雷が怖いので プレイ2

1話戻る→   目次へ→

 口を開くと同時に、どうやら期待から舌を突き出していたらしい。甘やかに優しい顔を引っ込めて、楽しげにニヤついた相手の顔が眼前に迫り、わざとらしく舌を出して見せつけた後、ゆっくりとこちらの舌の上を舐めあげていくから、ようやく何を笑われたか気付いて羞恥が込み上げる。
 しかし慌てて舌を引っ込めようとすれば、簡単に絡め取られて逆に引き出され、パクリと食まれてしまう。柔らかに歯を立てられ、舌や唇で挟まれて擦るように舌の裏表をゆるりと撫でられ、痺れるみたいな快感が腰を中心に溜まっていく。
 閉じられない口の端から、んっ、んっ、と甘えるような息を漏らしながら、与えられるままうっとりとその刺激を享受した。
 気持ちが良い。胸の内からとろりと溶かされるみたいに心地いい。それは、こんなキスもあるのだと頭の隅で軽く衝撃を受けるくらいに、前回とは全く様相の違うキスだった。
 口の中を舐められたら、また膝が抜けるくらいグズグズに感じてしまうのだろうと思っていたのに。確かにただ触れるだけ、軽く吸われるだけ、ペロと悪戯に唇の表面を舐められるだけのキスに比べれば、断然気持ちが良い。意地悪く焦らされている、という気配でもない。ただただ優しく慰撫されるような快感で、じわじわと体の熱を上げられている。
 前回のように快楽の渦に翻弄されることはなく、腰は重くとっくに勃ち上がってしまった性器は刺激を欲しがって疼いていたけれど、でも自力で立っていられないほど腰砕けではなかった。
 既に両足の間には、前回同様相手の腿が差し込まれているけれど、それに支えられることなく立っていられる。前回は助けを求めるように必死に相手へ縋り付いていた手だって、今日はだらりと両脇に垂らしたままだ。
 でもだからこそ、気付いてしまう。前回の復習なんて言っていたけれど全然違う。前回は泣かされてしまったけれど、そのお詫びで優しくされているわけでもない。
 思考まで奪い取られて、何もかもがぼんやりと霞むほどの快楽に流されて、なすがままを受け入れることを許さず、自分の意志で、自分自身を射精に導けと促されている。
 どうしようどうしようどうしよう。
 選択肢なんかなかったけれど、でも、それでいいと安易に答えたことを後悔していた。お前は本当に迂闊だと、きっとまた言われてしまうんだろう。
「そろそろ気付いたか?」
 こちらの動揺が伝わってしまったようで、顔を離した相手がおかしそうに聞いてくる。
「む、り……でき、ない」
「そりゃちょっと気が早い。お前がなりふり構わずイキたくてたまらなくなるまで、今日はじっくりキスしてやるから」
 フルリと体が震えてしまったのは、半分くらいは恐怖なんじゃないかと思う。この人はきっと本気で、何時間だってこちらをジリジリトロトロとろかせていくようなキスを、キスだけを、続けていられるのだ。
「ぜ、前回みたいに、して、って言ったら……?」
 提示された終了条件は、自分で腰を振ってイクか、相手に腰を揺すられてイクかの二択だった。さっきも自分から口の中を舐めてとねだって褒められたし、焦らすことなく深い口付けに変えてくれたのだから、自分からはっきり口に出してねだれば、叶えてくれる気はあるんだろう。
 ただ、前回の復習と言いつつまったく別の要素を課してきている今回、前回と同じがいいなんて言っても無駄かもしれないと思う気持ちも強かった。
「もっと赤裸々に、上手におねだりできたら考えてもいいけど?」
「せきらら、に、上手に、おねだり……」
 言われた言葉を確かめるように自分自身でも繰り返してしまったが、なんとなく相手の言いたいことがわかってしまう程度に、自分自身のエロ方面知識が豊富で嫌になる。たとえわかっても、それを口に出して言えるかは別問題だ。
「まったく想像できません、って顔でもねぇな」
 そんなガキみたいな顔してんのに普段どうやってオカズ入手してんのと聞かれて、素直にネットでと答えたら便利な世の中に生まれてよかったなと笑われてしまった。
「じゃ、前回俺にどんな風にされたか思い出しながら、なるべく詳細に、俺が満足するくらいいやらしく、して欲しいことねだってみ?」
「そういうおねだりって、最初は普通、そっちが提示したエッチな言葉、繰り返させるとこからじゃないんですか?」
「何を求められてるか欠片もわからないならそうするかもな。でもお前は思い当たった顔したからダメ。もちろん、俺好みに修正は入れてくけど、取り敢えずはお前の言葉を聞いてみたいって思っちまったしな」
 キスは再開されることなく、ニヤニヤ顔で見下されたまま、こちらが口を開くのを待たれている。前回何をされたかを思い出して羞恥に身を焦がしつつ、更にどんなイヤラシイおねだりをすれば相手が納得するのか悩むこちらを見て、楽しんでいる。
 けれど結局、詳細なおねだりなんて出来っこなかった。考えれば考えるほどに、何も口に出せなくなる。自分から、泣くほど恐怖した強烈な快楽をもう一度叩き込んでなんて、言えっこない。
 言えないと首を振って、ごめんなさいと謝った。相手は残念だと笑ったけれど、そこまで本気で残念がっている様子はなく、じゃあどうして欲しいのと問うてくる。
「さっきの、キスの、続きをして、下さい」
 震えかけた声を絞り出せば、相手は少し驚いた様子で目を瞠った後、わかってるようでわかってないなとおかしそうに笑った。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

