弟は何かを企んでいる4

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「ぐぅ゛ぅ……」
 小さな唸り声に、やっぱり笑ってしまいながら。
「さすがに玄関でやる想定はないぞ」
 そう口に出しては見たものの、頭の隅では、絶対無理ってこともないかなぁなどと考えてしまう。なぜなら、体の準備を済ませた後で、一度出かけることが容易だからだ。
「一旦準備して、ちょっと散歩でも行く?」
「想定ないんじゃなかったのかよ」
「考えたら有りだった」
 ううっ、と悩むような呻くような音が聞こえて、どうやら葛藤している。てことは、弟的にも玄関先エッチは有りらしい。
 気持ちよく蕩けて喘ぎまくるのを見るのが好きそうだから、玄関先で声を押し殺しながらやるのなんて、そこまで興味ないかなとも思ったんだけど。むしろ衝動的にがっつかれるセックスとか、快感に喘ぐのを堪えるセックスで、興奮が増すのはこっちの方、という自覚はある。まぁ、たまのスパイス程度になら歓迎、ってやつだけど。
 というかこの良くわからない状況はなんだろう?
 最初は、ただいまと言ったのが嬉しかった的なハグかと思ったけど、唸られてちょっと自信がない。そして、今すぐ押し倒したい衝動を堪えている、にしては少々長すぎる気がする。
 だって、ラブホに入ったらまずは抱かれるこっちの体の準備から、というのは既に慣れきった手順だ。
 お腹の中を綺麗にしてなくたって、感じられないわけじゃないけど。でも心理的な抵抗感と言うか、抱かれている最中の安心感がけっこう違う。
 口に出して言ったこともあったような気がするし、弟もそれを理解してるから、お腹を洗うための時間を渋られることはなかったし、早くしたいなら、むしろさっさと準備してって話になるはずなんだけど。
 なんだこれ? このまま待ってたほうがいいのか? という気持ちはあるものの、弟の反応を待つのも限界だった。だって空調も効いてない玄関先だ。そろそろ暑さがキツイので移動したい。
 てか真夏に玄関エッチはやっぱ無しだな。早く空調を利かせた部屋の中、弟の匂いが染み付くベッドの上で、宣言通りにドロドロに甘やかされたい。
「準備してくるから、手、どけて?」
 背後から胸の前に回っている腕をポンポンと叩いて、開放するように促してみる。けれど。
「うう〜、こんな、つもりじゃっ」
 ぎゅっと抱きしめる腕の力が強まって、なぜかそんな泣き言が聞こえてきて首を傾げる。
「こんなつもりって?」
「こんな、家ついてすぐ盛る、みたいなのじゃなくて」
「じゃなくて?」
「まずは初めての俺の部屋、色々見て貰って、それから一緒に映画でも見ながら、お茶飲んでまったりしつつイチャイチャして、みたいな」
「え、マジで?」
 想定外過ぎるスケジュールに、あまりに驚いて声が裏返りそうだ。部屋に着いたらベッドに連れ込む気満々なんだと思ってた。だって家でヤりたいって話しか聞いてない。
「おかしいかよ」
「あー、まぁ、お前が自分のベッドで俺を抱きたいってだけで、俺と暮らしたいわけじゃないのはわかった。てか親がいるから出来なかったお家デート的なこと全般やりたいってことな」
「まぁ、そう」
 その中でも一番やりたいのが、自分のベッドで抱きたい、だってことか。
「そういうのは先にちゃんと言っとけって。まぁ、言われてても、初日は無理って言ってそうだけど」
「え、無理?」
「無理だろ」
 なんで、と問う声は不安と不満とを混ぜて揺れている。こっちとしては、むしろなんで可能だと思ったのか聞きたいくらいなんだけど。
「いやだってお前、最後にラブホ行ったの一ヶ月半前ってわかってる?」
 引越し前は弟が準備だ何だで忙しかったし、引越し後はこっちがお盆休みをもぎ取るために、仕事を前倒しで詰めて忙しかったせいだ。毎日のように顔を合わせているのにヤレない、が原動力だった部分もあるかもしれないが、最低でも月に1度は致していた関係なのに、1ヶ月半ぶりに二人きりになって、エロいことお預けでお茶なんてお互い無理に決まってる。
「え?」
「遊びに来た初日にお茶してイチャイチャしたかったなら、前日ラブホ泊まってやった流れで遊びに来ました、くらいにしないと無理だって。あと、お家デートしたいって誘われてないどころか、俺のベッドで抱きたいとか、ベッドにマーキングしてって言われて来てるんだぞ。休み前半はベッドの中で抱き潰されて、後半はお前に世話して貰いながら回復に努める、みたいになるかなって思ってたよ。てか、……」
 抱き潰してくれるわけじゃないの? と出かかった言葉を慌てて飲み込む。だってなんか、自分ばっかりがっついてるみたいで恥ずかしい。

