まるで呪いのような(目次)

キャラ名ありません。1話+19話の全20話。
生まれた時からマンションのお隣さん同士な幼馴染二人の話。中学3年生×高校1年生。
生まれ月の関係により学年が違うせいで、昔から攻め側が受け側にかなりの執着を見せていて、受けはずっと自分たちは両想いだと思っていた。
「はっかの味を舌で転がして」が攻め視点で、受けが高校に入学した春の話。ここで、攻めの気持ちに恋愛感情はなかったと受けが知る。
続編に当たる「まるで呪いのような」は受け視点で、攻めの高校受験が終わった頃の話。
恋愛感情ではなかった攻め相手の片想いが辛くなってた受けが、攻めの激しすぎる執着を自分なりに納得して幸せを見出す話なのですが、受けが何度も泣きます。攻めも一度は泣きます。つまり、どちらかが泣きそうだったり、泣いてしまっている場面がかなり多いです。
今回、あまり激しい性表現はしてないつもりですが、行為中、流血はないものの受けが痛いと喚くような噛み付き表現があります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

はっかの味を舌でころがして

まるで呪いのような
1話 幼馴染の進学先
2話 合格祝いを持って
3話 恋人をやめたい
4話 もう待てない
5話 修正不能の人生
6話 キモくて怖い執着心
7話 もう逃がす気がないから
8話 謝りたくない
9話 ゴメン
10話 自分の内側
11話 お互い様
12話 春休み初日
13話 妄想の中身
14話 妄想を実現(R-18)
15話 何度も噛まれる
16話 仕切り直す
17話 正常位がいい(R-18)
18話 抱かれる(R-18)
19話 もう両想いを疑わない

 
 
