今更嫌いになれないこと知ってるくせに2

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 食事は外食や弁当類に頼りっきりだと話したら、甥っ子は張り切って自分が作ると言った。飲み物と調味料程度しか入ってない小さな冷蔵庫と、一口コンロの小さなキッチンで、高校生男子に何が出来るというのか。しかし、いいから何も買わずに帰って来いと言われて帰宅すれば、小さなテーブルの上に所狭しと料理の皿が並んでいる。
 調理器具すらたいしたものは揃っていなかったはずなので、結局スーパーで買った惣菜を皿に出しただけだろうと思った。しかし口に入れて違うことに気づく。
「あっ、これ……」
「わかった? ばーちゃんの味。っつーかにーちゃん的にはオフクロの味? みたいな」
 そこですんなりそんな言葉が出てくるあたり、間違いなくこれは実家の味付けなんだと確信した。しかし意味がわからない。
「え、何お前、母さんに料理教わってんの?」
「色々とあって、簡単に作れそうなものだけ幾つか習った」
「色々ってなんだよ。しかもなんで母さんに」
「だってばーちゃんの味とうちの母さんの味って違うんだもん。にーちゃんに振る舞うこと考えたらばーちゃんに習わないと意味無いじゃん」
 どうよ懐かしい? なんて言いながらのドヤ顔に、嬉しいとか懐かしいとかではなく不信感が湧いた。親と喧嘩した衝動で家出してきたはずではないのか。
 眉間に力が入ったらしく、対面に座る甥は若干不安そうな顔になった。
「美味しくない?」
「そうじゃない。あざとい真似しやがってとは思うけど、確かに懐かしいし美味いよ。ただお前さ、ここ来たのって、まさか計画的?」
「あー……」
 しまったという顔をするから図星なんだろう。
「親と喧嘩して飛び出して、行くとこなくてここ来た、ってわけじゃないんだな?」
「進路で揉めてるのは本当。でも衝動で飛び出てきたわけじゃない。最初っから、夏休み入ったらここ押しかける気で計画立てたよ。計画って言っても、主に金銭的なものだけど」
 往復の交通費とある程度の食費は用意したけど、フライパンと鍋から買わなきゃならなかったのはちょっと予定外だったと言って、甥っ子はすねたように唇を尖らせる。
「ああ、食費……とフライパンと鍋な。金は後で渡すよ」
「やった。そう言ってくれると思ってた」
 うひひと笑う顔は、図体ばっかり大きくなっても、まだまだ子供っぽいあどけなさが残っていると思う。大学受験を控えた高校生相手に感じていい感情なのかは微妙かなと思わないでもないけれど、かなりホッとしたのも事実だった。
 自分が知る甥っ子は小学生の頃までが大半で、後は逃げきれなくて仕方なく実家に戻った際に顔を合わせた記憶しかないのだ。成長して突然やってきた現在の甥っ子は、記憶の中の甥っ子よりも記憶の中の義兄に近い。
 なるべくかつての関係を思い出すようにして接しているし、甥っ子自身が離れていた時間を感じさせない慣れ親しんだ態度を見せるおかげで、なんとか普通っぽい態度がとれているだけでしかない。実際の所は、ふとした瞬間に甥っ子相手にドキドキしっぱなしで、慌てて実家を離れた自分の大学受験期以上にヤバイ気配が濃厚だった。
 正直さっさと帰って欲しくてたまらない。距離をおいて心の奥底に封じ込めた、義兄への想いを刺激しないで欲しかった。
「つかその計画では何日ここ泊まる予定なんだよ。昨日泊まってわかったと思うけど、長期滞在なんて絶対無理だからな?」
「それはにーちゃん次第かな。答えが出るまでは帰らない」
「なんで俺次第なんだ。お前が出すのは自分の進路の答えだろ」
「まぁそうなんだけどさ」
 フッと黙り込んでうつむく顔の大人びた様子に、ああやっぱりこれは早々に追い出さないとかなりマズイと思って、否応なく高鳴る心臓に内心で舌打ちした。