続きました→

 
 
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弟は何かを企んでいる3

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 7月の半ば、弟は家を出て一人暮らしを始めた。といっても、一緒に暮らすなんて嫌だとか、同棲とか何言ってんだと、弟の提案を拒否ったわけではなく、もっと手順を踏めってだけの話だ。
 家事を負担してでも二人で暮らしたい、もっと言うなら家の中でエロいことがしたい弟の訴えは理解したし、そのために初期費用を貯め自炊スキルを磨いた努力は認める。ただ、兄弟で恋人、という事実を可能な限り親に隠しておきたいって部分が、弟の頭の中からはすっぽ抜けていた。
 つまり、二人同時に家を出て、しかも二人で同じ部屋を借りて住む、という理由が親に説明できない。だから時間差でどちらかが先に家を出るべきだと、あの日、一緒に住みたいと相談しに来た弟には話した。
 金銭面と必要性という意味では、多分、自分が先に家を出るのがいいんだろう。頻繁に激務でボロボロになる自分が家を出るなら、少しでも会社に近いところに住みたい、辺りで親は多分すんなり納得するとは思う。
 でも家事スキルをめちゃくちゃ心配されると思うし、事実、自分でも一人暮らしなんて無理だと思うし、先に自分が家を出て弟を後から引き込む作戦は考えるだけ無駄だ。
 それよりも、一緒に住むのを断られてもとりあえず家は出て、一人暮らしの部屋に連れ込めば「俺のベッドで抱きたい」は可能、などと考えて準備していた弟が、先に家を出るのが妥当だと判断したに過ぎない。
 とにかく家を出て一人暮らしがしたい。そのためにバイトもした。という自立心を前面に出せば、親も不思議には思わないだろう。
 考えたのは、激務の時に泊まらせて貰ううちに、やっぱりもっと会社に近い場所に住みたくなったが、自分の家事スキルに自信がない。弟が家事を負担する分こちらが多めに金銭負担すれば、弟にとっても有り難いだろうし弟もいいって言ってる。という流れで、つまりは、後から自分が合流する算段になっている。
 なので、弟が新しく住む場所にはけっこう口出しした。だけでなく、実はすでに金銭的にも少しばかり援助している。まだ住んでもいない家だけど。でも今後お世話になる気満々で。
 その時に、弟が選ぶデート先が小さな駅の特別有名ってわけでもない店になった理由も知った。つまりは、今後住みたい地域の選定だ。町や店に対するこちらの反応も、それなりに見られていたらしい。
 家を出て二人暮らしをする理由、にまでは考えが及ばなかったようだけれど、弟にしては随分早くから周到に準備していたと思う。
 ほんのりと怖いのが、弟に入れ知恵している存在が居る可能性なんだけど、さすがに怖くて聞けていない。弟に、実は兄貴が恋人、を知ってる友人やらが居ないことを願うばかりだ。
 そして弟が家を出た一月後、世間ではお盆休みと言われる時期に、初めて新居にお邪魔する予定になっている。しかも、今年のお盆休みは全日弟の新居に居続け予定だ。
 ラブホにお泊りは何度か経験があるが、それ以外で弟と泊まりで過ごしたことはない。つまりは初めて、恋人という関係のまま長時間一緒に過ごすことになる。それを考えるたび、少しの不安と、期待と興奮とで、なんだかソワソワしてしまう。


