抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ4

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 それを聞いた相手は、想像と違わずまたしても嫌そうに眉を寄せて、別に慰めなんて要らないと言う。慰めてやろうとして言ったわけじゃない。
「そーゆー意味じゃねぇ」
 わかっていたことだが行為が再開する気配が全くないので、すっかり諦め気分で、言いながら上体を起こした。
「そういう意味って?」
「お前のことも慰めてやるよ、なんて意味じゃない」
「でもこれ、そっちが抱かれる側を受け入れるから慰め合おう、って提案じゃなかった?」
「そーだけど」
 そうだけど、そうじゃない。そもそもそっちに慰め合おうなんて気がないどころか、慰めてくれる気もたいしてないくせに、まるで慰め合いをしているみたいな言い方をするのはどうなんだ。というのをどう説明していいかわからなくてため息を吐けば、相手も不服そうに小さく息を吐いてから続きを促してくる。
「そうだけど、の続きは? 何?」
「だって、ちっとも慰めて貰ってる気になれねぇんだもん」
「だから、俺の態度が不満なら止めなよって言ったでしょ。あいつの名前呼ぶくらいなら受け入れてもいいけど、それ以上は無理だよ」
「うん、だから、あいつの代わりになって抱いてくれなんて思ってないし、逆に、もしお前が俺をあいつの代わりに抱けるってなら、そうしてくれよって話」
「なんで? 慰められたいのは主にそっちでしょ?」
「そうだけど、お前に俺を慰めてやろう的な優しい気持ち、どう考えてもないじゃん」
 バカみたいな提案に無理やり付き合わされてるくらいの気分だろ、と指摘してやれば、あっさりそうだねと肯定されて苦しい。
「お前が言うみたいに、見知らぬ誰かを買って済まそうなんて気にはなれないけど、お前に優しさの欠片もないまま抱かれんのもキツイから、もしお前が、俺をあいつの代わりに出来るなら、そうしていいから、もーちょい優しくしてくれってだけだよ」
 バカバカしい説明をしている自覚はあるが、バカじゃないのと言い放たれればやっぱり傷つく。
「うっせ。バカなこと言ってるのはわかってる」
 バカな誘い方をして、更にバカな提案を重ねている。あいつの代わりになんてならないと突っぱねられても、あいつの代わりとして優しく抱かれる事が出来ても、辛いことには変わりがないのに。
 相手が出来ると言っても出来ないと言っても、自分自身が更に酷く傷つくだろう自覚はある。でも、仕方がないだろとも思っていた。
 最初で最後かもしれないチャンスを、少しでも優しく触れられたいと思って何が悪い。少しでも可能性がありそうだと思ってしまったら、聞かずにいられなかっただけだ。
「つか、無理なら無理って、さっさと言えばいいだろ。欠片だって似てねぇのはわかってるし、あいつの代わりになりたいなんておこがましいとでもなんとでも言えよ」
「それはさすがに自虐が過ぎるでしょ。別に、欠片も似てないとは思ってないけど」
「は? なんの冗談」
「いや、冗談じゃなくて。でもだからこそ、あいつ抱く代わりにあんた抱くとか、実行したら最高に面倒なことが起こる気配しかないんだけど」
「なんだよその最高に面倒なことって。てか、似てないだろ、ちっとも」
「見た目とか言動には似てるとこほぼないけど、プライド高くてセンシティブなとことか、似てるなと思うとこは意外とあるんだよ。まぁ、無自覚だろうとは思ってたけど。ただ、だからこそ、たとえ可能だとして、あいつ抱く代わりとしてあんたに触れたら、あんた、内心めちゃくちゃ傷ついちゃうでしょ?」
 プライドの高さから、想い人の代わりに抱かれてやる屈辱、なんてものを感じるより先に、あいつ相手ならこんなに優しく触れるんだって事実を突きつけられて傷つく羽目になるんだけど。でも、惜しいとこ突いてる。内心めちゃくちゃ傷ついて、面倒くさいことにはなりそうだ。
「可能なんだ?」
「人の話聞いてた?」
「おまえこそ、俺の話ちゃんと聞いてた? 傷ついて面倒くさいことになる俺ほっぽって帰っていいし、あいつの代わりでいいから、取り敢えず俺にもっと優しくしろってば」
 言い張れば大きなため息を吐かれた上に、ほんとバカだとしみじみ言われたけれど、それでも最後には諦めた様子でわかったよと返された。