続きました→

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今更嫌いになれないこと知ってるくせに1

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 10ほど年の離れた姉が二十歳に産んだ子供は、年の離れた弟のような気がしていた。だって自分と姉の年の差と同じだったから。
 家が近かったのもあって、精一杯アニキ風を吹かせながら、確かにその甥っ子をめちゃくちゃ愛してきた自覚はある。小さな頃は本当に見た目も仕草もなにもかもが可愛かった。
 これはまずいと気づいたのは自分が高校生の頃で、大学受験などを理由に彼との距離をいっきに離した上、そのまま遠方の大学に進学して逃げてしまったが、正直に言えば彼には一切落ち度はない。もっと正直に言うなら、逃げたのは彼からではなかった。彼の父親である義兄から逃げたのだ。
 義兄を恋愛的な意味で好きなのだと気づいてしまったら、甥っ子は甥であるより先に、好きな人の息子になってしまった。まだ小学生の無邪気な彼の中にまで、義兄の面影を見てしまうなんて重症すぎる。
 義兄には手が出せなくても、懐いてくれる甥っ子になら簡単に触れられる。それどころか向こうから抱きついてくる事だってある。そんな事でグラグラと理性が揺れる自分が心底怖かった。
 就職ももちろん、大学ほどではないが実家からそこそこ離れた場所に決めたし、在学中も卒業後もなるべく帰省はしていない。なのにある日いきなり、自宅に甥っ子が押しかけてきた。
 心臓が止まりかけるほど驚いたのは、成長した甥っ子の姿が、もう随分と昔、姉の恋人として初めて出会った頃の義兄にそっくりだったからだ。玄関扉を開けたまま硬直していたら、しばらく泊めてとぶっきらぼうに吐き捨てた後、いささか強引に自宅にあがり込まれてしまった。
 勝手に奥の部屋へと向かう背中を慌てて追いかける。
「えっ、ちょっ、待てよ。なんでいきなり? 学校は? いやそれより姉さんは知ってんの?」
 気まずそうに黙ったままなので、これはもしかしなくても家出だろうか?
「黙って出てきたのか?」
 やはり沈黙で返されて溜息を吐き出した。
「自分で言えないなら俺が電話するぞ」
「しばらく泊めるから心配しないで、って言ってくれる?」
「言うわけ無いだろ。明日追い返すって言うよ」
「学校なら昨日から夏休み入ったよ。だからしばらく泊めてよ」
「お前が夏休みでも俺は普通に仕事あるの。子供の面倒見てる余裕なんてねーの。ついでに言うなら、大人顔負けに育った子供の寝るスペースもねーよ」
「にーちゃん、お願い」
 にーちゃんと呼ばれてグッと言葉に詰まる。そう呼ばせて喜んでいたのは幼いころの自分だからだ。そしてやはりそう呼ばれると、心の奥が疼いてしまう。きっと自分の中のどこかに、彼の兄を本気でやっていた頃の思い出が染み付いている。
「俺はお前の叔父であって兄貴じゃない」
「わかってるよ。でも俺が本当に困ったときは、助けてくれるんじゃなかったの?」
 本当の兄じゃなくても兄代わりで、血だって繋がった叔父なのだから、困ったときは何でも言え。なんてことを言ったのもやはり随分と昔のことだけれど、何度も繰り返したせいで、もちろん自分も忘れてはいない。
「黙って家を出てくるような悪い子に、無条件で味方するわけ無いだろ」
 甥っ子は少しだけ考えた後、進路で喧嘩してるのだと口にした。どうやらそれが家出の原因、ということらしい。
「でも責任の一端はにーちゃんにもあるんだからな」
「なんで俺?」
「大学入ったら全然こっち帰ってこなくなったじゃん。大学はもう少し遠かったけど、今は片道2時間くらいでそこまで遠くもないのにさ。俺までそうなったら嫌だから自宅から通えるとこに進学しろってうるさい」
「それで俺んとこ逃げ込まれたら、俺がますます姉さんに恨まれるだろ。てかそれ言ってんのお前の母さんでいいんだよな? 父親はなんて言ってんだよ」
「父さんも出来れば自宅から通えるところにと思ってるっぽいけど、理由は仕送り関係がでかいっぽいから、奨学金借りてバイトしてやりくりするって覚悟見せたら多分そこまで反対しない」
「いやいやいや。奨学金って借金だからな? なくて済むならない方が絶対いいぞ」
「それでも譲れないことがあんの」
「それって何? どうしてもそこじゃなきゃ学べない大学とかあるなら、姉さんだって納得するんじゃないか? ちゃんと話しあったのか?」
「それも含めてちょっと考えたいことあるからしばらく泊めて。答えが出たら帰るから」
 夏だしその辺の床で寝るんで構わないからとまで言われてしまったら、もともと甘やかしまくってた愛しい甥っ子をムリヤリ追い返せはしない。
 結局、しばらく泊めるから心配いらないという電話を姉に入れる羽目になった。

