別れた男の弟が気になって仕方がない(目次)

キャラ名ありません。全42話。
勘違いと思い込みが激しい社会人28歳(視点の主)×誰でもいいから抱いてほしい大学生19歳の出会いから恋人になるまでの話。年の差9歳。
どちらも高身長。
攻めは報われない想いを一途に抱えて片想いしてるような子を、優しく甘やかしてやりたい困った性癖持ち。受けの兄とも、兄に別の本命がいるのをわかってて付き合っていたが、ある日「兄と別れて下さい」と受けが押しかけてきたせいで破局。
その後、誰でもいいと抱いてくれる男を探す受けを偶然見かけて放置できず、最終的に抱くことになる。
兄の本命相手に受けも報われない片恋をしているのだと思って、一時的な慰めを与えるつもりで抱いていた攻めだが、受けの想いの向かう先が自分だと気付いて、失恋する気満々で抱かれていた受けを口説き落として恋人になります。
攻めの勘違いな思い込みと、受けが攻めを意識していることを頑なに隠すので、グダグダと長いです。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 押しかけてきた恋人の弟
2話 ベッドの上で(R-18)
3話 兄到着
4話 別れ話
5話 ラブホ前で再会
6話 兄の本命は幼馴染
7話 男紹介の約束
8話 誰でもいいなら俺でも
9話 性感染症のリスクについて
10話 兄の後悔
11話 魅力を教えてあげる
12話 可愛いよ
13話 お試しのキス
14話 狡い大人
15話 指で拡げる(R-18)
16話 前立腺いじり(R-18)
17話 フェラで吐精(R-18)
18話 アイマスクを装着して挿入(R-18)
19話 奥まで拡げる(R-18)
20話 終わりだよ(R-18)
21話 抱きしめて宥める
22話 続けて欲しい
23話 なかった事にしてあげる
24話 二回目は正常位で(R-18)
25話 怒ってる?(R-18)
26話 気持ちいい?(R-18)
27話 名前を呼ばれる(R-18)
28話 聞かせてはいけなかった
29話 俺と付き合わないか
30話 どうして甘やかすの
31話 兄との過去回想
32話 性癖の話
33話 信じてもらえない好き
34話 いつから好きだった?
35話 本当のことを教えて
36話 予定と想定外
37話 あれはチャンスだった
38話 バチが当たった
39話 難儀な性癖
40話 失恋して次の恋へ
41話 幸せになれますか?
42話 恋人に、なります

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない38(終)

