オメガバースごっこ10

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※ ここから受け視点になります

 大学入試を揃って無事に通過し、予定通りルームシェアという名の同棲が始まり、日常生活はそれなりに順調だった。それぞれに個室があってプライベートは確保されていたし、家事は互いの能力や負担やらを話し合って分担を決めたし、恋人としての触れ合いだってしっかりあるし、だからといって互いを束縛し合うようなこともない。
 ただ、同棲という響きに期待していたほどの甘さはないというか、想定よりきっちりしすぎているというか、念願の二人生活に羽目を外して乱れた生活をするわけにいかないんだけど、なんていうかもうちょっと、ガツガツと求めてくるのかと思っていたから拍子抜けだった。
 だって一緒に住めるように双方の親に根回ししたりを積極的に行っていたのは相手で、もともと炊事スキルを求められている節はあったけれど、それが一番の目的とは思いたくなかったし、当初は一緒に住めるようになってからゆっくり体を繋げるセックスを試すつもりだったのも知っている。
 こちらが先走って勝手に体を慣らした挙げ句に抱いて欲しいと迫ったせいで、新生活で行うつもりだった相手の予定を潰してしまった可能性はある。あんな真似をしていなければ、今頃は毎晩のように相手の手で体を慣らされる日々を送っていたんだろうか……
 いやまぁどうせすぐに相手を受け入れられる体だって知られて、相手の手でじっくり慣らして貰うなんて夢みたいな生活にはならないってわかってるけど。でもちょっとだけ、真っ更な体を相手に差し出してみたかったと残念な気持ちもある。
 だって自分の手で慣らして広げていくつもりだったのにと、不満げに言われたことがある。相手はこちらの体が全く慣れていない状態でも、それを面倒だなんて思うことはないのだ。それを知れただけで、充分に嬉しい。
 ついでに言うなら、自分で勝手に慣らしてしまった体でも、セックスそのものは未経験というのを充分に考えてくれた初めてだったと思うし、その後何度か経験したセックス全て、慣れてるならと雑に扱われたことはないし、いつだって目一杯甘やかされて大事に抱いて貰っていると思う。
 つまり相手とのセックスの内容に不満があるわけじゃない。最近思っているのは、もしかしなくても自分は相手よりも性欲が強いのかも知れない、ってことだ。
 友達とも相手ともオナニー頻度なんて話題にしたことがなくて、偏りが強いだろうことは承知だけどそういった方面の知識は主にBLで得ていて、その知識に当てはめて性欲が強いかもだなんて思ったことはなかったんだけど。
 でも男はスポーツで性欲発散できるとも言うし、高校から文化部の自分と、大学でも結局、同好会に近いながらも競技を続けている相手とでは、体の内にくすぶる欲の処理方法が違うのかも知れない。
 この生活の利点は、相手の私物の入手しやすさと、相手の日々のスケジュールの把握が出来ることと個室があることで、逆に欠点は、部屋に鍵が掛からないことと、恋人がいるのに一人で処理しているという虚しさに襲われることだ。
 ただ、相手に項を差し出して仮初の番を成立させた後、想うαに抱いて貰うことが出来ないΩになりきったオナニーに嵌っていたせいで、相手の私物に囲まれて、相手のことを想いながら自己処理することには、実のところ慣れている。
 隣に住む同じ年の幼馴染で、彼の姉とは腐友という状況で、相手のちょっとした私物なんて借り放題・貰い放題だったのもあって、いわゆるΩの巣作りに困ることはなかった。いやまぁ、親や弟に見つかるわけにはいかない、という最大の難関はあったけれど。でもそれは相手に見つかるわけにいかない、という点で現在とそう違いはない。
 相手を好きだと自覚した時から抱かれたい側だったし、そこにΩになりきった妄想とBLから得た様々な知識で、お尻の穴を弄って気持ちよくなることを覚えるのも早かった。さすがに本当に抱かれる事を想定した拡張訓練的なものは付き合いを開始してから始めたけれど、恋人としてお付き合いどころか抜き会うような関係になる前から、抱いて貰えない切なさの中で興奮して果てるというしょうもない経験を積んでいる。
 まさか、同棲を開始して蜜月期を迎えることなく、こんな寂しい状態になるとは思ってなかったけど。勢い任せに抱いてくれと押しかけた時だって受け止めてくれたんだから、もっと頻繁に抱いてって言えばそれで解決するかもしれない問題だったりもするけど。
 でも自分ばっかり欲求不満って事実を、相手に向かって晒すのが恥ずかしい。いたたまれなさもあって、相談しようとは思えなかった。