雷が怖いので プレイ1

本編11話へ→   目次へ→

 初日と同じ時間にバイト先を訪れれば、やはり玄関先でいくら稼いで帰りたいかと尋ねられて、少し考えてから前回と同じく一万くらいと返した。
 前回三万もの給料を渡されているが、慣れてきたら報酬は下げていくと言っていたし、前回終わりには少しずつ今日以上のことを要求するとも言われている。ということは、自分から三万なんて言ったら、少しずつ様子見で要求を上げていくのではなく、前回以上のことを当たり前に要求してくるだろうことは想像がつく。
 あの程度で三万も貰えるならぜひ今回も、とはとても思えなかったし、既に三万貰っているのだからそこまでガッツイていく必要だってない。
「じゃあ、前回の復習でもしてもらうか」
「復習?」
「そ、俺にキスされて気持ち良く勃起して、自分で腰振ってイクか、俺に腰揺すられてイクかしたら一万円」
 それに単純な時給と、あとはお前の反応や受容次第で上乗せすると言われて、最後にどうするかと問われた。どうするなんて聞かれたって、この提案には自分で何かを選べるような要素がない。
「それで、いいです。というか、どうするって言われても、俺が選べるのイエスしかなくないですか」
「まぁそうだな」
「否定しないんだ」
「だってお前がNG出すようなこと言ってないだろ。ただ、お前が口に出して、それでいいって言うことは重要だからな」
 おいでと促されて防音室へ向かった。そしてまた同じ場所へと立たされる。
「服を脱ぐ気は?」
 いくら出すとは続かなかったけれど、いくらですかとも聞かなかった。だって脱ぐ気はないからだ。
「それは、ちょっと……」
「さっき言ったように今日はお前がイクまで終わらないけど、また下着の中に吐き出すの?」
「さすがに換えの下着は持ってきてます。というか、あなたの服に向かって撒き散らすほうが被害甚大って感じなんですけど」
「そこはほら、俺の服をこんなに汚して悪い子だねって方向のプレイもしたいだろ?」
「いやいやいや」
 ニヤッと笑った顔が近づいてきて、そんなプレイしたくないですの言葉は言わせてもらえなかった。
 軽い触れ合いを繰り返すのではなく、最初から、しっとりと覆われて唇をゆるく吸われる。それだけでゾワゾワとした何かが背中を這い上がっていく。
 だってもう知っている。体中の力が抜けていくような、気持ちのいいキスを。口の中を器用にクルクル舐めまわる舌が、上顎を擽るように触れた時の快感を。誘い出された舌を、強く吸われた時の痺れを。
「な、んで……」
 繰り返されるキスの合間、こぼれ落ちたのは不満。相手は当然わかっていて、クスリと小さく笑ったようだった。
「なんで、って、前回はちょっと急ぎ足だったから、今日はじっくり目に行こうと思って?」
 そういって触れた唇は、やっぱりまた深くなる前に離れてしまう。しかも、期待に薄く開いてしまっているこちらの唇を、舌先で意地悪くペロリと舐めてから。
「気持ちいいだろ。ただ触れるだけのキスでもさ。だってお前、すっごいうっとりした顔してる」
 可愛いねと言いながら、左右の目元にキスが落ちる。それだけでも小さなゾワゾワが肌を這う気配がした。
「唇が触れるだけで、軽く吸われるだけで、チロと舐められるだけで。うっとりするほど気持ち良くなっちゃって、でももっと気持ちよくなりたくて期待して、唇離すたびにちょっとガッカリしてるのが丸わかりなの、たまらないよ」
「いじわる、だ」
「そんなのもう知ってるだろ」
 クスクスと笑われて、相手の機嫌はすこぶるいいらしいというのがよく分かる。
「ど、すれば、いい、の」
「どうすればって、何が?」
「もっと、気持ちよくなりたい。焦らさないで、この前みたいに、口の中も舐めて、欲しい」
「ちゃんと自分から言えたな」
 いい子だと続いた声は、ひどく甘やかに響いた。クスクスと楽しげだった笑いは、柔らかな笑みに変わっている。
 胸の奥がざわざわする。なのに頭はぼんやりとして、ただただその顔に見惚れてしまう。
「自分から言えたご褒美に、お望みどおり、いっぱい口の中を舐めてあげような」
 甘やかな響きを持ったままの声に口を開けてと促されて、何も考えられないまま、その言葉に従い口を開いた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後(目次)

