兄の親友で親友の兄2

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 そんな顔すんなと言って、目の前の男はまたしても呆れの滲む息を、今度は大きく吐きだした。なんだかずっと、呆れられっぱなしだ。
「お前さ、いっそ告白して振られてこいよ」
「は?」
「そしたら一回だけ、あいつの代わりに抱いてやる。やってる間、あいつの名前で呼んでもいい」
「なんだそれ。わかった振られてくるね、なんて言うとでも思うの?」
 聞けばあっさりと思わないと返されたから、だったらなんでそんなことを言うんだと思う。思ったまんま口に出せば、弟の代りにされても許せるとしたらその条件くらいしかないからだと返された。
「名前呼ばないからちょっとくらい夢見させてってのはダメなの?」
「それはダメだな。基本的な話になるけど、俺、俺を好きじゃないヤツ抱きたくないし」
「さっき錯覚無しでなら抱いてもいいって言ってたけど、錯覚なしがイコールであなたを好きと思って抱かれるにはならなくない?」
「だからやっぱなしって言っただろ。だってお前、お前自身を抱けるって言っても欠片も喜ぶ素振り無かった上に、なんでお前を抱けるっつったかも全く理解してないもんな」
 兄に似てるから以外で抱く気になる理由なんてあるのかと聞いたら、また呆れられるんだろう。
「親友の弟で、弟の親友で、俺自身との繋がりはそう強くないけど、深刻な顔で抱いてくれって言われたらいいよって言っちまうくらいには元々お前を好きだと思ってた、って話だよ」
 余計なことを言ってしまわないようにキュッと唇を引き結べば、苦笑と共にそんなことを言う。なんだそれ。意味がわからないと言うよりは考えたくなくて、呆然と相手を見つめてしまえば、相手はますます苦笑を深くしていく。
「本命とそれ以外、みたいな分け方してるっぽいお前にゃわからん気持ちかもだけど、体だけ気持ちよくなれりゃいいみたいなセックスが虚しくなってんなら、試しに俺と付き合ってみるか?」
「なに、言ってんの……」
「割と本気で誘ってる」
「俺を好きとか、困る」
「お前と付き合ってもお前が本命に繰り上がるわけじゃない。って言ったら、ちょっとはその気にならないか? お互い別に本命がいるのわかった上でも、恋人として付き合えるってのを、お前は一度経験してみたらいい」
 兄の親友で、親友の兄である男と恋人になる、なんてもちろん考えたこともなくて、でもそんなの無理だとすぐに拒否できないってことは、多少なりともその提案に惹かれてもいるらしい。ただそれがどんな気持ちからなのか、想定外の展開でぐちゃぐちゃになっている思考ではわからない。それに、付き合ったって上手くいくはずがないって気持ちも強かった。
「ねぇ、その付き合い、セックス込みの話だよね?」
「そうだな。もし、あいつの代わりに抱かれたいためだけに付き合うってなら、それは無理だから断ってくれ」
「その、あいつの代わりにとか思ってなくても、抱かれたらどうしたって、錯覚はすると思うんだけど……」
 だって自分が知る中で、一番あいつに似ているのが彼なのだ。兄を本命にしながら他の恋人を何人も作ってきた彼はどうか知らないが、本命が別にいるからと体だけのセックス経験しかない自分は、なるべく本命に何かしら似たところがある男を選んでいたし、むしろ積極的に錯覚して行為を楽しんできた。
 自分を好きじゃない相手は抱きたくないと言っているような男とは、相性最悪としか思えない。
「初っ端から代わりにする気満々で抱かれるんでなきゃ構わないさ。わざとじゃなく錯覚するってなら、どっちかって言ったら俺のせいだろうし」
「え、なんで?」
「それを知りたきゃ誘いに乗って、俺に抱かれてみるんだな」
 どうする? とニヤリと笑った顔はどう考えても了承待ちで、それならもう釣られてしまえと、じゃあ付き合うから抱いてよと返していた。

続きました→

 
 