続きました→

 
 
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理解できない(目次)

キャラ名ありません。小ネタ2話と本編54話の全56話。
小ネタは攻め視点。本編は受け視点。
七歳差で攻めは大学四年・受けは中学三年からスタートし、受けが高校卒業して二人が恋人として同棲するようになるまでの話。
受けの幼少期に何があったのか詳しい描写はしていませんが、親の主導で体を売るような真似をしてました。歪んだ大人たちに囲まれて性に緩い子供時代を過ごしてしまったせいで、自分をそこから救い出してくれた攻めにも当たり前のお礼として体を差し出そうとしていた受けが、攻めに導かれて染み付いている歪みを整えながら、成長とともに攻めへの恋情を育てていきます。
理解できないのタイトル通り、攻めの言葉や行動に理解できないことがたくさんあって、気持ちを育てるのに時間が掛かりました。つまりは、ぐちゃぐちゃと悩んでいるシーンや、攻めとのなかなか噛み合わない会話シーンが長いです。エロ控えめ。

診断メーカーからの「場所:ベッドの上 時間:夕 攻め:尽くし 受け:強気 何してる?:イタズラ」というお題で書いた親戚の中学生を預かる話に、続きを読みたいというリクエストを頂いて書きました。
続きを書くにあたって希望を募ったところ「受けの子の純愛」「一緒にお風呂をただ楽しむ攻めとエロいことされずびっくりな受け」が見たいという意見を頂いたので、それらを意識した展開が含まれています。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

親戚の中学生を預かり中1
親戚の中学生を預かり中2

1話 ここでの暮らし
2話 風呂場突撃
3話 フェラ拒否
4話 これから成長期
5話 そんな性癖はないよ
6話 洗ってもらう
7話 卒業間近
8話 卒業旅行計画
9話 ラブホへ
10話 洗われながら(R-18)
11話 いたずらしたい
12話 初フェラ(R-18)
13話 認識の差
14話 好きな子を抱きたいだけ
15話 キス
16話 好きって言って(R-18)
17話 放ったらかし
18話 置いていかれる
19話 もう抱かない
20話 彼のいない家
21話 逃げられない
22話 朝食
23話 二人の距離
24話 笑われて泣き止む
25話 困らせる相談
26話 寂しいなら構うよ
27話 相談そのに
28話 もっと早く知りたかった
29話 困らせてやった
30話 わかるけどわからない
31話 お気に入りのケーキ
32話 相互理解の場
33話 成長してる
34話 もう信じられるよ
35話 交際スタート
36話 二回目どうする?
37話 焦らしてやりたい
38話 恋人やめないで
39話 浅はかだった
40話 焦らさないで
41話 彼の家での過ごし方
42話 抱きたい、はどこへ?
43話 自分の気持がわからない
44話 抱かれたい気持ち
45話 一緒に暮らしてみようか
46話 準備スタート
47話 金曜夜は週末(R-18)
48話 このまま抱きたい
49話 なぜか涙が溢れてくる(R-18)
50話 上手く行かない(R-18)
51話 前よりいい(R-18)
52話 好きって偉大(R-18)
53話 朝食後にもう一度
54話 ようやく知らされる事実

 
 
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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ3