 一人旅の趣味なんてないので、今年のお盆は泊まりで出かけるから食事の用意は要らないと母に話した際には、かなり珍しがられたけど。そこは曖昧に濁して、大きなカバンに着替えやらを突っ込み家を出たのはお盆休み初日の昼前だった。
 待ち合わせた弟新居の最寄り駅近くで昼食をとった後、案内されるまま弟に付いて新居へ向かう。色々口出しはしたが、さすがに一緒に内見まではしていないので、全く初めての道のりを、なるべく覚えられるように目印になりそうなものを探しつつ歩くこと20分弱。ようやく弟が住むマンションにたどり着いた。
 駅からの距離が遠いほど家賃が安くなるのは当然で、弟的には30分くらいまでは有りと思っていたようだが、いずれ合流する身としてはさすがに30分はキツイ。それと、壁が薄そうなアパートは論外。というこちらの意見を考慮した、立地と建物というわけだ。
「あ、鍵、俺の使っていい?」
 玄関ドア前に立ちポケットを探る弟に声を掛ければ、振り返った弟が嬉しそうにニヤけるのがわかった。
「もちろん。てか、ぜひ」
 ポケットから手を抜いて、ドア前を譲るように横にズレた弟に代わってドア前に立つ。
 思いつきの発言だったので、自分のキーケースを出すのに少し手間取ってしまった以外は、なんの問題もなく自分の鍵でこの部屋のドアが開いた。
 キーケースの中にぶら下がっているのは、弟が家を出る直前に、兄貴の分ねと言って渡してきたスペアキーだ。
「ん、ふふ」
 こみ上げる笑いとともに玄関に入って、ただいまと告げながら靴を脱げば、鍵が閉まる音とほぼ同時に伸びてきた腕に、背後から抱きしめられてしまった。

続きました→

 
 
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弟は何かを企んでいる2

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 ノックの後、部屋に入ってきた弟の機嫌は良さそうだった。
 家の中でエロいことはしない、というのは恋人になったところで変える気はなかったのだけれど、さすがに軽く触れるキスくらいならと許容するようになっている。つまりは恒例になりつつある、おやすみのキスをねだりに来ただけではないようで、弟はそのままどかりと部屋の真ん中辺りに腰を下ろしてしまう。
「何かいいことあった?」
「うん。そろそろ家を出ようと思って」
 その報告がしたいんだろうと思って話を振れば、そんな言葉が返ってきて、一瞬何を言われたかわからなかった。
「ようやく色々準備整ったんだ。だから、兄貴にも一度ちゃんと相談したくて」
「……は?」
 随分間を開けて、それでもまだ理解が及ばず、間抜けな音が一つ口から漏れる。
「あー、兄貴にとっては急だと思うけど、ずっと家は出たいって思ってて、」
「待て待て待て。え、家出るって、お前が? 一人暮らし? 出来んの?」
 ようやく何を言われたかは理解したけれど、何を言っているんだという気持ちは大きい。すぐに理解できなかったのも、この弟に一人暮らしなど出来るイメージがないせいだ。
 いやまぁ、自分が家を出ないのだって、似たような理由ではあるんだけど。
 必要ないと連絡しない限りは日々食事が用意され、汚れた衣服も洗濯かごに突っ込んでおけば、後日綺麗に畳まれ自室のベッドの上に乗っているような生活をしているのだ。それらを自分の手でと考えただけで、あっさり白旗を揚げてしまう。
「だぁから、そのために色々準備してたんだって。あと、一人暮らしになるかは兄貴次第かな」
「俺?」
「一緒に暮らさない?」
「はぁ?」
「兄貴と同棲したい」
「いやいやいやいや」
「やっぱ嫌?」
 そうじゃない。てか嫌かどうか以前の話だろう。
「嫌かどうかより、まず無理だろ。お互いに。家出てどう生活すんだよ。ってか準備したって何?」
「あー、引っ越し資金というか初期費用的なの貯めてたのと、あと、自炊できるように料理覚えたり。掃除と洗濯は元々そこそこ出来る、はず」
「え、お前、休みの日にこっそり何やってんのかと思ってたけど、料理習ったりしてたの? え、で、さらに初期費用まで貯めたって、お前、入社一年目でそこまで稼げるような会社、入ってた? そこまで残業もないような会社で???」
 頭の中を疑問符が巡りまくる。
 若干ブラック気味の自社は入社一年目でもけっこう容赦なくこき使ってくれたし、でもその分が給料に上乗せされていたから、その気になれば1年足らずで初期費用くらい貯まっただろうけど。料理教室的なものに通う費用も出せなくないかもだけど。かくいう自分も、結婚資金と思って結構貯め込んでいたんだけど。
 まぁ、結婚に至る前にその激務のせいで振られたし、そのおかげで、今じゃ弟相手に抱かれる側で恋人だ。
「いや、アルバイト。てか副業?」
 知り合いの飲食店で、料理を教わりながら手伝いをしていた、らしい。知り合いというか、友人の親の店だそうだ。
「それ、なんで言わなかったんだよ。ずっと隠れてなにかやってるとは思ってたけど、バイトしてるならしてるって言えば良かったのに」
「えー、だって、阻止されたくなかったし」
「つまり? お前は俺が、お前の自立を反対すると思ってる、ってことでいい?」
「まぁね。だって兄貴、今の生活で満足そうだもん。その満足を維持するために、俺を今のまま、側に置いておきたいかなって」
 確かに今の生活になんら不満はないし、むしろ幸せを満喫しているところがあるし、その幸せをもたらしているのがこの弟だってこともわかっている。
「お前は不満ってこと?」
「不満っていうより、欲張りなだけ。手に入れたいもののために、出来そうなこと頑張るのは基本だろ」
「手に入れたいもの? 恋人ってだけじゃまだ何か足りないのか?」
「わざとはぐらかしてる? 兄貴の言い分わかるから引いてるけど、お願い自体は何度かしてる」
 そう言われて思い当たることはあった。
「あー……家でヤりたい、って?」
「そう。正確には、俺のベッドで抱きたいってやつな」
 弟の匂いが染み付いたベッドの中で、ドロドロに甘やかされながら乱れまくる姿を見たい、らしい。兄貴の匂いで俺のベッドにマーキングして、とかなんとか言ってたような気もする。