続きました→

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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった(目次)

日々投稿する小ネタのつもりで書いたもので、正直こんなに長く書く予定がまるでなかったものなので、キャラの名前は一切出てきません。途中けっこう後悔しました。でも名前つけて出すタイミングがわかりませんでした。
彼だのあいつだのが誰を指すのか、わかりにくい可能性があります。読みにくかったらすみません。
 
登場人物は 視点の主・親友・クラスメイト の3人です。
親友に彼女が出来たさい、親友に片思いしている主にクラスメイトが、やらせるなら慰めてやると代理セックスのお誘い。
行為を重ねるうちに主の気持ちは親友からクラスメイトへ移っていくが、好きになったとはいえずに親友が好きな振りを続けてしまう。
そんな主ですが、最終的にはクラスメイトと恋人になります。

下記タイトルは内容に合わせたものを簡単に付けてあります。
なお、シリーズに移すにあたって、「色々コネタ」「R-18コネタ」のカテゴリは外しました。「R-18コネタ」で投稿したものに関しては、タイトル横に(R-18)と記載してあります。
タグもこの目次頁に一括して載せ、各頁のものは外してあります。

12月31日追記。
続編「大学生になったら親友にも彼氏ができたかもしれない」(全2話)追加しました。

1話 おかしな誘いに応じる
2話 始める前の確認
3話 キスだけでもう気持ちが良い
4話 手と口で(R-18)
5話 重ねる行為に情がわく(R-18)
6話 親友に気付かれて話し合い
7話 親友の応援
8話 クラスメイトからの告白
9話 気持ちの確認
10話 恋人同士のH(R-18)

< 続編 >
大学生になったら親友にも彼氏が出来たかもしれない1
大学生になったら親友にも彼氏が出来たかもしれない2(終)

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった10(終)