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スライムローションで兜合わせ

スライム+聖水=ローションの続きです。

 人の両手を溶けたスライムで塞いでおいて、あっさりこちらのズボンを引きずり落とした相手は、ちょうど子供と大人の中間って感じなんて笑いながら、剥き出しのちんこに無造作に手を伸ばしてくる。
 彼の手がソレに触れるのは初めてではなくて、キモチイイを期待したソコは何度か軽く扱かれただけで、あっという間に硬く張り詰めていく。
「はっや。お前、ちゃんと自分で抜いてんの?」
「してるよっ」
「ふーん? てことは、お前も結構期待してんじゃないの?」
「そりゃ、……」
 だって本当に久しぶりだ。いいことも悪いことも一緒に楽しんで、アレコレたくさん教えてくれた、笑顔が柔らかで綺麗な年上のこの彼を、どれだけ慕っていたと思っているんだ。薬師の見習いをすると言ってこの町を出ていった後、どれだけ寂しい思いをしたと思っているんだ。
「手、ヌルヌルしてるだけでも興奮してきた?」
 おっかなびっくりではあるものの、言われた通り手をすり合わせてスライムを温めていたけれど、そのヌルヌルが気持ちいいなんてとても思えそうにない。彼のことは信じているから、危険なものではないのだろうけれど、それでもやっぱりなんだか得体が知れなくて怖い。
「ちがっ。てかこれホント、気持ち悪いんだけど!」
「そう? その手でちんこ握って扱いたら気持ちよさそうって思わない? てか興奮しない?」
「思わないよっ。てか怖いって」
「怖いって何が?」
「これ、本当にちんこ塗ったりして、平気なもんなの?」
「平気じゃないようなもの、お前に渡すと思ってんの?」
「それは、思ってない、けど……」
「じゃあ、一緒にする? 先に、俺のちんこにそれ塗りつけていいよ。で、平気そうだな、気持ちよさそうだなって思えたら、自分のちんこにもそれ塗りなよ」
「え、いいの?」
 何そんな驚いてんのと言いながら、相手はあっさり自分のズボンも下着ごと引きずり落として、下半身をむき出しにした。しかも、少し考える素振りを見せたあと、シャツ類も全て脱いで丸裸になる。
 昔は見慣れたものだったけれど、久しく見ていなかった彼の体は、相変わらず肌が白くて、でも適度な筋肉で引き締まっていて、なんだかキラキラと眩しい。ドキドキして、でも目が離せない。
「ちょ、なんで、裸?」
「シャツの裾にスライム付くのやだなって思って」
「自分だけズルい。だったら俺のも脱がしてよっ」
「お前はその手でシャツ脱ぐと結局シャツ汚しそうだし、俺が汚れないように捲っててやろうって思ってる。てわけで、ほら、その手のヌルヌル、俺のちんこに塗りつけて?」
 言われて、なるべく視線を逸らしていた相手の股間をとうとう凝視した。
 既に緩く立ち上がっているソレは、しっかり皮のムケた大人ちんこだ。触るのは初めてではないのだけれど、でも触れていいよと言われる時はいつだって凄く緊張するし、興奮もする。彼の指はもうこちらのちんこは弄っていないのに、彼のちんこを見ているだけで、ますますギンギンに張り詰めていくのがわかる。
 それに気づかれてからかわれる前に、さっさと彼のちんこに手を伸ばした。せめて、彼が気持ちよさそうに喘ぐから、こちらも興奮したって言えるように。
「ふっ……んっ、」
