兄が俺に抱かれたいのかも知れない

 両親共働きで一番先に帰宅する自分が、帰宅時に郵便物を確認することになっている。両親宛のものやチラシ類はダイニングのテーブルに、兄宛のものは兄の部屋の机の上に、自分宛てはもちろん自室に持ち帰るのだが、兄宛のDMを届けた時にふと、兄の勉強机の棚に並んだ参考書の中に漫画本が紛れていることに気づいた。しかもなぜか背表紙が見えないように前後ろに突っ込まれている。
 なんだこれ、と思った時にはそれを引っ張り出していた。
「うわっ」
 肌色の多い表紙に、あ、これ、エロ本隠してたのかということに気づいて慌てたが、すぐに違和感に気づいてマジマジとその表紙を見つめてしまう。
 あれ、これ、もしかしなくても男同士なんじゃ……?
 うわーうわーと思いながらも、手は勝手に表紙を捲り始めてしまう。そして当然の流れとして、そのままそれを読み始めてしまった。しかもしっかり椅子に腰を下ろして。
 読んでいる間にも、脳内にはうわーとかひえーとかの言葉にならない驚きが渦巻いていて、読み終えた後は心臓がバクバクと痛いくらいに脈を打つ。
 知らなかった。兄にこんな趣味があったなんて。というか、他にも隠してたりするのかな?
 部屋を漁ったなんて知られたら絶対に怒られるけど、好奇心には勝てなかった。そんなわけで定番のベッドの下から、数冊新たに発見した漫画を兄の勉強机に積み上げ、黙々と読み耽る。
 やっぱりうわーひえーうわーと思いながらページを捲ってどれくらいの時間が過ぎただろう。
「おい、何してる」
 カチャッとドアノブを捻る音、ドアが開く気配、そして兄の慌てた声が続いた。振り向き兄を見つめる顔は、間違いなく赤くなっているだろう。羞恥でってよりは、興奮で。
「兄ちゃんさ、これオカズに抜いてんの?」
 手にしたままの漫画を掲げれば、多分羞恥で顔を赤くしている兄が、怒ったみたいな険しい顔でドスドスと荒い足取りで近づいてきて、手の中からそれを取り上げてしまう。バンッと音が立つくらい勢いよく漫画を閉じて、それをベッドの方に向かって放り投げる。しかもその後も無言で、机の上に積み上げた漫画を、取り敢えずみたいな感じにベッドへ向かって全部投げてしまう。
 動揺しすぎ。いや、気持ちはわかるけど。
 弟に兄弟ものの、しかもことごとく兄が弟に抱かれてるような描写が入ったエロ本見つかって読まれるってどんな気分? って聞きたい気持ちをどうにか堪える。だって他に聞きたいことがたくさんある。
「ゲイなの?」
「ち、がう……」
「んじゃ腐男子とかいうやつ?」
「は? お前、何言って?」
「あれ? 違った? BLって言うんだろ、ああいう漫画。で、それを楽しむ女子が腐女子で男なら腐男子」
「いや、違ってない、けど。えっ、お前、気持ち悪くねぇの?」
「ビックリはしたけど、気持ち悪かったら部屋漁ってまでして何冊も読まないって」
「いやでも、だって、」
「んでさ、ゲイじゃないなら、あれはそういう漫画のいちジャンルとして楽しんでます、みたいな感じなの?」
「そ……だよ」
 困ったように視線が泳ぐから、これはきっと期待していい。
「なーんだ。残念」
「残念?」
「俺、読んでて結構興奮したけど。兄ちゃんが、あの漫画みたいなこと、俺にされたいのかと思って」
 椅子に座ったままなので、見上げる兄の既に赤い顔が、更にぶわっと赤味を増していく。
「ね、正直にいいなよ。そしたら兄さんのこと、俺がうんと可愛がってあげる」
 さっき読んでた漫画の中のセリフを投げかければ、兄はすぐに気づいたようだった。
「おまっ、それっ」
「あはは。さすがにすぐわかるね。読み込んでるね」
「からかうなよっ。つかもうお前、部屋出てけ。でもって忘れろ。全部忘れろ」
「いやですー。てか、からかってないし」
 もう一度正直にいいなと促せば、うっと言葉に詰まった後、なぜかゲンコツを落とされた。
「暴力反対!」
「お前が悪いっ」
「なんでよ」
「勝手に部屋漁んなバカヤロウ」
「漁ってすぐ出てくるとこに置いとくとか、俺に見つけて欲しかったってことじゃないの」
「違うったら違うっ」
「えーもー漫画と違って全然すんなりいなかいじゃん」
「当たり前だろ。あれはフィクション」
「でもさ、兄ちゃん気づいてる?」
「何を?」
 そんなの、漫画みたいなことをされたいのかという質問に、顔を赤らめただけで否定はしてないってことをだ。

