抱かれる覚悟は出来ていたのに

 恋人とふたりきりの部屋の中、ふっと会話が途切れた瞬間に、あ、これは、と思ってすぐさまそっと目を閉じた。思った通り相手の顔が近づく気配がして、唇を柔らかな熱が覆っていく。
 そのままゆっくりと毛足の長いラグの上に押し倒されて、やっぱり自分が抱かれる側になるんだなと思う。
 彼からの告白を受けた時から、きっとそうなるだろうと思っていた。
 体格こそ相手のほうがやや細身で小柄ではあるが、どう考えたって抱いて欲しいと言い出すような性格ではない。わかっていて恋人となることを選んだのは自分なので、抱かれる覚悟も準備もできている。
 付き合いを開始してから先、こうなる日が来るだろうことを予測して、男同士のセックスのやり方を調べてアナルを拡張してきた。なぜなら、自分は相手が童貞だということも知っているし、どちらかと言えばガサツで大雑把で猪突猛進型タイプだということがわかっているからだ。そんな相手に、まっさらな体を差し出すのは、さすがに無謀すぎるだろう。
 チュッチュとキスを繰り返しながら、どんどんと服を脱がしに掛かって来る相手に協力すれば、あっという間に腰から上の肌を全て晒すはめになった。唇の上に降りていたキスは、晒された肌の上に落ちるようになり、しかもそれはどんどんと下降していく。
 初めての行為に、はやる気持ちはわからなくはない。同じく童貞でセックス経験皆無の自分が、そんな相手を幾分冷静に見ていられるのは、抱かれる側になる緊張が酷いからに他ならない。
 それでも、下腹部へ向かって肌の上にキスを落とす唇が、ジーンズのフロントをくつろげて取り出したペニスへ到達すれば、期待と興奮で一気に熱があがって何も考えられなくなる。初めて感じる人の口の中は、生暖かくぬるっとしていて、技巧なんて何もないハズなのに気持ちよくてたまらなかった。
 アナル拡張訓練をしていたなんて事はもちろん教えていないので、これはきっと、突っ込まれて辛い思いをする前に気持よくさせてやろうという、彼なりのサービスなんだろう。だったら遠慮無くイッてしまえと、意識をそこに集中する。しかし、そろそろイきそうだと口から漏らした瞬間、それは彼の口からペッと吐き出されてしまった。
「なに、イかせてくれないの?」
「は? 当たり前だ」
「なんで?」
「なんで、って、そんなの、出しちまったら使いもんにならなくなるだろ。それともお前、イッても萎えない絶倫系?」
「使い物って?」
「ここまで来てカマトトぶんなよ。セックス、しようって言ってんの」
「うん、それはわかってる。いいよ。覚悟出来てる」
「だったら先に一人だけイこうってのがオカシイのわかるだろ」
 えー……と零れそうになる不満をどうにか飲み込んで、仕方無くわかったよと返した。
 初心者同士で一緒にイけるようなセックスが出来る可能性は微塵もないだろうが、童貞だからこそそんな夢を見てしまうのだろうか。自分がそんな夢を見れないのは、男同士のセックスを調べすぎたのと、拡張訓練をしたとはいえアナルで感じてイケるほどの開発は出来ていないからだ。
 相手はこちらの了承に機嫌良さそうに笑ってみせると、潔い勢いですべての服を脱ぎ捨てる。こちらはもちろん、まだジーンズを履いた状態だ。脱がされるのを待たずに自分で脱いでしまえと、ジーンズに手をかけるその横では、膝立ちしている彼が開いた自分の股間に自分の手を差し込んで何やらしている。
 何やらと言うか、まさかそれって……
「おい、お前、何してんの?」
「何って、準備はしてあるけど、もっかいちょっとほぐしとこうと思って」
「は?」
「そんな驚かなくたって良いだろ。お前、男同士で準備もなく、すんなりセックス出来る気でいたわけ?」
「いやいやいや。それはわかってる。じゃなくて、え、なに、お前が突っ込まれる側なの?」
 言ったら呆れた顔で、そりゃそうだろと当たり前のように返されて驚いたなんてもんじゃない。
「待て待て落ち着け」
「落ち着くのはお前だ」
「えっと、本気でお前が抱かれる側なの?」
「だからそうだっつってんだろ。お前好きになったの俺で、お前は俺に頼み込まれて恋人になったようなもんなんだから、そのお前に女役まで押し付ける真似したら男が廃る」
「なんだその理屈。それでお前までアナル拡張訓練したってのかよ」
「お前までって……え、まさか、お前、俺に抱かれるつもりだった?」
 そのつもりで準備も覚悟もしてきてると言ったら、相手は心底驚いた様子で目を瞠った。
「あー……と、一応聞くけど、今もお前は俺に抱かれたくて仕方ない感じ?」
「いやそんなことは全くない」
「じゃ今日のとこは俺が抱かれるから。その先については、終わった後で考えよう」
 とにかくまずは一回やってみようぜと誘われて、どうしてこうなったと思いながらも頷いた。