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兄の親友で親友の兄1

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 兄の親友であるその人が、兄をどんな目で見ているのか気づいたのは自分自身がそちら側だったからで、彼はその想いをとても上手に隠していたと思う。もちろん自分も、自分自身の恋情は隠しきっていたつもりだし、同類である彼にも全く気づかれなかったと言うなら、いっそ誇っていいかも知れない。まぁこちらなんてまるで彼の眼中になかった、というだけの可能性も高いけれど。
 彼にとって自分は、親友の弟で、かつ、弟の親友でしかなかった。だからなぜこんな誘いを掛けるのか、理由を告げれば相手は相当驚いていた。まさかこちらの本命が彼の弟だなんて、彼からすれば青天の霹靂もいいところだろう。
 つまりそれは、互いに互いの想い人を重ねるような、自己欺瞞に満ちた行為の誘いだ。幸いなことに、どちらの兄弟も、他者からよく似た兄弟だと言われる程度には顔の作りや雰囲気が近い。錯覚は意図的に充分起こせると思う。
 彼はめちゃくちゃ渋い顔でしばらく黙り込んだ後、大きなため息を一つ吐いて、それからわかったと言った。勝算がなければ誘いなんか掛けなかったとは言え、馬鹿なことを考えるなとゲンコツを落とされる可能性もなくはなかったのでホッとする。
「ただし、錯覚はなしだ」
「え?」
「俺を別の名前で呼ぶな。俺もお前を別の名前で呼んだりしない。俺が、俺の意思で、お前を抱く」
 それでいいなら抱いてやると言われても、想定外過ぎてわけがわからず混乱した。
「なんで?」
「だって気持ち悪いだろ。俺はあいつの兄であってあいつじゃねーし。お前がいくら兄貴に似てたって、俺からすりゃお前はお前以外の何者でもねーんだよ」
 どんだけ長い付き合いだと思ってんだと呆れ口調のその人は、本当に錯覚できると思ってるならお前はバカだと言い切った。
「え、でも、それで俺を抱く気になんてなれるわけ? それとも、元々、本命に似たような相手ばっか漁って来たタイプ? ってことはないよね。確か、けっこうなメンクイで過去の恋人、美人ばっかって話だったような気がするんだけど」
 親友の彼女を紹介されたり、兄の彼女が家に来たりということはあるが、さすがに彼の恋人を見たことはない。そもそも親友経由だったり兄経由だったりで聞いた話じゃ、彼が親友やら兄やらに紹介する恋人は気の強そうな美人ばっかりで、でもだからかあまり長くは続かないらしい。長く続かないのは別に本命が居るせいだろ、とは思っていたものの、もちろんそれを親友にも兄にも言ったことはない。
「ああ、兄さんやあいつには紹介出来なかったってだけで、男は兄さんに似たタイプ選んでたとか、そういう話?」
「わかった。やっぱ止めよう。なしなし。この話は忘れてやっから、お前ももうこんなアホなこと言い出すなよ」
「待ってよ。意味わかんないんだけど。てか、俺を俺のまま抱けるってなら、それでいいから抱いてよ」
「えーだってお前、絶対後悔する」
「後悔すると思ったら、こんな身近な相手誘うわけ無いだろ」
 言えば相手はやっぱり呆れた様子のため息を吐いた。
「お前、恋人は?」
「それ言わせる? 男も女も居たことなんてないですけど」
「だからだバーカ」
「バカってなんだよ。せめてもうちょっとわかるように説明してよ」
「お前まさか、初めての相手に俺を選んでんじゃないよな?」
「いや、さすがにそれはないけど。ちょっと虚しくなってきた、てのはある」
「相手いんなら作れよ恋人。それとも足開きゃ寄ってくるようなのばっか相手してんの?」
「そういうわけじゃ……いや、どうだろ。そうなのかな?」
「おい。大丈夫かお前」
 危なっかしいなの口調はやっぱり呆れ気味だけれど、それでも本気で心配されている気がして少し気まずい。
「だって好きになられても応えられないんだし、そんなの困る。逆に聞くけど、本命が居るのに恋人作ってすぐ破局するのって虚しくないの?」
「別に。あいつらに紹介した女の恋人はだいたい事情知ってて俺の恋人やってたし、それとは別に、ちゃんと可愛がってた恋人もいるぞ。男だったからあいつらは知らないけど、そいつとはそれなりに長く付き合ったよ」
「え、知ってるって何を? てか男の恋人もいたの? なんで別れちゃったの?」
「俺がゲイよりのバイだってこと。女の恋人が居たほうが都合いいし、女相手は最初っから期間限定恋人ごっこ、みたいなのが多かったかな。男の方はまぁそれなりに本気だったけど、向こうの家の事情的な感じで、相手の結婚決まって別れたわ」
「えーじゃあ、もしかして、兄さんが本命は俺の気のせい?」
「ではないな」
 でもそれなりに気持ちに整理はついているから、兄とは今後も変わらず親友で居られればいいのだと言って彼は笑う。本気でそう思っているのだとわかる穏やかな顔に、彼は自分と同じように親友への想いに苦しんでいる同士ではないのだとわかって、がっかりすると同時になんだか泣きたいような気持ちになった。