続きました→

 
 
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弟は何かを企んでいる1

兄は疲れ切っているのその後の二人を兄側視点で書いています。

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 弟と恋人という関係になってから先、抱かれる頻度は半分くらいに減った。体だけでも繋いでおかないと不安だった、というのが、恋人という立場を得て安定したせいらしい。
 まぁ、ホテル直行だったのがデートという手順を踏むようになったのと、一回のチェックインで数回イカされるようになったのとで、金銭的にはそこまで変わらないし、肉体的にはむしろマイナスって気もするけど。でも精神的には確かにこちらも、かなり安定してはいた。
 兄弟で恋人ということも男同士でデートすることも、全くと言っていいほど気にしていない相手に、躊躇もなく愛情を注がれながらデートし抱かれるのは、正直クセになるほどイイ。
 デートと言ったって、初回が映画と食事だったわけで、毎回デートスポットやらを探して巡ってやっているわけではなく、むしろ食事だけってことも多いんだけど。でも一緒に食事をして、あれが美味しいこれが美味しいと言い合って、愛しげに見つめられる中で差し出される、スプーンに乗った相手のデザートを前に口を開ける頃には、すっかり気持ちが昂ぶっている。
 それを更にどろどろに甘やかされつつ抱かれるのだから、イイのは当然だと思う。特に、すっかり開発されきったお尻や胸への刺激だけでトコロテンするのが、たまらなく気持ちいい。
 体はその先があることを知っているけれど、さすがに吐精無しでイッたのは恋人として初めて抱かれた日くらいだ。玉が空っぽの状態じゃなくてもそうなることがある、らしいのは知っているけれど、今のところそこまでは至っていないし、玉が空になるほど何度となくイカされるような抱き方もされないからだ。でも奥を突かれた時に、痛いよりも気持ちいいが勝るときが増えているから、いずれは吐精無しでイケるようになるのかも知れない。
 そんな日々が大きく変わったのはやはり弟が大学を卒業して就職してからだろうか。いや、自分との関わりに影響が出たのが卒業後というだけで、変化はもう少し前から起きていた。
 ずっと熱心に続けていたスポーツを社会人になっても続けるのかと思いきや、あっさり引退して家から通える範囲の職場を探した辺りで、もっと真剣に話し合いをするべきだったのかも知れない。自分との関係を今後どうするつもりでいるのか、実のところ聞けていない。
 自分の実力はわかってるし、元々大学卒業までと思ってた。という弟の言葉を疑う気はないが、弟の進路に自分が影響した可能性を考えずにいられない。
 まず大きく変わったのは金銭面の負担割合で、それはまぁ、とくに不思議なことではないのだけど。でも割り勘という形ではなく、交互に支払いがいいと言い出したのも、その日のデート先を支払い側が決めようと言い出したのも、ただただその方が楽しいから的な理由ではなさそうだ。
 なぜなら、弟に連れて行かれる先が、こちらがメインで支払っていた頃とかなり違う。メインで支払っていた頃だって、弟が提案してきた店やら場所やらを拒んだことはほぼないのに。
 最近弟が選ぶデート先は、あえて大きな駅を避けているように感じる。今までは降りたことがないような小さな駅にある、特別有名ってわけでもなさそうな店に入ることが多い。
 それなりに調べてはいるようで、それらの店に不満があるわけじゃないんだけど。でも、なんで? と思わずにいられない。だって、そんな小さな駅前にラブホがあるわけもなく、結局、そのあと大きめの駅に移動している。
 それと、デートをしない休日に、何をやっているかさっぱりわからない。今までは彼がいない週末=部活絡みの何かとはっきりしていたけれど、別に試合を見に行ってるだとか、後輩指導で母校を訪れているだとか、そんなわけでもないらしい。
 特に、何してたと聞いても、ちょっと色々と濁されるのが、とにかくめちゃくちゃ怪しかった。
 絶対に何か企んでるっぽいけど、そのうちちゃんと話すから待っててと言われてしまうと、追求もし難い。そしてそんな悶々とする日々は、なんと、もう1年近くも続いている。

