないかと問うてくる。少しだけ不安のにじむ声に慌てて首を横に振った。
「つかお前、勇気あんな」
「いや俺だって、お前が誰かにチョコ渡したがってるの知らなきゃ、言うつもりなんて無かった。面白そうだから買ってきた、だけでいいと思ってたよ」
「そ、っか」
「そう。だからこれは返すけど、これの代わりに、俺が渡したそっちの未開封のを誰かにやるのとかだけはナシな」
「んなことするわけないだろ。てかそっちはお前が食えよ」
「え、やだよ。だってこれ、お前が誰かにあげるつもりだったチョコだろ」
「誰か、っつーか、お前な」
「え?」
「俺がそれ渡したかった相手、お前」
「え、え、つまり……」
 俺たち両想いだなと告げれば、ここまで一切照れる様子もなく堂々としていた相手の顔が、みるみる赤く染まっていった。

コラボカレーパンこのコラボカレーパンが発売されるニュースを見て、今年のバレンタインネタはこれに決まりだなと思いました。笑

 
 
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デザインとかタグとかCHATNOVELとか(雑記)

訪問時にすぐに気づいたと思いますが、ブログのデザイン(テーマ)が変わりました。
以前使用していたテーマだと重要なアップデートが出来ない状態で、でも面倒がってずっとそのアップデートを放置してたのですが、いい加減対処しようと思いまして。
以前のテーマもそこまで弄らず使ってましたが、今回はそれ以上に殆ど手を加えずの使用です。取り敢えずリンクがわかって本文読むのに支障がなければいいかなと。ブログ弄るのにあまり時間かけたくない。
でも、以前はこうだったのに変わっちゃってすごく不便、みたいなことがあればお知らせ下さい。出来る範囲で対応しますので。
それと、定期更新やめてしまって訪問者さんも減ってるはずですし、携帯閲覧時のオーバーレイ広告が大きくなった時に、うざくなって一番閲覧のある広告でしたがそれは既に外しちゃってましたし、新たに設定する手間を考えたら必要ないなと思って広告は外しました。これはいつかまた、がっつり連続した更新の継続が見込める場合は、復活するかも知れませんけれど。

次にタグですが、「青姦」と「中出し」タグを新たに作りました。
一応ざっくりと過去作チェックしてタグ付はしたと思うんですけど、抜けてる作品はあるかも知れません。
生きる喜びおすそ分け」の37話から先に青姦タグを付けるか迷ったんですが、後始末してるだけだし繋がってないからタグ無しで。「竜人がご飯」は中に出されたとわかる描写は度々あるんだけど食事でしかないというか、ちっともエロくないというか、中出しを意識した描写してないなと思ったのでタグ無しで。
何かで読み返した時に、やっぱりタグ付けようと思う可能性はありますが、取り敢えずはなくていいかなと。

そして最後に、CHAT NOVEL@CHATNOVEL)さんで公開された3作目と4作目の話。
今回後日談が既に書き上がってたので、雑記での報告無しで後日談投下しちゃいましたが、せっかくなので少し触れておこうかなと思います。

3作目の「夢見る腐男子は理想の攻めを手に入れたい」を書いてる頃に、たまたまツイッターで寝バックいいよね的な呟きが流れてきて、わかるーいいよねーという気持ちのまま、不要と言われて全削除になってもいいやとプロットには一切なかったエロシーンを投入し、それがそのままOKで通って、しかも出来れば寝バックな挿絵が見たいですという要望も通った結果が、6章のあの挿絵です。笑。
挿絵見ながらめっちゃ幸せ噛み締めた。最高だった!!
あと実は、颯真がオメガバースとかの特殊設定にハマって「〇〇のない世界で〇〇ごっこ」という妄想が楽しくて仕方がない。〇〇の中は「オメガバース」でも「Dom/Subユニバース」でも他のなにかでもいい。翔さんはきっと呆れながらもそれなりにノッてくれそうなイメージあるので。
余談ですが、オメガバースのない世界でオメガバースごっこしてる話とか、知ってたらこっそり教えて下さい。読んでみたい。

そして4作目の「無表情トレーナーは変態でした」の方は、これもう本当に、エロ頑張ったって記憶しかない……
しかもエロに引きずられてるのか文字量やたら増えちゃって、ただでさえ9章もあるのに、その1章1章がかなり長くなってて、書き慣れるほどに抑えが効かなくなるのはチャット小説でも一緒だなと思ったりしてました。
ちなみに、1作目が全6章で、2作目、3作目と進むうちに、1章ずつ増えてるんですよね。プロットからして、慣れると増える。いや、2作目は最初全6章だったのに書いてる途中で1章増やさせてくださいってお願いしたんだったか……
それで3作目からは余裕を持ってプロットを、と思ったのに、4作目で9章で書き足りなかったエロ続きな後日談書いたから懲りてない。
こちらの挿絵に関しては、脇役の山田くんが結構お気に入りなので出来れば彼が居るシーンを、とお願いしてました。7章ですね。
文章のエロ制限はないって言われたけど、絵の方は色々制限あるみたいな話を聞いていたので、エロシーンに関してはお任せしますって感じでした。

どちらも公開日を予め報告できていたことと、公開と同時に後日談を出せたこととで、初日からけっこう沢山いいねの♡を押して貰えて嬉しかったです。
あっという間に過去2作と同じくらいのいいねを貰えて、現在、オトナカテゴリで4作が並んでいます。嬉しくてさっきスクショ取ってきちゃいました。

CHATNOVELスクショ
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CHAT NOVEL

CHAT NOVEL@CHATNOVEL)さんで公開していた4作品の目次ページです。 現在公開が終了してしまったので、本編の本文すべてを公開しました。
また、公式サイトさんの紹介ページのスクショを記念に貼っておきます。
紹介ページが残っている間は画像クリックで紹介ページに飛びます。
問題はないと思うのですが、なにか指摘された時には画像を消す可能性があります。
アプリでの公開時、たくさんの♡(いいね)をありがとうございました。

俺が本当に好きな方
高校同級生。三角関係。
本編6章+後日談1話。CHATNOVELスクショ


俺が眠らせてあげるから
社会人と大学4年生。客の男×添い寝屋キャスト
本編7章+後日談3話。CHATNOVELスクショ


夢見る腐男子は理想の攻めを手に入れたい
社会人と高校3年生。年の差・体格差有り。
本編8章+後日談4話。CHATNOVELスクショ


無表情トレーナーは変態でした
社会人同士。2歳下の年下攻め。ジムトレーナー×会社員。
本編9章+後日談2話。CHATNOVELスクショ

 
 
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