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オメガバースごっこ9

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 一度大きく息を吸って吐き出した。
 少し距離を置いて頭を冷やそうとベッドから腰を浮かし掛ければ、慌てたように伸びてきた手がシャツの裾を握り込む。相手の思惑に乗って襲いかかりたくないこちらの気持ちは、やはり相手には伝わらないようだ。
「ま、待って」
 声も手も震わせながら、それでも必至に引き止められてしまい、ダメだと思うのにそれを振り払うことは出来なかった。
「お、怒った……?」
「怒ってるわけじゃ、ない、けど……」
「けど、なに?」
「こんなん飲んでしたくねぇ」
 飲み慣れたものではないどころか、一度も飲んだことがない。これを飲んでどの程度興奮するものなのかわからない。
 相手の興奮具合を考えたら、それが相手の望みだったとしても、同じように興奮するのは危ないのではと思っても仕方がないと思う。
「飲まなくても抱ける、って意味なら、お願いだから、それ飲んで、して」
「なんでだよっ」
「発情期には、同じだけ興奮しててくれなきゃ、いやだ」
 番のアルファが側にいるのに一人だけ発情してるのなんて惨めで恥ずかしい、らしい。なんかそんなの読んだことある気がするな。
 ということは、本当にオメガバースの世界だと思って対応すれば良いのかも知れない。つまりは、目の前にいるのが自分の番のオメガで、発情期を迎えていて、現状自分がその誘惑に抗えているなら抑制剤が効いてるってことでいいんじゃないのと思ってしまった。
 確かオメガの誘惑に抵抗できるアルファ用の薬があったはずだ。番の居るアルファ用ではなく、番を持たないアルファが見知らぬオメガの発情期に巻き込まれないためのものだった気もするけれど。
 でも番相手には効果がない、なんて話は読んだ記憶がない。オメガが服用する抑制剤はたいがい番のアルファにも効果があったから、アルファが服用する抑制剤だってきっと番相手にも効果があるだろう。
「却下だ」
 ここが本当にオメガバースの世界だったとしても、理性をふっとばして本能任せに番のオメガを抱き潰す必要なんてない。少なくとも自分なら、番の発情期に簡単に誘惑されないよう、対策すると思う。
「きゃ、っか、って……」
 がっかりを通り越して青ざめた顔を見ながら、手の中のドリンク剤を床に向かって転がした。
「防ぎようのない突発的な発情で事故ってやっちまう話はよく読んだけど、番との初めてのセックス、発情期の衝動に任せて終えたいアルファなんていんのかよ」
「でも、番が居るΩの発情期には、番のαが相手してくれるのが普通で」
「相手しないって言ってないだろ。理性ぶっ飛ばして抱き潰さないように、抑制剤飲んでる、とでも思っとけ」
「えっ……」
「抑制剤ってのはフェロモンに反応しないってだけで、勃たなくなるわけじゃないもんな」
 少なくともそんな状況に陥ったアルファを読んだことはないので、抑制剤で勃起不全が起こる世界があったとしても、それはきっと特殊な設定ってやつだと思う。
「えっ、そんな、えぇ……」
「あと、一人で発情してんのが惨めで恥ずかしい、なんて思いをさせる気もねぇから心配すんな」
「は? え?」
 全く想定になかった対応をしているんだろう。戸惑い動搖しまくっている相手に、番のオメガが発情期に助けを求めてきたていで、存分に甘やかしながら抱いてやるよと宣言してやった。