続きました→

 
 
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兄は疲れ切っている(目次)

キャラ名ありません。全40話。
雄っぱい持ち大学生弟(視点の主)×疲労困憊社会人兄。どちらも女性経験ありで男性経験なし。
同情から雄っぱいを揉ませたことで兄を意識するようになった視点の主が、彼女ができそうという兄に焦って、酔い潰して先に体だけ手に入れたら大失敗だった話。
目一杯優しくしても一向に絆されてくれないどころか心を閉じていく兄と、最終的には恋人同士になります。
21話から先はダラダラと恋人同士の甘ったるいセックスをしているだけですが、S字結腸まで突っ込んじゃったり、後始末でお湯の排泄させたりが混ざってます。描写は控えめ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的なシーンが含まれるものはタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 1分百円
2話 酔った兄に絆されて
3話 兄の奢りで居酒屋へ
4話 ラブホ連れ込み(R-18)
5話 兄覚醒と抱く宣言(R-18)
6話 とにかく諦めて(R-18)
7話 泣かれて一時中断(R-18)
8話 再開したけど(R-18)
9話 その後の迷い
10話 上手くいかない(R-18)
11話 兄だけ先に(R-18)
12話 兄の口奉仕(R-18)
13話 精飲と湧き上がる怒り(R-18)
14話 嫌だと言えば開放する
15話 兄の告白
16話 ポンコツなりに必死
17話 兄の惨めさの正体
18話 土下座で謝罪
19話 セックス前から好きだった
20話 やっと恋人同士
21話 初デートの余韻を残して
22話 ちっぱい堪能(R-18)
23話 襲っていいよ
24話 嬉しくて仕方がない(R-18)
25話 いつもと違って(R-18)
26話 耳元に甘い声(R-18)
27話 ゴムを口で着けてみたい
28話 初の対面座位(R-18)
29話 兄が自分で(R-18)
30話 初トコロテン(R-18)
31話 もっと、愛して(R-18)
32話 中出しマーキング(R-18)
33話 奥までじっくり(R-18)
34話 奥のその先(R-18)
35話 これから先はいつだって
36話 抱っこで風呂場
37話 後始末のお手伝い了承
38話 排泄中だって可愛い(R-18)
39話 湯船でうとうと
40話 おやすみ

 
 
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兄は疲れ切っている40(終)