続きました→

 
 
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先生、教えて(目次)

キャラ名ありません。全6話。
「生徒×先生(弟子×師匠などでも)で先生が体を使って教えていくお話」というお題を頂いて書いたもの。
大学生(視点の主)×整体スクール講師。明確な年齢差は出してませんが、気持ち的には7〜8歳差くらいのイメージで書いてました。
視点の主が大学で所属する体育会系のクラブでたまたま出会った整体師にほぼ一目惚れして、相手の働く整体スクールに入学したり、スクール卒業後に出張施術という形で彼との時間を買ったらいつの間にか相互に性感マッサージをし合う関係になったりする話。
一目惚れと言いつつ恋愛要素は少なめで、恋人未満なまま終わってます。挿入も指のみ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 下心満載のスクール入学
2話 コース折り返し地点
3話 じゃあ、体目当てで
4話 名前のつけられない関係
5話 お金を払って口頭指導(R-18)
6話 期待が膨らむ(R-18)

 
 
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追いかけて追いかけて(目次)

キャラ名ありません。全31話。
同じ大学の大学院生×新入生(視点の主)。という出会いをした二人ですが、メインになってるのは視点の主が大学院生で相手は社会人な時期。5歳差。視点の主は決して小柄ではないけれど、先輩が高身長のためそこそこ身長差あり。
財布をなくして困っていた時に声を掛けてくれた相手に興味を惹かれるまま、追いかけるように転学部・学科までしてその相手と同じゼミに入った視点の主と、好意を隠すことなくダダ漏れにして自分を追いかけてくるくせに、恋人になるのは嫌だと言って譲らない視点の主を諦め悪く追い詰めて、最終的には恋人になると言わせる先輩の話。
途中、視点の主がさして仲が良いわけでもない別ゼミの後輩に襲われる(挿入は指だけ)展開があります。
作中そこまで明確に書いてはいませんが、先輩は高校時代に彼氏が、大学時代に彼女が居た設定。高校時代の彼氏との関係はタチ寄りのリバで非処女。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 人生を変えた出会い
2話 ゼミ訪問で久々の再会
3話 今後を見据えた交流
4話 院進学と告白
5話 恋人にはなれません
6話 侵入者
7話 ヤバイ相手とわかっていても
8話 逃げ切れない(R-18)
9話 呼んでしまう名前(R-18)
10話 駆けつけてくれた友人(R-18)
11話 知られている
12話 だから会いたくなかった
13話 セフレにだってならないけれど
14話 互いの性体験暴露
15話 強引なキスにそれでも安堵
16話 一緒にシャワーを浴びるか否か
17話 信頼している
18話 自分から伸ばす手
19話 耳へのキス
20話 上書きが欲しいわけじゃない
21話 気持ちの切り替え
22話 シャワーの下で(R-18)
23話 罪悪感につけいって
24話 恋人になって
25話 もしもゲイだったなら
26話 黙って従って
27話 こんなに想われていても
28話 今だけ恋人(R-18)
29話 好きです(R-18)
30話 このまま恋人でいたい(R-18)
31話 ズルい大人