お題提供:https://twitter.com/aza3iba/status/1011589127253315584

 
 
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親友に彼女が出来た結果

 長いこと彼女のカの字も気配がなかった幼馴染の親友が、ある日突然、興奮気味に彼女が出来たと報告してきた時は驚いたが安心もした。だって長いことずっと、親友である自分にべったりな男だったから。
 べったりだったとはいえ、自分たちの間にあるのは友情だったし、彼女を作らない彼と違ってこちらは何度か彼女を作った。それを嫌がられたことはない。普通に祝福されたし、彼女がいる間は気を遣ってか少し距離を置いてくれたし、つまり、彼の中に自分へ向かう恋愛感情やら独占欲やらは別段ありはしないのだ。
 彼女を作らないのだって、そんな気になれないとか、好きって思える女子が居ないとか、出会いを待ってるだけだとか、なんとも曖昧な感じではあったが、彼女を作らない理由を濁して躱しているのではなく、至って真面目に本気でそう思っているのもわかっていた。
 だからそんな彼に彼女が出来たというのは、確信を持って彼が好きだと言える女性に出会えたことを意味しているし、本当に喜ばしいことで、ちゃんと祝福してやるべきなんだって頭ではわかっている。わかっているが、興奮気味に彼女の素晴らしさやらを捲し立てている親友に、おめでとうも良かったなも言ってやれそうにない。
 彼に彼女が出来たことで、自分の中に彼への恋愛感情や独占欲やらが潜んでいたことに、いまさらながら気づいてしまったのだ。などという話ではない。問題は、彼が一目惚れして口説き落としたというその女性の特徴が、どう控えめに聞いたってあちこち自分と被っている事だ。
 なんでそんな相手を選んだと、文句の一つも言いたい気持ちになる。だってまるで、自分の性を否定されたみたいな感じがする。彼の想いが友情止まりだったのは、自分の性別が男だったせいなんだと突きつけられたも同然だ。自分の中に、彼へ向かう恋愛感情や独占欲やらがあるわけではないけれど、もしもいつか、そういう感情を向けられたらきっと受け入れてしまうんだろう、程度のことは考えていたというのも大きいかも知れない。
 せめて、お前が女だったら付き合いたかった、程度のことは言ってくれてても良かったんじゃないのか。男だから対象外なんだって、はっきり言っといてくれればよかったのに。そう言われていたなら、自分に似た女を見つけたから付き合うことにした、みたいな現実を苦笑しながらももっと祝福できたと思うのに。
 そんなこちらの微妙にもやもやした感情に気づかないくらい、理想そのものという彼女を手に入れた相手の興奮には逆に感謝するべきかもしれないけれど。

 結局、彼女が出来た報告を受けたその時におめでとうは言えなかったけれど、その日の夜にはちゃんともやもやを飲み込んで、翌日からは長年の親友として祝福もしたし応援もした。だって彼に彼女が出来た、という事象そのものは間違いなく喜ばしいことなのだ。
 自分たちが築き上げてきた、親友という関係が変わるわけでもない。だから自分に彼女が出来たときのように、少しだけ気を遣って距離を置きながらも、基本的にはなんら変わらない日々を過ごしていた。
 なのにある日、突然、深刻な顔で彼が告げた。
「俺さ、もしかして、お前のことが好きなのかな」
「は?」
「いや、もちろん好きは好きなんだけど、その好きじゃないっていうか」
「んん? ごめん。全く話が見えない」
 いつになく歯切れが悪く、もたもたと言い募るのを聞いていれば、確信を持って好きだと言える彼女が出来たことで、逆に、無自覚なまま抱え続けていた本当の想いとやらに気づいてしまったかも知れない。みたいな話だった。
 本当の想いというのはつまり、幼馴染の親友に恋している可能性で、彼の言う幼馴染の親友というのは自分だ。
 あっけに取られながら、なんでそんなものに気づいたのだと聞けば、原因は彼のスマホのロック画面らしい。バカみたいな話だが、彼のロック画面は自分の写真だ。彼女ができたんだから彼女にしないのかと指摘したことが一度だけあるが、この写真が気に入っているんだと譲らないので放っておいた。
 いやでも考えてみれば彼女だって、なんで彼氏のスマホのロック画面がその彼氏の親友だという男の写真なんだって思うだろうし、彼女相手にも同じように、この写真が気に入ってるからと変えることを拒んだのだとしたら、本当はその男が好きなんだろうと疑いたくなっても仕方がないかも知れない。どうせこの男は悪気もなにもなく、彼女相手に自分の話をペラペラと喋っているだろうし、よほど鈍くなければ、彼女として選ばれた理由の中に親友と似ているからというのが入っていることに気付いているだろう。
「いやいやいや。彼女にそう指摘されたって、そこは、そんなわけないって否定しないとダメだろ」
「それは、だって、否定出来ないような気も、しちゃって。あいつが、お前に似てるって思ってる部分は、俺だって言われるまでもなく、わかってたし」
「お前ね。そこ自覚あって選んだ彼女なら、もっと大事にしろって。俺はどう頑張ったって、女にはなれないんだから」
「男同士でも、あり、ってことはないのか?」
「は?」
「彼女に言われるまで、考えたこともなかったんだよ。お前と付き合う、なんてこと」
 バカじゃないのと言えば、しょんぼりと項垂れごめんと返された。
「で、結局どうしたいんだよ。俺を好きかもしれないから、俺と付き合ってみたいの?」
「お前が、付き合ってくれるなら」
「その場合、彼女は? お試し交際だからって、二股なんか許さないけど。せっかく見つけた理想の彼女、手放したら二度と女となんて付き合えないかも知れないぞ」
 不思議そうな顔で、でもお前が居ると返してくるこの無自覚さってなんなんだろう。友人として最高だって、恋人として付き合ったら上手くいかない可能性なんて、一切考えていないみたいだ。
「本気で言ってんなら、まずは彼女と別れて、それから改めてちゃんと告白して」
「え、俺と付き合うのか!?」
 この流れで、なんでそんな風に驚くのかさっぱり分からない。そう思いながらも、ちゃんと告白してくれたらねと返して置いた。