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 気持ちよさそうに目を閉じる兄を起こさずベッドまで運ぶのはさすがに無理だったけれど、風呂場から連れ出して体を拭いてやって未使用の部屋着を着せてやる間、兄は眠そうにぽやぽやしていて、ただただされるがままだった。
 ベッド行くよとだけ告げ問答無用で抱き上げても、さすがにもう慌てることもしがみついてくることもなく、ゆるっと体を預けてくれるどころかまた目を閉じている。口元がゆるっと笑んでいるのが可愛くて、愛しくて、信用されきっているのがわかるから嬉しくて仕方がない。
 ベッドの比較的綺麗そうな場所を選んで兄を下ろし、布団をかけてやる間も、兄はずっと目を閉じたままだった。きっともうこのまま眠ってしまうんだろう。もしくはもう既に寝ている。
 自分もその隣に潜り込んで、眠る兄の顔をジッと見つめた。もう少し眠くなるまで、このまま眠る兄を見続けるつもりだった。なのにゆっくりと兄が目を開いていく。
 目が合った。と思ったら、兄が嬉しそうにふふっと笑う。
「かいがいしぃ」
「そりゃあ、そこまで疲れさせたの、俺なわけだし」
「うん。でも、うれしい」
 好きだよって囁くみたいにこぼされて、俺だって好きだと返せば、やっぱりんふふと嬉しそうに笑っている。眠いせいもあるのだろうけれど、とろっと甘い気配が漂っているのがたまらない。
 どうにも兄に触れていたくて手を伸ばした。とはいえ、これ以上性的な興奮を煽るわけに行かないので、結果、頭を撫でるように髪を梳く。
「気持ちぃ……」
 うっとりと目を細めながら、小さな声がやっぱりとろりと吐き出されてきた。
「ん……っ、き…ちぃ……」
 そのまま瞼を閉じてしまったものの、必死に気持ちよさを伝えようとしているのか、途切れ途切れに気持ちぃの言葉の切れ端が口からこぼされたり、んっんっと気持ちよさげに鼻を鳴らしたりもする。
 相変わらずサービス精神旺盛すぎだと苦笑した。そんなに頑張って気持ちよさを伝えてくれなくても、もう充分に伝わっている。
「ほんっと可愛いんだから。ね、もう、寝ちゃっていいよ?」
「んっ……」
 小さな返事の後、すーっと息が深くなって頭を撫でても反応しなくなったから、今度こそ本当に眠ったのだと思った。しかし暫くそのまま頭を撫で続ければ、また唐突に兄が話し出す。
「なんか、ねちゃうの、もったない」
 舌っ足らずに吐き出されてくる言葉は、眠気にむりやり抗っているようで、やっぱり苦笑を誘った。
「もったいなくないって。てか可愛い寝顔、もっとじっくり見させてよ」
「んー、それ、は、ずる、い」
 もぞっと動いたかと思うと、兄がすり寄ってきて胸に顔を押し当ててくる。寝顔を見せたくないってことかと思ったら、兄がくふくふと妙な笑い方をしながら肩を揺するから何事かと思う。
「え、何?」
「おっぱい、やらかい」
「あー……」
「ここ、きもちぃ」
「知ってるって。で? そこに顔埋めて眠りたいって話?」
 聞けばやっぱり小さく肩を揺すって笑う。
「それも、いいけど」
「いいけど?」
「それより、いっしょ、ねて、ほしぃ、かなぁ」
 寝ないのと聞かれて、つまり兄が眠気にむりやり抗って起きているのは、こちらにまだ眠る気がないせいらしいとやっと理解した。
 わかったと小さくため息を吐き出して、手を伸ばして部屋の明かりを落としてやる。
「これで安心して寝れる?」
「おまえも、ねる?」
「寝るよ」
 言えばまたもぞっと動いて、胸に埋めていた頭が離れていった。しかし近づいた距離は離れず、兄の体がすぐ近くに密着している。そっと抱きかかえれば、んふっと満足げな吐息が漏れた。
「おやすみ」
「んっ……すみ」
 どうにかという感じで小さく返事をくれた後は、静かな寝息が聞こえてくる。暫く様子を見ていたが、今度はもう、兄が話し出すことはなかった。
 とはいえ、もう一度電気をつけて寝顔を眺めてやろうとまでは思わない。疲れ切った兄はきっとぐっする眠るだろうから、兄より早く目覚めて、寝顔も寝起きも堪能してやればいいのだ。
 そんな決意を胸に、腕の中の熱と寝息に誘われるまま目を閉じた。

<終>

続編目次へ→

昨年内に終わらず年越しまでしてしまいましたが、長々とお付き合いどうもありがとうございました。恋人同士の既に慣れた気持ちいいセックスを書く機会が少ないので、ついダラダラと書いてしまいましたが、とても楽しかったです。
2回ほど休憩を挟んで、次回更新は10日の予定です。

 
 
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