 ヌルヌルの手でそっと握っただけで、聞いたこともないような甘やかな吐息がこぼれ落ちてビックリする。
「なに驚いてんの。ホント、このヌルヌルめちゃくちゃ気持ちいいいんだって。ほら、固まってないで、手、動かしてよ」
 促されるままゆっくりと手の中のちんこを、ヌルヌルと扱いていく。両手ともヌルヌルなので、片手で竿を扱き、もう片手はやわやわと玉をもんでやった。
「ぁ、……ぁっ、……ぃぃっ……ヌルヌルももちろんいいんだけど、それを人の手でってのが、ホント、凄い、イイ」
「え、このヌルヌル使って、人にしてもらったこと、ないの?」
「え、ないよ。というか、俺のちんこ触ったことある他人なんて、お前以外いないよ」
「ちょ、……とぉおおお」
「ちょ、なんなんだよ。あんま大声上げるなって」
 なんなのこの人。そんなこと言われたら期待しそうだ。彼の中ではまだまだ自分は幼い子供なのかもしれないけど、だからこんな風に少しエッチな新しい遊びを気軽に教えてくれるんだろうけれど、彼を慕う気持ちが何かをわからないほど、もう子供ではないのに。
「それより、お前も自分の握って扱いてみなって。俺がこんな気持ちよさそうにしてんの見たら、もう、怖いなんて思わないだろ?」
 チラリと視線を下に寄越した相手は、ふふっと笑って、興奮しまくってるじゃんと続けた。興奮してるのはヌルヌルへの期待ではないけれど、もちろんそれを口にするはずもなく、言われた通り玉を弄っていた手を離して自分のちんこを握って扱く。
「うぁ……」
「な、凄いだろ?」
 初めての感触と快感の衝撃に、驚き混じりの吐息を漏らせば、相手は酷く満足げでどこか自慢げだ。
「これは、確かに、ちょっと……てか、こんなの、すぐイッちゃいそうなんだけどっ」
「俺を置いてきぼりにして先にイッたら許さないけど?」
「もー、ホント、どうしてそういうこと言うの。だったらもっと気持ちよくなるまで、俺に自分も弄れとか言わないでよっ」
「だって早く弄ってみて欲しかったから、あっ、ぁあ、おまっ」
 さっさとイキたくなってもらわないと困ると、相手のちんこを少し乱暴なくらい扱き立てれば、慌てたように相手がこちらにしがみついてくる。
「ん、んんっっ、んんんっ」
 肩の辺りのシャツを噛んで、どうやら漏れ出る声を抑えているらしい。少し苦しそうでもあるけれど、それよりもずっとずっと気持ちよさそうだったから、激しく擦り立ててもヌルヌルのお陰で痛いなんてことはないようだ。
 相手の体が近づいてきたので、自分も腰を少し突き出し、二人分のちんこを一緒くたに握って擦り立てることにした。そうすれば、あいた片手で相手をもっと刺激してやれる。自分だけ先にイカないように、相手にもっともっと気持ちよくなって貰わないと。
 ただ、同時に握るということは、自分のちんこと彼のちんこが擦れ合うということで、それを意識するだけでも、こっちはどんどん興奮が増してしまう。これはさっさと彼をイカせないと本当にヤバイ。なんてことを思っていたのに。
「ぁ、あ、バカ、お前の、ちんこ擦れて、ああっ、バカっ、気持ちぃ、お前のちんこ、ぁああ」
 噛んでいたシャツを放したらしい相手が、耳元でこちらを詰りながら、あっさりと甘やかに上り詰めていくから。追いかけるようにこちらも上り詰めながら、これってもしかして期待してもいいんじゃないか、なんてことを思ってしまった。