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 今までも可愛いと言われながら触れられることは多々あって、恋人になったからといって、その言葉や響きに大きな変化があったわけじゃない。変わってしまったのはその言葉を受け取る自分自身だ。
「ん……、ふっぁ…ぁ……」
 薄いインナーシャツの上から両胸の先をいじられるだけでも、熱い吐息が抑えられない。胸の先がしびれるように疼いて、連動するように、触れられても居ないペニスの先まで疼いてしまう。
「胸だけでそんなに感じて、相変わらず可愛いな」
 少し楽しげに、そしてどこか嬉しげに笑む顔は優しい。この表情だって、前とそんなに変わったわけじゃない。ただ、気づけることが増えたのだ。
 そういえば、最初は楽しげだとか嬉しげだとかという表情だって、読み取れはしなかった。こちらにそんな余裕がなかったのもあるが、目の前の男はあまり感情表現が豊かではないせいが大きい。
 なのに今はどうだろう。可愛いという言葉の響きの中に、柔らかに笑む瞳の中に、愛しくてたまらないといった彼の感情が溢れているのを感じるようになった。パッとはわかりにくい彼の感情表現にも、ずいぶんと慣れてきたたようだ。
 嬉しくて、けれどまだ少し恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じるから、きっと赤面しているんだろう。
「いや、最近はますます可愛くなったか」
「だ、って、お前が……」
「俺が?」
「俺のこと、すごく好きって、わかるから」
「隠すのをやめたからな」
 好きだよと続く言葉に、やはり嬉しさ半分照れくささ半分。
「ねぇ、前は、本当に隠してた?」
「どういう意味だ?」
「好きって言ってくれるようになった以外、実はそんなに変わってない。気もして」
 気づこうとしなかっただけで、前からずっと、愛しいという気持ちで触れてくれていたに違いない。それを「優しい」という一括りにして、目をそらしていただけなんだろう。そのほうが都合が良くて、なにより彼と向き合うのを怖がっていたから。
「まぁ、最初からお前が好きで誘ったし、途中で気持ちが変わったわけではないからな」
「ずっと、気付かなくてゴメン。お前だって辛かったろ?」
 別の相手を好きだと言い続ける相手を、ずっと優しい態度で抱き続けてきたのだ。
「それを気にされると困るな。人がいいのもお前の魅力の一つではあるが、俺はお前の弱みに付け込んだだけだぞ」
 感度の良さと快楽への弱さは嬉しい誤算だったが、と続けながらシャツをまくり上げられ、胸の先を直に摘まれて捏ねられた。
「ぁああっっ」
 油断して上げてしまった大きな声が恥ずかしいが、相手はしてやったりと満足気だ。
 そのまま胸の先を緩急をつけつつクリクリと摘まれ続ければ、既に張り詰めたペニスの先から、トロリとこぼれる先走りを感じてしまう。
「ぁっ、あっ、ダメぇっ」
 その訴えに、彼はちらりと視線を下腹部へ落とす。
 シワになるからと制服のズボンは最初に脱いでいたので、きっと下着に広がる先走りのシミを見られてしまった。そう思うと体の熱が更に上がっていくのがわかる。自分で自分を追い詰めるような悪循環だった。
「このままイッてみないか?」
「ヤぁ、だっ」
「替えの下着はあるんだろう?」
 まだ恋人関係になる前、一度下着の中で果ててしまって以降は、確かに一応持参している。ただ、あの時は下着の上から握られ擦られたのが原因で、胸を弄られるだけでイきたくなんてなかった。
 両親共働きで案外家事スキルの高い相手は、汚してもまたウチで洗ってやるぞと言いながら刺激を強めてくるから困る。
「やっ、やぁっ、ダメ、ムリっ、むりだっ…て」
「仕方ないな」
 やめてもらえると思ってホッと息を吐いたその瞬間。
「あぁあっだめぇっっ」
 股間の膨らみをグリっと圧迫される刺激に、たまらず声を上げて果ててしまった。何が起きたかわからなくて呆然としていたら、汚れた下着を脱がされる。
「奥、触るぞ」
「今、何したの?」
「ん? ああ、膝で押した」
「ひざ……」
 そうか、あれは膝の刺激なのか。
「やだって言ったのに」
「だから胸だけでイかせるのは諦めた」
「ずるい……」
「言っただろう。もっとたくさんの快楽を刻みこんでやると」
 いつか胸の刺激だけでもイけるようになって貰うと宣言されて、今は触れられていない胸の先が、先ほどの刺激を思い出して疼いてしまうのだから、きっとそんな日もそう遠くなく訪れそうだ。
「お前から離れられないように?」
「そうだ」
「とっく、んあぁっ」
 とっくにそうなってる。と告げるより先に、ローションをまぶし終わった彼の指先に入口を掻かれて、別の声があがってしまう。
「お前が思うより、きっと俺は欲深い。この場所も、もっともっと気持ち良くしてやりたいが、しかし恋人になったことを後悔してる、などと言われるのも困るな」
「言わねーよ」
 即答したら、彼にしては珍しいほど、随分と嬉しげに笑われてマイッタなと思う。だって恋人になったら、なんだかだんだん相手が可愛くなってしまった。正確には、可愛いと感じるようになってしまった。
 だから、ぬるりと入り込んできた彼の指が与えてくれる、まだ緩やかな刺激に甘い吐息をこぼしながら。
「お前が好きだよ。お前こそ、もっともっと欲深く俺を求めて、俺なしじゃいられなくなればいいよ」
 告げたら中を弄る指の動きが止まった。驚いた様子でこちらを見下ろす呆然とした顔に笑いそうになる。というか笑った。
「本気だよ」
 笑いながらもダメ押しとばかりに本気を伝えれば、うっすらと相手の頬が色づいていくから困る。照れる彼なんて初めて見た。
 可愛いなぁという気持ちはどうやらそのままこぼれたらしく、ますます驚き照れさせてしまったので、彼が持ち直して行為が再開するまで少しばかり待たされたけれど、こんな風にまだ知らない彼を、これから先もたくさん知ることになるのだろうと思うと楽しみで仕方がない。この男と、恋人という関係に進めてほんとうに良かったと思った。