 
 
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先生、教えて6(終)

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 はぁ、と熱い息が断続的に漏れて、部屋の中の淫靡さを増していく。もぞと揺らめく腰が、埋めた指に吸い付くように蠢動する腸内が、早くもっと強い刺激をとねだった。
「せーんせっ」
 甘ったるく呼びかければ、気持ち良さげに閉じていた瞼がゆるりと持ち上がり、その下に隠されていたうるんだ瞳が、とろりとした視線を投げかけてくる。
「きもちよさそ」
 言えば素直に、ああ、だか、うん、だか曖昧に頷かれて、君は本当に覚えが良い生徒だよと薄く笑われた。
 初めてアナルに触れてそのナカを弄ってから、今日でとうとう二桁目になる。いくらほぼ交通費のみの支払いで会えるとは言え、互いのスケジュール的にそう頻繁に呼び出せるわけじゃない。
 そうこうしている間に大学は卒業し、今では結局、大学近くの整体院に勤務しているし、もちろん、所属していたクラブへの出張施術にも同行している。
「十分お金取れるくらい、キモチイイ。ね、性感マッサージな副業とか、しないの?」
 突然何をと思いながら、ナカを探る動きを止めて、うーんと唸って考えるような素振りを見せた。
 その技術をその身でもって叩き込んでくれたのは目の前の男だけれど、そんな副業をしたくて個人授業をお願いしていたわけじゃない。というか結果的にそうなっただけで、元々は彼と二人きりで過ごす時間を買うのが目的だった。わけだけど。
「儲かりました?」
「客次第だけど、それなりに」
 興味のあるふりをして問いかければ、やっぱりとしか言いようのない答えが返った。過去のことなんて滅多に話してくれない相手だけれど、そんな話題を振られて気づかずにいられるほど鈍くない。というか慣れてるなと思っていた謎が、一つ解けた感じだ。
「相手、男だけ?」
「いや、男女とも」
「本番は?」
「オススメしないね。というかもし本気で考えてるなら、本番ナシを徹底するべきだよ」
「あは。先生、それで何か失敗したんだ?」
 何があったのという質問は、さすがにノーコメントと返された。否定はないから、それ関係のトラブルが何かしらあったらしい。
「今も、やってるんですか?」
「うん。君相手に」
 即答されたが、声に笑いを含んでいる。つまり既に廃業済みってことなんだろう。
「それ全然儲かってないでしょ」
「まぁね。でも本業あるし」
「俺も本業あるし、あなたも居るし。というか、あなた以外に披露する気なんて一切ないです」
「そう。それは勿体無いな」
 そう言いながらも、安堵の表情を見せている。そんな顔を見せるくらいなら、妙な副業を勧めないで欲しかった。いやでも、これはチャンスかな。こんな話をこぼすくらい、いつもよりなんだか心のガードが緩いみたいだし。
「そこは喜んでくださいよ」
「なんで?」
「手塩にかけて育てた自分専用の性感マッサージ師を、これからも無料で使いたい放題なんですから」
「それだけど、そろそろ、お金払おうかって気もしてる」
「は? なんで?」
 こちらはアナルを許していないが、交互に性感マッサージを施し合っている関係は変わらず続いている。つまり無料で使いたい放題と言いつつも、こちらだって同様に、無料で彼の施術を受け放題だ。交通費は出すし、たまに教えを請うて追加でチラッと払うこともあるけれど、基本的には気持ちよくしてもらった部分への支払いはない。
「俺がお金貰ったら、おかしいでしょ」
「そ、だけど。でも、本番ナシでも、さすがに毎回こうキモチイイと、なんか色々マズいっていうか、ちゃんとお金払って気持ちよくしてもらう方が、まだ割り切れそうというか」
「それ、もしかして、期待していい話だったりしない?」
 だって知っているのだ。ナカを弄られとろけた視線が、時々物欲しげにこちらの股間に注がれているのを。彼がこちらに触れてくれる時、勃起してしまったペニスを弄る手付きが、前よりもずっとねちっこくなったことを。
「ね、あなたの客が俺だけで、俺の客があなただけなら、気持ち割り切る必要ないでしょ。そろそろ本番有りでも、いいんじゃない? もしくは、いい加減、恋人になるとかさ」
 言いながら止めていた指をゆるっと動かし、弱い部分を少しだけ強めに刺激してやれば、とたんに溢れだす甘い息の中に考えとくという言葉が混ざる。もうだいぶ長い付き合いになるけれど、彼が多少なりとも二人の関係に対して前向きな言葉を漏らしたのは初めてだ。