こちらに頂いたコメントからのリクエストでした

 
 
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兄弟ごっこを終わりにした日

 彼とその母親がこの家に住むようになったのは、中学に入学する直前の春休み中だったと思う。父の再婚を反対しなかったというだけで、もちろん彼らを歓迎する気持ちなんてなかったが、だからといって追い出そうと何かを仕掛けるような事もしなかった。
 子供心に両親の仲が冷え切っているのはわかっていたし、家の中から母が消えた時にはもう、なんとなくでもこの未来が見えていたというのもある。
 本当なら父だって、新しい妻と幼い息子の三人で、新たな家庭を築きたかったはずだ。単に、父は自分を捨てるタイミングを逃しただけなのだ。
 母の行動の方が一歩早かった。もしくは、自分を置いていくことが、母の復讐だったのかもしれない。なんせ、当時二歳の弟は連れ子ではなく父の実子だった。つまり自分とも半分血が繋がっている。
 自分は両親どちらにとってもいらない子供だったから、再婚するから出て行けと言われなかっただけマシだ。だから家族の一人として彼らに混ざろうなんて思わなかったし、必要最低限の会話しかしなかったし、練習のハードそうな部活に入って更には塾にも通い、極力家に居ないようにしてもいた。
 高校からは逃げるように家を出て寮生活だったし、もちろん大学も学校近くにアパートを借りたし、社会に出ればもっともっと疎遠になっていくのだろうと、あの頃は信じて疑わなかった。それでいいと思っていたし、そう望んでいた。
 父とは疎遠どころか二度と会えない仲になったので、あながち間違いではないのかもしれないが、望んでいた形とは全く違うものとなったし、まさかまたこの家に住む日がくるなんて、あの頃は欠片も思っていなかったけれど。

 父と後妻が揃って事故で亡くなったという連絡が来たのは、大学四年の冬の終わり頃だった。卒論は提出済みで、もちろん就職先も決まっていて、後は卒業を待つばかりというそんな時期だったのは有り難かったが、後処理はなかなかに大変だった。
 父はやはり元々の性格がクソだったようで、どうやら性懲りもなく浮気をしていたらしい。事故という結論にはなったものの、事故を装った後妻による心中じゃないかと疑われていたし、実際自分もそうだったのじゃないかと思っている。幸い血の繋がった新たな弟妹の出現はなかったが、父と付き合っていたという女は現れたし、遺産を狙われたりもした。
 でも何より大変だったのは、残された弟のケアだった。ちょうど中学入学直前という時期だったから、昔の自分とダブらせてしまったのだろうと思う。
 彼もまた、冷え切った両親の仲にも、父の浮気にも、元々気づいていたようだったし、両親の死は母の無理心中と思っているようだった。自分は両親に捨てられたのだと、冷めきった表情でこぼした言葉に、グッと胸が詰まるような思いをしたのを覚えている。
 放っておけないというより、放っておきたくなかった。
 半分血が繋がっているとは言え、互いに兄弟として過ごした記憶なんて欠片もなく、年も離れている上に七年もの間別々に暮らしていた相手が、今後は一緒に暮らすと言い出すなんて、相手にとっては青天の霹靂もいいところだろう。
 それでも、施設に行くと言う相手を言いくるめるようにして、彼の新たな保護者という立場に収まった。
 そうして過去の自分を慰めるみたいに、自分が欲しかった家族の愛を弟相手に注ぎ込んでやれば、相手は思いの外あっさり自分に懐いてくれた。そうすれば一層相手が愛おしくもなって、ますます可愛がる。そしてより一層懐かれる、更に愛おしむ。その繰り返しだった。
 それは両親から捨てられた者同士、傷の舐めあいだったかもしれない。それでも自分は彼との生活に心の乾きが満たされていくのを感じていたし、父は間違いなくクソだったけれど、彼という弟を遺してくれたことだけは感謝しようと思った。
 ただ、やはり今更兄弟としてやり直すには無理がありすぎた。自分が家を出た時、彼はまだ小学校にも上がっていなかったし、そもそも中学生だった自分が彼と暮らした三年間だってほとんど家にはいなかったし、彼を弟として接していた記憶もない。父の後妻同様、同じ家に暮らす他人、という感覚のほうが近かった。それは彼の方も同じだろう。
 便宜上、彼は自分を兄と呼んではくれていたが、互いに膨らませた情が一線を超えるのは時間の問題のようにも思える。兄として慕ってくれているとは思っていないし、自分だってもうとっくに、過去の自分を慰めるわけでも、弟として愛しているわけでもなかった。

