いつか、恩返し2

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 従兄弟との関係も、なんら問題なく、そこそこ親しい友人のような関係が続いている。親の目が届かないから、気軽に互いの部屋を行き来するようにもなっていた。
「あ、これ美味い」
「だっろ。超お手軽な割にけっこーイケる」
「賄い目当てのバイトの副産物、凄いな」
「あー確かにな。食事目当てで始めたはずのバイトなのに、まさか自分で料理するようになると思ってなかった」
 更に言うなら、それを従兄弟に食べさせて、美味いと言ってもらうのがこんなに楽しいなんて思わなかった。
「そう? お前はいずれ自炊しだすと思ってたけど」
「まぁ、安くたらふく食うなら自炊のが良さそう、ってイメージはあるからな」
「それもあるけど、お前、かなり好奇心強いもん。今までやってみようとすら思わなかったことでも、自分でもやれそうって思ったら、今ならもう躊躇わずに手ぇ出せるだろ」
 良かったなと自分のことのように嬉しそうに笑われて、なぜかドキリと心臓が跳ねる。
 親に抑圧されて色々と制限されて自分の好奇心も可能性も潰されていた、という意識は確かにある。多分きっと相手もそれをわかっていて、けれど親の話は一切ださずに、ただただ変わっていく自分をこうして肯定してくれるのが、最近はなんだかむず痒くてたまらない。
「変な顔してどうした?」
「んー……あー……なんでも、ない」
 この気持ちをどう説明していいのかわからなくて濁してしまえば、えーと不満げに口を尖らせはしたものの、特にそれ以上追求されることはなかった。
 そういうところも含めて、彼と過ごす時間はとても心地が良い。だからだろうか。従兄弟とはバイト先もサークルも違うし、それぞれ新たに友人も出来たから、そこまでベッタリというわけでもないはずなのに、なんだかんだで一緒に過ごす時間は多かった。
 そんな自分たちの関係が少しばかり変わったのは、二年目の夏休みが明けた辺りだった。
 頭が良くて人当たりもいい従兄弟は昔から良くモテていて、だからか女の子の扱いにだって慣れていたはずなのに、珍しく何かをしくじったらしく、従兄弟にふられたという女子を中心に少々陰湿な陰口を叩かれだして、それに巻き込まれる形で関わったせいだ。
 簡単に言えば、従兄弟のゲイ疑惑と、その相手として自分の名前が上がっていた。
 ずっと学校が一緒だった従兄弟の、過去の交際相手を多分ほぼ全て知っている自分からすれば、何を言っているんだと鼻で笑ってしまいそうな噂と疑惑ではあったけれど、従兄弟が自分に付き合ってこの大学のこの学部学科へ入学したのは事実で、大学入学後に従兄弟が彼女を作ったことはなくて、更に言うなら今現在、従兄弟の部屋に一番頻繁に出入りしているのはどうやら間違いなく自分だった。
 二人は既に出来ている、という方向に話が膨らまなかったのは、自分の方に彼女がいたせいだ。つまり、従兄弟の片思いで、自分は彼に狙われている立場らしい。
 なんて、バカらしい。とは思ったものの、従兄弟本人に、巻き込んですまないと謝られた上、ほとぼりが冷めるまでは暫く離れていようかと提案されてしまえば、それに逆らって相手の家に押しかけられるはずがない。
 噂を気にして距離を取るほうが事実だと認めるみたいじゃないのかとは思ったし、実際従兄弟にもそう言ったけれど、彼氏が男に狙われてるって噂になってる彼女の気持ちを考えてやれよと言われたのと、従兄弟が彼女を作ればゲイ疑惑なんて一瞬で吹っ飛ぶから大丈夫とも言われて、それ以上は何も言えなかった。

続きました→

 
 