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 そんな気持ちを伝えるために、他にもまだあるかと問いかけた。全て否定してやるつもりだけれど小出しで頼むと言えば、追加ではなく、まだ最初の質問に答えていないと返された。
「あなたが幸せに、なれますか?」
「幸せに、なるつもりだけど。というかそれ、お前を幸せにできるかどうかじゃないんだな」
 幸せにしてくれるんですか? と聞かれる方が妥当な気がするのに。と思っていたら、思いもよらない理由が耳に届く。
「だって兄に言われてたでしょう?」
「え、何を?」
「新しい恋人と、兄と付き合っているときよりもずっと幸せになって、って」
「あー……確かに言われた、けど」
「幸せになって貰えないと、兄に知られた時に俺が怒られます」
 あの人本気で怒ると結構面倒なんですよと続いたから、思わず、確かにそんな感じはあったねと言いながら、少しばかり別れの日へと思いを馳せた。
 兄とのことを思い出していると、すぐに相手も感じたのだろう。
「兄を怒らせたこと、ありました?」
「別れ話した最後の日、初めて怒ってる顔を見たよ。でもあれ、押しかけてきたのお前で、別れろって言ったのもお前だったからなぁ」
 あの怒りの矛先が自分だけに向いていたらと考えると、落ち着けさせるのにもっとずっと苦労しただろうとは思う。
「ああ、あの後もかなり怒られました」
「だろうね。たいして知りもしない相手に、ホイホイ体差し出すなってのは言われなかった?」
「まぁそれもありましたけど。でもさすがにそれは、お前が言うなって感じだったので」
「言い返したの?」
「え、そりゃ、一方的に怒られなきゃならない事はしてないですから。最初に誘ったのはあなただし、一応、兄の幸せのためにって理由もありましたし。まぁ他にも色々、こっちの言い分もあったので」
「お前らの兄弟喧嘩、なんか激しそうだなぁ」
「兄はギャンギャン煩いですけど、面倒なだけでそこまで激しくもないですよ。さすがに殴り合いとかにはならないんで」
 本当に面倒なだけだとケロリとした顔で言い募るから、どうにもこの兄弟の関係がどんなものなのか、今ひとつ想像がつかない。
「でも多分、俺達が恋人になったとして、それを知ったあいつが何か言うとしたら、俺に対して、弟に手ぇ出しやがってってのが先だろ」
「それは言うでしょうね。でもあなたに幸せになって欲しいとも、本気で思ってるはずなので」
「うん。それはわかってるし大丈夫。でさ、お前が俺と恋人になるって言ってくれたら、それだけでも俺は相当幸せになれるんだけど。まだ、俺の恋人にはなって貰えない?」
 聞けばゆるく首が横に振られた。やっとだと思うと喜びで胸が熱くなる。
「あなたの恋人に、なります。色々未熟で心配かけそうですけど、どうぞよろしくお願いします」
 律儀な挨拶にふふっと笑いを零しながら、ゆるく抱えていた腕の中の体を、ギュウときつく抱きしめた。
「ありがとう。凄く、嬉しい」
 それからまた腕の力を抜いて、今度はしっかりと相手の顔を見つめながら。
「こちらこそ、ヨロシク。お前にも言われたしなるべく気をつけるけど、勘違いや思い込みで動いてそうなら早めに指摘して。さっき両想いの恋人って初めてって言ったけど、俺自身、可愛くて愛しくて仕方ないって思う相手が、真っ直ぐに俺を好きって言ってくれるのホント初めてだからさ。お前が思う以上に俺も慣れないこと色々あると思うけど、一緒に頑張ってくれる?」
 ハイと言って軽く頷いた相手の顔にグッと顔を寄せれば、察してそっと瞼が落とされる。チュッチュと軽いキスを何度か繰り返していたら、やがてチロと舌が差し出されて来たので、遠慮なく絡め取って吸い上げた。

<終>

多分この後「お前が俺を好き、俺もお前を好き。って前提でやったら、さっきとは違うものが見つかるかもよ?」を検証することになると思うのですが、さすがに長くなりすぎたのでここで終わりたいと思います。長々おつきあいありがとうございました。