< 終 >
数話で終わるつもりだったのに、長々とお付き合いどうもありがとうございました。

続編ができました。続編を読む→

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった9

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 勢いで立ち上がってしまった後、落ち着くように言われて再度座り直し、そこから更にいろいろと話し合った。もちろん、互いの想いについてが主な話題だった。
 こちらの気持ちの変化はなんとなく感じていたものの、親友が好きだという態度を崩さなかったので、ずっと気づいていないふりをしてくれていたらしい。しかも、いつから好きだったのか聞いたら、あっさり声をかけた最初からだがと返ってきてなんとも言えない気持ちになった。彼はこちらの負担にならないようにと、ずっと自分の気持ちを隠していたようだ。
 確かに初めて触れられた時、あまりの優しさに好かれている可能性を考えた。最初に感じたあれは、どうやら間違いではなかったらしい。
 いつだって自分の都合のいいように解釈し、彼の気持ちを一度も確かめることをしなかったのは自分だ。なんてバカバカしい話だ。もっと早く確かめればよかった。
「お前を好きになったなんて言ったら、気持ちよさに気持ちが引きずられてるだけってか、こんな関係にあるからとか言われるんじゃって思ってた。関係解消したらそんな気持ちはなくなるだろうって言うかなって」
「実際それは間違ってないんじゃないのか?」
「それはそうかもだけど。だってこんな関係になってなかったら好きになりようがないだろ」
「そうだな」
「俺はさ、お前に好きって言えないことより、この関係をやめるって言われるのが嫌だった。気持ち隠してでも、お前に抱かれていたかった。臆病でごめん」
「いや、気持ちを隠していたのも、相手の気持を確かめずに居たのも、お互い様だろう」
「最初から俺を好きだったのに、俺の変化感じても俺の気持ち、確かめようとは思わなかったの?」
「確信があったわけではないからな」
 お前とそう変わらない臆病者で、それどころか、相手の弱みに付け込んで抱こうと考えるような下衆だと続けて、彼は自嘲気味に笑う。
「でもお前はずっと優しかったよ。無茶しなかったし、キモチイばっかだったもん」
「それも、無茶して嫌われたくなかっただけだ」
「じゃあさ、いつ、確信したの?」
 聞いたらあからさまに動揺されて、あまり感情を表に出さない彼にしては珍しくて驚いた。
「え、何? なんかヤバイこと聞いた?」
「あ、いや……それは、なんというか、少し後ろめたい事情が……」
 聞かれたくないことには触れないほうがいいのかとも思ったが、口ごもるというのもやはり珍しくてますます興味が湧いてしまう。
「なにそれめっちゃ気になる」
 彼は少し迷った後、わかったと言って立ち上がった。それからリビングの窓を開けて、こっちへ来いと誘う。
 促されてベランダに出れば、彼は手すりの向こうを指さして、わかるかと言った。そこにあったのは先日親友と話しこんだ公園だ。ここが2階というのもあってか想像以上に近い。
 マンション脇の公園というのは当然認識していたが、彼の家の位置などは頭になかった。しかも彼の部屋はリビングと反対側にあり、部屋から見える位置に公園はないのだ。