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いつか、恩返し1

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 同じ市内に住む同じ年の従兄弟とは、昔から色々と比べられてきた。親に煽られるままライバル視して競い合っていられたのはせいぜい中学までで、高校進学頃にははっきりと差がついていたし、その結果を受けてもまだ何やら色々と煽ってくる親のバカさ加減にはさすがに呆れたし、親同士の確執だかに巻き込まれていただけで、ずっと親にいいように踊らされていただけだったと気づいたのもその頃だったと思う。
 滑り止めもなくあっさり合格を決めて、塾にも行かずに高校生活を満喫しながら成績上位をキープし続けるような相手と、極力楽そうな部活を選んでほぼ幽霊部員を決め込み、塾に通って必死に勉強したって上位にかすりもしない自分とで、一体これ以上何を競え合えばいいというのか。
 いろいろ馬鹿らしくなって、高校一年の終わり頃、従兄弟にはこっそり謝った。親に煽られていた故の敵視とライバル視だったと認めて、負けを認めて、これ以上彼と何かを競う気はもうないと言った。
 勝手に突っかかって、てんで敵いもしないのにあれこれ競い合っていたのは自分だけとわかっていたから、謝ってどんな反応が返るのかわからなかったし、何を言われても仕方がないと思っていたのに、ホッとした様子で良かったと言われたのは何とも印象的だ。
 せっかく従兄弟で近くに住んでるのに、ずっと嫌われてて少し寂しかった。などと言いだした相手とは、その後多少ぎくしゃくしながらも、なんとなくの友人関係に収まっていた。
 あんなに大嫌いな従兄弟だったのに、それすら、親の刷り込みの影響というだけだったらしい。ちゃんと向き合ってみれば普通にいいやつだったし、笑えることに、彼と競うのを止めて彼に教えを請うてみたら、成績まで少し上がった。
 一緒の大学に行こうか、と言い出したのは相手の方だ。自分の中で、大学で親元を離れるのは既に決定済みだったけれど、将来的なことを考えたら奨学金の額はなるべく抑えらるだけ抑えておきたいと思っていた。
 彼が一緒の大学はどうかと言い出したのは、親からは下に弟がいるし長男なんだから地元の国立を狙えと言われていたけれど、もう一つ、従兄弟よりもいい大学にだったら進学させてやるとも言われていたせいだ。ただし、いい大学とは知名度なのか偏差値なのか、などとという定義を話し合えるような親じゃない。
 結果、同じ大学の同じ学部の同じ学科へ、入学を決めた。渋るかと思った親は、学費どころか生活費まで従兄弟と同額振り込むと言って聞かず、どうやら、親の見栄の方をえらく刺激してしまったらしかった。
 どこまでも従兄弟とその親とを意識し見栄を張る親を恥ずかしく思いはするが、正直、渋ることなく金を出して貰えるというのはありがたい。なんとなく、同じ大学を選べばこうなるだろうことを、従兄弟はわかっていたのじゃないかと思った。けれどさすがにそれを確かめることはしていない。
 当然、従兄弟にはこちらのレベルに合わせて貰ったわけで、大きな借りが出来てしまったけれど、相手はさして気にしてないらしいどころかなぜか大学まで全く同じ所へ通うことになった事実を、随分と楽しみにしているようだった。
 高校の卒業式、この恩はいつか必ず返すからと伝えれば、大げさだなと笑いながらも、その言葉忘れるなよとも言っていた。もちろん忘れてなんか居ないし、いつか彼が困った時にはなんだってしようとそっと心に誓ってもいる。
 そうして新しく始まった大学生活は、本当に毎日がとても楽しい。親の目がないというだけで、こんなにも心が軽くなるなんて、どれだけ抑圧されていたんだって話だ。

続きました→

 
 
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兄は疲れ切っている(目次)

キャラ名ありません。全40話。
雄っぱい持ち大学生弟(視点の主)×疲労困憊社会人兄。どちらも女性経験ありで男性経験なし。
同情から雄っぱいを揉ませたことで兄を意識するようになった視点の主が、彼女ができそうという兄に焦って、酔い潰して先に体だけ手に入れたら大失敗だった話。
目一杯優しくしても一向に絆されてくれないどころか心を閉じていく兄と、最終的には恋人同士になります。
21話から先はダラダラと恋人同士の甘ったるいセックスをしているだけですが、S字結腸まで突っ込んじゃったり、後始末でお湯の排泄させたりが混ざってます。描写は控えめ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 1分百円
2話 酔った兄に絆されて
3話 兄の奢りで居酒屋へ
4話 ラブホ連れ込み(R-18)
5話 兄覚醒と抱く宣言(R-18)
6話 とにかく諦めて(R-18)
7話 泣かれて一時中断(R-18)
8話 再開したけど(R-18)
9話 その後の迷い
10話 上手くいかない(R-18)
11話 兄だけ先に(R-18)
12話 兄の口奉仕(R-18)
13話 精飲と湧き上がる怒り(R-18)
14話 嫌だと言えば開放する
15話 兄の告白
16話 ポンコツなりに必死
17話 兄の惨めさの正体
18話 土下座で謝罪
19話 セックス前から好きだった
20話 やっと恋人同士
21話 初デートの余韻を残して
22話 ちっぱい堪能(R-18)
23話 襲っていいよ
24話 嬉しくて仕方がない(R-18)
25話 いつもと違って(R-18)
26話 耳元に甘い声(R-18)
27話 ゴムを口で着けてみたい
28話 初の対面座位(R-18)
29話 兄が自分で(R-18)
30話 初トコロテン(R-18)
31話 もっと、愛して(R-18)
32話 中出しマーキング(R-18)
33話 奥までじっくり(R-18)
34話 奥のその先(R-18)
35話 これから先はいつだって
36話 抱っこで風呂場
37話 後始末のお手伝い了承
38話 排泄中だって可愛い(R-18)
39話 湯船でうとうと
40話 おやすみ