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 誘うと決めた時から、体の準備はしてきている。だから相手の指は難なく受け入れることが出来たのだけれど、他者の指が体内というか腸内を探る違和感はなかなかに凄かった。
 あっさり受け入れてしまったせいか、相手の動きに容赦がないのも原因の一つかもしれない。初心者どころか全くの未経験なのだから、もう少し優しく触れてくれればいいのに。
「っ……なぁ、」
 妙な声を上げてしまわないよう必死で息を整えながら呼びかける。
「なに?」
「ん、慰めて、……ぁ、くれんじゃないの、かよ、ぁっ、ゃ、んんっ」
 喋りやすいようにと途中で一瞬指の動きを止めてくれたものの、言い終えればまた、グチュグチュと中を掻き回されて慌てて口を閉じた。慰めという名の優しさをくれるつもりはないらしい。
「逆に聞くけど、俺に、可哀想にだとか、辛かったねだとか、そんなこと言われながら、頭撫でられてキスの雨降らされるみたいなセックス、したいわけ?」
 可哀想にだの辛かったねだのの言葉はさすがに要らないが、撫でられたりキスされたりならしたい。だってベッドに上がってから先、彼の手はアナルを広げるためだけにこの体に触れている。唇なんて、この体のどこにも触れていない。
「なら、お前の慰めるって、なに」
 返答を待つようにまた指の動きを止めてくれたので、されたいとは言わずに、逆にこちらからも問いかけてみた。ただ、答えはわかっているような気もする。全く好みでもない男を抱くっていうだけで、相手からすれば大きな譲歩に違いない。きっと、抱いてあげてるでしょって、返ってくるんだろう。なのに。
「わざわざ俺を選んで抱いてくれって頼む理由、一つしかないでしょ。いいよ。あいつの名前、呼んでも」
「はぁああ!?」
「そんな驚くような事?」
 想定外の言葉に驚きの声を上げてしまえば、相手は一瞬怯んだ様子を見せた後、ゆっくりと埋めていた指を抜き取っていく。違和感からの開放に思わずホッとしてしまったが、抜かれてしまったことへの戸惑いもあった。充分広がったから慣らすの終わり、って意味ではなさそうだからだ。
「いや、だって……」
「さすがに、あいつがどんな抱き方するかを考えながら、あいつの代わりにあんた抱く、みたいな器用さはないから、そういう期待があるなら捨てて。というか、期待はずれだってならやめる?」
「いや、いやいやいや」
 そんなこと全く思ってもいなかったし、またしても想定外すぎる返答に、ただただ否定のような何かを繰り返す。というか、止めたいのは相手の方なんだろうと思ってしまって胸が痛い。胸の痛みに気を取られて、それ以外を口に出せなかったというのも大きい。
「なにそれ。どういう反応?」
「いやいや、だって、そんなこと、考えてなかったっつーか」
「じゃあ何を期待して俺を誘ったって言うの。慰めてって、何して欲しいわけ?」
 お前に優しく抱かれてみたかっただけだよ、なんて、当然言えるはずがなかった。
「あのさ、やたらな相手と関係持ちたくないって気持ちはわからなくないけど、お金出せば、他の男の名前呼んでも優しく抱いてくれる男、買えなくないと思うよ?」
 まさかこんな提案をされるとは思わなかったし、この男はそうやって買った男を、彼の名前を呼びながら優しく抱いたのかも知れないという想像に、ますます胸が締め付けられる。名前も顔も知らない、金を出せば抱けるような男相手に、紛れもなく嫉妬している。
「俺、が、……」
 こんなことを提案しても、きっと無理って言われるんだろう。
「あいつの名前、呼んでいいっつったら、お前、俺をあいつの代わりに、抱けたりすんの?」
 絶対にもっと傷つくだけだとわかっているのに、それでも口からこぼれ出る言葉を止められなかった。

続きました→

 
 
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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ2