Wバツゲームの続きです。全19話。
前作で恋人になった二人が、先輩が抱かれる側でセックスする話。糖度高め。
視点そのままで、バスケ部の高校1年生 × 帰宅部の高校3年生(視点の主)。
いつか途中分岐して後輩受けルートも書きたい気持ちがあって、途中までは相変わらず受け攻めだいぶ曖昧です。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。また、後輩が中学時代の処女彼女とのセックストラウマ(流血関係)を語るシーンがあります。

1話 再告白
2話 学食奢り最終日
3話 友人の見解
4話 土曜夕方の教室で
5話 待ちきれない玄関先
6話 先に帰った結果
7話 夏休み直前
8話 抜き合い中断(R-18)
9話 セックスするのが怖い
10話 セックスのトラウマ
11話 もしする時は抱かれる側で
12話 お出かけデートの結果
13話 もっと深く繋がりたい
14話 体を慣らす(R-18)
15話 花火デートの後
16話 繋がる(R-18)
17話 不安の正体(R-18)
18話 甘やかし上手
19話 ずっと、恋人でいたい

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受19(終)

1話戻る→   目次へ→

 この関係は最長でも自分が卒業するまでと口に出して言ったことはないけれど、当然そのつもりだったし、相手だってそれをわかっていただろう。だってこれは、わかっているからこその発言だ。
 本気かなんて聞くのはバカらしくて、けれどあまりにも想定外な発言に、結果、口を閉ざすしかなかった。
「俺に甘やかされるの、嫌になりました?」
 そっと伸ばされた手が、頭を撫でるようにして髪を優しく梳いていくのを、これ以上甘やかすなと振り払うことなんて出来ない。でもこいつじゃなきゃダメってくらいに甘やかされて、別れられなくなるのは困るとも思う。
 既に手放したくないなと思ってしまっているけれど、だからって卒業後も付き合い続けようなんて発想は一切していなかったのに。それは考えてはいけないことだったのに。
 それをあっさり、本気とわかる熱心さで突きつけられて、酷く動揺していた。
「嫌っていうか、だって、俺がどこの大学行くかなんて、まだ全然決まってもないのに」
「でもどの辺狙いかは聞いたっすよ」
「最悪飛行機の距離だし、最短でも、学校帰りに毎日寄ってなんて絶対言えない距離だよ」
 たとえここから通える距離の大学へ入学したとしても、引っ越しは間違いなくするだろう。交通費も通学時間もただの無駄でしかないからだ。
「だからこそ、身近で新しい相手探すより、俺と付き合い続けたいって思ってもらえるくらい、先輩を俺に夢中にさせたいんすよね」
「それは、怖い、よ」
「俺に今以上に夢中になることがっすか? それとも、恋人と頻繁に触れ合えないこと?」
「そんなのどっちもだよ。遠恋向きじゃないのなんてわかりきってるのに、お前じゃなきゃダメってほどお前に骨抜きにされちゃったら、お前がそばに居てくれない俺の大学生活、毎日泣き暮らす羽目になるよ?」
 そんな泣き言を連ねても、相手はふにゃんと緩んだ顔をして、大丈夫すよなんて言いながら愛しそうに見つめてくるから、ドキリと心臓が跳ねてしまった。