 
 
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兄は疲れ切っている40(終)

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 気持ちよさそうに目を閉じる兄を起こさずベッドまで運ぶのはさすがに無理だったけれど、風呂場から連れ出して体を拭いてやって未使用の部屋着を着せてやる間、兄は眠そうにぽやぽやしていて、ただただされるがままだった。
 ベッド行くよとだけ告げ問答無用で抱き上げても、さすがにもう慌てることもしがみついてくることもなく、ゆるっと体を預けてくれるどころかまた目を閉じている。口元がゆるっと笑んでいるのが可愛くて、愛しくて、信用されきっているのがわかるから嬉しくて仕方がない。
 ベッドの比較的綺麗そうな場所を選んで兄を下ろし、布団をかけてやる間も、兄はずっと目を閉じたままだった。きっともうこのまま眠ってしまうんだろう。もしくはもう既に寝ている。
 自分もその隣に潜り込んで、眠る兄の顔をジッと見つめた。もう少し眠くなるまで、このまま眠る兄を見続けるつもりだった。なのにゆっくりと兄が目を開いていく。
 目が合った。と思ったら、兄が嬉しそうにふふっと笑う。
「かいがいしぃ」
「そりゃあ、そこまで疲れさせたの、俺なわけだし」
「うん。でも、うれしい」
 好きだよって囁くみたいにこぼされて、俺だって好きだと返せば、やっぱりんふふと嬉しそうに笑っている。眠いせいもあるのだろうけれど、とろっと甘い気配が漂っているのがたまらない。
 どうにも兄に触れていたくて手を伸ばした。とはいえ、これ以上性的な興奮を煽るわけに行かないので、結果、頭を撫でるように髪を梳く。
「気持ちぃ……」
 うっとりと目を細めながら、小さな声がやっぱりとろりと吐き出されてきた。
「ん……っ、き…ちぃ……」
 そのまま瞼を閉じてしまったものの、必死に気持ちよさを伝えようとしているのか、途切れ途切れに気持ちぃの言葉の切れ端が口からこぼされたり、んっんっと気持ちよさげに鼻を鳴らしたりもする。
 相変わらずサービス精神旺盛すぎだと苦笑した。そんなに頑張って気持ちよさを伝えてくれなくても、もう充分に伝わっている。
「ほんっと可愛いんだから。ね、もう、寝ちゃっていいよ?」
「んっ……」
 小さな返事の後、すーっと息が深くなって頭を撫でても反応しなくなったから、今度こそ本当に眠ったのだと思った。しかし暫くそのまま頭を撫で続ければ、また唐突に兄が話し出す。
「なんか、ねちゃうの、もったない」
 舌っ足らずに吐き出されてくる言葉は、眠気にむりやり抗っているようで、やっぱり苦笑を誘った。
「もったいなくないって。てか可愛い寝顔、もっとじっくり見させてよ」
「んー、それ、は、ずる、い」
 もぞっと動いたかと思うと、兄がすり寄ってきて胸に顔を押し当ててくる。寝顔を見せたくないってことかと思ったら、兄がくふくふと妙な笑い方をしながら肩を揺するから何事かと思う。
「え、何?」
「おっぱい、やらかい」
「あー……」
「ここ、きもちぃ」
「知ってるって。で? そこに顔埋めて眠りたいって話?」
 聞けばやっぱり小さく肩を揺すって笑う。
「それも、いいけど」
「いいけど?」
「それより、いっしょ、ねて、ほしぃ、かなぁ」
 寝ないのと聞かれて、つまり兄が眠気にむりやり抗って起きているのは、こちらにまだ眠る気がないせいらしいとやっと理解した。
 わかったと小さくため息を吐き出して、手を伸ばして部屋の明かりを落としてやる。
「これで安心して寝れる?」
「おまえも、ねる?」
「寝るよ」
 言えばまたもぞっと動いて、胸に埋めていた頭が離れていった。しかし近づいた距離は離れず、兄の体がすぐ近くに密着している。そっと抱きかかえれば、んふっと満足げな吐息が漏れた。
「おやすみ」
「んっ……すみ」
 どうにかという感じで小さく返事をくれた後は、静かな寝息が聞こえてくる。暫く様子を見ていたが、今度はもう、兄が話し出すことはなかった。
 とはいえ、もう一度電気をつけて寝顔を眺めてやろうとまでは思わない。疲れ切った兄はきっとぐっする眠るだろうから、兄より早く目覚めて、寝顔も寝起きも堪能してやればいいのだ。
 そんな決意を胸に、腕の中の熱と寝息に誘われるまま目を閉じた。