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オメガバースごっこ8

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※ ここから攻めの視点になります

 あまりの発言に睨みつけている自覚はある。
「ひっ」
 喉を引きつらせたような小さな悲鳴が漏れてきて、すっかり怯えた顔になってしまったが、そんなすぐには気持ちが切り替えられない。ただ、怯えながらもこちらをジッと見つめたままの瞳に、怖がらせたいわけじゃないのにとは思った。
 むしろ目指す方向とは真逆だ。ここがオメガバースの世界で、相手が本当に自分の番だったら、しっかり守って安心と信頼を得られるアルファで有りたいと思っていたし、オメガバースなんて無いこの世界でも同様に、スパダリとまでは行かなくたって、共に歩んでいく相手として頼られる存在でいたいと思っている。お前を選んでよかったと、ふわふわ笑っていて欲しい。
 なのになんでこうなった。
 相手にとっては自分が初めての恋人で、何から何まで初めてだと知っているから、性急にあれこれ求めすぎないようにと、どれだけ自制してきたと思ってるんだ。というか自分で体を慣らすまでして抱かれたい気持ちがあったなら、少しくらい相談なりそれとわかる誘いなりして欲しかった。
 だいたい、ただ抜きあうだけだった行為に、キスだとか愛撫だとか好きだの可愛いだの想いを伝える言葉を足した恋人っぽい触れ合いに、未だ慣れずに戸惑っているくせに。そのくせ、終えた後には随分と満足気に笑っていたくせに。
 相手が現状に満足しているようだったのと、男同士のカップルが必ずしも挿入有りのセックスをしているわけではないらしいことや、姉の指示で読んだ、オメガバースではなく普通の高校生同士の初々しいカップルが出てくるBL本を参考に、体を繋げるのは受験を終えてから、相手の様子を探りつつゆっくり進めていけばいいんだと思っていた。特に、初めての行為に痛いと言って泣いたり、上手く出来なくて落ち込んだりのBL本が、先へ進みたい気持ちを鈍らせていたとも思うから、姉の気遣いだとわかっていても恨み言の一つでも言ってやりたくなる。
 ああでも、相手経由で姉には自分たちの進展もあれこれ筒抜けなんだろうと思っていたが、思ったほど姉に知られては居ないのかも知れない。だって早く抱かれたい的な気持ちがあることが姉に伝わっていたら、絶対にそれとなく知らせてくれていただろう。
 恋人になる前から抜き会う関係だったことを姉に知らせては居なかったから、エロ絡みは言えないってことだろうか。相手の不満は姉経由で届くと思っていたのが大きな間違いだったとしたら、受験を控えて頻度が落ちたから、それで不安になった可能性もあるかも知れない。
 だとしたって、行動が飛躍しすぎだと思うけれど。発情期っぽい体を作った、って、なんだよそれ。
 そう思うのに、彼の考えたことが理解できてしまうから悔しい。
 交際を申し込んだあの日、お前が本当にオメガなら良かった、なんてことを言ってしまったせいなんだろう。
 発情期もなく勝手に濡れることもなく、相手を求める本能に抗えなくさせるフェロモンの放出もないから、ローションを仕込んですぐにでも挿れられる体をつくり、精力剤の飲用で強引に興奮し、同じ精力剤を飲ませてこちらにも興奮しろと求めている。
 渡されたドリンク剤をギュッと握りしめた。初めてを、そんな形で終えたくなんてない。
 色々なことがグルグルと頭の中を駆け巡っているが、相手はずっと息を潜めて、こちらの次の行動を待っている。その様子から、渡されたドリンク剤を飲み干して、相手に覆いかぶさっていくのが正解なんだろうとは思った。
 応じてやりたくて、でも、応じたくない。

