罰ゲーム後・先輩受2

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 お前どこまであいつに本気なのと、割合真剣な口調で聞かれたのは、二週間学食奢りの最終日である土曜のランチタイムだった。
 バスケ部の彼らはこの後部活で、自分はいつも通り教室に戻ってそれが終わるのを待つ予定だ。もちろんここに居る誰かを待つのではなく、正式に恋人となった男を待つためだけれども。
 つまりここに居る彼らは、自分よりも恋人であるバスケ部後輩のほうが付き合いが深い。ほとんどが中学時代にバスケを通じて知り合った顔見知りという感じで、はっきり友人なのは今もクラスが同じ一人だけだからだ。
 全く面識のなかった一年生男子と、知り合ってから一ヶ月足らずでごっこのつかない恋人になってしまったのは、彼らが仕組んで始めた罰ゲームがキッカケなわけだし、彼らからすれば、大事な期待の新入部員が自分たちのせいでヤバイ男に引っかかってしまった的な捉え方をしていてもおかしくない。というか多分その認識は間違ってない。
 だからもし、自分たちの交際に真っ向から反対してくる誰かが居るとしたら、彼らだろうと思ってはいた。いまのところ交際をぶち壊す気満々の敵意は感じていないけれど。
 今このタイミングなのは、来週からは揃って昼飯を食べることもなくなるから、その前に色々はっきりさせて置こうという感じなのかもしれない。
「どこまで、って、普通に本気でお付き合いしてるけど。というかこれ言うの二回目じゃない?」
 恋人宣言のあった日のランチタイムも、同様の質問をされていた。もちろんあの時も、本気で恋人になるよと返したはずだ。ただ、彼らの真剣さは格段に違うこともわかってはいる。あの時はほとんどが冷やかしで、大半が遊びの延長と思って言っているようだった。
 この様子だと、女の子の恋人と過ごすよりも気の合う後輩とつるんでる方が楽しいから女の子からの告白避けに恋人になっちゃいました、という誤解は解けてしまったか、もしくは疑う程度には真実が見えてきたんだろう。
 交際宣言から一週間と半分ほどが経過しているが、それが早いのか遅いのかはわからない。こちらからすれば、恋人となったのだから恋人として接しているというだけなのだけれど、罰ゲーム中には見せなかったような姿も一部晒しているようで、それが各所に波紋を呼んでいるらしいのは知っていた。
 ただ、罰ゲームじゃなくなったからと言って、元々学年も違う相手と校内でそうそうイチャつけるわけもなく、何を指して言われているかは若干不明でもある。そもそも、憶測で膨らんだ噂もあるに決まってる。
 しかも情報源は恋人なので、かなり厚めのフィルター越しに情報が伝わっている可能性も高かった。だって正直、自分自身の噂なんてどうでもいいのだ。ただそれが恋人になった相手へ向かうのはやはり申し訳ないと思うから、自分と恋人となったことで嫌な思いをしていないか尋ねていると言うだけで。
「それってさ、今までの彼女と扱い一緒って意味であってる?」
「一緒……ではない、かなぁ。さすがに男の恋人は俺も初めてだし、あっさり振られないように慎重にはなってる」
 周りに何か言われてないかと気にかけるのだって、その一つだと思う。今までの彼女相手なら、自分と付き合うことで何か言われるの込みで告白してきたんでしょってスタンスだった。
「でも校内でキスとかしてるって、噂になってんぞ」
「あー……まぁ、したいって言われて断る理由もないかなって、思って」
 認めれば、事実かよと何人かが項垂れたので苦笑する。
 あいつなら男相手でも校内でキスくらい平気でするだろって思われての、証拠なんてない、完全に単なる噂だったんだろう。そんな気はしていたから否定しても良かったんだけど、でも、事実か嘘かで言えば事実ではある。
 だって平日に家に寄って貰うことはないから、別れ際の駅前に高身長の制服男子二人がイチャツイてる姿を晒すより、自分たちが恋人として付き合っているという事実がそこそこ広まっている校内でイチャツクほうがまだましだろと思うのだ。
 なお彼女相手にはちょっと触れる程度のキスに、場所なんてものを考慮したことはほとんどない。学校から駅までの道のりだって、手を繋いだり肩を抱いたりとそれなりにスキンシップが取れていた。
 だから正直、校内でちょっとキスする程度じゃ、全然足りないくらいなんだけど。あまり派手にイチャツイて余計な噂が立つのも嫌で、これでも我慢してる方なんだけど。らしくなく慎重なのは、相手にそれだけ本気ってことだと自分では思ってるんだけど。
 いやでもそう思うと、ごっこではなく正式に恋人となったことで、相手に対するスキンシップ欲求は格段に上がっているようだ。罰ゲーム中も週末家の中で何度もハグして貰っていたけれど、校内で、家にいる時のように抱きしめて欲しいなんて思ったことは一度もなかった。
 罰ゲーム開始からずっと変わらず、部活終わりに教室まで迎えに来た相手が、自分たち以外誰もいない静かな教室で、キスしていいですかと初めて言ったのはいつだった?
 初めて恋人として週末を過ごした後の、今週月曜日だったはずだ。キスしていいかと聞かれたのは初日だけで、それから毎日、教室を出る前に軽いキスを一つ落としてくる。
 甘えたいの内容が、キスしてではなくキスしたいだった過去があったから、甘えられているのかと思っていたけれど、どうやらそれは勘違いだったらしい。