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない37

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 今日の内に恋人になってしまいたい気持ちはあるが、ここまではっきりと自分の気持ちが自覚できた以上、今日の所は諦めてもいいような気がしてきた。
 取り敢えずは連絡先を交換して、ゆっくりと相手を口説いていくのもいいかもしれない。もしまた首を縦に振ってもらえなかったら、今度はちょっと引いてみようか。
 なんてことを思いつつ相手の返事を待てば、相手は困ったように、そして少し怯えるように口を開く。その様子から、ああもう今日は無理そうだと思ったのに、けれど相手の口からこぼれてきたのは恋人となることを嫌がる言葉ではなかった。
「俺と恋人になっても、あなた、幸せになれますか?」
 あなた優しいからデートとかしてもこっちに気を遣ってばっかりになりそうだし、愛想ないし背も変わらないくらい高いし年の差あるし子供だし、可愛いって言ってくれるけどきっとそれベッドの中限定で普段は可愛げなんてあるはずないし、なんてツラツラと続いていく言葉を思わず聞き続けてしまった。
「ちょ、待って待ってストップ」
 ハッとして、慌ててそれを中断させる。
「恋人になったらちゃんとデートとかしてくれる気があるってだけで既に嬉しいんだけど、気を遣うことに関してなら、お前が楽しんでくれたり喜んでくれたらそれでいい。そうなるために気を遣うのは俺にとっちゃ当たり前で苦痛じゃない」
 第一、本当に自分ばかりが気を遣うデートになる気がしない。わかりやすくはないかもしれないけれど、相手だって彼なりに気を遣ってくれそうだし、それに気付けないほど鈍感でもないつもりだった。いやまぁそこに、勘違いの思い込みが発動しないとも限らないけれど。
「それに、お前が愛想いいタイプじゃないのなんて言われなくても知ってる。ベッドの中含めて、お前は可愛げよりふてぶてしくて図太いって感じだけど、それでもお前が可愛くてたまらない瞬間があるのは事実だし、そのうちそのふてぶてしいとこも可愛いって言い出すかもな」
 あとはなんだっけと、彼がこぼした言葉を思い返しながら続けていく。
「年の差はむしろお前が嫌がる要素だろ。心配して色々口出ししちゃって、お前にうざいって言われるの、容易に想像できる。それに、保護者気取りで子供扱いした自覚はあるけど、ガキ臭いってバカにした覚えはないし、結局はそれも俺にすりゃ可愛いなって思う要素の一つだよ」
「可愛いで何もかもが済む問題じゃないでしょう。あれこれ心配しなきゃならない子供の相手なんて、面倒だったりつまらなくありませんか?」
「つまらないどころか、あれこれ心配しなきゃならないくらい無垢な子を、自分好みに育てられるって考えたら最高だろ。もちろん、エッチなことも含めた話な。もっともっと気持ちぃ事、俺にいろいろ仕込まれちゃうかもね?」
 にやりと笑って、少々余計な事を足しつつ否定してみた。嫌そうな顔をするかと思ったら、どうやら照れさせてしまったようだ。頬をうっすら赤く染めながら、戸惑う様子が可愛らしい。
「後はー……そういやお前、背ぇ高いの何かコンプレックスあんの?」
 そういえば、大柄な男を抱くことが出来る相手を探している、だとか、こんな自分を抱ける相手なら誰でもいい、という言い方をしていたような気がする。
「コンプレックスというか、この身長で抱いて貰いたい側って、オカシクないですか?」
「いや、全然。てかお前がセックスしたいって男漁りしたら、お前モテまくるはずだよって、俺、言わなかった?」
「それ、俺が抱かれたい側ででも、ですか?」
「お前が抱かれる側での話しかしてないつもりだったけど」
 兄の遍歴をある程度知っているようだったけれど、逆に言うと、兄の話だけが彼の知るこちらの世界なのかもしれない。恋愛もセックスも避けてたって言っていたし。
「自分より小柄な相手じゃなきゃ抱きたくないって奴もそりゃいるだろうけど、逆に自分より大柄で圧倒的に男臭い相手をアンアン言わせたい可愛い系、なんてのも居るし様々だよ。要は自分がいいなと思った相手と、性嗜好が合えばいいだけの話。俺はお前を可愛いなって思いながら抱けるの証明済みなんだから、なんの問題もない」
 取り敢えずはこんなものだろうか。
 不安はできるだけ言葉にしてほしいし、言葉にされたものはなるべく全て否定してやりたいが、勢い良くあれこれ言われてしまうと取りこぼしてしまいそうで困る。