 それでもギリギリ一線を超えないまま、兄弟ごっこを続けること更に数年。
 ある土曜の日中、彼はふらっと出かけていくと、暫くして花束を抱えて帰宅した。真っ赤なチューリップが束になって、彼の腕の中で揺れている。
「どうしたんだ、それ。誰かからのプレゼント?」
 今日は彼の誕生日だし、誰かに呼び出されて出かけたのかもしれないと思う。でもいくら誕生日だからって、男相手にこんな花束を贈るだろうか? 贈るとして、それはどんな関係の相手なんだろう。
「違う。自分で買ってきた」
 そんな考えを否定するように、彼ははっきりそう言い切った。差し出されたそれを思わず受け取ってしまったけれど、全く意味がわからない。
「え、で、なに?」
「今日で十八になったから、もう、いい加減言ってもいいかと思って」
「待った」
 とっさに続くだろう言葉を遮ってしまった。
「高校卒業するまでは、言われないかと思ってた。んだけど……」
 彼が十八の誕生日をその日と決めていたなんて思わなかった。さすがに想定外で焦る。
「待てない。もう、じゅうぶん待ったと思う」
 けれど、お願い言わせてと言われてしまえば拒否なんてできない。自分だって、この日を待っていたのだから。
「あなたが好きだ」
 そっと想いを乗せるように吐き出されてきた柔らかな声に、手の中の花束をギュッと握りしめる。
「兄弟としてじゃない。兄さんって呼んでるけど。事実半分とは言えちゃんとあなたは俺の兄なんだって知ってるけど。わかってるけど。でも何年一緒に暮らしても、やっぱりあなたを兄とは思えない。兄としては愛せない。愛したく、ない」
 真っ直ぐに見据えられて、あなたはと問い返された。彼だってこちらの想いに気づいているのだから、その質問は当然だろうし、自分だってちゃんと彼に想いと言葉を返さなければ。
「こんな俺に、誰かを愛するって事の意味を教えたのは、間違いなくお前だよ。お前以外、愛せないよ」
「なら、これからも愛してくれますか。これからは、恋人として」
 大きく頷いて見せてから、手の中の花束をグッと相手の胸に押し付けるようにして、そのまま花束ごと相手のことを抱きしめてやった。

続きました→

有坂レイへのお題【押し付けた花束/「これからも愛してくれますか」/まだ僕が愛する意味を知らなかった頃。】
https://shindanmaker.com/287899

 
 