続きました→

 
 
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罰ゲーム後・先輩受1

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 罰ゲームを開始して一ヶ月経過した日の一限終了後、最初のあの日を真似たのか、わざわざこちらの教室まで尋ねてきた相手は、これで罰ゲームは終了でいいですよねと聞いてきた。
 こちらがいいよと返す前に、罰ゲーム期間は最低一ヶ月であって、上手く行ってるなら別に続けてたって良いんだぞと横槍を入れてきたのは、同じクラスのバスケ部員でこの罰ゲームを仕組んだうちの一人でもある。
「はい。だから、終わるのは罰ゲームだけっす」
「ん? どういうこと?」
 不思議そうな顔をするバスケ部員からこちらに向き直り、真っ直ぐに見据えてくる真剣な顔から、彼の思惑ははっきりと伝わっていた。罰ゲームを終えたら本気の告白をしに行く、とは言われていたのだから当然だ。ただ、教室でどうどうと、あえて周囲に聞かせるような告白をする、などとはもちろん聞いていない。
「一応聞くけど、時と場所とを選んで、この状況?」
「そぉっす」
 考えなしに突っ走るようなタイプではないのは、一ヶ月の恋人ごっこ期間で重々承知していたけれど、はっきりきっぱり肯定されて苦笑した。
 きちんと考えた結果ならいい。彼とごっこの付かない恋人となる覚悟はとうに出来ている。
 今更どんな噂がたとうと気にはしないし、周りにはっきりと知らせてしまったほうが減る面倒事もあるだろう。逆に増える面倒事もありそうだけれど。
「じゃあどうぞ」
「好きです。今度は罰ゲームとしてじゃなく、俺と、付き合って下さい」
 促せば、あの日と同じようによく通る大きな声が教室内に響いた。ざわつきがピタリとおさまり、シンと静まり返ってしまった教室内では、多分ほとんどの生徒が自分の返答を待っている。
「いいよ。じゃあ今度はちゃんと恋人として、宜しく」
 瞬間、教室内に喧騒が戻った。ぎゃーとかマジかとかの声は、明らかにこちらの返答に対する反応だろう。
「おいおいおい。マジかよ。罰ゲームで本気になったとかあんの? え、男同士で?」
 はっきりと声を掛けてきたのは、もちろんすぐ傍らでこの告白劇を見ていたバスケ部員の友人だ。
「まぁ実際、罰ゲームうまく行ってたからね。なんとなくダラダラ罰ゲーム続けるより、恋人になるならなっちゃってもいいかなって」
「いやいやだってお前、罰ゲームの恋人と本気の恋人って違っ……わない、のか?」
「そりゃ違うでしょ。恋人は恋人だからね。罰ゲームで仕方なく一緒にいるわけじゃないからね。こいつと破局するまでは他の告白は受けないよって、周りに知っててもらうのは悪くないかなって思って」
「いやそーゆーの聞いてるわけじゃなくて。あ、でも、これがお前らのパフォーマンスなのはわかった」
「じゃ、そゆわけなんで、今後も宜しくお願いしまっす」
 その宜しくはどちらかというと自分よりもバスケ部の先輩宛という気がしたが、晴れて恋人となった相手を放置で話す自分たちへ一度深々と頭を下げてから、彼は次の授業があるのでと言って教室を出ていった。
「あっけねー。つかあれ、本気の告白して、本気で好きな人と恋人になりました、って態度じゃなくね?」
「そうかな?」
 教室での告白を許可して、皆の前で恋人宣言したことを、結構嬉しそうにしていたと思うんだけれど。いやでも平然を装っている感じはあったかもしれない。
 結果的に、このバスケ部友人は完全に暫く女の恋人は要らないというパフォーマンスと受け取ったようだし、それが彼の狙いだったなら大成功じゃないか。でもそう思うと、ちょっとだけ何かが悔しい。
 だってお互いちゃんと、恋愛をするつもりで恋人になったのだから。決して、男同士つるむのが気楽でいい、なんて気持ちで恋人になったわけじゃない。
「まぁでも罰ゲームは確かに終了で、恋人は恋人だから」
 少しばかりムキになって告げれば、それはわかったからと軽くいなされますます冷静さが失われていく気がする。キスもするし抜き合うし、それ以上のことだってちょっと狙ってるくらい、本気で恋人なんだけど。と口に出しかけた所で、さすがにマズイとどうにか言葉を飲み込んだ。
 本気で男同士で恋人になりました、というよりは、気が合う後輩と親しくしてるのが楽だから暫く女の子とお付き合いする気はないです、って思われていたほうが絶対いいに決まってる。