 だけどすぐに気付いてしまう。動いてないと寝落ちしそうと言っていたことを思い出してしまう。
 これもう絶対、半分くらい眠りに落ちてる。
 だからこれは、二人は末長く幸せに暮らしましたという、ハッピーエンドな寝物語みたいなもので、多分もう寝ぼけてて、夢の話で寝言なんだろう。きっとその方がいいから、夢の話にしてしまおうと思った。
「そうだな」
 柔らかに吐き出して、そっと相手の頭に手の平を乗せる。先程されたみたいに数度優しく髪を梳いて、最後に額を撫で下ろすみたいに滑らせて目元を覆ってやった。
「信じてないっすね」
 そのまま寝てしまえと思ったのに、相手は不満げに口先を尖らせると、目元を覆われたままグッと顔を寄せてくる。正確には体ごと寄ってきて、あっという間にこちらを抱き込み引き寄せる。
 軽く覆っていただけの目元の手はあっさり外れて、トロリと優しいままの瞳に、また見つめられてしまった。相手は眠いだけなはずなのに、やっぱり少しばかり鼓動が速くなるようだった。
「大丈夫」
 甘やかな声が間近で繰り返す。
「二股かけない先輩は、恋人居ない時期もあったっすよね?」
 やはり相当眠いのか、吐き出す声もトロリと甘く緩やかだ。
 なんだか相手が溶けてしまいそうな錯覚に襲われる。でももしかすると、溶けているのは自分の方なのかも知れない。ぜんぜん大丈夫じゃないだろって気持ちが、溶かされて曖昧になっていくような気がした。トロトロな甘い気配に包まれて、大丈夫を信じたくなってしまう。
「寂しいなら毎朝毎晩電話します。おはようも、おやすみも、大好きも、毎日先輩の耳に届けます。そして出来る限り会いに行きます。俺調べでは恋人不在期間最長三ヶ月だったんで、たとえ飛行機の距離でも、三ヶ月以上開けませんから。会えない時間埋まるくらい、先輩ドロドロに甘やかしますから」
 途中でとうとう瞼を下ろしてしまった相手は、それでもうっとりとそんな言葉を吐き出し続ける。
「ばーか」
 吐き出す自分の声も甘かった。
「んなの聞いて、飛行機距離の大学なんか行くわけ無いだろ。そこ滑り止めだし、気合で他の、というより本命の合格もぎ取るっての」
「それ、こっから一番近いトコ、すか?」
「そーだよ」
 目は閉じたままだけれど、それでも嬉しそうにくふふと笑う。嬉しそうに、幸せそうに、大好きですと囁くようにこぼす。
「俺も、好きだよ」
 顔を寄せて、ちぅ、と軽く唇を吸って放せば、閉じていた目が薄っすら開いた。
「先輩の、恋人でいたい、す。これからも、ずっと」
「うん」
「先輩に、惚れ続けて貰えるように頑張るんで、だから、」
 いっぱい俺を欲しがって、と続いた声はほとんど音になっていなかったし、目はまた閉じてしまっていたけれど。お前の全部が欲しいよと囁いた声に返る声はもうなかったけれど。
 頭の中で、あげます全部、という彼の声が響いた気がした。更にそれは、貰いますよ、俺だって、全部、と続けてくれたから、顔が熱くなっていく。
 さっき抱かれてる最中に実際聞いた言葉だと、気づいてしまったからだ。
「恥ずかしっ」
 照れてこぼした声に応えるのは、規則正しく繰り返される寝息だったので、ベッドヘッドに置いたリモコンを弄って明かりを落とした後、甘えるみたいにすり寄ってくっついて、おやすみと呟き目を閉じた。