「え、嘘。俺らの声、聞こえた?」
「全部が聞こえていたわけじゃないが、それなりに」
 すまないと言って彼は律儀に深々と頭を下げる。
 怒る気にはならなかったが、それでもやはり、なんとなく恥ずかしい。あの日の会話を聞いて確信を持ったというなら、彼への想いを吐露した部分は聞かれているに違いないのだ。
「時々、お前が切なそうに泣いている理由が自分にあるとも、そこまで気持ちが育っているとも思ってなかった。だから俺も色々考えたんだ。お前があいつを好きだと言い続ける限り、このまま知らないふりを続けたほうがいいかどうか」
「そういうプレイかもしれないし?」
「完全に自覚があって、しかも既に抱きあう仲だというのに、好きだと言わない理由がわからなかったんだ。さっきまでは」
「けっこーくだらない理由で安心した?」
 彼とのエッチが気持ちよすぎて、自分の心よりも体の快楽を優先した結果だなんて、なんともしょうもない理由だという自覚はあって、照れ隠しに笑ってみせた。
「丁寧に慣らしたかいがあったな。とは正直少し思ったが、理由を知って逆に不安になったこともある」
「不安?」
「これから先も気持ちが良い思いはさせてやれるが、俺自身はさっきも言ったように、弱みに付け込んででも好きな相手に触れようとするゲスな面もあれば、こうして盗み聞きだってするような男だからな。こんな男はお前の本来のタイプとはだいぶ違うだろう?」
 確かに、親友と目の前の彼とでは随分と違う。似ているところがあるとすれば、自分に優しいところくらいだが、その優しさの表現はやはりだいぶ違っている。けれどどんな理由にしろ、好きだと思ってしまった気持ちは、いまさら変えようがないのだ。
「こんな話を聞いた後でも、まだ俺を好きだと言えるか?」
「言えるよ。好きだよ」
「お前の気持ちが肉体的快楽に引きずられたものである可能性が高くても、お前の想像とは真逆で、関係解消なんて欠片も考えないどころか、これから先もっとたくさんの快楽を刻みこんでやろうとか、それでますます俺から離れられなくなればいい。なんてことを考えていても?」
 もっとたくさんの快楽を刻み込んで、なんてセリフだけで、期待にドキドキしてしまう。それくらい、既にこちらの体は、彼によってイヤラシく作り変えられた後なのだ。
「いー、よ」
「では、もう一度言うが、お前が好きだ。恋人として付き合ってもらえるか?」
 今度はもちろん、嘘だなんて言わずに頷いてみせた。

続きました→

 
 