続きました→

 
 
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Wバツゲーム(目次)

キャラ名ありません。全18話。
帰宅部の高校3年生(視点の主)とバスケ部の高校1年生がそれぞれの罰ゲームにより一ヶ月ほど恋人ごっこする話。
手で抜き合う程度の事はしてますが、繋がるセックスなし。
今のところ書く予定はありませんが、罰ゲーム終了後、先輩×後輩と後輩×先輩のどっちにも進めそうな感じにしたくて、受攻もやっとしたエッチしてます。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してありますが、全体的に描写は控えめです。

1話 二人の罰ゲーム
2話 自己紹介
3話 土曜の夜は後輩の手料理
4話 何を聞かされた?
5話 罰ゲームでどこまでするの?
6話 過去の彼女と噂と真相
7話 後輩の下心
8話 週末はバスケット
9話 もうすぐ罰ゲーム終了
10話 寂しい理由
11話 どこまで出来るか試したい
12話 まずはキス
13話 胸を弄る
14話 本気で好きになるつもり
15話 胸を弄られる
16話 脱いでベッドへ(R-18)
17話 恋人になって欲しい(R-18)
18話 互いに相手の手の中へ(R-18)

恋人になった二人が、後輩×先輩で繋がる続きができました。
続編 罰ゲーム後

 
 
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Wバツゲーム18(終)