 
 
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1話完結作品

1話だけで終わっている作品をただ並べただけのページです。
右下へ行くほど古い作品。

酔った勢いで兄に乗ってしまった話  大事な話は車の中で  大晦日の選択  捨て猫の世話する不良にギャップ萌え、なんだろうか  自棄になってても接触なんてするべきじゃなかった  お隣さんがインキュバス  ずっと子供でいたかった  ホラー鑑賞会  離婚済みとか聞いてない  初恋はきっと終わらない  好きって言っていいんだろ?  カレーパン交換  ツイッタ分(2020年-2)  ツイッタ分(2020年-1)  それはまるで洗脳  あの日の自分にもう一度  ツイッタ分(2019)  禁足地のケモノ  嘘つきとポーカーフェイス  カラダの相性  お隣さんが気になって  間違ってAV借りた  ツイッタ分(2018)  結婚したい相手はお前  ときめく呪い  昔と違うくすぐり合戦  雨が降ってる間だけ  兄が俺に抱かれたいのかも知れない  ただいまって言い続けたい  親友に彼女が出来た結果  週刊創作お題 新入生・再会  60分勝負 同居・灰・お仕置き  いくつの嘘を吐いたでしょう  ヘッダー用SS  出張に行くとゴムが減る  ゴムの数がオカシイ   チョコ味ローション買ったんだって  スライムに種付けされたかもしれない  昨夜の記録  合宿の夜  寝ている友人を襲ってしまった  なんと恋人(男)が妹に!?  卒業祝い  120分勝負 うっかり・君のそこが好き・紅  こんな関係はもう終わりにしないか?  そういえば一度も好きだと言っていない  バレンタインに彼氏がTENGAをくれるらしい  鐘の音に合わせて  青天の霹靂  初めて抱いた日から1年  叶う恋なんて一つもない  抱かれる覚悟は出来ていたのに  2回目こそは  墓には持ち込めなかった  呼ぶ名前  酒に酔った勢いで  思い出の玩具  兄の彼氏を奪うことになった  俺を好きだと言うくせに  夕方のカラオケで振られた君と  一卵性双子で相互オナニー  腹違いの兄に欲情しています  死にかけるとセックスがしたくなるらしい  草むらでキス/戸惑った表情/抱きしめる/自分からしようと思ったら奪われた  好きなひとの指 / 連続絶頂 / 癖になってしまいそう  淫魔に取り憑かれてずっと発情期  アナニーで突っ込んだものが抜けない  ハロウィンがしたかった  忘れられない夜 / 無抵抗 / それだけはやめて  引っ越しの決まったお隣さんが親友から恋人になった  優しい笑顔が好きだった  リバップル/向き不向き  戸惑った表情/拘束具/同意のキス  夕方の廃ビルで

 
 