続きました→

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない36

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 さっきも片想いになること前提で抱かれたのはなぜか聞いたけれど、さすがにもうドMだからと茶化されることはなかった。
「あなたが、本気で俺を心配していたから、ですかね。簡単に体の関係を持つなって、それは凄くリスクの高いことだからって、繰り返してたから。それが事実だってことは、多分俺もわかってたから」
 だから色々考えてみたんですと、彼は言葉を続けていく。
「もし、誰でもいいという気持ちで抱かれて、その相手にスキという気持ちが沸かなかったら。他の誰かに抱かれるまでしても、気になるのはあなただったら。あなた以上に気になる誰かを探して回るのは、あなたが言うようにリスクが高すぎますよね。その誰かがすぐに見つかるかもわからないのに。そうなってからやっと、あなただから好きって認める事になる可能性を考えたら、あなたが俺を抱く気になってる今、あなたへの気持ちに決着つけてしまったほうがいいんだろうって結論になりました。あなたのことが気なる気持ちをちゃんと恋に変えて、そして失恋して、前に進まなきゃって思いました」
 今抱えてる想いに決着がつけば、次の恋に行けるって兄に言ってたでしょうと言われて、そういやあの時、リビングの扉の向こうに彼も居たことを思い出す。
 思いの外しっかりと、自分の発した言葉の多くが彼に受け止められている。
「お前、可愛すぎなんだけど」
 こみ上げる愛しさをそのまま吐き出した。
 なんだかあれこれチグハグで、でもひたすら一生懸命だった彼とのセックスを思い出す。
「なんか、頭がいいバカって感じ。ホント、可愛い。どうしよう」
 次々とあふれてくる愛しさに、どうしようもなくクフフと笑いを零してしまうせいで、相手はいたく不満げだ。
「なんかムカつくんですけど。なんなんですか」
「うん、ゴメンね。辛かったね。しなくてもいい失恋、させちゃったね」
 始める前にこれを聞き出せていたら、失恋前提のセックスなんてさせなかったのに。でもどう頑張っても、体を重ねる前の彼から、これらの情報を聞き出せた気がしない。
 今、聞き出せているのだって、しつこく食い下がってようやくという感じだし。ああ、でも、本当に、粘ってよかった。
「え?」
「したでしょ、失恋。俺がお前を引き止めたから辛うじて残してくれてるけど、俺が約束通りお前の言葉をなかった事にしたら、お前はお前が決めた通りに俺への恋を捨てたんだって、わかるよ」
「お前失恋したねって、そんな嬉しそうに言われてる俺は一体どうしたら……?」
 不満と戸惑いがせめぎ合っているような顔だ。そんな顔になってしまうのは当然だと思うのに、笑っていてはダメだと思うのに、それでも愛しさが溢れていくような状態は続いたままだった。
「そうだね。じゃあ、失恋したんだから、次の恋に進むってのはどう?」
「それ、って……」
「うん。相手は俺で」
 恋人になってと、もう何回目かわからない言葉を繰り返す。
「好きだよ。お前が可愛くて仕方ない。だから、失恋直後のお前に付け込ませてよ。お前が俺を好きだから、恋人になろうって言ってるんじゃない。俺がお前を好きだから、恋人になって。俺を、もう一度、好きになって」
 こんな風に誰かを口説くなんて初めてだった。しかもそれが九つも年下の、子供扱いして保護者面で心配していた相手だなんて、本当に不思議で仕方がない。不思議で、たまらなくドキドキする。
 可愛いとか愛しいとか思う相手はたくさんいたけれど、彼らが見ていたのは自分ではないとわかっていたし、その想いのベクトルを無理矢理自分に向けようと思ったことはない。一途に誰かを想っている姿がいじらしいのであって、セックス一つで簡単に気持ちがこちらに向いてしまうような相手を、可愛いとか愛しいと思い続けることは出来なかったから、失敗して揉めたこともないわけじゃないし、一時的な慰めを与えるときは随分と慎重にもなった。
 何度かは恋人も作ったけれど、恋人というのは信頼できるセックスパートナーのことで、恋愛の真似事を楽しむことはしても、好きで愛しくてたまらないから恋人になってくれなんて言って始まった相手は居ない。