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 軽く流してしまってはいけない類の大事な話をされていたと思うのに、ゆるゆるとしたものから段々とイかせる目的へと変化した手の動きによって、彼の言葉について考える余裕なんて欠片もない。自分だけ先に達してしまう事態にはならないよう、必死にこちらも手を動かし、先程よりずっと強い刺激を送ってやる。
 互いに吐き出す熱い息も荒くなって、どちらも限界が近そうだ。
「イキそ、……っす」
 訴える声も熱を孕んで、切羽詰まった様子が酷く色っぽい。
「ん、いいよ。俺も、イク」
 頷いて、吐精を促すように弄ってやれば、息を詰めるような吐息とともに手の平が彼の吐き出したもので汚れた。それに誘われるようにして、自分もまた彼の手の中に吐精する。
 一度大きく息を吐きだして、後は互いの呼吸が落ち着くのを待つつもりだったが、のそりと起き上がった彼がさっさとティッシュの箱を引き寄せた。
 無言のまま、まずは彼自身の汚れた手を拭いて、それからやはり無言のままぼんやりとそれを見ていたこちらの手を取り、こちらの手の汚れも拭き取ってくれる。甲斐甲斐しいなとは思うが、それよりもうちょっと余韻があっても良かった。
 それとも吐き出して冷静になったら、さっさと汚れを拭き取らなければ気持ちが悪いと思ってしまっただろうか。
「夕飯、温め直していいっすか?」
 今にも立ち上がりそうな相手に、情緒がないのか元気なだけか、多分両方だなと思いながら苦笑する。
「その前に聞かせて欲しいんだけど」
「何っすか」
「俺としてみてどうだった? イッて賢者モード入ってるだろう今の正直な気持ちは?」
 まだ俺と恋人になりたいって思ってくれてるかと聞けば、先輩はどうなんすかと聞き返されてしまった。
「お前が告白してくれたらいいなって、思ってるよ。ちゃんと恋人になって、もっと色々お前としてみたい。もちろん、お前が出来る範囲ででいいんだけど」
「俺も、先輩の恋人になりたいって、ちゃんと思ったままっす」
「じゃ、夕飯温め直すより先に、はいここ」
「えっ?」
 ニコッと笑いながら、彼が横になっていたスペースをポンポンと叩けば、不審げな顔をする。
「お前帰らなきゃいけないのわかってるし、五分でいいから。イッてスッキリしてるのお互い様だし、男同士ならこういうの必要ないのかとも思うけど、やっぱ終わってすぐさっさとベッド出て行かれたら寂しいかなって思って。恋人、って考えたらさ」
「ああ、はい」
 頷いてすぐに隣に戻ってきた相手の体を引き寄せようとして、女の子と違って大きな体に結局、自分が擦り寄ってくっついた。片腕で相手の背を抱けば、同じように抱き返される。
 抱っこして貰う時にはポンポンと背を叩かれることが多いので、それを真似て背を叩けば、どこか戸惑った声が聞こえてきた。
「あの、これって」
「うん、何?」
「俺、甘やかされてるんすか? それとも、これも甘えられてる、……んすかね?」
「どっちだと思うの?」
「甘えられてるみたいに感じるから、なんかオカシイかなって」
 確かにこちらの動作だけ見れば、甘やかしているように見えるだろう。でも甘えられてると感じる彼の感性がオカシイとは思わない。引き止めて擦り寄って行為の余韻を欲しがっているのはこちらなのだから、それを甘えと言わずなんというのか。
「じゃあ甘えてる。オカシクないよ」
 背を叩くのを止めて、抱きつくようにきゅっと腕に力を込めた。
「でもお前を甘やかしてやりたいって気持ちもあるから、いつかお前も甘えてね」
 そうだ。この可愛い後輩を、甘やかしてやりたいのだ。甘えるばかりではなく、彼にも甘えてほしいなと思う気持ちはどんどん大きくなっている。
「それ、いつかじゃなく今でもいいんすよね?」
「もちろん。何して欲しい?」
 いったいどんな風に甘えてくるんだろうとワクワクしていたら、して欲しいのではなく、キスがしたいと返ってきた。そういえばキスもこちらからするばかりだったっけ。
 いいよと言えば、背に回っていた腕がスルッと背中から肩を回って頬を撫で、最後に軽く顎を支える。元々近い顔が更に近づいて、ちゅっちゅと軽いキスが何度も唇に押し当てられた。
 それはやがて唇から離れ、顔中アチコチにキスの雨が降る。なんだか随分とこそばゆい。甘えさせて欲しいと言われて許可したはずのキスで、結局は甘やかされているようだった。
 男だし、甘え慣れてないのかもしれない。自分だって、彼の抱っこに慣れて、自分からねだるようになるまでそこそこ時間が掛かった。
 恋人になってこちらが甘やかす時間を増やせば、いずれは彼も甘やかされることに慣れるのかもしれない。
 ああ早くこの罰ゲームが終わればいいのにと、たくさんの優しいキスを受けながら思った。