 
 
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スライム+聖水=ローション

 お使いの帰り道、上方から名前を呼ばれて振り仰げば、年上の幼馴染が柔らかな笑顔を振りまきながら、お土産あるから上がっておいでと誘う。帰ってたんだと嬉しく思いながら、すぐ行くと返して小走りに玄関へと向かった。
 小さな町で子供も少ないから、幼い頃は本当に良く一緒に遊んで貰っていた。年の差がそこそこあるので、さすがに最近は一緒に遊ぶ事も殆どないし、そもそも相手はもうこの町を出ている。今は少し離れたところにある街で、薬師の見習いだかなんだかをやっているらしい。
 町民全員顔見知りなこの町で、在宅している日中に鍵を掛けている家は少ない。一応ドアを開けた最初にお邪魔しますと声を掛けたが、あとは勝手知ったるとばかりに、ずんずんと家の奥へと進んで階段を上がった。階段を上がって一番手前のドアが、先程彼が顔を出していた部屋のもので、ドアも叩かず勢いよく部屋の中に飛び込んだ。
「久しぶり!」
「うん、久しぶり。大きくなったね」
「なんで居るの? 仕事は?」
 さすがに辞めたのか聞くのは憚られて、でも、聞かずにはいられなかった。
「全然こっち帰れなかったくらい忙しかったのが少し落ち着いたから、店主が長めにお休みくれたの。一週間はこっち居る予定」
「本当に? また遊びに来ていい?」
「うん。どうせ家に居てもヒマしてると思うし、こっちいる間はいつでも遊びにおいで」
 やったと両手をあげて喜べば、相手も嬉しそうにニコニコしたまま、懐から何かが詰まった小瓶を取り出してみせる。
「何ソレ?」
「さっき言ってたお土産」
「何入ってるの? 食べ物? というか飲み物?」
 青みがかった液体のようにも見えるけれど、でも液体にしては揺れがないようにも見えた。
「食べても毒はないけど、食べたり飲んだりするものではないかなぁ」
 そう言った彼は、スライムのカケラだよと言葉を続ける。
「は? え? スライム?」
「そう。お前もそろそろ町の外出るの解禁になるだろ?」
 一番最初に出会うモンスターが多分コレと言いながら、彼は瓶の蓋を開けてそれを手の平に向けて傾けている。ドロリというかボトッといった感じで瓶の中から落ちてきたそれは、彼の手の平の上に乗ってプルンプルンと揺れている。
「どうしたの、これ」
「ここ帰る途中で見つけたのを、一部持ち帰ってきただけ」
「おみやげとして?」
「そうそう。怖くないから手を出して。両手でお椀作る感じに」
 言われるまま突き出した両手の中に、やっぱりボトリとスライムが移される。それは見た目通り、少しひんやりしていて弾力があった。
「うひっ」
「初めて触る?」
「うん。てかカケラだからって、町中入れていいの、コレ」
 町の中にモンスターを持ち込まないルールは徹底されている。いくら最弱モンスターと言ったって、スライムも例外ではないはずだ。
「あまり良くないかもね。だから内緒だよ。これからすることも全部」
「すること? これを俺にくれるって話じゃないの?」
「違う違う。こんなの持ってるのバレたら、お前が怒られちゃうだろ」
「じゃあ、どうすんのさ」
「それを今から見せてあげるんだって」
 これなーんだ、と言って、さっきの瓶よりもさらに小さく細長い瓶を取り出して掲げて見せる。今度の中身は間違いなく、無色透明の液体だった。
「水?」
「ただの水じゃないよ。聖水」
「って教会の?」
「そう。それ。これをスライムに垂らすの。スライムそれしかないから落とさないでよ」
 傾けられた瓶の口から聖水が数滴、スライムの上にこぼれ落ちる。その瞬間、プルンプルンだったスライムがドロっと溶け出し驚いた。なにこれ気持ち悪い。
「うわっっ」
「大丈夫だから落とさないで」
 再度強めに落とすなと言われ、気持ち悪いと思いながらも、手の平から溢れてしまわにように力を入れる。
「え、でもどうすんの。溶けてるよ、これ。なんかヌルヌルして気持ち悪い」
「手をこすり合わせるみたいにして、手も指もヌルヌルまみれにしておいて。お前の手の熱が移って、だんだん暖かくなるから」
「ええええ。やだー」
「俺は他の準備があるの。どうしても無理ならそのまま持ってるだけでいいよ」
 そう言った彼はその場にしゃがみ込むと、こちらのズボンのベルトに手を伸ばしてくる。
「ちょ、ちょ、準備って何。何しようとしてんの」
「お前のズボン脱がそうとしてる」
「だからなんで!」
「わかるだろ。お前にチンコ弄るとキモチイイって教えてやったの、誰だよ」
 性的なことの多くを彼から学んだのは確かだ。体が大人に近づくとちんちんから白い液が出るようになるとか、定期的にその白いのを自分の手で出さないとダメだとか、そのやり方とか。その白い液がなんなのかとか、子供の作り方とか。
「そ、だけど、今更恥ずかしいってば」
「それこそ今更隠すような仲じゃないだろ。お前の可愛い子供おちんちん、どーなったか見せてよ」
 そろそろムケた? なんてデリカシーの欠片もない発言に体の熱が上昇する。優しげな相貌と甘い声音に騙されがちだけれど、いたずら好きの愉快犯ってことも、言いだしたら聞かない頑固者だってことも、身を持って知っている。
「ねぇ、まさかと思うけど、このスライムをチンコに塗って扱くとキモチイイとかって話なの?」
「その通りだけど、なんでまさかなの。ヌルヌルめちゃくちゃキモチイイから、楽しみにしてな?」
 そう言った本人の顔が既にめちゃくちゃ楽しそうだった。

この年上の幼馴染とスライムローション使った兜合わせがやりたかったはずだったのに辿り着くまえに力尽きた。そのうち気が向いたら続くかも。
続きました→

 
 