続きました→

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない35

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 結局その目論見は失敗したけど、多分それで良かったんだと思うと言った相手は、ありがとうございますと続けた。更には、初めての相手があなたで良かったとも続ける。
「でもさっき、俺に抱かれたの失敗だったって言ってなかった?」
「失敗したって思ってますよ。なんでこんな事になってんだろって、凄く思ってるし。でもだからって、あなたが教えてくれた色々が帳消しになるわけじゃないですよね。あなたで良かったと思う気持ちも、ちゃんとあります」
 やっぱりまだ子供だなと思うことも多いのに、こうして静かに言葉を重ねる姿は、見た目相応に大人びて感じてしまう。
「そう言って貰えると、少し安心するな。というか、保護者気取りの余計なお節介が、少しでもお前に響いてたなら良かった」
「まぁ、保護者気取るなら保護者のまま終えてればよかったのに、とは思ってますけど」
「お前が俺の名前呼んで好きって言っても、初めてのセックスに気持ち引きずられちゃったなーって流せば良かったって?」
「そういう風には、考えなかったんですか? 気持ちよくセックスしたら、なんだかんだ情が湧くもんだって、そうあなたに言われたら信じてたと思うし、正直、そう言って欲しかったのかも知れないんですけど」
「ビックリしすぎたのと、お前が本当に俺を好きって言ってるのかもと思ったら、それどころじゃなかった。というか、そもそも保護者意識からお前抱いてやったわけじゃないんだけど、そこわかってる?」
 違うんですかというから、違うよと返した。でもそう思われてても仕方がないとも思う。
「誰でもいいから抱いてほしいなんて無茶する子供を放って置けないってのはもちろんあったし、お前が危ない橋を平気で渡って行かないようにとアレコレ話した上に一部実践までしちゃったけど、誰でもいいなら俺でいいよなって思ったのは、お前の中に、人に言えない隠しておきたい想いがあると思ったからだよ」
 性癖教えたろと言えば、思い当たることがあったようで納得顔で頷いている。
「兄の本命を、俺も好きなんだと思ってた、ってやつですか」
「そう。お前頑なに、誰でもいいからすぐにでも抱いてほしい理由、言わなかったからな。好きだった相手と実の兄貴が付き合い始めて、自棄になってるせいかなとか考えてた。そういうの、一時的な慰めってわかってても、優しく甘やかしてやりたくなる」
「ホント、難儀な性癖ですね」
 言われなくてもわかってるとは言わず、苦笑だけ返しておいた。
「ああ、でも、それで思い出した。お前、俺に抱かれたせいで俺を好きになったっての、嘘だろう」
「どういう意味ですか?」
「抱かれる前から好きって思ってたろって意味だけど」
「なんでそう思うんですか?」
「キスする前から、端々に、好きな相手がいるって態度漏れてたから。それどころか、兄貴絡みで片想いしてるってバレバレなことも言ってた、はず」
 だからこそ、まさか自分が対象とは思わず、兄の本命を彼もまた好きだったのだろうと、素直に思い込んでしまった。
「あー……まぁ、これからあなたに抱かれるって決まった時から、あなたを好きになるのわかりきってましたしね。逃れようもなく好きになる相手に、目の前で感染症予防のレクチャーされるとか、あの人の弟だから心配して抱いてくれるんだって思い知らされる感じで、なんかちょっと切なくはなりましたよね」
 責めるような口調ではなかったが、それでもやはり申し訳無さで胸が痛い。今更どうしようもないし、彼の気持ちを知った状態でやり直すことなんて出来はしないのだけど。
「そういやなんで俺に抱かれる気になった? 誰でもいいなら俺でもいいだろ、とは言ったけど、俺じゃない誰かが良かったんだろう?」
 考えてみたらあなたが適任ってわかったからと言っていたような気がするが、それはどういう意味だったんだろう?

続きました→

 
 