<終>

 
 
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先生、教えて5

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 してもらったら絶対にキモチイイのは知ってる。その言葉通り、そんな場所を弄られるのが初めてだって、ちゃんと気持ちよくしてくれるんだろう。でもだからこそ、されたくなかった。
 彼のそんな技術を、自分の身に刻まれる方法で会得したくなんかない。まぁ、さんざんその方法で男の体を気持ちよくする手技を得てきて、今更という気もしなくもないけど。でもやっぱり、アナルや前立腺はちょっと一線を画した場所だと思う。
 される側には全く興味が無いときっぱり言い切って、相手の反応だけを頼りに、相手のアナルとそのナカとを探る。いつからか当たり前のようにアロマオイルやパウダーに混ざって用意されるようになったローションをたっぷり使っているし、指の挿入にその場所はそこまで抵抗がなさそうだった。なのに、指が埋まって以降、相手は酷く微妙そうな顔を晒している。
 これもとっくに気づいていたことだけれど、彼はされる側の経験はたぶん殆どしていない。つまり、アナルに指を入れられてその中を探られるのは、もしかしなくても初めてなんだろう。
「下手くそだなって、思ってます?」
「痛くはないよ」
「でも気持ちよくない、と。ね、ちょっとアドバイスくださいよ。どう弄ったらいい?」
「される側興味ないって言ったの、そっちだろ。そういうの知りたかったなら、自分の体も差し出せよ」
「授業料払いますから、ぜひ実技ではなく口頭で」
 幾ら出すのと聞かれて、新しい切り口だなと思う。金額を言えば、値段分のアドバイスをくれるって事なんだろうか。値段の相場が検討もつかないけれど。
「え、じゃあ、取り敢えず……五千円?」
 言えば、ふっ、と息を漏らすように笑われた気配がする。やはり安すぎただろうか。
「ならダメ出しから。まず一番ダメなとこが、こっちの経験なにも確かめなかったとこな」
「あー……でも、初めて、ですよね」
「ふーん。なるほど。初めてって思ってんの。なら、初めての相手にこの性急さは、かなりマイナス。さっさと突っ込んで欲しいみたいに見えてたなら、観察力ぜんぜん足りてない」
「あ、いえ、すみません……」
 言われれば確かに、早くナカに触れてみたいと気が急いていなかったとは言えない。自分の欲求を優先した。というか初めてって思ってるの、という言い方が気になる。初めてなのかそうじゃないのか、わかりにくい。でも彼のアドバイスが続いていて、それを問える余裕はなかった。
「むちゃされたわけじゃないし、痛かったりはしないけど、基本的に焦りすぎ。潤滑剤使ってあまり抵抗なく入るからって、そうあっさり突っ込むもんじゃないよ。後、しょっぱなから深くまで入れすぎ。前立腺ってそんな奥じゃないから」
 相手の声に指示されながら、ゆっくりゆるゆると指の腹で前後左右に腸壁をなぞらされる。
「もーちょい手前……んっっ」
「あ、……これ、かな」
 指の腹に触れた感触を確かめるように数度なぞれば、んっ、んっ、と少しだけ鼻にかかった息が漏れ出てくる。気持ちよさそう、という感じではないけれど、多分これが前立腺だ。
「五千円、ここまでな」
 疲れた様子で大きく息を吐いた後、相手は瞼を下ろしてしまう。お腹の中に意識を集中して、快感を拾おうとしているのかもしれない。強い刺激になってしまわないように、本当にそっと優しくその場所を撫でながら、相手の反応を見逃さないようにと注意深く見守った。

続きました→

 
 
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