<終>

罰ゲーム終了後、先輩×後輩と後輩×先輩どちらにもなれそうな関係を目指してたら、こんな感じになりました。最後までお付き合いどうもありがとうございました〜

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Wバツゲーム17

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 口でして貰う気持ちよさを思えば、してやりたいし、して欲しいと思う。けれどやってみないと出来るかわからないと言っていた事を、今試してしまうのはどうだろう?
 後追いしてくるから、こちらが咥えれば相手だって張り合って、取り敢えず口でしてくれるのはわかっている。でも無理をさせたいわけじゃない。
「先輩?」
 余裕なんてなさそうなのに、こちらの逡巡を感じ取ったらしい相手が、どうしたのかと問いたげに見つめてくる。
「ゴメンね」
 謝れば不思議そうな顔をするから、こちらも首を少しばかり傾げてやった。
「他のことに意識散らしてるの気付いて、それを咎めたわけじゃないの?」
「何、考えてたんすか」
 硬い声は掠れかけたうえに緊張が滲んでいる。試されている側と言っていたから、ダメ出しでもされると思っているんだろうか。
「他のことって言っても、結局はお前のことなんだよ。ちょっと、どうすればもっと一緒に気持ちよくなれるか、考えてただけ」
「やっぱ、もの足りないてこと、すよね」
 はぁと熱くこぼれた息はため息にも似ている。ああ、失敗した。
「ちっがう、って。メチャクチャきもちぃしお前可愛いし、もっとアレコレ色々してみたいけど、お前に無理させたいわけじゃないし、お前に引かれたくないの。俺の恋人になるのは無理だって思われたくないの」
「それ、まるで、俺に恋人になって欲しいみたい……っすよ」
「そうだよ。そう言ってるんだよ」
 言えば少しばかり大きく見開いた目を、パシパシと何度か瞬かせる。それから嬉しそうに、おかしそうに、顔を綻ばせながらクッと喉の奥で笑った。
「先輩って、可愛いっすよね」
「は?」
 脈略がなさすぎてすぐに反応ができずにいたら、相手はますます楽しげだ。
「なりますよ、恋人に。一ヶ月経ったら本気の告白しに行くんで、そしたら罰ゲーム終わらせて、俺をごっこじゃない恋人に、して下さい」
「それは、もちろん。でもお試しは? まさかここで中断とか言わないよな?」
 とっくに互いの手は止まっていたけれど、だからって自分の手の中のものが萎えていないのも、相手の手の中にある自分自身の勢いが衰えていないこともわかっている。
「さすがにここで中断はお互い辛すぎじゃないっすか?」
「んぅっ」
 くちゅっと尖端を指の腹で擦られて、一瞬だけ息を詰めた。
「先輩俺より全然エッチだし、したいこと全部出来るとはとても言えそうにないっすけど、でも、恋人になって欲しいって事は、俺が出来る範囲で満足してくれる気でいるんすよね?」
「うん。というか俺、エッチなことさせてくれないからって理由で、彼女に別れてもらった事なんてないんだけど……」
 逆はある。挿れてくれないのは愛されていないからだと判断されて振られる事はあった。あまりに求められたら、変な既成事実を作られる前に、応じられないと言って別れを切り出すこともあった。でも基本的には振るより振られる方が断然多い。
「別れてって言わないことと、お前じゃ満足できないって思わないことは、イコールじゃないっすよ。先輩に振ったつもりがなくても、別れるといい出すのが相手側でも、それって結局、先輩が振ってるのと変わりないと思うんすよね」
 そんなことは考えたことがなかった。言われてドキリと、心臓が嫌な感じに跳ねる。
「先輩を好きって思ってたら、それに気付いて恋人続けられなくなる人が居るの、わかる気がするんすよ。というかきっと俺は、そうなるタイプっす」
「そ、……っか」
 辛うじて吐き出した声ははっきりと掠れていた。相手は責めてるわけじゃないっすけどと苦笑してみせる。
「先輩は優しいっすけど、それは特別な一人に対してだけじゃなくて、誰にでも同じように優しいんすよね。先輩が恋人とあまり長く続かないの、相手が誰でもいいの隠さないからってのも、理由の一つなのわかってます?」
「それは、まぁ」
「誰でもいいなら俺でもいいっすよね。とは思うんすけど、お前じゃ物足りないって態度を長く続けられたら俺のほうがダメになるのだけ、覚えてて下さい。これから俺は、先輩を本気で好きになるっすけど、自分の傷が深くなる前に離れようと思ってるくらいには、俺だって自分が大事なんで」
「わか、った」
「萎えるようなこと言ってすみません」
 続けていいっすかと言いながら、止まっていた手をゆるゆると動かし始める。ずっとこちらを追いかけるように動いていた手が、相手の意思で好き勝手に動き始めたことで、中断していた熱はあっと言う間に再燃した。