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2回目こそは

 大学付属の私立高で出会ったそいつとは、高校と大学の7年間、なんだかんだつるんで一緒に居ることがかなり多かった。さすがに就職先は別で、ものすごく遠くはないものの仕事帰りにちょっと誘えるような近さではない距離に離れて、あまりの喪失感にようやく自分の気持に気付いた。
 気付いたばかりで動揺の酷い中、相手から近くまで行く用事ができたから飲もうと誘いが掛かって、結果、アルコールの力を借りて勢いで告白した。驚いたことに両想いだった。
 そしてそのままの勢いでヤッてしまったが、さすがにそれは失敗だった。無知は罪だ。しばらくケツ穴が痛くて泣いた。
 でもその程度で気持ちが変わることはなく、距離はあっても月に一度か二度は時間を作って会うようになったし、旅行の計画なども立てた。初回の失敗が尾を引いて、突っ込むようなセックスはないものの、手で抜きあうような事は何度かしていた。
 そんな関係が一年弱続いた頃、相手に後ろを弄りたいと言われた。どうしても無理なら自分を開発するから、そしたらお前は俺を抱けるか? とも聞かれた。要するに、お前と繋がるセックスがしたいと言われて、後ろを弄る許可を与えた。彼を抱けないことはないけれど、どちらかと言えば抱かれたい。だってあれはあれで、痛かった以外は結構良い思い出になっていたのだ。
 そんなわけで今現在、たっぷりのローションと共に、彼の指がその場所を拓こうとしている。
「ァッ……んっ……も、そろそろ……」
「まだ、だ」
 彼自身、初回がトラウマ気味なのか、結構拡がったと思うのになかなか挿れてはくれない。痛みはほぼないし、多分もう大丈夫だと思うのに。
 ハフハフと喘ぎながら、若干疲れて目を閉じた。中に入っているのは指だけど、彼のペニスが出入りするイメージを重ねて見る。というよりは、以前抱かれた時の事を重ねた。
 多少酔ってはいたが、何度も繰り返し思い出していたのもあって、容易に思い出せる。好きだと繰り返されながら、激しく熱を穿たれ求められ、体は痛いのにそれでも胸の中はトロトロの幸せに満ちていた。
 早くあの時みたいに、たくさんの好きと一緒に激しく突かれたいなと思う。いやでも、今指が出入りしてるくらいのスピードで、時間を掛けてゆっくり捏ねられながら、好きって言われてキスされるのも多分きっとたまらなく幸せだ。
「ぁっ、…あっ、ぁんっ……!?」
 零す自分の声が甘ったるく響いてしまい、慌てて目を開け両手で口を覆う。妄想で善がるなんてさすがに恥ずかしい。
「なんで口隠すんだよ。いい声、聞かせてくんねーの?」
「だっ、って……」
 手の中に吐き出す声はくぐもっていて、相手にははっきり届かなかったかもしれない。
「お前のいい声、聞きたい」
 じゃあ早く突っ込んで、あの時みたいに好き好き言って。なんて言えたら良いのかもしれないけれど、手で口を覆ったまま首を横に振るのが精一杯だった。
「まぁ、声我慢してるのも、可愛いっちゃ可愛いけどさ」
 可愛いなんて言われて、体の熱が上がっていく気がする。
 一度想像したらそう簡単にリセットは出来ず、目を閉じなくても、好きだ好きだと繰り返す相手の声が頭のなかを回っている上、そんな追撃をされたらたまらない。手で口を覆っていても、零す息の甘さも熱さも到底隠し切れない。
「ふぅっ、んんっ、ん、んんっ」
「そろそろ、いいか?」
 ようやくかと思いながら必死で頷けば、やっと指が引きぬかれていく。足を開かれ熱い塊が押し付けられて、期待がゾクリと背筋を走った。

 
 
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リバップル/魔法使いになる前に 2(終)

