本編数ヶ月後。颯真の高校卒業を待って久々にセックスする二人の話。本編の主人公は颯真ですが、後日談は翔視点。
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仕事が休みの日の朝は、なるべく体を動かすようにしている。と言ってもせいぜい近所を1時間程度走ってくるだけだけれど。
そんなわけで今朝も走りに出るつもりで靴を履いていた所、前方のドア鍵が突然ガチャリと音を立てたので、翔は驚き顔を上げた。
とっさに頭に浮かんだのは、先日、誕生日プレゼントとして合鍵を渡した恋人の顔だったけれど、もちろんこんな早朝とも言える時間の来訪予定はない。そもそも颯真とは今日、昼前に駅で待ち合わせている。
少し豪華なランチを奢って昨日卒業式だった彼の卒業を祝い、夕飯用に美味そうな惣菜類を買って帰ってくるのが目的だ。夜は久々のお泊りも決定している。ついでに言うなら、明日も仕事は休みである。
卒業式当日はさすがに色々あるだろうからと、その翌日と翌々日が休めるように、かなり早くから準備していた。卒業祝いとして、泊まりでどこかへ連れて行きたいと思っていたからだ。
しかし結局、ホテルに宿泊予約を入れることにはならなかった。なんせ、翔宅に泊まりたいというのが颯真の要望だったので、恋人としては、それを叶えてやらないわけには行かない。
あの日の約束通り、恋人となってからはハグやキス以上の性的な触れ合いをしていなかったから、実質、恋人としては初めて抱き合う夜となるのに。翔としては、多少ロマンティックな演出をしてやるつもりだったし、颯真自身、そういうのに憧れる気持ちはあるとはっきり認めていた。
けれど、久々に抱き合う場所はやっぱり慣れ親しんだ翔のベッドの中がいい、だとか、あのベッドに潜り込むのをどれだけ我慢してきたと思うの、なんてことを言われてしまったら、すぐにでもそのベッドの中へと連れ込みたい衝動を堪えるのが大変だった。
頭の中では目まぐるしく颯真との記憶が巡っていたが、扉の向こうに居るのが彼だという確証はない。慌てて立ち上がり、隅に置かれた傘立てに刺さった傘を引き抜いたところで、目の前のドアが開かれる。
「ぅわっ!?」
真っ先に驚きの声を上げたのはドアを開いた人物で、翔は脱力しつつ手にした傘を傘立てに戻した。色々と想定外ではあるが、合鍵を渡した人物が鍵を開けたのであれば、そう大きな問題はない。
「え、ちょ、何してんの?」
「何してるのはこっちのセリフだ。合鍵を使うのは構わないが、来るなら連絡くらいは入れてくれ」
「だってそれじゃ寝込み襲えないじゃん」
「んん?」
想定外の言葉が聞こえてきて言葉が詰まる。てっきり、待ちきれなかったとか早く会いたかったとかの、可愛らしい理由を告げてくれるのかと思っていた。
「卒業したし、合鍵あるし、ならもう、寝てるとこにこっそり潜り込むしかないなって思って。まぁ、本当はもっと早く来るつもりだったの無理だったから、もう起きてるだろうなとは思ってたんだけどさ」
さすがにドア開けた先に居るとは思ってなくて驚いたと言いながら、颯真の視線がゆっくりと、翔の姿をなぞるように上から下まで移動していく。
「もしかしなくても、走りに行くとこだった?」
「まぁ、休みの日くらいは、少し体を動かしておかないとな」
「そうなんだ。えっと、じゃあ、俺は留守番してていい? どれくらい走ってくる?」
一緒に行きたいとこだけどさすがにこの格好で走るのはと躊躇う颯真は、昼からのデートを意識してか、普段好んで着ているカジュアル感の強いスポーツミックスコーデではなかった。前が開かれたコートからは、襟や前立てにデザインが入った白シャツや細めのコットンパンツという、スマートな装いが見えている。当然足元もカラフルなスニーカーではない。
卒業祝いなのだからランチはコースを予約済みと言ったせいで、気を使わせてしまったのかも知れないが、見慣れない大人びた姿になんとなくソワソワしてしまう。
大学生と思い込んで抱いてしまったが、本当は高校生と知って、せっかく恋人という関係に進んだものの行為は颯真が卒業するまでオアズケという状態に、実のところ、こちらも相当焦らされていた。颯真の手前、そんな気持ちは極力隠してきたけれど、やっと卒業したのだと思うと抑えが効かなくなりそうだ。
「翔さん?」
「うん」
訝しげに名前を呼ばれたが、小さく頷くだけにとどめて、そっと目の前の体に腕を伸ばす。引き寄せ抱きしめた体からは、甘さのある爽やかな香りがした。
正確には、毛先が元気よく跳ねた頭髪から漂う馴染みのあるこの香りが、香水の類ではなくシャンプーの香りだということを知っている。いつもより強い香りの中、ほのかな石鹸の香りが混じってもいた。
先程、寝込みを襲いに来た、なんてことを言っていたから、場合によってはそのまま行為になだれ込む気だったんだろう。多分、その認識に間違いはないのだけれど、それならばと寝室へ連れ込むかは、大いに悩むところだ。
続きました→
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