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オメガバースごっこ7

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「ベッド行くぞ」
「うん」
 そんな宣言に短く了承を示せば、しっかり捕まっとけの言葉とともに軽々と抱き上げられてしまう。
 まともに立てもしない体を引きずるよりマシだと思ったのか、ベッドまでの短な距離なら抱き上げたところでたいして疲れないと判断したのか、抱かれる気満々で訪れたことに気づいているからのサービスか。別にどんな理由だろうと、今現在、大好きな恋人に姫抱きされているのは事実だ。しっかり捕まっとけの言葉に甘えて、ギュッと相手にしがみつく。
 服越しに感じる相手の体温と、既によく知った香りに包まれて、うっとりと目を閉じかけたところで、背中にベッドマットが当たる感触がしてあっさりと降ろされてしまったけれど、名残惜しくて伸ばした手を握ってくれたから、繋いがれた手に勇気を貰って口を開いた。
「お願い。抱いて、欲しい」
 やはり想定通りだったのか、驚かれることはなかった。
「わかった。けどその前に、望み通り俺の部屋まで来たんだから、何考えてるか聞かせろよ」
 あっさり了承されたけれど、ホッとする間もなく続いた言葉に、そう言って部屋へと急かしたことを思い出す。部屋へ入った瞬間からのあれこれで、すっかり頭の中から飛んでいた。
 と言っても、抱いて欲しい気持ちは既に伝え済みだし、これ以上語ることなんて……
 そう思ったところで思い出す。
「あ、そうだった」
 自分の体の準備はしてきたけれど、相手にも準備が必要だと思って、用意してきたものがある。出来れば協力して欲しい。
 手放すことなくお腹に抱えていた鞄の中から、小さなドリンク剤を取り出して相手に向かって差し出した。
「なんだこれ」
「いわゆる精力剤」
 俺はもう飲んできたと言えば、どうやらこちらが一人でさっさと興奮している状況に納得がいったらしい。それでそんななってんのかよと、少しばかり呆れられてしまったようだけれど。
「で、理由は?」
 受け取ってはくれたものの、それは手の中に握られたまま開栓されはしなかった。
「理由?」
「俺らちゃんと恋人だよな? お前に経験ないの知ってるし受験終わってからゆっくり時間かけて、と思ってたのは事実だけど、俺にその気がないわけじゃないのも知ってるよな?」
 噛んで含めるような問いかけに、だって受験が終わってからじゃ遅いんだよと思ってしまう。
「知ってるけど……」
「けど、なんだよ」
 言いながら逃げるように俯いてしまえば、続きを促す声が不機嫌そうに響いた。
「その、本当に俺のこと抱けるのか、ルームシェアとか始める前に、ちゃんと確かめておきたくて。それにもし俺が本当にΩだったら、発情期には番のαとして抱いてくれるんだろうなって思ったら、こうするくらいしか……」
「待て待て待て。話が飛んでる。てかまさか、発情期のオメガの真似して、こんなことになってるとか言う気か?」
「まぁ、そう。発情期っぽい体は、ちゃんと作れてると思う。でも誘惑するフェロモンなんて出せないから、そのドリンク剤は、飲んで欲しい」
「発情期っぽい体……?」
「中洗って、慣らして、ローションいっぱい詰めてきたから、多分、すぐ、入る……はず」
 言ってる途中で、あまりの恥ずかしさにだんだんと口が重くなる。それでもなんとか言い切ってから、相手の様子を窺うようにおずおずと顔を上げていけば、見えたのは先程の比ではないほど怒りを抑えた顔だった。