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 優しく出来ると言った相手に、緊張した顔で押し倒される。こちらだって当然、緊張はしていた。
 初めての時ってどうだったっけ。なんて、はるか昔に思いを馳せるが、互いに必死だったことしか思い出せない。いや、相手の体へ与えたダメージも思い出した。
「あ、あのさ」
「な、なに」
「お前めちゃくちゃ緊張してるけど、マジ、大丈夫なの? てか俺も緊張してるっていうか、かなり不安なんだけど」
「ご、ごめん。ムードまで気を配れる余裕、ちょっと、ない」
 お前傷つけないように考えるので手一杯などと続いて、思わず顔を両手で覆いたくなった。しないけど。
「ごめんって」
「う、いや、いい……です。あー、うん、お前の好きにして、いい」
 なにそれと言って笑った相手に少しだけホッとする。どうやら相手も笑うことで緊張が解れたと自覚したらしい。
「お前、抱かれる側でもカッコ良いのとかズルイ」
「そういうつもりじゃなかった」
 というか今のやり取りでカッコイイ所があったとは思えない。要するに相手の目と感性がオカシイ。つまり、こんな場面でカッコイイとか言い出す相手が可愛くて仕方がなかった。
「ん、でも、お前は抱く側になっても可愛い、かな」
「今日はカッコイイって言わせたい」
「普段のお前は普通にカッコイイですけど。ベッドの中くらい、可愛い俺の恋人で居てくれ」
「俺が抱く側でも可愛い方がいいわけ?」
 可愛い方がいいとか悪いとかじゃなくて、何したって多分お前は可愛いんだよ。なぜなら、自分の目と感性がそう主張してくるからだ。
「お前はお前のままでいい、って話。お前だって俺に、抱かれる側になるんだから可愛くなれとか思ってないだろ?」
「そりゃあ」
「だから、色々気負いすぎなくていいから、お前の好きに触れって」
 相手の手をとって、自分の頬に当てさせる。その手を、ゆっくりと首筋をたどるように下方へ滑らせた。途中で手を離したが、その手はもう相手の意思で動き始めている。
 愛撫されることにあまり慣れていない体は、相手の思うような反応を返すのが難しい。
 くすぐったさに混じる快感を捉えようと頑張りながら、つい頭の片隅で、今度抱く時はこの場所を重点的に責めてやろうなどと思ってしまう。だってしつこく触ってくるってことは、その場所が相手のキモチイイ場所ってことだろう?
 くふっと笑ってしまったら、相手が不安そうに、気持よくない? などと聞いてくるので、しまったと思いながらくすぐったくてと返しておいた。
「やっぱ抱くのって思ったより難しいな」
「お前だって、最初の頃はそうそうキモチイイ顔なんか見せなかったからな?」
「慣れかぁ……」
「そう。慣れ。ものすごく正直に言うなら、俺は今日、終わった後に立てないほど体が痛い、って状態にさえなってなきゃ成功だと思ってる」
「成功のライン低っっ」
「だからお前は気負い過ぎなんだって。十代だったとはいえ、俺がお前を最初に抱いた時のこと思えば、それで充分なんだよ」
 痛いって泣かせてゴメンなと言ったら、苦笑と共に、確かに泣いたねぇと返ってきた。
「あれに比べたら、多分、どんな風に抱かれようとマシだから。もちろん、相手がお前って前提の話な」
 だって抱かれる事に慣れた恋人が、優しく出来ると言い切ってする行為なんだから。
 それを伝えたら、ふわっと嬉しそうに顔をほころばせた後、好きだとシンプルな言葉が告げられた。
「俺も、好きだよ」
「いっぱい気持ちよくさせてからとか思ってたけど、後ろ、もう触っていいかな」
「どうぞ。むしろやっとかよって思ってる」
 可愛い可愛い恋人の、格段に雄っぽい顔も、これはこれで悪くないかも。なんて思いながら、弄りやすいように足を開いてやった。
 たっぷりのローションを使って、ちょっとしつこいくらいに弄られて拡げられている間、相手の興奮がどんどんと増して切羽詰まっていくのがわかる。辛そうな顔に、さっさと突っ込んでいいのにと思った。思ったら、それは口からこぼれていた。
「も、いいから、来いよ」
「まだダメ」
「んなこと言ってると、次、お前も焦らすよ?」
「気持よくて早く入れて、ってのと、お前の早く入れろは意味が違う」
「変なとこだけ冷静なのってどうなの?」
「それ多分、お互い様だから。今日は俺の、傷つけたくないって気持ち、優先させて」
 そう言われてしまったら黙るしかない。
 それからもまだ暫く弄られ続けて、途中二度ほど後ろを弄られつつ前を手で扱かれてイかされたのも有り、ようやく相手と繋がった時には、かなり精神的にも肉体的にもぐったりしていた。
 でも多分ここからがスタートだ。なんて思って気合を入れようとしたら、宥めるように肩をさすられる。
「時間かけすぎてゴメンね。でもこっから先はすぐ終わるから大丈夫。入れさせてくれて、ありがと」
 多分すぐイッちゃうよと苦笑した相手は、本当にあっという間に上り詰めてしまったようだった。マジか。
「え、お前……」
「うんまぁ、自分でもちょっと早すぎって気はしてる。けどまぁ、早く終わったほうが楽だろうなって。それに、お前の中、入ったことには変わりないし」
 呆然とするこちらに、照れた様子を見せながらも、相手は晴れ晴れとした顔をしていた。
「じゃ、抜くね」
「待って」
 腰を引こうとする相手を慌てて引き止める。
 このまま抜かずの二発目頑張らないかと誘ったら、一体相手はどんな顔をするだろうと思いながら、湧いてしまった欲求をそのまま口に上らせた。