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青天の霹靂

 父親同士が親友だとかで、互いの家は同県とはいえ端と端の遠さなのに、幼い頃は良く二家族揃って出かけたり、長期休暇中は相手の家に泊まったり、逆に泊まりに来たりと割合仲が良かった。けれど成長するにつれ、互いの溝は分かりやすく深く広がっていった。
 理由ははっきりしている。父親たちも学生時代の大半を捧げていたという、とある競技の才能が自分にはないからだ。
 部活のレギュラー程度なら努力だけでもどうにかなるが、その上となると難しい。競技自体は楽しいが、地域の選抜は当たり前でユースの県代表にも選ばれるような活躍をしている相手とは、はっきり言って既に生きている世界が違う。県代表になれば一緒にプレイできるよと、だからお前も選ばれなよと、何の躊躇いもなく口に出来る子供というのは残酷だ。
 多分それが決定打で、自分は彼をやんわりと避けるようになった。元々県の端と端で、中学に上がってからは部活優先だったから、プレイベートで会うのなんて年に一度か二度程度になっていたし、県大会などではお互い部の一員として参加しているのだから、顔を合わせたってそうそう親しく話込むこともしない。なので避けると言ってもあからさまに突き放したわけではなく、前より少しそっけない程度でしかなかったけれど。
 残念ながら、自分たちのように息子同士も競技を通じて親友に、などと思っていただろう父親たちの望みは叶うことなく、力量の差がありすぎて同じ道を進むことも、同じ景色を見ることも出来そうにない。
 そう悟って、大学に進学すると共に、真剣に競技に打ち込むのは止めた。競技そのものは好きだから、練習日が週に三回程度の社会人サークルに参加はしたが、大会などでそこそこの成績を収めている大学公認の部活は練習を見に行くことすらしなかった。
 納得済みの選択で、そこに未練なんてない。社会人サークルでも十分に楽しかったし、それなりに充実した大学生活を送っていた。
 しかしその生活は、翌年の春にひとつ下の彼が同じ大学に入学してきて一変した。
 最初の衝撃は、彼が進学する大学を知った父からの報告電話で、最初は絶対に嘘だと思った。うちの大学に進学する意味がまったくわからなかったからだ。
 確かに大学の部活もそれなりに強い。でも全国大会常連校という程ではないし、彼なら他からも色々スカウトが来ていたはずだ。
 次の衝撃は、ちゃっかり同じアパートの空き部屋に入居を決めて、近所になったから宜しくと挨拶に来たときだ。こちらが避けていたのはある程度感じていただろうに、なんのわだかまりもありませんという顔で笑っているのが若干不気味ではあったが、そこはお互い大人になったということで、こちらもなんとも思ってない風を装い宜しくと笑って返した。確かに知った顔が近所にいたらお互い心強いだろう。
 そして今現在、三つ目の衝撃に耐えている。大学の部活に初参加してきたという彼が、怒りの形相で訪れていた。
 大学で競技を続けていると聞いたから来たのに、なんで部活に入ってないんだというのが彼の怒りの理由らしい。
「続けてはいるよ。社会人サークルだけど」
「社会人サークル? それ本気で言ってんの?」
「本気も何もそれが事実だって」
「だからなんでっ!?」
「何でって、将来のこと考えたら学業疎かにしたくないし、それには体育会系のがっつり部活はキツすぎるよ」
「ねぇ、どこまで俺を裏切れば気が済むの?」
 キッと強い視線で睨まれて、さすがに一瞬たじろぐ。それでも競技の関係しないところでまで負けたくはない。
「裏切るってなんだよ」
 腹の底から吐き出す声は不機嫌丸出しだったが、相手は欠片も怯む様子がないから悔しい。
「いつか一緒にプレイしようねって約束したろ」
「馬鹿か。お前、それいつの話だよ。俺にはお前と違って県代表に選出されるような力ないって、さすがにもうわかってんだろ」
「わかってるよ。だから同じ大学入れば一緒にプレイできるって思って入学したのに、なんで部活入ってないんだよって話をしてんだろ」
「いやだから、大学の部活は俺にはハードすぎるって」
「今からでも入ってよ」
「お前、俺の話、聞いてた? というか一緒にプレイしようねなんて子供の約束、とっくに時効だろ」
「俺まだ諦めてないんだけど」
「しつっこいな。だいたいお前、俺に避けられてたの気づいてただろ。そこまで鈍くはないだろ? それで良くそんな事言いにこれるよな」
 避けてたと明言したら、強気の顔がクシャリと歪んだ。
「こんなに好きにさせておいて、どうしてそんな酷いことばっか言うんだよ」
「はぁああああ?」
 好きなのにーと、でかい図体をして駄々をこねる子供みたいにその場に泣き崩れた相手を明らかに持て余しながら、それでもなんとか会話を続けてみた結果、彼の言うところの好きは間違いなく恋愛感情の好きらしいと判明して、一瞬気が遠のきかける。しかもはっきりと仲の良かった小学生時代からという年期の入りようだ。
 全く、欠片も、知らなかった。気付いていなかった。
 あまりの展開に思わず天井を見上げながら、青天の霹靂ってこういうのを言うんだろうなと思った。