<終>

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昨年内に終わらず年越しまでしてしまいましたが、長々とお付き合いどうもありがとうございました。恋人同士の既に慣れた気持ちいいセックスを書く機会が少ないので、ついダラダラと書いてしまいましたが、とても楽しかったです。
2回ほど休憩を挟んで、次回更新は10日の予定です。

 
 
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兄は疲れ切っている39

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 中を洗い終えた後は、椅子に座らせた兄の体を丁寧に洗ってやる。ほぼお湯だけとは言え、排泄している姿を散々可愛いと言われまくった兄は少々放心気味で、自分で出来るだとか必要ないとか言うことなく、おとなしくこちらに体を預け洗われている。
 肌の上を滑るスポンジに、うっとりと甘い息を零して見せるから、ムクムクと湧き上がる悪戯心を抑えるのが大変だ。
 今日だけじゃないんだからと、何度も自分に言い聞かした。さすがに今日、これ以上兄の体に負担をかける行為をする気はない。
 けれど当然、いつかは事後に風呂場で襲ってやろう、とは考えていた。いや、前準備を手伝わせてもらえるようになったら、先に風呂場で一発、みたいなのも楽しそうだ。
 いつか、兄の可愛い声が風呂場に反響するのを堪能したい。
「はい、終わり」
 頭の中を不埒な妄想でいっぱいにしながらも、なんとか余計な刺激を与えてしまわないように気をつけつつ、やっぱり丁寧に泡を流してやって終了を告げた。
「俺も体洗うけど、先に湯船入ってる?」
 先に連れて行こうかと言えば、すぐそこなのに? と笑われてしまう。家とは比べ物にならないくらい広々としたバスルームではあるが、それでも確かに、湯船までは数歩でたどり着ける距離だった。
「すぐそこでも、だよ。なんなら、抱き上げて運んで、そっと風呂の湯の中に下ろしてやるけど?」
 兄はふふっと笑って、抱き上げて連れて行こうかという提案への返答ではなく、待ってるから体洗っちゃいなと言った。
 けれど素早く体を洗い終えて兄に向き直れば、ん、と両腕を持ち上げて突き出してくる。抱いて連れて行けという催促だ。まさかの行動に、デレデレとにやけてしまうのを止められない。
「にやけすぎ。そんな嬉しい?」
「うん、めちゃくちゃ嬉しい」
 指摘にもあっさり頷いて、広げられた両腕の中に身を屈めていく。
「ほんっと大好き。いくらでも甘やかすから、これからもいっぱい甘えて?」
 おでこにちゅっと唇を落としてから、兄の背と脚を支えるように腕を差し込み抱き上げた。慣れていない兄が、やはりきゅっとしがみついてくる。たまらなく愛しいと思った。
 先程言った通り、そっと兄を湯の中に下ろしてやってから、自分も湯船に踏み入って、兄の背後に体を滑り込ませる。
「こんな広いのに、なんでそっち?」
「なんでって、そんなの、こうしたいからに決まってる」
 振り返って不思議そうに聞いてくる兄の腰を掴んで、開いた足の間に引き寄せた。
「ぅわっ」
 小さな驚きの声は上がったものの、ふわっと湯の中を滑って、兄の体があっさり腕の中に収まってしまえば、何も言わずとも兄が背を倒して胸に凭れ掛かってくる。んふふっと小さな笑いが溢れて、どうやら兄も楽しんでくれているようだ。
 湯に浸かりきらない肩に向かって、お湯をすくって撫でるように掛けてやる。
「気持ちぃ」
 数度繰り返せば、とろりとした声がうっとりと響いた。
「ん、なら、良かった」
「これ、いいな。これなら、うっかり寝ちゃっても、溺れない」
「眠い?」
「んー……まぁ、ちょっと」
 横から兄の顔を覗き込めば、既に瞼が落ちている。
「溺れさせることはないけど、のぼせても困るし、上がろうか」
「んっ……も、ちょっと」
 ああこれ、本気で寝そう。そう思いながらも、あまりに気持ちよさそうな声での「もうちょっと」のお願いを聞いてあげたくて、脳内でゆっくりと数を数え始める。
 カウント100までくらいなら、このままゆるっとお湯に浸かっていてもいいだろうと思いながら、お湯をすくっては兄の肩に撫で掛けてやるのを繰り返した。