 
 
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童貞が二人 5(終)

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 お前の中に入りたいなんてセリフを、懇願混じりに告げてくるのはズルい。だってなんだかんだ言っても相手のことが好きで、だから男同士なのに恋人って関係になって、体を繋げたいなんて気持ちにさえなっているんだから。
 仕方がないので、握っていた手の力を緩めて、相手を追い立てるような行為はやめた。
 代わりに、相手の手に意識を集中する。慣れた手つきでこちらの快感を煽っていくのに、散りそうになる気持ちを合わせていく。
 ペニスを弄られて気持ち良さで体に力が入るたび、後ろの穴に入れられた指を締め付けてしまって、最初はどうもいつものように集中は出来なかったけれど、だんだんと気持ちよさが連動していくのがわかる。アナルを収縮させて中の指を締め付けることが、なんだか気持ちが良いような気がしてくる。
「なぁ、中、ちょっとは気持ちよくなって来た?」
 どうやら相手も気付いたようだが、いちいち指摘されるのはなんとも恥ずかしい。
「言うなっ」
「だって気になるし。な、少し、動かしていい?」
 期待と興奮とが混ざる声に頷けば、ペニスを握ってこするリズムに合わせて、中の指も小さく前後し始めた。
「ぅあっ、ぁっ、ぁ、っ……んっ…」
 まさか自分の口からこんな声が漏れ出るとは思わず、気付いてすぐに唇を噛みしめる。
「声、噛むなよ」
「や、…ぁ、ぁあっ、だっ」
 嫌だと言うために口を開いただけで、余計なものまで漏れでてしまった。本当に恥ずかしい。
「ふはっ、かっわいい」
 お前の顔赤くなってると、わざわざ指摘してくるのはもっと照れさせたいからだろう。それがわかっていても、どうすることも出来ない。顔が熱いから、相手の思惑通りますます顔を赤らめたに違いない。
「ね、お前の中に、入れさせて」
 興奮する相手の目が少しギラついている。
「ん。いい、よ」
 とっくに逃げられないことは悟っていた。小さく頷けば明らかにホッと安堵の息を吐いて、相手は埋めていた指をゆっくりと引き抜いていく。
「正常位でいいよな?」
 聞かれたのは横になっていた体を起こした相手に、ガバリと足を開かれた後だった。行動に言葉が追いついていないようだ。
「好きにしろ。でもその前に、ちゃんとゴム着けろよ」
「あ、そうだった」
 慌ててコンドームに手を伸ばす相手を見ながら、こっそり深呼吸を繰り返す。それなりに覚悟は出来ているが、やはり緊張もしている。
「はい、準備完了」
 装着したコンドームの上にローションを垂らして少しなじませた後、相手は再度真剣な顔を向けてきた。
「で、そっちの心の準備は?」
「うん、まぁ、多分大丈夫」