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別れた男の弟が気になって仕方がない34

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 そっと頭に手を伸ばして、髪を梳くようにゆっくりと撫でてやる。
 泣くほど辛い話なら、これ以上話さなくてもいいと、そう言ってしまいたい気持ちを飲み込んだ。それは相手を想う優しさというよりは、相手の泣き顔を見るのが辛いという、どちらかといえば自分本意な感情だろう。あれだけしつこく食い下がって話せと訴えたこちらが、せっかく話し始めた相手の覚悟を、砕くような真似をするわけにいかない。
 どんな理由でも受け止めると言ったのだから、彼が全て話し終わるのを、まずは待とうと思った。
 相手は黙って頭を撫でられながら、微かに震える呼吸を繰り返している。なのでこちらも、その呼吸が整うまで、黙って頭を撫で続けてやった。
「す、みません」
「謝らないでよ。俺が無理させてるの、わかってるからさ。でもゴメンね、これ以上話さなくていいとは、言ってやれない」
「わかって、ます」
「うん。ありがとう」
「さっきの、続きですけど」
「もう落ち着いた? 続き、話してくれるの?」
「はい」
 はっきりとした声音に、頭に置いたままだった手を下ろす。
「じゃあ、聞かせて。どんなバチが、当たったと思ったの?」
「あなたのことばっかり考えるようになった、がソレですよ。もっと正確に言うなら、あなたにベッドの上でされたことが忘れられなかった、かもですけど」
 確かに今日、慣らす最初の段階で、あの日のことを思い出しながら自分で弄っていた可能性の高さに気付いていた。でもそれを、バチが当たったせいでと言いながら、肯定されるとは思わなかった。
「たいしたことはされなかった、ってのはわかってるんです。あなたは本気で俺を抱こうなんて思ってなかったし、今にして思えば、俺が恋敵と思ってたあなたに、意地悪されてただけなんでしょう?」
 ドタキャンされて苛ついてた八つ当たりとか、タイミングの悪さも大きく影響しているとは思うのだけど、意地の悪い誘いを掛けて相手を試したことも事実ではある。
「恋敵へ意地悪してた、だけ、ではないけど、な」
 それでもやっぱりこれだけはわかってて欲しくて、だけ、という部分を強調した言い方をすれば、意地悪って意味なら随分と生易しい意地悪でしたもんねと返される。
「でも中途半端に優しい意地悪だったから、今まで俺が目を逸らしてきた事と、向き合う羽目になったんです。男が好きなのか、とか、男に抱かれたい性癖があるのか、とか。それともあなたを好きになったのか、とか。なんかもう色々グチャグチャになって、わけわかんないくらいあれこれ考えましたよ」
 つまりその結論が、誰でもいいから抱いて欲しい、に繋がったんだろうことはなんとなくわかった。
「抱かれることで何が変わると思ってるのかって、聞きましたよね。何をそんなに焦って急ぐのかって」
「聞いたね」
「焦ってたのは、俺の中でのあなたの存在が、どんどん大きくなっていくのが嫌だったからですよ。兄の恋人だった人、というだけで、ほぼ何の接点もない、一度しか会ったことない相手が、自分の中を占めていくって、なんか怖くないですか?」
 それを恋や一目惚れと呼ぶ場合もあるんだろうけれど、残念ながら、そんな発想にはならなかったようだ。あなたのせいであなたに恋をしたらしい、なんて言われながら再会していたら、最初は躊躇うかもしれないが、きっと今と同じようにその想いを受け入れたいと思っただろう。年齢差や付き合っていた相手の弟という部分やらの躊躇いで、多少なりとも揉めるかもしれないが、少なくともここまでややこしいことにはなっていなかったはずだ。
 でも最初から恋したって言ってくれれば良かったのに、なんて軽々しく言えるはずもなかった。
「何が変わるか、何を得られるか、なんてのを考えながら相手探してたわけじゃなくて、とにかくあなた以外の誰かに抱いて貰わなきゃって焦ってたんです。あなたじゃない誰かに抱かれても、その相手とキモチヨクなれたら、その相手の事が気になって、もしかしたら好きになったりするのかもって思ってて、多分、それを確かめたかったんだと思います。あなたのことが気になるのは、あなたに触られたせいだろうって思ってたから。あなただから特別ってわけじゃないって、思いたくて」
 これもあなたが言ったんですけどと、彼は言葉を続けていく。
「エッチが上手い人とやって善い思いしたら、体が気持ち良くなれる相手となら誰でも平気になっちゃう事が多いって。それを狙って意図的に抱かれるような人は稀だって言ってましたけど、多分、その稀なタイプが俺です」
「あー……エッチの上手い人、ってとこには、なんか拘ってたもんな、お前」
 確かに、年齢や体格や性格への希望は薄かったけれど、上手な人を紹介して欲しいとは言われた。抱かれたことがないのは知っていたから、もっと単純に、少しでも上手い人と安心して初体験がしたい程度の意味に捉えていた。

続きました→

 
 
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