<終>

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受18

1話戻る→   目次へ→

 動いてないと寝落ちしそうだから先に後始末をしたいと言う相手に、寝ちゃってもいいからまだ側に居てとねだる。
「体、気持ち悪くないんすか?」
 冷房は低めに設定してあるけれど、それでも汗はかいたし、さっぱりしたい気持ちもわからなくはない。でも、じゃあ一緒にシャワーに行こうかって言える程、こちらの体力と気力が残っていなかった。
「さすがにもーちょいぐったりしてたい。シャワー行く元気ないし、ざっと拭いてあとは明日で良いかなって。お前は? どーしてもシャワーしてから寝たい感じ?」
 どーしてもと言われたら、行っておいでと言うしかないのはわかっている。相手は夜更かしがあまり得意じゃないから、普段ならとっくに寝ている時間の今、寝落ちしそうの言葉に一切の嘘はなく、もう相当眠いはずだった。余韻が欲しいなんて言ってベッドに引き止めて、不快なまま寝落ちさせてしまうのは申し訳ない。
「ぐったりしてて良いっすよ。濡れタオル、あっためて来ますから」
「あれ? もしかして、後始末って、俺の?」
「余裕あったら、シャワーもして来たいすけど。でも取り敢えずは先輩の方すね」
 それを聞いて、思わずふふっと柔らかにこぼれた笑いは、幸福感からだった。
「お前はホント、どこまでも俺を甘やかすね」
「甘えたがりの恋人を出来る限り甘やかすのなんて、当たり前じゃないすか?」
「本気トーンでそれをさらっと口に出すところがもう、デロデロに甘やかされてる感じしかない」
 くふふとこぼれ出るまま笑い続ければ、もちろん狙ってやってますよと言いながら、相手もふふっと柔らかに笑う。
「で、ほんとにこのまま眠るんでも平気なんすね?」
 軽く頷けば、じゃあここで出来る範囲だけと言って、下に敷いたバスタオルを剥がしたり、下半身の酷い汚れを拭き取ってくれたりと、なんだかんだ甲斐甲斐しい。
 疲れた体を労るように世話を焼かれて、これは癖になりそうだと思う。このふわっとした幸福感に包まれ続ける感じがたまらない。
「抱かれた後でお前に甘やかされるの、なんか癖になりそ」
 ぽそりと零した呟きに、相手は嬉しそうに、癖になっていいっすよと笑う。
「お前ホント、俺を甘やかすの上手すぎ」
「まぁ必死に先回りして甘やかすのは、それなりに下心もあるからっすけどね」
「あ、これ、お前、必死に先回りしてやってんの?」
「必死っすよ。モテル男のノウハウ系とかも、あれこれざっくり読みましたし」
「マジでっ!?」
 とうとうぶはっと吹き出すほどに笑ってしまったけれど、肯定する相手は変わらず柔らかに笑ったままだった。
「笑っていいすよ。必死の努力は順調に報われてるっぽいんで、笑われても止めませんけど」
「そんな必死に努力しなくても、言えば叶えてやるかもよ? 俺もお前を甘やかしたいんだって、知ってるだろ? で、お前の下心って何?」
「言ったら甘やかされてくれなくなるかもなんで内緒っす」
「え、なにそれ怖い。隠されたら今後安心して甘えられなくなるかも。てわけで、はい言って」
 しまったという顔をされたけれど、もちろん逃してやる気なんかない。だって気になる。もう十分すぎるほど甘やかされているし、叶えられるものなら叶えてやりたい。
「先輩に、もっともっと、俺にメロメロになって欲しいんすよ。それだけっす」
「え……っと、そろそろちょっとまずくない? ってくらい、既にお前にメロメロしてるけど。それじゃ足りないって言ってる?」
「全然足りないす。というかっすね、先輩を手放したくないんすよ。先輩が、卒業した後も」
「ふぁっ!?」
 は? と声に出したはずが、慌てすぎたのか驚きすぎたのか妙な音になって漏れた。
「甘やかして、愛情注ぎまくったら、身近で都合よく触れ合える相手を新たに探すより、俺と付き合い続けるほうがいいって思ってもらえるかもって思ってて」
 年齢だけはどうしようもないので、卒業後の二年間をどうするか本当に悩んでてと言う相手は、本気で卒業後もこの関係を続けたいと思っているようだった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