 言えば嬉しそうににこりと笑われて、相手の顔が近づいてくる。本当にキスが好きだなと思いながら唇を触れ合わせ、好きの言葉に俺も好きだと返した。
「じゃ、入れるから」
「いちいち宣言しなくていいって」
「怖がりさんには必要だろ」
「もう怖くない」
「なら良かった」
 その言葉とともに相手の熱がグッと押し付けられて、それがゆっくりと腸壁を押し広げて奥へ進んでいく。痛みはなかったがやはり苦しい。
「んんっっ、くっ……」
「息して、息。あと、声、聞かせて。マジで」
「んぁっ、あっ、キツっ……」
「痛い?」
「イタ、く、なっ、ああっっ」
「じゃもーちょい我慢な」
 こっちも必死だったが、相手もそうとう必死な顔をしている。
 やがて全部を埋めることが出来たようで、相手が動きを止めて大きく息を吐いた。
「童貞卒業、おめでとう」
「ははっ、ありがと。お前も、」
「それは言わないで」
「だよな」
 アナル処女喪失なんて嬉しさの欠片もないので、そこには触れずにいて欲しい。
「でさ、俺ちょっと持ちそうにないから、急かして悪いけどお前の弄らせて。出来ればさっきみたいにキモチクなって?」
 どういう意味かと思ったら、相手の手がペニスを握って扱き始めた。挿入される衝撃にやはり少し萎えていたそれは、またすぐに張り詰めていく。
 今度は指ではなくて、入っているのは相手のペニスだ。そう思うと、体だけじゃなくて心にも、ゾクリとした満足感に似た快感が走る。
「うぁっ、あああ、あぁ、キモチぃ……かも」
「俺も、きもちぃ」
 ゴメン動くという切羽詰まった声と共に、少し乱雑に突かれてビックリしたが、でも痛みはなかったし確かに相手が達するまでの時間も短かった。一旦放置されてしまったこちらも、相手が動きを止めた後にすぐまた扱いてくれたので、追いかけるように相手の手の中に精を吐きだす。
 イく瞬間に体内に相手を感じたままというのは、そう悪い感覚でもなかった。
 息を整えてから体の繋がりを解き、それでもまだすぐには動きたくなくて、二人とも気だるげにベッドの上で横たわっている。
「またしたい。って言ったら、どうする?」
「別にいいけど」
「本当かよ。またお前が抱かれる側でも?」
「あー……まぁ、一度やったら二度目渋る意味もない、気はする」
 痛くなかったし、ちょっとは気持ち良かったし。二度と嫌だと拒否するような理由がない。
「でも俺も童貞卒業はしたい。出来ればお前で」
「え、何言ってんの。俺以外で卒業とかやめて欲しいんだけど」
 まぁそれはそうか。もし今日抱く側になったのが自分だったとして、抱けなかったから別の相手で童貞捨ててくるなんて言われたら、確かにちょっと待てって事になるだろう。
「じゃあ、今度は俺にもお前抱かせて」
 優しくしてねの裏声にクスリと小さく笑いながら、できるだけ頑張ると返し目を閉じた。
 ふわふわとした柔らかな睡魔に襲われている。きっといい夢が見れそうだと思った。

 
 