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 だって仕方がなかった。この男が自分にチラリとでも優しい面を見せるのは、同じ相手を好きになった同士だからだ。
 同じように叶わない想いを抱える相手への憐れみ混じりの優しさは、すなわち、自分自身へ向ける憐れみと慰撫に他ならない。自分だって、相手への想いが育つ前までは、自分自身をそっと慰めるのが目的で、この男と行動を共にしていたと言ってもいい。
 双方そういう認識が出来ていたからこそ続いている縁なのに、お前のことも好きになってしまったから、なんて理由で抱かれたいと言えるはずがないだろう。それに言ったところで断られるのは目に見えていた。
 なんせ自分は、相手の好みからはかけ離れている。
 かといって、抱かれることで慰めて欲しいなんてことも、言えるような状況になかった。言えないのがわかっていたからこそ、慰められたいならお前が抱かれる側でと、この男は言ったのだ。
 想い人の彼のことを、抱かれたいではなく抱きたいという目で見ていることをこの男は知っていたし、好奇心で男を抱くまでは出来ても、好奇心で男に抱かれるなんて真似が出来るタイプではないことも間違いなく見抜かれている。
 そう簡単に抱かれる側を選ぶことはない、という前提での、お前が抱かれろという訴えに、気軽に乗れるはずがなかった。だってこんなの、はっきり言ってしまえば、お前とそんな関係になるのはゴメンだと、そう言われているのと大差がない。
 それでもあの時、はっきりと冗談じゃないと突っぱねられずに、どうしても慰めが必要ならという濁し方をされたのは、多分きっと保険だった。いつか、今日みたいな日が来た時に、なりふり構わず慰められたいと思う可能性を、この男自身考えたに違いない。
 結果から言えば、自分たちの予想よりも彼の結婚はずっと遅くて、双方とも気持ちの整理が充分に出来てしまったけれど。でもその事実を隠してしまえば、それくらいにショックだったと言い張れば、彼の結婚というのは、抱かれてでも慰められたいと訴えても許されるくらい、大きな出来事であるのは間違いない。
 後ろめたさは確かにあるが、転がってるチャンスを拾うくらいはしたっていいだろとも思う。抱かれる側になれば慰めてやると言ったのは、この男なのだから。
「お前だって黙って付いてきてんじゃん。わかってて付いてきて、だから、さっきもすぐに分かったって頷いたんだろ」
「それが何?」
「だから、それって、気持ちの整理が付いてたって、お前だって多少はショック受けてんだろって事。俺と、慰め合ってもいい、って思うくらいには」
 指摘してやれば嫌そうに眉を寄せて、けれど口からはそうだねと肯定が返った。
「ほらみろ」
「ああもう、わかったから黙って」
 痛いところを突いてしまったのか、不機嫌そうに言い放たれて、素直に従い口を閉ざす。相手だって、この誘いに応じようって思うくらいには、今でも彼のことが好きなのだという事実に、ほんのりと胸が痛んでしまうことには、いっそ笑いがこみ上げる。
 喉の奥に笑いを飲み込んでいる事に気付かれた様子で、ますます嫌そうな顔をされたけれど、でももう諦めきったのか何も言われることはなかった。代わりに、開かれた足の間に伸ばされた濡れた手が、迷うことなく真っ直ぐにアナルに触れてくる。
「ぁはっ」
 ブルッと身を震わせながら思わず開いてしまった喉からは、飲み込みきれなかった笑い声のようなものが漏れた。

続きました→

 
 
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抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ1