罰ゲーム後・先輩受17

1話戻る→   目次へ→

 ちゅっちゅと宥めるみたいなキスを繰り返されて、やっぱりなんだか誤魔化されてるみたいな気持ちになる。小さな不安の種らしきものが、胸の中にプツプツと湧き出るみたいな感じがする。
 縋るみたいにまたぎゅっと抱きつけば、さっきみたいに相手の体温に安堵するのだろうか。ぎゅってして、好きって言って、好きって言われて、不安の種から目を逸らして。そうやって誤魔化されてしまってもいいのかもしれない。
 本当に気持ちいいの言葉も、多分きっと嘘じゃなくて、ただ、自分の体の方が貪欲で、ついでに言うなら他者と繋がる行為で快楽を拾うことに慣れているだけだ。痛いとか苦しいとかが思っていた程酷くないからか、抱かれる側でも、深く繋がる心地良さや粘膜が擦れ合う興奮はそこまで変わらないと思う。
 だからって、相手に自分と同じだけの興奮が見えないのが不満だなんて、ホント、我侭で強欲にも程がある。トラウマ持ちの彼が慎重になるのは仕方がないし、理性を保ってこちらの体を気遣う余裕を見せるのは、間違いなく彼からの深い愛情なのに。わかっているのに。
「ごめんなさい」
 ふいにそんな言葉が聞こえて、ちゅっちゅと降り注いでいたキスがやむ。
「キスなんかで誤魔化そうとして、余計不安にさせただけっすよね。すみません」
 謝られながら、みたいではなく相手にも誤魔化そうとする意志があったのだとぼんやり思った。本当に誤魔化したいと思ってたなら、さっさと誤魔化されてやれば良かったとも。
「もともと、先輩にはもしかしたらバレるかなと思ってたんすけど、ホント、俺のことよく見てますよね」
 申し訳ない、みたいな口調なのに、なぜか相手はどこか嬉しそうでもあった。
「え? バレる? って何が?」
「勢いで突っ込みそうだった俺が、いくら頭冷やしたからって、あんまがっつかずにいるの、どっか変だって感じたんじゃないすか?」
「あっ!」
 聞いた瞬間、そうか、それだ、と思ってしまった。どこからともなく漂い纏わりつくみたいな不安と苛立ちの正体と言うか出処は、多分きっとそれだった。
 一緒にシャワーを浴びたらその場で突っ込みそうだったという言葉もするりと信じられるくらい、帰宅後玄関先で交わした、貪られるみたいに性急に性感を煽ってくるキスの興奮を覚えている。あの熱と興奮のまま求められる喜びを、一度は想像してしまった。期待してしまった。
 きもちぃと耳元に吹き込まれた甘ったるい声は本物だと思ったから、それを信じたい気持ちと、余裕のありすぎる素振りに、もしかして本当は思ったより気持ち良く感じられていないのではと疑う気持ちとが、無意識下でせめぎ合っていたようだ。
 過去に失敗しているから、むりやり揺すって強引に快楽を貪るような真似をしないだけで、きっと基本的には、抱いた相手の体でイカないのは失礼だって、そういう考えを今も持っているだろう。挿れてみたらそこまででもないなと思っても、絶対に、それを口に出したりわかりやすく態度にだって出さないだろう。
 それがわかっているから、そんなはずはないと思うのに、気持ちが揺れてしまうのだ。