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童貞が二人 4

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 腸内をかき混ぜられる感覚も、本来出て行くばかりのその場所を逆流してくる質量も、なかなか気持ちが良いとは思えない。ここじゃね? と言われながらグリグリされた前立腺らしき場所は、気持ち良いどころかむしろ痛い感じで不快だった。
 正直に痛いと言ったので、そこを執拗に弄られることはなかったが、相手もかなり諦め悪くローションを継ぎ足しながら延々と弄り続けている。
 指の埋まる入口の周りを撫でられれば、先ほどと同じように声を上げてしまうけれど、声を上げることも自分の意志でなく身を竦ませてしまうのも、正直疲れるばかりな気がしてしんどい。そんなこちらの疲れた様子に気付いたのか、いつの間にか、そこを撫でてついでのように喘がせる行為はされなくなった。ホッとしたしありがたかった。
 しかしそうすると、本当に、気持ちイイがない。ローションの滑りがあるから、そこまでの痛みはないのが唯一の救いだろうか。
「お前さぁ、実は結構飽きてない?」
 こちらが全く乗り気じゃないことにはとっくに気付いていただろうに、ようやくそれを口に出すということは、そろそろ相手も諦めがついてきたのかもしれない。
「まぁ、割と?」
「こっちは一生懸命だってのにひっど」
「だって気持ちくない」
「けっこう拡がったと思うけど、やっぱまだ怖い?」
「………怖い」
「嘘つき」
 躊躇いつつも怖いと返したら、口を尖らせ拗ねた顔で否定されてしまった。
「じゃあ、お前だけ気持ちよくなるの、ズルい」
 仕方がないので本心の方を告げれば、相手は笑いたいのか困りたいのかなんとも言えない顔をした後でがっくりと肩を落とす。
「あーうん、確かに。今突っ込んだら、多分俺だけ気持ち良くなるわ」
「ほらみろ」
「あーじゃあどうすっかなぁ。取り敢えず抜きっこに移行してみる?」
 頷きながらホッとして体の力を抜いたら、体に埋めた指をそのままに相手の体がグッと近寄ってきた。
「えっ、えっ?」
「俺も隣に横になるから、ちょっと協力して」
「待て待て待て。このまま?」
「そう、このまま」
「指、抜かないのかよ」
「せっかく拡げたのにもったいないだろ」
 もったいないってなんだそれ。
 しかしあわあわしている間にも、相手は人の足を持ち上げたり下ろしたりと好き勝手して、ゆっくりと体勢を入れ替えていく。
「はい、これでよし」
「ヨシじゃないだろ」
 横向きに寝て向かい合うのは確かに抜き合うときにする体勢だけど、足の間に相手の腕が挟まっていて、更にはアナルに指が入っているなんて状況、頭も気持ちも追いつかない。なのに相手はさっそくチュッチュとキスを繰り返してくる。
「顔近いのやっぱいいな」
 ふにゃんと頬の緩んだ顔は満足気だ。
「いやあの、ちょっと」
「俺今日片手しか使えないから、お前が積極的に頑張ってな」
「人の話を聞け」
「だって俺まだ、お前と繋がるの諦めたわけじゃないから」
 でもお前も一緒に気持ちよくなれないのはフェアじゃないしと続いたから、これはもしかすると、抜き合い気分で互いのを擦りあって、こちらが感じ始めたら突っ込むからなって宣言なのか?
 しかしそれを確認する時間はなかった。軽いキスが深いものへと代わっていき、それと同時に、気持ちが伴わずに萎え気味だったペニスを相手の手が包んできたからだ。
 自分ばかりがされるわけにはと、こちらとは対象的に、既にがっちり張り詰めて先走りを零す相手のペニスに手を伸ばした。
 あ、これ、先に相手がイッたら突っ込まれるの回避じゃないか?
 そんな思考で一生懸命に相手のを握って擦れば、相手の体がビクンと跳ねるのがわかる。状況のまずさに相手も気付いたのかもしれない。
 知らずニヤリと口元を歪ませたら、触れていた唇が離れていく。
「なぁお前、わかってる?」
「何が?」
「俺をイかせないほうが、突っ込まれた後、多分楽だよ?」
 んん? どういう意味だ?
 そんな疑問は顔に出たらしい。
「今の状態なら突っ込んだら多分すぐ終わり。でも二発目ともなると、突っ込んだ後が長くなるかも?」
 ああ、そういう話。
「って、お前、何が何でも突っ込んでやるってことか、それ」
「だってもう怖くはないんだろ」
 お前の中に入りたいよと熱い息が囁いて、再度唇が塞がれた。

続きました→

 
 
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