続きました→

 
 
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兄は疲れ切っている38

※ 軽めの排泄描写あり

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 嫌そうな呻き声と共に、中からとろりとした半透明の液が少量こぼれ出てくる。そしてその声を聞いたせいで、さっきから時折呻いていたのは、中からこぼれ出る感触が気持ち悪くてということらしいと気づいた。
 なるほど、これは口に出して説明しにくいのも頷ける。体のどこかが痛くて呻いているわけではないというのも、納得だし安心もする。
「中から溢れてくるのって、ちゃんとわかるんだな。シーツも部屋着も汚したって言ってたから、全部出ちゃったのかと思ってた」
 残ってるなら先に指で掻き出そうかと言ってみたら、もう殆ど残ってないはずだから必要ないと、割とガチトーンで返された。確かにこぼれ出てきたのは少量だったし、指を突っ込み掻き出してみたいのは単にこちらの好奇心と下種な欲望だという自覚もあった。それにこれから幾らでもチャンスはありそうだし、とも思う。
 それならばと予定通り、ちょろちょろとぬるま湯を吐き出し続けるホースの尖端を押し付けた。
「んっっ」
「いつもどれくらい入れてるの」
 頭の中で数を数えながら、ストップ掛けてねと言っておく。
 後始末としての洗腸というだけで、無理をさせる気も苦しませる気も欠片だってないけれど、当然初めてなのだから、加減なんてわからない。だったら兄本人に教えて貰えばいい。
 脳内のカウントと、兄の様子と、お湯で膨らむ腹具合はきっちり覚えて、次回に活かそうという心づもりでもあった。
「っ、もっ、それくらい」
 兄の訴えに、素直にホースの先を離せば、ホッとした様子で壁から手を離しこちらに向き直る。排泄するところなんて見せないぞって意味かと思ったら、そのままヨロヨロと歩き出す。
「え、どこ行く気?」
 前準備でトイレと風呂場とを何度も行き来しているなんてことはないはずだけれど、自分がいるせいでトイレまで行く気なのかと思って聞いた。けれどさすがに風呂場を出る気まではなかったらしい。
「どこって、そこ」
 兄の視線の先を追えば、そこにあるのは排水口だった。
 なるほど、と思う。兄が普段しているのは前準備なのだから、汚物も一緒に排泄されてしまう可能性を考えたら、なるべく排水口の近くでというのも納得だった。
 蓋を開けてそこに向かってしゃがみこんだ兄の顔は赤い。追いかけるように近づいて、兄の正面に自分も腰を落とす。
「えっ……」
 ギョッとする兄の頬を軽く撫でながら、約束、と口にした。
「やく、そく?」
「可愛いねってキスしてあげるよ、って言ったろ」
 言いながら顔を近づける。可愛いって囁きながら、ちゅっと唇を吸ってやる。
「どう洗ってるか知らなかったから、お湯が吹き出てくるとこじっくり見てあげようかと思ってたけど、代わりに恥ずかしそうな顔、ずっと見ててあげる」
 少し意地悪かなと思いながらも、この距離ならお湯が吐き出されてくる音も聞こえそうだし、とにっこり笑ってみた。
「は、ちょっ」
 兄はますます顔を赤くしていく。
「我慢してる間も、お湯吐き出してる間も、いっぱいキスしてあげるよ」
 今度は極力優しく笑いかければ、真っ赤な顔がふにゃっと歪む。唇がわなわなと震えているから、可愛いって言いながらちゅっちゅと唇を吸った。
 可愛いねと口づけるのを繰り返せば、やがて兄の体がふるふると小さく震えだす。既に真っ赤でふにゃふにゃな顔が、今にも泣きそうになっている。
「いいよ」
 大丈夫、と囁やけば、兄の口から小さな吐息が漏れて、ほぼ同時に、ぷしゃっとお湯の跳ねる音が聞こえてくる。
「ぁ……ぁぁ……」
 絶望混じりにこぼれ出てくる息を、大丈夫、可愛い、と繰り返しながら吸って、合間にぽろっと流れ落ちた涙へも唇を寄せた。

続きました→

 
 
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