有坂レイへの3つの恋のお題:青天の霹靂/こんなに好きにさせておいて/いつまでも交わらない、ねじれの関係のように shindanmaker.com/125562

 
 
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叶う恋なんて一つもない

 叶う恋なんて一つもないと言って、泣きそうな顔で笑う幼馴染が、今現在想いを寄せているのは、我がクラスの担任教師で来春には結婚が決まっている。彼が泣きそうになっているのは、今朝教師の口から直接、その結婚の事実が語られたせいだ。
 叶う恋がないのではなく、恋を叶える気がないんだろう?
 なんてことを内心思ってしまうのは、毎度毎度好きになる相手が悪すぎるせいだ。そもそも恋愛対象が同性というだけで、恋人を見つけるハードルが高いというのに、女性の恋人持ちばかり好きになる。酷い時は妻子持ちの男に恋い焦がれて、苦しいと泣いていたことさえあるのだ。
 幼稚園からの付き合いで親同士の仲も良く、そこからさき小中高等学校ずっと同じだったせいで、あまり無碍にも出来ずに愚痴に付き合い続けてきたが、正直バカじゃないかと思っている。
 妻子持ちなんか問題外だし、女性の恋人が発覚した時点で恋愛対象から外せよと思うのに、どうしよう好きになったみたいと言い出すのは恋人発覚後が大半だ。要するに、最初からその恋は叶える気なんかなく始めているのだと、そろそろ自覚すればいいのに。
 なんか男が好きみたい。同性愛者とかホモとかゲイとかそういうやつかも。なんて言って、やっぱり泣きそうな顔で相談してきたのは中学に上がった頃で、お前にしかこんな話できないからなんて言葉に絆されていたのがいけない。いい加減、あまりに不毛な恋の話に飽き飽きしていた。
「だったらいい加減、叶う可能性がある恋をしろよ」
「えっ?」
 いつもなら一通り好きに喋らせて、そういう相手ってわかってて好きになったんだからそれで辛い思いをするのは仕方ないだろ、程度の慰めにもならないような言葉しか吐かないからか、相手は泣きそうになっていた目を驚きで見開いた。
「正直、お前の叶わない恋話にはうんざりしてる」
「え、でも、俺、話聞いてもらえるのお前くらいしか……」
「知ってる。だからずっと、お前がそれでいいなら仕方ないと思って話聞いてきたし、たとえ叶わない恋でも好きって気持ちがあると毎日が楽しいって言ってたから、苦しいって泣くのも含めて恋を楽しんでるのかと思ってヤメロとも言わずに居たけどさ。けど、そんな恋ばかり選んできたくせに、叶う恋がないって泣くくらいならもうヤメロよ。そんな恋をするのはやめて、叶う可能性がある恋をすればいい」
「だって好きって気持ちは、心のなかに自然と湧いてくるものだよ? 叶う可能性がある恋なんて選べないし、そもそも可能性があるかどうかなんてわからないんだけど」
「でもお前は、叶う可能性がない恋ばかり選んできただろ。なんで恋人持ちばっかり好きになるんだよ。恋人がいればお前には振り向かないってわかってるから、だから安心して恋が出来るってだけじゃないのか?」
 その指摘はまったくの想定外だったようで、やはりビックリしたように目を瞠った後、そんなこと考えたこともなかったと言った。
「じゃあまずは自覚するトコから頑張れば? でもって、彼女やら嫁やらが居ない相手を意識的に好きになってみろよ。それだって同性相手は無理って言われる可能性高いけど、でも恋人持ちや妻帯者よりは多少、恋が叶う可能性もあるだろ?」
「自覚、か……」
 呟くように告げて、相手は黙りこんでしまう。まぁ欠片も考えたことがなかったようだから、しばらく放っておけばいいかと、手近にあった雑誌を手に取りペラリと捲った。
「ね、あのさ」