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週刊創作お題 新入生・再会

 新入生代表挨拶で登壇した男の見た目に懐かしさは覚えなかったが、告げられた名前には懐かしさがこみ上げる。少し珍しい名前だから、多分人違いではないはずだ。
 入学式後のホームルームを終えた後は、真っ先にその新入生代表挨拶をした男のクラスへ向かった。
 タイミングよく、帰るためにか教室を出て来たところを捕まえて、久しぶりと声をかける。
「久しぶり? 俺らどっかで会ったことある?」
 こちらを見上げてくる相手は、酷く不審気な顔を見せているが、それは当然の反応だろう。なんせ会うのは10年ぶりくらいだし、中学に上がってから思いっきり背も伸びて随分と男臭くなってしまったから、幼稚園の頃の可愛らしさの面影なんて欠片もないのはわかりきっている。
 ただ、名乗ってもわかってもらえなかったというか、全く思い当たる節がないと言わんばかりの、更にこちらへの不審さが増した顔には、正直言えばがっかりした。だって昔、あんなに何度も好きだって言ってくれてたのに。大きくなったら結婚しよって、言ってくれたことさえあるのに。
 それとも同姓同名の別人で、こちらの勘違いって可能性もあるだろうか。そう思って幼稚園の名前を出して、そこに通ってなかったかと聞けば通ってたけどと返ってくる。
「俺も、その幼稚園通ってた。で、結構仲良かった、つもりなんだけど……」
「お前みたいなやつ、記憶にない」
「いやそれ、成長してるからだから。昔の俺は! それはもう、めちゃくちゃ可愛らしい子供だったから!」
 言えば相手はプッと吹き出し、自分でそれ言うかよと言ってゲラゲラと笑い始めてしまう。相手にだって幼稚園生の頃の面影なんてほぼないと思っていたけれど、楽しげに笑う顔は間違いなく、昔の彼と同じ笑顔だった。
 若干置いてけぼりの戸惑いは有るものの、それでも懐かしさにそんな彼の笑顔を見つめてしまえば、急に相手が笑うのを止めてこちらを見つめ返してくる。ドキッと心臓が跳ねるのがわかった。
「あれ? やっぱ俺、お前のこと知ってるかも」
「いやだから、絶対知ってるはずだし、何度か互いの家にお泊りしあったくらい仲良かったんだってば!」
「は? お泊り?」
「したよ。家の場所もだいたいは覚えてる。はず」
 遠い記憶を掘り返しながら、おおよその場所を告げれば相手は惜しいが近いと返しながらも、随分と渋い顔になってしまった。何かヤバイことを言ってしまったかと、別の意味で心臓が煩い。
「あー……思い出した。ような気がする、けど……マジかよ……」
 思い出したと言いながらも、相手は焦った様子で視線を彷徨わせるから、わけがわからないながらも不安は増して行く。思い出してくれて嬉しいって気持ちには、到底なれそうにない。
「あの……もしかして、仲良かったと思ってたの俺だけで、思い出したくない嫌な思い出、とかだった……?」
「いやそうじゃないけど。つかお前、仲良かったって、どこまで記憶残ってんの? あ、いや待って。ここで聞きたくない。どっか別のとこで話そう」
 教室前の廊下なものだから、自分たちに向かってチラチラと興味深げな視線が投げられているのには、もちろん自分だって気づいていた。久々にこの地に帰ってきた自分と違って、彼には同じくこの高校へ入学した友人も知人も多いだろう。
 結局そのまま連れ立って学校を出て、彼に促されるまま向かうのは、どうやら彼の家のある方向だ。まさか自宅に招待してくれるのかと思いきや、彼は人気のない小さな公園の入り口で立ち止まり、ここでいいかと中に入っていく。
 一つだけ置かれたベンチに早々に腰掛けた相手に倣って、自分もその隣に腰掛けた。
「あー……で、さ」
「うん」
「単刀直入に聞くけど、お前が俺の知るアイツだとして、お前、俺に好きって言われたりプロポーズされたりキスされた記憶って、残ってる?」
 さっそく口を開く彼に相槌を打てば、顔を自分が座るのとは反対側に逸らしながら、そんなことを聞いてくる。
「好きって言われたり、大きくなったら結婚しよって言われたのは、覚えてる。けど、俺たち、キスまでしてたの?」
「あああああ。本当に相手お前かよっ! つか覚えてんのかよっ」
 彼は顔を両手で覆うと、深く項垂れてしまう。
「ご、ゴメン。そんな嫌な思い出になってるとか、思って、なかった」
「嫌な思い出っつーか、お前、なんで俺に声かけた?」
 顔を上げた彼は、今度はしっかりこちらを向いて、まっすぐに見据えてくる。やっぱりまた、昔と一緒だと懐かしさが胸に沸いた。
「懐かしかった、から」
「それだけ?」
「それだけ、って……?」
「あー……いや、いいわ。お前、見た目めちゃくちゃ変わったけど、中身あんま変わってないな」
「そう、かな?」
「そうだよ。多分。だってお前、わざわざ俺に、俺の初恋相手が戻ってきましたよーって知らせてくれたってことの意味、全く考えても意識してもいないだろ?」
「は? えっ?」
 ほらなと言って柔らかに笑うその顔だって、やっぱり懐かしいものなのに。昔は嬉しいばっかりでこんなにドキドキしなかったはずだと思いながら、ジワジワと熱くなる頬をどうしていいかわからずに持て余した。

お題箱より4/8日配信「新入生」4/13日配信「再会」

 
 
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18歳未満の方へ

一部18禁ブログと言いながら、18禁作品とそうでない作品をそのまま雑多に並べてあり、18歳に満たない方たちへの配慮がまるでない作りだったことを反省し、このページを作りました。
ここに私基準ではありますが、これは18禁ではないだろうと思われる作品へのリンクを並べますので、18歳を過ぎるまではこのページに載った作品のみ楽しんでいただければと思います。
5/15 コネタ・短編「エイプリルフールの攻防」に1年後のオマケ小ネタ追加