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 古い友人の結婚式帰り、同じく参加していた一人の男に声をかけて、予め取っていたとあるホテルの一室に連れ込んだ。特に何も言わずに付いてきた時点で、相手だってとっくにこちらの目的は察していただろうけれど、二人きりとなった部屋の中で改めて、抱かれる側でいいから慰めて欲しいと頼む。
 相手はこれみよがしに大きなため息を吐いてから、それでもわかったと頷いてくれたから、ひとまずはホッとして、それから互いにシャワーを浴びて準備をした。
 ベッドの上に仰向けに転がり足を開くように言われ、素直に応じながらも、内心は当然羞恥が募っていたし、不安や恐怖も当然あった。どうしたって相手の挙動が気になって、手の平の上にたっぷりのローションを垂らし、それを両手で捏ねる仕草をじっと見守ってしまう。
 躊躇いのなさが慣れているように見えて、見えるだけでなく、事実慣れているんだろうと思う。
 お互いそれなりにいい年齢で、まさか童貞なはずもない。結婚してしまった彼と、いま目の前にいるこの男だけが特別な自分でさえ、試しに男を抱いてみたことがあるくらいなのだ。相手にとっても結婚してしまった彼だけが特別で、それ以外の性対象が女性なのかまでは知らないけれど、相手だって男を知っているだろうとは思っていた。この様子なら、きっとそれ以外の性対象には、確実に男性も含まれているんだろう。
 相手の慣れた様子に安堵するべき場面で、実際はバカみたいに胸を痛めている。自分にとっては、決死の覚悟でこの身を差し出す特別な夜なのに、相手にとっては、頼まれて仕方なく慰めてやるだけの夜だ。相手にとって、この身にはなんの魅力もないのだと、改めて突きつけられているようで苦しかった。
 自分たちの繋がりなんて、同じ男を好きになってしまったことと、その想いを隠す選択をしたことくらいしかない。想いを周りに知られるだけでも色々と面倒が起こりそうだったから、ほぼ同じ条件の相手の傍らは、少しばかり居心地が良かったと言うだけ。だった、はずだった。
 この男にだけは、想いも、それによって生じる心の揺れも、知られてもいい。その安心感は、じわりとこの男へ向かう想いまでも育てていたが、相手にとってはそうじゃなかった。
 相手のせいで心揺れてしまうことまで増えて、かなりしんどくなっていた頃に、衝動でこの男の唇を奪ったら、蔑むような視線と声とで、どうしても慰めが必要なら抱かれるのはお前の方だと宣言された。相手の中には、自分への想いなんて、欠片だって育っていなかった。
 まぁそれも当然だ。この男の想い人と自分は、性格にしろ見た目にしろ、重なる部分がほぼ皆無と言っていいほど似ていないのだから。
 それでも相手の優しい部分につけ込んでは、キスもハグもそれなりの回数奪ってはきたが、さすがに抱かれるまでの決心はずっとつかなかった。今回、彼の結婚が決まるまでは。
「そんな顔して、よく、抱いてくれなんて言う気になったよね」
 ジッと見つめるこちらに気づいたようで、手元から顔を上げた相手に見つめ返された後で、そんな事を言われた。全く乗り気ではない、嫌そうな顔と声だった。
「どんな顔だよ」
「悲愴感たっぷりな顔」
「それは、しょーがないだろ。てかそんくらい色々ショック受けてるから、慰めてくれ、って話だろ」
「ショック、ねぇ」
「お前にとっては、もう、諦めの付いた想いなのかも知れないけど」
「むしろ、未だに気持ちの整理がついてないなんて、正直驚きだけどね」
 やっと結婚かと言われるくらい彼らの交際は長く順調に続いていたから、そう言われるのも当然だし、実際のところ、自分だってちゃんと気持ちの整理はできている。今この男に晒している悲愴感は全くの別物だけど、彼の結婚は関係がないのだと、正直に伝えるわけにいかないというだけで。

続きました→

 
 
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理解できない54(終)