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Wバツゲーム16

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 相手が同じように脱いでいくのを、主に股間を注視しながら見守ってしまえば、さすがに見過ぎとのクレームが入る。いやだって、気になるだろ。
「ゴメン。デリカシーなさすぎた」
 それでも謝罪の言葉を吐き出し、自嘲を混ぜた苦笑を見せたのは、相手の頬が薄っすらと赤くなっていることに気付いたからだ。興奮よりも羞恥でという雰囲気に慌てたせいもある。
 今までの抱っこも先程のキスも、胸に触れて舐めるのでさえも平然と受け入れていたから、てっきり羞恥という感情とは無縁かと思っていた。恥ずかしがる姿なんて見たことがなくて、内心それなりに驚いていたし、その一方で喜んでもいた。
 期待や興奮の漏れ出る声を聞くことも、ほのかに頬を染め羞恥する姿を見ることも、楽しくて仕方がない。
「でも恥ずかしがる必要なんてなさそうなのに。というか立派すぎない?」
 謝罪して苦笑しながらもそこから視線を外せなかったのは、下着の中からボロンと出てきた彼のペニスを目にしてしまったからだ。
「わー、これ、ちょっとショックかも。身長ほぼ変わんないのに、お前のが明らかにデカイよね」
 服越しでは自分との違いなんてわからなかったし、そこまで大きな差があるわけではない。それでも絶対彼のほうが大きいと思う程度には立派なものが、彼の股の間で勃ち上がっている。
「大きけりゃいいってもんじゃないっす」
「早漏なの? もしくは感度悪くてめちゃくちゃ遅い方?」
「人と比べたことないんでわかりません」
 からかう口調で聞けば、ますます気を悪くした様子の、苛ついた声が吐き出されてきた。見過ぎと咎められたのも結局口先で謝っただけで視線が外せていないままだし、立派と思うのはこちらの主観でしかないのはわかっているし、どうも何がしかのコンプレックス持ちらしいから、これ以上この件に触れるのは止めた方が良さそうだ。
「うん。俺もない。ま、お前がどっちでも大丈夫だからベッド乗って。それとも立ったままのが興奮する?」
 触っていいかと聞いたらベッドへと返ってきたので、頷いてすぐ隣に置かれたベッドに転がり、脇のスペースをぽんぽんと叩いて同じように横になるよう促した。
「もっかい、キスしようか」
 素直に横へ転がった相手に擦り寄って、顔を寄せながら甘やかに誘う。
 早く触れたいと急く気持ちはもちろんあった。内心にそんなギラつく欲望が渦巻いているのを自覚していたが、当然そんなものを顔に出すわけがない。
 だってもう、こちらの気持ちは決まっているのだ。求めすぎて応じられないと思われるわけにはいかない。気持ちよく満足しあって、これなら恋人としてもやっていけると思ってもらわないと困る。罰ゲームを終えた後に、告白して貰う気満々だった。
 はいと頷くのを待って唇を塞ぐ。先程気持ち良いと言ってもらえたキスを、再度惜しみなく与えてやる。そうしながらも空いた手を彼の性器に絡ませれば、一度大きく体を跳ねた後、相手もこちらの性器へ手を伸ばしてきた。
 最初は自分が感じるやり方で、だんだん相手の反応が大きな場所を重点的に、ゆるゆると撫でて擦って扱いてやる。刺激に弱いわけではないようで、簡単にイッてしまうということはなかった。かといって感度が悪いわけでもなさそうで、与える刺激にビクビク震えながらトプトプと先走りを零し、キスの途切れた口からは熱い息を吐き出している。
 たまらなく可愛いと思うのは、こちらが相手の反応に合わせて手の動きを変えているのに対し、相手はこちらの動きを後追いしている点だろう。胸に触れられた時もそうだった。童貞ではなくても、やはりそう経験があるわけではないのだろう。
「気持ちよさそ。可愛いね」
「先輩は? 気持ちよくないとか、言わないっすよね」
「もちろん。きもちぃよ。凄く」
「可愛いっすよ。先輩も」
 ふふっと笑いながら声を掛ければ、笑い返す余裕まではないもののしっかり張り合ってくる。本当に、可愛い。

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