<1話完結作品> *右下に行くほど古い作品
大事な話は車の中で  大晦日の選択  捨て猫の世話する不良にギャップ萌え、なんだろうか  ずっと子供でいたかった  離婚済みとか聞いてない  初恋はきっと終わらない  今更エイプリルフールなんて  好きって言っていいんだろ?  カレーパン交換  ツイッタ分(2020年-2)  ツイッタ分(2020年-1)  あの日の自分にもう一度  ツイッタ分(2019)  禁足地のケモノ  お隣さんが気になって  間違ってAV借りた  ツイッタ分(2018)  結婚したい相手はお前  ときめく呪い  昔と違うくすぐり合戦  兄が俺に抱かれたいのかも知れない  ただいまって言い続けたい  親友に彼女が出来た結果  週刊創作お題 新入生・再会  60分勝負 同居・灰・お仕置き  いくつの嘘を吐いたでしょう  ヘッダー用SS  出張に行くとゴムが減る  ゴムの数がオカシイ   チョコ味ローション買ったんだって  なんと恋人(男)が妹に!?  卒業祝い  120分勝負 うっかり・君のそこが好き・紅  バレンタインに彼氏がTENGAをくれるらしい  青天の霹靂  初めて抱いた日から1年  叶う恋なんて一つもない  墓には持ち込めなかった  呼ぶ名前  酒に酔った勢いで  思い出の玩具  兄の彼氏を奪うことになった  俺を好きだと言うくせに  夕方のカラオケで振られた君と  死にかけるとセックスがしたくなるらしい  草むらでキス/戸惑った表情/抱きしめる/自分からしようと思ったら奪われた  ハロウィンがしたかった  引っ越しの決まったお隣さんが親友から恋人になった  戸惑った表情/拘束具/同意のキス  夕方の廃ビルで


<コネタ・短編> *下に行くほど古い作品

煮えきらない大人1 → 煮えきらない大人2 → 煮えきらない大人3(終) 年の差。カフェ店員×学生(視点の主)で両想いなはずなのに恋人になれない話。
片想いが捨てられない二人の話1 → 片想いが捨てられない二人の話2(終) 教師と元生徒で受け二十歳の誕生日前日にそれぞれ悶々としてる話。受け視点 → 攻め視点
意気地なしの大人と厄介な子供1 → 意気地なしの大人と厄介な子供2 → 意気地なしの大人と厄介な子供3 → 意気地なしの大人と厄介な子供4 → 意気地なしの大人と厄介な子供5 年の差。叔父の友人を酔って誘ってみたけど応じてもらえなかった大学生の話。受け視点 → 攻め視点 → 受け視点。
秘密の手紙 → 君の口から「好き」って聞きたい1 → 君の口から「好き」って聞きたい2 両片想いだった高校同級生。攻め視点 → 受け視点。
感謝しかないので → 酔っ払いの戯言と笑い飛ばせなかった
義理父子。息子視点片想い話と、父視点告白され話。
罰ゲームなんかじゃなくて1 → 罰ゲームなんかじゃなくて2
周りの友人に囃し立てられながら告白したら、罰ゲームと思われてOKされてた話。
勝負パンツ1 → 勝負パンツ2 → 勝負パンツ3
遠距離恋愛中の恋人に、勝負パンツならこういうの穿いてと言ったら、本当にフリルのパンツを穿いてきてくれた話。
彼女が出来たつもりでいた1 → 彼女が出来たつもりでいた2 → 彼女が出来たつもりでいた3 → 彼女が出来たつもりでいた4(終)
社会人(視点の主)と大学生。彼女だと思ってた相手が女装男子だった話。