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オメガバースごっこ6

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「ここじゃ言えない。だからお願い、早く部屋に入れて」
 急かせば余計に怪しまれたような気がするが、それでも、部屋に入れるまでは何も語らないとわかっているようで、自室に向かって歩いていく。
 ホッとしつつもその後ろを追いかける体は、事前の仕込みが効きすぎているようだ。体が奥の方から熱くて、なんだかぼんやりする。玄関からの距離なんてたかが知れているのに、彼と同じ歩調で追いかけられずに時折足がもつれるし、部屋の前に着く頃には息も上がっていた。
 部屋のドアに手を掛けながらこちらが追いつくのを待っている相手の顔は、不審なものを見る目というよりは怒りを抑えているような怖さがある。
 事前に何をしてきたか、これから何をする気か、相手も気づいてしまっただろうか。それでその顔なら、抱いて貰うのは無理かもしれない。
 意気込んで押しかけたくせに、あっさり挫けて泣きそうだった。しかも、それに気づいたらしい相手がそっと顔を逸らすものだから、部屋の前に着くと同時に開けられたドアの先に、踏み込むのを躊躇ってしまう。
「部屋、入れろって言ったのお前だろ」
「だ、って……その……」
 回れ右して帰りたい気持ちと、ここまでしたのだからちゃんと彼の返事を聞くべきだと思う気持ちとで、迷っている。
 その場で立ち尽くしていれば埒が明かないと思われたのか、腕を捕まれ部屋の中へ引き込まれてしまった。
 二人ともが部屋に入ると同時に、くるりと体ごと振り向いた相手にドキリと心臓が跳ねる。といってもトキメキとは程遠く、怒ったような怖い顔が近づいてくるのに耐えられずに、ギュッと目を閉じ身を竦ませた。
 背後でパタンとドアが閉じる音が聞こえて、相手が振り向いた理由はすぐにわかったものの、でも、ドアが閉じた後も目の前から彼が遠ざかる気配がない。だから閉じた目も、竦んだ体も、動かせないまま固まり続けていた。
「おいこら」
 目ぇ開けろよと促す言葉が降ってきて、仕方なく瞼を押し上げながら声がした位置へ顔を向ければ、思った通りに怖い顔をした相手に睨まれている。とても相手の顔を見上げてなんかいられず、すぐにまた俯いて視線を外してしまったが、その場から動くことはやはり出来なかった。身が竦み続けているからだけでなく、背後のドアと相手の体に挟まれていて、相手の両腕はこちらを閉じ込めるみたいにドアにつかれているせいでもある。
「一応聞くけど、風邪引いて熱出てるのに、約束したからって無理して来たわけじゃねぇんだよな?」
 すぐに俯いてしまったことを咎められることはなかったけれど、一応聞くと前置いたことや口調から、こちらの様子のおかしさを風邪などと思っていないのは明白だ。
「ち、がう」
「わかった」
 何がわかったんだろうという疑問は、顎に触れてきた手に上向かされると同時に唇に齧りつかれて、あっという間に霧散した。
 抜きあう最中に興奮して、口の中を探り合うような深いキスをしたことはある。けれど抜き合う前に交わすキスは、特に最初の一回は、優しく唇が触れ合うだけのものばかりだったから、強引に唇を割って入り込んだ舌が好き勝手に口の中を舐め荒らしていくことに恐怖する。なのにそれと同時に、期待と歓喜が身の内で膨らんでいくのがわかった。
 何が相手を誘発したのかわからないけれど、このまま相手の興奮を煽っていけば、きっと抱いて貰えるはずだ。
 少々激しすぎるけれど。それを怖いと思う気持ちもあるけど。
 それでも相手のキスに身を委ねるように、徐々に体から力を抜いていく。この激しさも、深いキスだけ与えられるのも初めてだけど、諸々の仕込みも手伝ってか、意識を向ければちゃんと気持ちが良い。
 最初の恐怖が薄れて、気持ちが良いばかりになって、キスから開放された時には腰が抜けてへたりこみそうなほど感じていて、相手の腕に抱えられてどうにか立っているような有様になっていた。

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ここがオメガバースの世界なら(目次)

キャラ名ありません。全16話。
隣に住む同じ年の幼馴染で高校生。
受けが腐男子。中学時代から攻めが好きでBLを読むようになった。
2歳年上な攻めの姉が腐女子で、受けが同じ高校に入学してきたことで腐友になる。攻めの姉は受けが弟を好きだと、腐友になる前から知っている。
ここがオメガバースの世界なら、という腐トークを聞いてしまった攻めが受けは姉狙いと勘違いし、妨害する気で受けの項を噛んだために仮想の番が成立。
そんな二人が恋人として付き合うまでの話ですが、双方とも自分たちが両想いだとは気づいてません。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
視点が途中で何度か交代しているので、タイトル横に(受)(攻)を記載しています。
途中、互いに抜きあう関係になりますが、性的な描写はありません。

1話 腐友とお茶会(受)
2話 闖入者(受)
3話 告白なんてしてない(受)
4話 Ωとして当然の選択(受)
5話 噛んでもいいよ(受)
6話 高校2年の夏の初め(攻)
7話 退院(攻)
8話 姉からの荷物(攻)
9話 読書(攻)
10話 アルファの振る舞い(攻)
11話 想い人の腕の中(受)
12話 手を出す、の意味(受)
13話 拒絶なんてできない(受)
14話 後ろめたい関係(攻)
15話 衝動で奪うキス(攻)
16話 本当には番じゃないから恋人に(受)

続編「オメガバースごっこ」目次へ→

 
 
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