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親友に彼女が出来たらクラスメイトに抱かれる事になった8

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 その日だけで何人に真相を尋ねられただろうか。聞かれたものには正直に、自分たちの関係は変わらず親友だと返したけれど、憶測と噂はやはりじわりと広がっているようだった。
 彼女を追いかけていった親友が、そのまま彼女と険悪気味になっているらしいことも、聞いても居ないのに知らされた。それを、むしろチャンスじゃないかと囃し立てる、外野の気持ちはさっぱりわからない。自分のことで親友が彼女と揉めるだなんて、申し訳ない気持ちしかないのに。
 それとも、アイツが気づいていたように、親友を好きだった気持ちは周りにも知られていたって事だろうか?
 そんな不安がよぎりつつも、親友とその彼女は似合いのカップルだと思っているし、自分自身、恋人は居なくても好きな相手はいると告げてみた。しかし結局、無理はしなくていいだとか、その好きな相手ってのが親友なんだろうとか言われて辟易する。
 ついでに言えば、二人が付き合っても応援するだとか、男同士に偏見ないよだとか、実はあれだけ好き好き言ってて彼女を作った親友を許せないと思ってたとか、ここぞとばかりに寄せられる意見には苦笑するしかなかった。
 他人の言葉は無責任に自分勝手で、この状況を面白がられていることだけは確かだ。
 そんな中、アイツは何も言ってはこなかった。最近は教室内でもそこそこ一緒に居ることが増えていたのに、スッと距離を置かれた気がして内心焦る。
 放課後、話したいことがあるから一緒に帰ろうと誘えば、断られることはなく、しかも当たり前のように彼の自宅へ招かれた。けれど通されたのは彼の部屋ではなくリビングだ。
 なんとなくの成り行きで一緒に食事をしたこともあるので、リビングに入ったことがないとは言わないが、最初からずっと当たり前のように彼の部屋に直行だった分、それだけでもショックを受けている自分に気づいて泣きそうになる。この関係を終えたくはなかった。
 4人がけのダイニングテーブル向い合って座ると、その距離感がなんとも寂しい。二人の間のテーブルが、まるで彼の拒絶のようで、彼の顔を見ていられずに軽くうつむき話し始める。
「あいつとの噂のことなんだけど……」
「ただの噂で、親友は親友のまま、なんだろう?」
 誤解されているわけではなさそうでホッとする。
「そうだよ。だから俺らの関係、終わりにしようとか言わないで」
「あいつへの想いを紛らわせるために、これからも慰め続けて欲しいと」
「うん、そう」
「本当にそれでいいのか?」
「いいよ」
 即答したものの、どういう意味だと不安になった。
「てかさ、お前もチャンスだとか、思ってる?」
「まぁ、いい機会だという気はしている」
「でも俺、あいつと彼女の邪魔する気、一切ないよ」
 こわごわと尋ねてみたら肯定されて、返す声は震えてしまった。
「何の話だ」
「だから、チャンスだよ。あいつが彼女と揉めてるうちに、彼女からあいつを奪い返せって。奪い返すも何も、もともと親友で、今も親友なんだから、何も奪われてないのにさぁ」
「ああ……そういえばそんな話も聞こえていたような気がするな」
 机の位置はあまり近くないけれど、同じクラスなのだから、こちらの会話が届いていてもおかしくはない。しかしだとしたら、彼の言う機会とは何をさすんだろう?
「皆随分と好き勝手言っていたな」
「だよな。ホント、まいった」
「しかし的を得ていた言葉もあったろう」
「え、どれ?」
「好きなら好きだと本人にきちんと伝えないと意味が無い」
 確かに半分説教じみた感じに言われた記憶はある。たしか、恋人は居なくても好きな相手は居る、という話の時だっただろうか。
「それが言えてたら、そもそもお前に抱かれるような目にあってないだろ」
 苦笑しつつちらりと見てしまった彼の顔が、思いの外真剣でなんだか落ち着かない。彼の視線から逃げるように、ずっとややうつむき気味でいたのに、ますます頭が下がってしまう。
「顔を上げてくれないか」
 ビクリと体が震えるのがわかった。腿の上でぎゅっと拳を握りしめれば、優しく名前を呼ばれる。促されてゆっくりと顔をあげるものの、やはり真剣な彼の顔を直視できない。
 彼は困った様子で、わずかばかり苦笑したようだった。
「いまの俺達の関係を、本当にこのままの状態で続けたいか?」
「ダメ?」
「ダメではないが、辛くないのか」
「そりゃ辛いよ。言えるなら好きだってちゃんと本人に伝えたいし、恋人になれるなら恋人にだってなりたい」
 それは紛れもない本心で、けれど伝えたい相手はもちろん親友ではない。好きだと伝えたいのは目の前に居る彼だった。けれどそれを隠すための言葉を続ける。
「でも、仕方ないだろ。あいつは彼女が居て、俺はそれを邪魔したいわけじゃない」
「そういうプレイが燃える。などと言うなら黙っていたほうがいいかと迷っていたんだが、恋人になれるならなりたいとまで思っているなら、正直に言ってくれてもいいんじゃないか?」
「は? プレイ? 燃える? てか正直に言えって……」
 あれ? もしかして気持ちバレてる? などと焦るなか、彼は更にとんでもないことを言い出した。
「本当に好きな相手とは出来ないから、仕方なく好きでもない相手に抱かれる。というシチュエーションが気に入っているのかと……」
「えっ、いやいやいや。なんだそれっ」
「どうやら少し誤解していたらしい。恋人になりたい気持ちがあるなら、何もお前から言わせる必要もないな」
 俺から言おうと続けた後。
「お前が好きだ。誰かの代わりではなく、今度は恋人として、お前との関係を作り直したい」
「嘘だっ!」
 勢い良く立ち上がりながら叫べば、やはり酷く真剣な顔で、嘘じゃないと返された。

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