何も覚えてない、ってことにしたかった1 → 何も覚えてない、ってことにしたかった2(終)
会社の後輩×先輩(視点の主)。酔って何も覚えてないってことにしたかったけど、後輩が意外と色々覚えてたから逃げられなかった話。
女装して出歩いたら知り合いにホテルに連れ込まれた → 友人の友人の友人からの恋人1 → 友人の友人の友人からの恋人2(終)
童貞拗らせて女装してみた受とそれをナンパした知り合いな攻。2話目からは視点が変わります。
兄弟ごっこを終わりにした日 → 兄弟ごっこを終わりにした夜
10歳違いの腹違い兄弟。両親死亡で兄が保護者中。弟が18の誕生日に告白してくる話。受攻未定。
ダブルの部屋を予約しました1 → ダブルの部屋を予約しました2 → ダブルの部屋を予約しました3(終)
付き合いの浅い、割と消極的な社会人二人のカップルが、初めて旅行をする話。
フラれた先輩とクリスマスディナー → フラれたのは自業自得1 → フラれたのは自業自得2(終)
大学サークルの先輩後輩の話。1話目後輩視点。2話目から先輩視点。両片想いから恋人になるとこまで。
好きだって気付けよ1 → 好きだって気づけよ2(終)
一卵性双子兄弟で兄視点。弟が自分のふりして自分の彼女と会ってる事に気づいちゃった話。
ベッドの上でファーストキス1 → ベッドの上でファーストキス2(終)
兄弟で弟視点。ベッドに潜り込んでくる兄を意識しちゃう弟と弟が好きな兄の実は両想いだった話。
結婚した姉の代わりに義兄の弟が構ってくれる話1 → 結婚した姉の代わりに義兄の弟が構ってくれる話2(終 
母代わりだった姉が結婚して家に一人になった視点の主を、義兄の弟が構いに来てくれる話。恋愛要素かなり薄い。女装有。
憧れを拗らせた後輩にキスを迫られたので1 → 憧れを拗らせた後輩にキスを迫られたので2(終)
割とタイトル通り。最終的には脳筋な視点の主が後輩に期待させちゃう話。
エイプリルフールの攻防 → エイプリルフールの攻防2 → エイプリルフールの攻防3 → エイプリルフールの攻防4(終) → エイプリルフール禁止
4月1日だけ好きって言ってくる普段は仲の悪い相手に惚れちゃった話。
太らせてから頂きます → 太らせてから頂きます2(終
大学の先輩後輩。いっぱいご飯奢られてたけど、先輩が太らせたかったのは体じゃなくて心だったって話。
常連さんが風邪を引いたようなので1 → 常連さんが風邪を引いたようなので2 → 常連さんが風邪を引いたようなので3
飲食店店員とリーマンで3つのお題に挑戦。気になる常連さんが風邪を引いたのをキッカケに恋人になる話。
雄っぱいでもイケる気になる自称ノンケ1 → 雄っぱいでもイケる気になる自称ノンケ2(終)
高校の先輩後輩。おっぱい星人な先輩が筋トレマニアな後輩の雄っぱいが忘れられなくなる話。
寝ぼけてキスをした → キスしたい、キスしたい、キスしたい → あと少しこのままで 
大学生とその従兄弟。年の差14。従兄弟の家に同居中、寝ぼけた従兄弟にキスされて意識するようになる話。意識してるけど恋にすらなってない、めちゃくちゃ中途半端な所で終わってます。
彼の恋が終わる日を待っていた → 告白してきた後輩の諦めが悪くて困る
高校時代の部活の先輩後輩関係。現在は社会人。後輩→先輩(元副部長)→先輩の幼なじみで親友(元部長) 元部長が結婚したので、後輩が先輩を落としにかかる話。