 やがておずおずと声を掛けられて、目を落としていた紙面から顔をあげる。
「何?」
「それってさ、相手、お前でも良いの?」
「は?」
「そういや話聞いてもらうばっかりで、お前の恋話とか聞いたことないよね。お前、男もというか俺も、恋愛対象になる?」
「待て待て待て。そりゃ確かに、恋人居ないやつを意識的に好きになってみろとは言ったけど、そこでなんで俺を選ぶんだよ」
 まさか自分に火の粉が掛かって来るとは思っておらず、さすがに慌ててしまった。
「それはまぁ、お前なら好きになれそうかもって思ったから?」
「付き合い長いし、そりゃお互い嫌っちゃいないだろうけど、だからって安易にもほどがあるだろ」
「だってお前が言った通り、俺、多分、叶わない恋じゃないと安心して相手を好きになれないんだよ。でもお前なら、叶わないって確定してなくても、好きになれそうな気がする」
「お前自分が言ってることの意味、マジでわかってんの? その恋叶ったら、俺と恋人になるって意味だぞ?」
「わかってるよ。というか、叶わないからヤメロ、とは言わないんだね」
 可能性ありそうといたずらっぽく笑うから、もしかして揶揄われているんだろうか?
「叶わないって断言したら、お前、逆に安心しきって俺相手に辛い恋始めそうだろ。言えるわけ無い」
 自分相手に辛い恋を患って泣かれでもしたら、どう対応していいかわからないし、それこそうっかり応じてしまいかねない。でも彼と恋人になりたい気持ちがあるわけでもなかった。
 正直、今の今まで、まったくの他人事でしかなかった。
「というか、お前、俺からかってる?」
 いっそ揶揄っててくれた方がましだったが、すぐに揶揄ってないと否定されてしまう。
「からかってないよ。意識的に、お前を好きになってみよう、とは思い始めてるけど」
「気が早い。というか先生の結婚話に泣いてたくせに、切り替え早いな」
「うん。お前の話に驚いて、ちょっとどっか行った。辛いの吹っ飛んだから、感謝してるし、それもあってお前好きになってみたい気にもなってる」
「マジかよ」
「割と、本気」
「嫌っちゃいないが、お前を恋愛対象と思って見た事は一度もないぞ?」
「いいよ。だからさ、」
 好きになってみてもいいよね? と続いた言葉に、嫌だダメだとは言えなかった。

「書き出し同一でSSを書こう企画」第1回「叶う恋なんて一つもない」に参加。
https://twitter.com/yuu0127_touken/status/739075185576267776

 
 
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彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(目次)

キャラ名ありません。全10話。
高校3年生×大学1年(視点の主)。幼馴染。
幼馴染の親に頼み込まれて家庭教師を引き受けた視点の主が、彼女が居たら受験勉強頑張れるという幼馴染に、彼氏だけどと恋人ごっこを持ちかける話。
クリスマスから卒業までの4ヶ月を、季節イベントに絡めて書いていこうというチャレンジをしてました。
最終的にごっこではない本当の恋人になります。

エロ描写があるのは最終話だけです。一応タイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 恋人になってみた
2話 クリスマス・イブ
3話 クリスマス
4話 初詣 1
5話 初詣 2
6話 バレンタイン
7話 ホワイトデー
8話 卒業 1
9話 卒業 2
10話 卒業 3(R-18)

 
 
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