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 急いだから毎晩のように時間を掛けて慣らし広げていたけれど、今日もこれからたっぷり抱いて貰えそうだし、だとしたらそこまで熱心に慣らし行為を続けなくたって大丈夫だ。
 しかしまたしても、相手の返答はこちらの想像のはるか上だった。
「もっと広い物件に引っ越しは必要だろうけど、お前さえ良ければ、このままずっと」
「は?」
「俺が家出る前に、お前を一緒に連れて行く可能性があったことや、連れて出る理由がないって言ったこと、覚えてるか?」
「うん」
 確かに言われたのを覚えている。独り立ちしたいのについて行きたいと言うのは矛盾していると言われて、その通りなのに辛かった。
「もともと、お前と恋人になれたら、実家出て二人で暮らしたいって思ってた」
「え、でも、俺の自立は? 一人暮らしの練習兼ねて、家事とか仕込まれてたんだよね?」
「俺と暮らすのにも家事スキルは必要だから仕込んでた。それと、保護者代わりの俺にくっついて家を出るのと、恋人として俺と暮らすのは別物だと思ってるよ。一人暮らし経験があったって、学生が親掛かりで生活してるのを自立とは呼ばないし、実家暮らしだった奴が結婚を機に家を出る、みたいなのだって立派な自立だろ」
「そ、そっか……」
「一緒に暮らしてくれるか?」
「う、うん。もちろん」
 嬉しいと笑えば、相手も良かったと言って笑う。
「あ、でも」
「どうした?」
「おじさんとかおばさんに、どう説明するの?」
「説明なら済んでる。一緒に暮らして問題なけりゃ、広いとこ引っ越すって言ってある」
「あ、そうなんだ……」
 自分が知らないところで、自分に関する話が色々とされているのだろう事は知っていたけれど。
「今一緒に暮らしてるの、一人暮らしの練習させるって言ってたはずだから、そんな話になってると思わなかった」
「あー、まぁ、あまり俺の方の事情は話さないでくれって言ってあったからな」
「そっちの事情って?」
「色々有るけど、直近だと、俺と暮らすためにって気を遣って俺に合わせた生活しそうだったから、上手く行ったらそのまま暮らすつもりなのは隠してもらった」
「色々って、他は?」
「他は……そうだな、お前と恋人になれたら実家出て二人で暮らしたいと思ってた事とか?」
「待って。え、待って。恋人になったら、って、俺達が恋人になったこと、言ってるの?」
「言ってる。というか俺の気持ちはお前を引き取りたいって話した時から知ってるよ。だから俺の恋愛感情も、こっちの事情の一つだな」
「まじでっ!?」
「マジで」
 驚きはしたが、頭のどこかで納得もしていた。恋人って関係になってから先、ずっと寄り付かなかった実家に頻繁に戻ってきた上に、こっちの部屋で長時間二人きりで過ごしていたのを、何も言われなかった。
 アフターケア的なものとして認識されているのかと思っていたが、正しく恋人という認識をされていたらしい。まさかこれも何か彼の事情絡みで、知ってるって隠されてたんだろうか。
 恋人になってからも、おじさんやおばさんの態度が何か変わったようには思わなかったし、知っててあの態度だったの!? という新たな驚きが湧いてしまう。しかも息子の恋愛感情を知ってたなら、やっと成就したって事なのに。てかおじさんもおばさんも、この関係をどう思っているんだろう。
 彼は当然知ってるだろうけど、聞いたらこれも教えてくれるんだろうか。これもそっちの事情の一部だったりするんだろうか。
「お前の健全な成長が第一で、お前の意思を尊重するとか、気持ちを意図的に自分に向けさせないとか、高校卒業前のお前に手を出さないとか、俺自身の意思なのはもちろんだけど、お前を引き取る上での親からの条件でもあったんだ」
「なにそれ初耳。てかえー、ええー……イメージ変わる」
「親の? 俺の?」
「どっちも、だよ」
 えー、ええー、と何度も戸惑いの声を上げてしまえば、相手は知りたきゃ全部話すよと言って、額にチュッとキスを落とす。
「さすがにもう、知られて困ること多分ないし」
「前はあったの?」
「あったよ。知ったらお前の気持ちがどう揺れるかわからない話は出来ないだろ」
「知ったら気持ちが揺らぎそうな話なら、今なら聞いても揺れない、とは限らないんじゃ?」
「お前の気持ちが俺に向かって育ちきったと思うから、もういいよ、って話。ただまぁ、時間かかりそうだから、取り敢えず起きて朝飯食おう」
「でも朝ご飯食べたらセックス……」
「食べながら、セックスしながら、セックス終わってからのどれかでいいだろ。まぁ食べながら話してそのままセックスになだれ込んで、お前が感じすぎて話できない状態になったら一旦中断して、終わったら話の続き。ってなりそうだけど」
 どうやら、セックスを先延ばしにして話をする気はないようだけれど、こちらが知りたいことを全部聞くには相当時間が掛かるとも思われているようだ。そしてそれは多分当たっている。さっきチラッと聞いた話だけでも、新たな驚きや疑問が次々と湧いて出たのだから。
 じゃあそれでと了承を告げて、まずは一緒に起き上がってベッドを降りた。

<終>

視点の主の気持ちを育てるのに苦労して随分と長々書いてしまいましたが、最後までお付き合いどうもありがとうございました。

 
 
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