<シリーズ物> *下に行くほど古い作品
オメガバースごっこ(全17話)
キャラ名なし。「ここがオメガバースの世界なら」続編。双方が両想いに気づくこと・ヒート(発情期)・巣作りの3つを消化したかっただけ。
ここがオメガバースの世界なら(全16話)
キャラ名なし。隣に住む同じ年の幼馴染で高校生。受けは腐男子。もしオメガバースの世界なら自分たちは番。と認識した後、恋人になるまでの話。
俺が本当に好きな方(全6話+番外編1話)
高校生の祐希が親友の隆史とその弟悟史の間で揺れ動く三角関係。隆史と恋人エンド。
あの日の自分にもう一度(全8話)
もう一度女装がしたい大学生の春野紘汰(視点の主)と、その友人でメイクが出来る今田龍則。「理想の女の子を作る遊び」という秘密を共有する仲へ。
兄の親友で親友の兄(全12話)
キャラ名なし。兄を好きな兄の親友かつ親友の兄でもある男に相互代理セックスの誘いを掛けた結果、最終的には両想いの恋人になる話。

 
 
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120分勝負 うっかり・君のそこが好き・紅

 部活終了後、部室で着替えていたら一足先に帰り支度を終えた後輩がススッと寄ってきて、先輩これどうぞと小さな横長の箱を差し出された。意味がわからず着替えの手を止めて相手を見つめてしまえば、先輩にあげますと言いながらそれを胸元に押し付けてくる。
「お、おう……じゃ、サンキューな」
 何がなんだかわからないまま受け取り、取り敢えずで礼を言った。しかし受け取っても後輩は隣を動かない。つまり、この場で中を確認しろということか。
 仕方なく手の中の箱を開けて中身を取り出す。出てきたのは多分口紅だった。なんでこんなものをと思いながら首を傾げてしまったのは仕方がないと思う。
「先輩にはそっちの色のが絶対似合うと思うんですよね」
 そんな自分に気付いたようで、隣から説明するかのような言葉が掛かったが、それを聞いて一気に血の気が失せた。
「はい、お前居残り決定な」
 周りに聞こえるように声を張り上げ、戸惑う後輩を横に残して着替えを再開する。後輩がなんでとかどうしてとか尋ねてくる声は無視をした。だって相手をする余裕なんてまるでない。内心はひどく動揺し焦っていた。
 どうしようどうしようどうしよう。一体どこまで知られているんだろう。
 昨年の文化祭後、先輩たちが引退して演劇部の部長を引き継ぎ、部室の鍵閉めをするようになってから、誘惑に負けるまでは早かった。なんだかんだと理由をつけて他の部員たちを先に帰した後、中から鍵を掛けた密室で、部の備品を借りてひっそりと女装を繰り返している。
 成長期を終えたそこそこガタイのある男に、ピラピラのドレスも、長い髪も、ピンクの頬も紅い唇も、何一つ似合わないのはわかっている。姿見に映る自分の姿の情けなさに、泣いたことだってある。それでも止められないのは、変身願望が強いからなんだろう。
 長い髪のかつらを被って、丈の長いスカートを履いて、胸に詰め物をして化粧を施せば、そこにいるのは醜いながらも全く別の誰かだったからだ。
 演劇部へ入ったのだって、役を貰って舞台に立つことが出来れば、その時だけでも別の誰かになれるかもと思ったからだ。昔から、自分のことが好きになれず、自分に自信が持てずにいる。
 部長になったのだって、部を引っ張って行きたい意志だとか、仲間の信頼が厚いとかそんなものはあまり関係がなくて、単に面倒事を嫌な顔をせず引き受ける利便さから指名されたに過ぎないとわかっていた。そんな頼りない部長のくせに、部室の鍵を悪用し、部の備品で好き勝手した罰が当たったのかもしれない。
 先日うっかり鍵を締め忘れたままで居残った日がある。もし後輩に知られているとしたら、きっとその時に見られたのだろう。
 反応しないこちらに諦めたようで、後輩は近くの椅子に腰掛け、部員たちが帰っていくのを見送っている。自分も着替え終えた後は近くの椅子に腰を下ろしたが、もちろん内容が内容なので会話を始めるわけに行かず、取り敢えずで携帯を弄って時間を潰した。
「で、なんで俺が居残りなんですかね?」
 やがて部屋に残ったのが二人だけになった所で、待ってましたと後輩が話しかけてくる。それを制して一応廊下へ顔を出し、近くに部員が残っていないことを確認してからドアの鍵を掛けた。一応の用心だ。
「それで、お前、あんなのよこしてどういうつもり? てかどこまで知ってる?」
 声が外に漏れないように、さっきまで座っていた椅子を後輩の真ん前に移動させて、そこに腰掛け小声で尋ねる。なるべく小声でと思ったら、しっかり声が届くようにと知らず前屈みになっていたようで、同じように前屈みになった後輩の顔が近づいてくるのに、思わず焦って仰け反った。
「ちょっ、なんなんすか」
「ご、ごめん。てか近すぎて」
「まぁいいですけど。で、どういうつもりも何も、さっき言ったまんまですよ。先輩には、あの色のが似合うと思ったから渡しただけです」
「だから何で男の俺に口紅なんかって話だろ。ていうか、つまりはあれを見た、ってことだよな?」
「先輩が居残って女装練習してるのって、やっぱ知られたらマズイんですか?」
 練習という単語に、そうか練習と思われていたのかとほんの少し安堵する。じゃあもう練習だったと押し通せばいいだろうか?
「知られたくないに決まってんだろ。あんな似合わないの」
「まぁ確かに、似合ってるとは言い難い格好では有りましたけど、やりようによってはもうちょいそれっぽくイケると思うんですよね。だから尚更、一人で練習しないで人の意見も取り入れるべきじゃないですかね?」
 知られたくないなら他の部員たちには内緒にするから、ぜひ協力させてくださいよと続いた言葉に目を瞠った。
「な、なんで……?」
「なんで、ですかね? 先輩の女装姿に惹かれたから、とか?」
「何言ってんだ。似合ってなかったの、お前だって認めたろ」
「だからその、似合ってなかった所が、ですよ。これ俺が弄ったらもっと絶対可愛くなるって思ったというか、なんかこう、とにかく先輩のあの格好が目に焼き付いて、気になってたまらないというか」
「なんだその、一目惚れしました、みたいなセリフ」
「あー、まぁ、それに近い気もします」
 何言ってんだという苦笑に肯定で返されて、なんだか体の熱が上がっていく気がする。
「せっかく二人だけの居残りですし、今から、ちょっとあの口紅、試してみません?」
 衣装とかつらも俺が選んでいいですかと、すっかりその気な後輩に押し切られるようにして、その日から時々二人だけの居残り練習が始まってしまった。

「一次創作版深夜の真剣一本勝負」(@sousakubl_ippon)120分一本勝負第71回参加

 
 
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