「もちろん、先輩との繋がるセックスが思ったより気持ち良くなかった、ってわけじゃないすよ? 本当に、今だってずっと、先輩んナカめちゃくちゃ気持ちぃって、思ってます」
 随分と真剣な顔をして、まるで念を押すように告げる言葉を、今更疑う気持ちはないのだけれど。
「じゃあ、なんで……」
「これ言ったら絶対怒るか拗ねるかされそうなんすけど」
 そう言われて、怒ったり拗ねたりしないから言って、なんて言ってやれるほどの気持ちの余裕はなかった。
「じゃあ多分、怒るし拗ねるけど、言って」
 既に拗ねたみたいな口調だなと思っていたら、やはり相手も同じように思ったのか、空気がほわっと緩む気配がした。そんなこちらの子供っぽい態度を、可愛いとか愛しいとか思われたんだろう。声に出されなくたって、こうまであからさまだと、わかってしまうし恥ずかしい。
「ほら、早く言って」
「先輩って……」
「可愛いっすね、じゃ誤魔化されないからなっ」
 また色々含ませた可愛いですねで逃してたまるかと先手を打ったのに、相手はまんまとその言葉を吐き出し笑ってみせる。なんともわざとらしい。
「お前っ!」
「誤魔化そうってつもりじゃなくて、本心っすもん。ねぇ先輩。俺、本当に先輩のこと、すげー好きっすよ。先輩が欲しいだけ全部、持ってっていいって思うくらい」
 繋がるここから俺を丸呑みする気なんでしょう? と言いながら、ゆるく腰を揺すられた。
「がっついて腰振ったりしなくても、先輩が気持ちよくなって、ココ、きゅうきゅう締め付けて俺をうんと欲しがってくれたら、俺多分、そんな持たずにイッちゃいますよ? 先輩と違って二発目なのに」
「二発目? って、ど、ゆー、こと?」
「俺ね、先輩絶対傷つけたくなくて、頭冷やしついでに一発抜いたんス。風呂場で」
「おまっ、それ、ズルいっ」
 これは確かに、怒って拗ねていい案件じゃないだろうか。そんな理由があるなら、余計な不安を持たずに、相手の気遣いを喜んで受け入れていたかもしれないのに。
「言わなかったことは謝ります。でも、抜いといて良かったって、本気で思ってるんで。抜いてなかったらかなりヤバかったっす」
 それくらい先輩のナカ気持ちぃんすよと吐き出す声は、甘えを含んでトロリとしている。心ごとゾワゾワして、動きを止められ体の奥に燻っていた熱が煽られていく。
「んぁっ、」
「きもちぃ、す。ね、もっと、俺を、欲しがって」
 気持ちいいと繰り返してくれる声に興奮が加速する。もともとない余裕が更に奪われていく。
「ぁ、んぁ、俺も、キモチィ、きもちぃ、からぁ、……もっと、お前もっ」
 ゆるゆると揺すられるのがもどかしくて、もっともっとと相手をねだる。
「ん、うぅっ、欲しい。お前が、ほし、よ」
「あげます、全部」
「でもぉ、ああっ、俺も、あぁんっっ」
「貰いますよ、俺だって、全部」
 お前に同じだけ欲しがられたいという気持ちを取りこぼすことなく、拾い上げて笑ってくれるこの男を、このままずっと手放したくないと思った。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